説明

有機光電変換センサ及びその製造方法

【課題】本発明は、経時的に増加する漏れ電流を低減でき長時間の使用に耐えうる高S/N比の有機光電変換センサを提供することを目的とし、スキャナ、コピー機などにおいて物体の形状や画像等の各種情報を電気信号として取り出す情報読取装置への利用が可能で、長時間の使用にも耐えられる情報読取装置が得られる有機光電変換センサを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の有機光電変換センサ1は、基板2上に形成された少なくとも2つの電極4,6と、電極4,6間に形成された有機光電変換層5と、を備えた有機光電変換センサ1であって、電極4,6が、実質的にアルカリ金属元素及び/又はアルカリ士類金属元素を含有していないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の形状や画像等の各種情報を電気信号として取り出す有機光電変換センサ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
文字や図形等の各種情報を光を用いて電気情報へと変換する情報読取装置は、ファクシミリやスキャナ、デジタルカメラ等幅広い製品で使用されており、その方式もMOS(Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge−Coupled Devices)をはじめとし様々なものが用いられている。この情報読取装置は、光信号を電気信号に変換するための複数の受光部から構成されており、他の光源部、セルフォックレンズ等のレンズ系と組み合わせることによってCIS(Contact Image Sensor)に代表されるような情報読取モジュールを形成している。従来、その受光部には、主に無機材料製のフォトダイオード、フォトコンダクタ、フォトトランジスタ等の光電変換素子やそれらの応用部品等が用いられてきたが、このような無機材料を用いた受光部は、その作製に大掛りな半導体プロセスが必要であることや、工数が非常に多いこと、さらには大面積化が難しいことなどから低コスト化が困難であるという課題を有していた。そこで(非特許文献1)に記載されているように、受光部に有機材料を用いることによるコスト削減が試みられている。
【0003】
ここで、有機材料を用いた受光部すなわち有機光電変換センサについて図面を用いて説明を行う。
【0004】
図1は一般的な有機光電変換センサの要部断面図である。
【0005】
図1において、1は有機光電変換センサ、2はガラス等で形成された光透過性の基板、3は基板2の上に形成された有機光電変換領域である。有機光電変換領域3は、後述する第1電極4、有機光電変換層5、第2電極6を備えている。4は基板2の上にスパッタリング法や抵抗加熱蒸着法等により形成されたITO等の透明な導電性膜からなる第1電極、5は第1電極4の上に成膜された有機光電変換層、6は有機光電変換層5の上に抵抗加熱蒸着法等により形成された金属製等の薄膜状の第2電極、7は有機光電変換層5を構成する有機材料製の電子供与体、8は有機光電変換層5を構成する有機材料製の電子受容体である。
【0006】
以上のように構成された有機光電変換センサ1に光照射を行うと、有機光電変換層5にて光吸収が起こり、励起子が形成される。続いてキャリアが分離され、電子は電子受容体8を通して第2電極6へ、正孔は電子供与体7を通して第1電極4へと移動する。これにより第1電極4,第2電極6間に起電力が発生し、外部回路をつなげることで電気信号を取り出すことが可能となる。
【0007】
このように、有機光電変換センサは非常に簡便な方法で形成できるにもかかわらず、無機材料製の光電変換センサと同様の機能を発現できることから非常に注目を集めている素子である。
【非特許文献1】G.Yu,Y.Cao,J.Wang,J.McElvain and A.J.Heeger,Synth.Met.102,904(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記の従来の技術では、以下のような課題を有していた。
【0009】
(1)電極、即ち第1電極4あるいは第2電極6にアルカリ金属元素あるいはアルカリ土類金属元素が含まれると、アルカリ金属元素あるいはアルカリ土類金属元素が、有機材料で構成されている有機光電変換層5へ経時的に移動し漏れ電流として表れ、有機光電変換層5が光を受光していないときでも第1電極4,第2電極6間に電流が流れてしまうという課題を有していた。
【0010】
(2)漏れ電流が大きくなると、光を受光しないときの電気信号と光を受光したときの電気信号との差を大きくできないので、十分なS/N比(信号/ノイズ比)がとれず光電変換センサとして機能しないという課題を有していた。
【0011】
(3)漏れ電流によって、有機光電変換センサ1の電気信号にばらつきが生じるという課題を有していた。
