説明

有機物を利用した二価鉄イオンを溶出する成形体

【課題】有機物を利用して安価に二価鉄イオンを効率的に溶出させることができる二価鉄イオンを溶出する成形体の提供。
【解決手段】水中に入れることにより水中に二価鉄イオンを発生させる二価鉄イオン溶出成形体であって、有機物と屑状又は紛状の鉄を混合して還元型熱処理炉に投入し、低酸素雰囲気状態で、加熱還元処理して得られる還元鉄と炭の焼結体及び還元鉄、炭の混合物で、粉状又は粒状に成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物と屑状又は紛状の鉄を混合して還元型熱処理炉に投入して得られる二価鉄イオンを溶出する成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の鉄イオン溶出体としては、鉄と炭を水溶性バインダーと共に混合して固めた多数の小塊を、非水溶性バインダーで固めて所定の形状に成形して水中に沈めることにより、鉄イオンを溶出させるようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献】特開2007−268511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の従来例では、鉄と炭を水溶性バインダーと共に混合して固めたものであるため、製造に手間がかかり生産性が非効率であるという問題があった。
【0004】
本発明は、上述の問題点を解決するもので、その目的とするところは、有機物と屑状又は紛状の鉄を混合して還元型熱処理炉に投入して得ることができる二価鉄イオンを溶出する成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するための手段として、請求項1記載の二価鉄イオンを溶出する成形体は水中に入れることにより水中に二価鉄イオンを発生させる二価鉄イオン溶出成形体であって、有機物と屑状又は紛状の鉄を混合して還元型熱処理炉に投入し、低酸素雰囲気状態の中で、300℃〜500℃の間において加熱還元処理して焼結させ得られる還元鉄と炭の焼結体及び還元鉄、炭の混合物で、所定の形状に成形されていることを特徴とする手段とした。
【0006】
請求項5記載の二価鉄イオンを溶出する成形体は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の二価鉄イオンを溶出する成形体において、前記二価鉄イオンを溶出する成形体の形状が塊状又は板状であることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0007】
以上述べたように、本発明による二価鉄イオンを溶出する成形体は大量に廃棄されている有機系廃棄物を主とする有機物と処分場のひっ迫などにより従来の埋め立て処理が困難になりつつある屑状又は紛状の鉄系の加工屑を材料に用いることで安価、かつ大量に製造することが可能となる。
【0008】
とりわけ、材料となる有機物としては、容易に入手可能で、公共下水、し尿、各種工場排水、各種有機系の産業廃棄物などの生物的処理から副生する汚泥類及び農林水産、畜産などから発生する廃資源、海底や湖底、ダム、河川の底に溜まったヘドロなどが有利に使用できることから産業上極めて有用である。
【0009】
さらに、二価鉄イオンは、海水中の植物連鎖の頂点にある植物プランクトンの餌となり、また、植物プランクトンの光合成で二酸化炭素を消費し、同時に海水中の生物の増殖とその活性によりヘドロを浄化するから、有明海など漁業被害が進む海域の再生にも役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る有機物を利用した二価鉄イオンを溶出する成形体製造の実施形態を示す工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下にこの発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0012】
有明海の底に溜まったヘドロと鉄系金属加工屑を適当に混合して、還元型熱処理炉に投入し、低酸素雰囲気状態の中で、300℃〜500℃の間において加熱還元処理して焼結させ二価鉄イオンを溶出する成形体を得た。
【0013】
上記成形体を、地中の酸素が不足し微生物がメタンガスや硫化水素を発生させている堀底に投入することにより、堀の水質を改善することが確認された。
【0014】
また、種もみと一定量の鉄粉と焼いた石膏を混ぜ合わせ、田んぼに直接まくコメづくりが既知の技術として各地で進められているが、一定量の上記成形物と水に十分浸した種もみを混ぜ合わせ、田んぼに直接まくことにより、一層の生産コストの低減が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に入れることにより水中に二価鉄イオンを発生させる二価鉄イオン溶出成形体であって、有機物と屑状又は紛状の鉄を混合して還元型熱処理炉に投入し、低酸素雰囲気状態の中で、300℃〜500℃の間において加熱還元処理して焼結させ得られる還元鉄と炭の焼結体及び還元鉄、炭の混合物で、所定の形状に成形されていることを特徴とする二価鉄イオンを溶出する成形体。
【請求項2】
前記加熱還元処理して得られる焼結体が還元鉄と炭が混合焼結した焼結体であって粒状又は紛状であることを特徴とする請求項1に記載の二価鉄イオンを溶出する成形体。
【請求項3】
前記加熱還元処理して得られる還元鉄が粒状又は紛状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の二価鉄イオンを溶出する成形体。
【請求項4】
前記加熱還元処理して得られる炭が粒状又は紛状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の二価鉄イオンを溶出する成形体。
【請求項5】
前記二価鉄イオンを溶出する成形体の形状が塊状又は板状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の二価鉄イオンを溶出する成形体。
【請求項6】
肥料として用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の二価鉄イオンを溶出する成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−161779(P2012−161779A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39002(P2011−39002)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(511049543)特定非営利活動法人環境科学研究所 (1)
【出願人】(511049554)
【出願人】(511049565)
【出願人】(511049576)
【出願人】(511049587)
【出願人】(511049598)
【出願人】(511049602)株式会社みやもり産機 (1)
【出願人】(511049613)有限会社広和金属工業 (3)
【Fターム(参考)】