説明

有機化合物のガス化方法およびガス化装置

【課題】有機化合物が保有するエネルギーを高効率で回収できるガス化方法およびガス化装置を提供する。
【解決手段】有機化合物101を加熱して発生する水蒸気103、揮発成分104、熱分解ガス105、熱分解残渣106のうち、エネルギー回収が困難である揮発成分104や熱分解ガス105の一部を燃焼して燃焼熱を得、この燃焼熱を水蒸気103の過熱、残りの揮発成分104、熱分解ガス105の分解、改質あるいは熱分解残渣106の過熱水蒸気109による改質などの熱源として利用するために、余分な付帯設備を少なくしてシステム全体を小型化し、有機化合物101から効率よくエネルギーを回収できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物や有機廃棄物を熱分解あるいはガス化して、原料がもつエネルギーを回収し、有効利用するシステム等に利用可能な有機化合物のガス化方法およびガス化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機化合物や有機廃棄物を熱分解あるいはガス化して、原料がもつエネルギーを回収し、有効利用するシステムの研究、開発が盛んに行われている。
【0003】
このようなシステムで重要なことは、原料がもつエネルギーを最大限に回収することと、エネルギー回収のためにシステムが消費するエネルギーを最小限にすることである。
【0004】
前者の指標としては、回収したガス発熱量を原料発熱量で除した冷ガス効率(回収したガス発熱量/原料発熱量)がある。
【0005】
また、後者の指標は、定義や、実測が困難であり、明確な指標や検討例などの報告はほとんど見当たらない。
【0006】
有機化合物のガス化では、生成物として熱分解ガス、タールなどの揮発成分、チャー、灰分などの残渣がある。前記冷ガス効率を向上させるためには、揮発成分、残渣をうまくガスに転換することが必要である。また、揮発成分は低温部で凝縮することにより、長時間運転した場合など排気管の閉塞などの原因となるため、非凝縮性ガスになるまで低分子化することが好ましい。
【0007】
揮発成分をガス化する一つの方法として、分解触媒がある。ここでいう揮発成分とは、高分子の炭化水素が主成分であるので、石油精製プロセスで使用されるニッケルなどが効果があると期待されている。また、ニッケルより高性能な触媒としてはルテニウムなどがある。
【0008】
また、生成した揮発成分を多孔質粒子で一時的に捕捉し、その後酸素や空気により燃焼する方法がある。この場合、燃焼熱をシステム内で利用することにより、システムのエネルギー消費量を低減できる。
【0009】
例えば、媒体粒子を循環させることにより、媒体粒子中に捕集されたチャーの燃焼熱を原料の熱分解に利用する循環流動床がある(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
図3は、上記特許文献1に記載された従来の統合型循環流動床ガス化炉の基本的構成図である。図3に示すように、統合型循環流動床ガス化炉は、ガス化室1、捕集装置2、燃焼室3を併せ持つことにより構成されている。ガス化室1には原料aが供給され、ガス化室1において原料aの熱分解ガス化、および生成ガスの分解、改質が行われる。ガス化室1内で生成されたチャーや生成ガスは、流動媒体とともに捕集装置2に流入する。捕集装置2では、飛散粒子eの捕集と可燃ガスcの分離回収を行い、燃焼室3では、飛散粒子中におけるチャー等の可燃分の燃焼を行う。また、ガス化室1の下部には、濃厚流動層または高速流動層が形成されている。
【0011】
そして、ガス化室1の下部が濃厚流動層である場合には、該濃厚流動層上部から蒸気または窒素などのガスを流動化ガスb2として供給することにより、ガス化室1の上部を高速流動層とする。ガス化室1では、熱分解ガス化により生成したガスを分解、改質することを目的として、高速流動層を高温化するために酸素を含むガスを流動化ガスb1、b2として供給してもよく、生成したガスの一部を燃焼させてもよい。酸素を含むガスは、流動化ガスb1、b2のいずれか一方もしくは双方に供給する。そして、燃焼室3でチャー等を燃焼した飛散粒子eは、再度ガス化室1に戻される。
【0012】
このことにより、上記従来のシステムは、有機化合物の熱分解ガス化プロセスにおいて発生するタールなどを分解、改質し、さらにチャーを燃焼した燃焼熱を再度熱分解に利用することにより、ガス転換率を向上させるとともに、システムの消費エネルギーを低減できる。
