説明

有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法、並びに土壌・地下水汚染の浄化方法

【課題】銅などの環境負荷物質を含有しないにも拘らず、従来技術に係る有機ハロゲン化合物処理用材料と同等以上の有機ハロゲン化合物処理性能を有する鉄粉を提供する。
【解決手段】鉄粉を、水、および、水よりも蒸気圧が低く酸素を含む有機溶媒、から選択される1種以上の溶媒に浸漬する工程と、当該溶媒に浸漬された鉄粉を固液分離して、当該溶媒で湿った鉄粉を得る工程と、当該溶媒で湿った鉄粉を40℃未満の温度を保ちながら乾燥処理する工程とを、有することを特徴とする有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌・地下水などに含有される有機ハロゲン化合物を分解する有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法、並びに土壌・地下水汚染の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の脱脂洗浄やドライクリーニングなどの溶剤として、トリクロロエチレン(TCE)、テトラクロロエチレン(PCE)などを代表とする有機ハロゲン化合物が用いられる。そして当該有機ハロゲン化合物やこれらが土壌中の微生物により脱塩素化されたシス−1,2−ジクロロエチレン(cis−1,2−DCE)などで汚染された土壌を浄化するため、様々な技術の開発・実用化が進んでいる。
【0003】
例えば、特許文献1は、トリクロロエチレン等の有機ハロゲン化合物で汚染された土壌へ、比表面積が500cm/g以上でC(炭素)を0.1wt%以上含有する鉄粉を混合することで、土壌中のトリクロロエチレン等が効果的に分解できると提案している。
特許文献2は、高純度鉄粉(C含有量0.1質量%未満、Si含有量0.25質量%未満、Mn含有量0.60質量%未満、P含有量0.03質量%未満、S含有量0.03質量%未満、O含有量0.5質量%未満)が、シス−1、2−ジクロロエチレン(cis−1、2−DCE)等の難分解性の有機ハロゲン化合物で汚染された土壌、水の浄化に有効であると提案している。
【0004】
本出願人は、特許文献3、特許文献4および特許文献5において、鉄粉粒子の表面に金属銅が析出した銅含有鉄粉を開示した。そして、当該銅含有鉄粉を、有機ハロゲン化合物で汚染された土壌や地下水等に添加混合すると、当該有機ハロゲン化合物を効率良く分解できることを開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−235577号公報
【特許文献2】特開2002−316050号公報
【特許文献3】特開2000−005740号公報
【特許文献4】特開2002−069425号公報
【特許文献5】特開2003−339902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、本発明者は有機ハロゲン化合物を脱塩素分解して汚染濃度を減少させる技術開発に取り組んできた。その際、当該技術開発の技術要素として、汚染物質である有機ハロゲン化合物を分解する能力の高い分解剤を製造することが、重要な目的の一つであると考えた。そして、当該分解剤の代表例として鉄粉および鉄を主要成分とする粉体があると考えた。
さらに本発明者は、今後、上述した有機ハロゲン化合物分解用の鉄粉に対して銅などの環境負荷物質を添加することを止めて、製造工程における銅添加工程を削除し、工程全体を簡略化すること、土壌浄化工事後の土壌に対して銅などを残留しない環境負荷の低い土壌浄化処理剤が求められると考えた。
【0007】
本発明は、上述の状況の下でなされたものであり、その解決しようとする課題は、銅などの環境負荷物質を含有しないにも拘らず、従来技術に係る有機ハロゲン化合物処理用材料と同等以上の有機ハロゲン化合物処理性能を有する鉄粉を提供し、さらに当該鉄粉を用いた土壌・地下水汚染の浄化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鉄粉を、水、および、水よりも蒸気圧が低く酸素を含む有機溶媒から選択される1種以上の溶媒に浸漬した後に、当該溶媒に浸漬された鉄粉を固液分離して当該溶媒で湿った鉄粉を得、得られた鉄粉を、40℃未満の温度を保ちながら乾燥処理することで、鉄粉の有機ハロゲン化合物に対する分解能力を大きく向上させることが可能であることを知見し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、上述の課題を解決する為の、第1の発明は、
鉄粉を、水、および、水よりも蒸気圧が低く酸素を含む有機溶媒、から選択される1種以上の溶媒に浸漬する工程と、
当該溶媒に浸漬された鉄粉を固液分離して、当該溶媒で湿った鉄粉を得る工程と、
