説明

有機光電子素子用化合物、それを含む有機発光ダイオード、および前記有機発光ダイオードを含む表示装置

化学式1〜3で表される置換基が順次に結合された有機光電素子用化合物およびそれを含む有機光電素子を提供する。前記化学式1〜3の定義は、本明細書で定義されたとおりである。
前記有機光電素子用化合物は、優れた熱的安定性を有し、特に、有機光電素子の有機薄膜層に使用されて低い駆動電圧でも高い発光効率を有し、寿命が改善された有機光電素子および表示装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、有機光電素子用化合物およびそれを含む有機光電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光電素子(photoelectric device)は広い意味で光エネルギーを電気エネルギーに変換したり、電気エネルギーを光エネルギーに変換する素子である。前記光電素子は、有機発光ダイオード(OLED:Organic−Light Emitting Diodes)、太陽電池、トランジスタなどを例に挙げられる。特に、有機発光ダイオードは、近年、平板ディスプレイ(flat panel display)の需要が増加することに伴って注目されている。
【0003】
有機発光ダイオードに電流を加えると、陽極と陰極からそれぞれ正孔と電子が注入され、注入された正孔と電子はそれぞれの正孔輸送層(HTL)と電子輸送層(ETL)へ移動し発光層で再結合して発光励起子を形成する。このように形成された発光励起子は基底状態に遷移しながら光を放出する。前記光は発光メカニズムにより一重項励起子を利用する蛍光と三重項励起子を利用する燐光とに分けられ、前記蛍光および燐光は有機発光ダイオードの発光源として使用され得る(D.F.O’Brien、Appl.Phys.Lett.,74(3)、442、1999;M.A.Baldo、Appl.Phys.lett.,75(1)、4、1999)。
【0004】
電子が基底状態から励起状態に遷移すると、項間交差(intersystem crossing)を通じて一重項励起子が三重項励起子に非発光遷移し、前記三重項励起子は再び基底状態に遷移して光を放出する。この時の発光を燐光発光という。前記三重項励起子は基底状態に直接遷移することはできず、必ず電子スピンのフリッピング段階を経なければならない。
【0005】
したがって、燐光発光は蛍光発光よりも半減期(発光時間、寿命)が長いという特性を有する。
【0006】
また、正孔と電子が再結合して発光励起子を形成する場合、三重項励起子は一重項励起子よりも約3倍多く生成される。蛍光物質は、一重項励起状態を25%有し発光効率に限界がある。しかし、燐光は三重項励起子の発生確率75%、および一重項励起状態である25%まで使用することができて、理論的な内部量子効率は100%となる。つまり、燐光発光物質は蛍光発光物質に比べて約4倍大きな発光効率を達成することができるという長所がある。
【0007】
一方、有機発光ダイオードの効率と安定性を増加させるために発光層にホスト物質とドーパントを共に添加することができる。前記ホスト物質としては、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)が主に使用されていた。しかし、CBPは構造的対称性が非常に高いため、結晶化し易く、熱的安定性が低いため、素子の耐熱試験中に、短絡や画素欠陥が発生する短所があった。また、CBPのような大部分のホスト物質は正孔の移動速度が電子の移動速度よりも速いため、発光層で励起子が効率的に形成されず、素子の発光効率が減少する短所があった。
【0008】
また、低分子ホスト物質は、一般に真空蒸着法を用いるため、湿式工程に比べて製造コストが高いという短所があった。また、大部分の低分子ホスト物質は有機溶媒に対する溶解度が低いため、湿式工程に適用できず優れた膜特性を有する有機薄膜層を形成できなかった。
【0009】
したがって、効率および寿命に優れた有機光電素子を実現するためには、電気的、熱的安定性に優れ、正孔と電子を全て良好に伝達することができるバイポーラ特性を有する燐光のホスト物質および電荷輸送物質を開発し、正孔や電子を良好に伝達することができる物質を混合して使用することができるホスト物質の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一実施形態は、熱的安定性に優れ、正孔と電子を全て良好に伝達することができる有機光電素子用化合物を提供する。
【0011】
本発明の他の一実施形態は、前記有機光電素子用化合物を含む効率および駆動電圧特性に優れた有機光電素子を提供する。
【0012】
本発明のさらなる他の一実施形態は、前記有機光電素子を含む表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、下記の化学式1〜3で表される置換基が順次に結合された有機光電素子用化合物が提供される。
【0014】
【化1】

【0015】
前記化学式1〜3において、
〜QおよびQa〜Qaは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、NまたはCRであり、この時、前記Rは、水素、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基またはこれらの組み合わせであり、
〜Rは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、置換されたまたは非置換のカルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせであり、
nは、0〜5の整数である。
【0016】
この時、前記化学式1は、下記の化学式1aで表されうる。
【0017】
【化2】

