説明

有機材料から成る粘弾性体の変形量計測方法とその装置及びタイヤ変形量計測装置

【課題】計測する粘弾性体の変形量が大きい場合でも、その変形量を精度よく計測できるとともに、耐久性に優れた有機材料から成る粘弾性体の変形量計測装置を提供する。
【解決手段】有機材料から成る粘弾性体から成るタイヤ20のトレッドゴムの変形量を計測するためのコイル11を、タイヤトレッド21の陸部21kを構成するゴム内に埋設するとともに、上記コイル11に抵抗12を直列接続し、このコイル11と抵抗12とから成る回路に交流電圧を印加して上記抵抗12の両端の電圧Vを検出し、この検出された電圧Vと予め求めておいたトレッドゴムの変形量εと抵抗12の両端の電圧Vとの関係を示すε−V対応表16Tとに基づいて、上記コイル11が埋設されているタイヤトレッド21の陸部21kのゴムの変形量を計測するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、タイヤトレッドに使用されるゴム部材などの有機材料から成る粘弾性体の変形量を計測する方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸やバネ部材などの変形量を計測する際には、一般に、計測する部材に樹脂フィルム上に設けられた金属箔をエッチングして作製した歪ゲージを埋設したり貼着したりするなどして、上記歪ゲージを構成する細い金属線の電気抵抗の変化から当該部材の変形量を求める方法が行なわれている。
このような歪ゲージは、タイヤトレッゴムなどのような有機材料から成る粘弾性体の変形量を計測する際にも使用されている(例えば、特許文献1,2参照)。
一方、タイヤ内にインピーダンス素子を埋設する技術としては、図9に示すように、タイヤ51の空気室側にコイル本体52と開閉スイッチ53とから成るスイッチ付コイル54を埋め込んで、上記開閉スイッチ53が空気圧に応じて開閉するようにしておくとともに、タイヤ51の近傍に交流電源55に接続された検知コイル56を配置して、上記開閉スイッチ53の開閉に伴う上記検知コイル56のインピーダンスの変化から当該タイヤ51の空気圧の低下を検知するタイヤ空気圧警報センサ50が開示されている。このタイヤ空気圧警報センサ50は、具体的には、空気圧が高いときには開閉スイッチ53が閉じられて上記スイッチ付コイル54と上記検知コイル56とが結合し、上記検知コイル56のインピーダンスを変化させるが、空気圧が低いときには開閉スイッチ53が開いているので、上記スイッチ付コイル54がオープンになり、上記スイッチ付コイル54と上記検知コイル56とが結合しなくなることを利用してタイヤ51の空気圧の低下を検知する(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2005−343281号公報
【特許文献2】特開2005−345238号公報
【特許文献3】特開2005−331361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、タイヤトレッゴムなどの有機材料から成る粘弾性体の変形量を歪ゲージで計測する場合には、歪ゲージパターンが形成されるフィルムの弾性率が上記粘弾性体の弾性率よりも高いため、歪ゲージが示す歪量(変形量)は実際の粘弾性体の変形量よりも小さくなってしまうといった問題点があった。
また、金属箔の弾性限界はゴムなどの粘弾性体に比べて小さいため、特に、タイヤトレッドのゴムのように、繰返し圧縮や引張りが作用する箇所のゴムの変形量を計測する場合には、変形量が大きいと少ない繰返し回数で断線する恐れがあった。
また、上記タイヤ空気圧警報センサ50に使用されているスイッチ付コイル54は、空気圧により開閉スイッチ53を容易に開閉することができるように、上記開閉スイッチ53をゴムの変形により変形しやすい収納室57に収納してはいるものの、コイル本体52で上記空気圧によるゴムの変形を計測するようには構成されていない。
【0004】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、計測する粘弾性体の変形量が大きい場合でも、その変形量を精度よく計測することができるとともに、耐久性に優れた有機材料から成る粘弾性体の変形量計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、金属線をコイル状に配置すれば金属線の単位長さ当たりの変形量が小さいので、素子の耐久性に優れるとともに、粘弾性体の変形に伴った上記コイルの変形を当該コイルのインダクタンスの変化として検出すれば、有機材料から成る粘弾性体の変形量を精度よく計測できることを見出し本発明に到ったものである。