【0012】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、経時的に増加する漏れ電流を抑制し、長時間使用しても十分なS/N比が得られ、さらに電気信号のばらつきを抑制する有機光電変換センサを提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、経時的に増加する漏れ電流を抑制し、長時間使用しても十分なS/N比が得られ、さらに電気信号のばらつきを抑制する有機光電変換センサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、基板上に形成された少なくとも2つの電極と、電極間に形成された有機光電変換層と、を備えた有機光電変換センサであって、電極が、実質的にアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を含有していないことを主要な特徴とする。
【0015】
また、本発明は、基板上に形成された少なくとも2つの電極と、電極間に形成された有機光電変換層と、を備えた有機光電変換センサの製造方法であって、有機光電変換センサの製造工程において、基板、電極、有機光電変換層のいずれも、実質的にアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を含有する環境下におかないことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、経時的に増加する漏れ電流を低減でき長時間の使用に耐えうる高S/N比、かつ、電気信号のばらつきを抑制した有機光電変換センサを提供することができる。
【0017】
また、本発明によれば、経時的に増加する漏れ電流を低減でき長時間の使用に耐えうる高S/N比、かつ、電気信号のばらつきを抑制した有機光電変換センサの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、経時的に増加する漏れ電流を抑制し、十分なS/N比が得られ、また電気信号のばらつきを抑制する有機光電変換センサを提供するという目的を、基板上に形成された少なくとも2つの電極と、電極間に形成された有機光電変換層とを有する有機光電変換センサにおいて、電極にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属元素を実施的に含まないことによって実現した。
【0019】
また、経時的に増加する漏れ電流を抑制し、十分なS/N比が得られ、また電気信号のばらつきを抑制する有機光電変換センサの製造方法を提供するという目的を、基板上に形成された少なくとも2つの電極と、電極間に形成された有機光電変換層と、を備えた有機光電変換センサの製造方法であって、有機光電変換センサの製造工程において、基板、電極、有機光電変換層のいずれも、実質的にアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を含有する環境下に暴露させないことによって実現した。
【0020】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、基板上に形成された少なくとも2つの電極と、電極間に形成された有機光電変換層と、を備えた有機光電変換センサであって、電極が、実質的にアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を含有していない構成を有している。
【0021】
この構成により、以下の作用を有する。
【0022】
(1)長時間使用しても電極から有機光電変換層へのアルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素の侵入がなく、漏れ電流が低減でき長時間の使用に耐えうる高S/N比の有機光電変換センサを得ることができる。
【0023】
(2)漏れ電流を低減できるので、形状や画像等の各種情報が変換された電気信号のばらつきを抑制することができる。
【0024】
ここで、基板としては、有機光電変換層及び電極を支持できるものであればどのようなものであってもよく、ガラス、石英等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリフッ化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート、非晶質ポリオレフィン、フッ素系樹脂等の各種高分子材料、さらにはシリコンウエハーをはじめとする各種半導体材料や金属材料等が用いられる。
【0025】
有機光電変換層は、電子供与体と電子受容体とを備えて構成されている。
【0026】
電子供与体としては、フェニレンビニレンおよびその誘導体、フルオレンおよびその誘導体、特に骨格にキノリン基またはピリジン基を有するフルオレン系コポリマー(P0F66、P1F66、PFPV)、フルオレン含有アリールアミンポリマー、カルバゾールおよびその誘導体、インドールおよびその誘導体、ピレンおよびその誘導体、ピロールおよびその誘導体、ピコリンおよびその誘導体、チオフェンおよびその誘導体、アセチレンおよびその誘導体、ジアセチレンおよびその誘導体を繰り返し単位として有する重合体及び他のモノマーとの共重合体、またデンドリマーとして総称される一群の高分子材料が用いられる。
【0027】
