説明

有機光電変換素子および有機光電変換素子の製造方法

【課題】光電変換効率に優れる光電変換素子を提供することであり、特にフレキシブル基板にも適用でき可撓性に優れ、光電変換効率に優れる光電変換素子を提供する。
【解決手段】第一の電極12と、第二の電極14との間にバルクヘテロジャンクション型の光電変換層13を有する有機光電変換素子であって、該第一の電極は、該光電変換層の側に導電性繊維15からなる補助電極16を有し、該導電性繊維は金属酸化物で被覆されており、該金属酸化物の金属は該導電性繊維を構成する元素でなく、かつ該光電変換層は、該導電性繊維の少なくとも一部を含むように構成されていることを特徴とする有機光電変換素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池などに用いられる、光−電気変換機能を有する有機機能層を有する有機光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光・電気変換機能を有する有機物を用いた有機機能層を有する有機光電変換素子を具備した有機太陽電池は、製造プロセスが簡便で、安価に製造できるなどの利点をもつため、近年多くの研究がなされている。
【0003】
有機太陽電池は有機ドナー材料と有機アクセプター材料を混合した、所謂、バルクヘテロジャンクション構造を有する素子を用いることで、課題であった電荷分離効率を向上させている。
【0004】
結果としてエネルギー変換効率は5%台まで向上し、近年実用レベルにまで発展してきた分野である。(例えば、特許文献1)。
【0005】
一般的に、バルクヘテロジャンクション構造を有する素子においては、ドナー材料(p型半導体)とアクセプター材料(n型半導体)のドメインのサイズを小さくして、ドナー材料とアクセプター材料との界面の表面積を大きくした方が、励起子の電荷分離サイトが多くなるため、エネルギー変換効率の面で有利である。
【0006】
しかし、発生したキャリアを電極まで運ぶためには、ドメインから電極までの導電パスが形成する必要があるが、このためには、ドメインのサイズを大きくした方が有利であり、上記ドメインのサイズに関しては、相反する方向性を有している。
【0007】
また、ドメインによる導電パスを形成させる手法としては、p型半導体とn型半導体の混合溶液を塗布した後、アニール処理を行うという方法が一般的に用いられているが、この方法ではドメインの形成の仕方を制御するのが難しく、それぞれのドメイン構造が電極まで繋がっておらず、キャリアが発生しても電荷を取り出せない発電領域ができてしまうという問題があった。
【0008】
また、バルクヘテロジャンクション型光電変換層は、厚膜化することにより太陽光を効率良く吸収することができるが、厚膜化しすぎると発生したキャリアが電極に到達する前に失活、再結合してしまう問題がある。
【0009】
さらには、光電変換層に用いられる半導体においては、p型半導体の場合、n型半導体の場合に比較して、ホールの移動度が低く、電子に比べホールの取り出しが困難であるという問題があった。
【0010】
そして、良好な光電変換効率を得るための方法として、光電変換素子の電極に、金属酸化物をその表面に有する金属ナノロッドを用いる方法が知られている(特許文献2参照)。
【0011】
しかしながら、この方法は基板上に亜鉛を真空蒸着法によって形成させており、生産性が低いるだけでなく、表面を酸化物にした後大気中で300℃の加熱を必要としているため、PETなどのフレキシブル基板を用いることができないなど可撓性が不充分であった。
【0012】
また、この方法では金属ナノロッド表面には同一の金属からなる金属酸化物しか被覆することができないため、導電性と電子ブロック機能とを両立させるための調整は困難であり、光電変換効率がまだ充分なものではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5331183号明細書
【特許文献2】特開2008−192680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、光電変換効率に優れる光電変換素子を提供することであり、特にフレキシブル基板にも適用でき可撓性に優れ、光電変換効率に優れる光電変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記課題は、下記の手段により達成される。
【0016】
1.第一の電極と、第二の電極との間にバルクヘテロジャンクション型の光電変換層を有する有機光電変換素子であって、該第一の電極は、該光電変換層の側に導電性繊維からなる補助電極を有し、該導電性繊維は金属酸化物で被覆されており、該金属酸化物の金属は該導電性繊維を構成する元素でなく、かつ該光電変換層は、該導電性繊維の少なくとも一部を含むように構成されていることを特徴とする有機光電変換素子。
【0017】
2.前記導電性繊維が金属ナノワイヤまたはカーボンナノチューブであることを特徴とする前記1に記載の有機光電変換素子。
【0018】
3.前記導電性繊維が金属ナノワイヤであり、且つ該金属ナノワイヤの金属元素とは異なる金属からなる金属酸化物で被覆されていることを特徴とする前記2に記載の有機光電変換素子。
【0019】
4.前記導電性繊維が、銀ナノワイヤであることを特徴とする前記3に記載の有機光電変換素子。
【0020】
5.前記金属酸化物が酸化ニッケル、酸化銅、またはこれらの混合物であることを特徴とする前記1から4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0021】
6.前記1から5のいずれか1項に記載の有機光電変換素子を製造する有機光電変換素子の製造方法であって、前記第一の電極上に前記導電性繊維を含有する塗布液を塗布し、塗布された導電性繊維を大気圧プラズマCVD法により金属酸化物で被覆する工程を有することを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の上記手段により、光電変換効率に優れる光電変換素子が提供でき、特にフレキシブル基板にも適用でき可撓性に優れ、光電変換効率に優れる光電変換素子およびその製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の有機光電変換素子の基本構造を示す概略断面図である。
【図2】導電性繊維に金属酸化物を被覆するための大気圧プラズマ法に用いられる装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は第一の電極と、第二の電極との間にバルクヘテロジャンクション型の光電変換層を有する有機光電変換素子であって、該第一の電極は、該光電変換層の側に導電性繊維からなる補助電極を有し、該導電性繊維は金属酸化物で被覆されており、該金属酸化物の金属は該導電性繊維を構成する元素でなく、かつ該光電変換層は、該導電性繊維の少なくとも一部を含むように構成されていることを特徴とする。
【0025】
本発明では、特に補助電極として、導電性繊維を構成する元素でない金属の金属酸化物で被覆された導電性繊維を用いることにより、フレキシブル基板にも適用でき可撓性に優れ、光電変換効率に優れる光電変換素子が提供できる。
