説明

有機性廃棄物の処理方法及び装置

【課題】有機性廃棄物のメタン、水素等の有価資源ガス生成の前段階に要するアンモニア除去を、従来よりも、遙かに低い温度でしかも嫌気消化に関わる微生物群にダメージを加えることなく嫌気消化を継続しながら行うようにする。
【解決手段】嫌気消化槽1により、有機性廃棄物を嫌気消化し、嫌気消化により生じたガスを、ガス循環系装置100により槽内−槽外間で強制循環させる。ガス循環系装置100の配管途中には、槽外位置に設けられたアンモニア除去手段9及び二酸化炭素除去手段11及びを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糞尿、余剰汚泥、食物残渣、食品・発酵工業等から廃棄される有機性物質等、いわゆる有機性廃棄物の処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜や人の糞尿や、食物残渣、或いは下水処理場からの余剰汚泥等の有機性廃棄物は、有効利用のために、嫌気消化処理され、それにより、有機性廃棄物の減容化と同時に有価資源であるメタンガス或いは水素ガスの回収が行われている。また近年は、バイオエタノールの開発に伴いこれら発酵工業からより多量の有機性廃棄物の排出が見込まれている。嫌気消化処理に関しては、含窒有機性物質に含まれる窒素分からアンモニア生成され、これがメタン発酵を阻害する。すなわち、アンモニアは、メタン発酵に必要なメタン菌を死滅させる性質を有する。このメタン発酵の阻害は、アンモニア濃度が高くなるほど顕著になる。したがって、処理すべき有機性廃棄物の水分含量を低くすると、VS〔有機性廃棄物中の有機物濃度(重量%)〕が高くなり、高VSの尺度となる2重量%を越えると、アンモニア濃度が高まり、それにより、メタン発酵阻害が生じ、最悪の場合には、メタン生成が停止する。
【0003】
このため、通常、予め有機性廃棄物を粉砕し、多量の水で薄め、そのVSを1-0.5重量%まで低くして嫌気消化が行われている。一般に、低VSでメタン発酵が可能となるのは、嫌気消化により生成されるアンモニアが含有水で希釈されて阻害濃度に達しないためと解釈できる。
【0004】
それゆえ、含有水により低VS化(高含水化)を図るためには、有機性廃棄物の乾燥重量換算で、その重量の少なくとも50-200倍の容積の処理槽が必要となる。
【0005】
VSを高めるとより小さな処理槽での嫌気消化が可能となるが、上記のように並行的に生成されるアンモニアの濃度も高くなる。その濃度が0.3%(3,000ppm)を超えるとメタン生成阻害(メタン発酵阻害)が生じ、0.5%(5,000ppm)ではメタン生成が停止するので、高VSは、小さな処理槽でメタン生成を行う上での阻害要因となっている。
【0006】
嫌気消化でメタン発酵を阻害するアンモニアは、主にタンパク質の構成成分であるアミノ酸中の窒素に由来する。すなわち、嫌気消化に伴いアミノ酸は、有機酸とアンモニアに分かれる。このうち、有機酸はメタンと二酸化炭素に分解され消化ガスとして外部に取り出されるが、アンモニアはガス化温度及び水溶解性が高く培地に残り蓄積する。
【0007】
こうしたアンモニア蓄積によるメタン生成の阻害を回避する技術としては、例えば、元々遊離アンモニア濃度の高い家畜糞尿を、予めアルカリ下でアンモニア除去処理した後、固体成分と液体成分とに分離し、得られた固体成分に対しメタン発酵を行う方法が提案されている(特許文献1)。しかし、この方法は遊離しているアンモニアが除かれるだけで、固体成分中の含窒有機物であるタンパクやアミノ酸中のアンモニアが取り除かれるわけではない。したがって、この手法では、嫌気消化における全過程を通じてアンモニアを、メタン生成の阻害を実質上問題とならない程度に抑えることはできない。
【0008】
有機性廃棄物の嫌気消化処理の過程で発生するアンモニアを除去する方法として、嫌気消化処理後の汚泥、もしくはこれを固液分離した液に、ゼオライトあるいはリン酸塩及び/又はマグネシウム化合物を添加してアンモニアを除き、その後、処理対象物を処理槽に一部又は全部を返送する手法が提案されている(特許文献2)。
【0009】
あるいは嫌気処理槽内にゼオライト、無水リン酸マグネシウム、無水リン酸マグネシウムなどのアンモニア吸着剤を添加する方法が提案されている(特許文献3)。その添加量は処理溶液に対して0.01-5%と僅かな量ではあるが、処理物のVSも多くの場合1-5重量%と僅かなので、除去剤の添加は最終処理物量の増加を引き起こすだけでなく、除去剤の回収には更なる手数を要することは容易に推察される。
【0010】
また発酵槽の内容物の一部を別槽に移し、熱アルカリ処理を行いアンモニアをガス化して除去、これを再度発酵槽に戻す循環により槽内のアンモニアを除去する方法が提案されている(特許文献4)。しかし、熱アルカリ法によるアンモニアの除去には費用が嵩むだけでなくVSが5重量%を越えると処理物の流動性が低下しVS負荷が高まるほど実現性を欠く。
【0011】
VSが5重量%を越えた場合のアンモニアパージの方法として前処理段階でアンモニアを生成させた後、熱アルカリ処理によりアンモニアをガス化して除去する方法も提案されている(特許文献5)。しかしながら、その後の中和のための薬剤費や水分の蒸発に伴う熱ロスが発生し、処理費用が嵩むだけでなくエネルギー回収の観点からは採算性が低いなどの他に、鶏糞やタンパク性廃棄物など窒素含量の高い場合はアンモニア阻害により複数回の処理が必要となるなど問題がある。
【0012】
