説明

有機性廃棄物の処理方法及びその処理装置

【課題】低コストで安定してメタン発酵を行うことができるとともにメタン発酵効率の高い有機性廃棄物の処理方法及びその処理装置を提供すること。
【解決手段】有機性廃棄物の可溶化と酸生成を酸生成槽3で行った後、酸生成後の処理液をメタン発酵槽20に供給してメタン発酵を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥、し尿、家畜排泄物、生ごみ等の有機性廃棄物の処理方法及びその処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理施設などの排水処理設備から大量に発生する汚泥や生物処理槽由来の余剰汚泥は脱水後、産業廃棄物として埋め立て処分したり、焼却処分している。しかし、焼却に伴う有害物質の発生や埋め立て処分地の確保の問題や悪臭の発生などから、環境負荷の少ない処理方法が求められている。これらの問題を解決するために、下水汚泥やし尿、家畜排泄物、生ごみ等の有機性廃棄物をメタン発酵処理し、発生したメタンガスをコジェネ発電に供するとともに、発酵槽から流出する消化汚泥を脱水工程で脱水したものをコンポスト化工程で肥料や固形燃料として回収して資源の有効利用を図っている。このメタン発酵工程は、環境意識の高まりとともに、再生可能な資源エネルギーである下水汚泥等をメタン発酵することの重要性が見直されて、メタン発酵の高効率化が検討されている。
【0003】
ところで、メタン発酵は、有機物が種々の微生物の作用によりメタンに変換される一連の過程をいい、段階的には、まず、固形有機物を炭水化物、アミノ酸などの水溶性低分子物質に分解する過程(可溶化過程)、さらに、この水溶性低分子物質を酢酸、酪酸、プロピオン酸などの低級脂肪酸にする過程(有機酸生成過程)、最後に、有機酸をメタンガスと二酸化炭素にする過程(狭義のメタン発酵過程)から構成されている。このメタン発酵過程を司る微生物は、可溶化と有機酸生成を司る酸生成菌とメタン発酵を司るメタン生成菌とからなる。酸生成菌は生物種が多様で活性能力の回復が早いが、メタン生成菌は生物種が少なく、pHなど環境条件の影響を受けて活性を失いやすいという菌体特性の差違がある。メタン生成菌が活性を失うと、その活性回復に時間がかかり、安定なメタン発酵が阻害される。
【0004】
例えば、生ごみなど可溶化と酸生成速度が速い有機性廃棄物において、可溶化と酸生成過程で大量に酢酸などの有機酸が生成して処理液のpHが4.5程度にまで低下すると、酸生成菌は一時的に活性を失うが、アルカリの投入などにより処理液のpHを7付近に戻すと酸生成菌は復活する。しかし、pHが4.5程度の処理液がそのままメタン発酵過程に大量に流入すると、メタン生成菌はまたたく間に活性を失ってメタン発酵が阻害される。
【0005】
一方、下水汚泥や家畜排泄物など可溶化と酸生成速度が遅い有機性廃棄物は、メタン生成のためのメタン発酵槽での滞留時間として長時間(約30日以上)が必要であり、大型のメタン発酵槽が必要とされる。
【0006】
例えば、この種のメタン発酵に関する技術が特許文献1ないし4に提案されている。
【0007】
特許文献1には、有機性廃棄物を破砕し、破砕した有機性廃棄物を調質槽にて加温しつつ撹拌混合して調質した後、その調質物をドラムスクリーンやスクリュープレスなどの固液分離手段により夾雑物と分離液に分離し、その分離液をメタン発酵する廃棄物処理方法が開示されている。
【0008】
特許文献2には、嫌気性消化槽を直列状に連通させて複数の消化処理区域に区分し、入口側に投入した有機性汚泥を出口側に向けて順次移動させつつ、可溶化、酸生成およびメタン発酵を行う有機性汚泥の嫌気性消化方法が開示されている。
【0009】
特許文献3には、生ごみを遠心型破砕分別機で粗破砕分別して生ごみ破砕物と夾雑物とに分別し、生ごみ破砕物を可溶化し、この可溶化処理物をスクリュープレスやスクリーンなどの固液分離装置で液状分と固形分に分離し、液状分をメタン発酵し、固形分を再資源化する有機性廃棄物のリサイクル方法が開示されている。
【0010】
特許文献4には、可溶化した有機性廃棄物を固液分離によって可溶化残渣と可溶化液状分に分け、可溶化残渣を水中での高圧水噴射によって破壊および可溶化し、この破壊可溶化物と可溶化液状分をメタン発酵する有機性廃棄物の処理方法が開示されている。
【特許文献1】特開平11−267623号公報
【特許文献2】特開2002−307098号公報
【特許文献3】特開2002−336825号公報
【特許文献4】特開2003−320356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示された方法では、調質物は固液分離手段で夾雑物と分離液に分離され、夾雑物は排出されるので、この夾雑物とともにメタン発酵に有効な物質が排出され、高いメタン発酵効率を得ることができない。
【0012】
特許文献2に開示された方法では、可溶化、酸生成およびメタン発酵を一つの嫌気性消化槽で行っているため、初段の可溶化と酸生成が過度に進行して槽内に大量の有機酸が蓄積した場合、メタン生成菌の活性が抑えられ、あるいはメタン生成菌が死滅し、後段のメタン発酵が行われず、装置を連続して運転することが困難になる。