【0018】
前記化学式1aにおいて、
RaおよびRaは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、置換されたまたは非置換のカルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせであり、
は、水素、置換されたまたは非置換のカルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせである。
【0019】
また、前記化学式2は、下記の化学式2aまたは2bで表されうる。
【0020】
【化3】

【0021】
前記化学式2aおよび2bにおいて、
は、水素、置換されたまたは非置換のカルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせである。
【0022】
また、前記化学式3のQ〜QおよびQa〜Qaは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、NまたはCRであり、但し、Q〜QおよびQa〜Qaの中で選択された1個以上はNであり、残りはそれぞれ独立してCRであり、ここで、前記Rは、水素、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基またはこれらの組み合わせであってもよく、特に、Q〜Qの中で選択された1〜3個はNであり、Qa〜Qaの中で選択された1〜3個はNであり、残りはそれぞれ独立してCRであり、ここで、前記Rは、水素、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基またはこれらの組み合わせであってもよい。また、前記化学式3のnは、0〜2の整数でありうる。
【0023】
前記化学式3は、下記の化学式3aで表されうる。
【0024】
【化4】

【0025】
前記化学式3aにおいて、
Qa、Qa、およびQaは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、NまたはCHであり、但し、Qa、Qa、およびQaの中で選択された1個以上はNであり、
〜Q、およびQb〜Qb10は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、NまたはCRであり、ここで、前記Rは、水素、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基またはこれらの組み合わせであり、
は、水素、カルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせであり、
nは、0〜5の整数である。
【0026】
また、前記化学式1〜3において、R〜Rは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、C1〜C30のアルキル基、C6〜C30のアリール基、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0027】
また、前記有機光電素子用化合物は、下記の化学式4〜化学式9で表されうる。
【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
前記化学式4〜化学式9において、
〜QおよびQa〜Qaは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、NまたはCRであり、ここで、前記Rは、水素、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基またはこれらの組み合わせであり、
〜Rは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、置換されたまたは非置換のカルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせであり、
nは、0〜5の整数である。
【0032】
特に、前記有機光電素子用化合物は、下記の化学式10〜33で表されうる。
【0033】
【化8】

【0034】
【化9】

【0035】
【化10】

【0036】
前記有機光電素子用化合物は、電荷輸送物質またはホスト物質として使用されてもよく、熱分解温度(T)は350〜600℃であってもよい。
【0037】
本発明の他の実施形態によれば、陽極、陰極、および前記陽極と陰極との間に配置された少なくとも1つの有機薄膜層を含み、前記有機薄膜層は、前記有機光電素子用化合物を含む有機光電素子を提供する。
【0038】
前記有機薄膜層は、発光層、正孔阻止層、電子阻止層、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0039】
本発明のさらなる他の実施形態によれば、前記有機光電素子を含む表示装置が提供される。
【0040】
その他本発明の実施形態の具体的な事項は以下の詳細な説明に記載されている。
【発明の効果】
【0041】
本発明の一実施形態による有機光電素子用化合物は、優れた熱的安定性を有し、特に、有機光電素子の有機薄膜層に使用されて低い駆動電圧でも高い発光効率を有し、寿命が改善した有機光電素子および表示装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の多様な実施形態による有機光電素子用化合物を含む有機光電素子を示す断面図である。
【図2】本発明の多様な実施形態による有機光電素子用化合物を含む有機光電素子を示す断面図である。
【図3】本発明の多様な実施形態による有機光電素子用化合物を含む有機光電素子を示す断面図である。
【図4】本発明の多様な実施形態による有機光電素子用化合物を含む有機光電素子を示す断面図である。
【図5】本発明の多様な実施形態による有機光電素子用化合物を含む有機光電素子を示す断面図である。
【図6】実施例3および比較例1で製造された有機光電素子の電圧による電流密度の変化を示すグラフである。
【図7】実施例3および比較例1で製造された有機光電素子の電圧による輝度の変化を示すグラフである。
【図8】実施例3および比較例1で製造された有機光電素子の輝度による電流効率の変化を示すグラフである。
【図9】実施例3および比較例1で製造された有機光電素子の輝度による電力効率の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の例示的な実施形態を詳しく説明する。但し、これらの実施形態は単なる例示であり、これらによって本発明が制限されるものではなく、特許請求の範囲の記載により定められる。
【0044】
本明細書で「置換された」の用語は、別途の定義がない限り、ハロゲン基、シアノ基、C1〜C30のアルキル基、C3〜C30のシクロアルキル基、C6〜C30のアリール基、C1〜C30のアルコキシ基またはこれらの組み合わせで置換されたものを意味する。
【0045】
本明細書で「ハロゲン基」の用語は、別途の定義がない限り、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基またはこれらの組み合わせのハロゲン基を意味し、特に、フルオロ基を使用することが好ましい。
【0046】
本明細書で「ヘテロ」の用語は、別途の定義がない限り、1個の環内にN、O、S、またはPを1〜3個含有し、残りは炭素であるものを意味する。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、下記の化学式1〜3で表される置換基が順次に結合された有機光電素子用化合物が提供される。
【0048】
【化11】

