説明

有機発光ダイオードおよび発光素子

【課題】従来の有機発光ダイオードにおいては、有機発光層で発生した光の一部が、透明基板と外部の境界、および、透明基板と透明電極層の境界で全反射を繰り返した末、透明基板の側面から外部に出射する。従来の有機発光ダイオードは、光の取り出し効率が低い。
【解決手段】有機発光ダイオード10に用いられる透明基板11は、短辺16に平行な断面において、透明電極層12側の辺11a(上辺)の長さが、出射側の辺11b(下辺)の長さより短い。透明電極層12側の辺11a(上辺)の端11c、11dと、出射側の辺11b(下辺)の端11e、11fが、直線または曲線で結ばれる。透明基板11の側面11g、11hと、出射側の辺11b(下辺)がなす角度α、βは、0°より大きく、90°より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機発光ダイオードに関し、特に、有機発光ダイオードの透明基板の構造に関する。また、本発明は有機発光ダイオードを組み合わせて形成した発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に、典型的な有機発光ダイオード30(有機EL)の模式的な平面図と断面図を示す(非特許文献1)。図6に示すように、典型的な有機発光ダイオード30においては、透明基板31(ガラス基板)の上に、透明電極層32(陽極)、有機発光層33、裏面電極層34(陰極)が積層形成される。透明電極層32には、インジウム錫酸化物(ITO)が広く用いられる。裏面電極層34には、アルミニウムやマグネシウムが広く用いられる。裏面電極層34は不透明である。
【0003】
透明電極層32(陽極)と裏面電極層34(陰極)の間に直流電圧を印加すると、透明電極層32から注入されたホールと、裏面電極層34から注入された電子が、有機発光層33で結合して発光する。裏面電極層34は不透明なため、有機発光層33で発生した光35は、透明電極層32、透明基板31を透過して、外部(下方)に出射する。
【0004】
有機発光ダイオードの別の例として、静止した記号や文字を表示する有機発光ダイオードが、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された有機発光ダイオードは、図示しないが、裏面電極層が2層に形成され、その内の1層が記号および文字のパターンとなっている。しかし、透明基板については、図6に示す有機発光ダイオード30の透明基板31と、特に異なるところはない。
【0005】
図7には、図6に示した有機発光ダイオード30において、有機発光層33で発生した光35が透明基板31の内部で進行する様子を示す。有機発光層33で発生した光が、透明基板31の内部で進行する様子は、特許文献1に記載された有機発光ダイオードでも同様である。
【0006】
有機発光層33で発生した光35には指向性がないため、透明電極層32を通過した光35は、透明基板31の内部で様々な方向に進む。透明基板31と外部(例えば空気)の境界の光の臨界角は、透明基板31の屈折率と外部の屈折率の比により決まる。臨界角より大きい角度で、透明基板31の内部から、透明基板31と外部の境界に入射する光は、透明基板31と外部の境界で全反射する。
【0007】
透明基板31と外部の境界で全反射した光は、次に透明基板31と透明電極層32の境界で全反射する。その光は、再び透明基板31と外部の境界で全反射する。有機発光層33で発生した光35のうち、臨界角より大きい角度で、透明基板31の内部から、透明基板31と外部の境界に入射する光は、このように全反射を繰り返した末、透明基板31の側面31a、31bから外部に出射する。
【0008】
特許文献1に記載された有機発光ダイオードにおいても、透明基板の構造は、図6、図7に示す有機発光ダイオード30と同様であるから、有機発光層で発生した光の一部は全反射を繰り返した末、透明基板の側面から外部に出射する。
【0009】
従来の有機発光ダイオード30においては、有機発光層33で発生した光35の一部は全反射を繰り返した末、透明基板31の側面31a、31bから外部に出射する。透明基板31の側面31a、31bから外部に出射した光は、利用することができないため、従来の有機発光ダイオード30には、光の取り出し効率が低いという課題がある。
