説明

有機光電変換素子、その製造方法、金属ナノ粒子及びその形成方法

【課題】光電変換効率が大幅に向上し、耐久性の高い光電変換材料及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】p型有機高分子半導体、n型有機半導体及び金属ナノ粒子を含有する光電変換層を有する有機光電変換素子において、該金属ナノ粒子に有機化合物が吸着されており、該有機化合物の30〜100質量%が前記p型有機高分子半導体であることを特徴とする有機光電変換素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電変換素子、その製造方法、金属ナノ粒子及びその形成方法に関し、特に太陽光発電用の有機光電変換素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に対処するため、二酸化炭素排出量の削減が切に望まれている。また、近い将来、石油、石炭、および天然ガスなどの化石燃料が枯渇することが予想されており、これらに替わる地球に優しいエネルギー資源の確保が急務となっている。そこで、太陽光、風力、地熱、原子力など利用した発電技術の開発が盛んに行われているが、なかでも太陽光発電技術は、安全性の高さから特に注目されている。
【0003】
太陽光発電では、光起電力効果を利用した光電変換素子(例えば、太陽電池)を用いて、光エネルギーを直接電力に変換する。光電変換素子は、一般的に、一対の電極の間に光電変換層(光吸収層)が挟持されてなる構造を有し、当該光電変換層において光エネルギーが電気エネルギーに変換される。光電変換素子は、光電変換層に用いられる材料や、素子の形態により、単結晶・多結晶・アモルファスのSiを用いたシリコン系光電変換素子、GaAsやCIGS(銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)からなる半導体材料)等の化合物半導体を用いた化合物系光電変換素子、色素増感型光電変換素子(グレッツェルセル)などが提案・実用化されている。
【0004】
しかしながら、これらの光電変換素子を用いて発電するコストは、依然として化石燃料を用いて発電・送電される電気の価格よりも高いものとなっており、普及の妨げとなっていた。また、基板に重いガラスを用いなければならないため、設置時に補強工事が必要であり、これらも発電コストを高騰させる一因であった。
【0005】
このような状況に対し、化石燃料による発電コストよりも低い発電コストを達成しうる技術として、透明電極と対電極との間に電子供与体層(p型半導体層)と電子受容体層(n型半導体層)とが混合されてなる光電変換層を挟んだバルクヘテロジャンクション型光電変換素子が提案され、5%を超える光電変換効率が報告されている。
【0006】
このバルクヘテロジャンクション型有機光電変換素子は、軽量で柔軟性に富むことから、様々な製品への応用が期待されている。また、構造が比較的単純であり、p型有機半導体材料およびn型有機半導体材料を塗布することによって光電変換層を形成できることから、大量生産に好適であり、コストダウンによる太陽電池の早期普及にも寄与するものと考えられる。さらに、従来のシリコン系光電変換素子、化合物系光電変換素子、色素増感型光電変換素子などの製造とは異なり、160℃よりも高温の製造プロセスを必須に伴うものではないため、安価でかつ軽量なプラスチック基板上への形成も可能であると期待される。
【0007】
しかしながら、有機光電変換素子は、他のタイプの光電変換素子と比較して、光電変換効率や、熱や光に対する耐久性が十分とはいえないことから、光電変換効率および耐久性を向上させた有機光電変換素子が望まれていた。
【0008】
光電変換効率の向上のためには、第一に光電変換層に吸収される光を最大限吸収することが必要である。そのため、光電変換層の膜厚が厚い方が好ましいが、導電性の低い有機半導体では抵抗が大きいためか膜厚が厚くなるにつれて、直列抵抗の増大、ff(曲線因子)の低下があり結果的に光電変換効率の向上に繋がらなかった。
【0009】
一方、特許文献1では、表面プラズモン共鳴を示す金属ナノ粒子を絶縁性物質で被包して光活性領域(有機光電変換層)に配置し、光電変換効率が向上することを報告しているが、光電変換効率が未だ不足であり、更に光電変換効率を向上することが望まれていた。
【0010】
特許文献2では、n型半導体及びp型半導体が混在したバルクヘテロジャンクション層に、金属ナノ粒子を添加して、光電変換効率向上を図っているが、一般的な方法で製造された金属ナノ粒子を添加しただけでは、光電変換効率が未だ不足であり、更に光電変換効率を向上することが望まれていた。
【0011】
また、金属ナノ粒子の形成方法として、各種方法が知られているが、金属ナノ粒子分散物の安定性の観点から、分散剤あるいは保護コロイドが用いられる。一般には、長鎖アルキル基に銀と相互作用の強い官能基を結合した化合物が良く知られている。銀と相互作用の強い官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、メルカブト基などが知られている。具体的には特許文献3などが知られているが、このような金属ナノ粒子を有機光電変換層に添加しただけでは、光電変換効率の向上幅が小さいといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2008−510305号公報
【特許文献2】特開2011−71146号公報
【特許文献3】特開2008−214695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、光電変換効率が大幅に向上し、耐久性の高い光電変換材料及びその製造方法を提供することである。また、本発明の光電変換材料に用いられる金属ナノ粒子の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、吸着している有機化合物に対してp型有機高分子半導体が30〜100質量%吸着している金属ナノ粒子を用いると光電変換効率が向上することを見出し本発明に至った。
【0015】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0016】
1.p型有機高分子半導体、n型有機半導体及び金属ナノ粒子を含有する光電変換層を有する有機光電変換素子において、該金属ナノ粒子に有機化合物が吸着されており、該有機化合物の30〜100質量%が前記p型有機高分子半導体であることを特徴とする有機光電変換素子。
【0017】
2.前記金属ナノ粒子が前記p型有機高分子半導体の存在下で形成されたことを特徴とする前記1に記載の有機光電変換素子。
【0018】
3.長鎖アルキル基を有する分散剤が吸着した金属ナノ粒子を、前記p型有機高分子半導体と混合し、溶媒を留去下状態で90℃以上200℃以下で加熱することにより、前記金属ナノ粒子が前記p型有機高分子半導体を吸着して担持していることを特徴とする前記1又は2に記載の有機光電変換素子。
【0019】
