説明

有機廃棄物の処理システム

【課題】
食品加工工程で廃棄される魚介類残渣、鶏糞・豚糞、牛糞などの家畜の糞尿,野菜屑などの農産廃棄物、更には生ゴミなどの動植物性食品残渣といった有機系廃棄物を短時間で効率よく分解、処理することができ、さらには樹脂材料の処理も可能であり、重金属成分を含む破棄物も安全に処理でき、廃棄物の再資源化に有効な有機廃棄物の処理システムを提供する。
【解決手段】
菌体を固定するための母材と、少なくともstreptomyces、sulfolobus、saccharopolyspola、streptomyces、nocordia、pseudomonas、cytophaga、spotocytophaga、bacillus、cellulomonas、streptomyces、clostridum、aspergillus、penicillium、およびrhizopusの14属の菌体から選択される菌体を含有する構成の有機廃棄物の処理システムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食品加工工程で廃棄される魚介類残渣、鶏糞・豚糞、牛糞などの家畜の糞尿,野菜屑などの農産廃棄物、更には生ゴミなどの動植物性食品残渣といった有機系廃棄物の処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工工程で廃棄される魚介類残渣、生ゴミなどの動植物性食品残渣、鶏糞・豚糞、牛糞などの家畜の糞尿,野菜屑などの農産廃棄物といった有機系廃棄物は、その殆どが、焼却や埋め立てにより処理されている。しかしながら、大量の魚介類残渣、生ゴミなどは、水分含有量が多く、これを焼却処理する為には大量の燃料を必要とし、極めて不経済であるばかりか、近年高まりつつあるCO2削減の要請にも反する。また、廃棄物量の増大に伴って、埋め立てによる処理も困難になってきており、より多くの廃棄物を回収し、再資源化する方法が講じられている。
【0003】
例えば、鶏糞・豚糞などの家畜の糞尿,家畜の死骸,枯草や腐敗作物などの農産廃棄物、更には生ゴミなどの動植物性食品残渣といった有機系廃棄物は再資源化することが可能である。
【0004】
しかしながら、有機系廃棄物を堆積醗酵させて堆肥として処理する方法では、廃棄物を完全に醗酵させるのに1〜2年程度かかるため、大量の廃棄物を処理するのは困難である。従って、従来の醗酵方法では短期間で効率よく処理して堆肥を得ることができず、大規模農業や、食品加工業などのように、大規模な工業的製造過程で生じる有機廃棄物を処理することは極めて困難であった。
【0005】
さらに、魚介類残渣にはカドミウム、水銀、砒素等の重金属類が少なからず含まれており、これが醗酵後の堆肥に含まれていると、事実上農作物に使用することができなくなってしまう。また、生ゴミには買い物袋などのポリ袋やプラスチックのトレイなど難分解性の樹脂材料が混入されており、これらが分解されずに残存してしまうと、堆肥としての使用の際に大きな障害となる。
【0006】
なお、このような有機廃棄物の処理方法、処理装置としては、例えば特開2000−354852号公報(特許文献1)に記載の方法や、特開平11−290830号公報に記載の装置などが知られているが、何れのものも、使用する菌体の種類と組み合わせが不十分なため、特に魚介類の残渣である水産加工廃棄物や買い物袋などの樹脂材料の分解が困難であり、これらの廃棄物の迅速かつ確実な処理が極めて困難であった。また、廃棄物中に含まれている重金属成分を処理することが困難であるため、前記水産加工廃棄物などのように、重金属成分を多く含む廃棄物を処理すると、残留し、濃縮された重金属成分により、処理後の堆肥を農作物などに使用することができず。資源の有効利用を妨げ、新たな廃棄物を生じる結果となっていた。
【特許文献1】特開2000−354852号公報
【特許文献2】特開平11−290830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、食品加工工程で廃棄される魚介類残渣、鶏糞・豚糞、牛糞などの家畜の糞尿,野菜屑などの農産廃棄物、更には生ゴミなどの動植物性食品残渣といった有機系廃棄物を短時間で効率よく分解、処理することができ、さらには樹脂材料の処理も可能であり、重金属成分を含む破棄物も安全に処理でき、廃棄物の再資源化に有効な有機廃棄物の処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため以下の構成とした。
(1) 菌体を固定するための母材と、少なくとも以下の14属に属する細菌属群を含み、投入された廃棄物が、前記細菌群の発酵作用により分解されて、廃棄物体積を24時間以内に1/100以下にまで減容する有機廃棄物処理システム。
細菌属群
1:streptomyces
2:sulfolobus
3:saccharopolyspola
4:白色腐朽性の担子菌
5:nocordia
6:pseudomonas
7:bacillus
8:cytophaga
9:spotocytophaga
10:cellulomonas
11:clostridum
12:aspergillus
