説明

有機デバイスおよびその製造方法

【課題】少なくとも1層の有機層を含む有機デバイスにおいて、層間のショートを確実に防ぎ、不良画素のない有機デバイスを実現する。
【解決手段】陽極11と、有機層からなる発光層12と、陰極13を具備する有機デバイスにおいて、発光層12を陽極11と陰極13とで挟み、陽極11と発光層12との画素端面を露出しかつ連続な面として形成する。陰極13を発光層12と同じ寸法か発光層12より小さくし、陽極11と陰極13が短絡しない構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機層を積層することによって形成される有機デバイス、および、その有機デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機層を積層した有機デバイスは、対向する電極間に100nm以下の薄い有機層を形成し、高精細にパターニングする必要がある。
【0003】
従来の高分子有機材料を用いた有機デバイスでは、高分子材料を溶剤に溶解させ、スピンコート法およびフォトリソグラフィーによりパターニングする方法、あるいはインクジェット法が用いられてきたが、これらの方法では工程数が多いことやパターニング精度が不十分であることからスループットが低いという問題があり、凸版印刷法あるいはオフセット印刷法などの印刷法が提案されている。
【0004】
従来の印刷法を用いた有機デバイスは、絶縁性を有する隔壁によって画素電極の一部を覆うように形成し、隔壁内に印刷版の凸部を位置合わせすることによって有機層を形成するものがあった(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、有機層をパターニングする方法としては、第1電極と第2電極間に有機EL媒介層が積層され、一つまたは複数のレーザによって画素間の有機材料を除去し、区切ることによりディスプレイを形成する方法があった(例えば、特許文献2)。
【0006】
図7は特許文献1に記載された従来の有機デバイスの構成を示す説明図である。
【0007】
図7において、透光性基板101上に画素電極である陽極102がパターン形成されている。陽極102の材料としてはITOが用いられている。陽極102を挟むように第一隔壁103aが形成され、その上に第二隔壁103bが形成されている。第一隔壁103aの高さは0.5μm以下、また第二隔壁103bの高さは0.3μm以上であり、それぞれ酸化ケイ素といった金属酸化物あるいは窒化ケイ素といった金属窒化物などによって形成されている。
【0008】
第一隔壁103a,第二隔壁103bで仕切られた陽極102上に正孔輸送層104が形成されている。正孔輸送層104は、溶媒に溶解または分散させて正孔輸送材料インキとなり、スリットコーター,スピンコーターなどにより形成される。正孔輸送層104の上に有機発光層105が形成され、その上に陰極106が形成されている。有機発光層105は凸版印刷により形成され、陰極106はマスクを用いた真空蒸着により形成される。
【0009】
図8(a)〜(h)は特許文献2に記載された従来の有機デバイスの製造工程を説明するための断面図である。
【0010】
図8(a)に示すように、透光性基板201上にITOなどの透明層をパターニングし、第1電極202の帯を形成し、第1電極202の帯に垂直な方向に電極絶縁バッファ層203の帯を形成する。図8(b)に示すように、バッファ層203を含む所定領域に絶縁膜204を形成し、レーザビームを用いてサブピクセル形成部分の絶縁膜204を除去する。
【0011】
図8(c)に示すように、基板を酸素プラズマ、あるいはUV/オゾンで表面処理した後、絶縁膜204を含む所定領域に、赤色光を発する厚み40〜60nmの第1有機EL層205aを蒸着し、その後、第2電極206aを順次蒸着する。図8(d)に示すように、絶縁膜204の他の部分をレーザビームで除去し、図8(e)に示すように、基板を表面処理した後、緑色光を発する第2有機EL層205b,第2電極206bを蒸着する。図8(f)に示すように、同様な方法により、絶縁膜204のほかの部分をレーザビームで除去し、図8(g)に示すように、基板を表面処理した後、青色光を発する第3有機EL層205c,第3電極206cを蒸着する。
【0012】
図8(h)に示すように、隣接するサブピクセル間の電気的絶縁を確かめるために、隣接するサブピクセル間の絶縁膜204上に形成された第2有機EL層205a、および第2電極206aをレーザビームを用いて2部分に断ち切る。この後、サブピクセルへの湿気を遮断するべく、パネル全面に保護膜207を形成した後、封止工程を施す。
【特許文献1】特開2006−286309号公報(第10頁,図2)
【特許文献2】特開2000−12220号公報(第10〜11頁,図7a〜h)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載の有機デバイスの構成では、所定の位置にインクが転写されない部分が生じるため、層間がショートするという問題があった。