以上のようにこれらの先行技術は、処理物の含窒有機物から窒素をアンモニアとして脱離させその濃度をメタン生成が阻害されない濃度、即ち3,000ppm以下に低減するが、上記したような種々の改善すべき点、例えば有機性廃棄物を嫌気消化する工程において、薬剤費や熱コストが嵩む等の改善すべき点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−263097
【特許文献2】特開2001−47003
【特許文献3】特開2004−910
【特許文献4】特開2003−225697
【特許文献5】特開2005−324184
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、基本的には、有機性廃棄物からメタン、水素等の有価資源ガス生成の前段階に要するアンモニア除去を、従来より遙かに低い温度とpH、即ち嫌気消化が中断されない温度とpHで、可能とする有機性廃棄物の処理方法及び装置を提供することにある。さらには、本発明は、アンモニア除去操作に際して嫌気消化を中断させる必要がなくして、高VS化の嫌気消化槽にて、メタン生成を可能にし、ランニングコスト、即ち熱ロスや薬剤コストを抑え、より経済的で効率的な有機廃棄物の嫌気消化処理を可能にする有機性廃棄物の処理方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明は、基本的には、次のように構成される。
(1)まず、有機性廃棄物の処理方法として次のような処理方法を提案する。
【0016】
(i) 一つは、本願発明に係る基本的な発明であり、有機性廃棄物を嫌気消化する工程を有する有機性廃棄物の処理方法において、
前記嫌気消化工程において生じるアンモニア及び二酸化炭素を、外部から注入された嫌気性ガス及び/又は嫌気消化により生じる嫌気消化ガスをキャリアガスとして、嫌気消化槽の槽外に導き、槽外にて前記アンモニア及び二酸化炭素ガスを除去し、その後に前記キャリアガスの一部或いは全部を再び前記嫌気処理槽内に戻すガス循環工程を有することを特徴とする。
【0017】
前記ガス循環工程を継続的或いは断続的に繰り返すことにより、前記嫌気消化槽で生じるアンモニアによるメタン生成の阻害を軽減或いは回避することができる。
【0018】
さらに、前記(i)の方法の発明を基礎とした上で、次のような要素が含まれる従属的な処理方法に関する発明を提案する。
【0019】
(ii) 前記(i)の処理方法において、前記ガス循環工程における循環ガスは、嫌気消化槽内の有機性廃棄物の培地中に曝気させる形で戻す有機性廃棄物の処理方法。このようにすれば、アンモニア除去進行を高めることができる。
【0020】
(iii) 前記(i)または(ii)の処理方法において、前記有機性廃棄物を分解・酸生成処理して有機酸と前記アンモニアを生成する第1の嫌気処理工程と、前記第1の嫌気処理工程時に生じる前記アンモニア及び二酸化炭素を前記ガス循環により除去した後に、メタン生成処理により前記有機酸をメタンに変換する第2の嫌気処理工程とを有し、この第1、第2の嫌気処理工程が一つの前記嫌気消化槽を用いて行う有機性廃棄物の処理方法。
【0021】
(iv) 前記(iii)の処理方法において、前記嫌気消化槽で生成される前記アンモニアの濃度が設定レベル以下になると、或いは前記アンモニアの低減に伴い前記嫌気消化槽での有価資源ガスの濃度が設定レベル以上になると、前記ガス循環工程を中断して、前記嫌気消化槽でメタン生成及びその取り出しを行う工程を有する有機性廃棄物の処理方法。
【0022】
(v)前記(i)ないし(iv)のいずれか一つの処理方法において、前記ガス循環工程により前記嫌気消化槽に戻されるガスを、槽内に噴出させて、槽内処理物である前記有機性廃棄物を断続的に暴気することにより、界面更新と撹拌を促すガス循環を行う有機性廃棄物の処理方法。
【0023】
(vi) 前記(i)ないし(v)のいずれか一つの処理方法において、前記槽外で前記アンモニアを除去する手段が、中性或いは酸性化した液による洗浄、或いは吸着剤を用い、且つ前記槽外で前記二酸化炭素を除去する手段が、中性或いはアルカリ性化した液による洗浄、或るは吸着剤を用いる有機性廃棄物の処理方法。
(2)次に上記有機性廃棄物の処理方法を実施するために次のような処理装置を提案する。
【0024】
(vii) 本願発明に係る基本的な有機性廃棄物の処理装置は、有機性廃棄物を嫌気消化するために用いる嫌気消化槽と、前記嫌気消化槽にて行われる嫌気消化により生じたガスを、前記嫌気消化槽の槽内−槽外間で強制循環させるガス循環系装置と、前記ガス循環系装置の配管途中における槽外位置に設けられたアンモニア除去手段及び二酸化炭素除去手段と、を有することを特徴とする。
【0025】
さらに、上記の処理装置の発明を基礎とした上で、次のような要素を含む従属的な処理装置に関する発明を提案する。
【0026】
(viii) 前記(vii)の処理装置において、前記ガス循環系装置は、循環ガスを嫌気消化槽内の有機性廃棄物の培地中に曝気させる形で戻す構成を有する。
【0027】
(ix) 前記(vii)または(viii)の処理装置において、前記二酸化炭素除去手段が、中性或いはアルカリ性化した液を収容するガス洗浄装置、或いは吸着剤であり、前記アンモニア除去手段が、中性或いは酸性化した液を収容するガス洗浄装置、或いは吸着剤である。
【0028】
(x) 前記(viii)又は(ix)の処理装置において、前記ガス循環系装置の配管途中における槽外位置には、前記二酸化炭素除去手段及びアンモニア除去手段に加えて脱酸素剤を配置してなる。
