説明

有機発光性化合物及びその化合物を含有する発光層

【課題】本発明は、酸素の影響を受けない優れた光物性を有する有機発光性化合物及びその化合物を含む発光層を提供する。
【解決手段】ビピリジン−イミダゾール骨格を単数または複数有し、ビピリジン−イミダゾール骨格を複数有する場合は、特定のスペーサーを介してその骨格を連結した下記式(I)


(式中、すべての記号は明細書中の記載と同じ意味を表わす。)
及び式(I)の異性体である式(I')


(式中、すべての記号は明細書中の記載と同じ意味を表わす。)
で示される有機発光性化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光性化合物及びその化合物を含有する発光層に関する。より詳しくいえば、優れた光物性を有する、酸素の影響を受けない有機発光性化合物及びその化合物を含有する発光層に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光関連技術の進歩に伴い、有機エレクトロルミネセンス(有機EL)発光材料、レーザー色素、発光性試薬類など、新しい有機発光性化合物の開発が望まれている。
有機発光性化合物は、置換基を導入するなどして励起ならびに発光波長を変化させたり、被測定化合物などの認識機能の付加や高分子化など様々な高機能化が可能である。従って、発光性を示す新規な基本骨格構造の発見は多様な発展をもたらすことから、特に注目され多くの研究が行なわれている。
【0003】
有機発光性化合物の用途としては、例えば、細胞内蛍光プローブ、天然色画像の表現に必要な波長領域の光を出す有機ELの発光体、色素レーザーの多様な波長に対応した色素等の多様な用途が挙げられる。特に、発光材料としての利用には、充分な発光量と、色の再現に適した、他の発光材料とのバランスの取れた組み合わせが可能なものが望まれる。また、蛍光材料としては、基本的には発光量子収率が高いことが望ましく、プローブ材料としては、励起光と蛍光との識別性が良く、生物学的な測定においては、励起波長が被測定材料を損傷させないものが望まれる。
【0004】
そこで、本発明者らは、発光材料の中でも、コンパクトディスク(CD)等への高密度記録に使用されるなど近年特に需要が高まっている青色発光性化合物に注目し、従来のジスチリルビフェニル系発光材、アリールエチニルベンゼン系発光材、セキシフェニル系発光材、ベンゾイミダゾール誘導体系発光材等の青色発光性化合物よりも合成が容易で、かつ高輝度、高効率の有機低分子青色発光材料の研究を行なってきた。
【0005】
特許文献1においては、ビピリジン誘導体の合成技術の容易性などに着目し、ビピリジン誘導体、特にビピリジンとベンゾイミダゾールとを組み合わせた化合物、ビピリジンの5,5'−位にベンゾイミダゾールを2位で結合した化合物を合成し、その化合物は極めて高効率で青色の強い発光を示した。また、前記構造の半分の構造を持つ、2−ピリジン−3−イル−1H−ベンゾイミダゾールにもかなり優れた発光特性を見出し、2−ピリジン−3−イル、5,5'−ビピリジルとベンゾイミダゾール−2−イルとの結合が、発光性を示す新規な基本骨格構造であることを開示した。また、特許文献2においては、さらに工業的により好適に応用させるために、発光物性が同程度以上の有機溶媒に溶解しやすい化学構造を持つビピリジン誘導体を開示している。
【0006】
また、近年の有機ELは高効率化の他に長寿命化も大きな課題であり、様々な研究が行なわれている。特に有機ELの寿命を縮める原因の一つとしては、発光層を構成する有機化合物が酸素等に対して不安定であることが挙げられているが、発光層に酸素等の進入を遮断する方法で寿命を維持しているの現状である。従って有機EL発光材料としては、酸素等に対して安定であり、さらに発光物性が安定している有機発光性化合物が求められる。
【0007】
【特許文献1】特開2004−075603号公報
【特許文献2】特開2005−281248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の状況に鑑み、酸素の影響を受けない優れた光物性を有する有機発光性化合物及びその化合物を含む発光層を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ビピリジンとベンゾイミダゾールを骨格に有する化合物に高効率で強い発光を示す物性を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の有機発光性化合物及びその化合物を含有する発光層に関する。
1.式(I)
【化1】