【0014】
詳しく説明すると、隔壁103aおよび103bで仕切られた領域にインクを塗布するためには、印刷版の凸部が正確に隔壁間にアライメントされる必要がある。アライメントが不十分な場合には、凸部が隔壁に接触するため、凸部全面を基板に接触させることが困難となるため、インクが転写されない部分が生じる。インクが転写されない部分では、インクの上下に積層される有機層あるいは電極層が直接接触することによりショートが発生する。
【0015】
また、特許文献2に記載の有機デバイスの製造方法では、レーザにより有機層を除去した後、除去しきれない部分をプラズマ処理により除去するが、有機層の下に第1電極が存在するため、第1電極を除去しない範囲にレーザ照射エネルギを調整する必要があり、加えられるエネルギの上限が決まる。
【0016】
このため、レーザ照射エネルギのバラツキによってプラズマ処理により除去可能な厚み以上に有機層が残存する場合が生じ、電極間に抵抗が発生することになり、ディスプレイの性能を悪化させる原因となる。また、有機層が画素間を横断するように残存する場合には、画素間の切り分けができず、制御不可能な画素が発生することにある。
【0017】
本発明は、前記従来技術の問題に鑑み、層間のショートを確保し、画素間を確実に切断することができる有機デバイスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、本発明に係る有機デバイスは、基板上に第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極により挟まれた少なくとも1つの有機層を有する有機デバイスであって、前記第1電極と前記第2電極と前記有機層とにおける少なくとも前記有機層を含む画素断面を露出させ、かつ該画素断面を連続する面としたことを特徴とする。
【0019】
また、前記第1電極の配線部を、前記有機層よりも薄いカバー層により覆ったことを特徴とする。
【0020】
また、前記有機層に熱あるいは光を加えることにより、該有機層の端面の材質を変化させたことを特徴とする。
【0021】
また、前記有機層として、膜厚10nm以上150nm以下の発光層を設けたことを特徴とする。
【0022】
また、前記有機層として、膜厚30nm以上2μm以下の有機半導体層を設けたことを特徴とする。
【0023】
本発明に係る有機デバイスの製造方法は、基板上に第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極により挟まれた少なくとも1つの有機層を有する有機デバイスの製造方法であって、前記基板上に、前記第1電極を成膜してパターニングする工程と、前記第1電極の配線部にカバー層を成膜してパターニングする工程と、前記有機層を印刷により選択的に形成する工程と、形成された有機層パターンのエッジをレーザを用いて選択的に照射することによって、熱反応あるいは光反応により除去あるいは変質化させる工程を有することを特徴とする。
【0024】
また、前記印刷として、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷のいずれかを採用することを特徴とする。
【0025】
また、前記レーザを、マスクを用いて一括照射する工程、あるいは1つのスポットに収束させて照射する工程のいずれかを有することを特徴とする。
【0026】
また、前記レーザとして、波長が400nm以下の紫外線を採用することを特徴とする。
【0027】
また、前記カバー層と前記第1電極との選択比から、前記レーザを前記カバー層と前記第1電極とに同時に照射した場合、前記第1電極が除去されたとしても前記カバー層が残存する膜厚を設定することを特徴とする。
【0028】
前記構成の有機デバイスおよび製造方法によって、有機層を確実に均一に積層し、電極間の短絡を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の有機デバイスによれば、層間のショートを確実に防ぎ、不良画素のないデバイスを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0031】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における有機デバイスの構成を示す断面図である。
【0032】
図1において、基板10は、少なくとも可視光を80%以上透過し、厚さ0.7mmのガラス基板である。陽極11は、基板10の上にパターニングされた厚さ200nm以下のITOから構成されており、少なくとも可視光に対して80%以上の透過性を有し、比抵抗が10−4Ω・cm以下であり、電極として作用するに十分低抵抗のものからなる。発光層12は、発光特性および寿命を確保するため、厚さが100nmの有機層である。
【0033】
