説明

有機廃棄物処理装置及び方法

【課題】 有機廃棄物を循環させながら処理するには、複数の収容容器を無端状に連結する必要があり、連結した収容容器の始端と終端はコンベアなどの搬送装置で連結されている。しかも、収容容器の数を増減すると始端と終端の距離が変わるため、これに対応した搬送装置を設ける必要が生じる。
【解決手段】 内部に攪拌しながら移送する移送装置を備え一側の両端側に排出部と受容部を設けた樋状の収容容器を4本以上の偶数本で移送方向を交互にして水平方向に並列させ、投入した有機廃棄物を順次他の収容容器に移送して処理する方法であって、両端に配した2本の外収容容器の内側に配する複数の内収容容器を他側のほぼ中央部に排受部を設けた構造とし、有機廃棄物を排受部同士が対向する内収容容器、排出部と受容部が対向する内収容容器と外収容容器のいずれかに移送して複数の収容容器内で循環させながら処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物によって生ゴミ、畜糞、汚泥などを処理する有機廃棄物処理装置及び方法の改良に関するものである。

【背景技術】
【0002】
近時、各地方自治体のゴミ処理能力の問題から一般家庭のみならず飲食業、養鶏・養豚業など工業用として生ゴミの処理を可能とした生ゴミ処理装置が普及している。生ゴミ等の有機廃棄物の処理装置としては、有機廃棄物を肥料として再利用できるようにするものや、微生物によって有機廃棄物のほとんどを消滅させるようにしたものがある。この内、微生物を利用した有機廃棄物の処理装置は、近年生物工学の発展によって微生物が手軽に入手できるようになり、家電メーカーなどから種々の装置が販売されている。
【0003】
特に、生ゴミを処理する場合においては、投入したほとんどの生ゴミが微生物によって分解されるため、手間がかからず手軽に導入できる利点がある。この方式の処理装置は、マンションなどの集合住宅や住宅地に近接している飲食店などに有用である他、大型化も可能であることから工業用や業務用としても利用されている。また、微生物処理においては、タンパク質やセルロースなどを分解する土壌微生物等を保持させるための担体として、木屑、木粉或いはピートモス等の分解媒体材を生ゴミ収容容器に充填する。この分解媒体材を微生物の発酵床として、生ゴミの発酵分解によって処理が行われる。生ゴミを順次投入して処理を行わせるが、処理後の分解媒体材の全部若しくは一部を肥料として流用することも可能である。
【0004】
微生物を利用した生ゴミ処理装置としては、特許文献1に示す本発明者が開発した処理装置がある。この処理装置は、複数の生ゴミ収納容器を無端状に連結することにより、生ゴミ収納容器内で生ゴミを循環させながら処理する方法である。生ゴミの循環処理は、生ゴミを連続的に処理できることや、処理量に応じて収納容器を増減したり稼働数だけを増減できることに大きな効果がある。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−233802
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生ゴミなどの有機廃棄物を複数の収容容器を連結して循環させながら処理する方法においては、処理量に応じて収容容器の数や稼働数を増減することで無駄がなく効率的な処理が可能となる。
しかしながら、有機廃棄物を循環させながら処理するには、複数の収容容器を無端状に連結する必要があり、連結した収容容器の始端と終端はコンベアなどの搬送装置で連結されている。しかも、収容容器の数を増減すると始端と終端の距離が変わるため、これに対応した搬送装置を設ける必要が生じる。
【0007】
また、稼働数を増減するには、稼働させる収容容器だけを短絡させて連結するが、収容容器同士を短絡させて連結するための連結部材として、収容容器と同様に内部に移送装置を備えた構造でなければ、スムーズな循環処理が行えなくなってしまう。
これらのことは、収容容器を水平方向と垂直方向にそれぞれ複数連結した立体的な配置の場合は、始端と終端の距離を一定にして収容容器の数を増減でき、連結部材の一端を付け替えるだけで短絡させることも可能となる。しかし、ほとんどの場合収容容器は水平方向に複数並べて循環させているため、上述したように収容容器の始端と終端の距離が変化したり、比較的長い連結部材が必要となる。

