説明

有機ナノ構造体アレイの形成

本明細書により、ナノ構造体アレイが開示される。ナノ構造体アレイは、平面に対して略垂直に配置される複数の細長い有機ナノ構造体を含む。揮発性有機溶媒に溶解された有機モノマーを基体表面に分注すること、および、前記有機モノマーの自己集合のための条件を生じさせながら、前記溶媒を、前記基体表面に略垂直に配置される複数の細長い有機ナノ構造体を形成するように蒸発させることを含む、ナノ構造体アレイを製造する方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、ナノ構造体に関し、より具体的には、限定されないが、ペプチドナノ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドナノ構造体およびその様々な応用が、国際特許出願公開番号WO2004/052773、同WO2004/060791、同WO2005/000589、同WO2006/027780および同WO2006/013552に記載される(これらはすべて、本出願と同じ譲受人に譲渡され、その全体が参照することにより組み込まれる)。
【0003】
一般に、ペプチドナノ構造体はカーボンナノチューブと多くの超微細構造類似性および物理的類似性を有し得る。周知のペプチドナノ構造体は芳香族ジペプチド(例えば、ジフェニルアラニンなど)の自己集合によって作製される。集合したジペプチドは、マイクロメートルの程度の持続性長さを有する様々な構造の整列した集合体を形成する。
【0004】
工業的応用については、自己集合したペプチドナノ構造体は、費用、製造手段および入手性の観点からカーボンナノチューブよりも有利である。加えて、ペプチドナノ構造体は、その生体適合性、化学的な柔軟性および多用途性、生物学的認識能力、ならびに、容易な合成のために、バイオナノテクノロジーのための有機基本構成要素として使用することができる[Reches,M.およびGazit,E.、ばらばらの自己集合したペプチドナノチューブの内部における金属ナノワイヤの流し込み、Science 300、625〜627(2003)]。
【0005】
種々のペプチドナノ構造体が、様々な技術的応用において使用されるために、例えば、マイクロエレクトロニクス、磁気記録システム、化学的センサー、ディスプレーシステム、記憶媒体、電子放射リトグラフィーおよび熱電システムなどにおいて使用されるために提案されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面は、整列した配置で配置される複数の細長い有機ナノ構造体を含むナノ構造体アレイに関する。本発明の様々な例示的実施形態において、細長い有機ナノ構造体は、互いに略平行に並べられる。いくつかの実施形態において、ナノ構造体は、基体表面において略垂直に配置される。他の実施形態において、ナノ構造体は、基体に対して略平行に配置される。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面は、ナノ構造体アレイを製造するために好適な方法に関する。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態によれば、揮発性有機溶媒に溶解された有機モノマーが基体表面に分注される。本発明のいくつかの実施形態において、揮発性有機溶媒は、溶液における有機モノマーの分散を蒸発の前に可能にするように選択される。有機モノマーの自己集合化のための条件を生じさせながら、溶媒が蒸発させられ、有機モノマーが、自己集合した形態で基体表面に留まる。本発明のいくつかの実施形態において、溶媒が蒸発させられると、細長い有機ナノ構造体が、基体に対して略垂直に基体表面に形成される。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態によれば、有機モノマーおよびナノ粒子が、細長い有機ナノ構造体への有機モノマーの自己集合化、および、ナノ粒子による細長い有機ナノ構造体の自己被覆のための条件のもとでインキュベーションされる。本発明の様々な例示的実施形態において、ナノ粒子は力場に対して応答性である。例えば、ナノ粒子は磁性ナノ粒子であることが可能であり、そのような場合、力場は好ましくは磁場である。ナノ粒子は電気的に帯電されることが可能であり、そのような場合、力場は好ましくは電場である。力場は、例えば、ナノ構造体を互いに略平行に並べるために、被覆されたナノ構造体に加えられる。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態において、有機モノマーおよび/またはナノ構造体は電気的に帯電される。モノマーおよび/または基体は好ましくは、反発力をナノ構造体間において、また、場合により、ナノ構造体と、基体との間において確立するために選択される。例えば、ナノ構造体の外壁を正電荷にすることができる。そのような形態は、面に対して略垂直なナノ構造体アレイの形成を容易にすることができる。
【0011】
本発明の様々な例示的実施形態において、有機ナノ構造体はペプチドナノ構造体である。本発明のいくつかの実施形態において、ペプチドナノ構造体のそれぞれが、2個〜15個のアミノ酸残基を含むペプチドを含む。例えば、ペプチドの1つまたは複数がジペプチドであることが可能であり、そのようなジペプチドは、例えば、フェニルアラニン−フェニルアラニンジペプチド(これに限定されない)などである。いくつかの実施形態において、ペプチドは1つまたは複数の芳香族アミノ酸残基を含む。例えば、ペプチドの1つまたは複数が芳香族アミノ酸残基から本質的になり得る。いくつかの実施形態において、ペプチドの1つまたは複数がエンドキャッピング修飾ペプチドである。いくつかの実施形態において、ペプチドナノ構造体の1つまたは複数が、ペプチドナノ構造体に結合した官能基を含む。
【0012】
本発明の実施形態のナノ構造体アレイは集積化することができ、マルチアレイセンサー、電界放出デバイス、ナノメカニックシステム、ナノエレクトロメカニックシステムおよびナノ流体システム(これらに限定されない)を含めて、多くの適用において使用することができる。
【0013】
従って、例えば、本発明の実施形態のナノ構造体アレイは、ナノ構造体アレイが、例えば、ソースおよびドレインを相互連絡するチャネルとして役立ち得る電界効果トランジスター(FET)において使用することができる。特に好ましい実施形態において、ナノ構造体がFETのそれ以外の電極に対して垂直に並べられる。
【0014】
本発明の実施形態のナノ構造体アレイはまた、集積回路チップにおける多数の導体のための導電層として役立ち得る。導電層は、例えば、1つまたは複数のサブレイヤーが、整列したナノ構造体を含む、多数のサブレイヤーの積み重ね体として構築することができる。サブレイヤーは、サブレイヤー毎に異なる方向に配向させられるナノ構造体を含むことができる。
【0015】
本発明の実施形態のナノ構造体アレイはまた、検知デバイスおよび/または刺激デバイスに組み込むことができ、例えば、医療用リード線に組み込むことができる。ナノ構造体が垂直に並べられるときに、この実施形態は特に有用である。そのような医療用リード線は、改善された電極性能をナノ構造体アレイの大きい表面積のために有する。そのような医療用リード線は、心臓ペーシングおよび/または心臓センシング、脳刺激および/または脳センシングなどのために使用することができる。
【0016】
本発明の実施形態のナノ構造体アレイはまた、熱エネルギーを物体に輸送するために、または、熱エネルギーを物体から輸送するために使用することができる。ナノ構造体のアレイは、高熱伝導性を有する基体表面に、好ましくは垂直に並べられることができる。ナノ構造体を、熱を基体から逃すように、または、熱を基体に逃すように環境にさらすことができる。従って、本発明の実施形態のナノ構造体アレイはヒートシンクとして役立ち得る。
【0017】
本発明の実施形態のナノ構造体アレイはまた、限定されないが、電気化学的センサー、機械的センサーおよび電気機械的センサーなどをはじめとする様々なセンサーにおいて使用することができる。例えば、本発明の実施形態のナノ構造体アレイを取り込むセンサーを、センサーがつながれる静的構造体または動的構造体が受けるひずみ変化、圧力変化または温度変化をモニターするために使用することができる。本発明の実施形態のナノ構造体アレイを取り込むセンサーはまた、小さい質量の物体(例えば、細菌など)を検出および測定するために水晶結晶微量天秤(QCM)センサーの原理に従って作動することができる。
【0018】
その大きい表面積のために、本発明の実施形態のナノ構造体アレイはまた、分析物を流体媒体(気体または液体)から集めるために、また、分析物を、例えば、分光法(例えば、フーリエ変換分光法、フーリエ変換赤外分光法など)のために濃縮するために使用することができる。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、ナノ構造体アレイが提供される。該ナノ構造体アレイは、基体と、基体表面に略垂直に配置される複数の細長い有機ナノ構造体とを含む。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、互いに略平行に並べられる複数の細長い有機ナノ構造体の平面状配置を含むナノ構造体アレイが提供される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載されるナノ構造体アレイを含む電界効果トランジスターが提供される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載されるナノ構造体アレイを含む導電層が提供される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載されるナノ構造体アレイを含むセンサーが提供される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載されるナノ構造体アレイを含む医療用リード線が提供される。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載されるナノ構造体アレイを含む刺激用電極が提供される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載されるナノ構造体アレイを含む、熱エネルギーを移動するためのデバイスが提供される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載されるナノ構造体アレイを含む分析物捕集デバイスが提供される。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、ナノ構造体アレイを製造する方法が提供され、この場合、この方法は、揮発性有機溶媒に溶解された有機モノマーを基体表面に分注すること、および、有機モノマーの自己集合のための条件を生じさせながら、溶媒を、基体表面に略垂直に配置される複数の細長い有機ナノ構造体を形成するように蒸発させることを含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、揮発性有機溶媒は、溶媒における有機モノマーの分散を蒸発の前に可能にするように選択される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、有機モノマーは、少なくとも10mg/mlの濃度で揮発性有機溶媒に溶解されたペプチドモノマーである。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、有機モノマーは電気的に帯電される。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、ナノ構造体アレイを製造する方法が提供され、この場合、この方法は、有機モノマーと、力場に対して応答性であるナノ粒子とを、細長い有機ナノ構造体への有機モノマーの自己集合、および、ナノ粒子による細長い有機ナノ構造体の自己被覆のための条件のもとでインキュベーションすること;および、力場を、細長い有機ナノ構造体を互いに略平行に並べるように、細長い有機ナノ構造体に加えることを含む。