陽極11と発光層12との画素端面は同一面を形成している。発光層12は、電子,正孔が注入されると発光するため導電性を示すが、注入されない状態では絶縁性を示し、電子,正孔の注入により発光の制御が可能である。絶縁性が確保されない状態においては、常に電子,正孔の移動が発生している状態となり、発光のON/OFFや輝度の制御が不可能となる。
【0034】
陰極13は、厚さ300nm以下であって、発光層12上にLiF層、Al層の順で形成された2層構造をしており、発光層12は、陽極11と陰極13とで挟まれ、陽極11と発光層12の画素端面が露出し、かつ連続な面を形成する。陰極13は、発光層12と同じ寸法か発光層12より小さく、陽極11と陰極13は短絡しない構成をしている。
【0035】
また、発光層12の画素端面には、正孔,電子が注入されず絶縁性を示す薄膜14が形成される場合もある。
【0036】
図2は図1の有機デバイスにおける要部を示す図であって、(a)は基板10および陽極11を示す平面図、(b)は側面図である。
【0037】
図2(a),(b)において、カバー層16は、例えば膜厚50nmのクロムからなり、陽極11の配線15における画素部から引き出される部分を、距離Lが10〜200μmの範囲において幅W方向を完全に覆うように形成されている。
【0038】
前記構成の本実施の形態によれば、陽極11,陰極13より、それぞれ正孔,電子が注入され、発光層12内において、これらが結合する際に発生するエキシトンにより発光層12が励起されて発光する。発光層12を流れる電流は、膜厚の3乗に反比例し、かつ印加電圧の2乗に比例するため、発光効率を上げるためには膜厚を薄くする必要がある。また正孔,電子は、ある確率で再結合するため、膜厚を厚くすることで確率を上げることができる。これらのこと、および印刷後の乾燥により発光層12の端部の膜厚が厚くなることに鑑み、発光層12の膜厚は10〜150nmとしている。
【0039】
この際、陽極11と発光層12の画素端面が露出しかつ連続な面であるため、陰極13を発光層12と同じ寸法か、小さい寸法とすることにより、電極同士が直接触れることがなくなって、絶縁を確保することができるため、層間のショートをなくすことができる。
【0040】
また、本実施の形態では、陽極11に透明電極を用いることにより、基板側から光の取り出しを行っている。基板10,陽極11,発光層12界面に垂直の光線が入射した場合の反射率は約4〜5%である。陽極11として用いられるITOの屈折率nは2.0近傍であって、ガラスやポリマーの屈折率n=1.5近傍に比べ大きい。
【0041】
図3(a)に陽極11と発光層12、および陽極11から発光層12に向かう光線Aを示す。光線Aはスネルの法則(式1)に従い屈折する。
×sinθ=n×sinθ‥‥(式1)
入射角θが大きくなるに従い出射角θも大きくなり、n=1.5,n=2.0とした場合、θが臨界角α=48.6度を超えると、図3(b)に示すように、入射光は全反射することになる。
【0042】
陽極11の配線15における画素からの引き出し部近傍では、前記4〜5%の界面反射によるθの小さい光線が存在するため、カバー層16を設けることにより、光線Aのように陽極11から発光層12へ抜ける光を反射させ、輝度を向上させることができる。
【0043】
なお、配線15における前記引き出し部より遠い部分では、陽極11が導波路として機能し、伝達されたθが大きい光線のみとなるため、カバー層16による効果はほとんどなくなる。
【0044】
本実施の形態において、有機層として発光層12を設けた例を説明したが、層数は本例に限ったものではなく、図示しないが、例えば有機デバイスの効率向上や寿命改善のためには、正孔輸送層,電子輸送層を設けた構成としてもよいし、さらには正孔注入層,電子注入層などを付加して層数を増加させてもよい。
【0045】
また、説明を簡単にするため、図1では2つの画素の構成を例示して説明したが、有機デバイスとしては、その数量を限定するものではなく、複数のセルを有する構成とする。
【0046】
また、本実施の形態では、陰極13の形成までを説明したが、陰極13の形成後に、ガラスや金属キャップ、あるいはポリマーによる封止を行うことにより、素子の劣化を防ぐことができる。
【0047】
なお、基板10として0.7mmのガラス板を用いた例を説明したが、同等の光透過性能を持つ基板であれば、基板の厚さは問わない。また、同等の光透過性能を持つポリマー、例えばPET樹脂,PEN樹脂などを用いても同様の効果が得られる。
【0048】
また、陽極11の材料として厚さ200nmのITOを用いた例を説明したが、同等の光透過性能,低抵抗,耐溶剤性を示すものであれば、厚さは問わず、例えば、IZO,酸化錫,酸化亜鉛,酸化インジウム,亜鉛アルミニウム複合酸化物などの透明材料であっても同様の効果が得られる。なお、低抵抗,光透過性,加工性の点からするとITOが好適である。
【0049】
発光層12の厚さは、発光効率,輝度が十分得られるためには、厚さは150nm以下である必要があり、有機デバイスとして発光効率,輝度が確保することができる膜厚を自由に選択することが可能である。
【0050】
