説明

有機性廃棄物からのリン酸塩を除去しおよびカリウム濃度を抑制する、窒素肥料生産方法および装置

本発明は、液相における有機性廃棄物からリン酸塩を除去し、前記廃棄物を衛生化しまたは排出物質を低減させ、またカリウム濃度を抑える窒素肥料生産方法および装置に関する。本発明により、廃棄物は減圧において40℃と90℃の間の範囲にある温度まで加熱し、二酸化炭素およびアンモニアを含有する流出ガスを鉱物質−水性懸濁液と接触させ、過剰なガスを回路内に導く一方、減圧を自生的に安定化させており、そして生成された窒素肥料を排出する。リン酸肥料を追加的に生産し、カリウム濃度を抑えるため、得られた肥料生成物を液体および固体部分に分割し、固体部分の全部またはいくらかをストリッピング用受け器に再導入する一方、窒素化合物およびリン化合物を除去した液状廃棄物は冷却し、カリウム濃度を抑えるため少なくとも1種の硫酸塩含有化合物と混合する。場合によって、廃棄物の粘性を特に低下させ、これに塩基性鉱物質粉末の極めて少量を添加する。前記処理から得られた最終固体部分は、リン酸肥料、カリ肥料、またはリン酸塩含有およびカリウム含有配合肥料として直接使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱物質または有機添加剤を使用した熱処理により、それぞれリン酸塩を除去し、カリウム含量を抑え、ならびに廃棄物を衛生化し、排出物質を低減させるための、液相における有機性廃棄物からの窒素肥料生産方法および装置に関する。廃棄物は40℃と90℃の間の温度まで負圧下で加熱し、流出する二酸化炭素およびアンモニア含有ガスを冷却して、鉱物質および水性懸濁液に導入し、またはこのような懸濁液と接触させる。こうして生成された窒素肥料を取り出し、吸収されなかった、二酸化炭素を含有する過剰のガスは、回路内に導かれ、また工程の最初に真空ポンプによって生成させた負圧は、工程の進行により自生的に保持される。吸収されなかった、二酸化炭素を含有する過剰のガスは、ガス冷却系を経由して、処理される廃棄物の上流に通すことによるか、あるいはこれを分割して、1つの部分流は廃棄物中を通過させ、他の部分流は廃棄物上流に通すかのいずれかによって、回路内に戻している。
【背景技術】
【0002】
廃棄物が40℃と90℃の間の温度まで負圧下で加熱され、流出する二酸化炭素およびアンモニア含有ガスが冷却されて、水性吸収剤中に通され、またはこのような吸収剤と接触させられ、こうして生成された窒素肥料が取り出され、吸収されなかった、二酸化炭素を含有する過剰のガスが工程中に戻される一方、工程の最初に真空ポンプにより生成させた負圧が工程の進行により自生的に保持される、液相における有機性廃棄物から窒素肥料を生産するための、鉱物質または有機添加剤を使用して熱処理することにより廃棄物を衛生化し、また排出物質を低減させるための方法が知られている(PCT/EP2004/013034)。
【0003】
吸収されなかった、二酸化炭素を含有する過剰のガスは、これを
処理される廃棄物を通過させるか、または
処理される廃棄物の上流に直接導入するか、または
処理される廃棄物上方のガス冷却系を介するか、あるいは
これを分割して、1つの部分流は廃棄物中に導き、また
他の部分流は廃棄物上流に導入するか
いずれかにより通すことによって、回路内に再導入することができる。
【0004】
しかし、この方法にかけられる廃棄物の多くは、主としてリン酸の塩(リン酸塩)の形態において、リン化合物をも含有する。これらの物質は、処理された廃棄物を畑に施用した場合、有害な過剰施肥の原因となる恐れがあり、このため施用の前にこれらの物質を分離することが有用である。
【0005】
廃棄物からリン酸塩を分離することを可能にする数多くの方法がある。例えば、リン酸塩は、難溶性複化合物MgNHPO6HO(糞化石)としてアンモニアと一緒に沈殿させることができることが知られている。この方法では、マグネシウム化合物の添加、および細心に固執しなければならない沈殿条件の設定、特にpH値の調節を要する(DE3732896:廃水および処理水からアンモニアおよびリン酸塩を除去する方法、EP335280:アンモニウムイオンの高濃度を含有する廃水の浄化、特に連続的浄化方法)。
【0006】
しかし、これらの方法は、本発明の目標に合致するものではない。
【0007】
窒素のストリッピング(放散)過程において既に使用されているものではない物質を添加する必要がなくて、ストリッピング過程においてアンモニア態窒素のほかにリン酸化合物の少量が分離される方法は、これまで全く知られていない。