また、高分子に限定されるものではなく、例えばポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物や、1,1−ビス{4−(ジ−P−トリルアミノ)フェニル}シクロヘキサン、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(P−トリル)−P−フェニレンジアミン、1−(N,N−ジ−P−トリルアミノ)ナフタレン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−2−2’−ジメチルトリフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル、N、N’−ジフェニル−N、N’−ジ−m−トリル−4、4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾ−ル等の芳香族第三級アミンや、4−ジ−P−トリルアミノスチルベン、4−(ジ−P−トリルアミノ)−4’−〔4−(ジ−P−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン等のスチルベン化合物や、トリアゾールおよびその誘導体、オキサジザゾールおよびその誘導体、イミダゾールおよびその誘導体、ポリアリールアルカンおよびその誘導体、ピラゾリンおよびその誘導体、ピラゾロンおよびその誘導体、フェニレンジアミンおよびその誘導体、アニールアミンおよびその誘導体、アミノ置換カルコンおよびその誘導体、オキサゾールおよびその誘導体、スチリルアントラセンおよびその誘導体、フルオレノンおよびその誘導体、ヒドラゾンおよびその誘導体、シラザンおよびその誘導体、ポリシラン系アニリン系共重合体、高分子オリゴマー、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポリ3−メチルチオフェン等も用いることができる。
【0028】
また、電子受容体としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾールおよびその誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ジフェニルキノンおよびその誘導体、フラーレンおよびその誘導体、特にPCBM([6,6]−phenyl C61 butyric acid methyl ester)カーボンナノチューブおよびその誘導体等が用いられる。
【0029】
電極としては、酸化錫、酸化インジウム、ITOやATO(SbをドープしたSnO2)、AZO(AlをドープしたZnO)、Al、Ag、Au、Cr、Cu、In、Mg、Ni、Si、Ti等の金属薄膜、Mg−Ag合金、Mg−In合金等のMg合金、Al−Li合金、Al−Sr合金、Al−Ba合金等のAl合金等の金属薄膜等が用いられる。
【0030】
電極のうち基板の上に形成される第1電極としては、酸化錫、酸化インジウム、ITOやATO(SbをドープしたSnO2)、AZO(AlをドープしたZnO)等が用いられる。さらにはAl、Ag、Au等の金属薄膜といった光透過性の材料で構成することにより光透過性を付与することも可能となる。
【0031】
電極のうち有機光電変換層の上に形成される第2電極としては、Al、Ag、Au、Cr、Cu、In、Mg、Ni、Si、Ti等の金属材料や、Mg−Ag合金、Mg−In合金等のMg合金、Al−Li合金、Al−Sr合金、Al−Ba合金等のAl合金等の薄膜が用いられる。また短絡電流の改善を図るため、陰極として機能させる第1電極又は第2電極と有機光電変換層との間に金属酸化物、金属弗化物等の薄膜を導入する手法も好適に用いられる。さらには第2電極にITO、ATO、AZO等を使用することも可能である。
【0032】
また必要に応じて、第1電極と有機光電変換層との間にPEDOT:PSS(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸の混合物)等の高分子材料をバッファ層として導入する素子構成、あるいはシリコン、チタニア、アルミナ、カーボン、ジルコニアなどの無機物を漏れ電流のブロック層として導入する素子構成も好適に用いられる。
【0033】
なお本発明の有機光電変換センサは、一次元上に配置されるラインセンサとしてだけでなく、二次元に配置しエリアセンサとして用いたり、フレキシブルなエリアセンサを形成して、例えば、曲面状の物体表面の各種情報を電気信号として取り出したりすることもできる。
【0034】
電極のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量はゼロにするのが好ましいが、実際には不可能なので、実質的に含有していないとみなすことができる0.000001重量%以上1重量%以下であることが望ましい。
【0035】
アルカリ金属やアルカリ土類金属の含有量を0.000001重量%より少なくするには、原材料や製造環境における不純物の含有量を著しく低減させる必要があり、原料コストや製造工程の管理コスト等が著しく増加するとともに生産性が低下する傾向がみられるため好ましくない。1重量%より多くなるにつれ、経時的に漏れ電流が大きくなりS/N比が小さくなりセンサの寿命が短くなる傾向がみられるため好ましくない。
【0036】