有機層は発光層12に限らず、溶媒に半導体溶質が溶解している有機半導体でもよく、半導体として駆動させるためには、乾燥、ベーク後の有機半導体層が2μm以下の厚さになるように構成する。有機半導体層は、30nmより薄い場合には半導体の結晶が生じ難く、膜厚が厚くなるほど移動度が向上するが、全層厚を超えるような膜厚を形成はしないため、2μm以下の厚みとする。図示しないが、基板上にゲート電極,ソース電極,ドレイン電極を設けてTFTを構成し、有機半導体層上にコート層を設け、有機半導体層およびコート層をレーザ光により除去することも可能である。
【0051】
発光層材料は、ポリフルオレン系,ポリアリーレン系,ポリアリーレンビニレン系,アルコキシベンゼン,アルキルベンゼンなどの高分子材料が挙げられ、発光層材料を溶解する溶媒としては、トルエン,キシレン,アセトン,アニソール,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,シクロヘキシルベンゼンなどの単独または混合溶媒があげられる。アニソール,キシレン,トルエンといった芳香族系有機溶剤は溶解性が良く好適である。
【0052】
正孔輸送層の材料として、PEDOT,ポリアニリン誘導体,ポリチオフェン誘導体などがあげられる。正孔輸送層形成材料を溶解または分散させる溶媒としては、例えば、水,トルエン,キシレン,アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,シクロヘキサノン,メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,酢酸エチル,酢酸ブチル,水などの単独またはこれらの混合溶媒を用いてもよく、電子輸送層として1,2,4−トリアゾール誘導体層を設けてもよい。
【0053】
また、カバー層16の材料としてクロムを用いた例を説明したが、可視光を反射する材料であれば金,銀,アルミニウムなど他の材料でもよく、膜厚も有機層12の厚み以下であれば、本例のように50nmに限らない。
【0054】
なお、図2(a),(b)の構成にて、陽極11の配線15における画素からの引き出し部にカバー層16を設けることを説明したが、図4(a),(b)に示すように、画素に対応する陽極11の周囲にカバー層16を設けるようにしてもよい。
【0055】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2における有機デバイスの製造方法を示す説明図である。図5において、図1および図2にて説明した構成要素と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0056】
図5(a)〜(e)において、レーザ光17は波長が400nm以下で、図示していないが光源より平行に出射されたエキシマレーザ光である。マスク18は基板10上部に配置され、レーザ光17の透過可能な孔部が陽極11および発光層12のパターンに応じて設けられている。
【0057】
そして、図5(a)の平面図と図5(a’)の横断面図に示すように、基板10上に陽極11を真空スパッタおよびフォトリソ法によりパターニングした後、配線上にカバー層を真空スパッタ法およびフォトリソ法を用いてパターニングする。発光層12をフレキソ印刷法により印刷し(図5(b))、マスク18を透過したレーザ光17により陽極11および発光層12の画素端部を照射し(図5(c))、局所的に画素端部を除去する(図5(d))。このとき、陽極11と発光層12の端部は、断面が露出しかつ連続した同一面を形成し、発光層12の端部はレーザ光17による局所加熱あるいは局所的な光反応により発光層が変質した絶縁性を有する薄膜14が生じる。
【0058】
また、レーザ光17を照射する際には、画素端部の陽極11および発光層12を除去するが、陽極11の配線を切断しないように工夫する必要がある。そこで、配線15の引き出し部に設けたカバー層16と陽極11および発光層12の選択比α(=陽極11および発光層12のエッチング速度V/カバー層のエッチング速度V)から、カバー層16の膜厚tと陽極11および発光層12の膜厚tの関係を、t/V>t/V、すなわち、t>t/αとすることによって、配線の切断を防ぐことが可能である。最後に、マスクを用いた真空蒸着法により陰極13を蒸着する(図5(e))。
【0059】
図6は本実施の形態の製造装置の概略構成図であって、図6を参照して本実施の形態の有機デバイスの製造方法における印刷方法について説明する。図6において、図1および図2にて説明した構成要素と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0060】
図6において、有機インク20は、溶媒に溶質を溶解させ粘度が3〜50cPであり、基板10との接触角が30度以下のものである。粘度は、アニロックスロール21の表面に有機インク20を付着させインク厚さを均一にするために必要であり、粘度が高すぎると厚さが均一にならず、低すぎると有機インク20が付着しない。また、接触角は転写性を大きく左右する。有機インク20をアニロックスロール21から後述するフレキソ版24へ、またフレキソ版24から基板10へ転写する際に、転写元の接触角が転写先よりも高い場合には、転写元からの有機インク20の剥離性が良く、効率よく転写できる。