【0026】
以下、本発明の構成について、詳細に説明する。
【0027】
(有機光電変換素子)
本発明の光電変換素子について、図1を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の有機光電変換素子の基本構造を示す概略断面図である。
【0028】
図1において、有機光電変換素子10は、第一の電極12、バルクヘテロジャンクション構造(p型半導体およびn型半導体)を有する光電変換層13(以下、バルクヘテロジャンクション層とも呼ぶ)、および第二の電極14が積層された構造を有する。
【0029】
図1では、有機光電変換素子10が基板11上に配置された例を示している。
【0030】
第一の電極は、光電変換層13の側に導電性繊維15からなる補助電極16を有している。
【0031】
光電変換層13と第二の電極14との間に電子輸送層などの中間層17を有しても良い。
【0032】
本発明では、第一の電極が、導電性繊維表面を導電性繊維とは異なる金属の酸化物で被覆されている。
【0033】
本発明の有機光電変換素子は、例えば以下のようにして作製できる。
【0034】
基板11上に、第一の電極を形成し、その上に導電性繊維を含有する塗布液を塗布し、例えばCVD(化学気相成長)法で導電性繊維に金属酸化物を被覆させる。さらに、その上にp型半導体とn型半導体材料含む光電変換層13、中間層(例えば電子輸送層)17を順次積層し、第2の電極14を形成させることにより、有機光電変換素子を作製することができる。
【0035】
以下、本発明の構成についてさらに詳細に説明する。
【0036】
(第一の電極)
本発明の第一の電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができる。
【0037】
例えば、陽極として用いる場合、第一の電極は、好ましくは300〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の透明導電性金属酸化物、銀、銅、金、白金、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、コバルト、鉄、クロム、タングステン、モリブデン、マグネシウム、カルシウム、シリコン等の金属薄膜、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、導電性高分子を用いることができ、また、それらを組み合わせて構成しても良い。
【0038】
さらに、第一の電極の全光線透過率は60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0039】
全光透過率は、分光光度計等を用いた公知の方法に従って測定することができる。また、本発明の第一の電極の電気抵抗値としては、表面抵抗率として50Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることがより好ましく、3Ω/□以下であることが特に好ましい。
【0040】
50Ω/□以下であれば、受光面積の広い有機光電変換素子においても十分な光電変換効率が得られるため好ましい。
【0041】
前記表面抵抗率は、例えば、JIS K 7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)などに準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0042】
なお、図1に示すバルクヘテロ接合型の有機光電変換素子10では、光電変換層13が第一の電極12と第二の電極13とでサンドイッチされているが、一対の櫛歯状電極を光電変換層13の片面に配置するといった、バックコンタクト型の有機光電変換素子が構成されてもよい。
【0043】
第一の電極の厚みには特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一般的に10μm以下であることが好ましく、厚みが薄くなるほど透明性や柔軟性が向上するためより好ましい。
【0044】
(導電性繊維)
本発明に係る導電性繊維とは、導電性を有し、糸状で、長さと直径の比率(長さ/直径(断面の径の最大値)=アスペクト比)が5以上のものをいい、好ましくは20以上のものが好適に用いられる。
【0045】
長さは、導電性繊維の電子顕微鏡による投影図において、糸状の一端と他の一端とを糸状の中心に沿って結んだ線の長さであり、300個につき測定した値の平均値をいう。直径は、断面の径の最大値であり、導電性繊維の電子顕微鏡による投影図における径の最大値であり、300個につき測定した値の平均値をいう。
【0046】
形状としては中空チューブ状、ワイヤ状、ファイバー状のもの等があり、例えば、金属でコーティングした有機繊維や無機繊維、導電性金属酸化物繊維、金属ナノワイヤ、炭素繊維、カーボンナノチューブ等がある。本発明においては、透明性の観点から太さが300nm以下の導電性繊維であることが好ましく、併せて導電性も満足するために、導電性繊維は金属ナノワイヤおよびカーボンナノチューブから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。さらには、コスト(原材料費、製造費)と性能(導電性、透明性、可撓性)の観点から、銀ナノワイヤが特に好ましい。
【0047】
(金属ナノワイヤ)
本発明における金属ナノワイヤとは、原子スケールからnmサイズの直径を有する線状構造体を意味する。
【0048】
本発明に係る導電性繊維に適用される金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に、3〜300μmであることが好ましい。長さ、直径は上記したように電子顕微鏡による投影図から300個について測定した値の平均値である。
【0049】
併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。相対標準偏差(%)は、測定値の標準偏差/平均値×100である。
【0050】
また、直径は、透明性と、導電性のバランスの観点から、10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
【0051】
本発明に係る金属ナノワイヤの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)および鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。
【0052】
また、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、およびマグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むことも好ましい。金属ナノワイヤが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤの表面と内部で金属組成が異なっていてもよいし、金属ナノワイヤ全体が同一の金属組成を有していてもよい。金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。