【0010】
従来の有機発光ダイオード30は、透明基板31としてガラス基板が広く用いられているため、可撓性がない。そのため、従来の有機発光ダイオード30で、大型サイズのものを用いて、曲面発光素子あるいは曲面ディスプレイを作製することは難しい。
【0011】
従来の有機発光ダイオード30で、小型サイズのものを並べて、曲面発光素子あるいは曲面ディスプレイを作製することはできる。しかし、従来の有機発光ダイオード30は、通常、正方形または正方形に近い長方形であるため、曲面発光素子あるいは曲面ディスプレイを作製するためには、有機発光ダイオード30を格子状に並べる必要がある。このため、有機発光ダイオード30の数量が多くなり、配線も複雑になる。従って、従来の小型サイズの有機発光ダイオード30を並べて、曲面発光素子あるいは曲面ディスプレイを作製することは実用的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−108731号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】城戸淳二著「有機ELのすべて」日本実業出版社、2003年2月20日発行、47ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の有機発光ダイオード30においては、有機発光層33で発生した光35の一部が、透明基板31と外部の境界、および、透明基板31と透明電極層32の境界で全反射を繰り返した末、透明基板31の側面31a、31bから外部に出射する。透明基板31の側面31a、31bから外部に出射する光35は利用できないため、従来の有機発光ダイオード30には、光の取り出し効率が低いという課題がある。
【0015】
従来の有機発光ダイオード30は、平面形状が、一般に正方形または正方形に近い長方形である。また、従来の有機発光ダイオード30は、透明基板31がガラス板であるため、可撓性がない。このため、従来の有機発光ダイオード30を用いて、曲面発光素子あるいは曲面ディスプレイを作製することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)本発明の有機発光ダイオードは、少なくとも、透明基板と、透明電極層と、有機発光層と、裏面電極層とを、この順に有する。本発明の有機発光ダイオードは、平面形状が長方形であり、長方形の長辺の長さは短辺の長さの5倍以上である(長辺の長さを単に長さ、短辺の長さを幅ともいう)。透明基板の短辺に平行な断面において、透明基板の透明電極層側の辺の長さが、出射側の辺の長さより短い。透明基板の透明電極層側の辺の端と、出射側の辺の端とが、直線または曲線で結ばれている。それらの直線または曲線と、出射側の辺のなす角度は、0°より大きく、90°より小さい。ここで、曲線と、出射側の辺のなす角度とは、出射側の辺の端における曲線の接線が、出射側の辺となす角度を意味する。
(2)本発明の有機発光ダイオードは、透明基板の短辺に平行な断面において、透明基板の透明電極層側の辺の各端と、出射側の辺の各端とが直線で結ばれる。従って、透明基板の短辺に平行な断面が台形である。
(3)本発明の有機発光ダイオードは、透明基板の、短辺に平行な断面が台形であり、台形の出射側の底角が40°〜50°である。
(4)本発明の有機発光ダイオードは、透明基板の透明電極層側の辺の端と、出射側の辺の端とが放物線で結ばれる。
(5)本発明の有機発光ダイオードは、透明基板の透明電極層側の辺の端と、出射側の辺の端とが円弧で結ばれる。
(6)本発明の有機発光ダイオードは、透明基板が可撓性を有する高分子フィルムからなる。
(7)本発明の発光素子は、上記の有機発光ダイオードを、簾状に並べて形成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有機発光ダイオードでは、従来は透明基板の側面から外部に出射して利用できなかった光の進路を制御し、透明基板の正面から出射するようにした。透明基板の正面から出射する光は利用できるから、本発明の有機発光ダイオードは、光の取り出し効率が従来のものより高い。
【0018】
本発明の有機発光ダイオードは細長い長方形である。この形状を利用して、本発明の有機発光ダイオードは、透明基板に可撓性がない場合でも、簾状に平行に並べることにより、大型の曲面発光素子あるいは曲面ディスプレイ(例えば円筒形のディスプレイ)を作製することができる。