【0008】
同様に、有機性廃棄物中のカリウム化合物濃度を低値に抑えることができる方法は全く知られていない。カリウム塩の形で存在する最も単純なカリウム化合物は、水に易溶であり、しばしば極めて易溶でさえもあるため、カリウムの分離は非常に困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、一工程においてアンモニア態窒素と一緒に、リン化合物を分離すること、ならびに廃液のさらなる使用向けに許容できる値にカリウム塩の濃度を抑えることである。目的は、第一に、環境への害を心配する必要がなく農業および林業用途に使用することのできる、カリウム含量を抑えた低窒素および事実上無リンの廃液を得ることであり、第二に、販売できる製品として価値ある液状窒素肥料、ならびにリンを含有する、場合によって固体のカリウム含有肥料を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明により、それぞれDE10354063および102004053297またはPCT/EP2004/013034による方法において、固相および液相として槽内に形成される肥料生成物を、−追加的なリン酸肥料という目標を有して−固体および液体部分に分離して、固体部分の全部もしくは一部をストリッピング槽に戻し、また窒素およびリン化合物を除去した液状廃棄物は冷却し、場合によって二酸化炭素含有ガスで処理し、次いでこれを所望通りの用途に供することによって達成される。この工程が、バイオガス工程の一部である場合、液状廃棄物を一部、発酵装置または発酵槽に戻すことができる。
【0011】
驚くべきことに、この方法により可溶性リン酸塩がほとんど完全に沈殿される。このことは予想できなかった。何故なら、リン酸塩の化学的沈殿は、当技術分野の状況によると(Weiland,P.:Umweltvertraegliche Guelleaufbereitung und−verwertung[Environmentally compatible preparation and utilization of manure],KTBL−Arbeitspapier 272,Darmstadt 1999)、強アルカリ性環境においてのみうまく行くからである。これが石灰乳、すなわち僅水溶性強アルカリ性溶液Ca(OH)を使用するのが通例である理由である(Weiland,P.:Stand und Perspektive der Guelleaufbereitung.In:Umweltvertraegliche Guelleaufbereitung und−Verwertung,KTBL−Arbeitspapier 242,Darmstadt 1997)。
【0012】
当技術分野の状況によると、リン酸塩の沈殿は、pH値が上昇する結果として多量のアンモニアが放出される危険があるので、窒素を除去する工程ステップの後でのみ行うことができる。
【0013】
しかし、本発明は、槽内において形成され、固相および液相として存在する肥料生成物を、リン酸塩を除去するため固体および液体部分に分離すること;この固体部分は全部もしくは一部をストリッピング槽に戻し、また窒素およびリン化合物を除去した液状廃棄物は冷却し、場合によって二酸化炭素含有ガスで処理し、所望の通りに使用することを特徴とする方法に関する。
【0014】
本発明により、基本的に炭酸カルシウムCaCO、すなわち事実上水に不溶であり、僅アルカリ性の廃液中にはより一層不溶な中性反応性物質である、工程内で得られる石灰肥料を、主として沈殿剤として使用する。炭酸カルシウムは極めて溶解させ難いので、幾分より易水溶性のものがいくらかあるとしても、本発明者らはリン酸塩を沈殿させるのに炭酸カルシウムを使用することができるとは予想しなかった。
【0015】
主生成物の1つとしての石灰肥料を全部もしくは一部をストリッピング槽に戻すことにより、むしろアンモニア放散効果を増進することも、思いがけず見出された。
【0016】
他の改善およびアンモニア放散の有用な態様を、生石灰などのアルカリ性鉱物質粗粉の少量(処理される廃棄物の重量に対してほぼ0.01〜0.5重量パーセントで十分である。)を、戻される生成物、すなわち石灰肥料に添加することにより達成することができる。本方法のこの個別的ステップは、塩基性鉱物質粗粉0.01〜0.5重量パーセントが、ストリッピング槽に戻される生成物に添加されることをも特徴とする。
【0017】
