説明

有機エレクトロルミネッセント素子

【課題】長期間にわたって安定な発光特性を維持することができる有機エレクトロルミネッセント素子を提供する。
【解決手段】少なくとも、陽極2、電荷発生層3、発光層4および陰極5をこの順に備えている有機エレクトロルミネッセント素子であって、電荷発生層3は、陽極側に電子輸送性材料を含む領域3aを有し、陰極側に正孔輸送性材料および該正孔輸送性材料との酸化還元反応により電荷移動錯体を形成し得る材料が積層または混合されてなる領域3bを有し、かつ、前記正孔輸送性材料がラジカルカチオン状態にあるような層構造を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセント素子(以下、有機EL素子という)の長寿命化に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、有機化合物を発光材料とする自己発光型素子であり、高速度での発光が可能であるため、動画の表示に好適で、素子構造が簡単でディスプレイパネルの薄型化が可能である等の特性を有している。このような優れた特性を有していることから、有機EL素子は、携帯電話や車載用ディスプレイとして、日常生活において普及しつつある。
【0003】
しかしながら、この有機EL素子は、無機材料からなるEL素子に比べて、駆動寿命が短いという課題を有していた。素子の駆動を不安定にする具体的な現象としては、発光輝度の低下、定電流駆動時の電圧上昇、非発光部分、いわゆるダークスポットの発生等が挙げられる。
これらの現象は、種々の原因によるが、これらのうち、有機EL素子の構成材料に起因するものとしては、素子駆動時の発熱による有機非晶質膜の結晶化または凝集等による有機層の薄膜形状の劣化、電荷輸送材料の電荷輸送に伴う酸化・還元の繰り返しによる化学変化、発光層中の発光材料の劣化、極微量の水分や酸素による劣化等が挙げられる。また、電極界面では、電極を形成する金属イオン等の有機層内へのマイグレーションによる消光、電極/有機層界面の接触異常等が挙げられる。さらに、発光層で再結合せずに反対電極に通り抜けてしまう電荷による酸化、還元による劣化等も挙げられる。
【0004】
また、駆動電圧が高い場合には、好ましくない電気化学反応が有機層内で生じたり、電荷バランスが崩れたりすることにより、駆動寿命が短くなりやすい。このような駆動電圧の上昇を抑制するためには、特に、陽極と有機層のコンタクトを向上させることが重要である。
このため、陽極上に正孔注入層を設けることにより、駆動電圧を低下させることが検討されている。
【0005】
正孔注入層に用いられる材料には、均一な薄膜を形成することができ、熱的に安定であり、イオン化ポテンシャルが低く、陽極からの正孔注入が容易なこと、正孔移動度が大きいこと等が条件として要求され、具体的には、ポルフィリン誘導体やフタロシアニン化合物、スターバースト型芳香族トリアミン、スパッタ・カーボン膜や、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物およびモリブデン酸化物等の金属酸化物等が報告されている。
【0006】
また、陽極から有機物層への正孔注入特性を向上させるために、例えば、特許文献1,2には、正孔注入層に電子受容性ドーパントやルイス酸をドープする手法が記載されている。
また、特許文献3には、正孔注入層を、LUMO(最低空分子軌道)レベルの深い電子引き抜き層と正孔輸送性材料層の2層積層構造とし、電子引き抜き層が、隣接する正孔輸送性材料層から電子を引き抜き、正孔輸送性材料層に正孔を発生させる手法が記載されている。
さらに、特許文献4には、正孔輸送の促進のために、仕事関数が約4.5eV以下の物質を含む陽極上に、ヘキサアザトリフェニレン系化合物層を形成することが開示されている。
【特許文献1】特開平11−251067号公報
【特許文献2】特開2001−244079号公報
【特許文献3】特開2006−49393号公報
【特許文献4】特開2006−503443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載されているような電子受容性ドーパント、ルイス酸および電子引き抜き層材料等は、隣接する正孔輸送性材料のHOMO(最高占有分子軌道)から電子を引き抜くため、いずれもLUMOレベルが深い。このため、その電子受容性の高さゆえに反応性に富み、取り扱いが困難であり、蒸着時にも極微量が不純物として他の層に混入したり、トラップ準位を形成して著しく素子性能を低下させたり、また、反応性に富んでいるため、合成も容易ではないという課題を有していた。
【0008】
また、上記特許文献1〜4に記載されているような手法では、正孔注入特性を向上させることができても、電子受容性が高い材料で層形成するため、素子の安定性の点で問題があり、駆動寿命は不十分であった。
【0009】
このように、有機EL素子の駆動寿命が短く、安定性が低いことは、ファクシミリ、複写機、液晶ディスプレイのバックライト、照明等の光源としては大きな問題であり、また、フルカラーフラットパネル・ディスプレイ等の表示素子としても望ましくない。
【0010】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、長期間にわたって安定な発光特性を維持することができる有機EL素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る有機EL素子は、少なくとも、陽極、電荷発生層、発光層および陰極をこの順に備えている有機エレクトロルミネッセント素子であって、前記電荷発生層は、陽極側に電子輸送性材料を含む領域を有し、陰極側に正孔輸送性材料および該正孔輸送性材料との酸化還元反応により電荷移動錯体を形成し得る材料が積層または混合されてなる領域を有し、かつ、前記正孔輸送性材料がラジカルカチオン状態にあることを特徴とする。
このように、陽極と発光層の間に特定の電荷発生層を形成することにより、駆動寿命の大幅な長寿命化を図ることができる。
前記有機EL素子においては、電子輸送性材料を含む領域が陽極と接していることが好ましい。
【0012】
また、前記陽極と電荷発生層の間に、さらに、電子輸送性材料を含む領域を備えていることが好ましく、この場合は、該電子輸送性材料を含む領域が、陽極と接していることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る他の態様の有機EL素子は、上記のような有機EL素子における発光層と陰極の間に、さらに、少なくとも電荷発生層および発光層を含む組をこの順に少なくとも1組備えていることを特徴とする。
このように、本発明は、電荷発生層および発光層からなる組を複数組有する、いわゆるマルチフォトンエミッション構造にも、好適に適用することができる。
この場合、前記組を構成する電荷発生層の少なくとも1層は、陽極側に電子輸送性材料を含む領域を有し、陰極側に正孔輸送性材料および該正孔輸送性材料との酸化還元反応により電荷移動錯体を形成し得る材料が積層または混合されてなる領域を有し、かつ、前記正孔輸送性材料がラジカルカチオン状態にあることが好ましい。
【0014】
上記有機EL素子においては、前記正孔輸送性材料との酸化還元反応により電荷移動錯体を形成し得る材料が、金属酸化物であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上述したとおり、本発明によれば、長時間駆動させても輝度低下の少ない、長寿命で安定した有機EL素子が得られる。
よって、本発明に係る有機EL素子は、長期間の安定した点灯が要求される用途である、OAコンピュータ用や壁掛けテレビ用のフラットパネル・ディスプレイ、また、照明機器、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源等の面発光体としての特徴を生かした光源、表示板、標識灯への応用が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について、図面を参照しながら、より詳細に説明する。
図1に、本発明に係る有機EL素子の構造の一例を示す。図1に示す有機EL素子は、基板1上に、陽極2、第1の電荷発生層3、第1の発光層4および陰極5をこの順に備えている有機EL素子である。すなわち、電荷発生層と発光層の組が1組である有機EL素子である。
そして、前記第1の電荷発生層3は、陽極側が第1の電子輸送性材料を含む領域3aであり、陰極側が第1の正孔輸送性材料および該第1の正孔輸送性材料との酸化還元反応により電荷移動錯体を形成し得る材料が積層または混合されてなる領域3bであり、かつ、前記第1の正孔輸送性材料がラジカルカチオン状態にあるものである。
【0017】
従来の陽極と発光層との間に電荷発生層がない場合、すなわち、陽極上に正孔輸送層または正孔注入層が存在する場合、これらの正孔輸送層および正孔注入層は、一般に、還元に対して不安定であるため、発光層で再結合せずに陽極へ通り抜けてしまう電子による還元劣化により、有機EL素子は劣化しやすい。
これに対して、本発明においては、陽極と発光層との間に特定の電荷発生層を形成することにより、発光層で再結合できずに通り抜けた少量の電子は、前記電荷発生層を介して、速やかに陽極に運ばれ、かつ、該電荷発生層は、陽極側が電子輸送性材料を含む領域であるため、還元に対して安定であり、これにより、有機EL素子の長寿命化を図ることができると考えられる。
【0018】
(基板)
基板は、有機EL素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特に、ガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。
合成樹脂基板を使用する場合には、ガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により、有機EL素子が劣化するおそれがある。このため、ガスバリア性を確保するための好ましい手法の一つとして、合成樹脂基板の少なくとも片面に、緻密なシリコン酸化膜等を設けておいてもよい。
【0019】
(陽極)
前記基板上に設けられる陽極は、第1の正孔輸送性材料への正孔注入の役割を果たすものである。この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウムおよび/またはスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック等により構成される。
陽極の形成は、通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われる。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子等の場合には、適当なバインダ樹脂溶液に分散し、基板上に塗布することにより、陽極を形成することもできる。また、異なる物質を積層して形成することも可能である。
【0020】
陽極の厚みは、必要とされる透明性により異なる。透明性が求められる場合は、可視光の透過率を、通常、60%以上とするが、好ましくは、80%以上である。この場合の厚みは、通常、5〜1000nm、好ましくは、10〜500nm程度である。
一方、不透明でもよい場合は、陽極は、基板と同一の材質であってもよい。さらに、陽極の上に、異なる導電材料を積層することも可能である。
【0021】
(第1の電荷発生層)
前記陽極上に形成される第1の電荷発生層は、陽極側が第1の電子輸送性材料を含む領域であり、陰極側が第1の正孔輸送性材料および該第1の正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し得る材料が積層または混合されてなる領域であり、前記第1の正孔輸送性材料がラジカルカチオン状態にあるものである。
このような電荷発生層としては、例えば、特開2005−166637号公報に記載されている、接続層または陰極形成時のダメージ低減目的等で形成されるホール電流−電子電流変換層を適用することができる。
前記第1の電荷発生層全体の膜厚は、通常、1nm以上200nm以下であり、好ましくは、5nm以上100nm以下である。
また、第1の電荷発生層は、陽極に接していることが好ましい。
【0022】
(第1の電子輸送性材料を含む領域)
第1の電荷発生層の陽極側の領域には、第1の電子輸送性材料が含まれている。第1の電子輸送性材料としては、電子親和力が大きく、還元に対して安定であり、電子移動度が大きく、製造時や使用時に、トラップとなる不純物が発生しにくい化合物であることが要求される。したがって、有機EL素子において従来から使用されている、陰極から注入された電子を輸送するための材料を用いることができる。
【0023】
具体的には、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ペリレン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フルオレノン誘導体、アントロン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機金属錯体、ピリジン誘導体、ピロロピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ナフチリジン誘導体、シロール誘導体等が挙げられ、これらのうち、特に、オキサジアゾール誘導体、キノリン誘導体、有機金属錯体、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、ピロロピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ナフチリジン誘導体等が好ましい。
【0024】
下記(化1)〜(化6)に、より好ましい化合物群を示すが、本発明に係る第1の電子輸送性材料は、これらに限定されるものではない。特に、(化1)で示される群の中から選ばれた化合物が好ましい。