【0029】
(xi) 前記(vii)ないし(x)のいずれか一つの処理装置において、前記嫌気消化槽で生成される前記アンモニアの濃度が設定レベル以下になると、或いは前記アンモニアの低減に伴い前記嫌気消化槽での有価資源ガスの濃度が設定レベル以上になると、前記ガス循環系装置によるガス循環を中断して前記嫌気消化槽にて生成促進される有価資源ガスを取り出す系に切り替わる構成を有して、同一の嫌気消化槽で前記アンモニアの除去と有価資源ガスの回収との切り替えを行うようにした。
【0030】
(xii) 前記(vii)ないし(xi)のいずれか一つの処理装置において、前記ガス循環系装置により前記嫌気消化槽に戻されるガスを槽内に噴出させるガス噴出手段を有し、このガス噴出により槽内処理物である前記有機性廃棄物を断続的に暴気することにより、界面更新と撹拌を促すよう構成を有する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、有機性廃棄物の嫌気消化槽の発生ガスを、槽内−槽外のガス循環とアンモニア除去及び二酸化炭素除去を行うことで、有機性廃棄物のメタン、水素等の有価資源ガス生成を阻害するアンモニア除去を、従来より遙かに低い温度で、しかも嫌気消化に関わる微生物群にダメージを加えることなく嫌気消化を継続しながら行うことができる。
【0032】
また、バクテリアを使用した有機性廃棄物の処理において、アンモニア生成・除去工程とメタン生成工程とを単一の嫌気消化槽によるシステムでの構築を可能にし、しかも高VS負荷での嫌気消化が可能となるので槽容積を従来法よりも飛躍的に小さくでき、従って、処理装置の設置面積やランニングコストの大幅な低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の原理的な実施形態を示す図。
【図2】本発明の実験例を示す図。
【図3】図2の実験例に用いた実験装置を用いて酸洗浄とアルカリ洗浄の両者を行った結果を示すグラフ図。
【図4】図2の実験装置を用いて酸洗浄のみを行った結果を示すグラフ図。
【図5】本発明の実施例に係わる具体的な装置例を示す図。
【図6】図5を用いて本発明で述べる無加水で鶏糞のアンモニア除去操作を行った実験データを示すグラフ図。
【図7】本発明の図5に基づく具体的な装置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態及び具体的な実施例について説明する。
【0035】
まず、有機性廃棄物を嫌気消化する工程を有する有機性廃棄物の処理方法において、基本的には、嫌気消化工程において生じるアンモニア及び二酸化炭素を、外部から注入された嫌気性ガス及び/又は嫌気消化により生じる嫌気消化ガスをキャリアガスとして、嫌気消化槽の槽外に導き、槽外にて前記アンモニア及び二酸化炭素ガスを除去し、その後に前記キャリアガスの一部或いは全部を再び前記嫌気処理槽内に戻すガス循環工程を繰り返し実行する。より効果的には、循環ガスは嫌気消化槽の内容物である培地中に曝気させる形で戻すことが好ましい。
【0036】
ここで、アンモニア及び二酸化炭素は、例えば、有機性廃棄物を分解・酸生成処理して有機酸とアンモニアを生成する嫌気処理工程時に生じる。さらに、実施形態は、アンモニア及び二酸化炭素を前記ガス循環により除去した嫌気処理工程(第1の嫌気処理工程)後に、メタン生成処理により前記有機酸をメタンに変換する第2の嫌気処理工程を行うものも含む。
【0037】
例えば、前記嫌気消化槽で生成される前記アンモニアの濃度が設定レベル以下になると、或いは前記アンモニアの低減に伴い前記嫌気消化槽での有価資源ガスの濃度が設定レベル以上になると、前記ガス循環工程を中断して、前記嫌気消化槽でメタン生成及びその取り出しを行う。この場合には、第1、第2の嫌気処理工程を一つの嫌気消化槽により行われるが、これに代わって第1の嫌気処理工程と第2の嫌気処理工程を別々の嫌気消化槽で行うことも可能である。
【0038】
嫌気消化工程では、酢酸生成菌や酪酸生成菌等により含窒有機物から酢酸などの有機酸の生成とアンモニアの遊離が行なわれ(分解・酸生成)、そして、メタン生成菌により、上記の有機酸のメタンへの変換が行われる(メタン生成)。これら一連の分解反応は混然と進行することも、酸・アンモニア生成とメタン生成の各過程を分けることも可能である。後者(すなわち、酸・アンモニア生成とメタン生成の各過程を分けることも可能である)は、従前は、難しいと考えられていたが、発明者らが有機性廃棄物として余剰汚泥を用い、その嫌気消化過程でのアンモニアの消長を詳細に検討したところ、酸・アンモニア生成の過程とメタン生成の過程とは分離できること、および発酵汚泥の一部を種汚泥として用いると高効率なアンモニア生成を行うことができることを新たに見いだしている(このことは、特開2005- 324184で述べられている)。
【0039】
ここで、「分離できる」とは、有機性廃棄物の嫌気消化過程において分解・酸生成が優先的に行われる過程とメタン生成が優先的に行われる過程とを分け得ることをいうが、嫌気消化の全過程としてみれば両過程が重複する場合があってもよい。
【0040】