【0019】
本発明の有機発光ダイオードは、可撓性のある高分子フィルムを透明基板に用いることにより、さらに自由な形状の曲面発光素子あるいは曲面ディスプレイ(例えば球形のディスプレイ)を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の有機発光ダイオードの平面図と断面図
【図2】本発明の有機発光ダイオードを平面的に簾状に並べた発光素子の平面図と断面図
【図3】本発明の有機発光ダイオードを円筒形に並べたディスプレイの模式図
【図4】(a)本発明の有機発光ダイオードの断面図、(b)本発明の有機発光ダイオードの断面図、(c)本発明の有機発光ダイオードの断面図、(d)従来の有機発光ダイオードの断面図
【図5】本発明の有機発光ダイオードにおける光の進路の模式図
【図6】従来の有機発光ダイオードの平面図と断面図
【図7】従来の有機発光ダイオードにおける光の進路の模式図
【発明を実施するための形態】
【0021】
[有機発光ダイオード]
図1に本発明の有機発光ダイオード10の一例を示す。本発明の有機発光ダイオード10は、特定の断面形状を有する透明基板11と、透明電極層12と、有機発光層13と、裏面電極層14を、この順に備える。
【0022】
本発明の有機発光ダイオード10は、図示しないが、上記の各層の間に他の層が配置されていてもよい。例えば、透明電極層12と有機発光層13との間に、ホール注入層やホール輸送層が配置されることがある。あるいは、有機発光層13と裏面電極層14との間に、電子輸送層や電子注入層が配置されることがある。
【0023】
図1に示すように、本発明の有機発光ダイオード10の平面形状は、細長い長方形である。本発明の有機発光ダイオードは、長辺15の長さL1が、短辺16の長さ(幅)W1の少なくとも5倍以上であり、好ましくは10倍以上であり、さらに好ましくは100倍以上である。短辺16の長さ(幅)W1は、好ましくは10mm〜100mmであり、さらに好ましくは10mm〜50mmである。
【0024】
図2に示すように、本発明の有機発光ダイオード10を平面的に簾状に並べると、従来の有機発光ダイオード30に似た、正方形または正方形に近い長方形の発光素子あるいはディスプレイを作製することができる。本発明の有機発光ダイオード10を簾状に並べた発光素子あるいはディスプレイは、光の取り出し効率が高いため、同一サイズの従来の有機発光ダイオードよりも輝度が高い(原理後述)。
【0025】
図3に示すように、本発明の有機発光ダイオード10は、簾状に並べて、曲面を容易に形成することができる。図3は、複数の本発明の有機発光ダイオード10を簾状に並べて、円筒形の大型ディスプレイ20を形成した例である。この円筒形の大型ディスプレイ20の直径は例えば1m、高さは例えば2mである。
【0026】
[透明基板]
本発明に用いられる透明基板11を形成する材料は、透明性に優れたものが好ましく、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリシクロオレフィン系樹脂、またはポリカーボネート系樹脂などが適する。本発明に用いられる透明基板11の厚みは、好ましくは10μm〜500μmである。
【0027】
図4(a)〜(c)に示すように、本発明の有機発光ダイオード10に用いられる透明基板11は、短辺16に平行な断面(図1のA−A断面)の形状に特徴がある。本発明に用いられる透明基板11は、透明電極層12側の辺11a(上辺)の長さが、出射側の辺11b(下辺)の長さよりも短い。一方、従来の有機発光ダイオード30に用いられる透明基板31は、図4(d)に示すように、透明電極層32側の辺31c(上辺)の長さと、出射側の辺31d(下辺)の長さが等しく、断面が長方形である。
【0028】
図4(d)に示す従来の有機発光ダイオード30では、図7に示すように、有機発光層33で発生した光35の一部は全反射を繰り返した末、透明基板31の側面31a、31bから外部に出射する。透明基板31の側面31a、31bから外部に出射した光35は利用できない。
【0029】