上記課題を解決するためになされた第2の発明は、基板上に形成された少なくとも2つの電極と、電極間に形成された有機光電変換層と、を備えた有機光電変換センサの製造方法であって、基板、有機光電変換層、電極のいずれも、実質的にアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を含有する気体、液体、固体のいずれにも接触させない構成を有している。
【0037】
この構成により、以下の作用を有する。
【0038】
(1)電極や有機光電変換層、基板に含まれるアルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素を極力減らすことができるので、長時間使用しても有機光電変換層へのアルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素の侵入量を少なくすることが可能となり、漏れ電流が低減でき長時間の使用に耐えうる高S/N比の有機光電変換センサを得ることができる。
【0039】
(2)漏れ電流を低減できるので、形状や画像等の各種情報が変換された電気信号のばらつきを抑制することができる。
【0040】
ここで、基板、有機光電変換層、電極に接触する気体、液体、固体としては、基板の洗浄工程における洗浄液や治具、有機光電変換層の成膜工程における雰囲気ガス,洗浄液,成膜材料等、電極の成膜工程における雰囲気ガス,洗浄液,エッチング液,成膜材料等、洗浄工程から成膜工程へ基板を搬送する治具や搬送室内の空気、電極が形成された基板を保管する治具や保管室内の空気等が含まれる。
【0041】
基板、有機光電変換層、電極に接触する気体、液体、固体におけるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量はゼロにするのが好ましいが、実際には不可能なので、基板又は有機光電変換層若しくは電極におけるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の残留量を、実質的に含有していないとみなすことができる0.000001重量%以上1重量%以下にすることが望ましい。なお、基板等がアルカリ金属元素等を含有する気体等に接触してしまった後は、洗浄等によって除去して残留量を1重量%以下にすることができる。
【0042】
アルカリ金属やアルカリ土類金属の残留量を0.000001重量%より少なくするには、原材料や製造環境における不純物の含有量を著しく低減させる必要があり、原料コストや製造工程の管理コスト等が著しく増加するとともに生産性が低下する傾向がみられるため好ましくない。1重量%より多くなるにつれ、経時的に漏れ電流が大きくなりS/N比が小さくなりセンサの寿命が短くなる傾向がみられるため好ましくない。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の具体的な内容について実施例を用いて説明する。
【0044】
(実施例1)
基板としての無アルカリガラス基板上に、スパッタリング法によりITO膜を形成した後、ITO膜上にレジスト材をスピンコート法により塗布して厚さ10μmのレジスト膜を形成し、マスク、露光、現像してレジスト膜を所定の形状にパターニングした。次に、このガラス基板を50%の塩酸中に浸漬して、レジスト膜が形成されていない部分のITO膜をエッチングした後、レジスト膜も除去しITO膜を形成し第1電極とした。第1電極としてのITO膜の不純物、特にアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量は1重量%未満であった。
【0045】
次に、この基板を純水による10分間の超音波洗浄後に窒素ブロアーでガラス基板に付着した水分を除去した。
【0046】
次に、基板面にポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート(PEDT/PSS)を0.45μmのフィルターを通して滴下し、スピンコート法によって均一に塗布した。これを200℃のクリーンオーブン中で30分間加熱することでバッファ層を形成した。
【0047】
次に、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)と[5,6]−フェニル C61 ブチリックアシッドメチルエステル([5,6]−PCBM)との重量比1:4のクロロベンゼン溶液をスピンコーにて塗布した。
【0048】
次に、100℃のオーブン中で30分間加熱処理し、有機光電変換層を形成した。つづいて抵抗加熱蒸着装置内にて、Alを約200nmの膜厚で成膜して第2電極とした。Al電極の不純物、特にアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量は1%未満であった。
【0049】
最後に、この有機光電変換センサ上部に光硬化性エポキシ樹脂にてガラス板を接着することで、第1電極,第2電極,有機光電変換層を密閉し、水分の浸入を防止した有機光電変換センサを得た。
【0050】
(比較例1)