【0013】
特許文献3に開示された方法では、固液分離後の固形分とともにメタン発酵に有効な物質が排出されるので、高いメタン発酵効率を得ることができない。また、複数の各処理区域に撹拌機を設ける必要があり、動力が多く必要である。
【0014】
特許文献4に開示された方法では、可溶化残渣を破壊および可溶化するための特別の装置が必要であり、高圧水を発生させるための動力コストが高くなる。
【0015】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、低コストで安定してメタン発酵を行うことができるとともにメタン発酵効率の高い有機性廃棄物の処理方法及びその処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明の有機性廃棄物の処理方法は、有機性廃棄物の可溶化、酸生成およびメタン発酵を順次行うことにより有機性廃棄物を処理する方法において、有機性廃棄物の可溶化と酸生成を酸生成槽で行った後、酸生成後の処理液をメタン発酵槽に供給してメタン発酵を行うことを特徴としている。
【0017】
また、本発明の有機性廃棄物の処理装置は、有機性廃棄物の可溶化、酸生成およびメタン発酵を順次行うことにより有機性廃棄物を処理する装置において、有機性廃棄物の可溶化と酸生成を行う酸生成槽に次いで、酸生成後の処理液のメタン発酵を行うメタン発酵槽を有することを特徴としている。
【0018】
本発明によれば、可溶化および酸生成と、メタン発酵とを別々の槽で行うことで、可溶化および酸生成を司る酸生成菌と、メタン発酵を司るメタン生成菌に対して、それぞれ好ましい環境条件を設定し、有機酸によるメタン発酵への影響を回避でき、それぞれ処理効率を向上することができる。可溶化および酸生成が終了した処理液をメタン発酵槽へ投入し、メタン発酵に適した環境条件でメタン発酵を行うことにより、メタン発酵槽での処理時間を短縮できる。その結果、メタン発酵槽を小型化することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば次のような効果がある。
(1)請求項1、5、7、10記載の発明によれば、可溶化および酸生成と、メタン発酵とを別々の槽で行うことで、有機酸によってメタン発酵を阻害されることがなく、メタン発酵に適した環境条件でメタン発酵を行うことにより、メタン発酵を効率的に行うことができる。また、メタン発酵槽での処理時間を短縮できるので、メタン発酵槽の小型化が可能である。
(2)酸生成槽にスクリーンがない場合、メタン発酵槽へ未可溶物が流入し、この未可溶物がメタン発酵槽内で必要な時間可溶化されることに伴って、メタン発酵槽でのメタン発酵時間が不足し、メタンガスの回収率が低下するという不都合がある。しかし、請求項2、8記載の発明によれば、このような不都合を回避することができる。また、未可溶物は可溶化されて有機酸となるまで酸生成槽に滞留するため、有機性廃棄物の分解効率を高く維持することができる。
【0020】
また、スクリーンで異物(例えば、スプーン、フォーク、王冠など)を捕捉することにより、特別な異物除去装置を設けることなく、異物混入による摩耗・詰まりなどの操業トラブルを回避することができる。
【0021】
さらに、スクリーンで有用な微生物を捕捉することにより、系外に微生物を流出させることなく、酸生成槽内の微生物濃度を高く維持し、酸生成効率を高くすることができる。
(3)請求項3記載の発明によれば、可溶化しにくい有機性廃棄物の酸生成槽内での滞留時間を長くすることにより、可溶化率を高めることができる。
(3)請求項4、9記載の発明によれば、メタン発酵後の処理液の一部および/または脱水装置で脱水した脱水汚泥の一部をメタン発酵槽に返送することにより、メタン発酵槽内のメタン生成菌の濃度(kg/m3)を高く維持することができる。メタン生成菌の濃度(kg/m3)が高いということは、単位容積当たりのメタン生成菌が多いということであり、メタン発酵槽の小型化を図ることが可能となる。
(4)請求項6、11記載の発明によれば、竪型のメタン発酵槽を二槽とした場合、メタン発酵槽に後続する設備(例えば、脱水装置)で操業上のトラブルが生じたとき、第二メタン発酵槽をバッファー設備(例えば、固液分離装置)として利用することで運転休止に至る事態を回避することができる。また、第一メタン発酵槽への未可溶物の流入などによる急激な有機酸の生成に伴うpHの低下があっても、第二メタン発酵槽があるので、メタン発酵への影響を抑えることができる。
(5)請求項5、10、12、13記載の発明によれば、処理液はプラグフロー(押し出し流れ)または完全混合槽列により、上流側から下流側に向けて逆流や乱流が起こることなく横型メタン発酵槽内を整然と流れる。そして、プラグフローや完全混合槽列は上流側の微生物濃度が下流側の微生物濃度に比べて高いという特徴を有している。一般的に、メタンの発酵反応は濃度の一次反応で近似されるので、上流側から下流側にかけて低くなる濃度勾配を有するプラグフローや完全混合槽列によれば、ほとんど濃度勾配がない完全混合型のメタン発酵処理方式に比べて反応が短時間で行われ、処理液のメタン発酵槽内の滞留時間を短くすることができるので、メタン発酵槽をコンパクトにできるという効果がある。