当該溶媒で湿った鉄粉を40℃未満の温度を保ちながら乾燥処理する工程とを、有することを特徴とする有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法である。
【0010】
第2の発明は、
前記乾燥処理する工程を、0℃以上10℃以下の温度を保ちながら行うことを特徴とする第1の発明に記載の有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法。
【0011】
第3の発明は、
鉄粉を酸処理した後に、前記水、および、水よりも蒸気圧が低く酸素を含む有機溶媒、から選択される1種以上の溶媒に浸漬する工程、を行うことを特徴とする第1または第2の発明に記載の有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法である。
【0012】
第4の発明は、
前記乾燥処理する工程を、0.1時間以上72時間以下行うことを特徴とする第1から第3の発明のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法である。
【0013】
第5の発明は、
前記乾燥処理する工程を、溶媒重量が鉄粉重量の0.5質量%以下となる迄、行うことを特徴とする第1から第3の発明のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法である。
【0014】
第6の発明は、
前記鉄粉として、平均粒径が1μm以上500μm以下である鉄粉を用いることを特徴とする第1から第5の発明のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方である法。
【0015】
第7の発明は、
前記鉄粉として、板状比2以上の扁平形状を有する鉄粉を用いることを特徴とする第1から第6の発明のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法である。
【0016】
第8の発明は、
第1から第7の発明のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法により製造された鉄粉を用いたことを特徴とする土壌・地下水汚染の浄化方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、銅などの添加物を含まず、かつ有機ハロゲン化合物の分解能力が高い有機ハロゲン化合物処理用鉄粉を低コストで得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る試料による有機ハロゲン分解において、有機ハロゲン化合物の濃度の経日的変化を示すグラフである。
【図2】乾燥温度の異なる実施例に係る試料による有機ハロゲン分解において有機ハロゲン化合物の分解反応速度定数kを示すグラフである。
【図3】乾燥温度の異なる実施例に係る試料による有機ハロゲン分解において有機ハロゲン化合物の分解反応速度定数kを示すグラフである。
【図4】比較例に係る試料による有機ハロゲン分解において有機ハロゲン化合物の分解反応速度定数kと、ポットミルによる回転処理時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)原料となる鉄粉
本発明に係る有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造に用いる鉄粉は、粒状のものである。当該鉄粉の組成については、鉄を主成分としていれば特に限定されるものではないが、全鉄が80質量%以上、金属鉄が75質量%以上であることが好ましい。さらに、環境負荷の低減の為、2次汚染源となるクロム、鉛などの成分を含有しないものであることが望ましい。
具体的には、予め製造された鉄粉、例えば鉱石から還元により製造された還元鉄粉やアトマイズなどにより製造されたアトマイズ鉄粉などを用いることができる。そして当該鉄粉の粒径が予め所望のサイズであれば、製造工程において粒径調整を要することがなく好ましい。具体的には、これらの鉄粉の平均粒径が、1μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0020】
当該鉄粉の好ましい一例として、DOWA IPクリエイション株式会社製 還元鉄粉DKP−100を挙げることが出来る。
ここで還元鉄粉DKP−100の化学成分の分析結果を表1に示す。物性値を後述する表2に示す。尚、表2の粒度分布はレーザー回折法による評価結果である。D10〜D90とは粒径累積のことである。鉄粉の重量百分率(%)を縦軸に、粒径を対数目盛の横軸にしてプロットしたものを粒径累積曲線といい、このグラフから重量百分率50%にあたる粒径を、D50(50%粒径)と定義する。D10、D90も同様の手順で算出して求めたものである。
【0021】
【表1】

【0022】