【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は上記課題に鑑み鋭意研究した結果、本発明を成し得たものであり、その特徴とするところは、方法の発明にあっては、微生物によって有機廃棄物を分解処理させる方法において、内部に攪拌しながら移送する移送装置を備え一側の両端側に排出部と受容部を設けた樋状の収容容器を4本以上の偶数本で移送方向を交互にして水平方向に並列させ、投入した有機廃棄物を順次他の収容容器に移送して処理する方法であって、両端に配した2本の外収容容器の内側に配する複数の内収容容器を他側のほぼ中央部に排受部を設けた構造とし、有機廃棄物を排受部同士が対向する内収容容器、排出部と受容部が対向する内収容容器と外収容容器のいずれかに移送して複数の収容容器内で循環させながら処理すること。
【0009】
物の発明にあっては、微生物によって有機廃棄物を分解処理させる処理装置において、内部に攪拌しながら移送する移送装置を備え一側の両端側に排出部と受容部を設けた樋状の収容容器を4本以上の偶数本で移送方向を交互にして並列させ、投入した有機廃棄物を順次他の収容容器に移送して循環させながら処理する装置であって、両端に配した2本の外収容容器と、その内側に配する複数の内収容容器とによって構成し、該内収容容器は他側のほぼ中央部に排受部を設け、排受部同士が対向する状態で内収容容器同士を、排出部と受容部が対向する状態で内収容容器と外収容容器のいずれかを隣接させて配したことにある。
【0010】
本明細書中でいう収容容器とは、有機廃棄物を収容させるための筒状や樋状容器であり、内部に移送装置を備えた容器をいう。この収容容器内で有機廃棄物と微生物を担持させた分解媒体材を混合攪拌させて有機廃棄物の処理を行う。本発明においては、これらの収容物を移送装置で攪拌しながら移送させる。収容容器の形状は、一般的に底部を半円状にして移送装置の攪拌翼等の回転に沿わせるようにするが、底面を平面にしたり傾斜面を設けた形状としてもよい。材質は、プラスチックやステンレス鋼など腐食しにくいものが好ましい。分解媒体材とは、土壌微生物等を保持させるための担体であり、木屑、木粉或いはピートモス等の他、あまり水分を含まない活性炭、ゼオライト粒、セラミックボール、天然鉱石、籾殻などである。
【0011】
収容容器の構造としては、上部が開放された樋状部分があればよく、周面が密閉された内部空間を形成する円筒や角筒などの筒状容器でもよい。また、微生物による有機廃棄物の処理が進んだときに生じる粉状のダストや水分を排出させるために、底部に貫通孔を備えた容器を一部併用してもよい。貫通孔を備えた容器としては、例えばパンチングメタルや金属製のネットなどで形成する。プラスチックの場合は、パンチングしたり成型時に多数の孔を穿設させるようにする。水分を排出させるための貫通孔を備えた収容容器の下方部には、排水受けを設け水処理装置などで処理してから放流する。筒状容器の場合には、上面に貫通孔などの開放部分を設けたり、両端部分にそれぞれ空気流入部と空気排出部や、ファンなどを設けて酸素の供給や蒸気抜きさせるのが好ましい。
【0012】
収容容器は複数連結して収容物を循環させながら処理する。収容容器の配置は、基本的に収容容器の周面同士が隣り合うように水平方向にほぼ並行に並べる。複数配設した収容容器の稼働数を増減させることにより、有機廃棄物の処理量に容易に対応させることができ、効率的な処理を行うことが可能となる。稼働数の増減とは、収容容器自体の数を増減する他、その数を変えずに実際に稼働させる数を増減させることをいう。
【0013】
本発明においては、外収容容器と内収容容器によって構成し、移送方向を交互に水平方向に並列させる。外収容容器は複数配設した収容容器の両端に位置する2本の収容容器であり、一側の両端側に排出部と受容部を設けた構造のものをいう。内収容容器は、外収容容器の内側に配する偶数本の収容容器であり、一側の両端側に排出部と受容部を設けると共に他側のほぼ中央部に排受部を設けた構造である。これらの収容容器は、排受部同士と、排出部と受容部を連結することによって有機廃棄物を循環移送させる。
【0014】
つまり、排受部は移送装置の攪拌翼の羽根の向きを変えることによって、有機廃棄物を隣接する収容容器に送り込む箇所であり、排受部同士を連結することにより、排受部で隣の内収容容器に移して排出部方向に移送する。収容容器に設ける移送装置は、収容した有機廃棄物を一方向に送る構造であるが、内収容容器の移送装置は排受部の排出部分に位置する攪拌翼の羽根の向きを逆にしたり側方に送り出すように変えることで隣接する排受部の受容部分に有機廃棄物を送り出す。これにより、収容容器内における有機廃棄物の循環行程は、一端の外収容容器の排出部から偶数本並べた内収容容器のそれぞれの約半分をジグザグに移行する。そして、他端の外収容容器の受容部から排出部を経由して内収容容器の他の約半分をジグザグに移行しながら元の外収容容器の受容部に入って循環する。
このため、処理量に応じて内収容容器を2本単位で増減させることで、効率的な処理が可能となる。
【0015】
受容部、排出部、排受部は、収容容器の周面に設けた開口部であり、これらの開口部同士を連結して隣接する収容容器に送り込む、開口部同士の連結は、周囲をカバー部材で覆ったり、各開口部に接続フランジを設けてボルト等で連結する。排受部は、循環させる収容物の排出と受け入れを行う箇所であるが、これを一つの開口部で行わせてもよく、内収容容器の内部に排出を受け入れを仕切るための仕切板を設けてもよい。