【特許文献1】特開2003−176486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来の構成は、熱分解ガス化で生成したガスを蒸気または窒素を外部から供給することにより分解、改質しており、蒸気を供給する場合には別途ボイラなど、窒素を供給する場合にも加熱器や熱交換器などが必要であり、システム全体が大型化するという課題があった。
【0014】
また、原料の含水量が多い場合、熱分解ガス化の初期における乾燥過程で発生した水蒸気は、捕集装置2から排ガスとして排気されるため、水蒸気が保有するエネルギーをシステム系外に廃棄しており、その結果、システムの消費エネルギーが増大し、高含水原料の熱分解ガス化には適さないという課題があった。
【0015】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、有機化合物の熱分解ガス化で生成する揮発成分または熱分解ガスの燃焼熱を利用して、原料の乾燥、そして蒸発した水蒸気を過熱して余分な揮発成分、熱分解ガスまたはチャーの分解、改質剤として利用することにより、高含水の有機化合物からエネルギー的に効率よくガスを回収するガス化方法と、さらに小型のガス化装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来の課題を解決するために、本発明の有機化合物のガス化方法は、有機化合物を加熱し、発生する揮発成分または熱分解ガスを捕捉材層に流通させて揮発成分または熱分解ガスの一部を捕捉し、捕捉材層で捕捉される揮発成分または熱分解ガスを燃焼させて燃焼熱を得、燃焼熱を有機化合物を加熱する第1の加熱源、有機化合物から発生する水蒸気を過熱して過熱水蒸気にする第2の加熱源、揮発成分または熱分解ガスの一部を分解して低分子化するために加熱する第3の加熱源、有機化合物の熱分解残渣を過熱水蒸気によりガス化するために加熱する第4の加熱源のうち、少なくとも二つ以上の加熱源とするものであり、前記有機化合物の熱分解で発生する揮発成分または熱分解ガスの一部の燃焼熱を、ガス化プロセス全体で消費する熱源とするため、有機化合物から発生する揮発成分であるタールなどの有するエネルギーを回収し、システム内で利用するためにシステムの消費エネルギーが低減できる。
【0017】
また、本発明の有機化合物のガス化装置は、有機化合物を収納し加熱する第1の加熱室と、第1の加熱室から発生する揮発成分または熱分解ガスを流通させて一部を燃焼する第2の加熱室と、第1の加熱室から排出される熱分解残渣を過熱水蒸気によりガス化する第3の加熱室とを備え、第1の加熱室と第2の加熱室は、第1の加熱室壁面上部に設けられる流通口を介して連通し、第1の加熱室と第3の加熱室は、第1の加熱室底部と第3の加熱室上部を接続する排出口を介して連通し、第2の加熱室と第3の加熱室は、第2の加熱室は、第3の加熱室壁面に設けられた導入口を介して連通し、排出口に空気または水蒸気の供給管を備えているものであり、有機化合物を加熱して発生する水蒸気、揮発成分、熱分解ガス、熱分解残渣のうち、エネルギー回収が困難である揮発成分や熱分解ガスの一部を燃焼して燃焼熱を得、この燃焼熱を水蒸気の過熱、残りの揮発成分、熱分解ガスの分解、改質あるいは熱分解残渣の過熱水蒸気による改質などの熱源として利用するため、余分な付帯設備を少なくしてシステム全体を小型化し、有機化合物から効率よくエネルギーが回収できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、有機化合物から燃料ガスを高効率で発生させることにより、大規模なガス化プラントではなく小型ガス化装置を提供できるので、回収エネルギーをエネルギー消費地で生産可能となる。そのため、エネルギー搬送等の設備も簡略化され、従来の化石燃料の代替となる新しく、環境負荷の小さいエネルギー供給システムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
請求項1に記載の発明は、有機化合物を加熱し、発生する揮発成分または熱分解ガスを捕捉材層に流通させて前記揮発成分または前記熱分解ガスの一部を捕捉し、前記捕捉材層で捕捉される前記揮発成分または前記熱分解ガスを燃焼させて発生した燃焼熱を利用し、さらに、前記有機化合物を加熱する第1の加熱源と、前記有機化合物から発生する水蒸気を過熱して過熱水蒸気にする第2の加熱源と、前記揮発成分または前記熱分解ガスの一部を分解して低分子化するために加熱する第3の加熱源と、前記有機化合物の熱分解残渣を前記過熱水蒸気によりガス化するために加熱する第4の加熱源の少なくとも二つ以上の加熱源を用いたものである。
【0020】