【0053】
また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。
【0054】
例えば、Agナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、Auナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、Cuナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、Coナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。
【0055】
特に、上述した、Adv.Mater.およびChem.Mater.で報告されたAgナノワイヤの製造方法は、水系で簡便にかつ大量にAgナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に関わる金属ナノワイヤの製造方法として好ましく適用することができる。
【0056】
(カーボンナノチューブ)
カーボンナノチューブは、厚さ数原子層のグラファイト状炭素原子面(グラフェンシート)が筒形に巻かれた形状からなる炭素系繊維材料であり、その周壁の構成数から単層ナノチューブ(SWNT)と多層ナノチューブ(MWNT)とに大別され、また、グラフェンシートの構造の違いからカイラル(らせん)型、ジグザグ型、アームチェア型に分けられ、各種のものが知られている。
【0057】
本発明に適用されるカーボンナノチューブとしては、いずれのタイプのカーボンナノチューブも用いることができ、また、これらの種々のカーボンナノチューブを複数混合して用いてもよいが、導電性に優れた単層カーボンナノチューブであることが好ましく、さらには金属性のアームチェア型単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。カーボンナノチューブの形状としては、1つのカーボンナノチューブで長い導電パスを形成するために、アスペクト比(=長さ/直径)が大きい、すなわち細くて長い単層カーボンナノチューブであることが好ましい。
【0058】
例えば、アスペクト比が102以上、好ましくは103以上のカーボンナノチューブが挙げられる。
【0059】
カーボンナノチューブの長さは、3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に、3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、直径は100nmより小さいことが好ましく、1〜50nmが好ましく、1〜30nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
【0060】
カーボンナノチューブの製造方法は特に限定されるものではなく、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法、気相成長法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法等の公知の手段を用いることができる。
【0061】
また、副生成物や触媒金属等の残留物を除去するために、洗浄法、遠心分離法、ろ過法、酸化法、クロマトグラフ法等の種々の精製法によって、より高純度化されたカーボンナノチューブの方が、各種機能を十分に発現できることから好ましい。
【0062】
(金属酸化物)
本発明において、導電性繊維は、金属酸化物で被覆されており、金属酸化物の金属は、当該導電性繊維を構成する元素でない金属である。
【0063】
導電性繊維を構成する元素とは、構成元素の80モル%以上を占める元素をいう。
【0064】
被覆されているとは、金属酸化物でその導電性繊維の表面積の90%以上が覆われている状態をさし、全面が金属酸化物で覆われていることが好ましい。
【0065】
本発明で用いることができる金属酸化物としては、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuから選ばれる少なくとも1種類の元素を含有する酸化物が挙げられる。
【0066】
好ましくはモリブデン、ニッケル、珪素、ジルコニウム、チタン、タングステン、タンタル、アルミニウム、銅、亜鉛、インジウム、クロム、バナジウム、ニオブ、ガリウムおよび錫のうち少なくとも1種類の元素を有する酸化物が挙げられる。
【0067】
更に好ましくはニッケル、銅、亜鉛、珪素、チタン、錫、およびインジウムのうち少なくとも1種類の元素を有することが好ましく、特に金属酸化物としては、酸化ニッケル、酸化銅またはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0068】
これらの金属は単独でも使用できるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0069】
金属酸化物は、基本的には結晶質、非晶質を問わないが、結晶質であることが好ましい。結晶質は一種以上の単結晶であっても、多結晶であっても、非晶部と結晶部を同時に有する一種以上の半結晶性物質であっても、また、これらの混合物であってもよいが、特に好ましくは単結晶である。
【0070】
導電性繊維表面がp型半導体の金属酸化物で被服されていれば、形成される導電パスは正孔輸送層(HTL)としての機能を発現する。p型の半導体材料であれば如何なる金属酸化物でも用いることができ、例えば、酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン、酸化銅等の金属酸化物等を用いることができる。
【0071】
導電性繊維表面がn型半導体の金属酸化物で被服されていれば、形成される導電パスは電子輸送層(ETL)としての機能を発現する。n型の半導体材料であれば如何なる金属酸化物でも用いることができ、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等の金属酸化物を用いることができる。
【0072】
正孔輸送層および電子輸送層は、正孔と電子のうちどちらかの電荷を主に流す層であり、正孔と電子の移動度の差や、エネルギー準位の差による障壁によって、逆の電荷をブロックする層であることが好ましい。
【0073】
第1の電極がカソード電極(正極)である場合は、正孔と電子からなるフリー電荷の内、正孔を主に取り出す構成のため、第一の電極上に形成される補助電極は正孔輸送層として働く金属酸化物に被覆されていることが好ましい。同様に、第1の電極がアノード電極(陰極)である場合は電子を主に取り出す構成のため、第一の電極上に形成される補助電極は電子輸送層として働く金属酸化物に被覆されていることが好ましい。
【0074】
(補助電極の形成方法)
補助電極は、上記導電性繊維からなるが補助電極を形成する方法としては、例えば、導電性繊維を含有する塗布液を基板上に塗布して形成する方法、フォトリソグラフィー法でパターン形成する方法や、印刷法やインクジェット法などの方法がある。
【0075】
本発明に係る補助電極を形成する方法としては、補助電極に含まれる成分を含有する塗布液を第一の電極上に塗布して形成する方法が好ましく用いられる。