【0061】
アニロックスロール21は、ロール中心に回転する機構を有し、乾燥後の膜厚50nmを得るため、厚さ略2μmの有機インク20を転写可能とするため、インク保持量の多い、線数200線のロトフロー型の凹凸が形成され、表面は硬度確保のためクロムメッキされているものである。凹凸形状は他にもピラミッド型,格子型,斜線型,逆格子型,亀甲型などがあり、線数は200〜1000線の範囲で、保持するインク量により凹凸形状と線数を選択する。
【0062】
ドクターロール22は、回転機構を有し、表面が弾性を持った材質で構成されており、アニロックスロール21と線接触する位置に固定される。図示していないがアニロックスロール21との接触によりドクターロール22の接触部が変形する量を制御できるように、ドクターロール22は位置決め機構を有している。
【0063】
フレキソ版24は、弾性を有する材料で構成されており、表面に形成された凹凸パターンには凸のアライメントマークが含まれており、有機インク20との接触角が基板10と有機インク20との接触角より大きく、有機インク20に対して耐蝕性を有する版、例えば水現像タイプの版である。
【0064】
版胴23は、回転機構(本例では矢印にて示す時計方向に回転)を有し、表面が滑らかで変質しにくいステンレスなどの金属で構成されており、表面円周方向に沿ってフレキソ版24が両面テープ,マグネットシートなどで固定されている。版胴23は、表面に固定されたフレキソ版24と基板10が接触する位置に固定されており、図示していないがフレキソ版24と基板10の接触量を変更できるように、版胴位置決め機構が設けられている。
【0065】
発光層12は、基板10上の陽極11パターン上に有機インク20が転写されたものである。有機インク20に用いられるものとして、前記発光層12を形成する高分子発光材料だけでなく、有機系の正孔輸送層,電子輸送層などが挙げられる。
【0066】
なお、図6において、26は、基板10のアライメントマークに焦点が合わせられた観察装置、27は、基板10の下に設置されて基板10の面に対して平行な方向(X,Y方向)に移動可能なステージである。
【0067】
また、印刷前に、有機インク20を転写させたい陽極11上には、有機インク20に対して親液性を示す処理を施し、有機インク20を転写させたくない陽極11が形成されている部分には撥液性を示す処理を施してもよい。
【0068】
詳細に説明すると、フッ素プラズマ処理を基板10の全面に施し、基板10の全面を撥液性にする。次に、親液性を得たい陽極11上にレーザ光を照射し、フッ素成分を飛ばすことで親液性を得ることも可能である。
【0069】
また、他の方法として、有機層12の厚みに比べ十分に薄い有機膜、例えば撥液性を示す単分子膜をフォトリソグラフィーにより、パターニングすることによっても、親液領域と撥液領域を得ることが可能である。単分子膜としては、有機硫黄化合物の自己組織化膜(SAM膜:Self-Assembled Monolayers)などがあげられる。SAM膜は、金属表面上に有機分子が規則正しく並ぶ単分子膜であり、金属と反応しやすい置換基を有する有機分子の溶液に金属を接触させ、不要な部分を現像により除去することにより形成される。
【0070】
このような構成によって、有機インク20を、回転しているアニロックスロール21に供給し、ドクターロール22との接触量を位置決め機構により調整しながら、アニロックスロール21上のインク膜厚を均一にする。アニロックスロール21は、回転しながら版胴23上に固定されたフレキソ版24と接触することにより、均一厚さのインクがフレキソ版24に転写される。フレキソ版24は、版胴23と共に回転しながら、基板10および陽極11に線接触する。
【0071】
フレキソ版24上のパターンを陽極11上に転写させる際に、フレキソ版24と基板10のアライメントマークを観察装置26で観察し、ステージ27を動かして補正することにより、陽極11上にフレキソ版24の凸部が精度良く接触し、精度の良い転写が可能である。
【0072】
有機インク20を陽極11上に転写した後、有機インク20を乾燥させることによって発光層12が得られる。本実施の形態では印刷により1層のみ形成したが、複数の層を印刷する場合には、これらの工程を繰り返すことにより形成することができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、印刷方法として、フレキソ印刷を用いたが、グラビア印刷,グラビアオフセット印刷,スクリーン印刷などの方法を用いても同様の効果が得られる。
【0074】
また、インク膜厚を均一にするために、ドクターロール22を用いたが、代わりに弾性を有する板状のドクターブレードを用いてもよい。
【0075】