鉱物質粗粉のより多量を添加することも可能であるが、これによりストリッピング工程の進み方が変化し、避けるべきである。
【0018】
本方法による改善において、廃棄物からアンモニア態窒素を分離するほかに全てのリン(リン酸塩)を事実上分離し、これを石灰肥料に変換するだけでなく、アンモニア分離度を向上させるため、比較的単純な方策を取っている。本発明による方法を使用して、リン酸塩含量は最初の値の<10%まで減少し、この減少は>90%の沈殿度に相当する。≧92%の沈殿度に相当する入力値の≦8%のリン酸塩濃度を達成することが好ましい。≧94%の沈殿度に相当する<6%のリン酸塩濃度を達成することが最も好ましい。
【0019】
1リットル当り1重量パーセントを超える増加したカリウム含量を有する廃液について、他の思いがけない効果が生じている。硫酸塩が同時に存在すると、沈殿した固体生成物が、著しいカリウム量を含有することが判明した。戻される石灰肥料(全部もしくは一部ストリッピング槽に戻される固体部分)に、硫酸塩を含有する化合物を、例えば石膏の形で添加すると、液体流出物中のカリウム濃度を、≧1重量%まで抑えることができる。この適用は、実施例4においてより詳細に記述される。
【0020】
本方法のこの個別的ステップは、カリウム含量を抑えるために、ストリッピング槽に全部もしくは一部戻される固体部分に、少なくとも1種の硫酸塩含有化合物が添加されることを特徴とする。
【0021】
硫酸塩含有化合物は、少なくとも1種の硫酸塩含有化合物中のカルシウムの、廃棄物中のカリウムに対するモル比が0.5〜3の範囲にあるように添加される。
【0022】
換言すると、本発明は、少なくとも1種の硫酸塩含有化合物が、少なくとも1種の硫酸塩含有化合物中のカルシウムの、廃棄物中のカリウムに対するモル比が0.5〜3の範囲にあるように添加されることを特徴とする方法に関する。
【0023】
硫酸塩含有化合物は、少なくとも1種の硫酸塩含有化合物中のカルシウムの、廃棄物中のカリウムに対するモル比が1〜2の範囲にあるように添加されることが好ましい。
【0024】
本方法のこの強調された特別な場合では、少なくとも1種の硫酸塩含有化合物が、少なくとも1種の硫酸塩含有化合物中のカルシウムの、廃棄物中のカリウムに対するモル比が1〜2の範囲にあるように添加されることをも特徴とする。
【0025】
カリウムの分離度は、Ca/Kモル比と共に上昇するが、この上昇は比が大きくなると緩やかになり、したがってCa/K比>3ではもはや改善をもたらさない。
【0026】
少なくとも1種の硫酸塩含有化合物を選択する立証された単純な解決策は、石膏を使用することである。
【0027】
本方法の好ましい実施形態は、少なくとも1種の硫酸塩含有化合物が石膏であることを特徴とする。
【0028】
本発明による方法によって沈殿する、有機成分が依然として付着している可能性がある最終固体部分が、優れた配合肥料となる。本発明の他の特徴は、それぞれリン酸肥料、カリ肥料、または配合カリおよびリン酸肥料、ならびにリン酸塩および/またはカリウム含有肥料としての、ストリッピング工程において得られる最終固体部分の使用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
液状廃棄物中のカリウム含量を抑える方法は、前述のストリッピング工程には依存していない。しかし、ほとんどもしくは全く窒素および/またはリン酸塩濃度を低減させる対象にならない廃液についても実施できる。この特別な場合、この方法はサイクルとして実施する必要はなく、負圧を適用する必要もない。カリウムに富んだ沈殿をもたらす応用例については、実施例5に、より詳細に記述している。
【0030】
本発明の特別な実施形態において、カリウム含量を抑える方策は、前述のストリッピング工程なしでさえも、またはこのような工程の後で、任意の液状廃棄物について実施することができる。
【0031】
部分的に非常に高い粘性を有する恐れがある、ストリッピング槽に導入する廃液を、低粘性の部分と、固形分に富んだ部分とに分離する(処理前に固体の部分を減らすことにより)ことによって、リン酸塩分離性を向上させることができる。低粘性部分が20mPa.s未満の動粘度を有する場合、本発明による効果を改善するのに有用である。
【0032】
したがって、本方法のこの個別的ステップは、液状廃棄物の粘性が、液状廃棄物の固体含量を減少させることによって、処理前に低下することを特徴とする。
【0033】