【0076】
本発明において、光電変換層は導電性繊維の少なくとも一部を含むように構成されている、とは光電変換層の断面を切り出し、断面を観察した際、断面の状態が、光電変換層および導電性繊維が混在する領域を有している、ことをいう。即ち、光電変換層と導電性繊維が混じりあった層が存在することである。このような状態は、導電性繊維からなる補助電極を、第一の電極上に形成した後、導電性繊維上に光電変換層を設けることで得られる。
【0077】
(金属酸化物での被覆)
本発明の補助電極の導電性繊維を被覆する方法としては、金属酸化物の膜を導電性繊維の表面に形成する方法であれば如何なる方法でもよく、例えば塗布法や蒸着法、スパッタ法、スプレー熱分解法、減圧プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法などを用いる事ができる。フレキシブルな基板を用いた高い生産性を得るためには、連続プロセスに適した方法がより好ましく、中でも塗布法、スプレー熱分解法、大気圧プラズマCVD法が好ましく、連続生産性と膜質の観点から大気圧プラズマCVD法が最も好ましい。
【0078】
大気圧プラズマCVD法を用いて金属酸化物層を形成する場合、特に金属ナノワイヤのような凹凸構造を有する電極上に製膜する場合はプラズマジェット法を用いることが、入り組んだ構造の表面であっても高い被覆率で表面を金属酸化物膜で被覆できるため好ましい。大気圧プラズマCVD法を用いて金属酸化物層を形成する場合、反応性ガスとしては、目的とする金属酸化物を構成する金属からなる揮発性のアルコキシド、錯体などが好ましく用いることができる。
【0079】
大気圧プラズマCVD法について説明する。
【0080】
大気圧プラズマCVD法は、例えば、特開平10−154598号公報や特開2003−49272号公報、WO02/048428号パンフレット等に記載されているが、大気圧もしくはその近傍の圧力下、放電空間に薄膜形成ガス及び放電ガスを含有するガスを供給し、該放電空間に高周波電界を印加することにより該ガスを励起し、励起したガスに晒すことにより、薄膜を形成する。高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものをいう。
【0081】
特に、特開2004−68143号公報に記載されている薄膜形成方法が好ましい。また、組成の異なる層を連続的に形成することもができる。
【0082】
本発明に係る金属酸化物で導電性繊維を被覆するために用いられる上記の大気圧プラズマCVD法は、大気圧もしくはその近傍の圧力下で行われるプラズマCVD法であり、大気圧もしくはその近傍の圧力とは20〜110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93〜104kPaが好ましい。
【0083】
放電条件としては、高周波電界の周波数が1kHz〜2500MHzで、かつ供給電力が1〜50W/cmであることが好ましく、周波数が50kHz以上で、かつ供給電力が5W/cm以上であることがより好ましい。更に、放電空間に異なる周波数の電界を2つ以上印加し、重畳したものがより好ましい。
【0084】
図2は本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0085】
大気圧プラズマ放電処理装置は、プラズマ放電処理装置30、電界印加手段40、ガス供給手段50、電極温度調節手段60を有しており、ロール回転電極(第1電極)35と固定電極(第2電極)36との対向電極間32(以下対向電極間を放電空間32とも記す)で、樹脂基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである。
【0086】
上記の大気圧プラズマ放電処理装置には、放電空間に放電ガスと薄膜形成ガスとを供給するガス供給手段50を備える。ガス供給手段50のガス発生装置51で発生させた薄膜形成ガスGは、不図示のガス流量調整手段により流量を制御して給気口52よりプラズマ放電処理容器31内に導入する。
【0087】
樹脂基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から矢印方向に搬送されて来て、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら固定電極36との間に移送する。
【0088】
移送中にロール回転電極35と固定電極36との両方から電界をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。樹脂基材Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。
【0089】
なお、固定電極36の形状は、特に限定されず、円筒型電極でも角筒型電極でも良く、また上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置してもよい。
【0090】
樹脂基材Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
【0091】
放電処理済みの処理排ガスG′は排気口53より排出する。
【0092】
薄膜形成中、ロール回転電極35及び固定電極36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、68及び69はプラズマ放電処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
【0093】
ロール回転電極35と固定電極36との間に形成された放電空間32に、ロール回転電極35には第1電源41から周波数ω1の高周波電界を、また固定電極36には第2電源42から周波数ω2の第2の高周波電界をかけるようになっている。
【0094】
ここで、第1電源の周波数としては、1kHz〜1MHzであり、200kHz以下が好ましく用いることができる。またこの電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。一方、第2電源の周波数としては、1MHz〜2500MHzが好ましく800kHz以上が好ましく用いられる。
【0095】
対向する電極間に印加する電力は、1W/cm以上の電力を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させる。上限値としては、好ましくは50W/cm、より好ましくは20W/cmである。下限値は、好ましくは1.2W/cmである。尚、放電面積(cm)は、電極間において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0096】
大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、神鋼電機社製SPG5−4500(5kHz)、春日電機製AGI−023(15kHz)、ハイデン研究所製PHF−6k(100kHz*)、パール工業製CF−2000−200k(200kHz)等の市販のものを挙げることができ、何れも使用することができる。
【0097】