13:penicillium
14:rhizopus
(2) 前記細菌群は
耐熱放線菌として
高温域から中温域の菌であってstreptomyces avermitillis、好酸性古細菌sulfolobus shibatae、およびsaccharopolyspola rectivirgulaから選択される菌を有し、
リグニン分解菌として
白色腐朽性の担子菌、放線菌streptomyces,nocordia、細菌類pseudomonas,bacillus、セルロース分解菌および繊維素分解菌として
滑走細菌cytophaga,spotocytophaga, pseudomonas, bacillus, cellulomonas, streptomyces, nocordiaおよび、嫌気性有芽胞桿菌類clostridumから選択される菌を有し、
脂肪分解菌として
リパーゼを生産分泌する菌である糸状菌aspergillus, penicillium,rhizopus から選択される菌を有し、
枯草菌として
アミラーゼやプロテアーゼの生産菌であるbacillus subtilis から選択される菌を有し、
乳酸菌として
Lactobacillus Plantarumから選択される菌を有する
上記(1)有機廃棄物の処理システム。
(3) 前記細菌群は、下記の種から選択される10種以上、好ましくは20種以上、特に全種を含有する上記(1)または(2)の有機廃棄物の処理システム。
Candida albicans TAX5476
Endomycopsis burtonii
Nocardia asteroides
Bacillus subtillis
Pseudomonas bacterium Rhizobium
Aspergillus niger TAX5061
Rhodospillum rubrum IFO3986
Rhodopseudomonas capsulata
Rhodobacter sphaeroides IFO12203
Chromatium vinosum
Streptomyces albus IFO3710
strepto verticillussp ATCC23654
Nocordia asteroides ATCC19247
Micromonospora chalcea IFO13503
Aspergillus oryzae IFO5770
Mucor hiemalis IFO8567
Saccharomyces cerevisial IFO1346
Candida utilis IFO0619
Lactobacillus Plantarum IFO3070
Pediococcus Halophilus IFO12172
Streptococcus Lactis IFO12007
Streptococcus Faecalis IFO3971
Arthrobacter sp.w 1〜6.
Pseudomonas aeruginosa
Corynebacterium sp.
Comamonas acidovorans
C.acidovorans. TB-35
Pseudomonas glumae
Pseudomonas gladioli
Pseudomonas avenae
Agrobacterium mochiganens
Pseudomonas solanacearum
Pseudomonas fluorescein
Aspergillus flavus
Aspergillus fumigatus
Aspergillus versicolor
Aspergillus penicillioides
(4) 処理前の有機廃棄物に含まれるカドミウム、水銀、砒素の1種または2種以上を含む水溶性の重金属成分の少なくとも一部を、非水溶性(不溶性)に変えて、無害化する上記(1)〜(3)のいずれかの有機廃棄物処理システム。
(5) 前記母材と撹拌装置を有するプール状の発酵槽とを有し、
廃棄物は、10mm以下に処理された後、発酵槽に投入されて発酵作用により分解して減容する上記(1)〜(4)のいずれかの有機廃棄物処理システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、食品加工工程で廃棄される魚介類残渣、鶏糞・豚糞、牛糞などの家畜の糞尿,野菜屑などの農産廃棄物、更には生ゴミなどの動植物性食品残渣といった有機系廃棄物を短時間で効率よく分解、処理することができ、廃棄物の再資源化に有効な有機廃棄物の処理システムを提供することができる。
【0010】
さらに、買い物袋やトレイ等の樹脂材料系不燃ゴミの処理も可能で、重金属成分を含む廃棄物も安全に処理可能な有機廃棄物の処理システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の有機廃棄物の処理システムは、菌体を固定するための母材と、少なくとも以下の14属に属する細菌属群を含み、投入された廃棄物が、前記細菌群の発酵作用により分解されて減容するものである。
細菌属群
1:streptomyces
2:sulfolobus
3:saccharopolyspola
4:白色腐朽性の担子菌
5:nocordia