表1の化学成分組成より、本発明に係る鉄粉に含有されるクロム、鉛は十分に微量で、2次汚染源とはならないことが判る。銅は、クロム、鉛よりも多量に含有されているが、従来の技術に係る有機ハロゲン化合物処理用鉄粉では、銅を0.1wt%以上含有させて有機塩素化合物の分解効果を向上させており、また農用地におけるCu含有量基準値は125mg/kgに設定されていることから、少なくとも日本国内においては法制度上問題のないレベルである。
さらに、本発明に係る鉄粉の銅含有量が、従来の技術に係る有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の銅含有量の1/3にも満たないことは、本発明に係る鉄粉が、従来の技術に係る鉄粉とは異なるメカニズムにより、有機ハロゲン化合物を分解していることの裏付けであると考えられる。
【0023】
(2)鉄粉の扁平化処理
原料となる鉄粉へ予め扁平化処理を加えて、板状比2以上の扁平形状鉄粉とする構成も好ましい。当該扁平化処理は、原料鉄粉と水とを混合した状態とし、原料鉄粉と水との混合物へ、衝撃および/または圧力を加えることによって、当該鉄粉の粒子を扁平形状に変形することで行う。
当該原料鉄粉と水との混合物へ、衝撃および/または圧力を加えるには、粉砕機を用いて塑性変形加工を施すことで行う。当該粉砕機としては、容器の中に入った衝撃媒体(すなわちメディア)をかき回しながら粉砕を行う「媒体撹拌型ミル」、具体的にはアトライターやボールミルがよい。ボールミルやアトライターは微粉砕に適し、衝撃力や圧力を制御し易いため、所望の粒度分布の扁平鉄粉を得やすいからである。尚、ボールミルを用いる場合は、回転駆動型、振動駆動型ボールミルを用いることができる。
【0024】
上記アトライター、ボールミル等において塑性変形加工を行う際は、前記メディアとともに原料鉄粉と水(例えば、イオン交換水、工業用水、水道水など)とを、所定容器に装填する。そして、当該容器を例えば回転させることで、原料鉄粉が変形、粉砕処理される。
例えば、回転型ボールミルを用いて処理を行った場合であれば、処理用ポット(磁製、ステンレス製などが用いられる)中に、メディア、原料鉄粉を投入し、回転処理を行う。
尤も、所定容器に水を入れる目的は、鉄粉の分散状態を向上し、鉄粉とメディアが均一に効率よく接触させるためである。従って、例えば、所定容器中の鉄粉の分散状態を向上させる為、鉄粒子の表面処理などの目的の為、溶媒として水だけでなく、有機溶媒、油分、各種溶液などの媒体を同時に投入しても良い。
【0025】
処理用ポット内の雰囲気には、水に溶存していたり、ヘッドスペースに残っていたりした酸素が存在している。当該酸素は、そのまま存在する状態にしておいても良いが、窒素などの不活性ガスをバブリングするなどして当該酸素を除去し、鉄粉の余分な酸化を防止することも好ましい構成である。
【0026】
扁平化処理において、(原料鉄粉/メディア)の充填比率を高くすることで、バッチあたりの処理量は増える。一方、(原料鉄粉/メディア)の充填比率を低くすることで、単位時間あたりの処理効率は増加する。そこで、求められる鉄粉の特性と処理量とに応じて、(原料鉄粉/メディア)の充填比率を調整することが好ましい。
【0027】
例えば、回転ボールミルを用いて回転駆動型の扁平化処理を行う場合には、回転数を適正に保つことで、鉄粉とメディアとがポット内でひとつの固まりとなって運動することがなく、鉄粉粒子がメディア間で十分な衝撃および/または圧力を与えられることとなる。当該状態を実現する為には、上記回転数を制御して、鉄粉およびメディアが分散した状態を保ち、ポット内壁に沿って鉄粉とメディアとの上昇および落下が繰り返される程度の回転速度とすることが好ましい。尚、回転ボールミルの適切な回転速度は、ポット容量、および、鉄粉とメディアとの充填条件によるので、上記の状態を実現出来る回転数を求めておくと良い。
【0028】
例えば、アトライターを用いて扁平化処理を行う場合には、鉄粉およびメディアの充填量、および、撹拌羽根の回転数を上げたほうが処理効率は上がる。そこで、鉄粉およびメディアが、容器から溢れない水準での充填量および回転数とすることが適切である。尚、鉄粉は比重が大きいので、容器底部に滞留することなく循環するように回転数を調整したり、ポンプ等により鉄粉を含んだスラリーを下部から抜き出し上部へ戻すような循環を行うことで、処理効率を上げることが好ましい構成である。
【0029】
扁平化処理の処理時間は、得られた鉄粉の有機塩素化合物分解性能、および、当該有機塩素化合物分解性能と相関のある物性などを評価することで、適切な条件を設定すれば良い。当該有機塩素化合物分解性能と相関のある物性評価項目としては、比表面積、粒度分布などが挙げられる。そして当該扁平化処理された鉄粉は、扁平化、微粒化される。
原料鉄粉に衝撃または圧力を加えることによって変形し、各粒子が板状比2以上の扁平形状となった鉄粉の表面には、変形前の鉄粒子内部の組織が露出しやすい。