また、第2電源(高周波電源)としては、パール工業製CF−2000−800k(800kHz)、同CF−5000−13M(13.56MHz)、同CF−2000−150M(150MHz)等の市販のものを挙げることができ、何れも好ましく使用できる。
【0098】
なお、上記電源のうち、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
【0099】
ここで高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよい。
【0100】
ロール回転電極35と固定電極36は、導電性の金属質母材、及び少なくとも一方の電極の放電空間に対する面にセラミックス誘電体を配したものである。該電極の構造は図示しないが、プラズマ放電処理中の電極表面温度を制御できるジャケット構造を有することが好ましい。
【0101】
図2は、ロール回転電極の一例を示す概略図である。
【0102】
セラミックス誘電体は片肉で1〜5mm程度被覆があればよい。セラミックを被覆する方法としては特に限定されないが、金属質母材にセラミックス溶射を行う方法が好ましい。セラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また誘電体層が、ライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0103】
導電性の金属質母材35Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることができる。
【0104】
対向する第1電極及び第2の電極の電極間距離は、電極の一方に誘電体を設けた場合、該誘電体表面ともう一方の電極の導電性の金属質母材表面との最短距離のことをいう。電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電界強度の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜5mmである。
【0105】
プラズマ放電処理容器31はパイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を貼り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い、絶縁性をとってもよい。
【0106】
大気圧プラズマ放電処理装置は、上述のように、対向電極の間で放電させ、前記対向電極間に導入したガスをプラズマ状態とし、前記対向電極間に静置あるいは電極間を移送される基材を該プラズマ状態のガスに晒すことによって、該基材の上に薄膜を形成させるものである。また他の方式として、図示しないが大気圧プラズマ放電処理装置は、上記同様の対向電極間で放電させ、該対向電極間に導入したガスを励起しまたはプラズマ状態とし、該対向電極外にジェット状に励起またはプラズマ状態のガスを吹き出し、該対向電極の近傍にある基材(静置していても移送されていてもよい)を晒すことによって該基材の上に薄膜を形成させるジェット方式の装置でもよい。
【0107】
大気圧プラズマCVD法を実施するにあたり、使用するガスは、基本的に、不活性ガスと、薄膜形成ガスの混合ガスである。薄膜形成ガスは、混合ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。また混合ガス中に酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択される成分を含有させてもよい。これにより、反応促進され、且つ緻密で良質な薄膜を形成することができる。
【0108】
上記不活性ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等の希ガス、または窒素が挙げられるが、本発明に記載の効果を得るためには、ヘリウム、アルゴンまたは窒素が好ましく用いられる。不活性ガスは、混合ガス100体積%に対し、90体積%以上含有されることが好ましい。さらに好ましくは95体積%以上である。
【0109】
薄膜形成ガスの原料としては、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射、気化器等の手段により気化させて使用する。また、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサン等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。
【0110】
しかし、好ましくは大気圧下0〜250℃の温度域で蒸気圧を有する有機金属化合物であり、さらに好ましくは0〜250℃の温度域に液体状態を呈する有機金属化合物である。
【0111】
有機金属化合物としては、取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。
【0112】
珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシランなどの有機金属化合物、モノシラン、ジシランなどの金属水素化合物、二塩化シラン、三塩化シランなどの金属ハロゲン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどのアルコキシシラン、オルガノシランなどを用いることが好ましいがこれらに限定されない。また、これらは適宜組み合わせて用いることが出来る。
【0113】
チタン化合物としては、テトラジメチルアミノチタンなどの有機金属化合物、モノチタン、ジチタンなどの金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの金属アルコキシドなどを用いることが好ましいがこれらに限定されない。
【0114】
上記原料を選択すると共に、薄膜形成ガス及び放電ガスの組成比、ガスの供給速度、或いはプラズマ放電処理時の出力条件等を適宜選択することにより所望の金属酸化物の薄膜を形成することができる。
【0115】
(第二の電極)
第二の電極は導電材を含有し、単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用しても良い。
【0116】
第二電極部の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。
【0117】
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
【0118】
これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
【0119】
陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0120】
第二の電極の導電材として金属材料を用いれば第二の電極側に来た光は反射されて第一の電極側にもどる。
【0121】
(基板)
有機光電変換素子は、基板上に配置されて用いられることが好ましい。
【0122】
基板は、積層された第一の電極、光電変換層および第二の電極を保持する部材である。
【0123】