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は磁性ナノ粒子であり、力場は磁場である。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は、電気的に帯電されたナノ粒子であり、力場は電場である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、有機モノマーはペプチドモノマーを含む。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、有機ナノ構造体は多壁ナノ構造体である。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、有機ナノ構造体はペプチドナノ構造体である。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ペプチドナノ構造体は複数のペプチドを含む。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、それぞれのペプチドが2個〜15個のアミノ酸残基を含む。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、それぞれのペプチドが少なくとも1つの芳香族アミノ酸残基を含む。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのペプチドがエンドキャッピング修飾ペプチドである。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのペプチドが芳香族アミノ酸残基から本質的になる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのペプチドがジペプチドである。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、それぞれのペプチドがフェニルアラニン−フェニルアラニンジペプチドである。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ペプチドナノ構造体の少なくとも1つがナノ粒子の少なくとも1つの層によって被覆され、ナノ粒子は磁性ナノ粒子であり得る、および/または電気的に帯電され得る。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのペプチドナノ構造体が、そのペプチドナノ構造体に結合した官能基を含む。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、有機ナノ構造体は電気的に帯電される。
【0048】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0049】
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明の様々な例示的実施形態によるナノ構造体アレイの概略的な例示である。
【図2】図2は、本発明の1つの実施形態によるトランジスターの断面の概略的な例示である。
【図3】図3は、本発明の様々な例示的実施形態による導電層の概略的な例示である。
【図4】図4は、本発明の様々な例示的実施形態による医療用リード線の概略的な例示である。
【図5】図5は、本発明の様々な例示的実施形態による、熱エネルギーを物体に輸送するための、または、熱エネルギーを物体から輸送するためのデバイスを概略的に例示する。
【図6】図6は、本発明の様々な例示的実施形態によるセンサーシステムの概略的な例示である。
【図7a−d】図7a−dは、ペプチドのナノ森林に自己集合した垂直に並べられたジフェニルアラニン型ナノチューブを示す;(a)並べられたペプチドナノチューブアレイの形成についての考えられるモデル。有機溶媒に溶解されたジペプチドモノマーをシリコーン処理ガラスに塗布することにより、ペプチドナノチューブの垂直に並べられたアレイが形成された。(b)垂直に並べられたペプチドナノチューブのSEM分析。(c)ナノチューブアレイの低温電界放出銃高分解能走査電子顕微鏡(CFEG−HRSEM)分析。挿入図は、並べられたナノチューブのより高倍率を表す。(d)CFEG−HRSEMによって得られるアレイの1つのナノチューブ個体の高倍率顕微鏡写真(120000倍)。
【図7e−f】図7e−fは、ペプチドのナノ森林に自己集合した垂直に並べられたジフェニルアラニン型ナノチューブを示す;(e)ガラス表面のペプチドアレイのX線回折図。(f)1個のペプチドナノチューブの電子回折分析。軸aが、結晶の長軸に対して垂直に配向される。
【図8】図8は、シリコーン処理ガラス表面に集合したジフェニルアラニン型ペプチドナノチューブの様々な傾斜角度による低温電界放出銃高分解能走査電子顕微鏡(CFEG−HRSEM)分析を示す画像である。顕微鏡写真を、サンプルの角度を連続的に変化させながら、サンプルにおける同じ領域について撮影した。下記の傾斜角度が検討される:(a)10°の傾斜角度、(b)20°の傾斜角度、(c)30°の傾斜角度、(d)40°の傾斜角度。スケールバーは1μmを表す。
【図9】図9は、(a)シリコーン処理ガラス表面に並べられたより狭い集合体のSEM顕微鏡写真を示す画像、(b)集合した管状構造体のより大きいSEM倍率を示す画像、(c)自己集合した管状構造体のCFEG−HRSEM分析を示す画像(挿入図はより大きい倍率を表す)である。
【図10a】図10aは、本発明の様々な例示的実施形態に従って、マグネタイトナノ粒子を含有する強磁性流体溶液の存在下で自己集合させたジペプチドモノマーの概略的な例示である。
【図10b−g】図10b−dは、(b)磁性粒子により被覆される自己集合したペプチドナノ構造体のTEM画像、(c)自己集合した被覆されるペプチドナノ構造体の低倍率SEM顕微鏡写真、(d)図10cの自己集合した被覆されるペプチドナノ構造体の水平配置を示す低倍率SEM顕微鏡写真であり、図10e−gは、(e)自己集合したナノ構造体の概略的な表示、(f)いくつかのランダム整列したナノ構造体の概略的な表示、および、(g)ナノ構造体を磁場にさらした時および後での水平に並べられたナノ構造体の概略的な表示である。
【図11】図11は、本発明の実施形態のナノ構造体の形成についてのモデルを示す。ペプチド基本構成要素がHFP溶液においてモノマーとして堆積されつつある。急速な蒸発は過飽和および結晶化のプロセスを引き起こす。異なる方向での、差のある成長速度により、細長いシートの形成が引き起こされる。2次元の細長いシートは、密な管状構造体を形成する傾向がある。
【図12】図12は、様々なペプチド濃度による並べられたナノチューブアレイの形成を明らかにするSEM画像である。下記のペプチド濃度が示される:(a)20mg/ml、(b)40mg/ml、(c)60mg/ml、(d)80mg/ml、(f)180mg/ml。
【図13】図13は、「野生型」ジペプチドと同じ様式でシリコーン処理ガラス表面に自己集合させたジフェニルアラニンペプチドアナログのSEM分析を示す画像である。下記のジペプチドが調べられた:(a)Ac−Phe−Phe−NH、(b)t−ブチルカルバマート−Phe−Phe−COOH(Boc−Phe−Phe−COOH)、(c)カルボベンジルオキシ−Phe−Phe−COOH(Cbz−Phe−Phe−COOH)、(d)フルオレニルメトキシカルボニル−Phe−Phe−COOH(Fmoc−Phe−Phe−COOH)、(e)シクロ−Phe−Phe。
【図14】図14は、塩基の存在下でシリコーン処理ガラス表面に自己集合させたジフェニルアラニンペプチドのSEM分析顕微鏡写真を示す画像である。(a)0.5%のDIEA、(b)1%のDIEA、(c)2%のDIEA、(d)5%のDIEA。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、ナノ構造体に関し、より具体的には、限定されないが、ペプチドナノ構造体に関する。
【0052】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の記載に示されるか、および/または、図面および/または実施例において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0053】
図1a〜図1cは、本発明の様々な例示的実施形態によるナノ構造体アレイ10の概略的な例示である。ナノ構造体アレイ10は、整列した配置14で配置される複数の細長い有機ナノ構造体12を含む。
【0054】
本明細書中で使用される表現「細長いナノ構造体」は、1μm未満の直径(好ましくは500nm未満の直径、より好ましくは約50nm未満の直径、一層より好ましくは約10nm未満の直径)、および、少なくとも1μmの長さ(より好ましくは少なくとも10nmの長さ、一層より好ましくは少なくとも100nmの長さ、一層より好ましくは少なくとも500nmの長さ)を有する構造体を示す。
【0055】
表現「有機ナノ構造体」は、少なくとも一部が有機物質から構成されるナノ構造体を示す。本明細書中で使用される表現「有機物質」は、炭素原子および水素原子を含み、さらなる元素を場合により伴う任意の物質を表す。
【0056】
整列した配置14は、典型的には、しかし、絶対的ではないが、有機ナノ構造体12が互いに略平行に並べられる配置である。ナノ構造体12は1つだけの平面を取ることができ、従って、ナノ構造体の「単分子層」を形成することができ、あるいは、ナノ構造体12は複数の平面または塊状態を取ることができ、従って、ナノ構造体の「森」を形成することができる。例えば、本発明のいくつかの実施形態において、アレイ10におけるナノ構造体は、略垂直に基体16の表面に配置される。
【0057】
用語「略垂直に」は、ナノ構造体12と、平面(例えば、基体16の表面17)との間における角度の関係を示す。ナノ構造体は、ナノ構造体と、平面に対する法線との角度が、平均して、20°未満(より好ましくは10°未満、より好ましくは5°未満、より好ましくは、しかし、絶対的ではないが、2°未満)であるならば、その平面に対して略垂直であると言われる。
【0058】
他の実施形態において、ナノ構造体は基体16に対して略平行に配置される。
【0059】
用語「略平行に」は、ナノ構造体12と、平面(例えば、基体16の表面17)との間における角度の関係を示す。ナノ構造体は、ナノ構造体と、平面に対する法線との角度が、平均して、約80°〜約90°(より好ましくは約85°〜約90°、より好ましくは、しかし、絶対的ではないが、約88°〜約90°)であるならば、その平面に対して略平行であると言われる。
【0060】
ナノ構造体12は典型的には、管状構造体として形状化される。ナノ構造体12の管状構造は中空であり得るか、または、ナノ構造体12の管状構造はフィラー物質により満たすことができ、例えば、導電性材料、半導電性材料、熱電気材料、磁性材料(常磁性体、強磁性体または反磁性体)、発光材料、生体鉱物、ポリマーおよび/または有機材料など(これらに限定されない)により満たすことができる。フィラー物質は凝縮状態またはガス状状態のいずれかが可能である。ナノ構造体12はまた、同様に導電性、半導電性、熱電気的、磁性、発光性、生体鉱物、ポリマーおよび/または有機であり得る被覆材料によって被覆することができる。
【0061】
本発明の様々な例示的実施形態において、ナノ構造体12は厚い壁または多壁構造を有する。これは、ナノ構造体12の内部空洞の外径と、直径との比較的大きい比率として実現される。本発明のいくつかの実施形態において、ナノ構造体12の外径と、内径との比率は少なくとも1.5であり、より好ましくは少なくとも2である。
【0062】
アレイにおけるナノ構造体の密度は好ましくは大きい。例えば、アレイが平面に対して略垂直であるとき(図1bを参照のこと)、好ましくは、1平方ミクロンあたり少なくとも1個のナノ構造体、または、1平方ミクロンあたり少なくとも2個のナノ構造体、または、1平方ミクロンあたり少なくとも3個のナノ構造体、または、1平方ミクロンあたり少なくとも4個のナノ構造体、または、1平方ミクロンあたり少なくとも5個のナノ構造体が存在する。より大きい密度、例えば、1平方ミクロンあたり10個、11個、12個、13個またはそれ以上のナノ構造体(これらに限定されない)もまた意図される。本発明の発明者らによって行われた実験では、100平方ミクロンあたり10個〜20個のナノ構造体の密度が得られた(下記の実験の節において図7bおよび図7cを参照のこと)。本発明の発明者らによって行われた他の実験では、1平方ミクロンあたり10個のナノ構造体の密度が得られた(図9a〜図9cを参照のこと)。