塑性変形加工後の、鉄粉、メディア、および水の混合物を取り出し、ふるい等を用いて、メディアと、鉄粉・水の混合スラリーとを分離し鉄粉を得る。得られた鉄粉を40℃未満にて乾燥し、扁平形状を有する鉄粉を得る。乾燥工程は0.1〜72時間行うことが好ましい。
【0030】
(3)溶媒の鉄粉への浸透・浸漬処理
上記(1)から(2)で説明した鉄粉へ、水、および、水よりも蒸気圧が低く酸素を含む有機溶媒、から選択される1種以上の溶媒を浸透させる。
ここで、水よりも蒸気圧が低く酸素を含む有機溶媒とは、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、トルエン、などがある。なかでもプロパノール、アセトン、トルエンより、メタノール、エタノールが好ましい。
本発明に係る鉄粉へ溶媒を浸透させるには、鉄粉を溶媒に浸漬しても良いし、集積した鉄粉へ溶媒を注入または散布しても良い。
【0031】
なお、上記(3)工程後に得られる鉄粉は、表面が適度に酸化されているが、過度の酸化を抑制するために上記(3)工程の前に、例えば希塩酸処理を行い粒子表面の酸化膜を除去したり、上記(3)工程を不活性雰囲気(例えば窒素など)中で行うことで、大気雰囲気下での取り扱いによる粒子表面の酸化の進行を防止してもよい。
【0032】
(4)鉄粉の固液分離工程
溶媒へ浸漬された鉄粉を固液分離して、当該溶媒に湿った鉄粉を得る。具体的には、例えば、溶媒へ浸透し鉄粉を濾紙上に設置して固液分離を行うことが出来る。当該濾紙による固液分離の際、吸引濾過を併用することで生産性を上げる構成も好ましい。
当該固液分離の結果、鉄粉と溶媒とが分離され、当該溶媒に湿ってはいるが、溶媒が滴下してこない程度に固液分離された鉄粉を得る。
【0033】
(5)鉄粉の乾燥工程
当該固液分離された鉄粉を、40℃未満(好ましくは30℃以下、最も好ましくは0℃以上10℃以下)の温度を保ちながら乾燥する乾燥工程を実施する。乾燥工程は0.1〜72時間行うことが好ましい。また乾燥工程は大気雰囲気またはそれよりも酸化ガス濃度が低い雰囲気で行うことが好ましい。
当該乾燥工程により、鉄粉中の溶媒量を純鉄粉重量の0.5質量%以下とする。
当該乾燥工程後の鉄粉は軽い凝集状態にあるので、大きな衝撃を与えずに解砕し、本発明に係る有機ハロゲン化合物処理用鉄粉を得た。解砕には、乳鉢による解砕、サンプル・ミル等を用いることができる。解砕はハンドリングのしやすさ、粒子の分散性向上のために行うもので、実験もしくは実施工の条件のもとで、鉄粉が著しく凝集、固着してしまう程度でなければ、実施しなくても大きな影響は及ぼさない。
【0034】
上記乾燥工程後の鉄粉は、当該鉄粉を構成する鉄粒子の表面が適度な酸化状態にあることにより、優れた有機ハロゲン化合物の分解能力を発揮するものと考えられる。
従って、本発明に係る鉄粉は、施工現場にて上述した乾燥工程を実施して、上述した乾燥状態になった本発明に係る鉄粉を土壌に散布するのが好ましい施工方法である。
この他、所望の酸化状態を鉄粒子表面に付与できる限り、施工場所とは別の場所で上述した乾燥工程までを完了させことができるが、得られた本発明に係る鉄粉を真空パックとする等して、当該鉄粉の酸化状態を保持したまま保管・運搬することも可能である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
容量200mLのガラスビーカーに、蒸留水100mLと鉄粉(表1、2に示す、DOWA IPクリエイション株式会社製 還元鉄粉DKP−100)10gを投入した後、ケミスターラーを用いて5分間撹拌した。得られた鉄粉・水の混合物を、ヌッチェ、ろ過瓶、アスピレータを用い、ろ紙上の鉄粉を吸引ろ過した。当該吸引ろ過において、ろ紙はADVANTEC社製No.5Cタイプを用いた。そして、当該吸引ろ過後アスピレータを停止し、ろ紙上の鉄粉を回収し、鉄粉Aとした。
【0036】
当該鉄粉Aの水分含有率は17%であった。
尚、水分含有量とは大気圧110℃の条件下で、鉄粉試料より気化・脱離する水分量とし、「水分含有率=含有水分重量/水分を含有した状態の鉄粉重量」と規定した。
ここで、含有水分重量は、当該水分を含有した状態の鉄粉重量と、当該水分を含有した状態の鉄粉を110℃に設定した循環型乾燥機中に12時間以上静置するという条件で絶乾した後の鉄粉重量との差から求めた。
【0037】
上述した鉄粉Aと同様の調製方法で、吸引ろ過を行った後に、一旦アスピレータ吸引を停止した。そして、ろ紙上の鉄粉に50mLのエタノールを浸透させて1分間静置し、鉄粉へエタノールを十分に浸透させた。ここで、アスピレータ吸引を再開し、鉄粉からエタノールを吸引した後にアスピレータを停止し、ろ紙上の鉄粉を回収し、鉄粉Bとした。
【0038】
当該鉄粉Bのエタノール含有率は14%であった。
回収した鉄粉A、Bを、それぞれ大気雰囲気下にて30℃に温度設定した乾燥機内に静置し、24時間乾燥を行った。そして、当該乾燥後、得られた鉄粉A、Bの凝集による固まりを、それぞれ乳鉢を用いて軽く解砕し、本例の鉄粉試料A、Bを得た。