本実施形態では、少なくとも第一の電極又は第二の電極、更には両方の電極から光電変換される光が入射することが可能なように、光電変換すべき光の波長に対して透明な基板であることが望ましい。基板は、透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。
【0124】
透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。
【0125】
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0126】
基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。
【0127】
表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。
【0128】
例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基材と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。
【0129】
屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。
【0130】
易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0131】
〔光電変換層〕
光電変換層は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を構成している。
【0132】
p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。
【0133】
ここで、電子供与体および電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体および電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
【0134】
p型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族化合物や共役系化合物が挙げられる。
【0135】
縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、およびこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0136】
共役系化合物としては、例えば、ポリチオフェンおよびそのオリゴマー、ポリピロールおよびそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレンおよびそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、テトラチアフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、フラーレンおよびこれらの誘導体あるいは混合物を挙げることができる。
【0137】
また、特にポリチオフェンおよびそのオリゴマーのうち、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0138】
その他、高分子p型半導体の例としては、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリカルバゾール、ポリイソチアナフテン、ポリヘプタジイン、ポリキノリン、ポリアニリンなどが挙げられ、更には特開2006−36755号公報などの置換−無置換交互共重合ポリチオフェン、特開2007−51289号公報、特開2005−76030号公報、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p4112、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p7246などの縮環チオフェン構造を有するポリマー、WO2008/000664、Adv.Mater.,2007,p4160、Macromolecules,2007,Vol.40,p1981などのチオフェン共重合体などを挙げることができる。
【0139】
さらに、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、等の有機分子錯体、C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン類、SWNT等のカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類等の色素等、さらにポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマーや特開2000−260999号に記載の有機・無機混成材料も用いることができる。
【0140】
これらのπ共役系材料のうちでも、ペンタセン等の縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニン、金属ポルフィリンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。また、ペンタセン類がより好ましい。
【0141】
ペンタセン類の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986等に記載の置換アセン類およびその誘導体等が挙げられる。
【0142】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。そのような化合物としては、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物、および米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、特開2007−224019号公報等に記載のポルフィリンプレカーサー等のような、プレカーサータイプの化合物(前駆体)が挙げられる。
【0143】
これらの中でも、後者のプリカーサータイプの方が好ましく用いることができる。
【0144】
これは、プリカーサータイプの方が、変換後に不溶化するため、バルクヘテロジャンクション層の上に正孔輸送層・電子輸送層・正孔ブロック層・電子ブロック層等を溶液プロセスで形成する際に、バルクヘテロジャンクション層が溶解してしまうことがなくなるため、前記の層を構成する材料とバルクヘテロジャンクション層を形成する材料とが混合することがなくなり、一層の効率向上・寿命向上を達成することができるためである。
【0145】
p型半導体材料としては、p型半導体材料前駆体に熱・光・放射線・化学反応を引き起こす化合物の蒸気に晒す、等の方法によって化学構造変化を起こし、p型半導体材料に変換された化合物であることが好ましい。中でも熱によって科学構造変化を起こす化合物が好ましい。
【0146】
n型半導体材料の例としては、フラーレン、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む、高分子化合物が挙げられる。
【0147】