すなわち、請求項1に記載の発明は、有機材料から成る粘弾性体の変形量を計測する方法であって、トレッドゴムなどの有機材料から成る粘弾性体の内部に埋設したコイル、もしくは、有機材料から成る粘弾性体の表面に貼着したコイルに交流電圧を印加して、上記コイルのインダクタンスの変化を検出し、上記粘弾性体の変形量を計測することを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、有機材料から成る粘弾性体の変形量を計測する装置であって、有機材料から成る粘弾性体の内部に埋設したコイル、もしくは、上記粘弾性体の表面に貼着したコイルと、上記コイルに直列接続された抵抗と、この抵抗と上記コイルとから成る回路に交流電圧を印加する交流電源と、上記コイルまたは抵抗の両端の電圧を検出する手段と、上記検出された電圧に基づいて当該粘弾性体の変形量を計測する手段とを備え、上記コイルのインダクタンスの変化をコイルまたは抵抗の両端の電圧の変化として検出し、この電圧の変化から上記粘弾性体の変形量を計測するようにしたものである。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の有機材料から成る粘弾性体の変形量計測装置において、上記電圧検出手段に代えて、上記コイル及び抵抗に流れる電流を検出する手段を設けるとともに、上記電流に基づいて当該ゴムの変形量を計測するようにしたものである。
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載のゴム変形量計測装置において、上記抵抗に代えて、コンデンサを上記コイルに直列接続し、コイルまたはコンデンサの両端の電圧、あるいは、コイル及びコンデンサに流れる電流を検出し、上記電圧もしくは電流に基づいて当該粘弾性体の変形量を計測するようにしたものである。
【0007】
また、請求項5に記載の発明は、タイヤの変形量を計測する装置であって、タイヤを構成するゴム部材の内部または表面に配設されたコイルと、上記コイルに直列に接続された抵抗と、この抵抗と上記コイルから成る回路に交流電圧を印加する手段と、上記コイルまたは抵抗の両端の電圧を検出する手段と、上記検出された電圧に基づいて、タイヤの変形量を計測する手段とを備えたことを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のタイヤ変形量計測装置において、上記抵抗に代えて、コンデンサを上記コイルに直列接続したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タイヤトレッドゴムなどの有機材料から成る粘弾性体の内部に埋設したコイル、もしくは、上記粘弾性体の表面に貼着したコイルに交流電圧を印加して、上記コイルのインダクタンスの変化を検出し、上記粘弾性体の変形量を計測するようにしたので、粘弾性体の変形量が大きい場合でも、当該粘弾性体の変形量を精度よく計測することができる。また、上記粘弾性体に埋設もしくは貼着する素子として、コイル状の素子を用いたので、従来の金属箔歪ゲージに比べて耐久性を向上させることができる。
また、ゴムなどの有機材料から成る粘弾性体の内部に埋設したコイル、もしくは、上記粘弾性体の表面に貼着したコイルと、上記コイルに直列接続された抵抗と、この抵抗と上記コイルとから成る回路に交流電圧を印加する交流電源と、上記コイルまたは抵抗の両端の電圧を検出する手段と、上記検出された電圧に基づいて当該弾性体の変形量を計測する手段とを備えた有機材料から成る粘弾性体の変形量を計測する装置を作製して、上記コイルのインダクタンスの変化をコイルまたは抵抗の両端の電圧の変化として検出し、この電圧の変化から上記粘弾性体の変形量を計測するようにすれば、直接インダクタンスを検出することなく、上記粘弾性体の変形量を計測することができる。
【0009】
なお、上記電圧検出手段に代えて、上記コイル及び抵抗に流れる電流を検出する手段を設けるとともに、上記電流に基づいて当該粘弾性体の変形量を計測するようにしても、同様の効果を得ることができる。
また、上記抵抗に代えて、コンデンサを上記コイルに直列接続し、上記コイルまたはコンデンサの両端の電圧、あるいは、上記コイル及びコンデンサに流れる電流を検出し、上記電圧もしくは電流に基づいて当該粘弾性体の変形量を計測するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