また、レーザとしてエキシマレーザを用いたが、紫外線領域であれば、YAGレーザ,YVO4レーザなどの第三高調波,第四高調波を用いてもよいし、選択的にレーザ光を照射するためにマスクを用いているが、結像光学系を用いてスポット状に集光して選択的に照射することでも同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の有機デバイスは、層間のショートを確実に防ぎ、不良画素のないデバイスを実現することができ、有機ELなどの有機材料を用いた有機デバイスの用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態1における有機デバイスの構成を示す断面図
【図2】本実施の形態の有機デバイスにおける要部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図
【図3】本実施の形態の有機デバイスにおける光線の状態を示す説明図
【図4】本実施の形態の有機デバイスにおける他のカバー層の形成例を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図
【図5】(a)〜(e)は本発明の実施の形態2における有機デバイスの製造方法を示す説明図
【図6】本実施の形態の製造装置の概略構成図
【図7】従来の有機デバイスの構成を示す説明図
【図8】従来の有機デバイスの製造工程を説明するための断面図
【符号の説明】
【0078】
10 基板
11 陽極
12 発光層
13 陰極
14 薄膜
15 配線
16 カバー層
17 レーザ光
18 マスク
20 有機インク
21 アニロックスロール
22 ドクターロール
23 版胴
24 フレキソ版
26 観察装置
27 ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極により挟まれた少なくとも1つの有機層を有する有機デバイスであって、
前記第1電極と前記第2電極と前記有機層とにおける少なくとも前記有機層を含む画素断面を露出させ、かつ該画素断面を連続する面としたことを特徴とする有機デバイス。
【請求項2】
前記第1電極の配線部を、前記有機層よりも薄いカバー層により覆ったことを特徴とする請求項1に記載の有機デバイス。
【請求項3】
前記有機層に熱あるいは光を加えることにより、該有機層の端面の材質を変化させたことを特徴とする請求項1に記載の有機デバイス。
【請求項4】
前記有機層として、膜厚10nm以上150nm以下の発光層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の有機デバイス。
【請求項5】
前記有機層として、膜厚30nm以上2μm以下の有機半導体層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の有機デバイス。
【請求項6】
基板上に第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極により挟まれた少なくとも1つの有機層を有する有機デバイスの製造方法であって、
前記基板上に、前記第1電極を成膜してパターニングする工程と、前記第1電極の配線部にカバー層を成膜してパターニングする工程と、前記有機層を印刷により選択的に形成する工程と、形成された有機層パターンのエッジをレーザを用いて選択的に照射することによって、熱反応あるいは光反応により除去あるいは変質化させる工程を有することを特徴とする有機デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記印刷として、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷のいずれかを採用することを特徴とする請求項6に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記レーザを、マスクを用いて一括照射する工程、あるいは1つのスポットに収束させて照射する工程のいずれかを有することを特徴とする請求項6に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記レーザとして、波長が400nm以下の紫外線を採用することを特徴とする請求項6に記載の有機デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記カバー層と前記第1電極との選択比から、前記レーザを前記カバー層と前記第1電極とに同時に照射した場合、前記第1電極が除去されたとしても前記カバー層が残存する膜厚を設定することを特徴とする請求項6に記載の有機デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−4537(P2009−4537A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163599(P2007−163599)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】