6:pseudomonas
7:bacillus
8:cytophaga
9:spotocytophaga
10:cellulomonas
11:clostridum
12:aspergillus
13:penicillium
14:rhizopus
これら母材と菌体とは混合されて処理槽内に収納される。そして、この処理槽内を適度な温度と湿度に保持しつつ、有機廃棄物を投入し攪拌して処理する。
【0012】
本発明で、菌体の固定、坦持に用いられる母材としては、その表面や内部構造中に下記に記述する菌類を固定、担持することのできるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、菌類を固定しやすい多孔物質や、有機系材料、例えばバーク、おがくず、木炭粉、コーヒー粕、もみ殻、米糠から得られるぼかし等を好適に用いることができ、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0013】
本発明の処理システムでは、母材に固定、担持される細菌として、以下の細菌を含有することが好ましい。
【0014】
耐熱放線菌
高温域から中温域の菌が好ましい。
streptomyces avermitillis
好酸性古細菌sulfolobus shibatae
saccharopolyspola rectivirgula
【0015】
リグニン分解菌
白色腐朽性の担子菌、放線菌streptomyces,nocordia,
細菌類pseudomonas,bacillus
セルロース分解菌、繊維素分解菌
滑走細菌
cytophaga,spotocytophaga,pseudomonas,bacillus,cellulomonas,streptomyces,nocordia
嫌気性有芽胞桿菌類clostridum
脂肪分解菌
脂肪の分解は、脂肪分解酵素であるリパーゼの関与によって分解される。リパーゼを生産分泌する菌は、糸状菌aspergillus,penicillium,rhizopus など。
【0016】
枯草菌
bacillus subtilis 真性細菌目の代表で枯れ草や塵埃中などに広く分布する。重要なことはアミラーゼやプロテアーゼの生産菌で、特にプロテアーゼは蛋白質の分解酵素である。アミラーゼは、澱粉の粘度低下と沃素反応の消失をもたらす。
乳酸菌
Lactobacillus Plantarum
【0017】
以上のように、
(1)streptomyces
(2)sulfolobus
(3)saccharopolyspola
(4)白色腐朽性の担子菌
(5)nocordia
(6)pseudomonas
(7)bacillus
(8)cytophaga
(9)spotocytophaga
(10)cellulomonas
(11)clostridum
(12)aspergillus
(13)penicillium
(14)rhizopus
の14属から選択される14属以上、特に乳酸菌Luctobacillusを含む15属以上に属する菌体を含有することが好ましい。また、これらに属する菌体の種としては、これら以上に多いことが推奨され、好ましくは20種以上、より好ましくは40種以上、さらに好ましくは100種以上、特に200種以上で構成されているとよい結果が得られる。
【0018】
特に、生分解性プラスチック分解菌、石油分解菌、ポリエステル分解菌、PUR分解菌、土壌分解微生物、土壌微生物蛍光菌を含有することが望ましい。
【0019】
具体的には、下記の種から選択される10種以上、好ましくは20種以上、特に全種を含有するとよい。
【0020】
Candida albicans TAX5476
Endomycopsis burtonii
Nocardia asteroides
Bacillus subtillis
Pseudomonas bacterium Rhizobium
Aspergillus niger TAX5061
Rhodospillum rubrum IFO3986
Rhodopseudomonas capsulata
Rhodobacter sphaeroides IFO12203
Chromatium vinosum
Streptomyces albus IFO3710
strepto verticillussp ATCC23654
Nocordia asteroides ATCC19247
Micromonospora chalcea IFO13503
Aspergillus oryzae IFO5770
Mucor hiemalis IFO8567
Saccharomyces cerevisial IFO1346
Candida utilis IFO0619
Lactobacillus Plantarum IFO3070
Pediococcus Halophilus IFO12172
Streptococcus Lactis IFO12007
Streptococcus Faecalis IFO3971
Arthrobacter sp.w 1〜6.
Pseudomonas aeruginosa
Corynebacterium sp.