【発明の効果】
【0016】
本発明に係る有機廃棄物処理装置及び方法は、別途コンベアなどの搬送装置を設けることなく、外収容容器と内収容容器とによって構成した複数水平方向に配設した収容容器だけで有機廃棄物を循環させながら処理でき、微生物処理による環境を安定させることができる。また、内収容容器を2本単位で増減させれば、収納物を循環させることができるため、処理量の変動にも容易に対処することが可能となるなど、実用上極めて有益な効果を有するものである。

【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る有機廃棄物処理装置の一実施例を示す平面図である。(実施例1)
【図2】本発明に係る有機廃棄物処理装置における移送装置で収納物を循環移送させる状態を示す断面図である。
【図3】外収容容器から内収容容器に収容物を移送する状態を示す断面図である。
【図4】本発明に係る有機廃棄物処理装置の他の実施例を示す平面図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る有機廃棄物処理装置及び方法は、内部に攪拌しながら移送する移送装置を備え一側の両端側に排出部と受容部を設けた外収容容器と、該外収容容器の内側に、一側の両端側に排出部と受容部を設け他側のほぼ中央部に排受部を設けた内収容容器を偶数本配置し、移送方向を交互にして排受部同士及び排出部と受容部を連結して並列させたことにより、外収容容器と内収容容器だけで有機廃棄物を循環移送させながら処理させることで、上記課題を解決した。