4.p型有機高分子半導体、n型有機半導体、及び、有機化合物が吸着した金属ナノ粒子を含有する光電変換層を有する有機光電変換素子の製造方法において、該金属ナノ粒子に吸着した前記有機化合物の30〜100質量%が前記p型有機高分子半導体となるように、前記p型有機高分子半導体を吸着させることを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。
【0020】
5.前記金属ナノ粒子を前記p型有機高分子半導体の存在下で形成することを特徴とする前記4に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【0021】
6.長鎖アルキル基を有する分散剤が吸着した金属ナノ粒子を、長鎖アルキル基を有する分散剤の存在下で形成し、該長鎖アルキル基を有する分散剤が吸着した金属ナノ粒子を前記p型有機高分子半導体と混合し、溶媒を留去下状態で90℃以上200℃以下で加熱し、該金属ナノ粒子に該p型有機高分子半導体を吸着させることを特徴とする前記4に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【0022】
7.有機化合物が吸着した金属ナノ粒子において、該有機化合物の30〜100質量%がp型有機高分子半導体であることを特徴とする金属ナノ粒子。
【0023】
8.前記7に記載の金属ナノ粒子をp型有機高分子半導体の存在下で形成することを特徴とする金属ナノ粒子の形成方法。
【0024】
9.前記7に記載の金属ナノ粒子の形成方法であって、長鎖アルキル基を有する分散剤の存在下で形成された、該長鎖アルキル基を有する分散剤が吸着した該金属ナノ粒子を、前記p型有機高分子半導体と混合し、溶媒を留去下状態で90℃以上200℃以下で加熱し、該p型有機高分子半導体を吸着させることを特徴とする金属ナノ粒子の形成方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明の上記手段により、光電変換効率が高く、かつ耐久性の高い光電変換材料及びその製造方法を提供することができる。また、本発明の光電変換材料に用いられる金属ナノ粒子の形成方法を提供することができる。
【0026】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0027】
金属ナノ粒子の表面には分散剤が吸着して分散物の安定化の役割を果たしているが、分散剤が吸着した金属ナノ粒子の表面エネルギーが低いために、光電変換層の塗布液に均一に分散させても、塗膜形成時に金属ナノ粒子が気液界面に局在化してしまい、光電変換層内部の金属ナノ粒子の濃度が低くなるため、プラズモン増強作用が十分に得られていないと推定している。
【0028】
本発明では、金属ナノ粒子に吸着した有機化合物の30〜100質量%をp型有機高分子半導体にすることにより、金属ナノ粒子が表面に配向するのを防止し、光電変換層に均一に分散されるために、大きなプラズモン増強作用が得られると推察している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】有機光電変換素子の順層構成の一例を示す断面図である。
【図2】有機光電変換素子の逆層構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の有機光電変換素子に用いられている金属ナノ粒子は、有機化合物が吸着されており、該有機化合物の30〜100質量%がp型有機高分子半導体であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項9までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0031】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、金属ナノ粒子がp型有機高分子半導体の存在下に形成されことが好ましい。
【0032】
また、長鎖アルキル基を有する分散剤の存在下で形成され、該長鎖アルキル基を有する分散剤が吸着した該金属ナノ粒子を前記p型有機高分子半導体中に分散し、該p型有機高分子半導体を吸着させ、金属ナノ粒子に吸着した前記長鎖アルキル基を有する分散剤を脱吸着させることが、高い光電変換効率と耐久性が得られることから、好ましい。
【0033】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0034】
(有機光電変換素子の構成)
図1は、順層型の有機光電変換素子を示す断面図の一例である。図1において、有機光電変換素子10は、基板11の面上に、透明電極(一般に陽極)12、正孔輸送層17、光電変換層14、電子輸送層18及び対極(一般に陰極)13が順次積層されている。
【0035】
基板11は、順次積層された透明電極12、光電変換層14及び対極13を保持する部材である。本実施形態では、基板11側から光電変換される光が入射するので、基板11は、この光電変換される光を透過させることが可能な、即ちこの光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。基板11は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板11は必須ではなく、例えば、光電変換層14の両面に透明電極12及び対極13を形成することで、有機光電変換素子10が構成されてもよい。
【0036】
光電変換層14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型有機半導体とn型有機半導体とを一様に混合し構成されるバルクヘテロジャンクションであることが好ましい。p型有機半導体は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型有機半導体は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。
【0037】
ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
【0038】
図1において、基板11、透明電極12から入射された光は、光電変換層14で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は内部電界、例えば、透明電極12と対極13の仕事関数が異なる場合では透明電極12と対極13との電位差によって、電子は電子受容体間を通り、また正孔は電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。
【0039】
ここで、通常透明電極12の仕事関数は対極13の仕事関数よりも大きいため、正孔は透明電極12へ、電子は対極13へ輸送される。
【0040】
なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される逆層構成となる。
【0041】
図2は、逆層型の有機光電変換素子を示す断面図の一例である。前述のように仕事関数の関係を逆転させ、さらに図1における正孔輸送層17と電子輸送層18の位置を入れ替えている。
【0042】