アンモニアは、メタン生成菌を死滅させる性質を有するが、本発明によれば、高VSの下で且つ一つの嫌気消化槽で、アンモニア生成(第1の嫌気消化:分解・酸生成)とメタン生成(第2の嫌気消化)を行う場合であっても、メタン生成菌とアンモニア生成のための菌(酢酸生成菌、酪酸生成菌など)を共存させることが可能である。その理由は、ガス循環によりアンモニア除去を行う場合には、アンモニア除去が促進され、メタン生成菌にダメージを受ける前にアンモニア除去が可能になるためである。
【0041】
ここで、分解・酸生成菌やメタン生成菌は、周知なものが存在し、特に限定されるものではないが、例えば、前者は、Clostridium属、Bacteroides属、Butyrivibrio属、Fusobacterium属、Enterobacter属、Streptococcus属、Peptococcus属細菌等が好適に使用される。後者は、特に限定されるものではないが、例えば、Methanobacterium属、Methanococcus属、Methanosarcina属、Methanosaeta属、Methanogenium属、Methanospirillum属細菌等が好適に使用される。
【0042】
ここで、除去とは要するに搬出ガスからアンモニア並びに二酸化炭素を取り除くことを意味するものであればいかなるものでも良い。例えば、アンモニアを除去する手段は、中性或いは酸性化した液による洗浄、或いは吸着剤を用いることができる。吸着剤はアンモニアを吸着できればいかなるものでも良い。例えば、ゼオライト・活性炭・リン酸マグネシウムなどを用いることができる。また、二酸化炭素を除去する手段は、中性或いはアルカリ性化した液による洗浄、或いは吸着剤を用いることができる。吸着剤は二酸化炭素を吸着できればいかなるものでも良い。例えば、消石灰・水酸化バリウムなどを用いることができる。 一例を挙げれば、次のような処理法も提案する。
【0043】
一つは、有機性廃棄物を嫌気消化槽にて嫌気消化する処理法であって、
(1)有機性廃棄物を温度が35℃以上60℃以下で分解・酸生成処理する工程、
(2)上記(1)の工程で生じたアンモニアガス及二酸化炭素を含有する消化ガスを、嫌気性ガスとしてのN2ガス又はメタンガスからなるキャリアガスと共に嫌気消化槽の外部に搬出する工程、
(3)搬出ガスからアンモニア並びに二酸化炭素を槽外で除去する工程、並びに
(4)上記(3)の工程に付された処理ガスを再び有機性廃棄物の嫌気消化槽の内容物(培地)中に戻す嫌気的なガス循環工程、及び
(5)上記工程(1)を経た有機性廃棄物を、前記嫌気消化槽(アンモニア・メタン兼用発酵槽)或いは別に併存させた嫌気消化槽(専用メタン発酵槽)にてメタン生成処理し取り出す工程、を含む方法。
【0044】
もう一つは、有機性廃棄物を嫌気消化槽にて嫌気消化する処理法であって、
(1)有機性廃棄物を温度が35℃以上60℃以下で有価性ガスを生成する工程、
(2)上記(1)の工程で生じるアンモニアガス及二酸化炭素を含有する消化ガスを、嫌気性ガスとしてのN2ガス又はメタンガスからなるキャリアガスと共に嫌気消化槽の外部に搬出する工程、
(3)搬出ガスからアンモニア並びに二酸化炭素を槽外で除去する工程、
(4)上記(3)の工程に付された処理ガスを再び有機性廃棄物の嫌気消化槽の内容物(培地)中に戻す嫌気的なガス循環工程、及び
(5)嫌気消化槽にて有価性ガスとして生成メタンを取り出す工程を含む、方法。
【0045】
次に上記のような嫌気消化処理方法を実行するための有機性廃棄物を嫌気消化する処理装置としては、有機性廃棄物を嫌気消化するために用いる嫌気消化槽と、前記嫌気消化槽にて行われる嫌気消化により生じたガスを、前記嫌気消化槽の槽内−槽外間で強制循環させるガス循環系装置と、前記ガス循環系装置の配管途中における槽外位置に設けられたアンモニア除去手段及び二酸化炭素除去手段と、を有する。また、ガス循環系装置は、循環ガスを嫌気消化槽内の有機性廃棄物の培地中に曝気させる形で戻す構成を有する
さらに、前記嫌気消化槽で生成されるアンモニアの濃度が設定レベル以下になると、或いはアンモニアの低減に伴い嫌気消化槽での有価資源ガスの濃度が設定レベル以上になると、ガス循環系装置によるガス循環を中断して、前記嫌気消化槽にて生成促進される有価資源ガスを取り出す系に切り替わる構成を設けるようにしてもよい。
【0046】
一例を挙げれば、有機性廃棄物を嫌気する処理装置であって、
(1)有機性廃棄物を嫌気消化により分解・酸生成処理してアンモニアと二酸化炭素の生成する工程を、温度が35℃以上60℃以下で行う第1発酵槽(第1の嫌気消化槽:アンモニア発酵槽)と、
(2)この発酵槽中の生成ガス(すなわちアンモニアと二酸化炭素を含有する嫌気消化ガス)を槽外に搬出し、ガス中のアンモニア及び二酸化炭素を除去したガスを、第1発酵槽或いは槽中の内容物中に嫌気的に戻すガス循環系装置と、
(3)上記アンモニア除去によりアンモニア濃度が所定値レベル以下(例えばアンモニア濃度をメタン生成が実質的に阻害されない3,000ppm)になると、前記ガス循環を中断して第1発酵槽がメタン発酵槽になって35℃以上60℃以下でメタン生成する構成とを含む。
【0047】
なお、上記(3)の第1発酵槽に代わって、第2発酵槽へ有機性廃棄物を移送する装置と、温度が35℃以上60℃以下で行われるメタン発酵を行う第2発酵槽とを備えることも可能である。
【0048】
また、他の例を挙げれば、有機性廃棄物を嫌気する処理装置であって、
(1)有機性廃棄物を嫌気消化する温度が35℃以上60℃以下で行う嫌気消化槽と、
(2)この発酵槽中の生成ガス(すなわちアンモニア、二酸化炭素、メタン或いは水素を含有する嫌気消化ガス)を槽外に搬出し、ガス中のアンモニア及び二酸化炭素を除去したガスを、発酵槽中の内容物中に戻す継続或いは断続的な嫌気的ガス循環系装置とを含む。