図1は、本最良の形態に係わるタイヤ変形量計測装置10の構成を示す機能ブロック図である。同図において、11はタイヤの変形量を計測するためのコイルで、このコイル11は、図2(a)に示すように、タイヤ20のタイヤトレッド21の陸部21kを構成するゴム内に埋設されている。12は上記コイル11に直列接続された抵抗、13は、図2(b)にも示すように、ゴムgに埋設されたコイル11と抵抗12とが直列接続された回路に交流電圧を印加するための交流電源14と、上記抵抗12の両端の電圧を検出する電圧検出手段15とを備えた駆動検出部で、本例では、上記抵抗12と駆動検出部13とをタイヤのインナーライナー22の表面に配設している。また、16は上記電圧検出手段15で検出された抵抗12の両端の電圧Vと、予め求めておいたトレッドゴムの変形量εと抵抗12の両端の電圧Vとの関係を示すε−V対応表16Tとに基づいて、上記コイル11が埋設されているタイヤトレッド21の陸部21kのゴムの変形量を計測するタイヤ変形量計測手段で、このタイヤ変形量計測手段16で計測されたトレッドゴムの変形量のデータは、車体側に設けられた図示しない車両制御装置に送られる。
なお、上記ε−V対応表16Tと上記タイヤ変形量計測手段16は、上記駆動検出部13内に設けてもよいし、リム部23、あるいは、車体側に設けてもよい。車体側に設ける場合には、上記駆動検出部13に送信器を設けて、上記電圧Vのデータを車体側に送信する。また、リム部23に設けた場合には、上記駆動検出部13に送信器を、タイヤ変形量計測手段16に送受信器をそれぞれ設けて、上記電圧Vのデータをタイヤ変形量計測手段16に送り、タイヤ変形量計測手段16で得られたトレッドゴムの変形量のデータを車体側に送信する。
【0011】
図3(a)は、上記コイル11の一例を示す図で、このコイル11は、トレッドゴムと同質のゴムから成る軸方向に長い円柱状の芯材11aと、その表面に金属細線を巻回したコイル本体11bとを備えている。上記コイル11は、その周囲がタイヤトレッド21の陸部21kのゴムで囲まれているので、タイヤ20が転動し、上記コイル11が埋設されているトレッド21の陸部21kが路面に接地して上記陸部21kのゴムが変形すると、上記コイル11も上記ゴムとともに変形して、上記コイル11のインダクタンスが変化する。
コイル11の形状が上記のように軸方向に長い場合には、軸方向が感度が高いので、上記コイル11の延長方向が当該コイル11が計測するトレッドゴムの変形方向となるように、上記コイル11を配置することが好ましい。例えば、トレッドゴムの荷重方向への変形を計測したい場合には、図2(a)に示すように、コイル11の延長方向をタイヤ径方向とする。また、上記トレッドゴムの周方向の変形量を計測する場合には、上記コイル11の延長方向をタイヤ周方向にすれば、上記トレッドゴムの変形量を効率よく計測することができる。
なお、上記コイル11の感度方向はコイルの形状に依存するので、例えば、コイル11が、図3(b)に示すような、軸方向に短い形態である場合には、径方向の方が感度が高いので、上記コイル11の延長方向を当該コイル11が計測するトレッドゴムの変形方向に直交する方向になるように配置するなど、コイル形状については、埋設箇所や貼着箇所などの条件に応じて適宜設定すればよい。
【0012】
ところで、コイルが変形していない場合の円柱状のコイルのインダクタンス(初期インダクタンス)L0は、単位長さ当たりの巻数をn、円柱の半径をR,円柱の長さをlとしたとき、端の効果等を無視すると、以下の式(1)のように近似できる。
0=Kn22l‥‥(1)
なお、Kは形状に依存した係数(長岡係数)である。
コイルの円柱が変形してその長さがlから(1+ε)lになった場合、インダクタンスLは、ゴムのポアソン比が0.5で、かつ、歪量εが小さくて体積変化がないものとすると、変形後のインダクタンスLは、以下の式(2)のようになる。
【数1】

ここで、αは永岡係数Kのε依存性を示す係数で、円柱の形状が、例えば、(2R/l)≒0.5であれば、α≒−0.25である。また、β=2+αである。
上記式(2)から、インダクタンスの変化ΔL=L−L。は歪量εに比例することが分かる。
したがって、コイル11のインダクタンスの変化を求めれば、コイル11の変形量、すなわち、コイル11が埋設されているトレッドゴムの変形量を計測することができる。
【0013】
本例では、上記コイル11のインダクタンスの変化を直接求めるのではなく、図2(b)に示すように、上記コイル11と抵抗12とを直列接続した回路に交流電源14を接続するとともに、上記抵抗12の両端の電圧Vを電圧検出手段15により検出する。ここで、上記交流電源14の電源電圧の大きさをVi[V]、周波数をf[Hz]、抵抗12の抵抗値をR[Ω]とすると、上記抵抗12の両端の電圧の大きさV[V]は、上記電圧Vi、周波数f、抵抗値R、及び、上述した初期インダクタンスL0と歪量εとを用いて、以下の式(3)で表わせる。
【数2】