【0025】
【化1】





















【0026】
【化2】





















【0027】
【化3】







【0028】
【化4】









【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

【0031】
第1の電子輸送性材料を含む領域には、これらの電子輸送性能を有する材料が第1の電子輸送性材料として1種類含まれていてもよく、あるいはまた、2種類以上含まれていてもよい。
さらに、第1の電子輸送性材料を含む領域は、特開2005−166637号公報に記載されているような、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオンおよび一部の遷移金属イオンに代表される、仕事関数が4.0eV以下の低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物(以下、「低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物」と略記する)と、有機金属錯体化合物中の金属イオンを真空中で金属に還元し得る熱還元性金属(以下、「熱還元性金属」と略記する)との積層体または共蒸着した混合層を含むものであってもよい。
低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、下記(化7)で表されるモノ(8−キノリノラト)リチウム錯体(以下、Liqと略記する)が挙げられる。
また、熱還元性金属としては、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、チタンおよびタングステンのうちのいずれか1種を含むことが好ましい。
【0032】
【化7】

【0033】
具体的には、第1の電子輸送性材料を含む領域は、図9〜12に示すような積層体または混合層であることが好ましい。
図9に示す第1の電子輸送性材料を含む領域3aは、第1の電子輸送性材料(A)を含む層3a‐1、低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物(B)を含む層3a−2、熱還元性金属(C)3a‐3の順に形成された積層体である。
また、図10に示す第1の電子輸送性材料を含む領域3aは、第1の電子輸送性材料(A)を含む層3a‐1、低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物と、熱還元性金属(B+C)を含む混合層3a‐4が順に形成された積層体である。
また、図11に示す第1の電子輸送性材料を含む領域3aは、第1の電子輸送性材料と、低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物(A+B)を含む混合層3a‐5、熱還元性金属(C)3a‐3の順に形成された積層体である。
さらに、図12に示す第1の電子輸送性材料を含む領域3aは、第1の電子輸送性材料と、低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物と、熱還元性金属(A+B+C)を含む混合層である。
【0034】
なお、図9〜12においては、実際には層としては存在しないと考えられる熱還元性金属3a‐3も、便宜上、形成順に層として図示した。また、図9〜12に示す各層は、積層体として図示されているものであっても、必ずしも界面が明確に存在する必要はなく、上の層と下の層が界面近傍で混合していてもよく、また、濃度勾配をもって下の層から上の層へ材料構成が連続的に変化しているものであってもよい。
【0035】
第1の電子輸送性材料を含む領域3aの膜厚は、通常、0.1nm以上100nm以下であり、好ましくは、1nm以上50nm以下である。
また、図9,10に示すように、第1の電子輸送性材料を含む領域3aが、第1の電子輸送性材料(A)を含む層3a‐1の上に、低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物(B)を含む層3a‐2、または、低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物と、熱還元性金属(B+C)を含む混合層3a‐4が積層されている場合、第1の電子輸送性材料(A)を含む層3a‐1の膜厚は、通常、1nm以上100nm以下であり、好ましくは、2nm以上50nm以下である。
また、低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物(B)を含む層3a‐2、または、低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物と、熱還元性金属(B+C)を含む混合層3a‐4の膜厚は、通常、0.1nm以上100nm以下であり、好ましくは、1nm以上50nm以下である。
また、熱還元性金属(C)33は、特開2005−123094号公報、特開2005−166637号公報に記載されているように、金属層として存在してはいないため、図9に示すように、低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物(B)を含む層3a‐2に積層する場合は、例えば、アルミニウムであれば、蒸着膜厚として1nm以上2nm以下程度であることが好ましく、また、図10に示すように、低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物(B)と混合する場合は、透明性を損ねない範囲、すなわち、発光層から発光する光の透過率について実用上問題のない範囲で、モル比1:10〜10:1の範囲内であることが好ましい。
【0036】
(第1の正孔輸送性材料および該第1の正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し得る材料が積層または混合されてなる領域)
第1の正孔輸送性材料および該第1の正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し得る材料が積層または混合されてなる領域3bであって、前記第1の正孔輸送性材料がラジカルカチオン状態にあるもの(以下、「第1の正孔輸送性材料を含む領域」と略記する)における第1の正孔輸送性材料には、酸化に対して安定であり、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、製造時や使用時にトラップとなる不純物が発生しにくいことが要求され、従来から有機EL素子に使用されている既知の材料を用いることができる。
ここで、該第1の正孔輸送性材料は、該第1の正孔輸送性材料と電荷移動錯体を形成し得る材料との間で電子移動による酸化還元反応により酸化され、ラジカルカチオン状態となる。
【0037】
正孔輸送性材料の例としては、芳香族アミン化合物であり、下記(化8)に示す一般式で表される芳香族アミン化合物が好ましい。
【0038】
【化8】

(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に置換基を有する芳香族炭化水素基を表す。)
【0039】
前記芳香族アミン化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、特開平6−25659号公報、特開平6−203963号公報、特開平6−215874号公報、特開平7−145116号公報、特開平7−224012号公報、特開平7−157473号公報、特開平8−48656号公報、特開平7−126226号公報、特開平7−188130号公報、特開平8−40995号公報、特開平8−40996号公報、特開平8−40997号公報、特開平7−126225号公報、特開平7−101911号公報、特開平7−97355号公報に開示されている芳香族アミン化合物類が好ましい。具体的には、N、N、N’、N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノフェニル、N、N’−ジフェニル−N、N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン、N、N、N’、N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオ−ドリフェニル、4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン、3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン、N−フェニルカルバゾ−ル、1,1−ビス(4−ジ−p−トリアミノフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)−フェニルメタン、N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[4(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノ−ビフェニルN−フェニルカルバゾ−ル、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4’’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]p−タ−フェニル、4,4’−ビス[N−(3−アセナフテニル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、1,5−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ナフタレン、4,4’−ビス[N−(9−アントリル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4’’−ビス[N−(1−アントリル)−N−フェニル−アミノ]p−タ−フェニル、4,4’−ビス[N−(2−フェナントリル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4’−ビス[N−(8−フルオランテニル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4’−ビス[N−(2−ピレニル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4’−ビス[N−(2−ペリレニル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4’−ビス[N−(1−コロネニル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、2,6−ビス(ジ−p−トリルアミノ)ナフタレン、2,6−ビス[ジ−(1−ナフチル)アミノ]ナフタレン、2,6−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ナフタレン、4.4’’−ビス[N,N−ジ(2−ナフチル)アミノ]タ−フェニル、4.4’−ビス{N−フェニル−N−[4−(1−ナフチル)フェニル]アミノ}ビフェニル、4,4’−ビス[N−フェニル−N−(2−ピレニル)−アミノ]ビフェニル、2,6−ビス[N,N−ジ(2−ナフチル)アミノ]フルオレン、4,4’’−ビス(N,N−ジ−p−トリルアミノ)タ−フェニル、ビス(N−1−ナフチル)(N−2−ナフチル)アミン、下記(化9)で表される4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、下記(化10)で表わされる4,4’−ビス[N−(9−フェナントリル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(PPD)、下記(化11)で表わされるスピロ−(spiro−)NPB、下記(化12)で表わされるスピロ−(spiro−)TAD、下記(化13)で表わされる2−TNATA等が挙げられる。
これらの芳香族アミン化合物の中でも、素子の耐熱性の観点から、ガラス転移点が90℃以上であるものがより好ましく、特に、α−NPD、PPD、(spiro−)NPB、(spiro−)TAD、2−TNATAは、好適な化合物である。
【0040】
【化9】