図4(a)に示す、本発明に用いられる透明基板11の一例では、透明電極層12側の辺11a(上辺)の端11cと、出射側の辺11b(下辺)の端11eを結ぶ、透明基板11の側面11gを表わす線が、直線である。また、透明電極層12側の辺11a(上辺)の端11dと、出射側の辺11b(下辺)の端11fを結ぶ、透明基板11の側面11hを表わす線が、直線である。この場合、透明基板11の、短辺16に平行な断面の形状は、台形となる。
【0030】
図4(a)に示すように、透明基板11の、短辺16に平行な断面の形状が台形となる場合、出射側の辺11b(下辺)と側面11gのなす角度α、出射側の辺11b(下辺)と側面11hのなす角度βは、40°〜50°が好ましい。角度αと角度βが等しい場合、透明基板11の、短辺16に平行な断面の形状は等脚台形となる。
【0031】
図4(b)に示す、本発明に用いられる透明基板11の別の例では、透明電極層12側の辺11a(上辺)の端11cと、出射側の辺11b(下辺)の端11eを結ぶ、透明基板11の側面11gを表わす線が、放物線である。透明基板11の側面11gの、出射側の辺11b(下辺)の端11eにおける接線11iと、出射側の辺11b(下辺)のなす角度はαである。また、透明電極層12側の辺11a(上辺)の端11dと、出射側の辺11b(下辺)の端11fを結ぶ、透明基板11の側面11hを表わす線が、放物線である。透明基板11の側面11hの、出射側の辺11b(下辺)の端11fにおける接線11jと、出射側の辺11b(下辺)のなす角度はβである。
【0032】
図4(c)に示す、本発明に用いられる透明基板11のさらに別の例では、透明電極層12側の辺11a(上辺)の端11cと、出射側の辺11b(下辺)の端11eを結ぶ、透明基板11の側面11gを表わす線が、円弧である。透明基板11の側面11gの、出射側の辺11b(下辺)の端11eにおける接線11iと、出射側の辺11b(下辺)のなす角度はαである。また、透明電極層12側の辺11a(上辺)の端11dと、出射側の辺11b(下辺)の端11fを結ぶ、透明基板11の側面11hを表わす線が、円弧である。透明基板11の側面11hの、出射側の辺11b(下辺)の端11fにおける接線11jと、出射側の辺11b(下辺)のなす角度はβである。
【0033】
図4(a)〜(c)に示す、透明基板11の断面図は左右対称であるが、必ずしも左右対称である必要はない。また、透明基板11の側面11gと、透明基板11の側面11hが、同種の曲線である必要はなく、また、一方が直線で他方が曲線でもよい。
【0034】
図4(a)〜(c)に示す透明基板11の断面形状は、例えば、ダイシング加工やインプリント加工により形成することができる。
【0035】
図5に示すように、本発明の有機発光ダイオード10において、透明電極層12から出射して、透明基板11の側面11g、11hに向かう光17は、透明基板11の側面11g、11hで反射して、透明基板11の出射側の辺11b(下辺)から出射する。このため、光17が透明基板11の側面11g、11hから外部に出射することが避けられ、光17の利用効率が高くなる。
【0036】
図4(b)に示す透明基板11、図4(c)に示す透明基板11においても、透明電極層12から出射して透明基板11の側面11g、11hに向かう光は、透明基板11の側面11g、11hで反射して、透明基板11の出射側の辺11b(下辺)から出射する。このため、光が透明基板11の側面11g、11hから外部に出射することが避けられ、光の利用効率が高くなる。
【0037】
本発明の有機発光ダイオード10に用いられる透明基板11は、短辺16に平行な断面において、透明電極層12側の辺11a(上辺)の長さが、出射側の辺11b(下辺)の長さより短い。そして、透明電極層12側の辺11a(上辺)の端11c、11dと、出射側の辺11b(下辺)の端11e、11fが、直線または曲線で結ばれる。前記の直線または曲線は、透明基板11の側面11g、11hを表わす。
【0038】
前記の直線または曲線(透明基板11の側面11g、11h)と、出射側の辺11b(下辺)がなす角度(α、β)は、0°より大きく、90°より小さい。なお、前記の曲線(透明基板11の側面11g、11h)と、出射側の辺11b(下辺)がなす角度とは、出射側の辺11b(下辺)の端11e、11fにおける曲線の接線が、出射側の辺11b(下辺)となす角度を意味する。
【0039】