【0022】
また、処理液が整然と流れる結果、各処理区域内にメタン発酵に有用な微生物を保持し、微生物濃度を高く維持して微生物の槽内滞留時間を長くすることが可能である。その結果、難分解性有機物の分解を促進できるので、メタン発酵効率を向上することができる。
【0023】
また、微生物濃度が高い場合(例えば、メタン発酵槽内の微生物濃度が10%以上)、液−液接触の拡散が律速段階となり、プラグフローが形成されやすい。また、メタン発酵槽の微生物濃度が高い場合、次に説明するように、微生物の槽内滞留時間が長くなる。
【0024】
いま、メタン発酵槽の容積をV(m3)とし、メタン発酵槽に流入する有機酸の流量をQ(m3/hr)とし、メタン発酵槽内の被処理液の微生物濃度をSS(kg/m3)とし、メタン発酵槽から排出される処理液の微生物濃度をSSout(kg/m3)とし、微生物のメタン発酵槽内滞留時間をSRT(hr)とすれば、
SRT(hr)=〔V(m3)×SS(kg/m3)〕/〔Q(m3/hr)× SSout(kg/m3)〕となるので、メタン発酵槽内の被処理液の微生物濃度SS(kg/m3)が高い場合は、SRT(hr)が長くなる。
【0025】
従って、メタン発酵槽内の微生物濃度が高い場合、必ずしも隔壁を設けなくても、プラグフローが形成され、微生物の槽内滞留時間を長くすることができる。
(6)本発明によれば、異物の混入のない発酵残渣が得られるため、コンポスト化、炭化などにより、発酵残渣を問題なく有用資源として利用することができる。
【0026】
メタン発酵槽で生成したガスは、乾燥機、発電機、燃焼炉、炭化炉などの燃料として有効利用できる。さらに、それらの設備で燃焼後に排出される高温の排ガスは酸生成槽またはメタン発酵槽の処理液加温用の熱源として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、有機性廃棄物の可溶化と酸生成を酸生成槽で行い、酸生成後の処理液のメタン発酵をメタン発酵槽で行うことを特徴としているが、本発明の好ましい実施形態について説明する。
(1)処理対象としては、生ごみ、下水汚泥、家畜排泄物など各種有機性廃棄物を、単独でも混合物としても処理することができる。生ゴミのような可溶化および酸生成速度が速い有機性廃棄物と、下水汚泥や家畜排泄物のような可溶化および酸生成速度が遅い有機性廃棄物とを混合して処理することで、メタン発酵を阻害する原因となる急激な有機酸の生成を抑え、安定してメタン発酵を行うことができる。
(2)酸生成槽の処理液温度は、約40〜60℃の高温処理をするのが、酸生成を速やかに行うことができるので好ましい。また、酸生成槽における有機性廃棄物の滞留時間は、1日〜5日程度とすることができる。平均的には、酸生成槽における有機性廃棄物の滞留時間は2日ないし3日程度とすることが好ましい。
【0028】
酸生成槽内の可溶化を司る菌としては、例えば、バチルス菌、酸生成を司る菌としては、例えば、クロストリジウム菌を挙げることができる。
【0029】
酸生成槽においてこのような条件で有機性廃棄物を処理することで、有機性廃棄物から酢酸を主体とした有機酸が生成される。
【0030】
また、酸生成槽の底部に堆積したメタン発酵に適さないもの(スラッジ)は、所定の時間間隔で引き抜いて脱水等の処理を施した後、コンポスト化工程等に供するのが好ましい。この場合、スラッジの引き抜きタイミングを、酸生成槽に供給される有機性廃棄物の流量Q(m3/hr)と酸生成槽の容積V(m3)から決定される酸生成槽における有機性廃棄物の滞留時間H(=V/Q)よりも長い時間間隔とすることで、可溶化しにくい有機性廃棄物を可溶化し、可溶化率を高めることができるので好ましい。
(3)酸生成槽が処理液を排出する箇所にスクリーンを備えていることが好ましい。限定されるものではないが、バースクリーンや回転ドラムスクリーンや振動スクリーンやストレーナなどを使用することができる。スクリーンの目開き(開口部の大きさ)は、1〜30mm程度とすることが好ましい。1mm未満の目開きの場合、処理液のスムーズな排出が阻害されることがある。一方、30mmを超えると、未可溶物、異物、微生物などを捕捉することができない。スクリーンは、目詰まりを防止するために、高圧水ジェットまたは高圧ガス流による異物洗浄機構や機械的掻取手段による異物除去機構を備えていることが好ましい。
(4)メタン発酵槽は、プラグフローを実現しやすい横型が好ましい。メタン発酵槽内に処理液供給口側から処理液排出口側にかけて順次高さが低くなる複数の隔壁を設けることによって複数の処理区域に区分し、各処理区域内にメタン発酵に有用な微生物を保持し、微生物濃度を高く維持して微生物滞留時間を長くし、プラグフローを実現しやすい構造とすることが好ましい。なお、メタン発酵槽内の入口微生物濃度が比較的高い場合(約10%以上)、微生物の発酵槽内滞留時間が長くなり、プラグフローを実現しやすいので、必ずしも隔壁を設ける必要はない。
【0031】