中でも、フラーレン含有高分子化合物が好ましい。フラーレン含有高分子化合物としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等を骨格に持つ高分子化合物が挙げられる。フラーレン含有高分子化合物では、フラーレンC60を骨格に持つ高分子化合物(誘導体)が好ましい。
【0148】
フラーレン含有ポリマーとしては、大別してフラーレンが高分子主鎖からペンダントされたポリマーと、フラーレンが高分子主鎖に含有されるポリマーとに大別されるが、フラーレンがポリマーの主鎖に含有されている化合物が好ましい。
【0149】
これは、フラーレンが主鎖に含有されているポリマーは、ポリマーが分岐構造を有さないため、固体化した際に高密度なパッキングができ、結果として高い移動度を得ることができるためではないかと推定される。
【0150】
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。この中で、特に塗布法が好ましい。
【0151】
本発明の光電変換素子を、太陽電池などの光電変換材料として用いる形態としては、光電変換素子を単層で利用してもよいし、積層して(タンデム型)利用してもよい。
【0152】
また、光電変換材料は、環境中の酸素、水分等で劣化しないために、公知の手法によって封止することが好ましい。
【実施例】
【0153】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0154】
〔有機光電変換素子SC−101の作製〕
バリア層付きPENフィルム基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗13Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングとを用いて10×100mm角の受光部と取り出し電極部をパターニングし第1の電極を形成した。
【0155】
パターン形成した第1の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0156】
本実施例では、金属ナノワイヤとして銀ナノワイヤを用いた。銀ナノワイヤは、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を基に、平均直径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別かつ水洗処理した後、エタノール中に再分散して銀ナノワイヤ(AgNW)分散液(銀ナノワイヤ含有量5質量%)を調製した。ITOを堆積させたPENフィルム基板上に、銀ナノワイヤ分散液を銀ナノワイヤの目付け量が80mg/mとなるようにアプリケータを用いて塗布し乾燥して、銀ナノワイヤネットワーク構造を形成した。
【0157】
続けて以下のような条件で大気圧プラズマCVD法を用い、銀ナノワイヤ表面にNiO層を被覆し、第一の電極及び金属酸化物で被覆された導電性繊維からなる補助電極を形成した。
【0158】
図2に記載のようなプラズマ放電処理装置を用い、電極には平行平板型のものを用い、この電極間に光電変換層まで積層した試料をPEN支持体フィルムに貼り付けて搬送した。
【0159】
放電ガス、薄膜形成用ガスを導入して金属酸化物の薄膜形成を行い、導電性繊維を金属酸化物で被覆した。
【0160】
尚、電極は、以下の物を用いた。2mm厚のステンレス板に高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行った。
【0161】
このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、JIS B 0601に規定の最大表面粗さ(Rmax)が5μmとなるように加工した。このように電極を作製し、アース(接地)した。
【0162】
一方、印加電極としては、中空の角型の純チタンパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆したものを複数作製し、対向する電極群とした。
【0163】
上記で作製した電極を電極間隙が1mmとなるように設置し、高周波電圧と放電開始電圧との関係に適した第1電源及び第2電源を選択した。
【0164】
第1電源電力としてはハイデン研究所PHF−6k(100kHz)を、第2電源電力としてはパール工業CF−5000−13M(13.56MHz)をそれぞれ用いた。
【0165】
尚、いずれもフィルタは各電極からの電流が逆流しないようなものを設置した。
【0166】
《プラズマ処理条件1》
放電ガス:アルゴン99.4体積%
薄膜形成性ガス:ニッケルイソプロポキシド0.1体積%
(リンテック社製気化器にてアルゴンガスに混合して気化)
添加ガス:水素0.5体積%
第1電源電力:1.0W/cm
第2電源電力:3.0W/cm
電極部温度調節:80℃
積層膜厚:5nm
これ以降は、基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。
【0167】
次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクストロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)(Mw=52000、高分子p型半導体材料)とPCBM(フロンティアカーボン:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)(Mw=911、低分子n型半導体材料)を3.0質量%になるように1:1で混合した液を調製し、フィルターでろ過しながら膜厚300nmになるように塗布を行い、室温で放置して光電変換層を成膜した。
【0168】
次に、エタノールにTi−イソプロポキシドを0.05mol/Lになるように溶解した液を調製し、マスキングした後、膜厚20nmになるように塗布を行い、水蒸気量を調節した大気中放置して電子輸送層を成膜した。
【0169】
次に、作製した素子を真空蒸着装置内に設置して、1cm幅のシャドウマスクをセットし、1×10−3Pa以下にまで真空蒸着機内を減圧した後、アルミニウムを膜厚が100nmになるように共蒸着し、第二の電極を形成させた。
【0170】
得られた有機光電変換素子SC−101は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂を用いて封止を行った。
【0171】
〔有機光電変換素子SC−102の作製〕
有機光電変換素子SC−101の作製において、薄膜形成性ガスをCu(C15ビス(ジイソブチリルメタナト)0.1体積%に変更し、導電性繊維であるAgナノワイヤを酸化銅で被覆した以外は有機光電変換素子SC−101と同様にして、有機光電変換素子SC−102を得た。
【0172】
得られた有機光電変換素子SC−102は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂を用いて封止を行った。
【0173】
〔有機光電変換素子SC−103の作製〕
有機光電変換素子SC−101の作製において、導電性繊維(Agナノワイヤ)の分散液をSWCNT(Unidym社製、HiPcoR単層カーボンナノチューブ)の分散液に変更し、SWCNTの目付け量が10mg/mになるように調整した後AGP法にて酸化ニッケル層を被覆させて補助電極を形成させた以外はSC−101と同様にして有機光電変換素子SC−103を得た。