本発明の有機発光ダイオード10は、透明基板11の側面11g、11hの形状を上記のように形成することによって、従来の有機発光ダイオード30では透明基板31の側面31a、31bから外部に出射していた光を、透明基板11の側面11g、11hで反射させて、透明基板11の正面(出射側の辺11b)に向かうようにすることができる。その結果、本発明の有機発光ダイオード10は、光の利用効率が高くなる。
【0040】
[透明電極層]
本発明に用いられる透明電極層12は、透明性が高く、電気伝導度が高い(抵抗率が低い)層である。透明電極層12は、有機発光層13にホールを注入する陽極として用いられる。透明電極層12の抵抗率は、好ましくは、1×10[−3]Ω・cm以下である(本明細書では、10を10[n]と表示する)。
【0041】
本発明に用いられる透明電極層12を形成する材料は、特に制限はないが、代表的にはインジウム錫酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)である。これらの層は、例えば、真空蒸着法やスパッタ法により形成される。本発明に用いられる透明電極層12の厚みは、好ましくは、20nm〜500nmである。
【0042】
[有機発光層]
本発明に用いられる有機発光層13は、注入された電荷が再結合することにより励起され、発光する層である。
【0043】
本発明に用いられる有機発光層13を形成する材料は、特に制限はないが、例えば、低分子発光色素、π共役系ポリマー、色素含有系ポリマー、または発光性オリゴマーなどである。これらの層は、真空蒸着法や溶液塗布法などで形成される。本発明に用いられる有機発光層13の厚みは、好ましくは、10nm〜300nmである。
【0044】
[裏面電極層]
本発明に用いられる裏面電極層14は、有機発光層13に電子を注入する陰極として用いられる。本発明に用いられる裏面電極層14を形成する材料は、特に制限はないが、代表的にはアルミニウムや、マグネシウムや、リチウムを含む合金である。本発明に用いられる裏面電極層14の厚みは、好ましくは、20nm〜500nmである。
【実施例】
【0045】
[実施例1]
幅10mm、厚み100μm、長さ100mmのポリエチレンナフタレートからなる透明基板11を準備し、ダイシングにより長辺15側の両側面を45°傾斜面に加工した。これにより、透明基板11の短辺16に平行な断面は等脚台形となり、底角α、底角βはいずれも45°となった。
【0046】
透明基板11の上側表面に、厚み85nmのインジウム錫酸化物(ITO)からなる透明電極層12、厚み50nmのナフチルジアミン(α−NPD)からなるホール輸送層、厚み50nmのアルミニウムキノリン錯体からなる有機発光層13、厚み100nmのアルミニウムからなる裏面電極層14を、真空蒸着法により順次形成した。
【0047】
このようにして作製した有機発光ダイオード10を10本準備し、これらを図2に示すように、簾状に並べて電気的に接続し、縦横100mmの正方形の発光素子を作製した。この発光素子の光の取り出し効率を表1に示す。
【0048】
[実施例2]
縦横100mmの正方形のポリエチレンナフタレートからなる透明基板を準備し、ダイシングにより、相対する1組の辺の側面を45°傾斜面に加工した(底角α、底角βはいずれも45°)。これ以外は、実施例1と同様の方法で有機発光ダイオードを作製し、これを電気的に接続し、縦横100mmの正方形の発光素子を作製した。この発光素子の光の取り出し効率を表1に示す。
【0049】
[比較例]
縦横100mmの正方形のポリエチレンナフタレートからなる透明基板を準備した。透明基板の端面のダイシング加工はしなかったため、透明基板の、辺に平行な断面は、長方形である。これ以外は、実施例1と同様の方法で有機発光ダイオードを作製し、これを電気的に接続し、縦横100mmの正方形の発光素子を作製した。この発光素子の光の取り出し効率を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
[評価]
実施例2と比較例を比較すると、実施例2の方が正面輝度、光の取り出し効率が少し高い。この理由として、実施例2は2辺がダイシング加工されていて、この辺で光が正面方向に反射されるのに対し、比較例はどの辺もダイシング加工されていないためであると考えられる。ダイシング加工された辺は光漏れが少なく、ダイシング加工されていない辺は光漏れが多い。