また、横型のメタン発酵槽内に処理液供給口側から処理液排出口側にかけて、高さの高い高隔壁と高さの低い低隔壁とを交互に設けることによって複数の処理区域に区分し、且つ高隔壁の下端部の一部または全部を切り欠き、最初の処理区域に供給した処理液は、高隔壁の切り欠き部を通過した後に低隔壁を乗り越え、低隔壁を乗り越えた処理液は高隔壁の切り欠き部を通過するという動作を繰り返す完全混合槽列を形成することにより、上流側処理区域から下流側処理区域に向かって流れるようにしても、プラグフローと同じように、上流側から下流側にかけて低くなるような微生物の濃度勾配が形成される。その結果、メタン発酵反応が短時間で行われ、処理液のメタン発酵槽内の滞留時間を短くすることができ、メタン発酵槽をコンパクトにできるので好ましい。
【0032】
この場合、完全混合型のメタン発酵槽と4槽完全混合槽列型のメタン発酵槽と押し出し流れ型のメタン発酵槽について発酵槽内の必要滞留日数を比較するために、以下に示す一次反応式(単位時間当たりの有機性廃棄物の分解量は有機性廃棄物の濃度に直線的に比例するという関係を示す式)と物質収支式(単槽当たりの物質収支を示す式)の2つの式により、一般的でごく基本的な計算を行った。
(1)一次反応式:−(dC/dt)=k×C (Cは有機性廃棄物の濃度、kは反応速度定数)
(2)物質収支式:V(dC/dt)=Q×Cin−Q×C−V×k×C (Vは槽の容積(m3)、Qは有機性廃棄物の流量(m3/日)、Cinは各槽入口側の有機性廃棄物の濃度、Cとkの意味は一次反応式と同じ)
ここで、メタン発酵槽に入る有機性廃棄物の濃度C0を35000mg/liter、メタン発酵槽出口での処理目標とする有機性廃棄物の濃度C4を18000mg/liter、反応速度定数kを0.04(1/日)として計算を行うと、次の結果が得られた。
【0033】
完全混合型で処理を行う場合は、単位容積当たり単位時間当たりの反応速度は720mg/liter・日、必要な滞留日数は23.6日となった。
【0034】
4槽完全混合槽列型で処理を行う場合は、第1槽目の単位容積当たり単位時間当たりの反応速度は1186mg/liter・日、第2槽目の単位容積当たり単位時間当たりの反応速度は1004mg/liter・日、第3槽目の単位容積当たり単位時間当たりの反応速度は850mg/liter・日、第4槽目の単位容積当たり単位時間当たりの反応速度は720mg/liter・日、必要な滞留日数は18.1日となった。
【0035】
押し出し流れ型で処理を行う場合は、一次反応式を積分して、C=C0×exp(−kt)の式を得て算出すると、必要な滞留日数は16.6日となった。
【0036】
以上の計算結果から、押し出し流れ型のメタン発酵槽内滞留時間が最も短く、次いで、4槽完全混合槽列型が短く、完全混合型の滞留日数は押し出し流れ型に比べて1.4倍程度長くなることが分かる。滞留日数が短くてすむということは、メタン発酵槽をコンパクトにできるということを意味する。これは、押し出し流れ型や4槽完全混合槽列型では、メタン発酵槽の入口から出口にかけて低くなるような濃度勾配が形成されることで、入口側付近に、単位容積当たり単位時間当たりの反応速度が速いゾーンが形成されるためである。これらの試算結果は、C0やC4やkの値によっては、完全混合型を完全混合槽列型に変更することによるメタン発酵槽のコンパクト化の効果がさらに顕著になる場合がある。なお、押し出し流れ型は複数槽の完全混合槽列型の槽数が無限に大きくなったものと同義である。
【0037】
メタン発酵槽内の処理液流れ方向に沿って撹拌機を設けることが好ましい。このようにしてメタン発酵槽内の処理液を撹拌することにより、処理液とメタン生成菌との接触を良好にし、メタン発酵を促進することができる。また、複数の隔壁を有するものの撹拌機は1軸でよく、多くの動力を必要としない。
(5)メタン発酵槽は竪型にしてもよく、また竪型メタン発酵槽は1槽ないし2槽としてもよい。2槽とした場合、酸生成槽の操業条件の変動などにより、第一メタン発酵槽へ未可溶物が大量に流入して第一メタン発酵槽での急激な有機酸の生成によりpH低下が生じてメタン発酵が阻害されても、第二メタン発酵槽でメタン発酵を行うことができるという効果がある。また、メタン発酵槽に後続する設備(例えば、脱水装置)で操業上のトラブルが発生した場合、第二メタン発酵槽を固液分離装置として利用することにより、運転休止に至る事態を回避することができる。
(6)メタン発酵槽の処理液温度は、30〜40℃の中温でも、40〜60℃の高温でもよい。
【0038】
メタン発酵を司る菌としては、例えば、メタノバクテリア菌を挙げることができる。
【0039】
メタン発酵槽においてこのような条件で有機酸を処理することで、有機酸からメタンガスと二酸化炭素が生成される。
(7)酸生成槽およびメタン発酵槽内の処理液は直接的に加熱するか、または間接的に加熱することができる。その熱源としては、例えば、メタン発酵槽で生成したガスを各種設備の燃料として利用した後に排出される高温の排ガスで生成した蒸気や熱水を利用することができる。
【実施例1】
【0040】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において適宜変更と修正が可能である。
【0041】
