説明

有機エレクトロルミネッセント素子、有機エレクトロルミネッセント素子群及びその発光スペクトルの制御方法

【課題】陰極に接する電子注入層を金属ドーピング層とすることで、素子の駆動電圧を低下させるとともに、発光スペクトルの制御が可能な有機EL素子を提供する。
【解決手段】対向する陽極電極と陰極電極の間に、有機化合物から構成される少なくとも一層の発光層を有する有機EL素子において、陰極電極との界面に、バソフェナントロリンもしくはバソクプロインとリチウムがモル比で1:1となるように各々の蒸着速度を調整し、ドナードーパントとして機能する金属でドーピングした有機化合物層を金属ドーピング層として有し、この金属ドーピング層の層厚によって、本有機エレクトロルミネッセント素子が射出する光の発光スペクトルが制御されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面光源や表示素子に利用される有機エレクトロルミネッセント素子(以下、有機EL素子)に関する。
【背景技術】
【0002】
発光層が有機化合物から構成される有機EL素子は、低電圧駆動の大面積表示素子を実現するものとして注目されている。Tangらは素子の高効率化のため、キャリア輸送性の異なる有機化合物を積層し、正孔と電子がそれぞれ陽極、陰極よりバランスよく注入される構造とし、しかも有機層の層厚を2000Å以下とすることで、10V以下の印加電圧で1000cd/m2 と外部量子効率1%の実用化に十分な高輝度、高効率を得ることに成功した(Appl. Phys. Lett., 51, 913 (1987). )。この高効率素子において、Tangらは基本的に絶縁物とみなされる有機化合物に対して、金属電極から電子を注入する際に問題となるエネルギー障壁を低下させるため、仕事関数の小さいMg(マグネシウム)を使用した。その際、Mgは酸化しやすく、不安定であるのと、有機表面への接着性に乏しいので比較的安定で、しかも有機表面に密着性の良いAg(銀)と共蒸着により合金化して用いた。
【0003】
凸版印刷株式会社のグループ(第51回応用物理学会学術講演会、講演予稿集28a-PB-4、p.1040)およびパイオニア株式会社のグループ(第54回応用物理学会学術講演会、講演予稿集29p- ZC-15 、p.1127)は、Mgより更に仕事関数の小さいLi(リチウム)を用いAl(アルミニウム)と合金化する事により安定化させ陰極として用いることにより、Mg合金を用いた素子より低い駆動電圧と高い発光輝度を達成している。また、本発明者らは有機化合物層上にLiを単独で10Å程度に極めて薄く蒸着し、その上から銀を積層した二層型陰極が低駆動電圧の実現に有効であることを報告している(IEEE Trans. Electron Devices., 40, 1342 (1993))。
【0004】
これらの素子は特開昭63−264692号公報に記載されている通り、有機層の層厚を1μm以下(実質的には0.2μm以下)とすることで、基本的に絶縁物である有機物を使用しても実用に耐えうる低電圧での駆動を可能にしている。
【0005】
本出願人は特開平10−270171号公報に示すように、アルカリ金属やアルカリ土類金属、もしくは稀土類金属を含む遷移金属等の低仕事関数の金属と電子受容性有機物を共蒸着の手法により所定量混合し、電子注入層とすることで陰極の仕事関数に依らない低電圧駆動を実現した。この素子においては、予め有機化合物の還元剤となりうるドナー(電子供与性)ドーパント物質である金属を、陰極に接触する有機化合物層中にドーピングする事により、有機化合物は還元された状態(すなわち電子を受容し、電子が注入された状態)の分子として存在するので、電子注入エネルギー障壁を小さくでき、従来の有機EL素子と比べて駆動電圧をさらに低下できる。しかも陰極には一般に配線材として用いられている安定なAlのような金属を使用できる。このような金属ドーピング層において、適当な有機化合物と金属の組み合わせを選べば、従来の、有機物のみによって構成される層と異なり、層厚をμmオーダーにまで厚くしても駆動電圧の上昇が観測されず、駆動電圧の層厚依存性が消失する。
【0006】
一方、有機EL素子の発光スペクトルは有機色素の蛍光を利用するものであり、したがってそのスペクトルの半値幅は一般に広く、色純度の観点から見た場合には必ずしも満足すべきものではないため、これまでにもいくつかの工夫がなされている。
【0007】
日立製作所の中山らは、特開平8−213174号公報に示すように、ガラス基板とITO(インジウム-スズ酸化物)透明電極の間に半透明反射層を設け、発光層と背面電極(陰極)との間の光学的距離(光路長)を調節することにより、光共振器の作用を持たせ色純度を向上させることに成功している。
【0008】
また、豊田中央研究所の時任らも、特開平9−180883号公報に示すように、中山らとほぼ同様の構造を用いて光路長を設定し、素子発光モードを単一モードにして、単色性と強い前方への指向性を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−264692号公報
【特許文献2】特開平10−270171号公報
【特許文献3】特開平8−213174号公報
【特許文献4】特開平9−180883号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Appl. Phys. Lett., 51, 913 (1987).
