説明

有機溶剤含有空気の処理方法

【解決課題】 被処理空気中の有機溶剤の濃度が急激に変動しても、放出空気中の有機溶剤の含有量が増えることがない有機溶剤含有空気の処理方法であって、且つ燃焼炉排気ガスを除湿部材の再生空気として用いることができる有機溶剤含有空気の処理方法を提供することにある。
【解決手段】 除湿工程(a)、吸着除去工程(b)、吸着部材再生工程(c)、燃焼工程(d)、及び該吸着除去工程(b)により生じる吸着処理空気と、該燃焼工程(d)により生じる燃焼炉排気ガスとを混合して、混合空気を得、次いで、該混合空気中の有機溶剤を酸化分解し、得られる浄化空気を、水分を吸着した除湿部材に通気させて、該除湿部材を再生する除湿部材再生工程(e)を有し、該除湿工程(a)、該吸着除去工程(b)、該吸着部材再生工程(c)、該燃焼工程(d)及び該除湿部材再生工程(e)を同時に行うことを特徴とする有機溶剤含有空気の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除湿空気を製造工程に供給すると同時に、該製造工程から排出される、有機溶剤を含有する被処理空気の処理を連続的に行う、有機溶剤含有空気の処理方法に関し、より具体的には、除湿剤が担持されている除湿部材により、製造工程への供給空気を除湿する除湿工程と、水分を吸着した該除湿部材の再生を行う除湿部材再生工程と、ゼオライト等の吸着剤が担持されている吸着部材により、被処理空気中の有機溶剤を吸着除去する吸着除去工程と、有機溶剤を吸着した該吸着部材の再生を行う吸着部材再生工程と、該吸着部材の再生により生じる、高濃度の有機溶剤を含有する空気中の有機溶剤を燃焼させる燃焼工程とを、同時に且つ連続的に行う、有機溶剤含有空気の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶、半導体、LED、プラズマディスプレイ、樹脂又は塗料等の生産工程、あるいは、印刷、塗装又はクリーニング等の設備(以下、製造工程等とも記載する。)では、外気等を除湿部材に通気させて除湿し、得られる除湿空気が製造工程等に供給されると同時に、該製造工程等から、例えば、ハロゲン化炭化水素、トルエン、酢酸エチル等の有機溶剤を含有する空気(以下、有機溶剤含有空気とも記載する。)が排出される。該有機溶剤は有害であるので、該製造工程等の排出空気中の有機溶剤を、適切な方法で除去する必要がある。
【0003】
そこで、従来より、ゼオライト等の吸着剤が担持されている吸着部材を備える吸着装置、及び酸化触媒が充填されている燃焼炉を有する有機溶剤含有空気の処理システムで、有機溶剤を含有する被処理空気を、吸着部材に通気させて、該被処理空気中の該有機溶剤を吸着除去する吸着除去工程、吸着部材再生空気を、該有機溶剤を吸着した該吸着部材に通気させて該吸着部材を再生する吸着部材再生工程、及び該吸着部材再生工程で生じる濃縮空気を、燃焼炉に供給して、該濃縮空気中の該有機溶剤を燃焼させる燃焼工程を有し、該吸着除去工程、該再生工程及び該燃焼工程を同時に且つ連続的に行う、有機溶剤含有空気の処理方法が行われてきた。
【0004】
従来の有機溶剤含有空気の処理方法について、図5を参照に説明する。図5は、従来の有機溶剤含有空気の処理方法を示すフロー図である。図5中、従来の有機溶剤含有空気処理システム50は、吸着ゾーン及び再生ゾーンに分割されている吸着部材を備える吸着装置51、及び酸化触媒が充填されている燃焼炉52を有する。該吸着装置51において、該吸着ゾーンでは、有機溶剤を含有する被処理空気M中の有機溶剤の吸着除去が行われると同時に、該再生ゾーンでは、有機溶剤を吸着した吸着部材の再生が行われる。該吸着部材の再生に用いられた吸着部材再生空気Pは、高濃度の有機溶剤を含有する濃縮空気として該吸着装置51から排出され、該濃縮空気は、濃縮空気送気管53により、燃焼炉52へ供給される。そして、該燃焼炉52中で、該濃縮空気中の有機溶剤を燃焼させて、該濃縮空気中の有機溶剤を除去し、燃焼炉排気ガスQが該燃焼炉52から排出される。