【0049】
前記化学式1〜3において、
〜QおよびQa〜Qaは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、NまたはCRであり、ここで、前記Rは、水素、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基またはこれらの組み合わせであり、前記Q〜QおよびQa〜Qaがそれぞれ独立してCRである場合、それぞれのRは互いに同一または異なるものであってもよい。また、前記RがC1〜C30のアルキル基で置換される場合、前記化合物は有機光電素子の有機薄膜層に適用されて有機薄膜層の成膜特性を改善することができる。
【0050】
また、前記Rが置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基である場合、前記アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基、フェナントレン基、テトラセン基、ピレン基、フルオレン基またはこれらの組み合わせでありうる。しかし、前記アリール基は前記例に限定されない。
【0051】
また、前記Rが置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基である場合、前記ヘテロアリール基は、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾ−ル、チアジアゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、キノリン、イソキノリンまたはこれらの組み合わせでありうる。しかし、前記ヘテロアリール基は前記例に限定されない。
【0052】
〜Rは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、置換されたまたは非置換のカルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせであり、nは、0〜5の整数である。この時、前記nが2以上の整数である場合、それぞれの反復単位は互いに同一または異なるものであってもよい。
【0053】
この時、前記化学式1は、下記の化学式1aで表されうる。
【0054】
【化12】

【0055】
前記化学式1aにおいて、
RaおよびRaは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、置換されたまたは非置換のカルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせであり、
は、水素、置換されたまたは非置換のカルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせである。
【0056】
また、前記化学式2は、下記の化学式2aまたは2bで表されうる。
【0057】
【化13】

【0058】
前記化学式2aおよび2bにおいて、
は、水素、置換されたまたは非置換のカルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせである。
【0059】
また、前記化学式3のQ〜QおよびQa〜Qaは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、NまたはCRであり、但し、Q〜QおよびQa〜Qaの中で選択された1個以上はNであり、残りはそれぞれ独立してCRであり、ここで、前記Rは、水素、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基またはこれらの組み合わせであってもよい。特に、Q〜Qの中で選択された1〜3個はNであり、Qa〜Qaの中で選択された1〜3個はNであり、残りはそれぞれ独立してCRであり、ここで、前記Rは、水素、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基またはこれらの組み合わせであってもよい。これによって、電子輸送基としてより好ましく機能することができる置換基を含むことができる。
【0060】
また、前記化学式3のnは、0〜2の整数でありうる。
【0061】
前記化学式3は、下記の化学式3aで表されうる。
【0062】
【化14】

【0063】
前記化学式3aにおいて、
Qa、Qa、およびQaは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、NまたはCHであり、但し、Qa、Qa、およびQaの中で選択された1個以上はNであり、
〜Q、およびQb〜Qb10は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、NまたはCRであり、ここで、前記Rは、水素、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基またはこれらの組み合わせであり、
は、水素、カルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせであり、
nは、0〜5の整数である。
【0064】
また、前記化学式1〜3において、R〜Rは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、C1〜C30のアルキル基、C6〜C30のアリール基、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0065】
また、前記有機光電素子用化合物は、下記の化学式4〜化学式9で表されうる。
【0066】
【化15】

【0067】
【化16】

【0068】
【化17】

【0069】
前記化学式4〜化学式9において、
〜QおよびQa〜Qaは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、NまたはCRであり、ここで、前記Rは、水素、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基またはこれらの組み合わせであり、
〜Rは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、置換されたまたは非置換のカルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせであり、
nは、0〜5の整数である。
【0070】
特に、前記有機光電素子用化合物は、下記の化学式10〜33で表されうる。但し、本発明の一実施形態による有機光電素子用化合物は前記化合物に限定されない。
【0071】
前記有機光電素子用化合物は、電荷輸送物質またはホスト物質として使用されてもよく、特に、前記有機光電素子用化合物がホスト物質として使用される場合には、前記化合物は燐光のホスト物質で、有機光電素子の駆動電圧を下げ、発光効率を改善することができる。
【0072】
また、前記有機光電素子用化合物がホスト物質として使用される場合、前記有機光電素子用化合物は当該分野で一般に使用される低分子ホスト物質または高分子ホスト物質と共に混合またはブレンドして使用してもよい。また、場合によってはポリビニルカルバゾール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリスチレン、アクリル高分子、メタクリル高分子、ポリブチラール、ポリビニルアセタール、フタル酸ジアリル高分子、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリスルホン樹脂、またはウレア樹脂などのバインダー樹脂を混合して使用してもよい。
【0073】
例えば、前記低分子ホスト物質としては、下記の化学式34〜37で表される化合物を使用してもよく、高分子ホスト物質としては、フルオレン系高分子、ポリフェニレンビニレン系高分子、ポリパラフェニレン系高分子などの共役二重結合を有する高分子を使用してもよい。しかし、前記低分子ホスト物質および高分子ホスト物質は前記例に限定されない。
【0074】
【化18】