図1は、本発明の有機性廃棄物の処理装置の一実施例の概略構成図である。1は経路2を経て供給される有機性廃棄物の中でメタン発酵に適さないもの(例えば、スプーン等の食器類のようなもの)を破砕して選別・除去するための破砕選別機で、破砕選別機1で発酵不適物を選別・除去された有機性廃棄物は経路4を酸生成槽3に供給される。酸生成槽3は、有機性廃棄物の可溶化と酸生成を行うために可溶化を司る菌と酸生成を司る菌を有し、適当な温度(約50℃)に保持されている。酸生成槽3内には、未可溶物の槽内保持、異物の除去および有用な微生物の槽内保持を目的とし、生成した有機酸を通過させる機能を有するスクリーン5が設置されている。酸生成槽3内には、槽内の有機性廃棄物を直接的に加熱するために、例えば、電気ヒータを内部に配置することもできるし、また、槽内の有機性廃棄物を間接的に加熱するために、酸生成槽3の外側に高温蒸気や熱水などの熱源を通入するためのジャケットを設けることもできる。経路2を経て供給される有機性廃棄物の例としては下水汚泥、生ごみ、家畜排泄物、紙類等を挙げることができる。
【0042】
スクリーン5の具体的な例としては、図2に示すようなバースクリーン6や図3に示すような回転ドラムスクリーン7を挙げることができる。図2のバースクリーン6は、被処理液体が左方から右方へ向かって流れる構造で、適当な間隔を設けて取り付けられて連続的に矢示8a方向に回転するレーキ8を有する複数本のバー9の間を有機性廃棄物が通過することによって固液分離を行う構造である。図3の回転ドラムスクリーン7は、細かなスリットを設けたドラム状のスクリーン10を回転させ、汚泥等の有機性廃棄物が流入口11から流出口12に向かって回転スクリーン10を通過する際、スクリーン10の表面に夾雑物13が付着することによって固液分離を行う構造である。
【0043】
14は固定スクリーンで、固定スクレーパ15aでスクリーン10の表面に付着した夾雑物13を掻き取り、掻き取った夾雑物を流入口11から流入する有機性廃棄物の流れに戻すことにより、酸生成槽内の微生物濃度を高く維持することができるとともに、後記するように、酸生成槽の底部に堆積したメタン発酵に適さないものの引き抜きタイミングを、酸生成槽に供給される有機性廃棄物の流量Q(m3/hr)と、酸生成槽の容積V(m3)とから決定される有機性廃棄物の槽内滞留時間H(hr)より長い時間間隔とすることによって、可溶化しにくい有機性廃棄物を酸生成槽内に長時間滞留させ、可溶化率を高めることができる。なお、基本的に固定スクレーパ15aによりスクリーン10上の夾雑物13が掻き取られるが、常時固定スクレーパ15aにより夾雑物13を掻き取るのではなく、一定の時間間隔で固定スクレーパ15aを夾雑物13から離し、このときは、固定スクレーパ15bに切り替えてスクリーン10上の夾雑物13を外部へ排出することが好ましい。というのは、メタン発酵に適さないものには、プラスチックなど水に浮きやすい軽量物も含まれることがあり、夾雑物として定期的に固定スクレーパ15bで引き抜いて排出できるからである。言うまでもないが、図2および図3に示す形式以外のスクリーンを使用することができる。
【0044】
スクリーンは目詰まりを防止するために、高圧水ジェットまたは高圧ガス流による異物洗浄機構や機械的掻取手段による異物除去機構を備えていることが好ましく、例えば、図4に示すような異物除去機構を使用することができる。図4において、レーキ16、16が取り付けられた油圧シリンダー17がロッド18に沿って両矢示方向に移動自在であり、レーキ16がバースクリーン19、19の間に差し込まれており、油圧シリンダー17が両矢示方向に往復運動をすることによってバースクリーン19、19の間に挟まった夾雑物が掻き取られ、スクリーンの閉塞を防止する構造である(複数本のバースクリーンが所定間隔を設けて紙面に平行な方向に取り付けられている)。
【0045】
図1において、20は酸生成槽3内の被処理液を撹拌するための撹拌機である。酸生成槽3の底部に堆積したメタン発酵に適さないもの(スラッジ)は経路21を経て引き抜かれ、脱水機22において脱水後排出され、所定の処理(例えば、コンポスト化)が施される。経路21からのスラッジの引き抜きタイミングは、生成槽3に供給される有機性廃棄物の流量Q(m3/hr)と、酸生成槽3の容積V(m3)とから決定される有機性廃棄物の槽内滞留時間H(=V/Q)より長い時間間隔とすることによって、可溶化しにくい有機性廃棄物を酸生成槽3内に長時間滞留させ、可溶化率を高めることができる。
【0046】
酸生成槽3において可溶化および酸生成反応が進行することによって槽内で生成した二酸化炭素を主とするガスは頂部から経路23を経て排出される。
【0047】
図1において、酸生成槽3における有機性廃棄物の可溶化および酸生成によって得られる有機酸はスクリーン5を通過し、経路24を経て横型のメタン発酵槽25に供給される。メタン発酵槽25はメタン発酵を司る菌を有し、適当な温度(約30〜60℃)に保持されている。横型のメタン発酵槽25内には、処理液供給口側から処理液排出口側にかけて、高さの高い高隔壁26a、26bと高さの低い低隔壁27とを、26a、27、26bの順序で高隔壁と低隔壁と高隔壁を交互に設けることによって複数の処理区域28、29、30、31に区分し、且つ高隔壁26aと26bの下端部の一部または全部を切り欠くことによって、最初の処理区域28に供給した処理液は、矢示32に示すように切り欠き部を通過して処理区域29内を矢示33に示すように上昇し、次に、低隔壁27を乗り越えて処理区域30を下降し、さらに、矢示34に示すように切り欠き部を通過して処理区域31内に達し、やがて、供給口側より低い排出口側から経路35を経て排出される。