【0063】
本発明の様々な例示的実施形態において、アレイ10におけるナノ構造体の数は大きい。典型的には、しかし、絶対的ではないが、アレイには10個を超えるナノ構造体が存在し、より好ましくは数十個(例えば、20個、30個、40個、50個またはそれ以上)のナノ構造体が存在する。いくつかの実施形態において、アレイには100個のナノ構造体が存在し、より好ましくは、しかし、絶対的ではないが、数百個(例えば、200個、300個、400個、500個またはそれ以上)のナノ構造体が存在する。
【0064】
本発明の様々な例示的実施形態において、ナノ構造体12はペプチドナノ構造体である。
【0065】
本明細書中で使用される用語「ペプチド」は、天然ペプチド(分解産物、合成的に合成されたペプチドまたは組換えペプチドのいずれか)、および、ペプチド模倣体(典型的には、合成的に合成されたペプチド)、同様にまた、例えば、体内に存在する間はペプチドをより安定にする修飾を有し得る、ペプチドアナログであるペプトイドおよびセミペプトイドを包含する。そのような修飾には、限定されないが、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合の修飾(CH−NH、CH−S、CH−S=O、O=C−NH、CH−O、CH−CH、S=C−NH、CH=CHまたはCF=CHを含むが、これらに限定されない)、骨格の修飾、および残基の修飾が含まれる。ペプチド模倣体化合物を調製するための方法はこの分野では十分に知られており、例えば、Quantitative Drug Design,C.A.Ramsden Gd.,Chapter 17.2,F.Choplin Pergamon Press(1992)に具体的に記載される(これは、全体が本明細書中に示されるように参考として組み込まれる)。これに関するさらなる詳細が本明細書の下記に示される。
【0066】
ペプチド内のペプチド結合(−CO−NH−)は、例えば、N−メチル化結合(−N(CH)−CO−)、エステル結合(−C(R)H−C−O−O−C(R)−N−)、ケトメチレン結合(−CO−CH−)、α−アザ結合(−NH−N(R)−CO−)(式中、Rは任意のアルキル(例えば、メチル)である)、カルバ結合(−CH−NH−)、ヒドロキシエチレン結合(−CH(OH)−CH−)、チオアミド結合(−CS−NH−)、オレフィン二重結合(−CH=CH−)、レトロアミド結合(−NH−CO−)、ペプチド誘導体(−N(R)−CH−CO−)(式中、Rは、炭素原子において自然界で示される「通常」の側鎖である)によって置換することができる。
【0067】
これらの修飾は、ペプチド鎖に沿った結合の任意のところに存在することができ、そして同時に数カ所(2カ所〜3カ所)においてさえ存在することができる。
【0068】
本実施形態のナノ構造体を形成するペプチドは、典型的には、2個〜15個のアミノ酸残基を含む。より好ましくは、ペプチドは、10個未満のアミノ酸残基の、より好ましくは8個未満のアミノ酸残基の短いペプチドであり、より好ましくは2個〜6個のアミノ酸残基のペプチドであり、従って各ペプチドは好ましくは2個、3個、4個、5個、または6個のアミノ酸残基を有する。
【0069】
本明細書中で使用される表現「アミノ酸」には、20個の天然に存在するアミノ酸;生体内で多くの場合には翻訳後修飾されたそのようなアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリンおよびホスホトレオニンを含む);および他の非通常型アミノ酸(2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリシン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシンおよびオルニチンを含むが、これらに限定されない)が含まれることが理解される。さらに、用語「アミノ酸」には、D−アミノ酸およびL−アミノ酸の両方が含まれる。
【0070】
天然の芳香族アミノ酸(Trp、TyrおよびPhe)は、フェニルグリシン、TIC、ナフチルアラニン(Nal)、フェニルイソセリン、トレオニノール、Pheの環メチル化誘導体、Pheのハロゲン化誘導体、またはO−メチル−Tyrおよびβアミノ酸などの合成された非天然型の酸に置換されることができる。
【0071】
本発明のペプチドは、1個以上の修飾されたアミノ酸または1個以上の非アミノ酸モノマー(例えば脂肪酸、複合体炭水化物など)も含むことができる。
【0072】
本発明の実施形態のナノ構造体を形成するために利用されるペプチドは典型的には線状ペプチドである。しかしながら、ペプチドの環状形態は本発明の範囲から除外されない。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の実施形態のペプチドナノ構造体を構成するペプチドは1つまたは複数の芳香族アミノ酸残基を含む。そのようなペプチドを有することの利点が、ペプチドに組み込まれる芳香族官能基により、様々なペプチド基本構成要素が、引きつける芳香族相互作用を介して相互作用し、それにより、ナノ構造体を形成することが可能になることである。
【0074】
本明細書中で使用される表現「芳香族アミノ酸残基」は、本明細書中で定義されるような芳香族成分をその側鎖に有するアミノ酸残基を表す。
【0075】
従って、本発明のいくつかの実施形態によれば、ペプチドナノ構造体を構成するペプチドのそれぞれが、X−YまたはY−Xのアミノ酸配列(式中、Xは芳香族アミノ酸残基であり、Yは任意の他のアミノ酸残基である)を含む。
【0076】
本発明のペプチドは長さにおいて少なくとも2個のアミノ酸であり得る。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態において、ナノ構造体を形成するペプチドの1個または数個が、2個以上の芳香族アミノ酸残基を含むポリ芳香族ペプチドである。
【0078】
本明細書中で使用される表現「ポリ芳香族ペプチド」は、少なくとも80%の芳香族アミノ酸残基(より好ましくは少なくとも85%の芳香族アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも90%の芳香族アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも95%またはそれ以上の芳香族アミノ酸残基)を含むペプチドを示す。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのペプチドが芳香族アミノ酸残基から本質的になる。いくつかの実施形態において、それぞれのペプチドが芳香族アミノ酸残基から本質的になる。
【0079】
従って、例えば、ナノ構造体を形成するために使用されるペプチドには、1個または2個の芳香族アミノ酸残基から構成されるジペプチド、1個、2個または3個の芳香族アミノ酸残基を含むトリペプチド、および、2個、3個または4個の芳香族アミノ酸残基を含むテトラペプチドなどの任意の組合せが含まれ得る。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態において、芳香族アミノ酸は、天然に存在する芳香族残基または合成された芳香族残基のどれもが可能であり、これらには、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、フェニルグリシン、あるいは、それらの修飾体、前駆体または機能的芳香族部分が含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
いくつかの実施形態において、ナノ構造体を形成するために使用される複数のペプチドにおける1つまたは複数のペプチドは2つのアミノ酸残基を含み、従って、ジペプチドである。
【0082】
いくつかの実施形態において、ナノ構造体を形成するために使用されるペプチドのそれぞれが2つのアミノ酸残基を含み、従って、ナノ構造体が複数のジペプチドから形成される。
【0083】
これらのジペプチドのそれぞれが、1個または2個の芳香族アミノ酸残基を含むことができる。好ましくは、しかし、絶対的ではないが、これらのジペプチドのそれぞれが2個の芳香族アミノ酸残基を含む。ジペプチドを構成する芳香族残基は、ジペプチドがホモジペプチドであるように同じであることが可能であり、または、異なることが可能である。好ましくは、ナノ構造体はホモジペプチドから形成される。
【0084】
従って、本発明の様々な例示的実施形態において、ナノ構造体を形成するために使用される複数のペプチドにおけるそれぞれのペプチドが、側鎖残基に関して同一である2つの芳香族アミノ酸残基から構成されるホモジペプチドである。
【0085】
ナノ構造体を形成するために使用される芳香族アミノ酸残基は芳香族成分を含むことができる。この場合、表現「芳香族成分」は、完全に共役したπ電子系を有する単環式成分または多環式成分を表す。芳香族成分は、すべてが炭素である成分が可能であり、あるいは、1個または複数のヘテロ原子(例えば、窒素、イオウまたは酸素など)を含むことができる。芳香族成分は置換または非置換が可能であり、従って、置換されるとき、置換基は、例えば、アルキル、トリハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ニトロ、アゾ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、シアノおよびアミンの1つまたは複数が可能である。
【0086】
例示的な芳香族成分には、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフタレニル、フェナントレニル、アントラセニル、[1,10]フェナントロリニル、インドール類、チオフェン類、チアゾール類および[2,2’]ビピリジニルが含まれ、これらのそれぞれが場合により置換される。従って、本明細書中に記載される芳香族アミノ酸残基における側鎖として役立ち得る芳香族成分の代表的な例には、限定されないが、置換または非置換のナフタレニル、置換または非置換のフェナントレニル、置換または非置換のアントラセニル、置換または非置換の[1,10]フェナントロリニル、置換または非置換の[2,2’]ビピリジニル、置換または非置換のビフェニル、および、置換または非置換のフェニルが含まれる。
【0087】
芳香族成分は、代替では、置換または非置換のヘテロアリールが可能であり、例えば、置換または非置換のインドール、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリンおよびプリンなどが可能である。置換されるとき、フェニル成分、ナフタレニル成分または任意の他の芳香族成分が1つまたは複数の置換基を含み、そのような置換基は、例えば、アルキル、トリハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ニトロ、アゾ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、シアノおよびアミンなどであり、しかし、これらに限定されない。
【0088】
本発明の実施形態のナノ構造体を形成するために使用することができるホモジペプチドの代表的な例には、限定されないが、ナフチルアラニン−ナフチルアラニンジペプチド、フェナントレニルアラニン−フェナントレニルアラニンジペプチド、アントラセニルアラニン−アントラセニルアラニンジペプチド、[1,10]フェナントロリニルアラニン−[1,10]フェナントロリニルアラニンジペプチド、[2,2’]ビピリジニルアラニン−[2,2’]ビピリジニルアラニンジペプチド、(ペンタハロ−フェニルアラニン)−(ペンタハロ−フェニルアラニン)ジペプチド、フェニルアラニン−フェニルアラニンジペプチド、(アミノ−フェニルアラニン)−(アミノ−フェニルアラニン)ジペプチド、(ジアルキルアミノ−フェニルアラニン)−(ジアルキルアミノ−フェニルアラニン)ジペプチド、(ハロフェニルアラニン)−(ハロフェニルアラニン)ジペプチド、(アルコキシ−フェニルアラニン)−(アルコキシ−フェニルアラニン)ジペプチド、(トリハロメチル−フェニルアラニン)−(トリハロメチル−フェニルアラニン)ジペプチド、(4−フェニル−フェニルアラニン)−(4−フェニル−フェニルアラニン)ジペプチドおよび(ニトロ−フェニルアラニン)−(ニトロ−フェニルアラニン)ジペプチドが含まれる。