したがって、有機化合物の熱分解で発生する揮発成分または熱分解ガスの一部の燃焼熱をガス化プロセス全体で消費する熱源とするため、有機化合物から発生する揮発成分であるタールなどの有するエネルギーを回収し、システム内で利用するためにシステムの消費エネルギーが低減できる。
【0021】
請求項2に記載の発明は、前記有機化合物に含まれる水分量を、前記有機化合物に含まれる炭素モル量の少なくとも2倍以上の水分子モル量としたものである。
【0022】
したがって、過熱水蒸気をガス化剤とする有機化合物のガス化システムにおいて、有機化合物の乾燥過程で発生する水蒸気でガス化に必要な過熱水蒸気量を賄えるので、有機化合物から発生する揮発成分であるタールなどの有するエネルギーを回収し、システムの消費エネルギーが低減できることに加えて、外部から過熱水蒸気を供給するボイラなどの設備が不要となり、システム全体を小型化できる。
【0023】
請求項3に記載の発明は、前記捕捉材層を、耐熱性の多孔質粒子が充填された構成とし、燃焼熱を一時的に蓄熱するものである。
【0024】
したがって、揮発成分または熱分解ガスの燃焼によって得られる燃焼熱を、有機化合物の加熱、有機化合物から発生する水蒸気の過熱、揮発成分または熱分解ガスの分解、改質、熱分解残渣のガス化に消費し、余った熱をシステム外へ排出することなく適宜利用できるので、システムの消費エネルギーがさらに低減できる。
【0025】
請求項4に記載の発明は、前記有機化合物に含まれる灰分を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属元素を含む化合物を主成分とし、前記灰分の大部分が熱分解残渣に含まれているものである。
【0026】
したがって、灰分の大部分は熱分解残渣に含まれるものであり、熱分解残渣を過熱水蒸気を利用して分解、改質するときにアルカリ金属またはアルカリ土類金属類の触媒作用により反応が促進されるため、ガスの回収量が向上することにより多量のエネルギーを回収できるので、システムの消費エネルギーを低減し、さらにシステムの小型化もできる。
【0027】
請求項5に記載の発明は、前記有機化合物を、動植物を起源としたものである。
【0028】
したがって、原料には水分、揮発成分、灰分が含まれており、原料から発生する揮発成分または熱分解ガスの燃焼熱を利用し、原料の含有水から過熱水蒸気を生成して熱分解残渣を分解、改質してガスを回収するので、一般的に含水量の多い有機化合物原料でも、効率よくエネルギー回収できるのでシステムの消費エネルギーを低減でき、システム全体が小型化できる。
【0029】
請求項6に記載の発明は、有機化合物を収納し加熱する第1の加熱室と、前記第1の加熱室から発生する揮発成分または熱分解ガスを流通させて一部を燃焼する第2の加熱室と、前記第1の加熱室から排出される熱分解残渣を過熱水蒸気によりガス化する第3の加熱室とを備え、前記第1の加熱室と前記第2の加熱室は、前記第1の加熱室壁面上部に設けられる流通口を介して連通し、前記第1の加熱室と前記第3の加熱室は、前記第1の加熱室底部と前記第3の加熱室上部を接続する排出口を介して連通し、前記第2の加熱室と前記第3の加熱室は、前記第2の加熱室が前記第3の加熱室壁面に設けられた導入口を介して連通し、さらに、前記排出口に空気または水蒸気の供給管を備えたものである。
【0030】
かかる構成とすることにより、前記有機化合物を加熱して発生する水蒸気、揮発成分、熱分解ガス、熱分解残渣のうち、エネルギー回収が困難である揮発成分や熱分解ガスの一部を燃焼して燃焼熱を得、この燃焼熱を水蒸気の過熱に、残りの揮発成分を、熱分解ガスの分解、改質あるいは熱分解残渣の過熱水蒸気による改質などの熱源として利用するために、余分な付帯設備を少なくしてシステム全体を小型化し、有機化合物から効率よくエネルギーを回収できる。
【0031】
請求項7に記載の発明は、前記第1の加熱室を、前記第2の加熱室内に設けられた二重管構造としたもので、前記第2の加熱室で得られる熱は、壁面のみを介して第1の加熱室に熱搬送可能であり、ガス化装置全体を小型化できる。
【0032】
請求項8に記載の発明は、前記第2の加熱室に、耐熱性の多孔質粒子お充填し、燃焼熱を一時的に蓄熱するようにしたものである。
【0033】
したがって、揮発成分または熱分解ガスの燃焼によって得られる燃焼熱を、有機化合物の加熱、有機化合物から発生する水蒸気の過熱、揮発成分または熱分解ガスの分解、改質、熱分解残渣のガス化に消費し、余った熱をシステム外へ排出することなく適宜利用できるので、システムの消費エネルギーをさらに低減できる。
【0034】