乾燥後の鉄粉試料Aの水分含有率は0.2%であり、Bの水分含有率は0.2%であった。板状比はA,Bともに1.29であった。
鉄粉試料の板状比は以下の式により求めた。なお、平均平面径は、50個の粒子について扇平面方向における長径とこれに直交する短径を測定し、平面径=(長径+短径)/2を求め、これを平均して求める。平均厚さは、50個の粒子の厚さを測定し、これを平均して求める。
鉄粉粒子の平均径=(2×平均平面径+平均厚さ)/3
鉄粉粒子の板状比=平均平面径/平均厚さ
【0039】
尚、水分含有量は、上述したように、大気圧110℃の条件下で、鉄粉試料より気化・脱離する水分量で定義される。水分含有率の測定は、カールフィッシャー水分計(京都電子工業株式会社 MKC−520 カールフィッシャー水分計)を用いて行った。
【0040】
<評価試験>
得られた鉄粉試料A、Bを用いて、cis−DCE分解試験を行った。
まず、得られた実施例1に係る鉄粉試料A、Bの各0.5gを、イオン交換水50mLと共に、それぞれ容量124mLのバイアル瓶に入れ、窒素ガスのバブリングを行い系内酸素の曝気・窒素置換を行った後に、フッ素樹脂(テフロン(登録商標))コーテングを施したブチルゴムのセプタムとアルミキャップで密封した。
【0041】
次いで、各々の密封瓶内にシス−1,2−ジクロロエチレン(cis−1,2−DCE)1μLを、マイクロシリンジを用いて注入した。さらに、DCE濃度変化評価のための内部標準物質として、ベンゼン1μLを、同様にマイクロシリンジを用いて注入した。150rpmの振とうを行いながら、試験期間15日までDCEの濃度を経日的に追跡し、分解速度定数kを求めた。
尚、当該分鉄粉試料による有機塩素化合物の分解反応を(式1)で示される一次反応と仮定し、その分解反応速度定数をkとした。
C/C =e-k・t ・・・・・(式1)
(C:有機塩素化合物 初期濃度、C:時間tにおける有機塩素化合物濃度、t:処理時間[日]、k:分解反応速度定数[日−1])
【0042】
その結果、鉄粉試料A(蒸留水浸漬)のcis−DCEの分解反応速度定数は0.064[日−1]、鉄粉試料B(エタノール浸漬)のcis−DCEの分解反応速度定数は0.082[日−1]であることが判明した。
【0043】
(実施例2)
容量200mLのガラスビーカーに1mol%濃度の塩酸100mLを準備し、鉄粉(DOWA IPクリエイション株式会社製 還元鉄粉DKP−100)10gを投入した後、ケミスターラーを用いて5分間撹拌した。得られた鉄粉・水の混合物を、ヌッチェ、ろ過瓶、アスピレータを用い、ろ紙上の鉄粉を吸引ろ過した。当該吸引ろ過において、ろ紙はADVANTEC社製No.5Cタイプを用いた。そして、鉄粉から塩酸溶液を吸引ろ過の後、吸引状態を継続したまま200mLのイオン交換水に鉄粉を浸漬させることで、当該鉄粉を洗浄した。洗浄終了後、吸引濾過を終了し、本例の鉄粉を得た。表2に物性値を示す。
【0044】
【表2】

【0045】
当該鉄粉の水分含有率は17%であった。
実施例1と同様に30℃で乾燥処理を行った後の当該鉄粉試料の水分含有率は0.2%であった。板状比は1.61であった。
実施例1と同様のcis−DCE分解試験を行った結果、本例の鉄粉試料のcis−DCEの分解反応速度定数は0.038[日−1]であった。
【0046】
(比較例1)
実施例1、2で原料とした鉄粉(DOWA IPクリエイション株式会社製 還元鉄粉DKP−100)を、浸漬、乾燥を行わずにそのまま用いて実施例1、2で説明したcis−DCE分解試験を行った。
当該鉄粉の水分含有率は0.1%であった。板状比は1.42であった。
cis−DCE分解試験の結果、本例の鉄粉試料のcis−DCEの分解反応速度定数は0.01[日−1]未満で、殆ど検出不能な程度の分解しか見られなかった。
【0047】
(比較例2)
海綿状鉄粉試料(表3に物性値、表4に化学成分の分析値を示す。)を、浸漬、乾燥を行わずにそのまま用いて実施例1、2で説明したcis−DCE分解試験を行った。
当該鉄粉の水分含有率は0.2%であった。板状比は1.07であった。
cis−DCE分解試験の結果、本例の鉄粉試料のcis−DCEの分解反応速度定数は0.01[日−1]未満で、殆ど検出不能な程度の分解しか見られなかった。
【0048】
【表3】

【表4】

【0049】
(実施例3)
内容量2.3LのSUS304製ポットに、ポット容量の80容量%分(6580g)の径10mmのジルコニア(ZrO)ボールを投入した。そこへ、鉄粉(上記還元鉄粉DKP−100)100gを投入した後、さらに、蒸留水1Lを投入し、ゴムパッキンのついたフタで密閉し材料仕込みとした。
当該材料仕込みを行ったSUSポットを、ポットミル回転台に置き、回転数120rpmで20時間運転して回転処理した。
回転処理時間終了後、SUSポット内容物を取り出し、開口径5mmのふるいを用いて、ZrOボールと、鉄粉・水の混合スラリーとを分離した。