【非特許文献2】第51回応用物理学会学術講演会、講演予稿集28a-PB-4、p.1040
【非特許文献3】第54回応用物理学会学術講演会、講演予稿集29p- ZC-15 、p.1127
【非特許文献4】IEEE Trans. Electron Devices., 40, 1342 (1993)
【非特許文献5】thin solid films331(1998)96-100,Synthetic Metals 91(1997)197-198,IEEE TRANSACTION ON ELECTRON DEVICES,VOL.44,NO.8,AUGUST 1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これらの素子構造は陽極としての透明導電膜と透明なガラス基板との間に、スパッタリング等の手法により形成されるTiOとSiOのような屈折率の異なる薄膜を交互に積層する半透明反射膜を形成し、反射鏡としての陰極との間で光共振器構造を形成するものであるが、従来の有機EL素子の様に有機物のみによって電荷注入層を形成しようとする場合は、光の干渉作用を利用しようとして効果的な共振長を得るためには、このようにして有機層の外に該半透明反射層を設けなければならなかった。
【0012】
大阪大学の松村らは電子注入層兼、発光層であるアルミキノリン錯体(Alq3)の層厚を意図的に通常の素子よりも厚く3000Å以上として、陰極で反射された光との干渉現象を作り出し、そのスペクトルを解析することで発光領域の陰極材料依存性、素子劣化依存性、電圧依存性を論じている(thin solid films331(1998)96-100,Synthetic Metals 91(1997)197-198,IEEE TRANSACTION ON ELECTRON DEVICES,VOL.44,NO.8,AUGUST 1997)。これは、分析手法の一つとして有用な方法といえるが、駆動電圧の上昇を避けることはできない。
【0013】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、陰極に接する電子注入層を金属ドーピング層とすることで、素子の駆動電圧を低下させるだけでなく、駆動電圧が該金属ドーピング層の層厚に依存しないことを利用して、発光スペクトル制御層としても機能させる有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、陰極に接する有機化合物層をドナー(電子供与性)ドーパントとして機能する金属でドーピングすると、陰極から有機化合物層への電子注入障壁が小さくなり、さらに該金属ドーピング層の層厚を厚くしても駆動電圧が上昇しないことを見い出して完成されたものである。
【0015】
すなわち本発明は、有機EL素子の態様では、対向する陽極電極と陰極電極の間に、有機化合物から構成される少なくとも一層の発光層を有する有機EL素子において、陰極電極との界面に、バソフェナントロリンもしくはバソクプロインとリチウムがモル比で1:1となるように各々の蒸着速度を調整し、ドナードーパントとして機能する金属でドーピングした有機化合物層を金属ドーピング層として有し、この金属ドーピング層の層厚によって、本有機エレクトロルミネッセント素子が射出する光の発光スペクトルが制御されていることを特徴としている。
【0016】
このように金属ドーピング層の層厚を変化させると、反射鏡として作用する陰極と発光層との間の光学的層厚(層厚の光路長;層厚×屈折率)が変化するため、光の干渉効果が発現して素子が射出する光の発光スペクトルを制御することができる。別言すると、陰極に接する電子注入層に金属ドーピング層を用いると、素子の駆動電圧が金属ドーピング層の層厚に依存しなくなるため、素子特性を犠牲にすることなく、光の干渉効果を利用して色純度の向上のみならず、様々の色調の光を金属ドーピング層の層厚調整により得ることができる。すなわち、金属ドーピング層の層厚を厚くしても、駆動電圧を上げることなく色純度の向上や色調の変更が可能である。
【0017】
ドナードーパントとして機能する金属は、より具体的には、仕事関数が4.2eV以下のアルカリ金属、アルカリ土類金属、稀土類金属を含む遷移金属のいずれか一つ以上から構成することができる。
【0018】
また、金属ドーピング層中の金属のモル比率が有機化合物に対して0.1〜10の範囲内であることが好ましく、金属ドーピング層の厚さは、特に制限はないが500Å以上とすることで光の干渉効果を発現させることが可能となる。その層厚には基本的に制限はなく、1μmを超えても何ら差支えはない。
【0019】
また、金属ドーピング層の有機化合物に、ドーピングする金属のイオンに対して配位子としての機能(該金属イオンに配位結合し得る機能)を有する分子を使用すれば、前述の還元反応がより効果的に起こり、且つ安定な状態で存在出来るので特に好適に使用することが出来る。
【0020】
本発明による有機EL素子は、金属ドーピング層として、各エリア内の層厚が互いに異なる分割エリアを設けることができる。このような分割エリアを設ければ、分割エリア毎に発光スペクトルが異なる有機EL素子を得ることができる。分割エリアの層厚は、各分割エリアで特定の発光スペクトルが得られるように制御する。このような分割エリアは、例えばマトリックス状に整列している多数の画素群とすることができる。
【0021】