請求項9に記載の発明は、前記有機化合物に含まれる灰分を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属元素を含む化合物を主成分とし、前記灰分の大部分が熱分解残渣に含まれているものである。
【0035】
したがって、熱分解残渣を、過熱水蒸気を利用して分解、改質するときに、アルカリ金属またはアルカリ土類金属類の触媒作用により反応が促進されるため、ガスの回収量が向上することにより多量のエネルギーを回収でき、システムの消費エネルギーを低減し、さらにシステムの小型化もできる。
【0036】
請求項10に記載の発明は、前記有機化合物を、動植物を起源としたものである。
【0037】
したがって、原料には水分、揮発成分、灰分が含まれており、原料から発生する揮発成分または熱分解ガスの燃焼熱を利用して、原料の含有水から過熱水蒸気を生成して熱分解残渣を分解、改質してガスを回収するので、一般的に含水量の多い有機化合物原料でも、効率よくエネルギー回収できるのでシステムの消費エネルギーを低減でき、システム全体を小型化できる。
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0039】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における有機化合物のガス化方法のフロー図である。
【0040】
図1において、有機化合物101は、動植物由来の燃料であるバイオマスを想定しており、代表例として家庭や事業所等からの廃棄物、製材所などからの木屑、畜産業者などからの家畜糞尿などがある。
【0041】
まず、第1の加熱源102によって有機化合物101が加熱される。このとき、有機化合物101からは、水蒸気103、揮発成分104、熱分解ガス105、熱分解残渣106が発生する。水蒸気103の量は、有機化合物101の含水率に依存するが、有機化合物101に含まれる炭素を、全て水蒸気103をガス化剤としてガス化すると仮定すると、含有炭素モル量の2倍以上であるモル量の水蒸気103があればよい。
【0042】
揮発成分104は、タールなどの高分子炭化水素が主成分であり、アルミナなどの多孔質粒子である捕捉材107の充填層を通過するときに、捕捉材107表面で捕捉される。さらに、この捕捉材107の充填層に空気108を供給することにより、揮発成分104が燃焼し、発熱する。また、熱分解ガス105は、水素、メタン、エチレン、一酸化炭素、二酸化炭素などで構成される可燃性と不燃性の混合ガスであり、可燃成分の一部は、空気108と反応して燃焼し、発熱する。
【0043】
この燃焼熱は、有機化合物101の加熱源である第1の加熱源102と、水蒸気103を加熱して過熱水蒸気109を生成する第2の加熱源110と、揮発成分104または熱分解ガス105の分解、改質に必要な熱を供給する第3の加熱源111と、熱分解残渣106のガス化に必要な熱を供給する第4の加熱源112に移動する。また、余分な燃焼熱は、捕捉材107に蓄熱され、必要に応じて利用される。
【0044】
有機化合物101から発生した水蒸気103が過熱水蒸気109となると、揮発成分104、熱分解ガス105、熱分解残渣106を低分子化(またはガス化)する改質剤となる。その結果、燃料ガス113として水素、メタン、エチレン、一酸化炭素に分解、改質される。また、熱分解残渣106には、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属元素やマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属元素が含有されており、これらが揮発成分104、熱分解ガス105、熱分解残渣106などの低分子化を促進する触媒として作用する。
【0045】
このようにして得られる燃料ガス113は、ガスエンジン、ガスタービンあるいは燃料電池などに供給することで電力を供給できる。
【0046】
以上のように、本実施の形態では、有機化合物101を加熱し、これによって発生する揮発成分104または熱分解ガス105を、捕捉材107層に流通させて揮発成分104または熱分解ガス105の一部を捕捉し、捕捉材107層で捕捉される揮発成分104または熱分解ガス105を燃焼させて燃焼熱を得る。そして、その燃焼熱を、有機化合物101を加熱する第1の加熱源102、有機化合物101から発生する水蒸気103を過熱して過熱水蒸気109にする第2の加熱源110、揮発成分104または熱分解ガス105の一部を分解して低分子化するために加熱する第3の加熱源111、有機化合物101の熱分解残渣106を過熱水蒸気109によりガス化するために加熱する第4の加熱源112のうち、少なくとも二つ以上の加熱源とする。