【実施例1】
【0019】
図1は、本発明に係る有機廃棄物処理装置1の一実施例を示すもので、一側の両端側に排出部21と受容部22を設けた外収容容器2と、一側の両端側に排出部21と受容部22を設けると共に他側の中央部に排受部31を設けた内収容容器3とによって構成している。外収容容器2は両端に配し、その間に偶数本の内収容容器3を配する。外収容容器2と内収容容器3は、排出部21と受容部22同士を連結し、内収容容器3同士は排受部31同士を連結する。
【0020】
これにより、有機廃棄物と微生物を担持させた分解媒体材を混合攪拌させながら図の矢印のように循環させることができ、循環の過程で有機廃棄物が処理される。本例では、外収容容器2にホッパ4を設け有機廃棄物を定期的に投入させるようにしている。また、外収容容器2や内収容容器3には、処理過程で発生するダストの排出口や発酵処理した段階で得られる土壌改良材や堆肥などを回収するための取出口を設ける。本例に示す外収容容器2や内収容容器3は、直径がφ2000〜2500mm、長さが10000〜12000mmのステンレス鋼など金属製の円筒状である。
【0021】
連結した他の収容容器に収容物を送り出すには、図2に示すように各収容容器に設けた移送装置5の攪拌羽根51の向きを変えることによって行なう。本例では、排出羽根52を排出部21や排受部31の排出箇所に攪拌羽根51に変えて排出羽根52設けている。排出羽根52は羽根の向きを排出方向に向けた平板状としているが、攪拌羽根51と逆に捻った羽根でもよい。各収容容器の移送装置5は、チェーンなどで全体を同時に回転させてもよく、個別にモータを設けて個々に回転させるようにしてもよい。収容容器の移送装置5の回転を個々の制御することで、有機廃棄物の投入量や、収容容器内で循環している収容物の量に応じて任意に調整することができる。
【0022】
排出部21と受容部22は、図3のように収容容器のほぼ半円を切り欠いた開口部であり、幅は収容容器の径とほぼ同じ長さである。排受部31も同様で一つの開口部で排出と受け入れを行なうため、幅を約2倍の長さにしている。排出部21と受容部22、排受部31同士は、対向させた開口部を鉄板等で覆って連結している。連結部の底板は、図のように受け入れ側を高くしたスロープ6にすることで、収容物の逆流を軽減している。

【実施例2】
【0023】
本発明に係る有機廃棄物処理装置1や有機廃棄物処理方法においては、2本の外収容容器2とこれらの間に設ける偶数本の内収容容器3とによって構成したことから、別途コンベアなどを設けることなく収納物を循環させながら処理することが可能となる。このため、図4の鎖線で示す一対の内収容容器3を増減するだけで有機廃棄物の処理量や処理施設の規模に応じて対応することができる。

【符号の説明】
【0024】
1 有機廃棄物処理装置
2 外収容容器
21 排出部
22 受容部
3 内収容容器
31 排受部
4 ホッパ
5 移送装置
51 攪拌羽根
52 排出羽根
6 スロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物によって有機廃棄物を分解処理させる方法において、内部に攪拌しながら移送する移送装置を備え一側の両端側に排出部と受容部を設けた樋状の収容容器を4本以上の偶数本で移送方向を交互にして水平方向に並列させ、投入した有機廃棄物を順次他の収容容器に移送して処理する方法であって、両端に配した2本の外収容容器の内側に配する複数の内収容容器を他側のほぼ中央部に排受部を設けた構造とし、有機廃棄物を排受部同士が対向する内収容容器、排出部と受容部が対向する内収容容器と外収容容器のいずれかに移送して複数の収容容器内で循環させながら処理することを特徴とする有機廃棄物処理方法。
【請求項2】
排受部同士が対向して隣接する内収容容器間の移送は、排受部位置にある排出側移送装置の攪拌翼の向きを変えることによって行う請求項1記載の有機廃棄物処理方法。
【請求項3】
微生物によって有機廃棄物を分解処理させる処理装置において、内部に攪拌しながら移送する移送装置を備え一側の両端側に排出部と受容部を設けた樋状の収容容器を4本以上の偶数本で移送方向を交互にして水平方向に並列させ、投入した有機廃棄物を順次他の収容容器に移送して循環させながら処理する装置であって、両端に配した2本の外収容容器と、その内側に配する複数の内収容容器とによって構成し、該内収容容器は他側のほぼ中央部に排受部を設け、排受部同士が対向する状態で内収容容器同士を、排出部と受容部が対向する状態で内収容容器と外収容容器のいずれかを隣接させて配したことを特徴とする有機廃棄物処理装置。
【請求項4】
排受部同士が対向して隣接する内収容容器間の移送は、排受部位置にある排出側移送装置の攪拌翼の向きを変えることによって行う請求項3記載の有機廃棄物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−115719(P2011−115719A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275499(P2009−275499)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(593206171)
【Fターム(参考)】