【0005】
この様に、従来の有機溶剤含有空気の処理方法では、該被処理空気Gが吸着装置51で処理されて生じる吸着処理空気N、及び燃焼炉排気ガスQが、大気へと放出される。
【0006】
該燃焼炉では、有機溶剤が酸化触媒により燃焼するので、極めて大きな発熱が起こり、該酸化触媒は高温に晒されることになる。通常、該酸化触媒としては白金触媒が用いられているので、該酸化触媒の使用温度の上限は、500℃であり、酸化触媒の温度が500℃を超えると、該触媒の性能低下(熱劣化)が起こる。そのため、該酸化触媒の温度が500℃を超えないように、該酸化触媒の温度を管理する必要がある。該酸化触媒の温度は、該燃焼炉の排気ガスの温度を測定し、該排気ガスの温度に応じて、該燃焼炉に供給される空気の温度を調節し、該酸化触媒の温度を制御する。該燃焼炉に供給される空気の温度は、通常250〜300℃である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
該燃焼炉に供給される空気中の有機溶剤の濃度が高くなり過ぎると、有機溶剤を該燃焼炉で完全に燃焼させることができなくなる。すなわち、該燃焼炉で処理できる空気中の有機溶剤の濃度(含有量)には、上限がある。
【0008】
該製造工程から排出される有機溶剤含有空気、すなわち、被処理空気中の有機溶剤の濃度が変動することは当然であり、該被処理空気中の有機溶剤の濃度が高くなると、燃焼炉で処理される空気中の有機溶剤の濃度も高くなる。該燃焼炉に供給される空気中の有機溶剤の濃度上昇が小さい場合は、外気を取り入れて有機溶剤の濃度を下げて、該燃焼炉での処理限界濃度以下にして、対応することができる。しかし、工程トラブルが原因となる濃度変動は、濃度の上昇が著しいので、極めて多くの外気を取り入れて希釈しなければならないが、燃焼炉の処理量には制限があるため、取り入れる外気の量には制限があり、外気を取り入れることによる希釈では対応できない場合があった。
【0009】
この様な場合、該燃焼炉の処理限界濃度を超える有機溶剤含有空気が、該燃焼炉に供給されるので、該燃焼炉で、有機溶剤を完全に燃焼させることができず、未燃の有機溶剤が、該燃焼炉の排気ガス中に混入することになる。そのため、未燃の有機溶剤を含有する燃焼炉の排気ガスが、大気中へ放出されるという問題があった。
【0010】
また、燃焼炉の排気ガスは、高温であるにもかかわらず、未燃の有機溶剤を含有することがあるため、該燃焼炉排気ガスを、水分を吸着した該除湿部材の再生空気として使用することはできなかった。そのため、外気等の有機溶剤の含有量が少ない空気を、加熱し、該除湿部材に通気しなければならなかった。従って、従来の方法では、非常に熱効率が悪いという問題があった。
【0011】
従って、本発明の課題は、被処理空気中の有機溶剤の濃度の急激な変動に対応可能な、すなわち、有機溶剤の濃度が急激に変動しても、放出空気中の有機溶剤の含有量が増えることがない有機溶剤含有空気の処理方法であって、且つ燃焼炉排気ガスを除湿部材の再生空気として用いることができる、すなわち、熱効率が高い有機溶剤含有空気の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、(1)吸着装置で処理された吸着処理空気及び燃焼炉で処理された燃焼炉排気ガスを混合し、混合空気を得、該混合空気を酸化分解フィルター等を用いて酸化分解を行えば、燃焼炉の排気ガス中の有機溶剤の含有量が急激に変動しても、浄化空気中の有機溶剤の含有量が増えることがなく、安定して処理が行えること、(2)そのため、該浄化空気を、除湿部材の再生空気として用いることができるので、熱効率が高くなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明(1)は、被除湿空気を、除湿部材に通気させて、該被除湿空気中の水分を除湿する除湿工程(a)と、
有機溶剤を含有する被処理空気を、吸着部材に通気させて、該被処理空気中の該有機溶剤を吸着除去する吸着除去工程(b)と、