【0089】
本発明の様々な例示的実施形態によれば、ペプチドナノ構造体は複数のジフェニルアラニン(Phe−Phe)ホモジペプチドから構成される。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態において、ナノ構造体を形成するために使用される複数のペプチドにおける1つまたは複数のペプチドがエンドキャッピング修飾ペプチドである。
【0091】
本明細書中で使用される表現「エンドキャッピング修飾ペプチド」は、そのN−(アミン)末端および/またはC−(カルボキシル)末端において修飾されているペプチドを示す。エンドキャッピング修飾は、キャップを形成するような末端への化学的成分の結合を示す。そのような化学的成分は本明細書中ではエンドキャッピング成分として示され、これはまた、典型的には、本明細書中およびこの技術分野では、交換可能に、ペプチド保護成分またはペプチド保護基として示される。
【0092】
本明細書中で使用される表現「エンドキャッピング成分」は、ペプチドの末端に結合したとき、エンドキャッピングを改変する成分を示す。エンドキャッピング修飾は、典型的には、ペプチド末端の電荷を遮蔽すること、および/または、その化学的特徴(例えば、疎水性、親水性、反応性および溶解性など)を変化させることをもたらす。ペプチドのエンドキャッピング修飾のための好適な成分の様々な例を、例えば、Green他、“Protective Groups in Organic Chemistry”(Wiley、第2版、1991)、および、Harrison他、“Compendium of Synthetic Organic Methods”第1巻〜第8巻(John Wiley and Sons、1971〜1996)に見出すことができる。
【0093】
エンドキャッピング修飾の使用はナノ構造体の化学的特性および電荷の制御を可能にし、従って、本発明の実施形態のペプチドナノ構造体が集合させられる様式、および/または並べられる様式の制御もまた可能にする。
【0094】
ペプチドの1つまたは複数の一方の末端または両末端の電荷を変化させることは、得られるナノ構造体の形態学、ならびに/あるいは、得られるナノ構造体が、例えば、電場および/または磁場に応答する様式を変化させることをもたらす場合がある。
【0095】
ペプチドのエンドキャッピングを、その疎水的性質/親水的性質を改変するために使用することができる。ペプチドの疎水的特性/親水的特性を変化させることは、例えば、得られるナノ構造体の形態学および/またはその水溶性を変化させることをもたらす場合がある。エンドキャッピング修飾ペプチドの割合およびエンドキャッピング修飾の性質を選択することによって、ナノ構造体の疎水性/親水性を、ナノ構造体の溶解性と同様に、細かく制御することができる。例えば、エンドキャッピング修飾を、ナノ構造体の壁へのナノ粒子の付着を制御するために選択することができる。
【0096】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、ペプチドのエンドキャッピングを改変することにより、非修飾のペプチドによって形成されるナノ構造体と同様なナノ構造体に自己集合するその能力が損なわれないことを発見している。ナノ構造体を形成するエンドキャッピング修飾ペプチドの持続性は本発明者らの仮説を裏付けており、この場合、本発明者らの仮説によれば、ペプチドナノ構造体を形成するために要求される支配的特性は、例えば、国際特許出願公開WO2004/052773および同WO2004/060781(これらの内容は参照することにより本明細書に組み込まれる)において以前に記載されたように、その側鎖の芳香族性、および、それによって誘導されるπ−積み重なり相互作用である。
【0097】
ペプチドのエンドキャッピングの少なくとも1つの芳香族的性質により、得られるナノ構造体の形態学が影響を受けることが、本発明者らによってさらに見出された。例えば、非修飾のペプチド、または、非芳香族エンドキャッピング成分により修飾されたペプチドが管状のナノ構造体に自己集合し得ることが見出された。
【0098】
本発明の実施形態のために好適なN末端エンドキャッピング成分の代表的な例には、ホルミル、アセチル(これはまた、本明細書中では「Ac」として示される)、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(これはまた、本明細書中では「Cbz」として示される)、tert−ブトキシカルボニル(これはまた、本明細書中では「Boc」として示される)、トリメチルシリル(これはまた、「TMS」として示される)、2−トリメチルシリルエタンスルホニル(これはまた、「SES」として示される)、トリチル基および置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(これはまた、本明細書中では「Fmoc」として示される)、ならびに、ニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)が含まれるが、これらに限定されない。
【0099】
本発明の実施形態のために好適なC末端エンドキャッピング成分の代表的な例は、典型的には、C末端におけるカルボキシ基のアシル化を引き起こす成分であり、これらには、ベンジルエーテルおよびトリチルエーテル、ならびに、アルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル、アリルエーテル、モノメトキシトリチルおよびジメトキシトリチルが含まれるが、これらに限定されない。代替として、C末端エンドキャッピング成分の−COOH基をアミド基に修飾することができる。
【0100】
ペプチドの他のエンドキャッピング修飾には、異なる成分によるアミンおよび/またはカルボキシルの置換が含まれ、例えば、ヒドロキシル、チオール、ハリド、アルキル、アリール、アルコキシおよびアリールオキシなどによるアミンおよび/またはカルボキシルの置換が含まれる(これらの用語は本明細書中で定義される通りである)。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態において、ナノ構造体を形成するペプチドのすべてがエンドキャッピング修飾される。
【0102】
エンドキャッピング成分は、その芳香族性によってさらに分類することができる。従って、エンドキャッピング成分は芳香族または非芳香族が可能である。
【0103】
N末端修飾のために好適な非芳香族エンドキャッピング成分の代表的な例には、限定されないが、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、tert−ブトキシカルボニル、トリメチルシリルおよび2−トリメチルシリル−エタンスルホニルが含まれる。C末端修飾のために好適な非芳香族エンドキャッピング成分の代表的な例には、限定されないが、アミド、アリルオキシカルボニル、トリアルキルシリルエーテルおよびアリルエーテルが含まれる。
【0104】
N末端修飾のために好適な芳香族エンドキャッピング成分の代表的な例には、限定されないが、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)が含まれる。C末端修飾のために好適な芳香族エンドキャッピング成分の代表的な例には、限定されないが、ベンジル基、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)基、トリチル基および置換トリチル基が含まれる。
【0105】
本発明の実施形態のナノ構造体が1つまたは複数のジペプチドを含むとき、これらのジペプチドは下記の一般式Iによってまとめて表すことができる:

式中、Cは、D配置またはL配置を有するキラル炭素である;RおよびRはそれぞれが独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、カルボキシ、チオカルボキシ、C−カルボキシラートおよびC−チオカルボキシラートからなる群から選択される;Rは、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ハロおよびアミンからなる群から選択される;R〜Rのそれぞれは独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、チオヒドロキシ(チオール)、アルコキシ、アリールオキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、C−カルボキシラート、C−チオカルボキシラート、N−カルバマート、N−チオカルバマート、ヒドラジン、グアニルおよびグアニジンからなる群から選択され(これらの用語は本明細書中で定義される通りである)、ただし、R〜Rの少なくとも1つが、本明細書中上記において定義されるような芳香族成分を含む。
【0106】
少なくとも1つが芳香族成分を含むならば、R〜Rの1つまたは複数が他の置換基である実施形態もまた意図される。
【0107】
〜Rの1つまたは複数が、本明細書中上記において記載されるエンドキャッピング成分である実施形態もまた意図される。
【0108】
本発明の実施形態のペプチドナノ構造体は、官能基をさらに含むことができ、好ましくは、複数の官能基を含むことができる。
【0109】
官能基は、例えば、チオール、ヒドロキシ、ハロ、カルボキシラート、アミン、アミド、ニトロ、シアノ、ヒドラジンなど(これらに限定されない)などの基、疎水性成分(例えば、中程度および大きいアルキル、シクロアルキルおよびアリールなど)、および/または、金属リガンドが可能である。
【0110】
本発明の実施形態のナノ構造体アレイは化学的安定性および機械的安定性を有する。本発明の実施形態のナノ構造体を官能基により装飾することができることは、ナノ構造体を多くの適用に一体化することを可能にする。
【0111】
述べられたように、本発明の実施形態のナノ構造体が管状構造を有するとき、管状構造をフィラー物質により満たすことができる。
【0112】
例えば、ナノ構造体は、限定されないが、無機構造体(例えば、第IV族の元素、第III族/第V族の元素、第II族/第VI族の元素または遷移群の元素など)を含む導電性材料または半導電性材料を囲むことができる。
【0113】
本明細書中で使用される用語「族」には、当業者によって理解されるようなその通常の定義が与えられる。例えば、第II族元素には、Zn、CdおよびHgが含まれる;第III族元素には、B、Al、Ga、InおよびTlが含まれる;第IV族元素には、C、Si、Ge、SnおよびPbが含まれる;第V族元素には、N、P、AsおよびBiが含まれる;第VI族元素には、O、S、Se、TeおよびPoが含まれる。
【0114】
従って、導電性材料については、ナノ構造体は、例えば、銀、金、銅、白金、ニッケルまたはパラジウムを囲むことができる。半導電性材料については、ナノ構造体は、例えば、ケイ素、リン化インジウムおよび窒化ガリウムなどを囲むことができる。
【0115】
ナノ構造体はまた、例えば、重合可能であるか、または、多数の電荷状態を有する任意の有機分子または無機分子をカプセル化することができる。例えば、ナノ構造体は、主族および金属原子に基づくワイヤ様ケイ素、遷移金属含有ワイヤ、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム、リン化インジウム、ゲルマニウムまたはセレン化カドミウムの構造体を含むことができる。
【0116】