なお、図1、図2には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、あるいは平滑化層等の他の層を有していてもよい。
【0043】
(光電変換層)
前記光電変換層は、p型有機高分子半導体、n型有機半導体及び金属ナノ粒子を有する。また、p型有機高分子半導体の他に低分子のp型有機半導体を併せて含有しても良い。
【0044】
本発明に係る有機光電変換層は、p型有機高分子半導体とn型有機半導体と溶剤を含有する有機光電変換層材料組成物を塗布することにより形成されるバルクヘテロジャンクション型であることが好ましい。バルクヘテロジャンクション型の光電変換層は、p型有機高分子半導体とn型有機半導体が相分離して形成されたドメイン構造を有しており、p型有機高分子半導体とn型有機半導体とを有機溶剤に溶解した有機光電変換層材料組成物を塗布することにより形成されることが好ましい。
【0045】
前記溶剤としては、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、フロロホルム、トルエン、キシレン、トリクロロベンゼン、フロロナフタレン、メチルナフタレン等が挙げられる。
【0046】
塗布法としては、キャスト法、スピンコート法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、グラビアコート法、スプレーコーティング法、ディッピング(浸漬)コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法Langmuir−Blodgett(LB)法等の通常の方法を用いることがでる。ブレードコーティング法を用いることが特に好ましい。
【0047】
本発明に係る光電変換層の塗布液は、短時間の乾燥においても安定な相分離構造を早期に形成できるため、乾燥時間を早めるために、塗布液の温度を加温することが好ましい。塗布液の温度としては50℃以上が好ましく、120℃以下が好ましい。また乾燥時間を早めるために、90℃以上の乾燥が好ましい。
【0048】
本発明の光電変換層のp型有機高分子半導体材料とn型有機半導体材料との混合比は、質量比で2:8〜8:2の範囲が好ましく、より好ましくは4:6〜6:4の範囲である。本発明に係る光電変換層の膜厚は、50〜400nmが好ましく、より好ましくは80〜300nmの範囲である。
【0049】
塗布液の固形分濃度は、塗布方法、膜厚にもよるが、1〜15質量%が好ましく、より好ましくは1.5〜10質量%である。
【0050】
(n型有機半導体)
本発明にn型有機半導体材料としては、特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
【0051】
中でも、各種のp型有機半導体材料と高速(〜50fs)かつ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、及びこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
【0052】
特に、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、[6,6]−フェニルC71−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PC71BM)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報に記載のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報に記載のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書に記載の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有しより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0053】
(p型有機高分子半導体)
前記p型有機高分子半導体としては、主鎖に電子供与性基(ドナー性ユニット)と電子吸引性基(アクセプター性ユニット)を有する共重合体であるp型共役高分子半導体材料を用いることが、バンドギャップが小さく、太陽光スペクトルの広い範囲にわたる放射エネルギーを効率よく吸収させることができ、光電変換効率が高くすることが出来ることから好ましい。
【0054】
前記p型共役高分子半導体材料としては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、WO2008000664に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv.Mater.,2007,p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.,vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0055】
また、オリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0056】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。また、光電変換層上に電子輸送層を塗布で製膜する場合、電子輸送層溶液が光電変換層を溶かしてしまうという課題があるため、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料を用いてもよい。
【0057】
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号明細書、及び特開2008−16834号公報等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料等を挙げることができる。
【0058】
有機高分子半導体に酸やヨードなどを用いてドープ行い、キャリア密度を上げ伝導率を上げることで、導体に近い性質を示すものがあり、主に正孔輸送層なでに用いられているが、光電変換層としては、発電効率が低下する方向であり好ましくない。具体的には、導電率が10−3S/cmより大きな材料を光電変換層に用いることは好ましくない。このような導電率の大きな材料の例として、PEDOT:PSS[ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)]などが挙げられる。
【0059】
本発明のp型有機高分子半導体の導電率は、10−3S/cm以下であることが好ましく、正孔移動度は、10〜10−5cm/Vsが好ましく、さらに好ましくは10−1〜10−4cm/Vsである。
【0060】
本発明のp型有機高分子半導体の分子量は、数平均分子量Mnで1,000〜1,000,000が好ましくさらに好ましくは、10,000〜100,000である。また重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比PDI(Mw/Mn)は、1〜4が好ましくさらに好ましくさらに好ましくは1〜3である。