【0047】
したがって、有機化合物101の熱分解で発生する揮発成分104または熱分解ガス105の一部の燃焼熱を、ガス化プロセス全体で消費する熱源とするため、有機化合物101から発生する揮発成分104であるタールなどの有するエネルギーを回収し、システム内で利用するためにシステムの消費エネルギーを低減できる。
【0048】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における有機化合物のガス化装置の構成図である。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同じものについては、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0049】
図2において、第1の加熱室201は、上方からホッパー202を介して供給される有機化合物101を収納し、加熱する金属製の加熱容器で構成され、耐熱性及び耐食性に優れた材料であるステンレス316、インコネル、ハステロイなどで製作することが好ましい。さらに、耐熱性、耐食性能を向上させるために、耐火煉瓦などの無機材料を使用したり、表面を耐熱、耐食塗料などでコーティングするとさらに耐食性は向上する。
【0050】
第1の加熱室201壁面上部には、有機化合物101から発生する水蒸気103、揮発成分104、熱分解ガス105を排気する流通口203を設けている。また、第1の加熱室201の下部はホッパー形状になっており、底部には熱分解残渣106を排出する排出口204を設けている。さらに、排出口204内には細管205を配置しているため、熱分解残渣106が排出口204でブリッジを形成して閉塞したときに、この細管205より空気、または水蒸気を供給してブリッジを破壊して落下させることができる。
【0051】
第1の加熱室201は、第2の加熱室206内に設けられており、二重管構造となっている。第2の加熱室206には、多孔板207で上部と下部に分割され、上部にはアルミナ性多孔質粒子の捕捉材107が充填されている。また、捕捉材107充填層付近には、燃焼用空気供給管208から空気が供給される。
【0052】
また、第1の加熱室201の排出口204下方には、排出口204から排出される熱分解残渣106を貯留し、さらに加熱してガス化する第3の加熱室209が配置されている。第3の加熱室209は、下部がホッパー形状になっており、その先端には未反応チャーや灰分などを排出する排出管210が備えられ、さらに排出管210は分岐された燃料ガス回収管211から燃料ガスのみを回収する。また、第3の加熱室209は、側面の導入口212を介して第2の加熱室206の下部と連通している。
【0053】
さらに第1の加熱室201、第2の加熱室206、第3の加熱室209は、シリカ粉末などの高温断熱材213で形成された筺体内に配置されている。
【0054】
以上のように構成された有機化合物のガス化装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0055】
まず、ホッパー202に投入された有機化合物101は、少量ずつ下方の第1の加熱室201に供給される。有機化合物101が木屑などの如く流動性が良好なものであれば、自然落下により供給可能であるが、食品残渣や剪定枝など流動性が悪い場合には、事前に適宜粉砕機で粉砕することにより流動性を向上したり、スクリューフィーダーなどを設置して強制的に供給することが望ましい。
【0056】
また、第1の加熱室201は、壁面が定常状態で約200〜800℃に保持されており、壁面からの伝導熱、対流熱、放射熱により供給された有機化合物101が加熱される外熱式のものである。前記壁面からの伝熱により加熱された有機化合物101は、初期段階において含有水分の蒸発が開始する。例えば、食品残渣には、一般的に約70〜80重量%の水分が含有されている。水分蒸発終了後、さらに昇温した有機化合物101からはタールなどの揮発成分104または水素、メタン、エチレン、一酸化炭素、二酸化炭素などの熱分解ガス105が発生する。
【0057】
このようにして有機化合物101の加熱により発生した水蒸気103、揮発成分104または熱分解ガス105は、流通口203を通過して第2の加熱室206に流入する。第2の加熱室206では、捕捉材107充填層で揮発成分104または熱分解ガス105の一部が捕捉される。さらに捕捉材107充填層には、燃焼用空気供給管208から空気が供給されるので、捕捉された揮発成分104または熱分解ガス105が燃焼して発熱する。また、捕捉されなかった揮発成分104または熱分解ガス105の一部も燃焼する。