【0075】
また、前記有機光電素子用化合物がホスト物質として使用される場合、前記有機光電素子用化合物は、単独で使用してもよく、ドーパントと共に使用してもよい。前記ドーパントは、それ自体で発光能力の高い化合物であって、通常、ホストに微量混合して使用されるため、これをゲストともいう。つまり、ドーパントはホスト物質にドーピングされて発光を起こす物質であって、一般に三重項状態以上に励起させる多重項励起によって発光する金属錯体のような物質が使用される。このようなドーパントとしては当該分野で一般に使用される赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、白色(W)の蛍光または燐光ドーパントが使用可能であるが、特に、赤色、緑色、青色または白色の燐光ドーパントを使用することが好ましい。また、発光効率が高く、凝集が容易に行われず、ホスト物質中に均一に分布されるものを使用してもよい。
【0076】
前記燐光ドーパントの例としては、Ir、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb、Tm、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、またはこれらの組み合わせである元素を含む有機金属化合物が挙げられる。より具体的に、赤色燐光ドーパントとしては、白金−オクタエチルポルフィリン錯体(PtOEP)、Ir(btp)(acac)(ビス(2−(2’−ベンゾチエニル)−ピリジナト−N,C3’)イリジウム(アセチルアセトネート))、Ir(Piq)(acac)、Ir(Piq)、UDC社のRD61などを使用してもよく、緑色燐光ドーパントとしては、Ir(PPy)(acac)、Ir(PPy)、UDC社のGD48などを使用してもよく、青色燐光ドーパントとしては、(4,6−FPPy)Irpic、flrpic(イリジウム ビス[4,6−ジ−フルオロフェニル)−ピリジナト−N,C2’]ピコリネート)などを使用してもよい。この時、前記Piqは、1−フェニルイソキノリンを意味し、acacは、アセチルアセトネートを意味し、PPyは、2−フェニルピリジンを意味する。
【0077】
また、前記本発明の一実施形態による有機光電素子用化合物は、熱分解温度(T)が350〜600℃であってもよい。これによって、本発明の一実施形態による有機光電素子用化合物は、熱的安定性に優れたホスト物質または電荷輸送物質として使用され得る。したがって、有機光電素子の寿命特性を向上させることができる。
【0078】
本発明の他の実施形態によれば、陽極、陰極、および前記陽極と陰極との間に配置された有機薄膜層を含み、前記有機薄膜層は、本発明の一実施形態による有機光電素子用化合物を含む有機光電素子が提供される。この時、前記有機光電素子は、有機発光ダイオード、有機太陽電池、有機トランジスタ、有機感光体ドラム、有機メモリ素子などが挙げられる。有機太陽電池の場合には、本発明の一実施形態による有機光電素子用化合物が電極や電極バッファー層に含まれ、これによって量子効率を改善させることができ、有機トランジスタの場合には、ゲート、ソース−ドレイン電極などで電極物質として使用され得る。
【0079】
前記有機光電素子用化合物を含むことができる有機薄膜層としては、発光層、正孔阻止層、電子阻止層、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0080】
以下、有機光電素子について具体的に説明する。
【0081】
図1〜図5は、前記有機光電素子用化合物を含む有機光電素子の断面図である。
【0082】
図1〜図5を参照すれば、有機光電素子100、200、300、400、および500は、陽極120と陰極110との間に配置された少なくとも1層の有機薄膜層105を含む構造を有する。
【0083】
有機光電素子で使用される基板としては、当該分野において特に限定されないが、より具体的に、透明性、表面平滑性、取り扱いの容易性、および防水性に優れたガラス基板、透明プラスチック基板などの基板を使用することができる。
【0084】
前記陽極120は、有機薄膜層へ正孔注入を円滑にするように仕事関数が大きい物質を含む。前記陽極物質の具体的な例としては、ニッケル、白金、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金などのような金属またはこれら金属の合金;酸化亜鉛、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)などのような金属酸化物;ZnO/Al、SnO/Sbなどのような金属酸化物と複合金属を使用することができる。但し、陽極は前記物質に限定されない。前記陽極は、より具体的に、ITOを含む透明電極を使用してもよい。
【0085】
前記陰極110は、有機薄膜層へ電子注入を円滑にするように仕事関数が小さい物質を含む。前記陰極物質の具体的な例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、鉛、セシウム、バリウムなどのような金属またはこれらの合金;LiF/Al、LiO/Al、LiF/Ca、LiF/Al、BaF/Caなどのような多層構造物質などが挙げられる。但し、陰極は前記物質に限定されない。前記陰極は、より具体的に、アルミニウムなどのような金属電極を使用してもよい。