【0041】
【化10】


【0042】
【化11】

【0043】
【化12】

【0044】
【化13】

【0045】
また、前記正孔輸送性材料は、ポルフィリン化合物、フタロシアニン化合物、キナクリドン化合物、インダンスレン化合物、または、これらの誘導体であってもよい。
さらにまた、従来から有機EL素子に使用されている既知の材料を適宜用いることもできる。
第1の正孔輸送性材料を含む領域には、これらの正孔輸送性材料が1種類含まれていてもよく、あるいはまた、2種類以上含まれていてもよい。
【0046】
また、前記正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し得る材料は、無機材料であっても、有機材料であってもよい。
前記無機材料としては、塩化第二鉄、臭化第二鉄等の鉄ハロゲン化物や、アルミニウムハロゲン化物、ガリウムハロゲン化物、インジウムハロゲン化物、アンチモンハロゲン化物またはヒ素ハロゲン化物等の金属ハロゲン化物、また、五酸化バナジウム(V25)、三酸化モリブデン(MoO3)、七酸化レニウム(Re27)、三酸化タングステン(WO3)等の金属酸化物が挙げられる(特開2005−166637号公報参照)。
一方、前記有機材料としては、フッ素を置換基として有する化合物、シアノ基を置換基として有する化合物が好ましく、下記(化14)で示されるテトラフルオロ−テトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)等のフッ素およびシアノ基を置換基として有する化合物がより好ましい。また、ホウ素原子を有している化合物も好ましく、下記(化15)で表されるようなフッ素置換基とホウ素原子を有している化合物がより好ましい(特開2005−166637号公報参照)。
【0047】
【化14】