【0061】
(低分子のp型有機半導体)
光電変換層には前記p型有機高分子半導体と併せて、低分子のp型有機半導体を用いることが出来る。低分子のp型有機半導体としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物が挙げられる。
【0062】
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0063】
(金属ナノ粒子)
前記金属ナノ粒子の材料としては、表面プラズモン共鳴を示す金属が好ましく、例えば、Au、Ag、Cu、Pt、Al、Pdから選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でも、価格と表面プラズモン共鳴の効果の点からAgが特に好ましい。
【0064】
光電変換層の厚さ方向において、金属ナノ粒子は均一に分布していることが、光照射によりバルクヘテロジャンクションの光電変換層の全体に渡って、n型有機半導体とp型有機半導体の界面で電荷を発生、分離させることが出来るために、光電変換効率を向上することができ効果的である。
【0065】
本発明の金属ナノ粒子は、表面に吸着されている有機化合物の30〜100質量%がp型有機高分子半導体であることから、同じp型有機高分子半導体を含有する光電変換層に均一に分散させることが出来き、光電変換効率を向上することができると推定される。
【0066】
金属ナノ粒子の粒径は、表面プラズモン共鳴を発揮させるためには、入射光の波長の1/10またはそれ以下であることが好ましく、10〜100nmであることが好ましい。
【0067】
金属ナノ粒子は金属塩を分散剤の存在下で、還元することにより製造することが出来る。非水系の光電変換層に均一に分散させるため、金属ナノ粒子は非水系環境で分散が安定となるように、非水系環境に適した分散剤の存在下で製造されることが好ましい。
【0068】
通常、分散剤中で形成された金属ナノ粒子には、分散剤が吸着していが、前記p型有機高分子半導体と混合して加熱することにより、p型有機高分子半導体を吸着させることが出来る。吸着している分散剤とp型有機高分子半導体との割合は、p型有機高分子半導体の濃度、吸着温度、時間を変えることにより調整することが出来る。このように金属ナノ粒子に、吸着している前記有機化合物には、分散剤とp型有機高分子半導体が含まれる。
【0069】
また、吸着している有機化合物中のp型有機高分子半導体の割合は、上記と同様の操作で調整できる。
【0070】
前記光電変換層中の金属ナノ粒子の含有率は、金属として0.1〜50質量%が好ましい。
【0071】
分散剤と金属塩を混合することにより分散剤と金属塩との錯化合物を形成することができる。このとき、金属塩及び分散剤の両方を溶解する溶媒として、メタノール、エタノール、水などを添加すると錯化合物の形成が均一に進むので好ましい。
【0072】
混合する際の温度は、0〜90℃の範囲であることが好ましく、10〜40℃が更に好ましい。10℃以上であれば錯化合物の形成が十分に進み、90℃以下であれば、錯化合物が分解せずに、錯化合物の形成が進む。錯化合物の形成を十分進ませるためには、混合時間は30分以上が好ましく、12時間であれば錯化合物がほぼ完全に形成されるので、効率の点から12時間以下であることが好ましい。
【0073】
次いで、錯化合物を加熱することにより、分散剤が吸着している金属ナノ粒子を形成することができる。この際、錯化合物は還元剤により還元されても良いが、還元剤の非存在下で、金属塩のアニオンが分解することにより、金属塩が還元されることが、反応が穏やかに進行し、微細な金属粒子が得られることから好ましい。このときの加熱は、100〜180℃が好ましく、120℃〜160℃が更に好ましい。100℃以上であれば、反応が十分に進み、180℃以下であれば、分散剤が金属ナノ粒子の表面にとどまり、分散を安定に保持できる。
【0074】
次いで、p型有機高分子半導体を混合して、加熱することにより、金属ナノ粒子に吸着している分散剤を30〜100質量%、p型有機高分子半導体に置き換えることができる。加熱温度は90〜200℃が好ましい。90℃以上であれば、十分なp型有機高分子半導体に置き換わることができ、200℃以下であれば、分散剤やp型有機高分子半導体が分解して分散が不安定になることをぼうしできる。また、溶媒はできるだけ留去し、加熱することが、p型有機高分子半導体への置換が進みやすく好ましい。
【0075】
(金属ナノ粒子に吸着した有機化合物とp型有機高分子半導体の測定)
金属ナノ粒子に吸着した有機化合物は、金属ナノ粒子の分散液を遠心分離、溶媒添加後再分散、遠心分離、乾燥し、非吸着化合物を除去してから、焼却することにより、定量できる。
【0076】
金属ナノ粒子に吸着したp型有機高分子半導体は、上記と同様に金属ナノ粒子の分散液から非吸着化合物を除去した後、金属を錯塩形成剤の水溶液で溶解し、この溶液から水と相溶しない溶媒でp型有機高分子半導体を抽出し、抽出溶液を蛍光分析で測定することにより定量できる。
【0077】
(金属塩)
前記金属塩から金属ナノ粒子が形成された後、加熱により金属塩の陰イオンが分解して除去されることが好ましい。これらの点から該金属塩はシュウ酸塩が特に好ましい。
【0078】
また、金属塩としてシュウ酸銀を用いると、シュウ酸銀は、銀含有率が高く、また通常150℃以下の低温で分解しやすい。熱分解するときに、シュウ酸イオンが銀イオンを還元して二酸化炭素となり、除去されて金属銀が得られるため、特に還元剤を必要とせず、不純物が残留しにくいという利点がある。
【0079】
(長鎖アルキル基を有する分散剤)
前記長鎖アルキル基を有する分散剤は、シュウ酸銀と反応して、銀とシュウ酸イオンを含む錯化合物を形成する。金属塩から金属ナノ粒子を製造する中間体としてこの錯化合物を形成させることが好ましい。
【0080】
シュウ酸銀を直接熱分解すると微粒子が凝集した多孔体となるが、この錯化合物を形成してから加熱分解することにより、極めて微細で高分散性の銀ナノ粒子が得られる。しかもシュウ酸銀を直接熱分解する場合と異なり、熱分解反応が極めて穏やかである。このようにして生成した金属ナノ粒子の表面には前記長鎖アルキル基が吸着されており、高分散性を保ったまま、長期の保存が可能であり、各種の有機溶剤にも容易に分散することが出来る。
【0081】
長鎖アルキル基を有する分散剤は、長鎖アルキル基にアミノ基、カルボキシ基などの銀イオンと弱い結合を形成する基が結合した化合物であることが好ましく、特にアミノ基と結合した長鎖アルキルアミンが好ましい。
【0082】
前記長鎖アルキル基の炭素数は、10以上24以下であり、好ましくは10以上22以下、より好ましくは12以上20以下である。10以上であれば分散安定性が高く、12以上であれば更に分散安定性が高くなる。24以下であれば、シュウ酸銀と錯化合物かご物を容易に形成でき、20以下であれば加熱により容易に蒸発又は分解除去できる。
【0083】