Comamonas acidovorans
C.acidovorans. TB-35
Pseudomonas glumae
Pseudomonas gladioli
Pseudomonas avenae
Agrobacterium mochiganens
Pseudomonas solanacearum
Pseudomonas fluorescein
Aspergillus flavus
Aspergillus fumigatus
Aspergillus versicolor
Aspergillus penicillioides
(上記中、属名及び種名の最後に付されている数字は、ATCC、IFO、TAX等の組織が用いる分類用の数字であり、例えばIFO 3986はIFOが分類・収集している微生物の3986番である。)
【0021】
これらの分解菌の組み合わせにより、有機物の全ての減容が実現できる。すなわち、本発明では上記14もしくは15属に属する菌類を複数組み合わせて用いることにより、これらが母材中に共生関係を築き、これらの菌の協調作用により、有機物や樹脂材料を迅速に分解するものと思われる。なお、これらの菌の配合率は任意であり、母材や分解する廃棄物の種類などにより、経験則から最適な量を配合すればよい。
【0022】
これらの細菌は、前記母材に対して、好ましくは菌体全量で3〜30質量%程度添加される。添加される菌体の量は、分解すべき廃棄物の質や量で異なり、糖質や澱粉質が主体のもののように比較的分解しやすいものであれば5%以下でも十分な効果が得られる。一方、”イカゴロ”のように分解しにくい水産廃棄物の場合には、15%以上添加することが望ましい。
【0023】
次に、本発明システムの醗酵条件について説明する。先ず、細菌が添加された母材を適切な温度と湿度に管理する。このときの温度としては、平均温度で25〜50℃、好ましくは30〜45℃とし、湿度は20〜50%、好ましくは30〜40%である。この母材中に廃棄物を投入する。このとき、投入する有機物は、母材の数十分の一とすることが望ましい。具体的には、質量比で母材全量の1/10以下、好ましくは1/20以下、特に1/30以下とするとよい。有機廃棄物投入後、醗酵作用により、母材の温度は上昇し、60〜70℃となるが、上記温度に管理することで適切な醗酵が促される。
【0024】
母材の温度と管理するための手段としては、熱線ヒーター等を用いて、醗酵槽の外部や内部から加熱してもよいし、温風ヒーターを用いて、醗酵槽内に温風を吹き込むようにしてもよい。特に、温風は、母材の湿度管理も使用することができるので好ましい。湿度管理は、前記温風の他、散水などにより適切な条件に整える。
【0025】
醗酵槽としては、所謂バッチ式の醗酵槽が好ましく、後述するようなプール状の槽に、母材を投入して、攪拌、加熱することで、醗酵が行われる。
【0026】
上記条件による醗酵過程で、投入された有機廃棄物はほぼ完全に消失する。ここで消失するとは、極僅かの残渣を残して、水、炭酸ガス、窒素ガスに分解されることをいう。分解は、通常24時間で完全に行われる。また、投入する有機廃棄物の種類により処理時間が異なる。野菜類などの一般家庭残渣は6時間、水産加工場からの魚介類残渣は8〜10時間、肉類なども8〜10時間で分解される。なお、10時間で消失した場合でも、14時間程度は、母材の状態、特に湿度を整えるために次の廃棄物投入は控えるべきである。すなわち、上記のように分解過程で、水分が多量に発生するため、母材中の湿度を上記最適値に調製しなければならない。
【0027】
なお、本発明のシステムによれば、貝殻、カニ殻、ウニ殻、カキ貝殻などの通常の有機物処理では分解しにくい無機系の廃棄物も、数日で分解することが可能であり、同様に買い物袋に用いられるポリ袋や、トレイに用いられる樹脂材料も分解することができる。
【0028】
本発明のシステムにおいては、有機廃棄物、および上記の無機系廃棄物や樹脂材料を母材中に投入するに際し、分解効率を高めるために廃棄物をチップ状に破砕することが望ましい。特に、貝殻、カニ殻、ウニ殻、カキ貝殻などの無機系廃棄物、ポリ袋や、トレイに用いられる樹脂材料等は、破砕することにより初めて完全な分解が可能になる。破砕片の大きさは、好ましくは最大部分が10mm以下、より好ましくは5mm以下とする。この大きさ以下に調製することで、迅速な分解処理を行うことができる。
【0029】
本発明のシステムにより、廃棄物はその投入量の殆どを分解消失させることができる。具体的には、投入された廃棄物体積を1/100以下、好ましくは1/500、特に1/1000以下にまで減容することができる。しかも、一部の残渣を除き、水、炭酸ガス、窒素ガスに分解されるので、環境にも優しく、化石燃料を浪費することもない。しかも、醗酵に伴う腐敗臭の発生や、不快な臭いを生じることもなく、処理施設の構造や、立地条件の自由度も高い。
【0030】