【0048】
【化15】

【0049】
本発明においては、上記に列挙した正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し得る材料の中でも、特に、金属酸化物が好ましく、五酸化バナジウム(V25)、三酸化モリブデン(MoO3)がより好ましい。
第1の正孔輸送性材料を含む領域には、正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し得るこれらの材料が1種類含まれていてもよく、あるいはまた、2種類以上含まれていてもよい。
【0050】
具体的には、第1の正孔輸送性材料を含む領域は、図13〜15に示すような積層体または混合層であることが好ましい。
図13に示す第1の正孔輸送性材料を含む領域は、第1の正孔輸送性材料と、該第1の正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し得る材料(D+E)を含む混合層37である。
また、図14に示す第1の正孔輸送性材料を含む領域は、陽極側から、第1の正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し得る材料(E)を含む層3b‐2、第1の正孔輸送性材料と、第1の正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し得る材料(D+E)を含む混合層3b‐1の順に積層された積層体である。
また、図15に示す第1の正孔輸送性材料を含む領域は、陽極側から、第1の正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し得る材料(E)を含む層3b‐2、第1の正孔輸送性材料(D)を含む層3b‐3の順に積層された積層体である。
【0051】
なお、図13〜15で示される各層は、積層体として図示されているものであっても、必ずしも界面が明確に存在する必要はなく、上の層と下の層が界面近傍で混合していてもよく、また、濃度勾配をもって下の層から上の層へ材料構成が連続的に変化しているものであってもよい。
【0052】
また、図13,15に示した第1の正孔輸送性材料と、第1の正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し得る材料(D+E)を含む混合層3b‐1は、前記第1の発光層への正孔輸送層としても機能する。
これらの層において、電荷発生層の一部として機能している厚みと、正孔輸送層として機能している厚みとを必ずしも明確に区分できるものではないが、電荷発生層の一部として機能する膜厚は、通常、1nm以上100nm以下であり、好ましくは、5nm以上50nm以下である。
【0053】
同様に、図15に示した第1の正孔輸送性材料(D)を含む層3b‐3も、前記第1の発光層への正孔輸送層としても機能する。
この場合も、電荷発生層の一部として機能している厚みと、正孔輸送層として機能している厚みとを必ずしも明確に区分できるものではないが、電荷発生層の一部として機能する膜厚は、通常、0.1nm以上100nm以下であり、好ましくは、1nm以上50nm以下である。
【0054】
また、図14,15に示した積層体において、第1の正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し得る材料(E)を含む層3b‐2の膜厚は、通常、0.1nm以上100nm以下であり、好ましくは、1nm以上50nm以下である。
【0055】
また、図13に示すように、第1の正孔輸送性材料を含む領域が、第1の正孔輸送性材料と、該第1の正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し得る材料(D+E)を含む混合層である場合、その組成は、第1の正孔輸送性材料1モルに対して、該第1の正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し、通常、0.01モル以上100モル以下であり、好ましくは、0.1モル以上10モル以下である。
【0056】
(発光層)
本発明に係る有機EL素子は、第1の電荷発生層と陰極の間に発光層を有する。
発光層は、1層でもよく、あるいはまた、2層以上の積層体であってもよい。2層を積層する例としては、例えば、黄色またはオレンジ色の発光層と、青の発光層を積層することにより、白色発光が得られる。
発光層全体の膜厚は、通常、1nm以上200nm以下であり、好ましくは、20nm以上100nm以下である。
【0057】
発光層は、電界を与えられた電極間において、陰極から注入された電子と、第1の電荷発生層から注入された正孔を効率よく再結合し、かつ、再結合により効率よく発光する材料により構成される。このような条件を満たし、蛍光を示す発光層を形成する化合物としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の錯体化合物、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの錯体化合物、ビススチリルベンゼン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾールの錯体化合物、シロール誘導体等が挙げられる。また、上述した正孔輸送性材料のうち、蛍光性を有する芳香族アミン系化合物も発光層構成材料として用いることができる。
【0058】
さらに、素子の発光効率を向上させるとともに、発光色を変える目的で、上記のような発光層材料をホスト材料とし、これに対して、蛍光色素をドープすることも有効である。例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の錯体化合物をホスト材料として、ルブレンに代表されるナフタセン誘導体、キナクリドン誘導体、ペリレン等の縮合多環芳香族環等を、ホスト材料に対して0.1〜10重量%ドープすることにより、素子の発光特性、特に、駆動安定性を大きく向上させることができる。
【0059】
ドープ用色素としては、クマリン以外にも各種の蛍光色素を用いることができる。例えば、青色発光を与える蛍光色素としては、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリンおよびそれらの誘導体等が挙げられる。緑色蛍光色素としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体等が挙げられる。黄色蛍光色素としては、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。赤色蛍光色素としては、DCM系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。これら以外にも、ホスト材料に応じて、文献(「レーザー研究」,1980年,第8巻,p.694,803,958;同、1981年、第9巻,p.85)に列挙されている蛍光色素等が、発光層用のドープ用色素として用いることができる。
【0060】
また、前記発光層は、燐光性ドーパント(以下、燐光色素という)とホスト材料から、燐光発光層として形成することもできる。
燐光色素としては、例えば、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)等のポルフィリン錯体、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム等の有機イリジウム錯体、ビス(2−チエニルピリジン)白金等の有機白金錯体、ビス(2−(2’−ベンゾチエニル)−ピリジナト)イリジウム(アセチルアセトナト)等の混合配位子有機金属錯体等が挙げられる。
燐光発光層におけるホスト材料としては、例えば、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル等のカルバゾール誘導体、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム、2,2’,2”−(1,3,5−ベンゼントリル)トリス[1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール]、ポリビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0061】
次に、本発明に係る有機EL素子の他の態様として、図2に、図1に示した有機EL素子の陽極2と第1の電荷発生層3の間に、さらに、電子輸送性材料を含む層6が形成されているものを示す。
前記第1の電荷発生層3で発生した電子を安定に陽極2へ輸送するために、上記のように、電子輸送性材料を含む層6が形成されていてもよい。
【0062】
電子輸送性材料を含む層には、第1の電荷発生層の陽極側に形成される第1の電子輸送性材料を含む層に用いられるのと同様の電子輸送性材料を用いることができる。