【0049】
本発明の原理的な実施形態を図1に示す。図1における有機性廃棄物処理装置は、大別すると、嫌気消化槽1と、槽内−槽外間でガス循環を行うためのガス循環系装置100とからなる。
【0050】
嫌気消化槽1は、槽内の処理液を撹拌するための攪拌機構3、被処理物の投入口4、被処理物の取り出し口5、及び消化ガスの取り出し口6を有する。また、本例では、一つの嫌気消化槽1により、アンモニア生成のための第1発酵槽と、メタン生成のための第2の発酵槽を兼用する。
【0051】
ガス循環系装置100は、槽内−槽外間でガス循環を行うためのガス循環系の配管101(101a,101b,101c,101d)と、ガス循環系配管101に設けた次ような要素、すなわち、嫌気消化槽1の槽内のガスを取り出す洗浄用ガス循環ポンプ7と、その下流に設けた酸性洗浄液9収容の酸性洗浄液装置(洗浄容器或いはガス洗浄装置とも称せられる)8と、アルカリ洗浄液11収容のアルカリ洗浄液装置(洗浄容器或いはガス洗浄装置とも称せられる)10と、脱酸素剤13を保持した脱酸素装置(脱酸素容器)12と、脱酸素装置12の下流側のガス戻り配管101dに設けた循環ガスの圧力調整整機構15と、および槽内を嫌気ガス(循環ガス)にて暴気するための暴気ガス循環ポンプ14とを有する。ガス循環系の配管において、戻り配管101dの出口側は、嫌気消化槽1内の有機性廃棄物(培地)2中に位置して戻りガスが培地2を曝気するようにしてある。
【0052】
ここで、酸性洗浄液装置8、アルカリ洗浄液装置10、及び脱酸素剤保持器12は、連絡用の循環配管101b及び101cを介して互いに接続されている。本実施例では、酸性洗浄液装置8とアルカリ洗浄液装置10は、循環系のガスの流れ方向を基準にして酸性洗浄液装置8をアルカリ洗浄液装置10よりも上流側に配置しているが、これに限定されずその逆であっても良いが、好ましくは酸性洗浄液装置8をアルカリ洗浄液装置10に優先させた方が好ましい。
【0053】
嫌気消化槽1には、投入口4を介して被処理対象の有機性廃棄物2が収容され、この有機性廃棄物と槽内に導入された水とが攪拌された状態で収容される。
【0054】
嫌気消化槽1で、嫌気雰囲気で分解・酸生成により発生したアンモニアガス及び二酸化炭素を含む嫌気消化ガスは、ガス循環過程において、槽外の酸液(例えば塩酸、硫酸など)9により酸洗浄されてアンモニアガスが除去され、次いでアルカリ液11によりアルカリ洗浄されて二酸化炭素が除去され、更に必要に応じて脱酸素剤13により脱酸素され、その後に、圧力調整整機構15を経て嫌気消化槽1に戻る。脱酸素は、装置の操作等の際にガス循環系の密閉が破れた時に混入する酸素などを除去するためのものである。戻り循環系配管101dを介して槽内に戻された戻りガスは、全部或いは一部がガス循環ポンプ14により嫌気消化槽中の処理物内に暴気する形で循環し、この暴気により処理物中に溶解しているアンモニアや炭酸ガスなどの揮発性ガスに対して、気化を促し循環ガスへの移行を更に促し、嫌気消化槽内容物のアンモニア濃度の低減が行える。
【0055】
アンモニアガス及びまたは炭酸ガスを除去したガスによるガス循環工程を繰り返すことで、嫌気消化槽1における嫌気消化物中の溶解アンモニアのガス化を促しその液中濃度が減少し、アンモニア濃度がメタン生成に実質的に阻害しないレベル(例えば3,000ppm以下)に維持される。上記レベル以下になり循環ガス中のメタン濃度が設定以上になると、図示しないセンサ及び制御部により、ガス循環系のポンプ7及び14の運転が停止し、且つガス循環系のバルブ16が閉じる。
【0056】
なお、既述したように、本発明によれば、可溶化(第1の嫌気消化:高分子成分の分解による中間生成物である酸及び最終生成物であるアンモニアの生成)とメタン生成(第2の嫌気消化)を高VSの下で且つ一つの嫌気消化槽で実施することが可能となる。何故ならば、第一の嫌気消化で生成される最終生成物であるアンモニアが蓄積しないように系外に取り出すことが可能であるからに他ならない。
【0057】
メタン生成工程では、ガス取り出しバルブ6が開いて、メタンガスが槽外に取り込まれる。
【0058】
本発明の処理方法における処理対象としての有機性廃棄物としては、特に限定されるものではないが、低水分含量の有機性廃棄物処理に好適に用いられる。処理効率を高める観点から、有機性廃棄物の水分含量としては70重量%以上98重量%以下、より好ましくは75-95重量%である。有機性廃棄物のVSとしては、2重量%を越え30重量%以下、より好ましくは5-25重量%である。
【0059】
また、本発明の処理方法は、特に含窒有機物を高含有する有機性廃棄物の処理に非常に好適である。含窒有機性廃棄物の具体例としては非遊離状態の窒素を多く含む、余剰汚泥、下水汚泥、各種微生物発酵産物の廃棄物、家畜や人の糞尿及び、尿酸を高含有する鶏糞等やタンパク質含量の高い殺場廃棄物や処分家禽等が挙げられる。
【0060】
本発明を実施するためには、撹拌機構(または混合機構)3を持つ嫌気消化槽2が好ましく、また槽内の充填率は特にこだわらないが、槽内に30%以上の空間を有する方が好ましいが、それ以下でも差し支えない。嫌気消化する有機性処理物の水分含量は移送や撹拌などに制約がなければ低水分含有率のものが、処理能力が高まるので好ましい。
【0061】