【0052】
実施例1と実施例2を比較すると、実施例1の方が正面輝度、光の取り出し効率がかなり高い。この理由として、実施例1はダイシング加工された辺が20本あるのに対し、実施例2はダイシング加工された辺が2本しかないためであると考えられる。ダイシング加工された辺の本数が多い方が、正面に向かう光が多くなるため、正面輝度、光の取り出し効率が高くなる。
【0053】
[正面輝度の測定方法]
有機発光ダイオード(発光素子)に10Vの直流電圧を印加し、発光素子中央付近の法線方向の輝度を、プレサイスゲージ社製「有機EL発光効率測定装置EL1003」を用いて測定した。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の有機発光ダイオードおよび発光素子は、用途に特に制限はないが、例えば、ディスプレイ、電子ペーパー、電子広告、照明などに用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
10 有機発光ダイオード
11 透明基板
11a 透明電極層側の辺
11b 出射側の辺
11c 透明電極層側の辺の端
11d 透明電極層側の辺の端
11e 出射側の辺の端
11f 出射側の辺の端
11g 透明基板の側面
11h 透明基板の側面
11i 接線
11j 接線
12 透明電極層
13 有機発光層
14 裏面電極層
15 有機発光ダイオードの長辺
16 有機発光ダイオードの短辺
17 光
20 大型ディスプレイ
30 有機発光ダイオード
31 透明基板
31a 透明基板の側面
31b 透明基板の側面
31c 透明電極層側の辺
31d 出射側の辺
32 透明電極層
33 有機発光層
34 裏面電極層
35 光



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、透明基板と、透明電極層と、有機発光層と、裏面電極層とを、この順に有する有機発光ダイオードであって、
前記有機発光ダイオードは、平面形状が長方形であり、
前記長方形の長辺の長さは、短辺の長さの5倍以上であり、
前記透明基板の前記短辺に平行な断面において、
前記透明基板の前記透明電極層側の辺の長さが、出射側の辺の長さより短く、
前記透明基板の前記透明電極層側の辺の端と、前記出射側の辺の端とが、直線または曲線で結ばれ
前記の直線または曲線と、前記出射側の辺のなす角度は、0°より大きく、90°より小さい、有機発光ダイオード。
【請求項2】
前記透明基板の前記短辺に平行な断面において、
前記透明基板の前記透明電極層側の辺の各端と、前記出射側の辺の各端とが直線で結ばれ、
前記透明基板の前記短辺に平行な断面が台形である、請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項3】
前記透明基板の、前記短辺に平行な断面が台形であり、
前記台形の前記出射側の底角が40°〜50°である、請求項2に記載の有機発光ダイオード。
【請求項4】
前記透明基板の前記透明電極層側の辺の端と、前記出射側の辺の端とが放物線で結ばれた、請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項5】
前記透明基板の前記透明電極層側の辺の端と、前記出射側の辺の端とが円弧で結ばれた、請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項6】
前記透明基板が可撓性を有する高分子フィルムからなる、請求項1〜5のいずれかに記載の有機発光ダイオード。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの有機発光ダイオードを、簾状に並べて形成した発光素子。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−129387(P2011−129387A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287164(P2009−287164)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】