第1の電子輸送性材料と同じ材料であっても、異なる材料であってもよいが、同じである方が、電子輸送におけるLUMO(最低空分子軌道)の障壁がないため好ましい。また、異なる材料でも、電子輸送性材料を含む層6を構成する材料のLUMOの絶対値が、第1の電子輸送性材料のLUMOの絶対値より大きい場合も、同様の理由で好ましい。
なお、第1の電子輸送性材料と同じ材料である場合、第1の電子輸送性材料を含む領域と電子輸送性材料を含む層は、明確に区別できるものではない。
【0063】
電子輸送性材料を含む層の膜厚は、通常、200nm以下であり、好ましくは、100nm以下である。
この場合、電子輸送性材料を含む層は、陽極に接していることが好ましい。
なお、本発明に係る有機EL素子においては、上記各層の他にも、各層間に、従来の有機EL素子に適用されている層を有していてもよい。
【0064】
さらに、図3〜5に、本発明に係る有機EL素子の他の好ましい態様を示す。
図3に示すように、素子の発光特性を向上させるために、第1の電荷発生層3と発光層4の間に、正孔輸送層7を設けてもよい。また、図4に示すように、発光層4と陰極5の間に、電子輸送層8を設けてもよい。さらに、図5に示すように、電子輸送層8と陰極5の間に、電子注入層9を設けてもよい。
【0065】
正孔輸送層7は、前記第1の電荷発生層3の陰極側を形成する第1の正孔輸送性材料を含む領域3bから注入された正孔を、発光層4に効率よく、輸送・注入することが求められる。このような材料としては、第1の正孔輸送性材料を含む領域3bに用いられる正孔輸送性材料と同様のものを用いることができる。
【0066】
正孔輸送層7を構成する材料は、第1の正孔輸送性材料と同じ材料であっても、異なる材料であってもよいが、第1の正孔輸送性材料と同じである方が、正孔輸送におけるHOMO(最高占有分子軌道)の障壁がないため好ましい。また、異なる材料でも、正孔輸送層7のHOMOの絶対値が、前記第1の正孔輸送性材料のHOMOの絶対値より小さい場合は、同様の理由で好ましいが、発光層4のHOMOの絶対値が、前記第1の正孔輸送性材料のHOMOの絶対値より大きい場合は、発光層4のHOMOと前記第1の正孔輸送性材料のHOMOの間のHOMOを有することが好ましい。
また、正孔輸送層7は、複数の正孔輸送性材料の混合層であってもよく、あるいはまた、異なる材料を含む複数の層の積層体であってもよい。
正孔輸送層7の膜厚は、通常、200nm以下であり、好ましくは、5nm以上100nmである。
【0067】
また、電子輸送層8は、陰極から注入された電子を発光層に効率よく、輸送・注入することが求められる。このような材料としては、第1の電荷発生層の陽極側に形成される第1の電子輸送性材料を含む領域に用いられる電子輸送性材料を用いることができる。
【0068】
電子輸送層8を構成する材料は、第1の電子輸送性材料と同じ材料であっても、異なる材料であってもよい。また、複数の電子輸送性材料の混合層であっても、異なる材料を含む複数の層の積層体であってもよい。
電子輸送層の全体の膜厚は、通常、200nm以下であり、好ましくは、5nm以上100nm以下である。
【0069】
なお、発光エネルギーの大きい短波長発光層(例えば、青発光層)や燐光発光層を、発光層として用いた場合は、発光層の陰極側に接する電子輸送層として、正孔の輸送を阻止する材料を含む領域を正孔阻止層として形成してもよい。該正孔阻止層は、正孔と電子を発光層内に閉じ込めて、発光効率を向上させる機能を有するものである。
したがって、正孔阻止層は、正孔輸送層から移動してくる正孔が、発光層を通り過ぎることを阻止することができ、かつ、陰極から注入された電子を効率よく、発光層の方向に輸送することができる材料により構成されることが好ましい。
このため、正孔阻止層を構成する材料には、電子移動度が高く、正孔移動度が低く、HOMOレベルが発光層より深く、発光層から正孔が注入されにくいことが必要とされるが、公知の材料を用いることができる。
【0070】
また、電子注入層9は、陰極から発光層へ、電子を効率よく注入することが求められる。
電子注入層9の例としては、LiF、Li2O等の膜厚0.1〜5nmの極薄膜を設けることが、素子の効率を向上させる有効な方法として挙げられる。また、上述したような第1の電子輸送性材料を含む領域を形成する構成を用いることもできる。
【0071】
さらに、図6に、本発明に係る有機EL素子の他の態様を示す。図6に示す有機EL素子は、いわゆるマルチフォトンエミッション(MPE)構造をなすものであり、発光層4と陰極5の間に、さらに、電荷発生層3‐nおよび発光層4‐n(ここで、n=2以上の整数)からなる組をこの順に少なくとも1組備えている。
このうち、発光層4と陰極5の間に、電荷発生層(第2の電荷発生層3‐2)と発光層(第2の発光層4‐2)の組を1組備えている場合の有機EL素子の構造を図7に示す。
【0072】
第2の電荷発生層の構成は、上述した第1の電荷発生層と同じであっても、異なっていてもよい。
また、第1の電荷発生層に用いられるのと同様の材料を用いることができ、第1の電荷発生層と同じ材料からなることがより好ましい。
第1の電荷発生層とは異なる材料である場合には、例えば、特開2003−272860号公報や特開2006−24791号公報に記載されている1.0×102以上の比抵抗を有する絶縁層を用いることができ、五酸化バナジウム(V25)、三酸化モリブデン(MoO3)等の無機物、F4−TCNQ等の電子受容性化合物等が好ましい。これらのうち、五酸化バナジウム(V25)、三酸化モリブデン(MoO3)がより好ましい。
【0073】
第2の発光層は、基本的には、第1の発光層と同じ構成を用いることができる。その構成材料は、同じでも、異なっていてもよく、素子として必要とされる発光色に応じて、適宜選択される。
【0074】
また、図6,7に示すような電荷発生層と発光層の組を複数組備えている態様においても、素子の発光特性を向上させるために、電荷発生層と発光層の組が1組である上述した有機EL素子と同様に、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層を設けてもよい。
例えば、図8に、第2の電荷発生層3‐2と第2の発光層4‐2の間に正孔輸送層7‐2を設け、第2の発光層4‐2と陰極5の間に電子輸送層8‐2、さらに、該電子輸送層8‐2と陰極5の間に電子注入層9を設けた有機EL素子を示す。
【0075】
さらに、本発明に係る他の態様の有機EL素子としては、トップエミッション型素子が挙げられる。
本発明に係る有機EL素子は、陽極上に、電子輸送性材料を含む領域または電子輸送層を備えているため、仕事関数の低いアルミニウム等の通常陰極に用いられる金属をそのまま陽極として用いて、上述したような方法で素子を作製することもできる。この場合、陰極は、上述したような陽極に用いられる透明電極をスパッタリング法や真空蒸着法等により形成する。
【0076】
なお、本発明に係る有機EL素子の上述した各層の形成方法は、特に限定されるものではなく、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよい。湿式成膜法の場合は、上記各層に含まれる材料を適当な溶媒に溶解または分散させた液を使用して成膜する。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
[実施例1]
図5に示す基本構造を有する有機EL素子を以下の方法により作製した。
(陽極の形成)
まず、ガラス基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を110nm堆積したもの(スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィおよびエッチングにより、2mm幅のストライプにパターニングして、陽極を形成した。
このパターン形成したITO基板を、純水と界面活性剤による超音波洗浄、純水による流水洗浄、純水とイソプロピルアルコールの1:1混合溶液による超音波洗浄、イソプロピルアルコールによる煮沸洗浄の順で洗浄処理した。この基板を沸騰中のイソプロピルアルコールからゆっくり引き上げ、イソプロピルアルコール蒸気中で乾燥させ、最後に、紫外線オゾン洗浄を行った。
この基板を真空蒸着装置内に配置し、装置内を真空度が5.0×10-5Pa以下になるまでクライオポンプを用いて排気した。基板には、所定の領域に、蒸着用マスクを密着させ、真空蒸着装置内には、必要な蒸着材料をそれぞれ、別のモリブデン製ボートに入れて配置した。
【0078】
(第1の電荷発生層の形成)
下記(化16)に示す第1の電子輸送性材料(Alq3)と、低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物としてLiqを入れた各モリブデン製ボートを同時に通電加熱して、陽極ITO上に共蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度3.2×10-5Pa、Alq3の蒸着速度1.5Å/s、Liqの蒸着速度0.5Å/sとし、Alq3:Liq=3:1の混合層を膜厚10nmで形成した。
【0079】
【化16】