【0086】
まず、図1は、有機薄膜層105として発光層130のみが存在する有機光電素子100を示した図面である。
【0087】
図2は、有機薄膜層105として電子輸送層(ETL)を含む発光層230と正孔輸送層(HTL)140が存在する2層型有機光電素子200を示した図面である。この場合、発光層130は電子輸送層(ETL)の機能を果たし、正孔輸送層(HTL)140はITOのような透明電極との結合性および正孔輸送性を向上させる機能を果たす。
【0088】
前記正孔輸送層(HTL)140は、当該分野で一般に使用されるものであって、その種類を特に限定しないが、例えば、ポリ(スチレンスルホン酸塩)(PSS)層でドーピングされたポリ(3,4−エチレンジオキシ−チオフェン)(PEDOT)(PEDOT:PSS)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1'−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)などを本発明の一実施形態による有機光電素子用化合物と共に使用することができる。但し、正孔輸送物質は前記物質に限定されない。
【0089】
図3は、有機薄膜層105として電子輸送層(ETL)150、発光層130、および正孔輸送層(HTL)140が存在する3層型有機光電素子300を示した図面であり、前記発光層130は独立した形態となっており、電子輸送性や正孔輸送性に優れた膜を別途の層で積層した形態を示している。
【0090】
前記電子輸送層(ETL)150は、当該分野で一般に使用されるものであって、特に限定されないが、例えば、アルミニウムトリス(8−ヒドロキシキノリン)(Alq);2−(4−ビフェニル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)のような1,3,4−オキサジアゾール誘導体;1,3,4−トリス[(3−フェニル−6−トリフルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ)のようなキノキサリン誘導体;およびトリアゾール誘導体などを本発明の一実施形態による有機光電素子用化合物と共に使用してもよい。但し、電子輸送物質は前記物質に限定されない。
【0091】
図4は、有機薄膜層105として電子注入層(EIL)160、発光層130、正孔輸送層(HTL)140、および正孔注入層(HIL)170が存在する4層型有機光電素子400を示した図面であり、前記正孔注入層(HIL)170は陰極として使用されるITOとの結合性を向上させることができる。
【0092】
図5は、有機薄膜層105として電子輸送層(ETL)150、発光層130、正孔輸送層(HTL)140、および正孔注入層(HIL)170にさらに電子注入層(EIL)160が存在する5層型有機光電素子500を示した図面であり、前記有機光電素子500は低電圧化に効果的である。
【0093】
前記発光層130、230の厚さは、5〜1000nmであってもよく、前記正孔輸送層(HTL)140、および電子輸送層(ETL)150の厚さは、それぞれ独立して、10〜10,000Åであってもよい。しかし、前記厚さ範囲に限定されない。
【0094】
前記図1〜図5において前記有機薄膜層105をなす電子輸送層(ETL)150、電子注入層(EIL)160、発光層130、230、正孔輸送層(HTL)140、正孔注入層(HIL)170またはこれらの組み合わせには本発明の一実施形態による有機光電素子用化合物が含まれてもよい。この時、前記有機光電素子用化合物は、電子輸送層(ETL)150または電子注入層(EIL)160を含む電子輸送層(ETL)150に使用されてもよく、その中でも電子輸送層(ETL)に含まれる場合、正孔阻止層を別途に形成する必要がないため、より単純化した構造の有機光電素子を提供することができる。
【0095】
また、前記有機光電素子用化合物が発光層130、230内に含まれる場合、前記有機光電素子用化合物は燐光ホストとして使用され得、前記発光層130、230はドーパントをさらに含むことができる。この時、前記ドーパントは、赤色、緑色、青色、または白色の燐光ドーパントであってもよい。
【0096】
前述した有機光電素子は、基板に陽極を形成した後、真空蒸着法、スパッタリング、プラズマメッキ、イオンメッキなどのような乾式成膜法;スピンコーティング、浸漬法、流動コーティング法などのような湿式成膜法などで有機薄膜層を形成した後、その上に陰極を形成して製造してもよい。
【0097】
本発明のさらなる他の一実施形態によれば、前記有機光電素子を含む表示装置が提供される。
【実施例】
【0098】
以下の実施を用いて本発明をより詳細に説明する。但し、これらの実施例は例示的な実施形態であって、本発明は制限されない。
【0099】
(有機光電素子用化合物の合成)
実施例1
有機光電素子用化合物を、下記の反応式1の方法で合成した。
【0100】
【化19】