長鎖アルキル基の具体例としては、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘプタデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ドコシル基等の飽和脂肪族基、オレイル基、リシノレイル基、リノレイル基、リノレニル基等の不飽和脂肪族基が挙げられる。
【0084】
長鎖アルキルアミンの具体例としては、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘプタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、エイコシルアミン、ドコシルアミン等の飽和脂肪族アミン、オレイルアミン、リシノレイルアミン、リノレイルアミン、リノレニルアミン等の不飽和脂肪族アミンが挙げられる。
【0085】
特にオレイルアミンは、200℃以下で揮発又は分解されて除去されるので、オレイルアミンが吸着した金属ナノ粒子をp型有機高分子半導体と混合して加熱することにより、金属ナノ粒子に吸着したオレイルアミンを高い比率でp型有機高分子半導体と置き換えることができる。
【0086】
(電子輸送層・正孔ブロック層)
本発明の有機光電変換素子は、光電変換層と陰極との中間に電子輸送層を形成することで、光電変換層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0087】
電子輸送層材料としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様に、バルクヘテロジャンクション層に用いられるp型有機半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、光電変換層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与される。より好ましくは、n型半導体のHOMO準位よりも深い材料を電子輸送層として用いることである。また、電子を輸送する特性から、電子移動度の高い化合物を用いることが好ましい。
【0088】
このような電子輸送層は、正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用する方が好ましい。このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。また、光電変換層に用いたn型有機半導体材料単体からなる層を用いることもできる。
【0089】
これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
【0090】
(正孔輸送層・電子ブロック層)
本発明の有機光電変換素子は、光電変換層と陽極との中間には正孔輸送層を、光電変換層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0091】
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層には、ヘレウス社製、商品名Clevious等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、WO2006/019270号等に記載のシアン化合物、等を用いることができる。
【0092】
なお、光電変換層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、光電変換層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する、電子ブロック機能が付与される。このような正孔輸送層は、電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用する方が好ましい。
【0093】
このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。
【0094】
これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を形成する前に、下層に塗布膜を形成すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
【0095】
(電極)
本発明の有機光電変換素子においては、少なくとも陽極と陰極を有する。また、タンデム構成をとる場合には中間電極を用いることでタンデム構成を達成することができる。なお、本発明においては主に正孔が流れる電極を陽極と呼び、主に電子が流れる電極を陰極と呼ぶ。
【0096】
また透光性があるかどうかといった機能から、透光性のある電極を透明電極と呼び、透光性のない電極を対極と呼び分ける場合がある。通常、陽極は透光性のある透明電極であり、陰極は透光性のない対電極である。
【0097】
(陽極)
本発明に係る陽極は、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ用いることができる。
【0098】
またポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて陽極とすることもできる。
【0099】
(陰極)
陰極は導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。陰極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0100】
陰極の導電材として金属材料を用いれば陰極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、有機光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
【0101】
また、陰極は、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い陰極を塗布法により形成でき好ましい。
【0102】
また、陰極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の陰極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記陽極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性陰極とすることができる。
【0103】
(基板)
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、即ちこの光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。
【0104】
本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。
【0105】
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。
【0106】
中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0107】
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