また、本発明は、複数の有機EL素子群の態様では、対向する陽極電極と陰極電極の間に、有機化合物から構成される少なくとも一層の発光層を有する有機エレクトロルミネッセント素子群において、各有機エレクトロルミネッセント素子はそれぞれ、陰極電極との界面に、バソフェナントロリンもしくはバソクプロインとリチウムがモル比で1:1となるように各々の蒸着速度を調整し、ドナー(電子供与性)ドーパントとして機能する金属でドーピングした有機化合物層を金属ドーピング層として有し、各有機エレクトロルミネッセント素子の金属ドーピング層の層厚は、各有機エレクトロルミネッセント素子が射出する光の発光スペクトルが異なるようにそれぞれ制御されていることを特徴としている。
【0022】
さらに、本発明は、有機EL素子の発光スペクトルの制御方法の態様では、対向する陽極電極と陰極電極の間に、有機化合物から構成される少なくとも一層の発光層を有し、陰極電極の上記発光層側の界面に、バソフェナントロリンもしくはバソクプロインとリチウムがモル比で1:1となるように各々の蒸着速度を調整し、ドナー(電子供与性)ドーパントとして機能する金属でドーピングした有機化合物層を金属ドーピング層として有する有機エレクトロルミネッセント素子において、金属ドーピング層の層厚を変化させることにより、本有機エレクトロルミネッセント素子が射出する光の発光スペクトルを制御することを特徴としている。金属ドーピング層の層厚を変化させ発光スペクトルを変化させた複数の有機エレクトロルミネッセント素子は、層厚に拘わらず略同一の駆動電圧で駆動することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、陰極に接する電子注入層を金属ドーピング層とすることで、素子の駆動電圧を低下させるとともに、発光スペクトルの制御が可能な有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の有機EL素子の積層構造例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の有機EL素子と比較例の輝度−電圧特性を示すグラフ図である。
【図3】本発明の有機EL素子と比較例の輝度−電流密度特性を示すグラフ図である。
【図4】本発明の有機EL素子の発光スペクトルを示すグラフ図である。
【図5】本発明の有機EL素子と比較例の電圧−電流特性を示すグラフ図である。
【図6】本発明の有機EL素子の発光スペクトルを示すグラフ図である。
【図7】カラーディスプレイの画素を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明による有機EL素子の一実施形態を示す模式図である。ガラス基板(透明基板)1上には、順に、陽極電極を構成する透明電極2、正孔輸送性を有する正孔輸送層3、発光層4、金属ドーピング層5および陰極電極6を積層してなっている。これらの要素(層)のうち、ガラス基板(透明基板)1、透明電極2、正孔輸送層3、発光層4、および陰極電極6は周知の要素であり、金属ドーピング層5が本発明で提案した要素(層)である。有機EL素子の具体的な積層構成としては、この他、陽極/発光層/金属ドーピング層/陰極、陽極/正孔輸送層/発光層/金属ドーピング層/陰極、陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/金属ドーピング層/陰極、陽極/正孔注入層/発光層/金属ドーピング層/陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/金属ドーピング層/陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/金属ドーピング層/陰極、などが挙げられるが、本発明による有機EL素子は、金属ドーピング層5を陰極電極6との界面に有するものであればいかなる素子構成であってもよい。
【0026】
有機EL素子では、陰極から基本的に絶縁物である有機化合物層への電子注入過程は、陰極表面での有機化合物の還元、すなわちラジカルアニオン状態の形成である(Phys. Rev. Lett., 14, 229 (1965))。本発明の有機EL素子においては、予め有機化合物の還元剤となりうるドナー(電子供与性)ドーパント物質である金属を陰極に接触する有機化合物層中にドーピングすることにより、陰極電極からの電子注入に際するエネルギー障壁を低下させることができる。金属ドーピング層5は、このようにドナードーパントとして機能する金属をドーピングした有機化合物層である。金属ドーピング層中には、すでにドーパントにより還元された状態(すなわち電子を受容し、電子が注入された状態)の分子が存在するので、電子注入エネルギー障壁が小さく、従来の有機EL素子と比べて駆動電圧を低下できる。しかも陰極には一般に配線材として用いられている安定なAlのような金属を使用できる。この場合、ドナードーパントは有機化合物を還元することのできるLi等のアルカリ金属、Mg等のアルカリ土類金属、稀土類金属を含む遷移金属であれば特に限定はない。特に、仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体例としてLi、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Mg、Sm、 Eu、Gd、Ybなどが挙げられる。
【0027】
金属ドーピング層中のドーパント濃度は、金属ドーピング層中のドナードーパントのモル比率が有機化合物に対して0.1〜10であることが好ましい。0.1未満では、ドーパントにより還元された分子(以下、還元分子)の濃度が低すぎドーピングの効果が小さく、10を超えると、膜中の金属濃度が有機分子濃度をはるかに超え、還元分子の濃度が極端に低下するので、ドーピングの効果も下がる。また、この金属ドーピング層の厚みは、基本的には上限がない。