加えて、本発明のナノ構造体は、半導体およびドーパントを含めて、材料の様々な組合せを囲むことができる。代表的な例には、限定されないが、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、セレン、テルル、ホウ素、ダイヤモンドまたはリンが含まれる。ドーパントはまた、様々な元素半導体の固溶体である場合があり、例えば、ホウ素および炭素の混合物、ホウ素およびPの混合物、ホウ素およびケイ素の混合物、ケイ素および炭素の混合物、ケイ素およびゲルマニウムの混合物、ケイ素およびスズの混合物、または、ゲルマニウムおよびスズの混合物である場合がある。いくつかの実施形態において、ドーパントまたは半導体は異なる族の混合物を含むことができ、例えば、第III族元素および第IV族元素の混合物、第III族元素および第V族元素の混合物、第II族元素および第VI族元素の混合物など(これらに限定されない)を含むことができる。加えて、異なる族の半導体の合金もまた可能である場合がある(例えば、第II族−第VI族半導体および第III族−第V族半導体、ならびに、第I族半導体および第VII族半導体の組合せ)。
【0117】
本発明のナノ構造体によってカプセル化され得る半導電性材料の具体的および代表的な例には、限定されないが、CdS、CdSe、ZnSおよびSiOが含まれる。
【0118】
本発明のナノ構造体はまた、所定の熱電能を示す熱電気材料を囲むことができる。好ましくは、そのような材料は、得られるナノ構造体組成物が十分な良度指数によって特徴づけられるように選択される。そのような組成物は、本明細書中下記においてさらに詳述されるように、熱移動媒体または熱電気電源として熱電気システムおよび熱電気デバイスにおいて使用することができる。本発明の好ましい実施形態によれば、本発明のナノ構造体内にカプセル化され得る熱電気材料は、ビスマス系材料、例えば、元素状ビスマス、ビスマス合金またはビスマスの金属間化合物など(これらに限定されない)である場合がある。熱電気材料はまた、熱電気特性を有することが既知である上記材料または他の材料のいずれかの混合物である場合がある。加えて、熱電気材料はまた、ドーパンントを含むことができる。代表的な例には、限定されないが、テルル化ビスマス、セレン化ビスマス、テルル化ビスマスアンチモンおよびテルル化ビスマスセレンなどが含まれる。他の材料が、例えば、米国特許出願公開第20020170590号に開示される。
【0119】
本発明のナノ構造体はまた、磁性材料を囲むことができる。一般に、実際にはすべての材料が、磁場の中に存在するとき、特定の材料に対して作用する力によって現れる何らかの程度の様々な磁性特性を有する。これらの磁性特性は、材料の亜原子構造に由来するものであり、基体毎に異なる。磁力の方向ならびに大きさが材料毎に異なる。
【0120】
力の方向が材料の内部構造のみに依存するのに対して、大きさは材料の内部構造ならびにサイズ(質量)の両方に依存する。実際には、物質の磁性特徴が関連づけられる材料の内部構造は、3つの大きな群の1つに従って、すなわち、反磁性材料、常磁性材料および強磁性材料の1つに従って分類され、この場合、最も強い磁力が強磁性材料に対して作用する。
【0121】
方向に関して、反磁性材料に対して作用する磁力は、常磁性材料または強磁性材料に対して作用する磁力の方向とは逆の方向である。外部磁場に置かれたとき、特定の材料は、磁場ベクトルに比例する単位体積あたり非ゼロの磁気モーメントを獲得する(これはまた、磁化として既知である)。十分に強い外部磁場については、強磁性材料は、材料におけるスピンの固有的な非局所的整列のために、その磁化を保持することができ、従って、永久磁石になる。強磁性材料とは対照的に、反磁性材料および常磁性材料はともに、外部磁場が切られると、磁化を失う。
【0122】
本発明のナノ構造体によって囲むことができる常磁性材料の代表的な例には、限定されないが、コバルト、銅、ニッケルおよび白金が含まれる。強磁性材料の代表的な例には、限定されないが、マグネタイトおよびNdFeBが含まれる。
【0123】
本発明のナノ構造体によってカプセル化され得る他の材料には、限定されないが、発光性材料(例えば、ジスプロシウム、ユウロピウム、テルビウム、ルテニウム、ツリウム、ネオジム、エルビウム、イッテルビウム、または、それらの任意の有機錯体)、生体鉱物(例えば、炭酸カルシウム)およびポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド)が含まれる。
【0124】
下記は、本発明の実施形態のナノ構造体アレイを組み込む様々な適用の説明である。
【0125】
アレイにおけるナノ構造体のタイプは、好ましくは、アレイが設計される用途に従って選択される。例えば、ナノ構造体アレイが、電流を伝えるために役立つ用途では、(例えば、ナノ構造体アレイが電極であるとき)、ナノ構造体アレイのナノ構造体は、上記において記載されるような導電性材料によって満たされるか、または被覆される;ナノ構造体アレイが、熱を伝えるために役立つ用途では、ナノ構造体アレイのナノ構造体は熱伝導性材料(例えば、金属など)によって満たされるか、または被覆される;ナノ構造体アレイが半導体チャネルとして役立つ用途では、ナノ構造体アレイのナノ構造体は、上記において記載されるような半導体材料によって満たされるか、または被覆される;また、ナノ構造体アレイが磁性物体として機能する用途では、ナノ構造体アレイのナノ構造体は、上記において記載されるような磁性材料によって満たされるか、または被覆される。
【0126】
ナノ構造体アレイが基体を含むとき、基体のタイプ、形状および材料は、アレイが設計される用途に従って選択される。従って、基体を、誘電性材料、導電性材料、熱伝導性材料および半導体材料などから作製することができ、または、誘電性材料、導電性材料、熱伝導性材料および半導体材料などによって被覆することができる。
【0127】
一般に、本発明のナノ構造体アレイは、ナノスケールのエレメントの使用を伴う様々な適用において使用することができる。そのような適用例が、米国特許第5581091号、同第6383923号、同第6428811号、同第6504292号、同第6559468号、同第6579742号、同第6586095号、同第6628053号、同第7163659号、ならびに、米国特許出願第20020053257号、同第20020054461号、同第20020175618号、同第20020187504号、同第20030089899号、同第20030121764号、同第20030141189号、同第20030165074号、および同第20030197120号に開示される(これらの内容は参照することにより本明細書に組み込まれる)。
【0128】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の実施形態のナノ構造体アレイは、ナノ構造体アレイが、例えば、ソースおよびドレインを相互連絡するチャネルとして役立ち得る電界効果トランジスター(FET)において使用することができる。特に好ましい実施形態においては、複数のナノ構造体がFETのそれ以外の電極に対して垂直に並べられる。
【0129】
図2は、本発明の1つの実施形態によるトランジスター20の断面の概略的な例示である。トランジスター20は、基体24に形成されるドレインとして作用する第1の電極22、チャネルとして作用するナノ構造体のアレイ26、および、アレイ26に形成されるソースとして作用する第2の電極28を含む。アレイ26は、第1の電極22に対して垂直に並べられる。アレイ26は、上記において記載されるアレイのいずれかが可能である。
【0130】
アレイ26の1ヵ所がゲート32によって囲まれ、一方で、残りの部分が、アレイ26を保護および支持するために絶縁性材料から作製されるスペーサーとして作用する埋め込み層30によってシールドされる。ゲート32がチャネル(アレイ26)を完全に囲む構造のために、チャネルの周りの電場の影響が最大となり、また、完全に空乏した空乏層が、ゲート32により生じる電場によって得られ、それにより、オン/オフの比率を最大にする。
【0131】
本発明の実施形態のナノ構造体はまた、集積回路チップにおける多数の導体のための導電層として役立ち得る。
【0132】
図3は、本発明の様々な例示的実施形態による導電層36の断面図の概略的な例示である。導電層36を、例えば、1つまたは複数のサブレイヤーが、整列したナノ構造体(例えば、ナノ構造体12)を含む、多数のサブレイヤー39の積み重ね体として構築することができる(5つのそのようなサブレイヤーが図3には示される)。異なるサブレイヤーは、異なる方向に整列させられるナノ構造体を含むことができる。例えば、1つのサブレイヤーにおけるナノ構造体のすべてが第1の方向において互いに実質的に平行に並べられ得る、そして、別のサブレイヤー(例えば、隣接するサブレイヤー)におけるナノ構造体のすべてが、第2の方向において、例えば、第1の方向に対して垂直に、互いに実質的に平行に並べられ得る。本発明の実施形態のナノ構造体は極めて大きい電気伝導率および電流容量を有することができるので、本発明の実施形態のナノ構造体は導電層の導体の内部における電流の大部分を伝えることができる。ナノ構造体は細長いので、その電気伝導率は非等方性であり、主としてナノ構造体の長さ方向に沿っている。本発明の実施形態のナノ構造体の多数のサブレイヤーを異なる方向で配置することによって、大きい電気伝導率を導電層の平面においてどの方向においても達成することができる。
【0133】
本発明の実施形態のナノ構造体アレイはまた、検知デバイスおよび/または刺激デバイスに組み込むことができ、例えば、医療用リード線に組み込むことができる。ナノ構造体が垂直に並べられるときに、この実施形態は特に有用である。そのような医療用リード線は、改善された電極性能をナノ構造体アレイの大きい表面積のために有することができる。そのような医療用リード線は、心臓ペーシングおよび/または心臓センシング、脳刺激および/または脳センシングなどのために使用することができる。
【0134】
図4a〜図4bは、本発明の様々な例示的実施形態による医療用リード線の概略的な例示である。
【0135】
図4aは、典型的には心臓ペーシングおよび/または心臓センシングのために使用することができる医療用リード線40を例示する。リード線40には、細長いリード線本体42、リード線の遠位側末端に位置する先端電極44、および、先端電極44から近位側に間隔を置いて置かれるリング電極46が備わる。リード線40の近位側末端にあるコネクターアセンブリー48が、リード線を医療デバイス(例えば、ペースメーカーなど)に接続するために使用される。リード線本体42の長さを伸ばす導体により、先端電極44およびリング電極46が、コネクターアセンブリー48によって伝えられるそれぞれのコネクターに電気的に結合する。電極44および電極46の少なくとも一方が、本明細書中上記においてさらに詳述されるようなナノ構造体アレイを含むことができる。好ましくは、電極44および電極46の1つまたは複数が、上記において記載される「森」ナノ構造体を含む。
【0136】
図4bは、ペーシング、センシング、カルジオバージョンおよび/または除細動のために使用することができるタイプの医療用リード線50の遠位側末端を概略的に例示する。リード線50には、ペーシングおよび/またはセンシングのために一般に使用される先端電極52およびリング電極54と、高エネルギーのショック用パルスをカルジオバージョンまたは除細動のために送達するための2つの除細動コイル電極(56および58)が備わる。電極52および電極54の少なくとも一方が、本明細書中上記においてさらに詳述されるようなナノ構造体アレイを含むことができる。好ましくは、電極52および電極54の1つまたは複数が、上記において記載される「森」ナノ構造体を含む。
【0137】
これらの例示的なリード線40およびリード線50は、本発明の実施形態のナノ構造体アレイを含むことができる、リング電極、コイル電極、先端電極を含めて様々なタイプの電極を例示するために示される。ナノ構造体アセンブリーの使用から同様に利益を受けることができる様々な幾何形状の他の電極が存在し得る。本発明の実施形態はまた、増大した活性な表面積および/または増大した電流密度容量から利益を受けることができる、神経学的刺激または神経学的センシング、平滑筋または骨格筋のセンシングまたは刺激、あるいは、任意の他のタイプの医療用電極のための電極と併せて使用することができる。
【0138】