本発明の液状廃棄物が生のもしくは発酵した糞尿である場合、糞尿の動粘度は室温において最高40〜350mPa.sまでになる可能性がある。この液状廃棄物は、弧状篩、加圧ウォーム、または遠心分離機などの市販の分離装置を使用し、ほとんど技術的努力なしに低粘性部分と、固形分に富んだ部分とに分離することができる。低粘性廃棄物の粘度は、2〜7mPa.sまで容易に低下させることができ、本発明による効果については、<20mPa.sの粘度で十分である。使用される分離方法、および生廃棄物の性状によって、使用される廃棄物の5〜20体積パーセントが固体部分として残り、この固体部分の粘度は、通常、一般の粘度計の測定範囲を超える。
【0034】
したがって、本方法のこの個別的ステップは、液状廃棄物の粘性が、固体部分を分離することによって、<20mPa.sまで低下することを特徴とする。
【0035】
固形分に富む部分は、加工して堆肥とし、または他の用途に向けることができる。
【0036】
本方法の他の有用な実施形態は、ストリッピングした、僅かにアルカリ性の廃液中に含まれる固形分を分離すること、その後残留している液体生成物を、二酸化炭素含有ガスでpH値<8に達するまで処理すること、ならびにこうして処理した廃液の所望の部分を、発酵工程に戻すことを提供する。
【0037】
したがって、本方法の他の個別的ステップは、ストリッピングした僅かにアルカリ性の廃液中に含有される固形分を分離すること、残留した液体生成物を、二酸化炭素含有ガスで<8のpH値に達するまで処理すること、ならびにその後こうして処理した廃液の所望の部分を、発酵工程に戻すことを特徴とする。
【0038】
ストリッピング槽からのストリッピング済みの廃液は、他の分離装置を通過させて低粘性部分と、リン酸塩に富んだ最終固体部分とに分離し、最終固体部分はリン肥料として直接使用することができる。依然として施肥性状を有する僅かにカリウムを含有した液体部分は、畑に直接施用することができる。本発明の装置がバイオガスプラントである場合、この液体部分の一部を発酵装置に戻すことが有用であることも判明している。これにより、思いがけず、発酵基質の分解性が向上し、このためバイオガス槽からの廃液の粘性が低下し、下流のストリッピング工程を促進する。
【0039】
本発明は、適用において、バイオガス糞尿などの有機廃棄物に限定されず、他のアンモニアおよびリン酸塩含有廃棄物からリン酸塩負荷を分離するのに、または都市下水などのより高いカリウム濃度を有する廃棄物向けに使用することもできる。本適用により、強アルカリ溶液、ならびに高価な化学的沈殿剤および凝集剤を使用する必要性がなくなるので、本適用は有益である。
【0040】
窒素肥料を生産する装置は、主として次の構成部分:負圧下で加熱するためのストリッピング槽、不均一相における反応のための受入れ槽、熱交換のための蓄熱槽、真空ポンプ、加熱水ポンプ、循環ファンおよび撹拌機、ならびに上昇分離塔および下降冷却装置を有する追加的ガス冷却系、加えて種々の場所で循環ガスを場合によって導入することを可能にする追加的配管およびボール弁からなり、本発明により、本装置には、ストリッピング槽の上流および下流で液体および固体肥料生成物を分離する、また処理した廃棄物を発酵装置に戻す(上流のバイオガスプラントがある場合)、または固体肥料生成物を受入れ槽からストリッピング槽に戻す追加的な装置、ならびに他の添加剤を添加する装置が含まれる。
【0041】
本発明により、PCT/EP2004/013034による装置は、沈殿槽(分離装置24)までで終っている。硫酸アンモニウム水溶液は、ポンプ(26)に接続している出口(25)を経由して排出される。
【0042】
硫酸アンモニウム溶液をポンプ送りし終った後で得られた汚泥状生成物は、ポンプ(28)により配管(27)または他のコンベアを経由して、リン酸塩取り込み入口(29)からストリッピング槽(1)に全部または一部を導入する。
【0043】
場合によって、入口(30)を経由してアルカリ性添加剤を添加することができる。この添加剤は、次のストリッピング操作にかけられる廃棄物の一部の量と混ぜ合わせもしくは懸濁させるのが非常に有用である。
【0044】
このストリッピング操作の後、処理した廃棄物を、他の分離装置(31)中に排出し、出口(32a、b)を介して従来の方法により液相から固形分を分離する。
【0045】
必要な場合、ストリッピング槽(1)に供給される廃棄物を、入口(9a)を経由して(1)に導入する低粘性部分と、(9b)を経由して排出する高粘性部分とに分離するため、第3の分離装置(33)、を使用する。