【0058】
このようにして得られる燃焼熱は、第2の加熱室206の内壁を介して第1の加熱室201の加熱源となる。また、水蒸気103を過熱して過熱水蒸気110にする加熱源にもなる。さらに、この過熱水蒸気110を改質剤として、燃焼しなかった揮発成分104または熱分解ガス105を分解、改質して低分子化するための加熱源にもなる。さらに、第3の加熱室209の加熱源としても利用される。
【0059】
以上のように、有機化合物101の加熱により発生した熱を主に加熱源として利用し、さらに余った熱は、捕捉材107に蓄熱され、必要なときに利用できる。
【0060】
また、第1の加熱室201から排出される有機化合物101の熱分解残渣106は、排出口204を介して第3の加熱室209に導入される。排出口204は、第1の加熱室201の内径よりも小さく設計されており、熱分解残渣106がブリッジを形成して閉塞する場合もある。かかる現象が発生すると、熱分解残渣106充填層における圧力損失が大きくなるため、有機化合物101から発生する水蒸気103、揮発成分104または熱分解ガス105は圧力損失の少ない流通口203から第2の加熱室206に流入する。さらに、第1の加熱室201に溜まる熱分解残渣106量が多かったり、第3の加熱室209に溜まる熱分解残渣106量が少なかったりすると、適宜細管205から空気または水蒸気を供給してブリッジを破壊し、落下させる。なお、ブリッジはリボンスクリューなどを利用して、機械的に破壊しても差し支えない。
【0061】
さらに、第3の加熱室209では、熱分解残渣106と第2の加熱室206から導入口209を介して導入される過熱水蒸気110が反応し、熱分解残渣106中の固定炭素成分がガス化する。また、第2の加熱室206で分解、改質しきれなかった未反応の揮発成分104、熱分解ガス105の一部は、熱分解残渣106により捕捉され、同時に過熱水蒸気110により分解、改質される。さらに、熱分解残渣106中には、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属元素やマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属元素が含有されており、これらが揮発成分104、熱分解ガス105、熱分解残渣106などの低分子化を促進する触媒として作用する。
【0062】
このように、第1の加熱室201、第2の加熱室206、第3の加熱室209で発生した水素、メタン、エチレンなどの燃料ガスは、燃料ガス回収管211から燃料ガスのみを回収する。また、排出管210から未反応チャーや灰分などを排出する。
【0063】
以上のように、本実施の形態では、有機化合物101を収納し、加熱する第1の加熱室201と、第1の加熱室201から発生する揮発成分104または熱分解ガス105を流通させて一部を燃焼する第2の加熱室206と、第1の加熱室201から排出される熱分解残渣106を過熱水蒸気109によりガス化する第3の加熱室209とを備え、第1の加熱室201と第2の加熱室206は、第1の加熱室201壁面上部に設けられる流通口203を介して連通し、また、第1の加熱室201と第3の加熱室209は、第1の加熱室201底部と第3の加熱室209上部を接続する排出口204を介して連通し、第2の加熱室206と第3の加熱室209は、第3の加熱室209壁面に設けられた導入口212を介して連通し、排出口204に空気または水蒸気の供給管205を備えているものであり、有機化合物101を加熱して発生する水蒸気103、揮発成分104、熱分解ガス105、熱分解残渣106のうち、エネルギー回収が困難である揮発成分104や熱分解ガス105の一部を燃焼して燃焼熱を得、この燃焼熱を水蒸気103の過熱、残りの揮発成分104や熱分解ガス105の分解、改質あるいは、熱分解残渣106の過熱水蒸気109による改質などの熱源として利用するために、余分な付帯設備を少なくしてシステム全体を小型化し、有機化合物101から効率よくエネルギーを回収できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明にかかる有機化合物のガス化方法およびガス化装置は、有機化合物を加熱したときに発生する揮発成分または熱分解ガスの一部を燃焼させて発熱し、この燃焼熱を熱源として、有機化合物の乾燥とそれに伴い発生する水蒸気を過熱して過熱水蒸気とし、この過熱水蒸気を利用して残りの揮発成分、熱分解ガスあるいは熱分解残渣の分解、改質を行うことにより、有機化合物のエネルギー化システムの高効率化が可能となるので、システム全体を小型化でき、設置面積が限られる小店舗、家庭など有機系廃棄物が排出されるその場所において、ガスエンジン、ガスタービンあるいは燃料電池などの小型発電機を使用することにより、オンサイト発電も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態1における有機化合物のガス化方法のフロー図