【0108】
また、酸素及び水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基板にはバリアコート層が予め形成されていてもよいし、透明導電層を転写する反対側にはハードコート層が予め形成されていてもよい。
【0109】
(封止)
また、作製した有機光電変換素子が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、有機光電変換素子だけでなく有機エレクトロルミネッセンス素子等で公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、アルミまたはガラスでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上を接着剤で貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)または有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることができる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0111】
[金属ナノ粒子の作製]
(金属ナノ粒子NC−Aの形成)
オレイルアミン5.35g(20mmol)とヘキシルアミン2.02g(20mmol)をメタノール5mlと混合し、この混合溶液にシュウ酸銀1.519g(5mmol)を添加し、さらに水1mlを添加し室温で2時間攪拌してシュウ酸銀を溶解させた。このとき得られた生成物はFT−IRを用いた解析により、銀とシュウ酸イオン、オレイルアミン及びヘキシルアミンを含む錯化合物であることを確認した。
【0112】
その後、エバポレータを使用して40℃でメタノールを除去し、次いで、150℃に加熱して1時間攪拌させると、褐色の液体が得られた。これにヘキサン30mlを加えて約30分攪拌し、遠心分離機で分離させ上澄みを濾過した。この操作を3回繰り返した。さらに、エバポレータを使用して45℃でヘキサンを除去した後、メタノール20mlを加えて遠心分離機で分離させ上澄みを除去した。この操作も3回繰り返し、その後、減圧乾燥により生成物として金属銀および金属銀に吸着した有機物からなる、粉末の金属ナノ粒子NC−Aを得た。得られた粉末について以下のような解析及び評価を行った。
【0113】
得られた粉末について、X線回折計((株)リガク製ミニフレックス)により解析を行ったところ、X線回折パターンから金属銀が生成されていることを確認した。
【0114】
また、走査透過電子顕微鏡による観察を行い、粒径が12.5nmの粒度の揃った球状の単分散超微粒子からなるものであった。銀としての収率は87.8%であった。また、IR分析によりオレイルアミンとヘキシルアミンが被着していることを確認した。
【0115】
(金属ナノ粒子分散液NC−01の作製)
300mgの金属ナノ粒子NC−Aを、p型有機高分子半導体であるP3HT(BASFジャパン社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン、Mn=25,000,PDI=2.3)の1.0質量%オルトキシレン溶液100gに加え80℃で2時間撹拌し、金属ナノ粒子分散液NC−01を作製した。
【0116】
(NC−01の分析)
前記金属ナノ粒子分散液NC−01を1mlとり、遠心分離し、上澄を除去し、キシレン0.5mlを加えて80℃で2時間撹拌し、遠心分離し、上澄を除去することにより、吸着していない有機化合物(P3HT、オレイルアミン及びヘキシルアミン)を除去した。下に沈降したナノ銀粒子を一部採取し、減圧化で乾燥して、秤量した後、焼却し乾燥減量によるナノ銀に吸着していた有機化合物を定量した。
【0117】
また一部をシアン化カリウム水溶液で溶解し、キシレンで抽出液を蛍光分析によりP3HTを定量した。その結果、金属ナノ粒子に吸着していた全有機化合物中、P3HTは検出限界以下であり5質量%以下であった。また金属ナノ粒子分散液中の銀の含有率は0.2質量%であった。
【0118】
(金属ナノ粒子分散液NC−02の作製)
300mgの金属ナノ粒子NC−Aを、p型有機高分子半導体であるP3HT(BASFジャパン社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン、Mn=25,000,PDI=2.3)の1.0質量%オルトキシレン溶液100gに加え80℃で2時間撹拌した後、エバポレートし乾固させ、さらに0.01Paの減圧化100℃で12時間乾燥させ、再度オルトキシレン100gを加え80℃で2時間攪拌して、金属ナノ粒子分散液NC−02を作製した。
【0119】
前記NC−01の分析と同様に、金属ナノ粒子分散液NC−02を分析したところ、金属ナノ粒子に吸着していた全有機化合物中、35%がP3HTであった。また金属ナノ粒子分散液中の銀の含有率は0.2質量%であった。
【0120】
(金属ナノ粒子分散液NC−03の作製)
NC−01およびNC−02を3:7で混合し、金属ナノ粒子分散液NC03を作成した。前記NC−01の分析と同様に、金属ナノ粒子分散液NC−03を分析したところ、金属ナノ粒子に吸着していた全有機化合物中、25%がP3HTであった。また金属ナノ粒子分散液中の銀の含有率は0.2質量%であった。
【0121】
(金属ナノ粒子分散液NC−04の作製)
オレイルアミン0.535g(2mmol)、シュウ酸銀0.304g(2mmol)を2mlのメタノールに加えさらに水0.2mlを加え室温で12時間撹拌後、エバポレートし、銀とシュウ酸イオン、オレイルアミンからなる錯形成物を形成した。これにp型有機半導体材料であるP3HT(BASFジャパン社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン、Mn=25,000,PDI=2.3)の1.0質量%オルトキシレン溶液を100gくわえ窒素雰囲気下で2時間還流させ銀ナノ粒子を形成し、金属ナノ粒子分散液NC−04を作製した。
【0122】
前記NC−01の分析と同様に、金属ナノ粒子分散液NC−04を分析したところ、金属ナノ粒子に吸着していた全有機化合物中、70%がP3HTであった。また金属ナノ粒子分散液中の銀の含有率は0.2質量%であった。
【0123】
(金属ナノ粒子分散液NC−05の作製)
前記金属ナノ粒子分散液NC−04をエバポレートし乾固させ、さらに0.01Paの減圧化100℃で12hr乾燥させ、再度オルトキシレン100gを加え80℃で2時間攪拌して、金属ナノ粒子分散液NC−05を作製した。
【0124】
前記NC−01の分析と同様に、金属ナノ粒子分散液NC−05を分析したところ、金属ナノ粒子に吸着していた全有機化合物中、85%がP3HTであった。また金属ナノ粒子分散液中の銀の含有率は0.2質量%であった。
【0125】
(金属ナノ粒子分散液NC−06の作製)
前記金属ナノ粒子分散液NC−01の作製において、p型有機高分子半導体として、P3HTに代えてPCPDTBT(Mn=28,000,PDI=2.1)を用い、p型有機高分子半導体の溶液の溶剤をオルトキシレンに代えてオルトジクロロベンゼンとした他は同様にして、金属ナノ粒子分散液NC−06を作製した。