【0046】
図1は、リン酸塩除去およびカリウム抑制のための追加的な構成部分(24〜33)を有する、窒素肥料生産装置(1〜23)全体を示す流れ図である。
【0047】
したがって、窒素肥料生産のための、リン酸塩除去および/またはカリウム含量抑制のための装置は、主要構成部分である負圧下で加熱するためのストリッピング槽(1)、不均一相における反応のための受入れ槽(2)、熱交換用蓄熱槽(3)、加熱水ポンプ(5)、循環ファン(6)および撹拌機(7)からなり、上昇分離塔(18)および下降冷却装置(19)の機能を有する追加的ガス冷却系、ならびに種々の場所で循環ガスを場合によって導入することを可能にする追加的配管およびボール弁を有しており、前記装置に、ストリッピング槽(1)の上流および下流で液体および固体肥料生成物を分離する、また処理した廃棄物を発酵装置に戻す(上流のバイオガスプラントがある場合)、または固体肥料生成物を受入れ槽からストリッピング槽に戻す追加的な装置(24)、(31)、および場合によって(33)、ならびに他の添加剤を添加する装置(30)が含まれることを特徴とする。
【0048】
本発明を、以下の実施例を参照してより詳細に説明しているが、しかしこれらの実施例に本発明を限定しているものではない。
【実施例1】
【0049】
(比較例)
それぞれDE10354063またはPCT/EP2004/013034に記載されている通りにストリッピング工程を実施している。4.8g/lのアンモニウム含量を有する糞尿排液250l(すなわちアンモニウム合計1.2kg)を、ストリッピング槽(1)に供給し、ストリッピング工程にかける。3.5kgの純粋硫酸カルシウムCaSO含有FGD石膏水性懸濁液を、受入れ槽(2)中に供給する。ストリッピング工程において、アンモニウム量900gに相当するアンモニア850gを放散除去し、また石膏と反応させて硫酸アンモニウム3.3kgおよび石灰肥料2.5kgとする(炭酸カルシウムCaCOに対して計算)。これは、槽(1)に供給したアンモニウム態窒素の75%のストリッピング度を意味する。
【0050】
さらに、受入れ槽(2)は、ストリッピング工程から来ている凝縮水、石膏スラリー化の水、および石膏の結晶水を合計してもたらされた水10kgを含む。石灰肥料のリン酸塩濃度は、検出限界未満である。工程に使用した糞尿排液はリン酸塩545mg/lを含有していた。ストリッピング工程において、水分の排出による再濃縮のため、リン含量は555mg/lまで僅かに増加した。
【実施例2】
【0051】
実施例1の通りにストリッピング工程を実施しているが、前回のバッチ方法においては受入れ槽(2)内に蓄積された石灰肥料は、ストリッピング槽(1)に戻された。受入れ槽に供給しているFGD石膏懸濁液は、CaSO 3.8kgを含有し、これが反応して石灰肥料2.7kgとなる(CaCOとして計算)。受入れ槽内に水溶液として硫酸アンモニウム3.5kgが蓄積され、80%のストリッピング度に相当する。
【0052】
生成した肥料混合物は、出口(23)を経由して沈殿槽(分離装置24)中に排出する。短い沈降時間の後、硫酸アンモニウム水溶液から固体石灰肥料が分離されており、固体石灰肥料は出口(25)を経由して通常の容器中に排出する。次のストリッピング操作において処理される廃棄物、例えば完全発酵バイオガス糞尿の少量を、入口(30)を経由して石灰肥料に添加して、石灰肥料をポンプ送り可能な汚泥としてスラリー化し、次いでポンプ(28)を使用しライン(27)を経由して槽(1)中に供給する。次のストリッピング操作の後、上記において記述した鉱物質添加剤を、処理した液体生成物から沈殿されたリン酸塩と一緒に、公知方法で分離する。
【0053】
(1)における糞尿中のリン酸塩濃度は、40mg/lに低下しており、40mg/lは92%の沈殿度を意味する。分離されたリン酸塩は、処理した糞尿排液から分離した石灰肥料中に全て含まれる。
【実施例3】
【0054】
沈殿槽(分離装置24)中に沈殿された石灰肥料にスラリー化過程を伴って生石灰0.5kgを添加し、上述のようにライン(27)を経由して槽(1)中に戻した点を除いて、実施例2の通りにストリッピング工程を実施している。
【0055】
20℃で95mPa.sの動粘度を有するバイオガスプラントからの糞尿排液280lを廃棄物として使用して、分離装置(33)を用い7mPa.sの粘度を有する低粘性糞尿250lが得られ、排出管9aを経由してストリッピング槽(1)中に導いた。この方策は、ストリッピング工程を3時間から2時間に短縮した。