吸着部材再生空気を、該有機溶剤を吸着した該吸着部材に通気させて、該吸着部材を再生する吸着部材再生工程(c)と、
該吸着部材再生工程で生じる濃縮空気を、燃焼炉に供給して、該濃縮空気中の該有機溶剤を燃焼させる燃焼工程(d)と、
該吸着除去工程(b)により生じる吸着処理空気と、該燃焼工程(d)により生じる燃焼炉排気ガスとを混合して、混合空気を得、次いで、該混合空気中の該有機溶剤を酸化分解し、得られる浄化空気を、該水分を吸着した該除湿部材に通気させて、該除湿部材を再生する除湿部材再生工程(e)と、
を有し、該除湿工程(a)、該吸着除去工程(b)、該吸着部材再生工程(c)、該燃焼工程(d)及び該除湿部材再生工程(e)を同時に行う有機溶剤含有空気の処理方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明(2)は、外気を前記燃焼炉排気ガスに流入させ、該外気及び該燃焼炉排気ガスを混合すると同時に、前記燃焼炉排気ガスの一部を抜き出し、前記吸着部材再生空気として返送する前記本発明(1)記載の有機溶剤含有空気の処理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有機溶剤含有空気の処理方法によれば、被処理空気中の有機溶剤の濃度の急激な変動に対応可能な、すなわち、有機溶剤の濃度が急激に変動しても、放出空気中の有機溶剤の含有量が増えることがない有機溶剤含有空気の処理方法であって、且つ燃焼炉排気ガスを除湿部材の再生空気として用いることができる、すなわち、熱効率が高い有機溶剤含有空気の処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の有機溶剤含有空気の処理方法は、被除湿空気を、除湿部材に通気させて、該被除湿空気中の水分を除湿する除湿工程(a)と、
有機溶剤を含有する被処理空気を、吸着部材に通気させて、該被処理空気中の該有機溶剤を吸着除去する吸着除去工程(b)と、
吸着部材再生空気を、該有機溶剤を吸着した該吸着部材に通気させて、該吸着部材を再生する吸着部材再生工程(c)と、
該吸着部材再生工程で生じる濃縮空気を、燃焼炉に供給して、該濃縮空気中の該有機溶剤を燃焼させる燃焼工程(d)と、
該吸着除去工程(b)により生じる吸着処理空気と、該燃焼工程(d)により生じる燃焼炉排気ガスとを混合して、混合空気を得、次いで、該混合空気中の該有機溶剤を酸化分解し、得られる浄化空気を、該水分を吸着した該除湿部材に通気させて、該除湿部材を再生する除湿部材再生工程(e)と、
を有し、該除湿工程(a)、該吸着除去工程(b)、該吸着部材再生工程(c)、該燃焼工程(d)及び該除湿部材再生工程(e)を同時に行う有機溶剤含有空気の処理方法である。
【0017】
本発明の有機溶剤含有空気の処理方法について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の有機溶剤含有空気の処理方法の実施の形態例を示すフロー図である。図1中、有機溶剤含有空気処理システム30は、被処理空気A中の有機溶剤の吸着除去及び有機溶剤を吸着した吸着部材の再生を同時に行う吸着装置1、酸化触媒が充填されている燃焼炉2、酸化分解フィルター3、被除湿空気Jの除湿及び吸湿した除湿部材の再生を同時に行う除湿装置15、製造工場20と該吸着装置1の吸着ゾーンとを繋ぐ被処理空気供給管7、該吸着装置1の該吸着ゾーンと該酸化分解フィルター3とを繋ぐ吸着処理空気送気管8、該吸着装置1のパージゾーンに外気D1を供給するパージ空気供給管13、該吸着処理空気送気管8から分岐し、該吸着装置1のパージゾーンに繋がるパージ空気排出管14、該吸着装置1に吸着部材再生空気Bを供給する吸着部材再生空気供給管9、該吸着装置1の再生ゾーンと該燃焼炉2とを繋ぐ濃縮空気送気管10、該吸着処理空気送気管8から分岐し該燃焼炉2に繋がる燃焼炉排気ガス送気管11、該酸化分解フィルタ3と該除湿装置15とを繋ぐ浄化空気供給管12、該浄化空気供給管12から分岐し、第一バルブ27が付設されている第一外気供給管26、該除湿装置15から吸湿した浄化空気Kを大気へ放出する放出空気放出管17、該除湿装置15に被除湿空気Jを供給する被除湿空気供給管18、及び該除湿装置15と製造工場20とを繋ぐ除湿空気供給管19を有する。また、該吸着処理空気送気管8には第一送気ファン4が、該濃縮空気送気管10には第二送気ファン5が、該燃焼炉排気ガス送気管11には第三送気ファン6が、該除湿空気供給管19には第四送気ファン16が、該浄化空気供給管12には第五ファン25が付設されている。