【図2】本発明の実施の形態2における有機化合物のガス化装置の構成図
【図3】従来例を示す統合型循環流動床ガス化炉の基本的構成図
【符号の説明】
【0066】
101 有機化合物(動植物)
102 第1の加熱源
103 水蒸気
104 揮発成分
105 熱分解ガス
106 熱分解残渣
107 捕捉材(多孔質粒子)
108 空気
109 過熱水蒸気
110 第2の加熱源
111 第3の加熱源
112 第4の加熱源
201 第1の加熱室
203 流通口
204 排出口
206 第2の加熱室
209 第3の加熱室
211 供給管
212 導入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物を加熱し、発生する揮発成分または熱分解ガスを捕捉材層に流通させて前記揮発成分または前記熱分解ガスの一部を捕捉し、前記捕捉材層で捕捉される前記揮発成分または前記熱分解ガスを燃焼させて発生した燃焼熱を利用し、さらに、前記有機化合物を加熱する第1の加熱源と、前記有機化合物から発生する水蒸気を過熱して過熱水蒸気にする第2の加熱源と、前記揮発成分または前記熱分解ガスの一部を分解して低分子化するために加熱する第3の加熱源と、前記有機化合物の熱分解残渣を前記過熱水蒸気によりガス化するために加熱する第4の加熱源の少なくとも二つ以上の加熱源を用いた有機化合物のガス化方法。
【請求項2】
前記有機化合物に含まれる水分量を、前記有機化合物に含まれる炭素モル量の少なくとも2倍以上の水分子モル量とした請求項1に記載の有機化合物のガス化方法。
【請求項3】
前記捕捉材層を、耐熱性の多孔質粒子が充填された構成とし、燃焼熱を一時的に蓄熱する請求項1または2に記載の有機化合物のガス化方法。
【請求項4】
前記有機化合物に含まれる灰分は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属元素を含む化合物を主成分とし、前記灰分の大部分が熱分解残渣に含まれている請求項1から3のいずれか一項に記載の有機化合物のガス化方法。
【請求項5】
前記有機化合物は動植物を起源とする請求項1から4のいずれか一項に記載の有機化合物のガス化方法。
【請求項6】
有機化合物を収納し加熱する第1の加熱室と、前記第1の加熱室から発生する揮発成分または熱分解ガスを流通させて一部を燃焼する第2の加熱室と、前記第1の加熱室から排出される熱分解残渣を過熱水蒸気によりガス化する第3の加熱室とを備え、前記第1の加熱室と前記第2の加熱室は、前記第1の加熱室壁面上部に設けられる流通口を介して連通し、前記第1の加熱室と前記第3の加熱室は、前記第1の加熱室底部と前記第3の加熱室上部を接続する排出口を介して連通し、前記第2の加熱室と前記第3の加熱室は、前記第2の加熱室が前記第3の加熱室壁面に設けられた導入口を介して連通し、さらに、前記排出口に空気または水蒸気の供給管を備えた有機化合物のガス化装置。
【請求項7】
前記第1の加熱室は、前記第2の加熱室内に設けられた二重管構造である請求項6に記載の有機化合物の加熱装置。
【請求項8】
前記第2の加熱室には、耐熱性の多孔質粒子が充填されており、燃焼熱を一時的に蓄熱する請求項6または7に記載の有機化合物のガス化装置。
【請求項9】
前記有機化合物に含まれる灰分は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属元素を含む化合物が主成分であり、前記灰分の大部分は熱分解残渣に含まれている請求項6から8のいずれか一項に記載の有機化合物のガス化装置。
【請求項10】
前記有機化合物は、動植物を起源とする請求項6から9のいずれか一項に記載の有機化合物のガス化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−206736(P2006−206736A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20738(P2005−20738)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】