さらに本発明では、上記のような菌の組み合わせにより、カドミウム、水銀、砒素の1種または2種以上を含む水溶性の重金属成分の少なくとも一部を、非水溶性(不溶性)に変えて、無害化することができる。具体的には、処理後の母材や、残渣に含まれる水溶性重金属成分を累積させることなく減少させ、1/1未満、さらには1/2以下、特に1/3以下にまで低減することができる。この作用は、明確に解明されたわけではないが、例えば水に溶けやすい酸化カドミウムや塩化カドミウム、硫酸カドミ、硝酸カドミウム、臭化カドミウムが、分解菌の働きで水に溶けにくい硫化カドミウムや炭酸カドミウムや水酸化カドミウム、あるいは金属錯体などに変化しているものと考えられる。ここで、非水溶性とは、重金属元素測定に際して、試料から水に溶出される重金属成分を水溶性、溶出されないものを非水溶性とする。すなわち、水溶液中に溶出して測定可能な重金属元素以外のもので、重金属イオンとして測定不可能なものとも表現できる。水溶液中に溶出した重金属元素は、原子吸光法やICP−MS法等により測定することができる。
【0031】
次に、本発明システムの醗酵槽及び攪拌装置の具体例を、図を参照しつつ説明する。図1は本発明に用いられる醗酵槽の構造を示す概略断面図である。
【0032】
図において、醗酵槽1は、プール11とこのブール11内を攪拌する撹拌装置3を有する。プール11上には、壁14に支持された屋根15が固定されていて、これら壁14と屋根15でプール11を覆うことで、閉鎖空間を構成し、温度や湿度の管理を容易にしている。
【0033】
好ましくは図2に示すように、屋根15下部にシート16を段張りに張ることで、水蒸気を上部に逃がすと共に、温度を一定に保つことができる。発生した水蒸気は、上に上昇し、屋根棟部15aにある換気装置により行うことができる。また、シート16の両端部には、水受けの溝17が設けられている。このような構造とすることで、効率的な換気と保温が行われると共に、施設の製造コストを抑制することができる。プール11は、図示例のように地面GLよりも深く掘り下げた位置に配置することで、温度の低下を防止することができる。さらに、保温材等を側面や底面周囲に配置してもよい。
【0034】
図1の例では、プール11の横に配置されたブロア13とこれに接続される配管12a、12bにより、プール11の底から温風が吹き出すようになっている。
【0035】
また、プール11の側壁上には、レール21を摺動する撹拌レール2が取り付けられていて、この撹拌レール2にさらに攪拌機3が取り付けられている。攪拌機3は、螺旋状の攪拌翼を有する2つの攪拌棒31a,31bが取り付けられていて、この撹拌棒31a,31bが回転することで母材を攪拌する。攪拌機3は、車輪34により攪拌レール2上を図面左右方向に自由に移動することでき、さらに攪拌レール2は、図示しない機構によりレール21上を自由に摺動することができるので、プール11内のいかなる位置にも移動することができるようになっている。
【0036】
攪拌機3の撹拌棒31a,31bは、図3に示すように、アーム35,36により直立した状態から、水平状態にまで姿勢を変えることができ、これにより作業終了時の原点復帰を容易にすると共に、メンテナンス性にも優れている。撹拌棒31a,31bは、螺旋状に攪拌翼が巻き付けられた、中空状の円筒棒であり、その先端からは温風が吹き出すようになっている。この温風は、撹拌棒31a,31bの後端部に取り付けられている翼回転兼送風用のモータ32から、中空部を通して送られる。攪拌機3には、その他、アーム35,36を駆動するために機構や、移動用のモータ33等が備え付けられている。
【0037】
このような攪拌機3を用いて、プール11内に収容された母材を攪拌し、温風を吹き込むことで、母材の温度と湿度を適切に保つと共に、攪拌も行え、極めて効率よく醗酵管理作業を行うことができる。
【0038】
次に、廃棄物を破砕ないし粉砕する装置について説明する。図4は本発明に用いられる破砕装置の一例を示した概略断面図である。図において、装置本体は図面左中央に示される変形したL字状の中空構造体であり、その周囲に各部の平面図、断面図や、回転翼62、固定翼63等の展開図が示されている。
【0039】
図示例の破砕装置5は、廃棄物を投入するためのホッパー51と、四角い筒状の第1処理部外套52と、この第1処理部外套52内に配置された一対の破砕歯車53a,53bを備える。2つの破砕歯車53a,53bのうち一方は、モ−タ54からベルト55を介して駆動され、もう一方は、さらに動力伝達用プーリー56を介して駆動される。このようにして破砕歯車53a,53bは、両者の対向する中央部に向かってそれぞれかみ合うようにして回転し、投入された廃棄物を巻き込んで破砕し、潰しながら、下方に落とし込む。
【0040】
破砕歯車53a,53bから排出された廃棄物は、第1処理部外套52から口径が小さくなる連結部56を通って、円筒状の第2処理部外套57内へと導入される。第2処理部外套57内部では、この第2処理部外套57と、所定の間隔のギャップを介して両端部付近の径が小さくなっている破砕ドラム58が配置され、モータ59によりベルトを介して、その回転軸60が駆動されるようになっている。この第2処理部では、廃棄物が、第2処理部外套57と、破砕ドラム58との間のギャップで固形物が破砕されながら斜め下方に移動してゆく。従って、廃棄物はこの第2処理部で、略ギャップ以下の大きさにまで、破砕、破断される。