【0018】
該除湿装置15の除湿ゾーンに、例えば、外気等の該被除湿空気Jを、第四送気ファン16で吸引して供給することにより、該被除湿空気J中の水分を、該除湿装置15の除湿部材に吸着させる除湿工程(a)を行なう。該被除湿空気Jは、該除湿装置15を通過する際に、水分が除去され、除湿空気Lとして、該除湿装置15から排出される。そして、該除湿空気Lを、該第四送気ファン16により、該製造工場20へと送気する。該除湿装置15に供給される際の該被除湿空気Jの温度は、通常0〜50℃、好ましくは15〜30℃であり、該除湿空気Lの温度は、通常40〜100℃である。また、該除湿空気供給管19の途中には、必要に応じて、冷却するための空調機を設置することができる。
【0019】
該製造工場20に該除湿空気Lが供給される同時に、該製造工場20からは、有機溶剤を含有する空気が排出される。そして、該吸着装置1の吸着ゾーンに、該製造工場20から排出される空気、すなわち、有機溶剤を含有する該被処理空気Aを、該第一送気ファン4で吸引して供給することにより、該被処理空気A中の有機溶剤を、該吸着装置1の吸着部材に吸着させる該吸着除去工程(b)を行う。該被処理空気Aは、該吸着装置1を通過する際に、有機溶剤が除去され、吸着処理空気Eとして、該吸着装置1から排出される。そして、該吸着処理空気Eを、該第一送気ファン4により、該酸化分解フィルタ3へと送気する。該吸着装置1に供給される際の該被処理空気Aの温度は、通常20〜50℃、好ましくは20〜30℃であり、該吸着処理空気Eの温度は、通常20〜60℃である。なお、図1に示すように、有機溶剤含有空気処理システム30では、該吸着装置1の吸着部材に設けられているパージゾーンに外気D1を供給して、該再生ゾーンで加熱された吸着部材を冷却し、該パージゾーンの排出空気Gを、該パージ空気排気管14より、該吸着処理空気に混合させているが、該パージゾーンを設け、パージ行うことは任意である。
【0020】
また、該吸着装置1の再生ゾーンに、該吸着部材再生空気Bを、該第二送気ファン5で吸引して供給することにより、該吸着装置1の吸着部材が吸着している有機溶剤を、該吸着部材再生空気Bに移動させて、該吸着部材を再生する吸着部材再生工程(c)を行う。該吸着部材再生空気Bは、該吸着装置1を通過する際に、該吸着部材から有機溶剤を受け取り、有機溶剤を含有する濃縮空気Fとして、該吸着装置1から排出される。そして、該濃縮空気Fを、該第二送気ファン5により、該燃焼炉2へと送気する。該吸着装置1に供給される際の該吸着部材再生空気Bの温度は、通常120〜300℃、好ましくは180〜200℃である。
【0021】
次いで、該濃縮空気Fを、該燃焼炉2に供給し、該濃縮空気F中の有機溶剤を燃焼させる燃焼工程(d)を行う。該燃焼工程を行うことにより、該濃縮空気F中の有機溶剤が除去される。該燃焼炉2に供給される際の該濃縮空気Fの温度は、通常30〜70℃であり、燃焼炉排気ガスHの温度は、通常300〜600℃である。
【0022】
そして、該燃焼工程(d)により生じる燃焼炉排気ガスHを、第三送気ファン6により、該吸着処理空気送気管8中に送気し、該吸着処理空気Eに混合させ、混合空気を得、次いで、該混合空気を、該酸化分解フィルター3で酸化分解し、該混合空気中の有機溶剤を除去する。該酸化分解フィルター3を通過した混合空気は、浄化空気Cとなり、該浄化空気供給管12から、該除湿装置15の再生ゾーンへと供給される。該酸化分解フィルター3に供給される際の該混合空気の温度は、通常100〜150℃である。なお、該吸着処理空気Eと該燃焼炉排気ガスHを混合することにより、該混合空気を所定の温度にすることも、更に外気を混合させて該混合空気の温度を調節することもできる。