【0028】
金属ドーピング層5の成膜法は、いかなる薄膜形成法であってもよく、たとえば蒸着法やスパッタ法が使用できる。また、溶液からの塗布で薄膜形成が可能な場合には、スピンコーティング法やディップコーティング法などの溶液からの塗布法が使用できる。この場合、ドーピングされる有機化合物とドーパントを不活性なポリマー中に分散して用いてもよい。
【0029】
発光層、電子輸送層、金属ドーピング層として使用できる有機化合物としては、特に限定はないが、p−テルフェニルやクアテルフェニルなどの多環化合物およびそれらの誘導体、ナフタレン、テトラセン、ピレン、コロネン、クリセン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ナフタセン、フェナントレンなどの縮合多環炭化水素化合物及びそれらの誘導体、フェナントロリン、バソフェナントロリン、バソクプロイン、フェナントリジン、アクリジン、キノリン、キノキサリン、フェナジンなどの縮合複素環化合物およびそれらの誘導体や、フルオロセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、オキシン、アミノキノリン、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、キナクリドン、ルブレン等およびそれらの誘導体などを挙げることができる。
【0030】
また、特開昭63−295695号公報、特開平8−22557号公報、特開平8−81472号公報、特開平5−9470号公報、特開平5−17764号公報に開示されている金属キレート錯体化合物、特に金属キレート化オキサノイド化合物では、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム、ビス[ベンゾ(f)−8−キノリノラト]亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、トリス(8−キノリノラト)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノラト)カルシウムなどの8−キノリノラトあるいはその誘導体を配位子として少なくとも一つ有する金属錯体が好適に使用される。
【0031】
特開平5−202011号公報、特開平7−179394号公報、特開平7−278124号公報、特開平7−228579号公報に開示されているオキサジアゾール類、特開平7−157473号公報に開示されているトリアジン類、特開平6−203963号公報に開示されているスチルベン誘導体およびジスチリルアリーレン誘導体、特開平6−132080号公報や特開平6−88072号公報に開示されているスチリル誘導体、特開平6−100857号公報や特開平6−207170号公報に開示されているジオレフィン誘導体も発光層、電子輸送層、金属ドーピング層として好ましい。
【0032】
さらに、ベンゾオキサゾール系、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系などの蛍光増白剤も使用でき、例えば、特開昭59−194393号公報に開示されているものが挙げられる。その代表例としては、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4'−ビス(5,7−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、4,4'−ビス[5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル]スチルベン、2,5−ビス(5.7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス[5−(α,α−ジメチルベンジル)−2−ベンゾオキサゾリル]チオフェン、2,5−ビス[5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル]−3,4−ジフェニルチオフェン、2,5−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、4,4'−ビス(2−ベンゾオキサゾリル)ビフェニル、5−メチル−2−[2−[4−(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)フェニル]ビニル}ベンゾオキサゾール、2−[2−(4−クロロフェニル)ビニル]ナフト(1,2−d)オキサゾールなどのベンゾオキサゾール系、2,2'−(p−フェニレンジピニレン)−ビスベンゾチアゾールなどのベンゾチアゾール系、)フェニル〕ビニル}ベンゾイミダゾール、2−[2−(4−カルボキシフェニル)ビニル]ベンゾイミダゾールなどのベンゾイミダゾール系などの蛍光増白剤が挙げられる。
【0033】
ジスチリルベンゼン系化合物としては、例えば欧州特許第0373582号明細書に開示されているものを用いることができる。その代表例としては、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−エチルベンゼンなどが挙げられる。
【0034】