本発明の実施形態のナノ構造体アレイはまた、熱エネルギーを物体に輸送するために、または、熱エネルギーを物体から輸送するために使用することができる。
【0139】
図5は、本発明の様々な例示的実施形態による、熱エネルギーを物体66に輸送するための、または、熱エネルギーを物体66から輸送するためのデバイス60を概略的に例示する。ナノ構造体(例えば、ナノ構造体12(これに限定されない)など)のアレイが、場合により使用される触媒層62を有する基体64の選択された表面に成長させられるか、または提供される。フィラー物質の層68(これは、それぞれのナノ構造体の上部部分の露出を可能にする深さを有する)が、ナノ構造体の機械的な強化のために、また、最初はナノ構造体に沿ってのみ移動する熱の改善された拡散のために提供され得る。ナノ構造体は、ナノ構造体の多くが、または、より好ましくは、ナノ構造体のすべてが、典型的にはでこぼこしている物体表面と接触するように、熱が除去されることになる(または、熱が送達されることになる)物体66の表面に対して押しつけることができる。結果として、押しつけられたナノ構造体は曲げられ得るか、または、曲がることができ、従って、物体66と、ナノ構造体12との間における熱輸送をさらに改善する。ナノ構造体12、および、場合により、基体64は、熱を環境に逃すように、環境に露出させることができる。従って、本発明の実施形態のナノ構造体アレイはヒートシンクとして役立ち得る。
【0140】
本発明の実施形態のナノ構造体アレイはまた、限定されないが、電気化学的センサー、機械的センサーおよび電気機械的センサーなどをはじめとする様々なセンサーにおいて使用することができる。
【0141】
図6は、本発明の様々な例示的実施形態によるセンサーシステム70の概略的な例示である。センサーシステム70は、間隔を置いて離れた電極74および電極76が、それらの位置が互いに向き合うように基体72に配置され、すき間78がそれらの間に規定される基体72を含むことができる。電極74および電極76は、この例示された例の場合では当てはまるように、互いに平行にすることができるが、互いに平行であることは要求されない。複数のナノ構造体(例えば、上記において記載されるナノ構造体12(これに限定されない)など)が基体72に作動可能に配置される。それぞれのナノ構造体には、すき間78が電極74および電極76の対向する部分の間に広がる。それぞれのナノ構造体の対向する末端が電極74および電極76のそれぞれの一方と電気的に接触している。
【0142】
センサーシステム70は、センサーシステムがつながれる構造体が受けるひずみ変化、圧力変化または温度変化をモニターするために使用することができる。構造体は本質的には動的であり得る(例えば、空気、空間、水またはランドクラフト)か、または、本質的には静的であり得る(例えば、建物、橋など)。典型的には、基体72が、モニターされることになる構造体の一部分につながれ、従って、センサーシステムは構造体のその部分における変化をモニターすることができる。基体72は、ナノ構造体が構造体に設置され得るならば、構造体そのものの一部である場合がある。
【0143】
本発明の実施形態のセンサーシステムは、特定のタイプの変化をモニターするために最適化することができる。例えば、構造体のひずみ経歴における変化が注目されるならば、基体72を柔軟な材料から作製することができ、例えば、ポリマーまたはエラストマーなどから作製することができる。センサーシステムが、圧力および/または温度の変化をモニターするために最適されることになるならば、基体72を非柔軟性の材料から作製することができる。センサーシステムが温度だけについて最適されることになるならば、基体72を非柔軟性の材料から作製することができ、システムのナノ構造体部分を、圧力感受性を排除するために堅い空気不透過性膜により被覆することができる。
【0144】
本発明の実施形態のナノ構造体アレイを取り込むセンサーはまた、小さい質量の物体(例えば、細菌など)を検出および測定するために水晶結晶微量天秤(QCM)センサーの原理に従って作動することができる。従って、少なくとも1つのチューブが物体にさらされ、かつ、少なくとも1つのチューブが物体にさらされないように、ナノ構造体が並べられ得る。さらされたナノ構造体アレイと、孤立したナノ構造体アレイとの間での共鳴振動数における差が、目的とする物体の質量を示す。
【0145】
その大きい表面積のために、本発明の実施形態のナノ構造体アレイはまた、分析物を流体媒体(気体または液体)から集めるために、また、分析物を、例えば、分光法(例えば、フーリエ変換分光法、フーリエ変換赤外分光法など)のために濃縮するために使用することができる。
【0146】
本発明のいくつかの実施形態において、ナノ構造体アレイはバイオセンサーデバイスに組み込まれる。そのようなデバイスは、電気化学信号に対して応答性である基体と、好ましくは、基体に対して略垂直なナノ構造体アレイとを含むことができる。デバイスはまた、領域内のナノ構造体の1つまたは複数に結合した捕獲抗体または酵素を含むことができる。
【0147】
本発明の実施形態のために好適である、電気化学信号に対して応答性の基体は、電流を電気伝導性媒体において、また、電気伝導性媒体から伝える電気導体を含む。電気導体は、個々にアドレス指定可能な多数の電気導体からなるアレイの形態で存在させることができる。電気導体は、金、銅、炭素、スズ、銀、白金、パラジウム、インジウムスズ酸化物、あるいは、前記材料の1つまたは複数を含む組合せから作製することができる。1つの実施形態において、電気導体は層の形態である。
【0148】
本発明の実施形態のナノ構造体は、生物活性分子(例えば、酵素および捕獲抗体など)とのバイオコンジュゲーションのための表面官能基を提供しながら、従来の2Dバイオセンサーの表面積を大きく増大させる。様々なバイオコンジュゲーション技術を用いることができ、これらには、吸着および共有結合による結合形成が含まれる。
【0149】
本発明の実施形態のバイオセンサーにおいて使用される好適な生物活性分子には、電気化学的な還元経路(例えば、ペルオキシドを伴う経路など)に関与する酵素が含まれる。本発明の実施形態のバイオセンサーにおいて使用される好適な捕獲抗体は、目的とする抗原の免疫学的検出のために有用である抗体である。
【0150】
使用において、バイオセンサーは、分析物が捕獲抗体に結合するために好適な条件なもとで試験サンプルと接触させられる。接触することにより、その後において検出することができる信号が間接的または直接的に生じる。検出が、好ましくは、電気化学的手段によって行われる。
【0151】
本出願から発達する特許の存続期間の期間中に、多くの関連したセンサーシステムが開発されることが予想され、従って、用語「センサー」の範囲は、すべてのそのような新しい技術を演繹的に包含するために意図される。
【0152】
下記は、本発明の様々な例示的実施形態による、ナノ構造体を製造するために好適な方法の記載である。
【0153】
本発明の実施形態のいくつかの実施形態において、揮発性有機溶媒に溶解された有機モノマーが基体表面に分注されるか、または置かれる。有機モノマーは、本明細書中上記においてさらに詳述されるようなペプチドモノマーが可能である。溶媒は、好ましくは、溶液における有機モノマーの分散を溶媒の蒸発の前に可能にするように選択される。溶媒における有機モノマーの濃度は有機モノマーおよび基体のタイプに依存する。本発明の様々な例示的実施形態において、濃度は、有機モノマーが基体に対して略垂直に自己集合することを可能にするように選択される。いくつかの実施形態において、有機モノマー濃度は少なくとも10mg/mlであり、より好ましくは少なくとも20mg/mlであり、より好ましくは少なくとも30mg/mlであり、より好ましくは少なくとも40mg/mlであり、より好ましくは少なくとも50mg/mlである。これらの実施形態は、有機モノマーがペプチドモノマーであるときには特に好適であるが、これらに限定されない。
【0154】
基体は、任意のタイプまたは材料のものが可能である。本発明の様々な例示的実施形態において、基体は平面状である。基体は、誘電性材料、導電性材料または半導体材料から作製することができる。基体材料の代表的な例には、限定されないが、ガラス、ケイ素、二酸化ケイ素、シリコーン処理ガラス、金およびインジウムスズ酸化物が含まれる。他の材料は本発明の範囲から除外されない。
【0155】
前記有機モノマーの自己集合のための条件を生じさせながら、溶媒が、基体表面に略垂直に配置される複数の細長い有機ナノ構造体を形成するなどのために蒸発させられる。
【0156】
本発明の実施形態のいくつかの実施形態において、有機モノマーは電気的に帯電される。モノマーの電荷は、好ましくは、反発力をモノマー間において確立するために、また、ナノ構造体の配向を容易にするために選択される。モノマーおよび/または基体は、好ましくは、反発力を、モノマーと、基体との間において確立するために、従って、基体表面におけるナノ構造体の略垂直な組み立てを容易にするために選択される。ナノ構造体が基体表面に形成されると、ある面に対して略垂直であり、かつ、ナノ構造体に結合する基体を何ら有しないナノ構造体のアレイを形成するために、ナノ構造体を基体から集めることができる。
【0157】
本発明のいくつかの実施形態において、有機モノマーと、力場に対して応答性であるナノ粒子とがインキュベーションされる。ナノ粒子は典型的には無機であり、磁性ナノ粒子が可能であり、そのような場合、力場は好ましくは磁場であり、または、電気的に帯電したナノ粒子が可能であり、そのような場合、力場は好ましくは電場である。インキュベーション条件は、細長い有機ナノ構造体への有機モノマーの自己集合、および、ナノ粒子による細長い有機ナノ構造体の自己被覆を可能にするために選択される。従って、ナノ粒子の1つまたは複数の層によって被覆された細長いナノ構造体が形成される。インキュベーション期間中、または、インキュベーションに続いて、例えば、ナノ構造体を互いに略平行に並べるために、被覆されたナノ構造体に力場が加えられる。場合により、力場は表面に対して略平行に向けられ、その結果、ナノ構造体アセンブリーが表面に対して平行に並べられる。ナノ構造体が並べられると、ナノ構造体に結合する基体を何ら有しないナノ構造体の平面状アレイを形成するために、ナノ構造体を基体から離すことができる。
【0158】
本発明の実施形態のナノ構造体がフィラー物質により満たされるか、または、被覆材料により被覆されるとき、ナノ構造体が形成されると、充填および/または被覆を行うことができる。
【0159】
フィラー物質を、この技術分野において既知であるいずれかの技術を使用して、例えば、無電解析出、ならびに/あるいは、国際特許出願公開番号WO2004/060791号や米国特許第5916642号および同第6361861号(これらの内容は参照することにより本明細書に組み込まれる)によって開示および/または参照される技術のいずれか(これらに限定されない)を使用して、物質をナノ構造体内にカプセル化するためにナノ構造体の内部空洞に導入することができる。
【0160】
ナノ構造体は、この技術分野において既知であるいずれかの技術を使用して、例えば、無電解析出、ならびに/あるいは、国際特許出願公開番号WO200106257、同WO200228552および同WO2004052773(これらの内容は参照することにより本明細書に組み込まれる)によって開示および/または参照される技術のいずれかなど(これらに限定されない)を使用して、被覆材料によって被覆することができる。
【0161】
用語「含む(comprises、comprising、includes、includining)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0162】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、かつそれらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0163】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、特許請求される組成物、方法、または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法、または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0164】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0165】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0166】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0167】