【0101】
第1段階:中間体生成物(B)の合成
アルゴン雰囲気で温度計、還流コンデンサ、および攪拌機付き500mLの丸底フラスコに化合物A11.0g(24.7mmol)、1−ブロモ−2−ニトロベンゼン6.0g(29.7mmol)、およびテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム1g(0.86mmol)を200mLのテトラヒドロフランに溶解し、前記混合溶液に2Mの炭酸カリウム50mLを入れた後、75℃で24時間攪拌した。
【0102】
室温に冷却して前記反応物の反応を終結した後、塩化メチレンで抽出し、水で洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで反応物の水分を除去し、ろ過することによって有機溶媒を除去した。最終残留物を塩化メチレンとヘキサンとの混合溶媒(体積比1:1)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーで精製して中間体生成物(B)を9g(収率:82.7%)得た。
【0103】
第2段階:中間体生成物(C)の合成
前記第1段階で合成された中間体生成物(B)8g(18.2mmol)およびトリフェニルホスフィン14.3g(54.6mmol)をジクロロベンゼン150mlに溶解し、アルゴン雰囲気下、160℃で加熱還流した。
【0104】
有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、塩化メチレンで抽出し、水で洗浄した。その後、洗浄した反応物を無水硫酸マグネシウムで反応物の水分を除去し、ろ過することによって有機溶媒を除去した。最終残留物を塩化メチレンとヘキサンとの混合溶媒(体積比2:1)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーで精製して中間体生成物(C)を5.3g(収率:71.5%)得た。
【0105】
第3段階:有機光電素子用化合物の合成
前記第2段階で合成された中間体生成物(C)5g(12.2mmol)を無水テトラヒドロフラン100mLに溶かした後、−78℃で1.6Mのn−BuLi9.2mLを徐々に滴下して30分間攪拌した。次に、室温で20分間さらに攪拌し、再び−78℃で2−クロロ−4,6−ジフェニルトリアジン3.59g(13.4mmol)と混合して室温で12時間攪拌した。
【0106】
室温に冷却して前記反応物の反応を終結した後、塩化メチレンで抽出し、水で洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで反応物の水分を除去し、ろ過することによって有機溶媒を除去した。最終残留物を塩化メチレンとヘキサンとの混合溶媒(体積比1:3)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、再結晶して有機光電素子用化合物4g(収率:51.3%)を得た。
【0107】
前記得られた有機光電素子用化合物を元素分析で分析した結果は次のとおりである。
【0108】
計算値 C,86.49;H,4.73,N,8.77
実測値 C,86.50;H,4.72,N,8.77
実施例2
有機光電素子用化合物は、下記の反応式2の方法で合成された。
【0109】
【化20】