【0056】
分離した固体部分は、堆肥化のため提供した。
【0057】
前貯蔵槽(1)に、FGD石膏3.9kg(純CaSOに対して計算)を投入した。収量は、石灰肥料2.8kg(CaCOに対して計算)、および水溶液として硫酸アンモニウム3.7kgであり、84%のストリッピング度を意味する。
【0058】
(1)における糞尿中のリン酸塩含量は、35mg/lに減少しており、94%の沈殿度を意味する。分離されたリン酸塩は、処理された糞尿排液から戻された石灰肥料中に全て含まれる。
【実施例4】
【0059】
FGD石膏の形として、沈殿槽(24)中に沈殿された石灰肥料に硫酸カルシウム(CaSOとして計算)10kgを添加し、次いで上述のように配管(27)を経由して槽(1)に戻した点を除いて、廃液250lを使用して実施例2の通りにストリッピング工程を実施している。使用した糞尿排液はリン酸塩945mg/lおよびカリウム23g/lを含有していた。添加したFGD石膏に対して計算したCa/Kモル比は0.5であった。
【0060】
記述した処理により、廃液についてリン酸塩含量は95%だけ、47mg/lまで減少し、カリウム含量は16g/lまで減少した。この差異量は、固体沈殿中に含まれている。
【実施例5】
【0061】
上記の実施例におけるように、1リットル当りカリウム20gを含有する液状廃棄物250lを使用した。通常の撹拌装置において、室温および標準圧力でこの廃液に、FGD石膏の形において硫酸カルシウム20kg(CaSOとして計算)を添加した。Ca/Kモル比は1.1であった。短い時間後、結晶化物が沈殿し、結晶化物は105℃で乾燥後30kgの重量であり、カリウム6.7重量%を含有していた。固体から分離した廃液は、1リットル当り11.9gの残留カリウム濃度を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】リン酸塩除去およびカリウム抑制のための追加的な構成部分(24〜33)を有する、窒素肥料生産装置(1〜23)全体を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0063】
1 負圧下で加熱するためのストリッピング槽
2 不均一相における反応のための受入れ槽
3 熱交換用蓄熱槽
4 真空ポンプ
5 加熱水ポンプ
6 循環ファン
7 撹拌機
8 熱交換器
9 取り込み廃液
9a 廃液、低粘性
9b 廃液、高粘性
10 加熱水出口
11 加熱水戻りライン
12 放散ガスライン
13 戻りガスライン
14 ボール弁
15 ボール弁
16 残渣出口
17 窒素肥料出口
18 冷却系の上昇部分(分離塔)
19 冷却系の下降部分(冷却装置)
20〜22 戻りガス用ボール弁
23 止め弁
24 分離装置
25 硫酸アンモニウム溶液用出口
26 ポンプ
27 戻りライン
28 ポンプ
29 それぞれリン酸塩取り込みおよびカリウム含量抑制のための入口
30 添加剤用入口
31 分離装置
32a 出口、液体生成物
32b 出口、固体生成物
33 必要な場合の分離装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸塩を除去するため、受入れ槽内において形成され、固体および液相として存在する肥料生成物を、液体および固体部分に分離すること、前記固体部分は全部もしくは一部をストリッピング槽に戻し、また窒素およびリン化合物を放散させた液状廃棄物は冷却し、所望通りの使用に供されること、ならびに/または前記液状廃棄物は、そのカリウム濃度を抑えるために、少なくとも1種の硫酸塩含有化合物と混合され、この方法で得られた沈殿を分離して、前記沈殿および残留する液体生成物の両方がいくつかのさらなる使用に供されることを特徴とする、廃棄物を40℃と90℃の間の温度まで負圧下で加熱し、流出する二酸化炭素およびアンモニア含有ガスを冷却して、それぞれ鉱物質−水性懸濁液に導入し、および/またはこのような懸濁液と接触させ、こうして生成された窒素肥料を取り出し、吸収されなかった、二酸化炭素を含有する過剰のガスは、回路内に導かれ、また工程の最初に真空ポンプによって発生させた負圧は、自生的に保持され、また吸収されなかった、二酸化物を含有する過剰のガスは、ガス冷却系を経由して、処理される廃棄物の上流に直接通すか、あるいはこれを分割して、1つの部分流は廃棄物中を通過させ、他の部分流は廃棄物上流に通すかのいずれかによって、回路内に戻している、鉱物質もしくは有機添加剤を使用した熱処理によりリン酸塩を除去し、また廃棄物を衛生化し、ならびに排出物質を低減させるための、液相における有機性廃棄物からの窒素肥料生産方法。
