説明

有機溶媒を使用したモキシフロキサシンの湿式造粒法

有機溶媒または有機溶媒混合物を使用した湿式造粒により、無水モキシフロキサシンの固形非転化性医薬製剤を得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
特許文献1には、抗感染薬としてのモキシフロキサシンが開示されている。
【0002】
特許文献2には、モキシフロキサシンまたはその塩及び/若しくは水和物と、少なくとも1種のドライバインダと、少なくとも1種の崩壊剤と、少なくとも1種の滑沢剤と、2.5%〜25%の乳糖とを含む医薬組成物が開示されている。特許文献2の目的は、十分な硬さまたは破断荷重、また同時に優れた放出特性を有する錠剤の調製に利用可能な製剤処方を提供することである。この目的は、2.5〜25重量%の範囲の特定の量の乳糖の使用を通じて達成されている。
【0003】
特許文献3には、塩酸モキシフロキサシン一水和物の結晶形が開示されている。Avalox(登録商標)は、特許文献3で開示されているように塩酸モキシフロキサシン一水和物を含み、図1の粉末X線回折グラフが得られる。
【0004】
無水塩酸モキシフロキサシンは、塩酸モキシフロキサシン一水和物より可溶性医薬組成物を得るのに適している。結晶中の水の存在によって医薬組成物が分解されやすくなることから、無水塩酸モキシフロキサシンが好ましい。
【0005】
医薬製剤において無水塩酸モキシフロキサシン(図2の粉末X線回折グラフ)を使用すると好適な安定性が付与されることから、無水塩酸モキシフロキサシンは塩酸モキシフロキサシン一水和物より好ましい。
しかしながら、造粒段階において、湿潤剤が有機溶媒または有機溶媒混合物ではなく水であると、無水塩酸モキシフロキサシンはすぐに塩酸モキシフロキサシン一水和物に転化されてしまう。これは望ましくなく、防止すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第0350733号
【特許文献2】米国特許第6610327号(TR0101310)
【特許文献3】欧州特許第0780390号(TR0970481)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、有機溶媒または有機溶媒混合物を使用した湿式造粒により、無水モキシフロキサシンの固形非転化性医薬製剤を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特定の条件下において、無水塩酸モキシフロキサシンが、湿式造粒、また投薬形態になった後も、特許文献3に記載の形態に転化することなく独自の形態の特性を不変に有することが望ましい。特許文献3の形態とは異なり、無水塩酸モキシフロキサシンは、製剤の調製の過程また保管中にその特性を不変に維持すべきである。したがって、非転化性製剤及びその調製方法が得られるべきである。結果として、技術的な問題点は無水塩酸モキシフロキサシンがモキシフロキサシン一水和物に転化されてしまうことであり、この障害の解決策が、湿式造粒における有機溶媒または有機溶媒混合物の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】Avalox(登録商標)の粉末X線回折グラフ
【図2】無水塩酸モキシフロキサシンの粉末X線回折グラフ
【図3】塩酸モキシフロキサシン一水和物の粉末X線回折グラフ
【図4】イソプロピルアルコールで処理した場合の粉末X線回折グラフ
【図5】アセトンで処理した場合の粉末X線回折グラフ
【図6】エタノールで処理した場合の粉末X線回折グラフ
【図7】ジクロロメタンで処理した場合の粉末X線回折グラフ
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、医薬組成物は、無水塩酸モキシフロキサシン、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、マンニトール、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム及びその他の適切な賦形剤を含む。上記の賦形剤は限定されず、またこれらと同一の特徴を有する別の賦形剤と共に使用される場合もある。モキシフロキサシンという用語は最も広い意味で使用され、塩、塩基、その他の誘導体及び形態の全てを含む。
【0011】
湿式造粒法で使用する有機溶媒または有機溶媒混合物は、イソプロピルアルコール、アセトン、エタノール、ジクロロメタン及びこれらの混合物の群から選択される。有機溶媒または有機溶媒混合物が好ましいが、これは湿式造粒における水の使用は無水塩酸モキシフロキサシンから塩酸モキシフロキサシン一水和物への転化を引き起こすからである(図3)。
この転化は望ましくないことから、造粒を水または水混合物を使用して行うべきではない。無水塩酸モキシフロキサシンは、調製段階において水にさらされるべきではない。非転化性製剤を得るために、有機溶媒は、湿式造粒法においてイソプロピルアルコール、アセトン、エタノール、ジクロロメタンまたはこれらの混合物の群から選択される(それぞれ図4、図5、図6、図7)。
【実施例】
【0012】
実施例1:
ポビドンK−30をイソプロピルアルコールに添加し、このポビドンK−30が完全に溶解するまで混合した(工程1)。塩酸モキシフロキサシン及び微結晶性セルロースを造粒機に移し、混合した(工程2)。工程1の造粒溶液を工程2の粉末混合物に添加し、混合した。湿潤した顆粒を造粒機から取り出して炉に入れて乾燥させた。顆粒を篩過した。マンニトールSD200、クロスカルメロースナトリウムを容器内の混合物に移し、混合した。ステアリン酸マグネシウムを篩過し、容器内の混合物に添加し、篩過した。この混合物を、規格に従って適当なパンチを使用して打錠した。
イソプロピルアルコールで処理した場合の粉末X線回折グラフを図4に示す。図4からわかるように、転化は起きていない。同じ造粒を、イソプロピルアルコールの代わりにアセトン(図5)、エタノール(図6)またはジクロロメタン(図7)を使用して繰り返しても、塩酸モキシフロキサシン一水和物への転化はなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水モキシフロキサシンまたはその塩の湿式造粒法であって、
湿潤剤に、イソプロピルアルコール、アセトン、エタノール、ジクロロメタンまたはこれらの混合物の群から選択されるものを用いる
ことを特徴とする湿式造粒法。
【請求項2】
(a)ポビドンK−30をイソプロピルアルコールに添加し、そのポビドンK−30が完全に溶解するまで混合し、
(b)無水塩酸モキシフロキサシン及び微結晶性セルロースを造粒機に移し、混合し、
(c)工程(a)の造粒溶液を工程(b)の粉末混合物に添加し、混合し、
(d)湿潤した顆粒を造粒機から取り出して炉に入れて乾燥させ、篩過し、
(e)マンニトールSD200、クロスカルメロースナトリウムを容器内の混合物に移し、混合し、
(f)ステアリン酸マグネシウムを篩過し、容器内の混合物に添加し、篩過し、
(g)その混合物を、規格に従う適当なパンチを使用して打錠する
工程を含む
請求項1に記載の湿式造粒法。
【請求項3】
無水モキシフロキサシン塩に塩酸塩を用いる
請求項1に記載の湿式造粒法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−505194(P2012−505194A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530582(P2011−530582)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際出願番号】PCT/IB2008/054141
【国際公開番号】WO2010/041100
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(510327390)
【氏名又は名称原語表記】ABDI IBRAHIM ILAC SANAYI VE TICARET ANONIM SIRKETI
【Fターム(参考)】