【0110】
第1段階:中間体生成物(E)の合成
アルゴン雰囲気で温度計、還流コンデンサ、および攪拌機付き500mLの丸底フラスコに化合物D10.0g(19.2mmol)、1−ブロモ−2−ニトロベンゼン4.7g(23.2mmol)、およびテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.8g(0.69mmol)を200mLのテトラヒドロフランに溶解し、前記混合溶液に20%濃度のテトラトリエチルアンモニウムヒドロキシド50mLを加えた後、75℃で24時間攪拌した。
【0111】
室温に冷却して前記反応物の反応を終結した後、塩化メチレンで抽出し、水で洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで反応物の水分を除去し、ろ過することによって有機溶媒を除去した。最終残留物を塩化メチレンとヘキサンとの混合溶媒(体積比1:1)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーで精製して中間体生成物(E)を7g(収率:72%)得た。
【0112】
第2段階:中間体生成物(F)の合成
前記第1段階で合成された中間体生成物(E)7g(13.5mmol)およびトリフェニルホスフィン10.6g(40.7mmol)をジクロロベンゼン150mlに溶解し、アルゴン雰囲気下、160℃で加熱還流した。
【0113】
有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、塩化メチレンで抽出し、水で洗浄した。その後、洗浄した反応物を無水硫酸マグネシウムで反応物の水分を除去し、ろ過することによって有機溶媒を除去した。最終残留物を塩化メチレンとヘキサンとの混合溶媒(体積比2:1)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーで精製して中間体生成物(F)を4.3g(収率:65.9%)得た。
【0114】
第3段階:有機光電素子用化合物の合成
前記第2段階で合成された中間体生成物(F)4g(8.27mmol)を無水テトラヒドロフラン100mLに溶かした後、−78℃の温度で1.6Mのn−BuLi6.2mLを徐々に滴下して30分間攪拌した。次に、室温で20分間さらに攪拌し、再び−78℃の温度で2−クロロ−4,6−ジフェニルトリアジン2.43g(9.09mmol)と混合して室温で12時間攪拌した。
【0115】
室温に冷却して前記反応物の反応を終結した後、塩化メチレンで抽出し、水で洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで反応物の水分を除去し、ろ過することによって有機溶媒を除去した。最終残留物を塩化メチレンとヘキサンとの混合溶媒(体積比1:3)を使用するシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、再結晶して有機光電素子用化合物3.2g(収率:54.1%)を得た。
【0116】
前記得られた有機光電素子用化合物を元素分析で分析した結果は次のとおりである。
【0117】
計算値 C,86.37;H,4.79,N,7.84
実測値 C,86.36;H,4.80,N,7.84
(有機発光ダイオードの製造)
実施例3
前記実施例1で合成された化合物をホストとして使用し、Ir(PPy)をドーパントとして使用して有機発光ダイオードを製作した。陽極としてITOを1000Åの厚さで使用し、陰極としてアルミニウム(Al)を1500Åの厚さで使用した。
【0118】
具体的に、有機発光ダイオードの製造方法を説明すれば、陽極は15Ω/cmの面抵抗値を有するITOガラス基板を50mm×50mm×0.7mmの大きさに切断し、アセトンとイソプロピルアルコールと純水との中で各15分間超音波洗浄した後、30分間UVオゾン洗浄して製造した。
【0119】
前記基板上部に真空度650×10−7Pa、蒸着速度0.1〜0.3nm/sの条件でN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)(70nm)および4,4’,4”−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)(10nm)を蒸着して800Åの正孔輸送層(HTL)を形成した。
【0120】
次に、同様の真空蒸着条件で前記実施例1で合成された化合物を利用して膜厚300Åの発光層を形成し、この時、燐光ドーパントであるIr(PPy)を同時に蒸着した。この時、燐光ドーパントの蒸着速度を調節し、発光層の全体量を100重量%とした時、燐光ドーパントが合計7重量%になるように蒸着した。
【0121】
前記発光層上部に同様の真空蒸着条件を利用してビス(8−ヒドロキシ−2−メチルキノリナト)−アルミニウムビフェノキシド(BAlq)を蒸着して膜厚50Åの正孔阻止層を形成した。
【0122】
次に、同様の真空蒸着条件でAlqを蒸着し、膜厚200Åの電子輸送層(ETL)を形成した。
【0123】
前記電子輸送層(ETL)上部に陰極としてLiFとAlを順次に蒸着して有機発光ダイオードを製作した。
【0124】
前記有機発光ダイオードを、ITO/NPB(70nm)/TCTA(10nm)/EML(実施例1の化合物(93重量%)+Ir(PPy)(7重量%)、30nm)/Balq(5nm)/Alq(20nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)の構造で製作した。
【0125】
比較例1
前記実施例1で合成された化合物の代わりに、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)を発光層のホストとして使用したことを除いては前記実施例3と同様な方法で有機発光ダイオードを製作した。
【0126】
実験例1:有機発光ダイオードの性能評価
前記実施例3および比較例1で製作された有機発光ダイオードに対して電圧による電流密度の変化、輝度の変化および発光効率を測定した。具体的な測定方法は次のとおりであり、その結果は下記表1に示した。
【0127】
(1)電圧変化による電流密度の変化の測定
電圧を0Vから10Vまで上昇させながら電流−電圧計(Keithley 2400)を利用して電流値を測定した。その結果を図6に示した。
【0128】
(2)電圧変化による輝度の変化の測定
製造された有機発光ダイオードに対して、電圧を0Vから10Vまで上昇させながら輝度計(Minolta Cs−1000A)を利用して輝度を測定して結果を得た。その結果を図7に示した。
【0129】
(3)発光効率の測定
前記(1)および(2)で測定された輝度と電流密度および電圧を利用して同一の明るさ(2000cd/m)の電流効率(cd/A)および電力効率(lm/W)を計算した。その結果を図8および9に示した。
【0130】
(4)色座標
輝度計(Minolta Cs−100A)を利用して色座標を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0131】
【表1】