実施例1のAlを成膜する前工程で、0.27mPa(=2×10-6Torr)以下の真空度まで減圧した抵抗加熱蒸着装置内にて、LiFを2nmの膜厚(Alの元素比でアルカリ金属(Li)の含有量およそ2重量%)で成膜する工程を加え、その後、Al電極からなる第2電極を形成した以外は実施例1と同様にして、比較例1の有機光電変換センサを得た。
【0051】
(比較例2)
実施例1のAlを成膜する前工程で、0.27mPa(=2×10-6Torr)以下の真空度まで減圧した抵抗加熱蒸着装置内にて、LiFを4nmの膜厚(Alの元素比でアルカリ金属(Li)の含有量およそ4重量%)で成膜する工程を加え、その後、Al電極からなる第2電極を形成した以外は実施例1と同様にして、比較例2の有機光電変換センサを得た。
【0052】
(比較例3)
実施例1のAlを成膜する前工程で、0.27mPa(=2×10-6Torr)以下の真空度まで減圧した抵抗加熱蒸着装置内にて、バリウム金属を2nmの膜厚(Alの元素比でアルカリ土類金属(Ba)の含有量およそ2重量%)で成膜する工程を加え、その後、Al電極からなる第2電極を形成した以外は実施例1と同様にして、比較例3の有機光電変換センサを得た。
【0053】
(評価例1)
実施例1及び比較例1〜3の有機光電変換センサの暗電流密度値を以下の方法で評価した。
【0054】
ITO電極(第1電極)を陽極、Al電極(第2電極)を陰極としてそれぞれソースメジャーユニット(ケースレー製630)に接続し、−2(V)から+2(V)の外部電圧を印加させ、そのとき有機光電変換センサに流れる電流値を読み取り、対向する第1電極と第2電極の面積の値から計算し暗電流密度値を評価した。評価は暗室の中で行われ、有機光電変換センサには光が照射されていない。得られたデータで−1(V)時での有機光電変換センサに流れた電流密度の値により、暗電流密度値を比較評価する。この暗電流密度値が小さければ小さいほど有機光電変換センサの漏れ電流が少なく、高いS/N比が得られていることになる。また、有機光電変換センサの製造時からの暗電流密度値の経時変化も評価した。
【0055】
図2は実施例1及び比較例1〜3の有機光電変換センサの暗電流密度値の経時変化を示す図である。縦軸は暗電流密度値であり、横軸は有機光電変換センサの製造時からの時間である。
【0056】
図2から、比較例1〜3の有機光電変換センサは時間の経過とともに暗電流密度の値が増加しているが、実施例1の有機光電変換センサは時間が経過しても暗電流密度の値が増加せず逆に減少していることがわかる。実施例1において暗電流密度の値が経時的に減少している原因は明らかではないが、暗電流密度が低下することで有機光電変換センサを長時間使用してもS/N比は十分得られることになる。
【0057】
以上のように本実施例によれば、漏れ電流が低減でき長時間の使用に耐えうる高S/N比の有機光電変換センサが得られることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、物体の形状や画像等の各種情報を電気信号として取り出す有機光電変換センサ及びその製造方法に関し、漏れ電流を低減でき長時間の使用に耐えうる高S/N比の有機光電変換センサを提供することができ、また漏れ電流を低減でき長時間の使用に耐えうる高S/N比の有機光電変換センサの製造方法を提供することができ、かかる有機光電変換センサは長時間使用しても漏れ電流が増加しないため、たとえばスキャナ、コピー機などにおいて画像などの情報読取装置への利用が可能で、長時間の使用にも耐えられる情報読取装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】一般的な有機光電変換センサの要部断面図
【図2】実施例1及び比較例1〜3の有機光電変換センサの暗電流密度値の経時変化を示す図
【符号の説明】
【0060】
1 有機光電変換センサ
2 基板
3 有機光電変換領域
4 第1電極
5 有機光電変換層
6 第2電極
7 電子供与体
8 電子受容体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された少なくとも2つの電極と、前記電極間に形成された有機光電変換層と、を備えた有機光電変換センサであって、
前記電極が、実質的にアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を含有していないことを特徴とする有機光電変換センサ。
【請求項2】
基板上に形成された少なくとも2つの電極と、前記電極間に形成された有機光電変換層と、を備えた有機光電変換センサの製造方法であって、
前記基板、前記有機光電変換層、前記電極のいずれも、実質的にアルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素を含有する気体、液体、固体のいずれにも接触させないことを特徴とする有機光電変換センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−27174(P2007−27174A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202753(P2005−202753)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】