明確にするため別個の実施態様の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0168】
本明細書の上記に詳述され、かつ添付の特許請求の範囲において特許請求される本発明の種々の実施形態および局面は、以下の実施例に実験的裏付けを見出す。
【実施例】
【0169】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なおこれら実施例は、本発明のいくつかの実施形態を非限定的な様式で例示する。
【0170】
実施例1
垂直に並べられた芳香族ジペプチドナノ構造体
垂直に並べられた芳香族ジペプチドナノ構造体のアレイの形成が下記において例示される。
【0171】
材料
ジフェニルアラニンおよびジフェニルアラニンペプチドアナログをBachem(Bubendorf、スイス)から購入した。ジフェニルアラニンペプチドおよびアナログの新鮮な溶液を、ペプチドの凍結乾燥形態を1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFP、Sigma)に溶解することによって調製した。何らかの事前の凝集を避けるために、新鮮なストック溶液をそれぞれの実験のために調製した。
【0172】
下記のジフェニルアラニンペプチドアナログを調べた:(a)Ac−Phe−Phe−NH、(b)t−ブチルカルバマート−Phe−Phe−COOH(Boc−Phe−Phe−COOH)、(c)カルボベンジルオキシ−Phe−Phe−COOH(Cbz−Phe−Phe−COOH)、(d)フルオレニルメトキシカルボニル−Phe−Phe−COOH(Fmoc−Phe−Phe−COOH)、(e)シクロ−Phe−Phe。
【0173】
方法
下記のペプチド濃度が結果の節に示される(図12を参照のこと):20mg/ml、40mg/ml、60mg/ml、80mg/ml、120mg/mlおよび180mg/ml。
【0174】
ペプチドを100mg/mlの最終濃度にHFPに溶解した後、溶液の30μlを、図7aに例示されるように、直径が22mmのシリコーン処理ガラス(Hampton research、CA、米国)に置いた。この高揮発性フッ素化アルコールは、単分散された基本構成要素としてのペプチド実体の存在を可能にする注目すべき溶媒である。HFPが急速に蒸発したとき、垂直に並べられたペプチドナノ構造体の薄い層が基体表面に形成された。
【0175】
この層を、走査電子顕微鏡(SEM)を使用して分析した。サンプルを金で被覆し、5kVで稼動するJSM JEOL6300走査電子顕微鏡観察(SEM)を使用して分析した。低温電界放出銃(CFEG)高分解能走査電子顕微鏡観察(HR−SEM)による分析のために、サンプルをCrで被覆し、1kVで稼動する低温電界放出銃を備えるJSM−6700電界放出走査電子顕微鏡を使用して調べた。
【0176】
形成されたアレイの構造を決定するために、X線回折分析(図7a)を行った。X線回折測定を、銅陽極、平行ビーム光学系および12kWのジェネレーター出力を用いるTtraxθ−θ回折計(Rigaku、日本)を使用して行った。
【0177】
加えて、電子回折実験を行った。電子回折実験を、電界放出銃とともに200kVにおいてFEI Tecnai F20顕微鏡で行った。低線量法を使用した;探索を極めて低い線量および低倍率で行い、その後、電子回折パターンを500msの露出時間によりカメラ(4kX4kの画素を有するTVIPS F415カメラ)に直接に記録した。1個のチューブの電子回折分析は、a=約21.0Å、b=5.4Åの単位格子と一致していた(この場合、aは結晶の長軸に対して垂直に配向している)。3つの異なるチューブの研究において、bは常に5.4Åであり、この場合、aは20.5Å〜21.9Åの間で変化した。このことは、ジフェニルアラニンの単結晶について求められるような[a=24.1Å、b=24.1Å、c=5.5Å]の単位格子と一致している。
【0178】
このプロセスにおける電荷の役割をさらに検討するために、ジフェニルアラニンペプチドの、その脱プロトン化状態での表面における集合を、溶解されたペプチドモノマーへのN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIAE)の添加によって調べた。画像は、下記のDIAE濃度についての得られた画像であった:0.5%のDIAE、1%のDIAE、2%のDIAEおよび5%のDIAE。
【0179】
結果
基体表面に形成された薄い層のSEM分析により、ペプチドナノ構造体の垂直に並べられたアレイが形成されたことが明らかにされた(図7b)。この実験でのペプチドナノ構造体は管状の形状を有していた。このペプチドナノ構造体はこの実験ではペプチドナノチューブとして示される。
【0180】
高分解能SEMによる分析は、チューブの整列したアレイを理解する手がかりをもたらし、また、それらの構造的な開口端配座を明らかにした(図7c)。加えて、それらの外径がそれらの内部空洞よりもはるかに広いので、チューブの多壁構造が明瞭に観察された(図7d)。
【0181】
何らかの理論にとらわれることはないが、構造体の整列した組織化が、HFP溶媒の急速な蒸発の期間中に存在する蒸気−液体−固体の系によって得られる成長軸の方向での芳香族成分の幾何学的に制約された積み重なりによって容易にされることが推測される。図11を参照すると、ペプチド基本構成要素がHFP溶液においてモノマーとして堆積されつつある。急速な蒸発は過飽和および結晶化のプロセスを引き起こす。異なる方向での、差のある成長速度により、細長いシートの形成が引き起こされる。2次元の細長いシートは、密な管状構造体を形成する傾向がある。
【0182】
形成されたアレイの構造を決定するために、X線回折分析(図7e)を行った。観測された6回対称性は、ジフェニルアラニンの単結晶に関して見出される対称性、または、溶液におけるナノチューブの形成を引き起こす条件のもとでの粉末回折に関して見出される対称性と非常に類似している[26〜27]。これらの実験はナノチューブの結晶または大きな集まりに対して行われたので、1個のナノチューブの電子回折パターンを求めた(図7f)。結果は、チューブ集団について引き出された結論が1個だけのチューブのレベルでもまた有効であることを示唆する。ナノチューブの整列のレベルが、サンプルの角度を高分解能走査電子顕微鏡(HR−SEM)チャンバーで変化させた傾斜実験によって観測された(図8)。
【0183】
何らかの理論にとらわれることはないが、HFP溶媒の急速な蒸発は、表面における無数の核形成部位の形成を容易にする過飽和状態を生じさせることが示唆される。この後には、より多くのジフェニルアラニンモノマーが核形成部位に積み重なり、液体−空気の境界に向かって表面に沈降していくようなナノチューブの一方向での成長が続く。この集合プロセスが、光学顕微鏡を使用して観測された。ペプチド溶液が堆積後の数秒間は完全に透明である一方で、整列した構造体の同時かつ協調した形成が、蒸発が許されるとすぐに生じる。それぞれの核形成事象により、100μmの面積にわたるナノチューブの垂直なアレイの形成、および、これらの整列した構造体による表面全体の被覆がもたらされる(図7b)。他の集合機構もまた考慮される。例えば、溶液開始の集合の後には、事前に形成されたチューブの、ナノチューブの垂直なアレイへの組織化が続くことができる。
【0184】
ペプチド基本構成要素のアラインメントが、160mg/mlから60mg/mlにまで及ぶペプチド濃度において観測された。図12a〜図12fは下記のペプチド濃度についてのSEM画像である:(a)20mg/ml、(b)40mg/ml、(c)60mg/ml、(d)80mg/ml、(e)120mg/ml、(f)180mg/ml。
【0185】
より低い濃度では、ナノチューブの形成が検出されるが、特定の配向を有していなかった(図12a、図12b)。濃度下限が、本実験で使用されたペプチドモノマーは、本実験で使用された表面での過飽和主導の成長を伴って核形成することができないことを反映していることが推測される。濃度上限が、多数の軸に沿った、本実験で使用されたペプチドの制御されない成長から生じることもまた推測される(図12f)。それにもかかわらず、他の濃度を他の有機モノマーおよび他の基体とともに使用することができる。
【0186】
回折実験によって反映されるように、蒸発が許されたときの整列したナノ構造体へのペプチドモノマーの集合は、好ましい結晶化プロセスの結果であり得る。蒸発したときの基本構成要素の濃縮は不安定相への溶液の転移を生じさせる。非晶質クラスターへの凝集の場合には、相転移および相分離が観測されない。これらの発見は、核形成主導の形成機構をさらに裏付ける。
【0187】
垂直な自己組織化のための分子的基礎を解明するために、様々なジフェニルアラニンアナログの自己集合をモニターした。
【0188】
図9a〜図9cは、正荷電のジフェニルアラニンペプチドアナログが、ジフェニルアラニンペプチドと同じ様式でシリコーン処理ガラスに自己集合し得ることを明らかにする。これらのアナログは、水溶液中での自己会合によってナノ集合体を形成することができ、それにもかかわらず、これらのアナログは、その静電荷状態では元のジフェニルアラニンとは異なる。この天然ペプチドは中性条件では双性イオン性であり、正荷電のアミン基および負荷電のカルボキシル基を有することに留意すること。
【0189】
下記の表1は、本実施例で使用されたジフェニルアラニンペプチドアナログの化学構造を示す。中性pHにおいて、これらの化合物は様々な電荷状態で存在する。母体のジフェニルアラニン(NH−Phe−Phe−COOH)は双性イオン性であり、正荷電のアンモニウム基および負荷電のカルボキシラート基を有する。N−アセチル化(Ac5アセチル)化合物(Ac−Phe−Phe−NH)は中性であり、電荷を有していない。ジフェニルアラニンのアミド誘導体(NH−Phe−Phe−NH)は1個の正荷電を有しており、これに対して、最後の3つはそれぞれが1個の負荷電を有しているが、ジペプチドのN末端に結合する基(すなわち、t−ブトキシカルボニル(Boc)、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)またはベンジルオキシカルボニル(Cbz))の性質において異なる。
【0190】
これらのアナログのSEM分析では、電荷が自己集合プロセスに影響を及ぼすことが明らかにされた;非荷電アナログのAc−Phe−Phe−NHは非配向の管状構造体を表面に形成した(図13)一方で、正荷電ペプチドのNH−Phe−Phe−NHは、並べられた構造体をこの堆積プロセスで形成した(図9)。
【0191】
t−ブチルカルバマート−Phe−Phe−COOH(Boc−Phe−Phe−COOH)ペプチドを、このプロセスにおける負荷電の役割を検討するために使用した。このペプチドは、正荷電のアナログのような並べられた管状構造体を形成しなかった。このことはまた、より大きな成分により修飾された他の負荷電ペプチドアナログに関しても当てはまった。正味の電荷を有していない環状アナログは、表面におけるランダムな配向を伴う十分に整列した管状構造体に集合した(図13)。表面におけるこのランダムな集合は、チューブの配向を容易にするための反発力がないことから生じることが示唆される。負荷電ペプチドの場合、管状構造体を、表面とのそれらの相互作用のために、溶液の場合と同じ様式で検出することができなかった。
【0192】
このプロセスにおける電荷の役割をさらに検討するために、ジフェニルアラニンペプチドの、その脱プロトン化状態での表面における集合を、溶解されたペプチドモノマーへのN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)の添加によって調べた。
【0193】
