説明

有機汚泥の燃料化装置及び燃料化方法

【課題】設備コスト及び運転コストを低く抑えながら、有機汚泥から燃料を製造する。
【解決手段】燃焼炉2の排ガスG1を除塵する高温集塵機6の排ガスG2と熱媒油Mとの間で熱交換を行う熱交換器7と、熱交換器によって加熱された熱媒油を用いて有機汚泥Sを乾燥させて燃料Fを製造する間接加熱式汚泥燃料化装置11とを備える有機汚泥の燃料化装置1等。燃焼炉の排ガスを用いるため、高品位燃料等を用いずに燃料を製造することができ、過熱蒸気を用いた場合のような高耐圧構造とする必要もないため、設備コストを低減することができ、有機汚泥を間接加熱によって乾燥させるため、異物が燃料に混入することがなく、燃料の品位の低下を回避できる。燃焼炉をセメント焼成炉、ごみ焼却炉とすることができ、熱交換器にプレートフィン型熱交換器を用いることができる。過熱蒸気との熱交換によって加熱された熱媒油を用いて有機汚泥を炭化して燃料を製造してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃熱を利用して下水汚泥等の有機汚泥から燃料を製造する装置及び方法に関する。
【0002】
下水汚泥は、有機分を多く含むため、将来の燃料として有望視されているが、その反面、水分を多く含むため、燃料として用いるためには水分を除去する必要がある。近年、下水汚泥等の有機汚泥を乾燥・炭化するなどして水分を除去し、燃料化することが行われ始めたが、この乾燥・炭化を化石燃料を使用して行ったのでは、高品位燃料で低品位燃料を製造していることとなり、有意義ではない。そこで、上記有機汚泥の乾燥・炭化に廃熱を利用する方法が提案されている(例えば、特許文献1乃至4参照)。
【0003】
一般に、400℃以下の廃熱は、工業的に有効利用することが困難である。セメント製造工場等において400℃以下の廃熱を発電に利用している場合でも、エネルギー変換効率が20%以下と低いため、有効利用されているとは言い難い面もある。尚、400℃以下の廃熱には、セメント製造工程におけるプレヒータの排ガスやクリンカクーラーの排ガス、ごみ焼却炉及び焼却炉ボイラの燃焼排ガス等に伴う廃熱が該当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−247707号公報
【特許文献2】特開2004−149408号公報
【特許文献3】特開2006−035189号公報
【特許文献4】特開2008−114173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
廃熱を利用して有機汚泥を乾燥(又は炭化)させるにあたり、例えば、セメント製造工程におけるプレヒータの排ガス等を直接被加熱物に接触させる方法では、排ガスに含まれるダストが乾燥物(又は炭化物)に含まれることとなるため、燃料としての価値が激減する。また、プレヒータの排ガス等を乾燥等に用いた場合には、乾燥装置等での排ガスの通過時間が短くなり、乾燥装置等に導入するガス量が多くなる。そのため、持去り熱が多くなるとともに、下水汚泥等から生じた臭気が大量のガスに拡散し、脱臭対象となるガスの量も多くなり、装置が大型化して設備コストが高騰するという問題があった。
【0006】
一方、セメント製造工程には、上述のように、廃熱発電設備を設けることも多いため、廃熱発電設備から過熱蒸気を一部分取して有機汚泥の乾燥等に利用することができ、これにより、得られた乾燥物等の燃料としての価値を保つことができる。しかし、被加熱物と接触した後の蒸気は、ダストや揮発成分によって汚染されるため、脱臭対象となる蒸気の量が多くなって装置が大型化するとともに、有機汚泥に含まれるラード等の油脂類が乾燥等に利用した後の蒸気に含まれることもあるため、その処理に苦慮することとなる。
【0007】
また、過熱蒸気を用いて乾燥等を行う際には、蒸気の凝縮潜熱を利用しないため、持去り熱が多くなる。この場合、蒸気の有するエネルギーに対して20%程度のエネルギーしか回収できず、廃熱発電を行っている場合と大差がないため、低品位の燃料を製造するよりもそのまま発電に用いる方が得策である。
【0008】