【請求項2】
熱処理の前に固形分含量を減少させることにより、液状廃棄物の粘度を低下させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固形分を分離することにより、液状廃棄物の粘度が<20mPa.sまで低下されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ストリッピング槽に戻る生成物に塩基性鉱物質粗粉0.01から0.5重量パーセントを添加することを特徴とする、請求項1から3に記載の方法。
【請求項5】
カリウム含量を抑えるために、ストリッピング槽に全部または一部戻される固体部分に、少なくとも1種の硫酸塩含有化合物が添加されることを特徴とする、請求項1から4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種の硫酸塩含有化合物が、少なくとも1種の硫酸塩含有化合物のカルシウムの、前記廃棄物中のカリウムに対するモル比が0.5から3の範囲内にあるように添加されることを特徴とする、請求項1から5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種の硫酸塩含有化合物が、少なくとも1種の硫酸塩含有化合物のカルシウムの、前記廃棄物中のカリウムに対するモル比が1から2の範囲内にあるように添加されることを特徴とする、請求項1から6に記載の方法。
【請求項8】
硫酸塩含有化合物が石膏であることを特徴とする、請求項1から7に記載の方法。
【請求項9】
カリウム含量を抑える方策が、上流のストリッピング工程なしで、またはこのような工程の後で、任意の液状廃棄物について実施されることを特徴とする、請求項1から8に記載の方法。
【請求項10】
窒素およびリン化合物を除去した液状廃棄物を、二酸化炭素含有ガスで処理することを特徴とする、請求項1から9に記載の方法。
【請求項11】
ストリッピングした、僅かにアルカリ性の廃液中に含まれる固形分を分離すること、残留している液体生成物を、二酸化炭素含有ガスでpH値<8に達するまで処理すること、ならびにこうして処理した廃液の所望の部分を、発酵工程に戻すことを特徴とする、請求項1から10に記載の方法。
【請求項12】
それぞれリン酸肥料、カリ肥料、または配合カリおよびリン酸肥料、ならびにリン酸塩および/またはカリウム含有肥料としての、ストリッピング工程から、請求項1から11に記載の方法を使用して得られる最終固体部分の使用。
【請求項13】
ストリッピング槽(1)の上流および下流で液体および固体肥料生成物を分離する、また処理した廃棄物を発酵装置に戻す、または固体肥料生成物を受入れ槽から前記ストリッピング槽に戻す追加的な装置(24)および(31)、ならびに他の添加剤を添加する装置(30)が含まれることを特徴とする、次のように主要構成部分である負圧下で加熱するためのストリッピング槽(1)、不均一相における反応のための受入れ槽(2)、熱交換用蓄熱槽(3)、加熱水ポンプ(5)、循環ファン(6)および撹拌機(7)からなり、上昇分離塔(18)および下降冷却装置(19)の機能を有する追加的ガス冷却系、ならびに種々の場所で循環ガスを場合によって導入することを可能にする追加的配管およびボール弁を有する、窒素肥料生産のための、リン酸塩除去および/またはカリウム濃度抑制のための装置。
【請求項14】
追加的な装置(33)を含むことを特徴とする、請求項13に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2008−534426(P2008−534426A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504647(P2008−504647)
【出願日】平成18年3月21日(2006.3.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002744
【国際公開番号】WO2006/105875
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(506168738)フエニツクス・ベタイリグングス・ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】