得られた鉄粉・水の混合スラリーを、ヌッチェ、ろ過瓶、アスピレータを用い、ろ紙上の鉄粉を吸引ろ過した。ろ紙はADVANTEC社製No.5Cタイプを用いた。そして当該吸引ろ過後、アスピレータを停止し鉄粉を回収した。
回収した鉄粉試料を大気雰囲気下で、10℃に設定した乾燥機内に静置し12時間乾燥した。そして、当該乾燥後、得られた鉄粉の凝集等による固まりを、乳鉢を用いて軽く解砕し、本例の鉄粉試料を得た。
【0050】
乾燥後の、当該鉄粉試料の水分含有率は0.3%、嵩密度は1.43g/cm、BET値は2.97m/gであった。板状比は33.4であった。
【0051】
当該鉄粉試料0.5gを用いて、実施例1、2で説明したcis−DCE分解試験を行った。更に、同様の条件でTCE分解試験を行った。
当該鉄粉試料のcis−DCEの分解反応速度定数は0.107[日−1]であり、TCEの分解反応速度定数は0.093[日−1]であった。
【0052】
(実施例4)
乾燥温度を40℃に設定した以外は、実施例3と同様の操作を行って、本例の鉄粉試料を得た。表2に物性値を示す。
【0053】
乾燥後の当該鉄粉試料の水分含有率は0.2%、嵩密度は0.92g/cm、BET値は3.09m/gであった。板状比は31.2であった。
当該鉄粉試料のcis−DCEの分解反応速度定数は0.030[日−1]であり、TCEの分解反応速度定数は0.044[日−1]であった。
【0054】
(比較例3)
乾燥温度を105℃に設定した以外は、実施例3と同様の操作を行って、本例の鉄粉試料を得た。
【0055】
乾燥後の当該鉄粉試料の水分含有率は0.2%、嵩密度は0.71g/cm、BET値は3.24m/gであった。板状比は29.1であった。
であった。
比較例3に係る鉄粉試料のcis−DCEの分解反応速度定数は0.004[日−1] であり、TCEの分解反応速度定数は0.008[日−1]であることが判明した。
【0056】
(実施例3、4、比較例3のまとめ)
上述した実施例4に係る試料による有機ハロゲン分解において有機ハロゲン化合物の濃度の経日的変化のグラフを図1に示す。縦軸を有機ハロゲン化合物の濃度(試験開始時の有機ハロゲン化合物の濃度を1と規格化し、当該規格値に対する濃度低下の比率を示す。)とし、横軸を日数とした。トリクロロエチレン(TCE)の濃度を□で、シス−1,2−ジクロロエチレン(cis−1,2−DCEの濃度を○でプロットしたものである。図1より、当該鉄粉は有機ハロゲン化合物を、急速に分解していることがわかる。
また、上述した実施例3、4、比較例3において、試験期間15日までDCEの濃度を経日的に追跡し、分解速度定数kを求めた。その結果を図2に●でプロットした。また、DCEに変えてTCEを用いた以外は同じ条件で実施した試験結果を図2に■でプロットした。縦軸をkの値、横軸を鉄粉試料の乾燥温度とした。
【0057】
図2の結果より、実施例3、4、比較例3に係る鉄粉試料において、乾燥温度が40℃未満となるとkの値の上昇度合いが高まることが判明した。当該結果から、実施例3、4に係る鉄粉試料は、扁平化と所定条件による乾燥処理により有機ハロゲン化合物に対する分解活性が上昇することが判明した。
【0058】
(実施例5)
実施例3と同様のポット、ボール、鉄粉を用い、実施例3と同様の回転処理を行って、鉄粉・水の混合スラリーを得た。
得られた鉄粉・水の混合スラリーを、実施例3と同様のヌッチェ、ろ過瓶、アスピレータ、ろ紙を用い、ろ紙上の鉄粉を吸引ろ過した。そして、当該吸引を続けながら、水分がろ過された段階で、ろ紙上に残った鉄粉へ工業用エタノール100mlを浸透させ、当該鉄粉に残留する水分をエタノールで置換した。
回収した鉄粉を大気雰囲気下で、10℃に設定した定温循環式乾燥機内に静置し、12時間乾燥した。そして、当該乾燥後、得られた鉄粉の凝集等による固まりを、乳鉢を用いて軽く解砕し、本例の鉄粉試料を得た。
【0059】
乾燥後の、当該鉄粉試料の水分含有率0.3%、嵩密度は1.27g/cm、BET値は3.03m/gであった。板状比は35.1であった。
【0060】
当該鉄粉試料のcis−DCEの分解反応速度定数は0.185[日−1]であり、TCEの分解反応速度定数は0.137[日−1]であることが判明した。
【0061】
(実施例6)
乾燥温度を40℃に設定した以外は、実施例5と同様の操作を行って、本例の鉄粉試料を得た。
【0062】
乾燥後の当該鉄粉試料の水分含有率は0.2%、嵩密度は0.81g/cm、BET値は3.09m/gであった。板状比は33.6であった。
当該鉄粉試料のcis−DCEの分解反応速度定数は0.019[日−1]であり、TCEの分解反応速度定数は0.030[日−1]であった。
【0063】
(比較例4)
乾燥温度を105℃に設定した以外は、実施例5と同様の操作を行って、本例の鉄粉試料を得た。
【0064】
乾燥後の当該鉄粉試料の水分含有率は0.2%、嵩密度は0.67g/cm、BET値は3.32m/gであった。板状比は31.8であった。