【0126】
前記NC−01の分析と同様に、金属ナノ粒子分散液NC−06を分析したところ、金属ナノ粒子に吸着していた全有機化合物中、PCPDTBTは、検出限界(5%)以下であった。また金属ナノ粒子分散液中の銀の含有率は0.2質量%であった。
【0127】
(金属ナノ粒子分散液NC−07の作製)
前記金属ナノ粒子分散液NC−02の作製において、p型有機高分子半導体として、P3HTに代えてPCPDTBT(Mn=28,000,PDI=2.1)を用い、p型有機高分子半導体の溶液の溶剤をオルトキシレンに代えてオルトジクロロベンゼンとした他は同様にして、金属ナノ粒子分散液NC−07を作製した。
【0128】
前記NC−01の分析と同様に、金属ナノ粒子分散液NC−07を分析したところ、金属ナノ粒子に吸着していた全有機化合物中、PCPDTBTは、40%であった。また金属ナノ粒子分散液中の銀の含有率は0.2質量%であった。
【0129】
(金属ナノ粒子分散液NC−08の作製)
前記金属ナノ粒子分散液NC−05の作製において、p型有機高分子半導体として、P3HTに代えてPCPDTBT(Mn=28,000,PDI=2.1)を用い、p型有機高分子半導体の溶液の溶剤をオルトキシレンに代えてオルトジクロロベンゼンとした他は同様にして、金属ナノ粒子分散液NC−08を作製した。
【0130】
前記NC−01の分析と同様に、金属ナノ粒子分散液NC−08を分析したところ、金属ナノ粒子に吸着していた全有機化合物中、PCPDTBTは、90%であった。また金属ナノ粒子分散液中の銀の含有率は0.2質量%であった。
【0131】
[実施例1]
(有機光電変換素子100の作製)
有機光電変換素子100は、図1に示した有機光電変換素子10の層構成からなり、順層構成となる。以下に作製例及び評価方法を説明する。
【0132】
ガラス基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)の透明導電膜を110nmの厚さで堆積させた。該透明導電膜のシート抵抗は13Ω/□であった。該透明導電膜を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングとを用いて2mm幅にパターニングして、透明電極を形成した。
【0133】
パターン形成した透明電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0134】
引き続いて、前記導電膜上に、導電性高分子であるClevous P4083(ヘレウス製PEDOT−PSS(poly(3,4−ethylenedioxythiophene)−poly(styrenesulfonate))の水分散液)を乾燥後30nmとなる膜厚でスピンコートした後、140℃で大気中10分間加熱乾燥して、有機物からなる正孔輸送層(有機材料層)を形成した。
【0135】
これ以降は基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。まず、窒素雰囲気下で上記基板を140℃で3分間加熱処理した。
【0136】
次いで、有機溶媒であるオルトキシレンに、p型有機高分子半導体であるP3HT(BASFジャパン社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン,Mn=25,000,PDI=2.3)を1.0質量%、n型有機半導体材料であるPCBM(フロンティアカーボン社製E100H:6,6−フェニル−C61−酪酸メチルエステル)を0.8質量%で混合した有機光電変換材料組成物溶液を調製し、オーブンで100℃に加熱しながら撹拌(60分間)してP3HTとPCBMを溶解した後、0.20μmのフィルタでろ過をかけながら、700rpmで60秒、次いで2000rpmで2秒間のスピンコートを行い、その後150℃、10分のアニール処理を施して、100nmの膜厚の光電変換層を形成した。
【0137】
次に、上記光電変換層を成膜した基板を真空蒸着装置内に設置した。そして、2mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下にまでに真空蒸着機内を減圧した後、フッ化リチウムを0.5nmの膜厚で蒸着し、Alを80nmの膜厚で蒸着して、第2の電極を形成し有機光電変換素子を作製した。蒸着速度はいずれも2nm/秒とした。
【0138】
得られた有機光電変換素子を、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出し、3mm角のサイズの受光部を複数有する有機光電変換素子100を得た。
【0139】
(有機光電変換素子101〜105の作製)
有機光電変換素子100の作製において、P3HT及びオルトキシレンに代えて、金属ナノ粒子分散液NC−01〜05を用い、PCBMは金属ナノ粒子分散液NC−01〜04に溶解した他は同様にして、有機光電変換素子101〜105を作製した。
【0140】
(有機光電変換素子の評価)
(光電変換効率の評価)
上記作製した封止した有機光電変換素子に、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、短絡電流密度Jsc(mA/cm)及び開放電圧Voc(V)、曲線因子(フィルファクター)FFを、同素子上に形成した4箇所の受光部についてそれぞれ測定し、Jsc、Voc、FFから式1に従って光電変換効率η1(%)を求めた。
【0141】
式(1) η1(%)=Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF
上記光電変換効率の平均値を表1に示す。該平均値の数字が大きい程、光電変換効率が良好であることを示す。
【0142】
(耐久性の評価)
光電変換効率の評価を行った有機光電変換素子の陽極と陰極の間に抵抗を接続し、80℃の環境でソーラシュミレーター(AM1.5G)の光を10倍の1000mW/cmの照射強度で100時間暴露し続けた後、有機光電変換素子を室温に冷却し、前記光電変換効率の評価と同様に同素子上に形成した4箇所の受光部についてそれぞれ光電変換効率η2(%)を求めた。下記式(2)により光電変換効率の保持率を算出した。
【0143】
式(2) 保持率(%)=(暴露後の光電変換効率η2/暴露前の光電変換効率η1)×100
上記評価によって求められた光電変換効率の保持率の平均値を耐久性として表1に示す。平均値の数字が大きい程、光電変換効率の耐久性(光電変換効率の耐久性)が良好であることを示す。
【0144】
【表1】

【0145】
表1より、光電変換層が金属ナノ粒子を含有し、金属ナノ粒子に吸着している有機化合物中、p型有機高分子半導体が30〜100質量%であれば、光電変換効率が高く、耐久性が高いことが分かる。
【0146】
[実施例2]
(有機光電変換素子200の作製)
有機光電変換素子200は、図2に示した有機光電変換素子10の層構成からなり、逆層構成となる。以下に作製例を説明する。
【0147】