【0023】
次いで、該除湿装置15の再生ゾーンに、該第五送気ファン25で、該浄化空気Cを供給することにより、該除湿装置15の除湿部材が吸着している水分を、該浄化空気Cに移動させて、該除湿部材を再生する除湿部材再生工程(e)を行う。該浄化空気Cは、該除湿装置15を通過する際に、該除湿部材から水分を受け取り、放出空気Kとして、該除湿装置15から排出される。該除湿装置15に供給される際の該浄化空気Cの温度は、通常100〜180℃、好ましくは120〜140℃である。また、該除湿装置15に該浄化空気Cを供給する前に、該浄化空気Cに、外気D2を混合させ、該浄化空気Cの温度を調節することができる。
【0024】
そして、該除湿工程(a)、該吸着除去工程(b)、該吸着部材再生工程(c)、該燃焼工程(d)及び該除湿部材再生工程(e)を同時に行うことにより、該製造工場20に除湿空気を供給すると同時に、該製造工場20から排出される有機溶剤を含有する空気を処理する。
【0025】
本発明の有機溶剤含有空気の処理方法では、有機溶剤の含有量が少ない該吸着処理空気に、該燃焼炉排気ガスを混合するため、工程トラブル等により該燃焼炉排気ガス中の有機溶剤の含有量が急激に高くなっても、該混合空気中の有機溶剤の含有量の変化は少ない。そのため、工程トラブル時でも、該混合空気中の有機溶剤の含有量が、該酸化分解フィルターの処理能力を超えないので、該酸化分解フィルターで適切な処理ができ、該浄化空気中の有機溶剤の含有量が高くならない。従って、本発明の有機溶剤含有空気の処理方法では、大気中へ放出される放出空気中の有機溶剤の含有量が極めて少なく、且つその変動が少ない。
【0026】
また、該酸化分解フィルターに供給する際の該混合空気の温度は、通常100〜150℃程度であり、該吸着処理空気の温度は、通常30〜50℃程度であり、該燃焼炉排気ガスの温度は、通常300〜600℃程度であるので、該混合空気を加熱しなくとも、該混合空気を所定の温度にすることができるので、熱効率が高くなる。
【0027】
また、該吸着処理空気も、該酸化分解フィルターで処理されるので、従来の有機溶剤含有空気処理システムに比べ、放出空気中の有機溶剤の含有量を少なくすることができる。
【0028】
また、該酸化分解フィルターから排出される該浄化空気は、(i)温度が、通常100〜150℃程度であり、該除湿部材の再生に必要な温度より高く、(ii)有機溶剤の含有量が少なく、且つ(iii)工程トラブル等があっても、有機溶剤の含有量が増えないので、該除湿部材の再生用の空気として用いることができる。従って、本発明の有機溶剤含有空気の処理方法は、除湿部剤の再生のために、外気等を加熱して使用する必要がないので、熱効率が高い。
【0029】
該吸着装置1の内部には、図2に示す吸着部材31が取り付けられている。該吸着部材31は、被処理空気A、吸着部材再生空気B及びパージ用の外気D1を通過させるための通気空洞を有する。また、該吸着部材31には、ゼオライト等の吸着剤が担持されている。そして、該吸着部材31は、被処理空気の供給側の開口面37a及び吸着部材再生空気の供給側の開口面37bが、仕切り板32により、吸着ゾーン34、再生ゾーン33及びパージゾーン38に分割されている。また、該吸着部材は、モーター36で回転可能なように、図示しないローター軸により吸着装置1に取り付けられている。
【0030】