【0048】
このようにして、メタン発酵槽25に供給された有機酸は上流側処理区域から下流側処理区域に向かって、下降流から上昇流、上昇流から下降流となって流れる完全混合槽列が形成されるので、上流側から下流側にかけて低くなるような微生物の濃度勾配が得られる。一般的に、メタンの発酵反応は濃度の一次反応で近似されるので、上流側から下流側にかけて低くなる濃度勾配が形成されることによって、ほとんど濃度勾配がない完全混合型のメタン発酵処理方式に比べて、上記したように反応時間が短縮され、処理液のメタン発酵槽内の滞留時間を短くすることができ、メタン発酵槽をコンパクトにできるという効果がある。
【0049】
この場合、処理液供給口側から処理液排出口側にかけて、低隔壁、高隔壁、低隔壁の順に設けることもできる。また、メタン発酵槽25内には、槽内の処理液を直接的に加熱するために、例えば、電気ヒータを内部に配置することもできるし、また、槽内の処理液を間接的に加熱するために、メタン発酵槽25の外側に高温蒸気や熱水などの熱源を通入するためのジャケットを設けることもできる。
【0050】
図1において、36は撹拌機の回転軸であり、螺旋形状の羽根その他公知の形状の撹拌羽根37を回転軸36に取り付けて槽内の処理液を撹拌することができる。この場合、隔壁26a、27、26bは回転軸36の中間軸受を兼ねることができるので、回転軸のたわみを防ぐことができる。
【0051】
図1において、メタン発酵槽25から排出される処理液(汚泥)の一部または全部は経路35を経て排出され、脱水機38で脱水される。一方、メタン発酵槽25から排出される処理液の一部は経路40、41を経てメタン発酵槽25の入口に返送される。また、脱水汚泥の一部は経路42、41を経てメタン発酵槽25の入口に返送される。このように、メタン発酵後の処理液の一部と脱水汚泥の一部を返送することで、メタン発酵槽25内のメタン生成菌の濃度を高く保持することができる。また、脱水汚泥の一部は経路39を経て排出され、コンポスト化、炭化など資源化処理され、脱水機38で脱水処理の結果得られる液は後続する排水処理工程へ送られる。
【0052】
横型メタン発酵槽の一例の具体的な構造は図5に示すとおりである。図5において、投入口51からメタン発酵槽52内に投入された有機酸は、メタン生成菌の作用によりメタンガスと二酸化炭素にガス化されて頂部の排出口53から排出されるとともに底部の排出口54からは汚泥が排出される。55が撹拌機の回転軸、56が撹拌羽根である。排出口53から排出されたガスは、乾燥機、発電機、燃焼炉、炭化炉などの燃料として有効利用できる。
【実施例2】
【0053】
図6は、本発明の有機性廃棄物の処理装置の別の実施例の概略構成図である。図1と共通する構成部分には同一参照符号を付して説明を省略する。このメタン発酵槽61内には、処理液供給口側から処理液排出口側にかけて順次高さが低くなる複数の隔壁62、63、64が設置されている。このようにして、順次高さが低くなる隔壁で仕切ることによって、供給口から排出口に向かって液体が押し出されるようなプラグフローが形成され、各処理区域65、66、67、68内に有用な微生物(メタン生成菌)を保持し、微生物濃度を高く維持して微生物の槽内滞留時間を長くするとともに、上流側から下流側にかけて低くなるような微生物の濃度勾配が得られる。このように上流側から下流側にかけて低くなる濃度勾配が形成されることによって、完全混合槽列の場合と同じように、ほとんど濃度勾配がない完全混合型のメタン発酵処理方式に比べて、上記したように反応時間が短縮され、処理液のメタン発酵槽内の滞留時間を短くすることができ、メタン発酵槽をコンパクトにできるという効果がある。
【実施例3】
【0054】
図7は、本発明の有機性廃棄物の処理装置のさらに別の実施例の概略構成図である。図1と共通する構成部分には同一参照符号を付して説明を省略する。本実施例は、メタン発酵槽が竪型の第一メタン発酵槽71と竪型の第二メタン発酵槽72の二槽から構成されている点が図1の処理装置との違いである。第一メタン発酵槽71で生成したガスは頂部から経路73を経て排出され、処理液は経路74を経て排出される。第二メタン発酵槽72で生成したガスは頂部から経路75を経て排出され、処理液は経路76を経て排出される。第一メタン発酵槽71と第二メタン発酵槽72内の処理液を撹拌する方式としては、吹き込みガスで対流を形成することによるガス撹拌式でも、撹拌機による強制的な機械撹拌式でもよい。
【実施例4】
【0055】
次に、実際に有機性廃棄物を使用してメタン発酵試験を行ったので、順次説明する。
(1)試験装置
図8に示す試験装置を使用した。300mL(ミリリットル)のフラスコ81内に被処理液と種汚泥82を投入し、50℃の恒温振とう器83内でフラスコ81を振とうして嫌気性処理を行った。発生ガスは、経路84を経て回収した。フラスコ81は複数個使用し、所定時間ごとに当該フラスコを取り出して固形分濃度や酢酸濃度を分析した。なお、試験開始時には、すべてのフラスコ81の内部はN2ガスに置換した。