過熱蒸気を利用する方法として、特許文献4には、乾燥後の蒸気を排ガスで再加熱して循環利用する方法が提案されているが、上述のように、被加熱物と接触した後の蒸気は、ダストや揮発成分、さらにラード等の油脂類を含むため、熱交換器の電熱面の汚れや、その他の設備の維持管理を考慮すると、実施困難と考えられる。
【0009】
そこで、排ガスに含まれるダスト等による汚染・脱臭対象を不要とするため、下水汚泥を間接加熱することも考えられるが、熱媒体としてガスを用いるのは熱容量が小さいため不適であり、熱媒体として過熱蒸気を用いるのは、乾燥装置等をすべて高圧に耐える構造とする必要があり、設備コストが高騰するという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、設備コスト及び運転コストを低く抑えながら、有機汚泥から燃料を効率よく製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、有機汚泥の燃料化装置であって、燃焼炉の排ガスを除塵する高温集塵機の排ガスと熱媒油との間で熱交換を行う熱交換器と、該熱交換器によって加熱された熱媒油を用いて有機汚泥を乾燥又は炭化して燃料を製造する間接加熱式汚泥燃料化装置とを備えることを特徴とする。
【0012】
そして、本発明によれば、燃焼炉の排ガスを利用するため、高品位燃料等を用いることなく燃料を製造することができる。また、過熱蒸気を用いた場合のような高耐圧構造とする必要もないため、設備コストを低減することができる。さらに、有機汚泥を間接加熱によって乾燥又は炭化させるため、異物が燃料に混入することがなく、燃料の品位の低下を回避することができる。
【0013】
上記有機汚泥の燃料化装置において、前記燃焼炉をごみ焼却炉とし、前記高温集塵機は、該ごみ焼却炉の排ガスを除塵することができる。
【0014】
また、上記有機汚泥の燃料化装置において、前記燃焼炉をセメント焼成炉とし、前記高温集塵機は、該セメント焼成炉の排ガスの一部を除塵することができる。セメント焼成炉の排ガスの一部を用いるため、高温集塵機等を小型化することができ、より設備コストを低減することができる。
【0015】
上記有機汚泥の燃料化装置において、前記熱交換器をプレートフィン型熱交換器とすることができ、この熱交換器は、熱交換面積が広いため熱交換効率が高く、装置をより小型化することができる。
【0016】
さらに、本発明は、有機汚泥の燃料化方法であって、燃焼炉の排ガスを除塵して得られた熱ガスと熱媒油との間で熱交換させ、該熱交換によって加熱された熱媒油を用いて有機汚泥を間接加熱によって乾燥又は炭化して燃料を製造することを特徴とする。本発明によれば、上記発明と同様に、燃焼炉の排ガスを用いるため、高品位燃料等を用いることなく燃料を製造することができ、過熱蒸気を用いた場合のような高耐圧構造とする必要もないため、装置の小型化や設備コストを低減することができる。さらに、有機汚泥を間接加熱によって乾燥又は炭化させるため、燃料への異物の混入を防止し、燃料の品位の低下を回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、設備コスト及び運転コストを低く抑えながら、有機汚泥から燃料を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる有機汚泥の燃料化装置の一実施の形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明においては、ごみ焼却炉の排ガスを利用して下水汚泥から燃料を製造する場合を例にとって説明する。
【0020】
図1は、本発明にかかる有機汚泥の燃料化装置の一実施の形態を示し、この燃料化装置1は、ごみ焼却炉2と、ごみ焼却炉2の排ガスG1を除塵する高温バグフィルタ6と、高温バグフィルタ6の排ガスG2と熱媒油Mとの間で熱交換を行う熱交換器7と、熱交換器7によって加熱された熱媒油Mを用いて下水汚泥Sを乾燥させる間接加熱式乾燥装置11と、熱交換器7の排ガスG3を処理する排ガス処理設備3と、間接加熱式乾燥装置11の排ガスG4を処理する排ガス処理装置13等で構成される。