当該鉄粉試料のcis−DCEの分解反応速度定数は0.008[日−1]であり、TCEの分解反応速度定数は0.015[日−1]であった。
【0065】
(実施例5、6、比較例4のまとめ)
上述した実施例5、6、比較例4において、試験期間15日までDCEの濃度を経日的に追跡し、分解速度定数kを求めた。その結果を図3に○でプロットした。また、DCEに変えてTCEを用いた以外は同じ条件で実施した試験結果を図3に□でプロットした。尚、図3において、縦軸をkの値、横軸を鉄粉試料の乾燥温度とした。
【0066】
図3の結果より、実施例5、6、比較例4に係る鉄粉試料において、乾燥温度が40℃未満となるとkの値の上昇度合いが高まることが判明した。当該結果から、実施例5、6に係る鉄粉試料は、扁平化と所定条件による乾燥処理により有機ハロゲン化合物に対する分解活性が上昇することが判明した。
【0067】
(比較例5)
内容量2.3LのSUS304製ポットに、ポット容量の80容量%分(6580g)の径10mmのジルコニア(ZrO)ボールを投入する。そこへ、鉄粉(DOWA IPクリエイション株式会社製 還元鉄粉DKP−100)100gを投入した後、ゴムパッキンのついたフタで密閉し材料仕込みとした。
当該材料仕込みを行ったSUSポットを、ポットミル回転台に置き、回転数120rpmで2、5、10、20時間の各条件で運転して回転処理した。
回転処理時間終了後、SUSポット内容物を取り出し、開口径5mmのふるいを用いて、ZrOボールと鉄粉とを分離して、本例の鉄粉試料を得た。乾燥処理は行わなかった。
【0068】
得られた鉄粉試料の板状比は、ボールミル処理時間2/5/10/20時間に対して、それぞれ5.6/12.3/20.6/33.4であった。また、実施例3と同様のTCE分解試験を実施し、その結果を図4に△でプロットした。
図4は当該鉄粉試料によるTCEの分解反応速度定数kの経時的変化を示すグラフであって、横軸をポットミルによる回転処理時間、縦軸をTCE分解反応速度定数kとした。
図4の結果から明らかなように、本例の鉄粉試料は、実施例3〜6に係る鉄粉試料と同様のポットミルを用いたボールミル処理を実施したにも関わらず、TCE分解性能は低い水準に留まった。
【0069】
(比較例6)
比表面積がほぼ20000cm/g、炭素含有量が0.2wt%の鉄粉であって、その50wt%以上が150μmのふるいを通過する粒度を有する鉄粉(DOWA IPクリエイション株式会社製 E−200)100gと、酸化銅粉(日興ファインケミカルズ株式会社製のCuO粉)1.27g(Cu 0.8gに相当)とを、容量300mLのサンプルミキサー(イカリ状のインペラーを有するもの)に装填した。
【0070】
両者を装填したあと1分間の攪拌を行った時点で、攪拌を続けながら、1Mの硫酸5mLを当該ミキサーに添加し、20秒間攪拌を続けた。その後、ミキサーから内容物を取出し、乾燥炉で105℃に保持して液分を蒸発分離し、本例の鉄粉試料を得た。
当該鉄粉試料を、実施例3と同様のDCE分解試験に供した結果、15日目のcis−DCEの分解速度定数は、k値=0.104[日−1]となった。
【0071】
(比較例7)
上記還元鉄粉(DKP−100)100gと硫酸銅5水塩(CuSO・5HO:和光純株式会社製試薬)3.93gとを、容量300mLのサンプルミキサー(イカリ状のインペラーを有するもの)に装填した。
両者を装填したあと1分間の攪拌を行い、本例の鉄粉試料を得た。
当該鉄粉試料を、実施例3と同様のTCE、DCE分解試験に供した結果、TCE分解反応速度定数およびDCE分解反応速度定数は、以下の通りであった。
(TCE):k=0.12[日−1
(cis−DCE):k=0.14[日−1
【0072】
(まとめ)
実施例3に係る鉄粉試料は、従来の技術に係り酸化銅を含有する比較例6に係る鉄粉試料と同等以上のcis−DCEの分解速度定数を有していることが判明した。
実施例5に係る鉄粉試料は、従来の技術に係り酸化銅を含有する比較例6に係る鉄粉試料および従来の技術に係り大量の銅を含有する比較例7に係る鉄粉試料に比べても優れる、TCEの分解速度定数、cis−DCEの分解速度定数を有していることが判明した。
【0073】
本発明に係る鉄粉が、土壌中において有機ハロゲン化合物を効率的に分解出来ることに対する詳細な理由は未だに不明だが、本発明者は次の理由によると考えている。
1.)酸化物の形態(FeO、Fe、Feなど)とその存在比率、酸化物層の厚み、酸化による粒子表面の微細構造の変化など、粒子表面の酸化状態が調整されることで、有機ハロゲンとの共存下で鉄粒子表面上の活性サイトと有機ハロゲン分子との接触効率が増加していること。
2.)上記1.に加え、さらに鉄粉粒子を塑性変形で押し潰して伸展させることで、鉄粉粒子内部の鉄母材が表面に露出し、また当該伸展によって鉄粉粒子の形状が変形して扁平形状となるが、これにより比表面積が向上し、粉体としての単位重量あたりの活性サイト数を向上させていること。