【0041】
第2処理部外套57の下端部(終端部)付近には、放射状に複数の翼を有する回転翼62と、同様に放射状に複数の翼を有する固定翼63とが僅かなギャップを介して備え付けられていて、これらにより第3処理部が構成されている。回転翼62と固定翼63には、複数の突起が所定の間隔を設けて配置されている。また、回転翼62の突起と固定翼63の突起とは、それぞれ対向して交互に配置されるようになっていて、ちょうど一方の突起が、他方の突起のない部分を通って、回転翼62が回転できるようになっている。この回転翼62も、前記破砕ドラム58の回転軸と接続されていて、破砕ドラム58と同様に回転できるようになっている。この第3処理部で廃棄物はさらに破砕、破断される。
【0042】
第2処理部外套57は、支柱を介して固定台61に取り付けられ、これにより装置全体が保持固定されるようになっている。
【0043】
第3処理部から排出された廃棄物は、第2処理部外套57に固定された扁平な円筒状の第4処理部外套64内を落下するように通過する。第4処理部外套64の下端部付近には、伏せたお椀状の固定破砕ドラム68と、断面が固定破砕ドラム68と同様の曲線となり、放射状に複数の翼を有する回転翼67が僅かなギャップを介して備え付けられていて、これらにより第4処理部が構成されている。
【0044】
固定破砕ドラム68には放射渦巻き状に突起が形成され、その上に配置された回転翼67が、ギャップを介して回転する。このため、廃棄物は前記渦巻き状の突起の間を、回転翼67に裁断され、擦られるようにして移動し、丁度すり鉢で擦られるように破砕、破断される。
【0045】
このようにして、投入された廃棄物は、第1処理部から第4処理部を通過することで、順次破砕、破断され、最終的に10mm以下、好ましくは5mm以下の大きさの断片にまで細かくされる。ここで、第1処理部の破砕歯車53a,53bの回転速度は、好ましくは、毎分40〜80回転、特に50〜70回転とするとよい。また、第2処理部のドラム58と第3処理部の回転翼62の回転数は、好ましくは毎分1000〜1400回転、特に1100〜1300回転である。さらに、第4処理部の回転翼67の回転数は、好ましくは毎分800〜1200回転、特に900〜1100回転である。これらの回転方向は交互に異なるようにするとよい。
【0046】
このようにして、廃棄物中の有機物も、貝殻、蛎殻、カニ殻、ウニ殻等のカルシウム質、キチン質等からなる無機物や、硬質廃棄物、あるいはポリ袋やポリエチレンなどのような樹脂製品も所定の大きさにまで細かく粉砕され、微生物による分解が極めて容易に行えるようになる。
【実施例】
【0047】
次に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
【0048】
〔実施例1〕
以下の手順で、7日間の連続処理を行い、処理前後の重金属成分(水銀、ヒ素、カドミウム)の含有量を測定した。
【0049】
菌床となる母材は、バーク、おがくず、木炭粉、ぼかしをそれぞれ適量混合し、日毎処理容量の30倍である600l(リットル)用意した。この母材に対し、少なくとも下記菌体リストの菌種を含む上記15属に属する処理用培養細菌を所定の割合で配合したものを15重量%投入し、混合した。
〔菌体リスト〕
Candida albicans TAX5476
Endomycopsis burtonii
Nocardia asteroides
Bacillus subtillis
Pseudomonas bacterium Rhizobium
Aspergillus niger TAX5061
Rhodospillum rubrum IFO3986
Rhodopseudomonas capsulata
Rhodobacter sphaeroides IFO12203
Chromatium vinosum
Streptomyces albus IFO3710
strepto verticillussp ATCC23654
Nocordia asteroides ATCC19247
Micromonospora chalcea IFO13503
Aspergillus oryzae IFO5770
Mucor hiemalis IFO8567
Saccharomyces cerevisial IFO1346
Candida utilis IFO0619
Luctobacillus Plantarum IFO3070
Pediococcus Halophilus IFO12172
Streptococcus Lactis IFO12007
Streptococcus Faecalis IFO3971
Arthrobacter sp.w 1〜6.