処理対象物が低水分含量でない場合は、例えば、遠心濃縮機、汚泥脱水機等の公知の脱水処理方法により脱水して処理前に予め低水分含量としておくのが好ましく、また処理物の含水率が低く流動性がない、或いは流動性に乏しい場合の消化槽は横型槽で回転するキルン型或いは内部に水平回軸と撹拌翼を持つなどの槽が適する。
【0062】
循環するガス量は毎分当たりで大凡発酵槽の内容量と同等からその1/10量が好ましいが、槽内の撹拌及びバブリングの多寡により適量は増減する。キャリアガスとしては酸やアルカリ剤で処理しても消耗しない嫌気性ガス、例えば窒素ガス或いはメタンガス等が上げられる。防曝対策が充分であれば水素ガスも用いることできる。装置の立ち上げ時には外部よりこれらのガスを供給し、嫌気消化でメタンガス或いは水素ガスが得られるに至った場合は、これらのガスを利用することができる。
【0063】
二酸化炭素ガスの吸収には苛性ソーダや消石灰、生石灰などが好適であり、アンモニアの吸収には塩酸、硫酸、硝酸などの強酸溶液の他、ゼオライトあるいはリン酸マグネシウムアンモニウム・水塩(以下、MAP粒子と略す)を100-120℃で加熱処理したh-MAPを用いることが出来る。特にh-MAPは加熱により再生可能でその際吸収したアンモニアを高純度で回収できるので、回収アンモニアの再利用への新たな道が開ける。
【0064】
本発明を実施する際の温度は嫌気消化に関わる微生物が活動可能な温度であれば何れの温度であっても構わない。システム全体は一定温度或いは消化槽から出て再び消化槽に戻るガス循環の流路はガス洗浄の部位も含め消化槽より僅かに高い状態が、循環に伴う熱ロスや水分移動を最小にできるので好ましい。
【0065】
本発明を実施する際のpHは嫌気消化の最適pHである8.5-9.5の範囲が好ましく、嫌気消化開始時には消石灰等を用いて8.5-9.0に調整を行うのが好ましい。嫌気消化が進行し循環ガスによるアンモニア除去が機能し有機酸が蓄積されてくるとpHは通常やや低下する。一方、更なる嫌気消化の継続によりメタン生成に伴って有機酸が減少或いは不検出に至るとpHは概ね設定値を維持する。本発明を実施した場合、このようなpH値推移はアンモニア除去や嫌気消化の推移を把握するに大いに役立つ。
【0066】
バッチ方式で有機性廃棄物の分解・酸生成処理を行う場合には、前バッチで処理した有機性廃棄物の1-3割程度を該処理を行なった系内に残し、これを種として新しい有機性廃棄物を導入することでより安定で迅速な分解・酸生成処理が可能となる。
【0067】
本発明によるアンモニア除去手段は有機性廃棄物の処理効率を高める観点から、嫌気消化槽の付属部分として併存させ連続方式で有機性廃棄物から継続的に消化ガスを得る方式がより好ましい。この場合、消化槽への被処理物投入は安定な消化を維持させるために少なくとも被処理物量と等量以上好ましくは3-5倍容量の槽内容物を混和しながら槽に投入することが望ましい。嫌気消化が順調に推移している場合、SRT(sludge Ritention Time: 汚泥滞留時間)は処理物のVS量で変わるが、VSが10重量%場合、SRTは10-20日が可能である。
【0068】
また、前記の通り、本発明の処理工程はアンモニア除去工程にガス循環工程及び嫌気消化槽外での除去にアンモニア除去効率を高める独自の意義を有することから、本発明の別の一態様として、アンモニア除去後に従来のようなアンモニア発酵槽と別置きのメタン発酵槽に有機性廃棄物を移し変えても、本発明の所望の効果が得られるので、そのようにして有機性廃棄物を処理する態様も、本発明の前記処理方法に包含される。
[実施例1]
図2は、図1の原理構成図の効果を確認するための実施例である。
【0069】
図2において、装置の回転フラスコ部23(嫌気消化槽1に相当する)に、試料として、有機性廃棄物22である保存鶏糞90g(水分含量75%w/w)と、脱水汚泥30g(嫌気消化:分解・酸生成に関わる菌の供給源として十分に嫌気消化を行った後の種汚泥)と、生成酢酸の中和のために1.6gのNaOHとを加える。更に流動性を付加するため水160mlを加え含水率88%にして、回転駆動モータ25によりフラスコ回転数10rpmにより回転させ、キャリアガスの循環ガス量500ml/分で、フラスコ部22の内部を窒素置換した。その後、恒温水槽21の温度を55℃で、上記と同一のガス循環量及び回転数で、ガス循環ポンプ14を駆動して、アンモニア含有のフラスコ内の生成ガスを、循環系チューブ26、酸性洗浄液(硫酸)9、アルカリ洗浄液(苛性ソーダ)液11、脱酸素剤13を通して戻りチューブ24を介してフラスコ内−外を循環させる。このような稼働による4日間に亘る鶏糞中の含窒化合物の推移を見た。なお、図2において、8、10、12はガス洗浄装置(酸性洗浄液装置、アルカリ洗浄液装置、脱酸素剤装置)、26はガスバックである。
【0070】
鶏糞試料中の遊離アンモニア濃度(ppm)は、採取試料を適宜蒸留水で希釈し遠心分離した上清を、硫酸吸収アンモニアは採取物をそのまま、それぞれアンモニアテストワコー(和光純薬(株)製)により測定。また、全窒素(TN)はケルダール法で測定した。アンモニア転換率は、培養前の余剰汚泥中の窒素含量(A mmol)をケルダール法で、培養途中の各時点でのアンモニア含量(B mmol)と硫酸液吸収アンモニア量(C) mmol)をアンモニアテストワコーで測定し、以下の式:アンモニア転換率(モル%)=〔(B + C)/A〕×100 により求めた。
【0071】
図3に示す結果は、図2に示す装置図において、循環ガス中のアンモニアガスを硫酸液9で、炭酸ガスを苛性ソーダ液11で洗浄した場合、図4の結果は循環ガスを硫酸液のみを使用してアンモニアガスのみを洗浄した比較例を示す。