また、特開平2−252793号公報に開示されているジスチリルピラジン誘導体も発光層、電子輸送層、金属ドーピング層として用いることができる。その代表例としては、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ナフチル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(4−ビフェニル)ビニル]ピラジン、 2,5−ビス[2−(1−ピレニル)ビニル]ピラジンなどが挙げられる。
【0035】
その他、欧州特許第388768号明細書や特開平3−231970号公報に開示されているジメチリディン誘導体を発光層、電子輸送層、金属ドーピング層の材料として用いることもできる。その代表例としては、1,4−フェニレンジメチリディン、4,4'−フェニレンジメチリディン、2,5−キシリレンジメチリディン、2,6−ナフチレンジメチリディン、 1,4−ビフェニレンジメチリディン、1,4−p−テレフェニレンジメチリディン、9,10−アントラセンジイルジメチリディン、4,4'−(2,2−ジ −t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル、4,4'−(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニルなど、及びこれらの誘導体や、特開平6−49079号公報、特開平6−293778号公報に開示されているシラナミン誘導体、特開平6−279322号公報、特開平6−279323号公報に開示されている多官能スチリル化合物、特開平6−107648号公報や特開平6−92947号公報に開示されているオキサジアゾール誘導体、特開平6−206865号公報に開示されているアントラセン化合物、特開平6−145146号公報に開示されているオキシネイト誘導体、特開平4−96990号公報に開示されているテトラフェニルブタジエン化合物、特開平3−296595号公報に開示されている有機三官能化合物、さらには、特開平2−191694号公報に開示されているクマリン誘導体、特開平2−196885号公報に開示されているペリレン誘導体、特開平2−255789号に開示されているナフタレン誘導体、特開平2−289676号及び特開平2−88689号公報に開示されているフタロペリノン誘導体、特開平2−250292号公報に開示されているスチリルアミン誘導体などが挙げられる。さらに、従来有機EL素子の作製に使用されている公知のものを適宜用いることができる。
【0036】
正孔注入層、正孔輸送層、正孔輸送性発光層として使用されるアリールアミン化合物類としては、特に限定はないが、特開平6−25659号公報、特開平6−203963号公報、特開平6−215874号公報、特開平7−145116号公報、特開平7−224012号公報、特開平7−157473号公報、特開平8−48656号公報、特開平7−126226号公報、特開平7−188130号公報、特開平8−40995号公報、特開平8−40996号公報、特開平8−40997号公報、特開平7−126225号公報、特開平7−101911号公報、特開平7−97355号公報に開示されているアリールアミン化合物類が好ましく、例えば、N,N,N',N'−テトラフェニル−4,4'−ジアミノフェニル、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン、N,N,N',N'−テトラ−p−トリル−4,4'−ジアミノビフェニル、ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン、 N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4'−ジアミノビフェニル、N,N,N',N'−テトラフェニル−4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン、3−メトキシ−4'−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン、N−フェニルカルバゾール、1,1−ビス(4−ジ−p−トリアミノフェニル)−シクロヘキサン、 1,1−ビス(4−ジ−p−トリアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)−フェニルメタン、 N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4'−[4(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン、N,N,N',N'− テトラフェニル−4,4'−ジアミノ−ビフェニルN−フェニルカルバゾール、4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、 4,4''−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]p−ターフェニル、4,4'−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4'−ビス[N−(3−アセナフテニル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、1,5−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ナフタレン、4,4'−ビス[N−(9−アントリル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4''−ビス[N−(1−アントリル)−N−フェニル −アミノ]p−ターフェニル、4,4'−ビス[N−(2−フェナントリル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4'−ビス[N−(8−フルオランテニル)−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4'−ビス[N−(2−ピレニル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4'−ビス[N−(2−ペリレニル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4'−ビス[N−(1−コロネニル)−N− フェニル−アミノ]ビフェニル、2,6−ビス(ジ−p−トリルアミノ)ナフタレン、2,6−ビス[ジ−(1−ナフチル)アミノ]ナフタレン、2,6−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ナフタレン、4.4''−ビス[N,N−ジ(2−ナフチル)アミノ]ターフェニル、4.4'−ビス{N−フェニル−N−[4−(1−ナフチル)フェニル]アミノ}ビフェニル、4,4'−ビス[N−フェニル−N−(2−ピレニル)− アミノ]ビフェニル、2,6−ビス[N,N−ジ(2−ナフチル)アミノ]フルオレン、4,4''−ビス(N,N−ジ−p−トリルアミノ)ターフェニル、ビス(N−1−ナフチル)(N−2−ナフチル)アミンなどがある。さらに、従来有機EL素子の作製に使用されている公知のものを適宜用いることができる。
【0037】
さらに、正孔注入層、正孔輸送層、正孔輸送性発光層として、上述の有機化合物をポリマー中に分散したものや、ポリマー化したものも使用できる。ポリパラフェニレンビニレンやその誘導体などのいわゆるπ共役ポリマー、ポリ(N−ビニルカルバゾール)に代表されるホール輸送性非共役ポリマー、ポリシラン類のシグマ共役ポリマーも用いることができる。
【0038】
ITO電極上に形成する正孔注入層としては、特に限定はないが、銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン類および無金属フタロシアニン類、カーボン膜、ポリアニリンなどの導電性ポリマーが好適に使用できる。さらに、前述のアリールアミン類に酸化剤としてルイス酸を作用させ、ラジカルカチオンを形成させて正孔注入層として用いることもできる。
【0039】
陰極電極には、空気中で安定に使用できる金属であれば限定はないが、特に配線電極として一般に広く使用されているアルミニウムが好ましい。
【0040】
[実施例]
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、有機化合物および金属の蒸着には、真空機工社製VPC−400真空蒸着機を使用し、層厚の測定はスローン社製DekTak3ST触針式段差計を用いた。素子の特性評価には、ケースレー社ソースメータ2400、トプコンBM−8輝度計を使用した。 ITOを陽極、Alを陰極として直流電圧を1V/2秒の割合でステップ状に印加し、電圧上昇1秒後の輝度および電流値を測定した。また、ELスペクトルは浜松ホトニクスPMA−11オプチカルマルチチャンネルアナライザーを使用して定電流駆動し測定した。
【0041】
実施例1
図1の積層構成の有機EL素子に本発明を適用したものである。ガラス基板1上に、陽極透明電極2として、シート抵抗20Ω/□のITO(インジウム−スズ 酸化物、三容真空社製スパッタ蒸着品)がコートされている。その上に正孔輸送性を有する下記式(1):
【化1】

で表されるαNPDを10−6torr下で、2Å/秒の蒸着速度で500Åの厚さに成膜し、正孔輸送層3を形成した。次に、前記正孔輸送層3の上に、発光層4として緑色発光を有する下記式(2):
【化2】

で表されるトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体層(以下「Alq」という)4を正孔輸送層3と同じ条件で400Åの厚さに真空蒸着して形成した。次に、前記発光層4の上に金属ドーピング層5として、下記式(3):
【化3】

で示されるバソフェナントロリンとLiをモル比で1:1となるように各々の蒸着速度を調整して300Å成膜した。最後に、前記金属ドーピング層5の上に陰極電極6としてAlを蒸着速度10Å/秒で1000Å蒸着した。発光領域は縦0.5cm、横0.5cmの正方形状とした。前記の有機EL素子において、陽極電極であるITOと陰極電極であるAl6との間に、直流電圧を印加し、発光層Alq4からの緑色発光の輝度を測定した。図2、図3中の丸プロットは輝度−電圧特性、輝度−電流密度特性を示すもので、最高28000cd/m2の高輝度を11Vにおいて示した。このときの電流密度は600mA/cm2あった。また、1000cd/m2の輝度は7Vで得られた。また発光スペクトルを観察するとAlqの蛍光スペクトルと一致した(図4の実線)。
【0042】
比較例1
実施例1と同じく、ITO上にまず正孔輸送層としてαNPDを500Åの厚さに成膜し、その上に、発光層としてAlqを正孔輸送層と同じ条件で700Åの厚さに真空蒸着して形成した。そして、Alqの上から陰極としてAlを1000Å蒸着した。図2、図3の三角プロットはこの素子の輝度-電圧特性、輝度-電流密度特性を示すものであり、15Vで最高4700cd/m2の輝度しか与えなかった。また、1000cd/m2の輝度を得るのに、13Vを印加する必要があった。この実験から駆動電圧を下げるのに金属ドーピング層5が有効であることがわかる。
【0043】
実施例2