【0080】
次に、熱還元性金属としてアルミニウム(Al)を入れたタングステン製ボートを通電加熱し、Alq3とLiqの混合層の上に蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度3.7×10-5Pa、蒸着速度0.5Å/s、膜厚1.5nmとし、第1の電子輸送性材料を含む領域を形成した。
【0081】
その上に、第1の正孔輸送性材料としてα−NPDと、第1の正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し得る材料として三酸化モリブデン(MoO3)の各モリブデン製ボートを同時に通電加熱して、共蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度2.8×10-5Pa、α−NPDの蒸着速度2.0Å/s、MoO3の蒸着速度0.5Å/sとし、α−NPD:MoO3=4:1である第1の正孔輸送性材料を含む領域を膜厚10nmで形成した。
【0082】
(正孔輸送層の形成)
α−NPDを入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、第1の電荷発生層の上に蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度2.8×10-5Pa、蒸着速度2.0Å/s、膜厚40nmとし、正孔輸送層を形成した。
【0083】
(第1の発光層の形成)
ホスト材料としてAlq3と、ドーパントとして下記(化17)で表される蛍光性有機化合物(C545T)を入れた各モリブデン製ボートを同時に通電加熱して、正孔輸送層の上に共蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度2.5×10-5Pa、Alq3の蒸着速度2.0Å/s、C545Tの蒸着速度0.2Å/sとし、Alq3:C545T=100:1の第1の発光層を膜厚30nmで形成した。