(2)試験条件
基質原料としては、生ごみ、下水汚泥、家畜排泄物、紙ごみを用いた。各基質原料に水を添加して全固形分(TS)濃度を約4.5重量%に調製して処理液を作製した。各処理液約80mLに種汚泥約140mLを加え、F/M比(種汚泥中の揮発性固形分(VS)に対する処理液中のVSの比)を0.3〜0.4kgVS/kgVSとして処理を行った。処理液は嫌気性条件下で50℃で120回/minの連続水平振とうにて72時間処理した。
(3)試験結果
可溶化と酸生成過程の指標として、TS濃度(重量%)の推移を図9に示し、酢酸濃度(mg/liter)の推移を図10に示す。メタン発酵過程の指標として、ガス発生量(liter/hr)の推移を図11に示す。
「生ごみ」 について
生ごみのTS濃度は試験開始後約12時間目までに急激に低下し、それに呼応するかのように、試験開始後約10〜15時間で酢酸濃度がピークに達している。約15時間目以降、酢酸濃度が低下しているのは生成された酢酸がメタン生成菌によりガス化したためと思われる。一方、ガス発生量は約10時間目以降、急激に増加している。
「下水汚泥」 について
下水汚泥のTS濃度と酢酸濃度は試験開始後約48時間目まであまり変化は見られず、約48時間目以降緩やかに低下している。一方、ガス発生量は試験開始後、緩やかに増加している。
「家畜排泄物」 について
家畜排泄物のTS濃度は緩やかに低下している。また、酢酸濃度は試験開始後約8時間目まで増加し、約8時間目以降緩やかに低下している。一方、ガス発生量は試験開始後、緩やかに増加しているが、約48時間目以降ガス発生量の増加代は大きくなっている。
「紙ごみ」 について
紙ごみのTS濃度は試験開始後約12時間目以降、減少している。酢酸濃度は、試験開始後約12時間目以降急激に増加し、約48時間目以降は減少に転じている。一方、ガス発生量は酢酸濃度が減少し始めた約48時間目以降、急激に増加している。
(4)試験結果のまとめ
「生ごみ」 について
生ごみの可溶化と酸生成は、下水汚泥や家畜排泄物や紙ごみに比べて速いことを確認した。酢酸濃度のピークが約10〜15時間であることを考えると、生ごみの可溶化と酸生成に必要な滞留時間は15時間程度であると思われる。また、72時間以降でもTS濃度が減少傾向にあるので、可溶化時間をさらに長くすることで、ガス回収量が増えるものと推測できる。
「下水汚泥」 について
下水汚泥については、試験開始後約48時間目以降、TS濃度と酢酸濃度は低下しているので、下水汚泥の可溶化と酸生成に必要な滞留時間は48時間程度であると思われる。また、72時間以降でもTS濃度が減少傾向にあるので、可溶化時間をさらに長くすることで、ガス回収量が増えるものと推測できる。
「家畜排泄物」 について
家畜排泄物については、試験開始後約48時間目以降のガス発生量の増加代が大きくなっているので、家畜排泄物の可溶化と酸生成に必要な滞留時間は48時間程度であると思われる。また、72時間以降でもTS濃度が減少傾向にあるので、可溶化時間をさらに長くすることで、ガス回収量が増えるものと推測できる。
「紙ごみ」 について
紙ごみについては、試験開始後約48時間目以降、酢酸濃度は急激に減少し、ガス発生量は試験開始後約48時間目以降、急激に増加しているので、紙ごみの可溶化と酸生成に必要な滞留時間は48時間程度であると思われる。また、72時間以降でも可溶化していないものが存在することが示唆されており、可溶化に必要な時間は通常の酸生成槽の滞留時間の2日ないし3日では不充分であると推測できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の有機性廃棄物の処理装置の一実施例の概略構成図である。
【図2】バースクリーンの一例を組み込んだ処理装置の一部を示す斜視図である。
【図3】回転ドラムスクリーンの一例の側断面図である。
【図4】スクリーンの異物除去機構の一例の側面図である。
【図5】メタン発酵槽の一例の一部切り欠き斜視図である。
【図6】本発明の有機性廃棄物の処理装置の別の実施例の概略構成図である。
【図7】本発明の有機性廃棄物の処理装置のさらに別の実施例の概略構成図である。
【図8】メタン発酵試験装置の概略構成図である。
【図9】メタン発酵試験の試験時間と全固形分(TS)濃度の関係を示す図である。
【図10】メタン発酵試験の試験時間と酢酸濃度の関係を示す図である。
【図11】メタン発酵試験の試験時間とガス発生量の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 破砕選別機
3 酸生成槽
5 スクリーン
6 バースクリーン
7 回転ドラムスクリーン
8 レーキ
9 バー
10 スクリーン
11 流入口
12 流出口
14 固定スクリーン
15a 固定スクレーパ
15b 固定スクレーパ
16 レーキ
17 油圧シリンダー
18 ロッド
19 バースクリーン
20 撹拌機
22 脱水機
25 メタン発酵槽
26a 高隔壁
26b 高隔壁
27 低隔壁
28 処理区域
29 処理区域
30 処理区域
31 処理区域
36 撹拌機の回転軸
37 撹拌羽根
38 脱水機
51 投入口
52 メタン発酵槽
53 頂部の排出口
54 底部の排出口
55 撹拌機の回転軸
56 撹拌羽根