【0072】
図3は酸洗浄とルカリ洗浄の両者を行い循環ガスからアンモニア及び炭酸ガスの両者を除去した場合(実施例1)の残留アンモニア濃度の推移を示す。残留アンモニア濃度は2日目以降2,000ppm(2g-N/L)を下回り、4日目には1,000ppm(1g-N/L)以下となりメタン発酵に際して全く阻害が起きない低濃度が維持された。一方、酸洗浄のみでアンモニアガスだけを吸収した場合の残留アンモニア濃度(比較例)は図4に示す様にアルカリ洗浄した場合に比べ2-3倍アンモニア濃度が高かった。
[実施例2]
図5は、本発明の具体的装置の実施例を示すものである。ちなみに、図7は、図5の装置を、より具現化して示したシステム状態図である。図中、図1の原理構成図における構成要素と同一符号には、同一或いは共通する符号を付してある。まず、ここでは、図1の原理構成図で説明されなかった構成について説明する。
【0073】
図5及び図7においては、ガス循環系装置100については、図1と同一構成をなしているが、さらには、酸性洗浄液装置8の上流側の循環系配管101には、循環ガスを冷却するための凝縮水トラップ54、及びガス循環系のアンモニアガスの濃度を測定するためのガス濃度計55a、二酸化炭素を測定するためのガス濃度計55b、メタンガス濃度を測定するためのガス濃度計55cが設けられている。なお、図5では、作図の便宜上、ガス濃度計55a、55b、55cは、一つにより図示されているが、実際には、図7に示すように、それぞれ独立して別々に用意されている。また、これらのガス濃度計については、既存の種々のタイプ(例えば、半導体式、赤外線吸収式などのガスセンサ)のものがあり、その種類を限定するものではない。
【0074】
ガス循環系配管101は、バルブ6、16の上流側に、メタンガス濃度検出信号に応じ切り替え制御されるバルブ16及びバルブ6が設けられ、このバルブの切り替えにより、ガス循環系配管101か有価資源ガス取り出し配管57のいずれかを選択し得る構成にしてある。配管57には、ガス取り出し用のポンプ56が配置されている。制御バルブを切り替えるためのメタンガス濃度検出の設定値は任意に設定すればよい。なお、培地2中のアンモニア濃度が検出可能であるならば、このアンモニア濃度のレベルが所定レベル以下(例えば3000ppm以下)で前記制御バルブの切り替えを行うようにしてもよい。なお、ガス循環系において検出される二酸化炭素濃度及びアンモニアガス濃度は、二酸化炭素及びアンモニアの除去が進行しているか否かを知るための監視モニター値として利用される。
【0075】
また、ガス循環系配管101とガス取り出し配管57において、バルブ16及びバルブ6の上流側は、途中まで共通の配管をなし、凝縮水トラップ(ガス冷却器)54の下流側で分岐するように構成されている。
【0076】
53は、攪拌機3の駆動モータ、52は試料温度を制御するために用いられる試料温度センサ、50は、嫌気処理槽(発酵槽)1のヒーター、51は、保温カバーである。
【0077】
嫌気処理槽1で生成されるメタンガス濃度が所定レベル以下である場合には、バルブ16が開、バルブ6が閉の状態にあり、ポンプ7、14が駆動して、アンモニア除去のためのガス循環系が選択されている。メタンガス濃度が所定レベル以上を維持する状態になった場合に、嫌気処理槽1はアンモニア阻害の軽減或いは回避状態で有価資源ガス(例えばメタンガス、水素ガスなど)が生成される状態になっているので、バルブ16が閉、バルブ6が開、ポンプ14が停止し、ポンプ55が駆動して、ガスホルダー58(図7参照)に有価資源ガスを取り出す。なお、嫌気処理槽1内の有機性廃棄物は、随時、必要に応じて投入され、上記の動作が繰り返される。
【0078】
図5に示す装置に、新鮮鶏糞2,000g(水分含量75%w/w)と、嫌気消化に関わる菌の供給源として十分に嫌気消化を行った後の脱水汚泥400g及び48gのNaOHを加え、回転数10rpmで撹拌翼及び容器を回転、装置内部を窒素置換した後、循環ガス量5,000ml/分、培養温度55℃で装置を稼働、11日間に亘り、水の添加なしで鶏糞中の含窒化合物の推移を見た。
【0079】
図6に示す様に、鶏糞中の残留アンモニア濃度は初発時の2,900ppm (2.9g-N/kg) であったが、1日経過後は2000ppm(2g-N/kg)を下回り、以後10日の間1,000ppm(1g-N/kg)前後を維持した。この間、約5g/kgの含窒化合物(ケルダール窒素から残留アンモニアを除いたもの)がアンモニアに転換したが、これらは全て系外に除去される結果が得られた。
【0080】
発生ガス中の酸及び又はアルカリ洗浄とこれを培地中へバブリングしながら循環させて遊離アンモニアを除去する本発明は、バッチ的な段階処理も可能であるが、可溶化からメタン発酵へと連続的に処理する手法の方が、中間生成物を速やかに消化ガスへ転換移行せしめ基質阻害が回避でき、且つ処理設備の簡素化も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る有機性廃棄物の処理方法及び装置は、有価資源ガス製造方法及び装置のほかに、有機性廃棄物を飼料・肥料などにする製造方法及び装置としても利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1…嫌気消化槽、2…有機性廃棄物、3…攪拌機、6…切替弁、8…酸性洗浄液装置、9…酸性洗浄液(アンモニア除去手段)、10…アルカリ洗浄液装置、11…アルカリ洗浄液(二酸化炭素除去手段)、13…脱酸素剤、100…ガス循環装置、101…ガス循環系配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を嫌気消化する工程を有する有機性廃棄物の処理方法において、