該吸着ゾーン34に、該開口面37a側から、該被処理空気Aを通気することにより、該被処理空気A中の有機溶剤が、該吸着部材31に担持されている吸着剤に吸着され、有機溶剤が吸着除去された吸着処理空気Eが開口面37bから排出される。次いで、該吸着部材31を、モーター36により回転させることにより、有機溶剤を吸着した吸着剤は、該再生ゾーン33に移動する。そして、加熱された該吸着部材再生空気Bを、該開口面37b側から、該再生ゾーン33に通気することにより、有機溶剤が、該吸着剤から該吸着部材再生空気Bに移動し、該吸着剤は再生され、有機溶剤を含有する濃縮空気Fが該開口面37aから排出される。次いで、該吸着部材31を、モーター36により回転させ、再生された吸着剤は、パージゾーン38へ移動し、外気D1により冷却される。次いで、冷却された該吸着部材は、再び該吸着ゾーン34に移動する。
【0031】
該吸着部材31としては、特に制限されず、例えば、セラミック繊維、ガラス繊維等の繊維の織布又は不織布をコルゲート状ハニカム構造に成形して得られる、多孔質の繊維質担体に、吸着剤が担持されている吸着部材、あるいは、アルミ箔等の金属箔をコルゲート状ハニカム構造に成形して得られる、金属ハニカム担体に、吸着剤が担持されている吸着部材等が挙げられる。また、該吸着剤としては、特に制限されず、例えば、ゼオライト、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ等が挙げられる。
【0032】
該燃焼炉2に充填される酸化触媒としては、特に制限されず、例えば、コージェライト担体に、白金、パラジウム、マンガン、鉄等が担持されている触媒が挙げられる。
【0033】
また、図1に示す有機溶剤含有空気処理システム30では、該混合空気中の有機溶剤の酸化分解に、酸化フィルターが用いられているが、該酸化フィルターとしては、アルミナ、シリカ等の多孔質セラミック、カーボンファイバー、カーボンペーパーなどの担体に、金属触媒として、白金等の貴金属、又はパラジウム、マンガン、ニッケル等の遷移金属を、単独又は組み合わせて担持したものが挙げられるが、それに限定されるものではなく、他には、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ等が挙げられる。
【0034】
該除湿装置15の内部には、図3に示す除湿部材311が取り付けられている。該除湿部材311は、被除湿空気J及び浄化空気Cを通過させるための通気空洞を有する。また、該除湿部材311には、ゼオライト等の除湿剤が担持されている。そして、該除湿部材311は、被除湿空気の供給側の開口面371a及び浄化空気の供給側の開口面371bが、仕切り板321により、除湿ゾーン341及び再生ゾーン381に分割されている。また、該除湿部材は、モーター361で回転可能なように、図示しないローター軸により除湿装置15に取り付けられている。
【0035】
該除湿ゾーン341に、該開口面371a側から、該被除湿空気Jを通気することにより、該被除湿空気J中の水分が、該除湿部材311に担持されている除湿剤に吸着され、水分が吸着除去された除湿空気Lが開口面371bから排出される。次いで、該除湿部材311を、モーター361により回転させることにより、水分を吸着した除湿剤は、該再生ゾーン381に移動する。そして、該浄化空気Cを、該開口面371b側から、該再生ゾーン381に通気することにより、水分が、該除湿剤から該浄化空気Cに移動し、該除湿剤は再生され、水分を吸湿した放出空気Kが該開口面371aから排出される。次いで、再生された該除湿剤が、再び該除湿ゾーン341に移動する。
【0036】
該除湿部材311としては、特に制限されず、例えば、セラミック繊維、ガラス繊維等の繊維の織布又は不織布をコルゲート状ハニカム構造に成形して得られる、多孔質の繊維質担体に、除湿剤が担持されている除湿部材、あるいは、アルミ箔等の金属箔をコルゲート状ハニカム構造に成形して得られる、金属ハニカム担体に、除湿剤が担持されている除湿部材等が挙げられる。また、該除湿剤としては、特に制限されず、例えば、ゼオライト、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ等が挙げられる。
【0037】