【0074】
本発明によれば、銅などの添加物を含まず、かつ有機ハロゲン化合物の分解能力が高い有機ハロゲン化合物処理用鉄粉を低コストで得ることができた。そして、当該有機ハロゲン化合物処理用鉄粉を適用することで、有機ハロゲン化合物によって汚染された土壌などの浄化に大きく貢献することができた。
また、本発明に係る有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造工程において、添加物に係る工程をなくすことが出来たことにより、製造工程が簡略化し、製造工程および土壌浄化時における環境負荷も低減させることが出来た。
さらに、本発明によれば、一般的に流通している鉄粉であっても原料として使用可能であるため、原料供給ソースが広範囲から選択可能であり、工業利用にとって有効である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る鉄粉を土壌・地下水汚染の処理に適応するにあたっては、様々な手法が考えられるが、代表的な方法について説明する。
【0076】
〈1〉土壌への適用例(原位置処理法)
事前調査により判明した土壌汚染領域をカバーするように、ボーリング装置などを用いて鉄粉を土壌中に均一混合する。鉄粉施工後は、適宜土壌をサンプリングし汚染物質濃度をモニタリングすることにより浄化傾向を確認する。施工エリア全域で土壌環境基準値を下回るなど、設定基準を達成した時点で浄化完了とする。もしくは、汚染領域にある土壌を掘り上げたうえで、地上において当該鉄粉を均一混合し、浄化モニタリングを行い、設定基準の達成を確認して、元の場所に埋め戻しを行う。
【0077】
〈2〉地下水への適用例
当該鉄粉もしくは、当該鉄粉とその他充填材の混合物を充填したカラムに、地下より汲み上げた汚染地下水を通水させ、カラム内で地下水中の汚染物質を脱塩素分解することにより、カラム出口にて環境基準値を下回るなどの設定基準を満たした処理後水を放流する。または、当該鉄粉もしくは当該鉄粉と透水性を向上させるための充填材との混合物を、汚染物質(有機塩素化合物)を含有する地下水流が通過するように壁状に施工し、この透過性反応壁内で地下水中の汚染物質を分解処理することで、通過後の地下水を清浄な状態とする透過性反応壁法による地下水浄化方法もある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄粉を、水、および、水よりも蒸気圧が低く酸素を含む有機溶媒、から選択される1種以上の溶媒に浸漬する工程と、
当該溶媒に浸漬された鉄粉を固液分離して、当該溶媒で湿った鉄粉を得る工程と、
当該溶媒で湿った鉄粉を40℃未満の温度を保ちながら乾燥処理する工程とを、有することを特徴とする有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥処理する工程を、0℃以上10℃以下の温度を保ちながら行なうことを特徴とする請求項1に記載の有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法。
【請求項3】
鉄粉を酸処理した後に、前記水、および、水よりも蒸気圧が低く酸素を含む有機溶媒、から選択される1種以上の溶媒に浸漬する工程、を行なうことを特徴とする請求項1または2に記載の有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥処理する工程を、0.1時間以上72時間以下行うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法。
【請求項5】
前記乾燥処理する工程を、溶媒重量が鉄粉重量の0.5質量%以下となる迄、行うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法。
【請求項6】
前記鉄粉として、平均粒径が1μm以上500μm以下である鉄粉を用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法。
【請求項7】
前記鉄粉として、板状比2以上の扁平形状を有する鉄粉を用いることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物処理用鉄粉の製造方法により製造された鉄粉を用いたことを特徴とする土壌・地下水汚染の浄化方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−148220(P2012−148220A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7318(P2011−7318)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(506347517)DOWAエコシステム株式会社 (83)
【Fターム(参考)】