【0174】
得られた有機光電変換素子SC−103はSC−101と同様に、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂を用いて封止を行った。
【0175】
〔有機光電変換素子SC−104(比較例)の作製〕
有機光電変換素子SC−101の作製において、Agナノワイヤのみを塗布し補助電極とし、その上に光電変換層を積層した以外は有機光電変換素子SC−101と同様にして、有機光電変換素子SC−104を得た。
【0176】
得られた有機光電変換素子SC−104は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂を用いて封止を行った。
【0177】
〔有機光電変換素子SC−105(比較例)の作製〕
有機光電変換素子SC−101の作製において、透明電極(ITO(インジウム−錫系酸化物)が堆積したガラス基板)上に、金属ニッケル(Ni)(膜厚5μm)を成膜したものを基板として用いた。この基板をイオン照射機能を備えた真空槽内に設置し、10−6Torr(1.33×10−4Pa)以下の真空に排気した後、Arイオン照射を行い、Niナノロッド(ナノワイヤ)を形成した。イオン照射は、1kVのArイオンを用い、1〜10mAで行った。イオン照射後、試料を真空槽から取り出し、大気中300℃で10分間の加熱を行い、酸化ニッケル皮膜(10nm程度:TEM像)をナノワイヤ上に形成させた以外はSC−101と同様にして有機光電変換素子SC−105を得た。
【0178】
得られた有機光電変換素子SC−105は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂を用いて封止を行った。
【0179】
〔有機光電変換素子SC−106(比較例)の作製〕
有機光電変換素子SC−101の作製において、透明電極(ITO(インジウム−錫系酸化物)が堆積したガラス基板)上に、金属亜鉛(Zn)(膜厚5μm)を成膜したものを基板として用いた。この基板をイオン照射機能を備えた真空槽内に設置し、10−6Torr(1.33×10−4Pa)以下の真空に排気した後、Arイオン照射を行い、Znナノロッド(ナノワイヤ)を形成した。
【0180】
イオン照射は、1kVのArイオンを用い、1〜10mAで行った。イオン照射後、試料を真空槽から取り出し、大気中300℃で10分間の加熱を行い、酸化亜鉛皮膜(10nm程度:TEM像)をナノワイヤ上に形成した以外はSC−101と同様にして有機光電変換素子SC−106を得た。
【0181】
得られた有機光電変換素子SC−106は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂を用いて封止を行った。
【0182】
〔有機光電変換素子SC−107(比較例)の作製〕
有機光電変換素子SC−101の作製において、透明電極(ITO(インジウム−錫系酸化物)が堆積したガラス基板)上に、金属亜鉛(Zn)(膜厚5μm)を成膜したものを基板として用いた。この基板をイオン照射機能を備えた真空槽内に設置し、10−6Torr(1.33×10−4Pa)以下の真空に排気した後、パルスレーザー法で酸化ニッケル層を積層した以外はSC−101と同様にして有機光電変換素子SC−107を得た。
【0183】
得られた有機光電変換素子SC−107は、窒素雰囲気下でバリア付きPENフィルムとUV硬化樹脂を用いて封止を行った。
【0184】
《エネルギー変換効率評価》
上記により作製した有機光電変換素子101〜107について、ソーラーシミュレーターを用いたAM1.5Gフィルタ、100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を1cm×10cmにしたマスクを受光部に重ね、電流−電圧特性を測定した後、短絡電流密度Jsc(mA/cm)および開放電圧Voc(V)、フィルファクターffから式1を用いてエネルギー変換効率η(%)を求め、これを光−電気特性の指標とした。
【0185】
(式1) Jsc(mA/cm)×Voc(V)×ff=η(%)
《巻きつけ耐性評価》
下記のように巻きつけ耐性を評価し、可撓性の指標とした。
【0186】
得られた有機光電変換素子101〜107を1inchφ(1inchは2.54cmである)の棒に表裏50回ずつ巻きつけた前後のエネルギー変換効率を測定し、式2に従い、保持率を算出し、保持率で巻きつけ耐性を評価した。保持率が高いほど巻きつけ耐性は良好である。
【0187】
(式2) 巻きつけ後の変換効率/巻きつけ前の変換効率×100=保持率(%)
結果を表1に示す。
【0188】
【表1】

【0189】
表1から、本発明の有機光電変換素子は、変換効率および可撓性に優れることが分かる。
【符号の説明】
【0190】
11 基板
12 第一の電極
13 光電変換層
14 第二の電極
15 導電性繊維
16 補助電極
17 中間層
30 プラズマ放電処理装置
31 プラズマ放電処理容器
32 放電空間
35 ロール回転電極
36 固定電極
40 電界印加手段
41 第1電源
42 第2電源
50 ガス供給手段
51 ガス発生装置
52 給気口
53 排気口
60 電極温度調節手段
61 配管
64、67 ガイドロール
65、66 ニップロール
68、69 仕切板
F 樹脂基材
G 薄膜形成ガス
G′ 処理排ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電極と、第二の電極との間にバルクヘテロジャンクション型の光電変換層を有する有機光電変換素子であって、該第一の電極は、該光電変換層の側に導電性繊維からなる補助電極を有し、該導電性繊維は金属酸化物で被覆されており、該金属酸化物の金属は該導電性繊維を構成する元素でなく、かつ該光電変換層は、該導電性繊維の少なくとも一部を含むように構成されていることを特徴とする有機光電変換素子。
【請求項2】
前記導電性繊維が金属ナノワイヤまたはカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の有機光電変換素子。
【請求項3】
前記導電性繊維が金属ナノワイヤであり、且つ該金属ナノワイヤの金属元素とは異なる金属からなる金属酸化物で被覆されていることを特徴とする請求項2に記載の有機光電変換素子。
【請求項4】
前記導電性繊維が、銀ナノワイヤであることを特徴とする請求項3に記載の有機光電変換素子。
【請求項5】
前記金属酸化物が酸化ニッケル、酸化銅、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の有機光電変換素子を製造する有機光電変換素子の製造方法であって、前記第一の電極上に前記導電性繊維を含有する塗布液を塗布し、塗布された導電性繊維を大気圧プラズマCVD法により金属酸化物で被覆する工程を有することを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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