【0021】
ごみ焼却炉2は、都市ごみ等の可燃ごみWを焼却処理するために備えられ、ストーカー式焼却炉、乾溜ガス化炉等一般に用いられるものである。焼却処理後の焼却灰Aは、最終処分場に埋め立て処分されたり、セメント原料等として利用される。
【0022】
高温バグフィルタ6は、ごみ焼却炉2の排ガスG1(400℃程度)を除塵するために備えられ、セラミックフィルタを備えたバグフィルタ等を用いることができる。
【0023】
熱交換器7は、高温バグフィルタ6の排ガスG2を用い、循環ポンプ10によって供給された熱媒油Mを加熱するために備えられ、プレートフィン型の熱交換器を用いるのが好ましい。このプレートフィン型熱交換器は、所定間隔を開けて複数積層された帯状のプレートフィンと、各々のプレートフィンに穿設されたチューブ孔に複数のチューブが挿通されて構成され、伝熱面積が広いため熱交換効率が高い。一方、プレートフィン型熱交換器は、含塵ガスを通すとすぐに閉塞するため、前段にダストを除去するための高温バグフィルタ6を配置する。
【0024】
間接加熱式乾燥装置11は、熱交換器7において高温バグフィルタ6の排ガスG2と熱交換することによって加熱されて気体となった熱媒油Mを用い、この熱媒油Mとの間接加熱により水分70%程度の下水汚泥Sを乾燥させるために備えられ、下水汚泥Sを乾燥させた後の凝縮した熱媒油Mを循環ポンプ10によって熱交換器7に供給して循環使用する。熱媒油Mとしては、綜研テクニックス株式会社が販売するNeoSk−OILや、昭和シェル石油株式会社が販売するShell Thermia Oil等の間接加熱設備用の高引火型熱媒油を用いることができる。
【0025】
排ガス処理設備3は、ごみ焼却炉2に一般的に用いられるバグフィルタ等であって、排ガス処理設備3の後段には、排気ファン4と、煙突5とが配置される。
【0026】
排ガス処理装置13は、排ガスG4に含まれるダスト、臭気を除去して大気放出可能にするために備えられ、バグフィルタ、触媒塔等が用いられる。排ガス処理装置13の後段には、排ガス処理装置13の排ガスG5を煙突5に導くための排気ファン14が設けられる。
【0027】
次に、上記構成を有する燃料化装置1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0028】
都市ごみ等の可燃ごみWをごみ焼却炉2に投入して焼却する。可燃ごみWの燃焼によって生じた400℃程度のごみ焼却炉2の排ガスG1を高温バグフィルタ6に供給する。一方、可燃ごみWの焼却処理で生じた焼却灰Aは、セメント原料等として利用する。
【0029】
ごみ焼却炉2の排ガスG1を高温バグフィルタ6で除塵した後、熱交換器7に導入する。高温バグフィルタ6で回収したダストDは、ごみ焼却炉2に戻す。一方、熱交換器7に、循環ポンプ10によって熱媒油Mを供給し、排ガスG1との間で熱交換させる。熱交換器7の排ガスG3を排ガス処理設備3に導入し、除塵等を行った後、排気ファン4を経て煙突5より大気に放出する。
【0030】
間接加熱式乾燥装置11に下水汚泥Sを投入し、上記熱交換器7で加熱された熱媒油Mによって間接的に乾燥させる。この乾燥によって、70%程度の含水率であった下水汚泥Sの含水率を10%程度にまで低下させ、間接加熱式乾燥装置11から排出して燃料Fとして利用する。一方、下水汚泥Sを乾燥させた後の凝縮した熱媒油Mを循環ポンプ10によって熱交換器7に供給して循環使用する。間接加熱式乾燥装置11の排ガスG4は、排ガス処理装置13において、ダスト、臭気等を除去した後、排気ファン14を経て煙突5より大気に放出する。但し、排気ファン4に能力的な余裕がある場合には、排ガスG4をごみ焼却炉2に吹き込み、排ガス処理装置13を介さずに悪臭ガスを燃焼処理することも可能である。
【0031】
以上のように、本実施の形態では、ごみ焼却炉2の排ガスG1(廃熱)を利用するとともに、熱媒油Mを用いた間接加熱式乾燥装置11によって下水汚泥Sを乾燥させて燃料Fを製造するため、過熱蒸気を用いた場合のような高耐圧構造とする必要もないため、装置の小型化や設備コストの低減を図ることができる。さらに、間接加熱式乾燥装置11によって下水汚泥Sを間接加熱するため、排ガスG1に含まれるダストDが燃料Fに混入することがなく、燃料Fの品位を高く維持することができる。