上記式(3)に示すように、抵抗12の両端の電圧の大きさV[V]は、コイル11の歪量εに比例する項を有するので、上記電圧Vを検出すれば、上記コイル11が埋設されているゴムの変形量を計測することができる。
本例では、上記歪量εと上記電圧Vとの関係を予め求めて、ε−V対応表16Tとしているので、タイヤ変形量計測手段16にて、電圧検出手段15により検出した抵抗12の両端の電圧の大きさVと上記ε−V対応表16Tの歪量εと電圧Vとの関係とを比較することにより、上記タイヤ20の変形量を求めることができる。
なお、コイル11は一様に伸縮するので局所的な歪が入りにくく、そのため、任意の線幅でも高い耐久性を得ることができる。
【0014】
このように、本最良の形態によれば、タイヤ20の変形量を計測するためのコイル11をタイヤトレッド21の陸部21kを構成するゴム内に埋設するとともに、上記コイル11に抵抗12を直列接続し、このコイル11と抵抗12とから成る回路に交流電圧を印加して上記抵抗12の両端の電圧Vを検出し、この検出された電圧Vと予め求めておいたトレッドゴムの変形量εと抵抗12の両端の電圧Vとの関係を示すε−V対応表16Tとに基づいて、上記コイル11が埋設されているタイヤトレッド21の陸部21kのゴムの変形量を計測するようにしたので、ゴムの変形量が大きい場合でも、当該ゴムの変形量を精度よく計測することができる。
また、上記コイル11は、当該コイル11を構成する金属の単位長さ当たりの変形量が従来の金属箔ゲージに比べて少ないので、タイヤ変形量計測装置10の耐久性を向上させることができる。
【0015】
なお、上記最良の形態では、タイヤトレッド21のゴムの変形量を計測したが、これに限るものではなく、エンジンマウントなどのゴム部材に本発明のコイル11を埋設または貼着してそのインダクタンスの変化を検出するようにすれば、当該ゴム部材の変形量を精度よく計測することができる。
また、本発明は、有機材料から成る粘弾性体、特に、ゴムや熱可塑性エラストマーなどのような、常温近傍で粘弾性を示す高分子材料(エラストマー)から成る粘弾性体一般に適用可能である。
また、コイルの形状についても、断面が円形である円柱状のもの(コイル11)に限定されるものではなく、例えば、図4(a)に示すような、断面が長方形状である直方体状のもの(コイル11A)であってもよい。なお、コイルの形状としては、上記円柱状のコイル11や直方体状のコイル11Aのように断面形状が軸方向に一様である必要はなく、例えば、計測部であるコイル本体11bの中央部の面積を広くし、金属線の引き出し部である端部の面積を狭くしたような、断面形状が軸方向に一様でないものを用いてもよい。
また、上記例では、コイル11を、円柱状の芯材11aの表面にコイル本体11bとなる金属細線を巻回した形態としたが、図4(b)に示すように、コイル11Bをタイヤトレッド21の陸部21kを構成するゴム内に直接埋設する構成としてもよい。
また、上記例では、コイル11をタイヤトレッド21の陸部21kを構成するゴム内に埋設したが、コイル11の設置場所はこれに限るものではなく、例えば、図5に示すように、タイヤのインナーライナー22内など、設置したコイル11がタイヤトレッド21の変形に伴って変形する箇所であればよい。
【0016】
また、コイル11のインダクタンスの変化は、直列接続した抵抗12の両端の電圧Vから求める方が回路構成上好ましいが、上記コイル11及び上記抵抗12に流れる電流を検出する構成としてもよい。
また、上記例では、コイル11に抵抗12を直列接続した例を示したが、図6(a)に示すように、上記抵抗12に代えて、コンデンサ17をゴムgに埋設されたコイル11に直列に接続し、上記コイル11またはコンデンサ17の両端の電圧、あるいは、上記コイル11及びコンデンサ17に流れる電流を検出してタイヤトレッド21の陸部21kを構成するゴムの変形量を計測するようにしてもよい。
また、図6(b)に示すように、コイル11だけでなく、抵抗12もゴムg内に埋設してもよいが、抵抗12の両端の電圧Vを検出するような場合には、配線等の関係から、本例のようにコイル11のみを埋設する方が好ましい。
【実施例】
【0017】
実施例1.
図3に示したコイル11と同様の試験片を作製し、上記芯材に周期的な圧力を与えて、試験体のインダクタンスの時間変化を計測した結果を図7に示す。ここで、上記試験片のインダクタンスは0.3000mH、圧力の周期は1.0sec.とした。なお、図7の横軸は時間(sec)、縦軸は試験片30の変位(%)と試験片のインダクタンス(mH)である。
図7から明らかなように、試験片のインダクタンスは試験片の変位(%)と同様の時間変化を示すことがわかる。これにより、ゴム表面に形成したコイルのインダクタンスを検出れば、当該ゴムの変形量を精度よく計測できることが確認された。
【0018】
実施例2.