【0084】
【化17】

【0085】
(電子輸送層の形成)
Alq3を入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、第1の発光層の上に蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度2.5×10-5Pa、蒸着速度2.0Å/sとし、電子輸送層を膜厚34nmで形成した。
【0086】
(電子注入層の形成)
Alq3、Liqを入れた各モリブデン製ボートを同時に通電加熱して、電子輸送層の上に共蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度2.6×10-5Pa、Alq3の蒸着速度1.5Å/s、Liqの蒸着速度0.5Å/sとし、Alq3:Liq=3:1の電子注入層を膜厚10nmで形成した。
【0087】
(陰極の形成)
真空蒸着装置を真空に保ったまま、マスクを交換し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極のITOストライプと直交するように素子に密着させた。
陰極としてアルミニウムを入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、電子注入層の上に蒸着した。蒸着条件は、蒸着開始時の真空度3.1×10-5Pa、蒸着終了時の真空度1.1×10-4Paであり、蒸着速度5Å/sとし、陰極を膜厚100nmで形成した。
【0088】
真空蒸着装置を大気圧に戻し、上記により有機EL材料を蒸着したITO基板(以下、「蒸着済み基板」という)を一度大気中に取り出し、窒素置換されたグローブボックスに移し、ガラス板を用いて封止した。
封止用のガラス板には、周囲部分以外の、蒸着済み基板の蒸着部分よりも広い面積が凹部となったガラス板を用い、凹部になっていない封止ガラスの周囲部分に、ディスペンサにてUV硬化樹脂を塗布した後、窒素置換されたグローブボックス中に入れた。
さらに、封止ガラス板の凹部に吸湿剤シートを貼り付け、蒸着済み基板の蒸着領域を囲むように、UV硬化樹脂塗布部を密着させ、大気中に取り出して、UVランプにてUV光を照射し、UV硬化樹脂を硬化させた。
【0089】
以上のようにして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機EL素子が得られた。
この素子の層構成を簡略化して示すと、ITO/Alq3:Liq(10nm、3:1)/Al(1.5nm)/α−NPD:MoO3(10nm、4:1)/α−NPD(40nm)/Alq3:C545T(30nm、100:1)/Alq3(34nm)/Alq3:Liq(10nm、3:1)/Al(100nm)である。
【0090】
[実施例2]
下記(化18)で表される電子輸送性材料(BAlq)を入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、真空度1.9×10-5Pa、蒸着速度2.0Å/s、膜厚5nmで陽極ITO上に蒸着し、その上に、実施例1におけるAlq3:Liq=3:1である第1の電子輸送性材料を含む領域を膜厚10nmから5nmに変えて蒸着し、それ以外は実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
【0091】
【化18】

【0092】
この素子の層構成を簡略化して示すと、ITO/BAlq(5nm)/Alq3:Liq(5nm、3:1)/Al(1.5nm)/α−NPD:MoO3(10nm、4:1)/α−NPD(40nm)/Alq3:C545T(30nm、100:1)/Alq3(34nm)/Alq3:Liq(10nm、3:1)/Al(100nm)である。
【0093】
[実施例3]
第1の電子輸送性材料を含む領域と第1の正孔輸送性材料を含む領域の間に、MoO3を、真空度4.7×10-5Pa、蒸着速度1.0Å/s、膜厚10nmで蒸着し、また、α−NPDからなる正孔輸送層を膜厚30nmで形成し、それ以外は実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
この素子の層構成を簡略化して示すと、ITO/Alq3:Liq(10nm、3:1)/Al(1.5nm)/MoO3(10nm)/α−NPD:MoO3(10nm、4:1)/α−NPD(30nm)/Alq3:C545T(30nm、100:1)/Alq3(34nm)/Alq3:Liq(10nm、3:1)/Al(100nm)である。
【0094】
[実施例4]
発光層およびその上に形成される電子輸送層を以下のような構成とし、それ以外は実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光層は、黄色発光層と青色発光層の2層積層型発光層とした。
ホスト材料としてα−NPDと、ドーパントとしてEY52(e-Ray Optoelectronics Technology社(以下、e−Ray社という)製)を入れた各モリブデン製ボートを同時に通電加熱して、α−NPDからなる正孔輸送層の上に、共蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度1.5×10-5Pa、α−NPDの蒸着速度2.0Å/s、EY52の蒸着速度0.3Å/sとし、α−NPD:EY52=100:1.5の第1の発光層を膜厚20nmで形成した。
次いで、ホスト材料としてEB43(e−Ray社製)と、ドーパントとしてEB52(e−Ray社製)を入れた各モリブデン製ボートを同時に通電加熱して、前記第1の発光層の上に共蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度1.6×10-5Pa、EB43の蒸着速度2.0Å/s、EB52の蒸着速度0.2Å/sとし、EB43:EB52=100:1.0の第2の発光層を膜厚30nmで形成した。
また、電子輸送層は、実施例1と同様にしてAlq3を蒸着し、膜厚23nmで形成した。
この素子の層構成を簡略化して示すと、ITO/Alq3:Liq(10nm、3:1)/Al(1.5nm)/α−NPD:MoO3(10nm、4:1)/α−NPD(40nm)/α−NPD:EY52(20nm、100:1.5)/EB43:EB52(30nm、100:1.0)/Alq3(23nm)/Alq3:Liq(10nm、3:1)/Al(100nm)である。
【0095】
[実施例5]
実施例1における第1の電荷発生層および第1の発光層と同じ構成で、第2の電荷発生層および第2の発光層を形成し、以下のように、電荷発生層と発光層を備えた組を2組とした2段重ねの有機EL素子を作製した。
まず、実施例1と同様にして、陽極ITO上に、第1の電荷発生層、正孔輸送層、第1の発光層、電子輸送層の順に形成した。その上に、同様の層構成を繰り返し、第2の電荷発生層、正孔輸送層、第2の発光層、電子輸送層を形成し、さらに、電子注入層、陰極を形成した。
なお、第1の電荷発生層と第1の発光層の間に形成する正孔輸送層の膜厚は30nmとし、第2の電荷発生層と第2の発光層の間に形成する正孔輸送層の膜厚は61nmとした。
この素子の層構成を簡略化して記載すると、ITO/Alq3:Liq(10nm、3:1)/Al(1.5nm)/α−NPD:MoO3(10nm、4:1)/α−NPD(30nm)/Alq3:C545T(30nm、100:1)/Alq3(34nm)/Alq3:Liq(10nm、3:1)/Al(1.5nm)/α−NPD:MoO3(10nm、4:1)/α−NPD(61nm)/Alq3:C545T(30nm、100:1)/Alq3(34nm)/Alq3:Liq(10nm、3:1)/Al(100nm)である。
【0096】
[比較例1]
第1の電子輸送性材料を含む領域を形成せず、また、正孔輸送層のα−NPDの層の膜厚を50nmとし、それ以外は実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
この素子の層構成を簡略化して示すと、ITO/α−NPD:MoO3(10nm、4:1)/α−NPD(50nm)/Alq3:C545T(30nm、100:1)/Alq3(34nm)/Alq3:Liq(10nm、3:1)/Al(100nm)である。
この素子について、実施例1と同様に定電流駆動したときの評価を行った。
これらの結果を表1に示す。
【0097】
[比較例2]
第1の電子輸送性材料を含む領域を形成せず、また、正孔輸送層のα−NPDの層の膜厚を40nmとし、それ以外は実施例3と同様にして、有機EL素子を作製した。
この素子の層構成を簡略化して示すと、ITO/MoO3(10nm)/α−NPD:MoO3(10nm、4:1)/α−NPD(40nm)/Alq3:C545T(30nm、100:1)/Alq3(34nm)/Alq3:Liq(10nm、3:1)/Al(100nm)である。
【0098】
[比較例3]
第1の電子輸送性材料を含む領域を形成せず、また、正孔輸送層のα−NPDの層の膜厚を50nmとし、それ以外は実施例4と同様にして、有機EL素子を作製した。
この素子の層構成を簡略化して示すと、ITO/−NPD:MoO3(10nm、4:1)/α−NPD(50nm)/α−NPD:EY52(20nm、100:1.5)/EB43:EB52(30nm、100:1.0)/Alq3(23nm)/Alq3:Liq(10nm、3:1)/Al(100nm)である。
【0099】
[比較例4]
第1の電子輸送性材料を含む領域を形成せず、また、正孔輸送層のα−NPDの層の膜厚を40nmとし、それ以外は実施例5と同様にして、有機EL素子を作製した。
この素子の層構成を簡略化して示すと、ITO/α−NPD:MoO3(10nm、4:1)/α−NPD(40nm)/Alq3:C545T(30nm、100:1)/Alq3(34nm)/Alq3:Liq(10nm、3:1)/Al(1.5nm)/α−NPD:MoO3(10nm、4:1)/α−NPD(61nm)/Alq3:C545T(30nm、100:1)/Alq3(34nm)/Alq3:Liq(10nm、3:1)/Al(100nm)である。
【0100】
上記実施例および比較例の層構成をまとめて表1に示す。












