図14a〜図14dは、(a)0.5%のDIAE、(b)1%のDIAE、(c)2%のDIAEおよび(d)5%のDIAEについての得られた画像である。0.5%のDIAEが存在する場合、並べられた管状構造体が形成され、しかしながら、DIAE濃度が増大したとき、チューブの秩序および方向性が影響を受け、ランダムな配向が観測された(図14)。高濃度の塩基に起因するジペプチドの放電が集合化プロセスの方向性に影響を及ぼすことが推測される。正荷電の表面に加えられたとき、ジフェニルアラニンペプチドは、並べられたアレイに自己集合しなかった。これらの実験結果は、極めて整列しているが、ばらばらであるペプチドアレイが、自己集合したナノ構造体の間における反発する静電相互作用によって安定化され続けていることをさらに示唆する。

【0194】
実施例2
水平に並べられた芳香族ジペプチドナノ構造体
本発明者らは、水平に並べられた芳香族ジペプチドナノ構造体のアレイを形成するために本発明の実施形態の方法を首尾良く用いた。このアレイを形成するために、磁場を加えた。カーボンナノチューブおよび無機ナノ粒子を並べるための磁場の使用が広範囲に研究される[30]が、有機ナノ構造体との磁場の使用は大きな課題をもたらしている。
【0195】
材料
ジフェニルアラニンおよびジフェニルアラニンペプチドアナログをBachem(Bubendorf、スイス)から購入した。ジフェニルアラニンペプチドおよびアナログの新鮮な溶液を、ペプチドの凍結乾燥形態を1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFP、Sigma)に溶解することによって調製した。何らかの事前の凝集を避けるために、新鮮なストック溶液をそれぞれの実験のために調製した。
【0196】
方法
ジフェニルアラニンペプチドの新鮮なストック溶液をHFPに溶解して100mg/mLの濃度にした。その後、ストック溶液を、水に希釈された20%の強磁性流体(EMG508、Ferrotec Corporation)における2mg/mLの最終濃度に希釈した。この市販されている水系強磁性流体は、10nmの特性直径を有する1.07%のマグネタイト(Fe)粒子を、安定化されたアニオン性界面活性剤の存在下で有する。
【0197】
水での希釈の後、マグネタイトナノ粒子の最終濃度は0.214%であった。一晩のインキュベーションの後、ナノ構造体の自己集合が明らかにされた。溶液の10μlの1滴をカバースリップスライドに置いた。
【0198】
次の工程において、スライドを、Hall Measurement System(Bridge Technology、米国)から得られる0.5Tの永久磁石の中に置いた。サンプルは、溶液が乾くまで外部磁力にさらされた。この後、上記のようなサンプルのSEM分析が続いた。
【0199】
TEM分析のために、ペプチド溶液の10μlの1滴を200メッシュの銅グリッドに置き、カーボン安定化Formvarフィルムによって覆った。1分後、過剰な流体を除き、グリッドおよびサンプルを、80kVで稼動するJEOL 1200EX透過電子顕微鏡(TEM)を使用して調べた。
【0200】
結果
図10a〜図10gは、強磁性流体の存在下における、ジフェニルアラニンに基づくペプチドナノチューブの自己集合、および、それらを外部磁場にさらすことにより、それらの水平アラインメントの制御がもたらされたことを示す。
【0201】
図10aは、マグネタイトナノ粒子を含有する強磁性流体溶液の存在下で自己集合させたジペプチドモノマーの概略的な例示である。示されるように、ジフェニルアラニンモノマーがマグネタイトナノ粒子の存在下で集合した。
【0202】
図10bは、磁性粒子により被覆される自己集合したペプチドナノ構造体のTEM画像である。芳香族ジペプチドナノ構造体が管状構造体に集合した一方で、磁性ナノ粒子は磁性ナノ粒子の非共有結合性の被覆層を形成した。被覆は、非荷電ナノ構造体の壁の周りの周辺であった。マグネタイト粒子が疎水性相互作用によって壁に付着すると考えられる。磁性粒子の存在はチューブ形成の大きい収率に影響を及ぼさなかった。すべての管状構造体が磁性粒子により被覆されたので、このプロセスの大きい効率がTEM分析によって認められた。
【0203】
図10cは、自己集合した磁性ナノ構造体の低倍率SEM顕微鏡写真である。被覆された芳香族ジペプチドナノ構造体が、表面に適用されるとき、ランダムに広がる。
【0204】
図10dは、磁場にさらされた後での自己集合した磁性ナノ構造体の水平配置を示す低倍率SEMである。示されるように、外部磁場にさらされたとき、すべてのナノ構造体が磁場に応答し、表面へのナノ構造体の空間的組織化、および、磁場の方向に従ったそれらのアラインメントをもたらした。
【0205】
図10e〜図10gは、自己集合した被覆されるナノ構造体の概略的な例示(図10e)、磁場にさらされる前のランダムに整列したいくつかの被覆されるナノ構造体の概略的な例示(図10f)、ならびに、ナノ構造体が磁場にさらされている間、および、その後における水平に並べられた被覆されたナノ構造体の概略的な例示である。
【0206】

【0207】
本発明はその特定の実施形態と共に説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神の広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0208】
本明細書中で言及した刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許または特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている範囲まで、それらは必ずしも限定として見なされるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体表面に略垂直に配置される複数の細長い有機ナノ構造体とを含む、ナノ構造体アレイ。
【請求項2】
互いに略平行に並べられる複数の細長い有機ナノ構造体の平面状配置を含む、ナノ構造体アレイ。
【請求項3】
揮発性有機溶媒に溶解された有機モノマーを基体表面に分注すること、および、前記有機モノマーの自己集合のための条件を生じさせながら、前記溶媒を、前記基体表面に略垂直に配置される複数の細長い有機ナノ構造体を形成するように蒸発させることを含む、ナノ構造体アレイを製造する方法。
【請求項4】
前記揮発性有機溶媒は、前記溶媒における前記有機モノマーの分散を前記蒸発の前に可能にするように選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有機モノマーは、少なくとも10mg/mlの濃度で前記揮発性有機溶媒に溶解されたペプチドモノマーである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記有機モノマーは電気的に帯電される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
有機モノマーと、力場に対して応答性であるナノ粒子とを、細長い有機ナノ構造体への前記有機モノマーの自己集合、および、前記ナノ粒子による前記細長い有機ナノ構造体の自己被覆のための条件のもとでインキュベーションすること;および、
力場を、前記細長い有機ナノ構造体を互いに略平行に並べるように、前記細長い有機ナノ構造体に加えること
を含む、ナノ構造体アレイを製造する方法。
【請求項8】
前記ナノ粒子は磁性ナノ粒子であり、前記力場は磁場である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノ粒子は、電気的に帯電されたナノ粒子であり、前記力場は電場である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記有機モノマーはペプチドモノマーを含む、請求項3または7に記載の方法。
【請求項11】
前記有機ナノ構造体は多壁ナノ構造体である、請求項1、2、または10に記載のナノ構造体アレイまたは方法。
【請求項12】
前記有機ナノ構造体はペプチドナノ構造体である、請求項1、2、または10に記載のナノ構造体アレイまたは方法。
【請求項13】
前記ペプチドナノ構造体のそれぞれが複数のペプチドを含む、請求項1、2、または12に記載のナノ構造体アレイまたは方法。
【請求項14】
前記複数のペプチドにおけるそれぞれのペプチドが、2個〜15個のアミノ酸残基を含む、請求項13に記載のナノ構造体アレイまたは方法。
【請求項15】
前記複数のペプチドにおけるそれぞれのペプチドが、少なくとも1つの芳香族アミノ酸残基を含む、請求項13に記載のナノ構造体アレイまたは方法。
【請求項16】
前記複数のペプチドにおける少なくとも1つのペプチドが、エンドキャッピング修飾ペプチドである、請求項13に記載のナノ構造体アレイまたは方法。
【請求項17】
前記複数のペプチドにおける少なくとも1つのペプチドが、芳香族アミノ酸残基から本質的になる、請求項15に記載のナノ構造体アレイまたは方法。
【請求項18】
前記複数のペプチドにおける少なくとも1つのペプチドが、ジペプチドである、請求項13に記載のナノ構造体アレイまたは方法。
【請求項19】
前記複数のペプチドにおけるそれぞれのペプチドが、フェニルアラニン−フェニルアラニンジペプチドである、請求項18に記載のナノ構造体アレイまたは方法。
【請求項20】
前記ペプチドナノ構造体の少なくとも1つが、ナノ粒子の少なくとも1つの層によって被覆される、請求項12〜19のいずれかに記載のナノ構造体アレイまたは方法。
【請求項21】
前記ナノ粒子は磁性ナノ粒子である、請求項20に記載のナノ構造体アレイまたは方法。
【請求項22】
前記ナノ粒子は電気的に帯電される、請求項20に記載のナノ構造体アレイまたは方法。
【請求項23】
少なくとも1つのペプチドナノ構造体が、そのペプチドナノ構造体に結合した官能基を含む、請求項12〜19のいずれかに記載のナノ構造体アレイまたは方法。
【請求項24】
前記有機ナノ構造体は電気的に帯電される、請求項1〜19のいずれかに記載のナノ構造体アレイまたは方法。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに記載のナノ構造体アレイを含む、電界効果トランジスター。
【請求項26】
請求項2に記載のナノ構造体アレイを含む、導電層。
【請求項27】
請求項1〜24のいずれかに記載のナノ構造体アレイを含む、センサー。
【請求項28】
請求項1〜24のいずれかに記載のナノ構造体アレイを含む、医療用リード線。
【請求項29】
請求項1〜24のいずれかに記載のナノ構造体アレイを含む、刺激用電極。
【請求項30】
請求項1〜24のいずれかに記載のナノ構造体アレイを含む、熱エネルギーを移動するためのデバイス。
【請求項31】
請求項1〜24のいずれかに記載のナノ構造体アレイを含む、分析物捕集デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a−d】
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【図7e−f】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b−g】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−512015(P2010−512015A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539870(P2009−539870)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【国際出願番号】PCT/IL2007/001495
【国際公開番号】WO2008/068752
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(501177609)ラモット・アット・テル・アビブ・ユニバーシテイ・リミテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】RAMOT AT TEL AVIV UNIVERSITY LTD.
【Fターム(参考)】