上記試験片を様々な歪量εで変形させるとともに、図3に示すように、コイルに抵抗を直列接続した回路に、交流電源にて交流電圧(V1=1V,f=500kHz)を印加して、上記抵抗の両端の電圧Vを測定した結果を図8に示す。図8のグラフから明らかなように、上記電圧Vは、上記式(2)のように、試験片の歪量εと線形な関係にあり、これにより、上記電圧Vを検出すれば、歪量εを計測することができることが確認された。
【0019】
実施例3.
コイルを試験タイヤのインナーライナー内にコイルを形成した試験タイヤを作製し、この試験タイヤを車両に搭載して実車走行試験を実施し、コイルの破壊の有無を検査した。また、比較のため、上記コイルに代えて、従来の金属箔歪ゲージをインナーライナー内に配置して、同様の試験を行った。その結果、金属箔歪ゲージは走行距離200kmで破損したが、コイルは10万km走行後も破損しなかった。これにより、本発明のコイルが耐久性に優れていることがが確認された。
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、簡単な構成で、トレッドゴムなどの有機材料から成る粘弾性体の変形量を精度よく計測することができるとともに、検出素子の耐久性を向上させることができるので、安価で耐久性に優れた粘弾性体の変位量計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の最良の形態に係わるタイヤ変形量計測装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】コイルの配置とゴム変形量の計測方法を示す図である。
【図3】本発明によるコイルの一構成例を示す図である。
【図4】本発明に係るコイルの他の形状を示す図である。
【図5】コイルをインナーライナー内に形成した例を示す図である。
【図6】本発明に係るタイヤ変形量の計測方法の他の例を示す図である。
【図7】試験片の変位とインダクタンスの時間変化の計測結果を示す図である。
【図8】ゴムの歪量εとコイルに直列接続された抵抗の両端の電圧Vとの関係を示す図である。
【図9】従来のタイヤ空気圧警報センサの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
10 タイヤ変形量計測装置、11 コイル、12 抵抗、13 駆動検出部、
14 交流電源、15 電圧検出手段、16 タイヤ変形量計測手段、
16T ε−V対応表、17 コンデンサ、20 タイヤ、21 タイヤトレッド、
21k タイヤトレッドの陸部、22 インナーライナー、23 リム部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機材料から成る粘弾性体の内部に埋設したコイル、もしくは、有機材料から成る粘弾性体の表面に貼着したコイルに交流電圧を印加して、上記コイルのインダクタンスの変化を検出し、上記粘弾性体の変形量を計測することを特徴とする有機材料から成る粘弾性体の変形量計測方法。
【請求項2】
有機材料から成る粘弾性体の変形量を計測する装置であって、有機材料から成る粘弾性体の内部に埋設したコイル、もしくは、上記粘弾性体の表面に貼着したコイルと、上記コイルに直列接続された抵抗と、この抵抗と上記コイルとから成る回路に交流電圧を印加する交流電源と、上記コイルまたは抵抗の両端の電圧を検出する手段と、上記検出された電圧に基づいて当該粘弾性体の変形量を計測する手段とを備えたことを特徴とする有機材料から成る粘弾性体の変形量計測装置。
【請求項3】
上記電圧検出手段に代えて、上記コイル及び抵抗に流れる電流を検出する手段を設けるとともに、上記電流に基づいて当該粘弾性体の変形量を計測するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の有機材料から成る粘弾性体の変形量計測装置。
【請求項4】
上記抵抗に代えて、コンデンサを上記コイルに直列接続したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の有機材料から成る粘弾性体の変形量計測装置。
【請求項5】
タイヤを構成するゴム部材の内部または表面に配設されたコイルと、上記コイルに直列に接続された抵抗と、この抵抗と上記コイルから成る回路に交流電圧を印加する手段と、上記コイルまたは抵抗の両端の電圧を検出する手段と、上記検出された電圧に基づいて、タイヤの変形量を計測する手段とを備えたことを特徴とするタイヤ変形量検出装置。
【請求項6】
上記抵抗に代えて、コンデンサを上記コイルに直列接続したことを特徴とする請求項5に記載のタイヤ変形量計測装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−333622(P2007−333622A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167215(P2006−167215)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】