該吸着部材再生空気Bの供給量に対する該被処理空気Aの供給量の比(被処理空気A/吸着部材再生空気B)は、好ましくは3〜15、特に好ましくは5〜10である。該吸着部材再生空気Bの供給量に対する該被処理空気Aの供給量の比が、上記範囲にあることにより、被処理空気中の有機溶剤の含有量が変動しても、放出空気中の有機溶剤の含有量の変化が少ないという本発明の効果が高まる。
【0038】
また、本発明の有機溶剤含有空気の処理方法では、図4に示すように、外気を該燃焼炉排気ガスに流入させ、該外気及び該燃焼炉排気ガスを混合すると同時に、該燃焼炉排気ガスの一部を抜き出し、該吸着部材再生空気として返送することができる。図4は、本発明の有機溶剤含有空気の処理方法において、燃焼炉排気ガスを吸着部材再生空気として返送する場合の形態例を示すフロー図である。有機溶剤含有空気処理システム40は、該燃焼炉2の後段で、燃焼炉排気ガス送気管11から分岐する第二外気供給管43と、該第二外気供給管43の分岐点より後段で、該燃焼炉排気ガス送気11から分岐し、吸着装置1の再生ゾーンに繋がる燃焼炉排気ガス返送管41とを有する以外は、前記有機溶剤含有空気処理システム30と同様である。なお、該第二外気供給管43には第二バルブ44が、該燃焼炉排気ガス返送管41には第三バルブ42が付設されている。
【0039】
そして、該第三バルブ42を調節して、該燃焼炉排気ガスの一部(以下、返送燃焼炉排気ガスB2)を、該燃焼炉排気ガス送気管11から抜き出し、該燃焼炉排気ガス返送管41により、吸着部材再生空気として、該吸着装置1の再生ゾーンに返送し、該除湿工程(a)、該吸着除去工程(b)、該吸着部材再生工程(c)、該燃焼工程(d)及び該除湿部材再生工程(e)を行う。また、該燃料炉排気ガスの返送と同時に、該第二バルブ44を調節して、該燃焼炉排気ガスの返送量と同程度の外気D3を、該第二外気供給管43から取り込み、該燃焼炉排気ガスに混合させる。
【0040】
工程トラブル等で、該被処理空気中の有機溶剤の濃度が急激に高くなると、該燃焼炉排気ガス中の有機溶剤の濃度も高くなってしまうが、その時の該燃焼炉排気ガス中の有機溶剤の濃度は、該吸着部材の該再生空気としては、問題がない程度の濃度であるので、該燃焼炉排気ガス(該返送燃焼炉排気ガスB2)を該再生空気として用いることができる。
【0041】
該吸着装置1の吸着部材を再生するための吸着部材再生空気は、通常180〜300℃であるため、外気を該吸着部材再生空気として用いる場合は、該吸着装置1に供給する前に、該外気を加熱する必要がある。ところが、該燃焼炉排気ガスを返送して、吸着部材再生空気として用いる場合は、300〜600℃の該燃焼炉排気ガスを、外気で温度調節して用いるので、加熱する必要がない。従って、該燃焼炉排気ガスの一部を該吸着部材再生空気として返送することが、熱効率が高い点で好ましい。
【0042】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
製造工場20を設けず、有機溶剤の含有量を調整した空気を、被処理空気Aとして、直接、被処理空気供給管7に導入する以外は、図4に示す有機溶剤含有空気処理システムを用いて、表1に示す条件で、有機溶剤含有空気の処理を行った。その結果を表2に示す。
・吸着装置1
担体;シリカアルミナ繊維製の紙(厚さ0.2mm、空隙率90%)からなる、直径400mm、通気方向長さ400mmのローター形状のハニカム構造担体を用意した。
担持されている吸着剤;ZSM−5型ゼオライト(組成Al0.64Si95.36192
吸着ゾーン、再生ゾーン及びパージゾーンの比率;3:1:1
・燃焼炉2
充填触媒;コージェライト担持白金触媒
充填層;直径0.5m×長さ1m
・酸化分解フィルター3
ニッケル担持多孔質セラミック
直径0.5m、厚み100mm
・除湿装置15
担体;シリカアルミナ繊維製の紙(厚さ0.2mm、空隙率90%)からなる、直径400mm、通気方向長さ400mmのローター形状のハニカム構造担体を用意した。
担持されている吸着剤;A型ゼオライト(組成Al12Si1248
吸着ゾーン及び再生ゾーンの比率;3:1