前記嫌気消化工程において生じるアンモニア及び二酸化炭素を、外部から注入された嫌気性ガス及び/又は嫌気消化により生じる嫌気消化ガスをキャリアガスとして、嫌気消化槽の槽外に導き、槽外にて前記アンモニア及び二酸化炭素ガスを除去し、その後に前記キャリアガスの一部或いは全部を再び前記嫌気処理槽内に戻すガス循環工程を有することを特徴とする有機性廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記ガス循環工程における循環ガスは、嫌気消化槽内の有機性廃棄物の培地中に曝気させる形で戻すようにした請求項1記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記有機性廃棄物を分解・酸生成処理して有機酸と前記アンモニアを生成する第1の嫌気処理工程と、前記第1の嫌気処理工程時に生じる前記アンモニア及び二酸化炭素を前記ガス循環により除去低減した後に、メタン生成処理により前記有機酸をメタンに変換する第2の嫌気処理工程とを有し、この第1、第2の嫌気処理工程が一つの前記嫌気消化槽を用いて行う請求項1又は2記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項4】
前記嫌気消化槽で生成される前記アンモニアの濃度が設定レベル以下になると、或いは前記アンモニアの低減に伴い前記嫌気消化槽での有価資源ガスの濃度が設定レベル以上になると、前記ガス循環工程を中断して、前記嫌気消化槽でメタン生成及びその取り出しを行う工程を有する請求項3記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項5】
前記ガス循環工程により前記嫌気消化槽に戻されるガスを、槽内に噴出させて、槽内処理物である前記有機性廃棄物を断続的に暴気することにより、界面更新と撹拌を促すガス循環を行う請求項1ないし4のいずれか1項記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項6】
前記槽外で前記アンモニアを除去する手段が、中性或いは酸性化した液による洗浄、或いは吸着剤を用い、且つ前記槽外で前記二酸化炭素を除去する手段が、中性或いはアルカリ性化した液による洗浄、或いは吸着剤を用いる請求項1ないし5のいずれか1項記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項7】
有機性廃棄物の処理装置において、
有機性廃棄物を嫌気消化するために用いる嫌気消化槽と、
前記嫌気消化槽にて行われる嫌気消化により生じたガスを、前記嫌気消化槽の槽内−槽外間で強制循環させるガス循環系装置と、
前記ガス循環系装置の配管途中における槽外位置に設けられたアンモニア除去手段及び二酸化炭素除去手段と、
を有することを特徴とする有機性廃棄物の処理装置。
【請求項8】
前記ガス循環系装置は、循環ガスを嫌気消化槽内の有機性廃棄物の培地中に曝気させる形で戻す構成を有する請求項7記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項9】
前記二酸化炭素除去手段が、中性或いはアルカリ性化した液を収容するガス洗浄装置、或いは吸着剤であり、前記アンモニア除去手段が、中性或いは酸性化した液を収容するガス洗浄装置、或いは吸着剤である請求項6記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項10】
前記ガス循環系装置の配管途中における槽外位置には、前記アンモニア除去手段及び二酸化炭素除去手段に加えて脱酸素剤を配置してなる請求項7ないし9のいずれか1項記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項11】
前記嫌気消化槽で生成される前記アンモニアの濃度が設定レベル以下になると、或いは前記アンモニアの低減に伴い前記嫌気消化槽での有価資源ガスの濃度が設定レベル以上になると、前記ガス循環系装置によるガス循環を中断して、前記嫌気消化槽にて生成促進される有価資源ガスを取り出す系に切り替わる構成を有して、同一の嫌気消化槽で前記アンモニアの除去と有価資源ガスの回収とを切り替えるようにした請求項7ないし10のいずれか1項記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項12】
前記ガス循環系装置により前記嫌気消化槽に戻されるガスを槽内に噴出させるガス噴出手段を有し、このガス噴出により槽内処理物である前記有機性廃棄物を断続的に暴気することにより、界面更新と撹拌を促すよう構成を有する請求項7ないし11のいずれか1項記載の有機性廃棄物の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−269223(P2010−269223A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121441(P2009−121441)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】