【0132】
前記表1を参照すれば、有機発光ダイオードの特性評価結果、実施例3で製造された有機発光ダイオードは比較例1の有機発光ダイオードに比べて、駆動電圧は約1V低く、電流効率および電力効率は極めて改善された素子性能を示すことを確認することができた。前記実施例1による化合物は有機発光ダイオードの駆動電圧を下げ、輝度と効率を向上させることを確認することができた。
【0133】
本発明は、現在考えられる実施例に基づき記載されているが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の精神および範囲に含まれる多様な変形および等価の形態で行われうる。したがって、上記の実施例は例示的なものであり、本発明をいかようにも限定するものではないことを理解しなければならない。
【符号の説明】
【0134】
100、200、300、400、500 有機光電素子、
105 有機薄膜層、
110 陰極、
120 陽極、
130 発光層、
140 正孔輸送層(HTL)、
150 電子輸送層(ETL)、
160 電子注入層(EIL)、
170 正孔注入層(HIL)、
230 発光層+電子輸送層(ETL)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1〜3で表される置換基が順次に結合される、有機光電素子用化合物:
【化1】

前記化学式1〜3において、
〜QおよびQa〜Qaは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、NまたはCRであり、ここで、前記Rは、水素、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基またはこれらの組み合わせであり、
〜Rは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、置換されたまたは非置換のカルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせであり、
nは、0〜5の整数である。
【請求項2】
前記化学式1は、下記の化学式1aで表される、請求項1に記載の有機光電素子用化合物:
【化2】

前記化学式1aにおいて、
RaおよびRaは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、置換されたまたは非置換のカルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせであり、
は、水素、置換されたまたは非置換のカルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせである。
【請求項3】
前記化学式2は、下記の化学式2aまたは2bで表される、請求項1に記載の有機光電素子用化合物:
【化3】

前記化学式2aおよび2bにおいて、
は、水素、置換されたまたは非置換のカルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせである。
【請求項4】
前記化学式3のQ〜QおよびQa〜Qaは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、NまたはCRであり、
但し、Qa、Qa、およびQaの中で選択された1個以上はNであり、
残りはそれぞれ独立してCRであり、ここで、前記Rは、水素、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の有機光電素子用化合物。
【請求項5】
前記化学式3のQ〜QおよびQa〜Qaは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、NまたはCRであり、
但し、Q〜Qの中で選択された1〜3個はNであり、
Qa〜Qaの中で選択された1〜3個はNであり、
残りはそれぞれ独立してCRであり、ここで、前記Rは、水素、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の有機光電素子用化合物。
【請求項6】
前記化学式3のnは、0〜2の整数である、請求項1に記載の有機光電素子用化合物。
【請求項7】
前記化学式3は、下記の化学式3aで表される、請求項1に記載の有機光電素子用化合物:
【化4】

前記化学式3aにおいて、
Qa、Qa、およびQaは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、NまたはCHであり、但し、Qa、Qa、およびQaの中で選択された1個以上はNであり、
〜Q、およびQb〜Qb10は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、NまたはCRであり、ここで、前記Rは、水素、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基またはこれらの組み合わせであり、
は、水素、カルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせであり、
nは、0〜5の整数である。
【請求項8】
前記化学式1〜3において、R〜Rは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、C1〜C30のアルキル基、C6〜C30のアリール基、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の有機光電素子用化合物。
【請求項9】
下記の化学式4〜化学式9で表される、請求項1に記載の有機光電素子用化合物:
【化5】

【化6】

前記化学式4〜化学式9において、
〜QおよびQa〜Qaは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、NまたはCRであり、ここで、前記Rは、水素、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基またはこれらの組み合わせであり、
〜Rは、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、置換されたまたは非置換のカルバゾリル基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリール基、置換されたまたは非置換のC3〜C30のヘテロアリール基、置換されたまたは非置換のC6〜C30のアリールアミン基またはこれらの組み合わせであり、
nは、0〜5の整数である。
【請求項10】
下記の化学式10〜33で表される、請求項1に記載の有機光電素子用化合物:
【化7】

【化8】

【化9】

【請求項11】
電荷輸送物質またはホスト物質として使用される、請求項1に記載の有機光電素子用化合物。
【請求項12】
熱分解温度(T)が350〜600℃である、請求項1に記載の有機光電素子用化合物。
【請求項13】
陽極;陰極;および前記陽極と陰極との間に配置された少なくとも1つの有機薄膜層を含み、
前記少なくとも1つの有機薄膜層は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の有機光電素子用化合物を含む、有機光電素子。
【請求項14】
前記有機薄膜層は、発光層、正孔阻止層、電子阻止層、電子輸送層、電子注入層、正孔注入層、正孔輸送層またはこれらの組み合わせである、請求項13に記載の有機光電素子。
【請求項15】
請求項13に記載の有機光電素子を含む、表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−531737(P2012−531737A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517398(P2012−517398)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004156
【国際公開番号】WO2010/151083
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】