【0044】
【表1】

1)含有している有機溶剤:トルエン、イソプロピルアミン、メチルエチルケトン及び酢酸エチル
2)酸化分解フィルター3から排出される浄化空気Cのうち、5m/分だけを除湿装置15に送気し、残部は大気中へ放出した。
【0045】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の有機溶剤含有空気の処理方法の実施の形態例を示すフロー図である。
【図2】吸着装置の内部に設置されている吸着部材を示す模式図である。
【図3】除湿装置の内部に設置されている除湿部材を示す模式図である。
【図4】本発明の有機溶剤含有空気の処理方法において、燃焼炉排気ガスを再生空気として返送する場合の形態例を示すフロー図である。
【図5】従来の有機溶剤含有空気の処理方法を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0047】
1、51 吸着装置
2、52 燃焼炉
3 酸化分解フィルター
4 第一送気ファン
5 第二送気ファン
6 第三送気ファン
7 被処理空気供給管
8 吸着処理空気送気管
9 吸着部材再生空気供給管
10、53 濃縮空気送気管
11 燃焼炉排気ガス送気管
12 浄化空気供給管
13 パージ空気供給管
14 パージ空気排出管
15 除湿装置
16 第四送気ファン
17 放出空気放出管
18 被除湿空気供給管
19 除湿空気供給管
20 製造工場
25 第五送気ファン
26 第一外気供給管
27 第一バルブ
30、40、50 有機溶剤含有空気処理システム
31 吸着部材
311 除湿部剤
32、321 仕切り板
33、381 再生ゾーン
34 吸着ゾーン
341 除湿ゾーン
36、361 モーター
37a、37b、371a、371b 開口面
38 パージゾーン
41 燃焼炉排気ガス返送管
42 第三バルブ
43 第二外気供給管
44 第二バルブ
A、M 被処理空気
B、P 吸着部材再生空気
C 浄化空気
D1、D2、D3 外気
E、N 吸着処理空気
F 濃縮空気
G パージゾーンの排出空気
H、Q 燃焼炉排気ガス
J 被除湿空気
K 放出空気
L 除湿空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被除湿空気を、除湿部材に通気させて、該被除湿空気中の水分を除湿する除湿工程(a)と、
有機溶剤を含有する被処理空気を、吸着部材に通気させて、該被処理空気中の該有機溶剤を吸着除去する吸着除去工程(b)と、
吸着部材再生空気を、該有機溶剤を吸着した該吸着部材に通気させて、該吸着部材を再生する吸着部材再生工程(c)と、
該吸着部材再生工程で生じる濃縮空気を、燃焼炉に供給して、該濃縮空気中の該有機溶剤を燃焼させる燃焼工程(d)と、
該吸着除去工程(b)により生じる吸着処理空気と、該燃焼工程(d)により生じる燃焼炉排気ガスとを混合して、混合空気を得、次いで、該混合空気中の該有機溶剤を酸化分解し、得られる浄化空気を、該水分を吸着した該除湿部材に通気させて、該除湿部材を再生する除湿部材再生工程(e)と、
を有し、該除湿工程(a)、該吸着除去工程(b)、該吸着部材再生工程(c)、該燃焼工程(d)及び該除湿部材再生工程(e)を同時に行うことを特徴とする有機溶剤含有空気の処理方法。
【請求項2】
外気を前記燃焼炉排気ガスに流入させ、該外気及び該燃焼炉排気ガスを混合すると同時に、前記燃焼炉排気ガスの一部を抜き出し、前記吸着部材再生空気として返送することを特徴とする請求項1記載の有機溶剤含有空気の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−237041(P2007−237041A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61004(P2006−61004)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】