【0032】
上記の要領で、間接加熱式乾燥装置11によって50t/dの割合で下水汚泥Sを処理して燃料Fを製造する場合、上記高温バグフィルタ6を経て熱交換器7に導入される排ガスG2は、例えば、150t/dの処理能力を有するごみ焼却炉2であれば、排ガスG1の55%(顕熱の30%)で足りる。
【0033】
一方、ごみ焼却炉の排ガスに代えて、例えば、セメント製造工程におけるプレヒータの排ガスを利用することができる。上記のように、間接加熱式乾燥装置11によって50t/dの割合で下水汚泥Sを処理して燃料Fを製造する場合、上記高温バグフィルタ6を経て熱交換器7に導入される排ガスの分取率は、例えば、6000t/dの生産能力を有するセメント焼成炉であれば、排ガスG1の8%(顕熱の5%以下)となる。そのため、高温バグフィルタ6、熱交換器7及び間接加熱式乾燥装置11を大規模なものにする必要がなく、下水汚泥Sから低コストで効率よく燃料Fを製造することができる。
【0034】
尚、上記ごみ焼却炉の排ガス及びプレヒータの排ガスを利用する以外にも、焼却炉ボイラの燃焼排ガスや、セメント製造工程におけるクリンカクーラーの排ガス等、400℃程度以下の排ガスを利用することができる。また、下水汚泥以外にも、製紙汚泥、ビルピット汚泥、食品汚泥等の有機汚泥から燃料を製造することができる。
【0035】
また、上記実施の形態では有機汚泥を乾燥させて燃料を製造したが、排ガスとの熱交換によって加熱された熱媒油を用いて有機汚泥を炭化して燃料を製造することもできる。
【0036】
さらに、排ガスと熱媒油との間で熱交換を行う熱交換器であれば、プレートフィン型熱交換器以外の熱交換器を用いることもでき、熱交換器によって加熱された熱媒油を用いた間接加熱式汚泥燃料化装置であれば、その形式を問わずに用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 有機汚泥の燃料化装置
2 ごみ焼却炉
3 排ガス処理設備
4 排気ファン
5 煙突
6 高温バグフィルタ
7 熱交換器
10 循環ポンプ
11 間接加熱式乾燥装置
13 排ガス処理装置
14 排気ファン
A 焼却灰
D ダスト
F 燃料
G1〜G5 排ガス
S 下水汚泥
M 熱媒油
W 可燃ごみ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炉の排ガスを除塵する高温集塵機の排ガスと熱媒油との間で熱交換を行う熱交換器と、
該熱交換器によって加熱された熱媒油を用いて有機汚泥を乾燥又は炭化して燃料を製造する間接加熱式汚泥燃料化装置とを備えることを特徴とする有機汚泥の燃料化装置。
【請求項2】
前記燃焼炉は、ごみ焼却炉であって、
前記高温集塵機は、該ごみ焼却炉の排ガスを除塵することを特徴とする請求項1に記載の有機汚泥の燃料化装置。
【請求項3】
前記燃焼炉は、セメント焼成炉であって、
前記高温集塵機は、該セメント焼成炉の排ガスの一部を除塵することを特徴とする請求項1に記載の有機汚泥の燃料化装置。
【請求項4】
前記熱交換器は、プレートフィン型熱交換器であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の有機汚泥の燃料化装置。
【請求項5】
燃焼炉の排ガスを除塵して得られた熱ガスと熱媒油との間で熱交換させ、
該熱交換によって加熱された熱媒油を用いて有機汚泥を間接加熱によって乾燥又は炭化して燃料を製造することを特徴とする有機汚泥の燃料化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−241282(P2011−241282A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113867(P2010−113867)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】