【0101】
【表1】

【0102】
(素子駆動寿命評価)
上記実施例および比較例において作製した各有機EL素子について、22℃にて、20mA/cm2で定電流駆動させたときの初期輝度、初期電圧、相対輝度が70%に低下するまでの時間とそのときの電圧変化、500時間経過したときの相対輝度と電圧変化を評価した。
これらの結果をまとめて表2に示す。
【0103】

【0104】
表2に示した評価結果から、実施例1〜5に係る有機EL素子構成によれば、駆動寿命が長寿命化し、長時間安定して駆動することが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明に係る有機EL素子の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明に係る他の態様の有機EL素子の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【図3】本発明に係る他の態様の有機EL素子の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【図4】本発明に係る他の態様の有機EL素子の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【図5】本発明に係る他の態様の有機EL素子の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【図6】本発明に係る有機EL素子のマルチフォトンエミッション構造の一例を模式的に示した断面図である。
【図7】本発明に係る有機EL素子のマルチフォトンエミッション構造(2段)の一例を模式的に示した断面図である。
【図8】本発明に係る有機EL素子のマルチフォトンエミッション構造の他の態様の一例を模式的に示した断面図である。
【図9】本発明に係る有機EL素子における電荷発生層の電子輸送性材料を含む領域の構成の一例を模式的に示した断面図である。
【図10】本発明に係る有機EL素子における電荷発生層の電子輸送性材料を含む領域の構成の他の態様の一例を模式的に示した断面図である。
【図11】本発明に係る有機EL素子における電荷発生層の電子輸送性材料を含む領域の構成の他の態様の一例を模式的に示した断面図である。
【図12】本発明に係る有機EL素子における電荷発生層の電子輸送性材料を含む領域の構成の他の態様の一例を模式的に示した断面図である。
【図13】本発明に係る有機EL素子における電荷発生層の正孔輸送性材料を含む領域の構成の一例を模式的に示した断面図である。
【図14】本発明に係る有機EL素子における電荷発生層の正孔輸送性材料を含む領域の構成の他の態様の一例を模式的に示した断面図である。
【図15】本発明に係る有機EL素子における電荷発生層の正孔輸送性材料を含む領域の構成の他の態様の一例を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0106】
1 基板
2 陽極
3,3‐2,3‐3,…,3‐n… 電荷発生層
3a 電子輸送性材料を含む領域
3a‐1 第1の電子輸送性材料を含む層
3a‐2 低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物を含む層
3a‐3 熱還元性金属
3a‐4 低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物と、熱還元性金属を含む混合層
3a‐5 第1の電子輸送性材料と、低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物を含む混合層
3a‐6 第1の電子輸送性材料と、低仕事関数金属のイオンを含む有機金属錯体化合物と、熱還元性金属を含む混合層
3b 正孔輸送性材料を含む領域
3b‐1 第1の正孔輸送性材料と、第1の正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し得る材料を含む混合層
3b‐2 第1の正孔輸送性材料と酸化還元反応によって電荷移動錯体を形成し得る材料を含む層
3b‐3 第1の正孔輸送性材料を含む層
4,4‐2,4‐3,…,4‐n 発光層
5 陰極
6 電子輸送性材料を含む領域
7,7‐2 正孔輸送層
8,8‐2 電子輸送層
9 電子注入層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、陽極、電荷発生層、発光層および陰極をこの順に備えている有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記電荷発生層は、陽極側に電子輸送性材料を含む領域を有し、陰極側に正孔輸送性材料および該正孔輸送性材料との酸化還元反応により電荷移動錯体を形成し得る材料が積層または混合されてなる領域を有し、かつ、前記正孔輸送性材料がラジカルカチオン状態にあることを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項2】
前記電子輸送性材料を含む領域が、陽極と接していることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項3】
前記陽極と電荷発生層の間に、さらに、電子輸送性材料を含む層を備えていることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項4】
前記電子輸送性材料を含む層が、陽極と接していることを特徴とする請求項3記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項5】
前記発光層と陰極の間に、さらに、少なくとも電荷発生層および発光層を含む組をこの順に少なくとも1組備えていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項6】
前記組を構成する電荷発生層の少なくとも1層は、陽極側に電子輸送性材料を含む領域を有し、陰極側に正孔輸送性材料および該正孔輸送性材料との酸化還元反応により電荷移動錯体を形成し得る材料が積層または混合されてなる領域を有し、かつ、前記正孔輸送性材料がラジカルカチオン状態にあることを特徴とする請求項5記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項7】
前記正孔輸送性材料との酸化還元反応により電荷移動錯体を形成し得る材料が、金属酸化物であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−258396(P2008−258396A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99124(P2007−99124)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(504265754)財団法人山形県産業技術振興機構 (60)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】