実施例1と同じく、ITO上に、正孔輸送層3としてαNPDを500Å、発光層4としてAlqを400Å真空蒸着した後、バソフェナントロリンとLiをモル比で1:1となるように各々の蒸着速度を調整して1900Å、4800Å、10000Å(1μm)の3種類の層厚の金属ドーピング層をそれぞれ成膜した。その上から、該3種類の素子に陰極電極6として、Alを1000Å蒸着し素子を作製した。これらの素子の電圧−電流特性を図5に示した。図中、A、B、Cは、金属ドーピング層の層厚が、それぞれ1900Å、4800Å、10000Å(1μm)の素子特性を示すプロットである。
【0044】
この実験から金属ドーピング層5の有機物に、ドーピングする金属のイオンに対して配位子としての機能を有するバソフェナントロリンを使用した態様では、層厚を厚くしても、素子の駆動電圧をまったく上昇させないことが分かった。また発光スペクトルを観察すると陰極での反射光との干渉効果によってAlqからの発光スペクトルが変化して、色純度や色調を制御できることが分かった。図4の点線は金属ドーピング層1900Åの時の発光スペクトルを示し、300Å時と比較して色純度が向上している。また図6のスペクトルの点線と実線はそれぞれ、金属ドーピング層の層厚が4800Åと10000Åの時のスペクトルを示しており、陰極での反射光との干渉効果によって、色調を大きく変化させることが可能であることが分かった。
【0045】
実施例3
実施例2と同じく、ITO上に、正孔輸送層3としてαNPDを500Å、発光層4としてAlqを400Å真空蒸着した後、下記式(4):
【化4】


で示されるバソクプロインとLiをモル比で1:1となるように各々の蒸着速度を調整して、1900Å、4800Å、10000Å(1μm)の3種類の層厚の金属ドーピング層をそれぞれ成膜した。その上から、該3種類の素子に陰極電極6として、Alを1000Å蒸着し素子を作製した。これらの素子の電圧−電流特性を図5のD、E、Fに示した。この実験から、ドーピングする金属のイオンに対して配位子としての機能を有するバソクプロインを用いて該金属ドーピング層を形成し、その層厚を厚くしても、バソフェナントロリンを使用した実施例2の場合と同様に素子の駆動電圧をまったく上昇させないことが分かった。また発光スペクトルを観察すると実施例2の場合と同様に陰極での反射光との干渉効果によってAlqからの発光スペクトルが変化して、色純度や色調を制御できることが分かった。
【0046】
比較例1
実施例2、実施例3と同じく、ITO上に、正孔輸送層3としてαNPDを500Å、発光層4としてAlqを400Å真空蒸着した後、AlqとLiをモル比で1:1となるように各々の蒸着速度を調整して300Å、800Åの2種類の層厚の金属ドーピング層を、それぞれ成膜した。その上から、該2種類の素子に陰極電極6として、Alを1000Å蒸着し素子を作製した。これらの素子の電圧−電流特性を図5のG、Hに示した。金属ドーピング層中の有機物をAlqにした場合はバソフェナントロリンやバソクプロインと比較して、該層厚を厚くしていくと徐々に駆動電圧が高電圧にシフトしていき、層厚の電圧依存性が観察された。
【0047】
このように金属ドーピング層中の有機物として、バソフェナントロリンやバソクプロインのような、ドーピングする金属のイオンに対して配位子として機能する化合物を使用すると、効果的に有機物の還元が起こりラジカルアニオンを生成できるので、駆動電圧の層厚依存性が消失し、発光スペクトルの制御を自由に行えることが分かった。
【0048】
以上のように、本発明の有機EL素子によると、金属ドーピング層の層厚を変化させることにより、素子が射出する光の発光スペクトルの制御が可能である。従って、本発明の有機EL素子は、金属ドーピング層に、各エリア内の層厚が異なる分割エリアを設定することにより、分割エリア毎に発光色が異なる素子が得られる。さらに、分割エリアをマトリックス状に配置した多数の画素群とし、画素毎に層厚を異ならせて発光色を変化させることによりカラー表示が可能となる。例えば、図7に示すように、R(赤)、G(緑)、B(青)を発光するようにそれぞれの層厚を設定した3つの画素11、12、13を縦横に配列させる。そして、カラーCRTディスプレイやカラー液晶ディスプレイ等で用いられている周知のカラー表示の手法によってこれらの画素に選択的に駆動電圧を印加することにより、カラー画像やカラー映像を表示させることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 透明基板
2 陽極透明電極(ITO)
3 正孔輸送層
4 発光層
5 金属ドーピング層(電子注入層)
6 陰極電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する陽極電極と陰極電極の間に、有機化合物から構成される少なくとも一層の発光層を有する有機エレクトロルミネッセント素子において、
上記陰極電極との界面に、バソフェナントロリンもしくはバソクプロインとリチウムがモル比で1:1となるように各々の蒸着速度を調整し、ドナードーパントとして機能する金属でドーピングした有機化合物層を金属ドーピング層として有し、
この金属ドーピング層の層厚によって、本有機エレクトロルミネッセント素子が射出する光の発光スペクトルが制御されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項2】
請求項1記載の有機エレクトロルミネッセント素子において、上記金属ドーピング層中の金属は、仕事関数が4.2eV以下のアルカリ金属、アルカリ土類金属及び稀土類金属を含む遷移金属のうちから選択された1種以上の金属からなる有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項3】