Pseudomonas aeruginosa
Corynebacterium sp.
Comamonas acidovorans
C.acidovorans. TB-35
Pseudomonas glumae
Pseudomonas gladioli
Pseudomonas avenae
Agrobacterium mochiganens
Pseudomonas solanacearum
Pseudomonas fluorescein
Aspergillus flavus
Aspergillus fumigatus
Aspergillus versicolor
Aspergillus penicillioides
【0050】
上記菌体を含む母材に対しイカの内臓を主に含むイカゴロ20kgを投入し、攪拌しながら母材の温度を30〜45℃、湿度を30〜40%に保持した。24時間後に母材を目視により検査したところ、投入したイカゴロの痕跡は確認されず、目視による検査では、完全な消失と認められた。さらに、この母材中にイカゴロ20kgを投入し、同様の操作により24時間後の目視確認を7日間繰り返した。その結果、7日間のイカゴロ繰り返し投入試験では、24時間以内に投入したイカゴロの完全な消失が確認できた。
【0051】
処理前の母材およびイカゴロの水銀、砒素、カドミウム含有量と、処理後の母材の水銀、砒素、カドミウム含有量を測定した。測定は財団法人北海道薬剤師会公衆衛生検査センターに依頼し、資料を水溶液中に溶出させ、水銀、砒素は原子吸光法、カドミウムはICP−MS法により測定した。結果を以下の表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1から処理前のイカゴロに含まれるカドミウムは0.74mg/l、処理前の母材に含まれるカドミウムは0.011mg/lであり、イカゴロは総量で140kg投入されているから、1kg=1lとすると、投入された廃棄物の総カドミウム量は0.74×140=103.6mgであり、母材は600リットルあるので、母材の総カドミウム量は0.011×600=6.6mgである。従って、処理後の母材中に存在する総カドミウム量は103.6+6.6=110.2mgとなるはずである。しかし、処理後のカドミウム含有量は、0.065mg/lであり、これを総量にすると0.065×600=39mgであるから、110.2−39=71.2mgのカドミウムが、母材中の微生物により処理されたことになる。これは投入されたイカゴロに含有するカドミウムにだけ着目しても、1/3以下の量に減量されていることになる。また、カドミウム以外の重金属成分、水銀、ヒ素でも同様な効果が認められる。
【0054】
このことは、母材中の微生物の作用により、水溶性の重金属成分が、非水溶性に変化したものと考えられる。このように非水溶性とすることで、有害な重金属成分を無害化することができ、処理後の母材の重金属成分による汚染の影響を無視できる程度に軽減することが可能となる。なお、上記残留重金属成分の含有率は、国の安全基準以下に適合する値である。
【0055】
〔実施例2〕
実施例1において、イカゴロに代えて、廃棄物としてホタテウロ、たこ内臓、タラバガニ残渣(主に殻)を、母材中にそれぞれ1日おきに順次投入したが、目視による確認では何れの廃棄物も24時間以内に消失したことが認められた。
【0056】
以上結果から、本発明のシステムは、従来のシステムでは処理し難い水産物残渣等も迅速かつ完全に処理することができ、しかも有害な重金属成分も低減できるので、高効率で安全性の高い有機廃棄物処理を行えることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に用いられる醗酵槽の構造を示す概略断面図である。
【図2】醗酵槽となるプール、および屋根、シート等の関係を示す概略断面図である。
【図3】本発明に用いられる撹拌装置の構造を示す図1の一部概略側面図である。
【図4】本発明に用いられる破砕装置の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 醗酵槽
2 撹拌レール
3 撹拌装置
11 側壁
14 支柱
15 屋根
16 シート
21 レール
31a,31b 撹拌棒
32 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
菌体を固定するための母材と、少なくとも以下の14属に属する細菌属群を含み、投入された廃棄物が、前記細菌群の発酵作用により分解されて、廃棄物体積を24時間以内に1/100以下にまで減容する有機廃棄物処理システム。
細菌属群
(1)streptomyces
(2)sulfolobus
(3)saccharopolyspola
(4)白色腐朽性の担子菌
(5)nocordia
(6)pseudomonas
(7)bacillus
(8)cytophaga
(9)spotocytophaga