PET基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗12Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて10mm幅にパターニングし、第1電極を形成した。パターン形成した第1電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。これ以降は基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。
【0148】
この透明基板上に、イソプロパノールに溶解したポリエチレンイミンと、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテルの混合溶液を乾燥膜厚が約5nmになるようにブレードコーターを用いて塗布乾燥した。その後、ホットプレート上で120℃1分間加熱処理をして、電子輸送層を製膜した。
【0149】
次いで、オルトジクロロベンゼンに、p型有機高分子半導体であるPCPDTBT(Mn=28,000,PDI=2.1)を1質量%、n型有機半導体であるPC71BM([6,6]−フェニル C71 酪酸メチルエステル;フロンティアカーボン製nanom spectra E110)を2質量%を混合した有機光電変換材料組成物溶液を調製し、オーブンで100℃に加熱しながら撹拌(60分間)してPCPDTBTとPC71BMを溶解した後、0.45μmのフィルタでろ過をかけながら、乾燥膜厚が約100nmになるようにブレードコーターを用いて塗布し、95℃で10分間乾燥して、有機光電変換層を製膜した。
【0150】
続いて、正孔輸送層として、導電性高分子及びポリアニオンからなるPEDOT−PSS(CLEVIOS(登録商標) P VP AI 4083、エイチ・シー・スタルク株式会社製、導電率1×10−3S/cm)、イソプロパノールを含む液を調製し、乾燥膜厚が約30nmになるようにブレードコーターを用いて塗布乾燥した。その後、90℃の温風で20秒間加熱処理し正孔輸送層を製膜した。
【0151】
次に、上記一連の機能層を製膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、10mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、1×10−3Pa以下にまでに真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度5.0nm/秒でAgメタルを200nm積層することで第2の電極を形成した。得られた有機光電変換素子を窒素チャンバーに移動し、2枚の凸版印刷製透明バリアフィルムGX(水蒸気透過率0.05g/m/d)の間に挟みこみ、UV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出し、受光部が約10×10mmサイズの有機光電変換素子200を得た。
【0152】
【化1】

【0153】
(有機光電変換素子201〜203の作製)
有機光電変換素子200の作製において、PCPDTBT及びオルトジクロロベンゼンを金属ナノ粒子分散液NC−06,NC−07、NC−08に変え、PC71BMは金属ナノ粒子分散液に溶解した以外は、同様に有機光電変換素子201〜203を作成した。評価は実施例1と同様に実施した。
【0154】
【表2】

【0155】
表2より、光電変換層が金属ナノ粒子を含有し、金属ナノ粒子に吸着している有機化合物中、p型有機高分子半導体が30〜100質量%であれば、光電変換効率が高く、耐久性が高いことが分かる。
【符号の説明】
【0156】
10 有機光電変換素子
11 基板
12 透明電極
13 対極
14 光電変換層
14′ 第1の光電変換層
15 電荷再結合層
16 第2の光電変換層
17 正孔輸送層
18 電子輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型有機高分子半導体、n型有機半導体及び金属ナノ粒子を含有する光電変換層を有する有機光電変換素子において、該金属ナノ粒子に有機化合物が吸着されており、該有機化合物の30〜100質量%が前記p型有機高分子半導体であることを特徴とする有機光電変換素子。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子が前記p型有機高分子半導体の存在下で形成されたことを特徴とする請求項1に記載の有機光電変換素子。
【請求項3】
長鎖アルキル基を有する分散剤が吸着した金属ナノ粒子を、前記p型有機高分子半導体と混合し、溶媒を留去下状態で90℃以上200℃以下で加熱することにより、前記金属ナノ粒子が前記p型有機高分子半導体を吸着して担持していることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機光電変換素子。
【請求項4】
p型有機高分子半導体、n型有機半導体、及び、有機化合物が吸着した金属ナノ粒子を含有する光電変換層を有する有機光電変換素子の製造方法において、該金属ナノ粒子に吸着した前記有機化合物の30〜100質量%が前記p型有機高分子半導体となるように、前記p型有機高分子半導体を吸着させることを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。
【請求項5】
前記金属ナノ粒子を前記p型有機高分子半導体の存在下で形成することを特徴とする請求項4に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項6】
長鎖アルキル基を有する分散剤が吸着した金属ナノ粒子を、長鎖アルキル基を有する分散剤の存在下で形成し、該長鎖アルキル基を有する分散剤が吸着した金属ナノ粒子を前記p型有機高分子半導体と混合し、溶媒を留去下状態で90℃以上200℃以下で加熱し、該金属ナノ粒子に該p型有機高分子半導体を吸着させることを特徴とする請求項4に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項7】
有機化合物が吸着した金属ナノ粒子において、該有機化合物の30〜100質量%がp型有機高分子半導体であることを特徴とする金属ナノ粒子。
【請求項8】
請求項7に記載の金属ナノ粒子をp型有機高分子半導体の存在下で形成することを特徴とする金属ナノ粒子の形成方法。
【請求項9】
請求項7に記載の金属ナノ粒子の形成方法であって、長鎖アルキル基を有する分散剤の存在下で形成された、該長鎖アルキル基を有する分散剤が吸着した該金属ナノ粒子を、前記p型有機高分子半導体と混合し、溶媒を留去下状態で90℃以上200℃以下で加熱し、該p型有機高分子半導体を吸着させることを特徴とする金属ナノ粒子の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−55219(P2013−55219A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192453(P2011−192453)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】