請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセント素子において、上記金属ドーピング層中の金属のモル比率が有機化合物に対して0.1〜10である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセント素子において、上記金属ドーピング層の層厚が500Å以上である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセント素子において、上記金属ドーピング層中の有機化合物が上記金属のイオンに対して配位子としての機能を有する有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセント素子において、金属ドーピング層は、各エリア内の層厚が互いに異なる分割エリアを有している有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項7】
請求項6記載の有機エレクトロルミネッセント素子において、上記分割エリアは、マトリックス状に整列している多数の画素群である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項8】
請求項6または7記載の有機エレクトロルミネッセント素子において、上記分割エリアの層厚は、各分割エリアで特定の発光スペクトルが得られるように制御されている有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項9】
対向する陽極電極と陰極電極の間に、有機化合物から構成される少なくとも一層の発光層を有する有機エレクトロルミネッセント素子群において、各有機エレクトロルミネッセント素子はそれぞれ、上記陰極電極との界面に、バソフェナントロリンもしくはバソクプロインとリチウムがモル比で1:1となるように各々の蒸着速度を調整し、ドナードーパントとして機能する金属でドーピングした有機化合物層を金属ドーピング層として有し、各有機エレクトロルミネッセント素子の金属ドーピング層の層厚は、各有機エレクトロルミネッセント素子が射出する光の発光スペクトルが異なるようにそれぞれ制御されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子群。
【請求項10】
請求項9記載の有機エレクトロルミネッセント素子群において、上記金属ドーピング層中の金属は、仕事関数が4.2eV以下のアルカリ金属、アルカリ土類金属及び稀土類金属を含む遷移金属のうちから選択された1種以上の金属からなる有機エレクトロルミネッセント素子群。
【請求項11】
請求項9または10記載の有機エレクトロルミネッセント素子群において、上記金属ドーピング層中の金属のモル比率が有機化合物に対して0.1〜10である有機エレクトロルミネッセンス素子群。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセント素子群において、上記金属ドーピング層の層厚が500Å以上である有機エレクトロルミネッセント素子群。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセント素子群において、上記金属ドーピング層中の有機化合物が上記金属のイオンに対して配位子としての機能を有する有機エレクトロルミネッセント素子群。
【請求項14】
対向する陽極電極と陰極電極の間に、有機化合物から構成される少なくとも一層の発光層を有し、上記陰極電極の上記発光層側の界面に、バソフェナントロリンもしくはバソクプロインとリチウムがモル比で1:1となるように各々の蒸着速度を調整し、ドナードーパントとして機能する金属でドーピングした有機化合物層を金属ドーピング層として有する有機エレクトロルミネッセント素子において、上記金属ドーピング層の層厚を変化させることにより、本有機エレクトロルミネッセント素子が射出する光の発光スペクトルを制御することを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子の発光スペクトルの制御方法。
【請求項15】
請求項14記載の制御方法において、金属ドーピング層の層厚を変化させ発光スペクトルを変化させた複数の有機エレクトロルミネッセント素子を、上記層厚に拘わらず略同一の駆動電圧で駆動する有機エレクトロルミネッセント素子の発光スペクトルの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−45415(P2010−45415A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267462(P2009−267462)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【分割の表示】特願平11−276933の分割
【原出願日】平成11年9月29日(1999.9.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1999年9月1日 社団法人応用物理学会発行の「1999年(平成11年)秋季第60回応用物理学会学術講演会講演予稿集 第3分冊」に発表
【出願人】(501231510)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】