(10)cellulomonas
(11)clostridum
(12)aspergillus
(13)penicillium
(14)rhizopus
【請求項2】
前記細菌群は
耐熱放線菌として
高温域から中温域の菌であってstreptomyces avermitillis、好酸性古細菌sulfolobus shibatae、およびsaccharopolyspola rectivirgulaから選択される菌を有し、
リグニン分解菌として
白色腐朽性の担子菌、放線菌streptomyces,nocordia、細菌類pseudomonas,bacillus、セルロース分解菌および繊維素分解菌として
滑走細菌cytophaga,spotocytophaga, pseudomonas, bacillus, cellulomonas, streptomyces, nocordiaおよび、嫌気性有芽胞桿菌類clostridumから選択される菌を有し、
脂肪分解菌として
リパーゼを生産分泌する菌である糸状菌aspergillus, penicillium,rhizopus から選択される菌を有し、
枯草菌として
アミラーゼやプロテアーゼの生産菌であるbacillus subtilis から選択される菌を有し、
乳酸菌として
Lactobacillus Plantarumから選択される菌を有する
請求項1の有機廃棄物の処理システム。
【請求項3】
前記細菌群は、下記の種から選択される10種以上、好ましくは20種以上、特に全種を含有する請求項1または2の有機廃棄物の処理システム。
Candida albicans TAX5476
Endomycopsis burtonii
Nocardia asteroides
Bacillus subtillis
Pseudomonas bacterium Rhizobium
Aspergillus niger TAX5061
Rhodospillum rubrum IFO3986
Rhodopseudomonas capsulata
Rhodobacter sphaeroides IFO12203
Chromatium vinosum
Streptomyces albus IFO3710
strepto verticillussp ATCC23654
Nocordia asteroides ATCC19247
Micromonospora chalcea IFO13503
Aspergillus oryzae IFO5770
Mucor hiemalis IFO8567
Saccharomyces cerevisial IFO1346
Candida utilis IFO0619
Lactobacillus Plantarum IFO3070
Pediococcus Halophilus IFO12172
Streptococcus Lactis IFO12007
Streptococcus Faecalis IFO3971
Arthrobacter sp.w 1〜6.
Pseudomonas aeruginosa
Corynebacterium sp.
Comamonas acidovorans
C.acidovorans. TB-35
Pseudomonas glumae
Pseudomonas gladioli
Pseudomonas avenae
Agrobacterium mochiganens
Pseudomonas solanacearum
Pseudomonas fluorescein
Aspergillus flavus
Aspergillus fumigatus
Aspergillus versicolor
Aspergillus penicillioides
【請求項4】
処理前の有機廃棄物に含まれるカドミウム、水銀、砒素の1種または2種以上を含む水溶性の重金属成分の少なくとも一部を、非水溶性(不溶性)に変えて、無害化する請求項1〜3のいずれかの有機廃棄物処理システム。
【請求項5】
前記母材と撹拌装置を有するプール状の発酵槽とを有し、
廃棄物は、10mm以下に処理された後、発酵槽に投入されて発酵作用により分解して減容する請求項1〜4のいずれかの有機廃棄物処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−319860(P2007−319860A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227582(P2007−227582)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【分割の表示】特願2004−359689(P2004−359689)の分割
【原出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(504456802)
【Fターム(参考)】