61 メタン発酵槽
62 隔壁
63 隔壁
64 隔壁
65 処理区域
66 処理区域
67 処理区域
68 処理区域
71 竪型の第一メタン発酵槽
72 竪型の第二メタン発酵槽
81 フラスコ
82 被処理液と種汚泥
83 恒温振とう器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物の可溶化、酸生成およびメタン発酵を順次行うことにより有機性廃棄物を処理する方法において、有機性廃棄物の可溶化と酸生成を酸生成槽で行った後、酸生成後の処理液をメタン発酵槽に供給してメタン発酵を行うことを特徴とする有機性廃棄物の処理方法。
【請求項2】
酸生成槽がスクリーンを備えており、酸生成槽内の処理液中の固形物および浮遊物質を上記スクリーンで分離後にメタン発酵槽に供給することを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項3】
酸生成槽に供給される有機性廃棄物の流量をQ(m3/hr)とし、酸生成槽の容積をV(m3)とした場合、VをQで除することによって得られる酸生成槽における有機性廃棄物の滞留時間をH(hr)とした場合、スクリーンで分離されて酸生成槽の底部に堆積したスラッジを酸生成槽から引き抜くタイミングは、上記有機性廃棄物の滞留時間Hよりも長い時間間隔で行うことを特徴とする請求項2記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項4】
メタン発酵槽に後続して脱水装置を備え、メタン発酵後の処理液の一部または全部を脱水装置に供給し、メタン発酵後の処理液の一部および/または脱水装置で脱水した脱水汚泥の一部をメタン発酵槽に返送することを特徴とする請求項1、2または3記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項5】
酸生成後の処理液を横型のメタン発酵槽に供給することを特徴とする請求項1、2、3または4記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項6】
酸生成後の処理液を竪型のメタン発酵槽に供給し、この竪型のメタン発酵槽が1槽ないし2槽からなり、メタン発酵を第一メタン発酵槽および第二メタン発酵槽の少なくともいずれか一方の槽で行うことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項7】
有機性廃棄物の可溶化、酸生成およびメタン発酵を順次行うことにより有機性廃棄物を処理する装置において、有機性廃棄物の可溶化と酸生成を行う酸生成槽に次いで、酸生成後の処理液のメタン発酵を行うメタン発酵槽を有することを特徴とする有機性廃棄物の処理装置。
【請求項8】
酸生成槽がスクリーンを備えていることを特徴とする請求項7記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項9】
メタン発酵槽に後続して脱水装置を備え、メタン発酵後の処理液および/または脱水装置で脱水した脱水汚泥をメタン発酵槽に返送するために、メタン発酵槽および/または脱水装置からメタン発酵槽に達する液の返送経路を有していることを特徴とする請求項7または8記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項10】
メタン発酵槽を横型とすることを特徴とする請求項7、8または9記載の有機性廃棄物の処理装置
【請求項11】
メタン発酵槽が竪型で、この竪型メタン発酵槽が1槽ないし2槽からなることを特徴とする請求項7、8または9記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項12】
横型のメタン発酵槽内に処理液供給口側から処理液排出口側にかけて順次高さが低くなる複数の隔壁を設けることによって複数の処理区域に区分し、最初の処理区域に供給した処理液がプラグフローにより上流側処理区域から下流側処理区域に向かって流れるように構成したことを特徴とする請求項7、8、9または10記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項13】
横型のメタン発酵槽内に処理液供給口側から処理液排出口側にかけて、高さの高い高隔壁と高さの低い低隔壁とを交互に設けることによって複数の処理区域に区分し、且つ高隔壁の下端部の一部または全部を切り欠き、最初の処理区域に供給した処理液は、高隔壁の切り欠き部を通過した後に低隔壁を乗り越え、低隔壁を乗り越えた処理液は高隔壁の切り欠き部を通過するという動作を繰り返すことにより、上流側処理区域から下流側処理区域に向かって流れるように構成したことを特徴とする請求項7、8、9または10記載の有機性廃棄物の処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−21488(P2007−21488A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166882(P2006−166882)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】