(式中、R1、R2、R'1、及びR'2は、各々独立して水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群から選択される基、またはR1、R2及びそれらが結合しているイミダゾール環により、及び/またはR'1、R'2及びそれらが結合しているイミダゾール環により、未置換またはアルキル基、アシル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群から独立に選択される基で置換されたベンゾイミダゾール基を形成する原子団を表わし、
3、R'3、R4、及びR'4は、各々独立して水素原子;未置換、または窒素原子、酸素原子、硫黄原子及び/またはハロゲン原子を含んでもよいアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基;及び未置換またはアルキル基、アリール基、アシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基及び/またはハロゲン原子で置換されたアリール基からなる群から選択される基を表わし、
1、X2、X'1、及びX'2は、各々独立して水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群から選択される基を表わし、
p、q、r、p'、q'、及びr'は、各々独立して0または1を表わし、
m、n、m'、及びn'は、各々独立して0または1〜3の整数を表わす。)
及び式(I)の異性体である式(I')
【化2】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
で示されることを特徴とする有機発光性化合物。
2.式(II)
【化3】

(式中、Y1及びY'1は、各々独立して水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基、及びハロゲン原子からなる群から選択される基を表わし、
s及びs'は、各々独立して0または1〜4の整数を表わし、
その他のすべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
及び式(II)の異性体である式(II')
【化4】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
で示される前記1に記載の有機発光性化合物。
3.式(III)
【化5】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
及び式(III)の異性体である式(III')
【化6】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
で示される前記1または2に記載の有機発光性化合物。
4.式(IV)
【化7】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
で示される前記1〜3のいずれかに記載の有機発光性化合物。
5.式(V)
【化8】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
で示される前記1〜3のいずれかに記載の有機発光性化合物。
6.前記1〜5のいずれかに記載の有機発光性化合物を含有する発光層。
【発明の効果】
【0011】
本発明有機発光性化合物は、酸素の影響を受けることなく優れた光物性を維持し、高効率な発光特性を有するため、有機エレクトロルミネセンス(有機EL)発光材料等の用途に広く利用することができ、その長寿命化を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
本発明の有機発光性化合物は、特許文献1及び特許文献2におけるビピリジン−イミダゾール骨格を単数または複数有する化合物であり、ビピリジン−イミダゾール骨格を複数有する場合は、特定のスペーサーを介してその骨格を連結した化合物である。
【0013】
本発明の有機発光性化合物は、式(I)
【化9】

(式中、R1、R2、R'1、及びR'2は、各々独立して水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群から選択される基、またはR1、R2及びそれらが結合しているイミダゾール環により、及び/またはR'1、R'2及びそれらが結合しているイミダゾール環により、未置換またはアルキル基、アシル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群から独立に選択される基で置換されたベンゾイミダゾール基を形成する原子団を表わし、
3、R'3、R4、及びR'4は、各々独立して水素原子;未置換、または窒素原子、酸素原子、硫黄原子及び/またはハロゲン原子を含んでもよいアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基;及び未置換またはアルキル基、アリール基、アシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基及び/またはハロゲン原子で置換されたアリール基からなる群から選択される基を表わし、
1、X2、X'1、及びX'2は、各々独立して水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群から選択される基を表わし、
p、q、r、p'、q'、及びr'は、各々独立して0または1を表わし、
m、n、m'、及びn'は、各々独立して0または1〜3の整数を表わす。)
及び式(I)の異性体である式(I')
【化10】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
で示される。
【0014】
本発明の有機発光性化合物として好ましくは、式(II)
【化11】

(式中、Y1及びY'1は、各々独立して水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基、及びハロゲン原子からなる群から選択される基を表わし、
s及びs'は、各々独立して0または1〜4の整数を表わし、
その他のすべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
及び式(II)の異性体である式(II')
【化12】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
で示される有機発光性化合物である。
【0015】
本発明の有機発光性化合物としてさらに好ましくは、式(III)
【化13】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
及び式(III)の異性体である式(III')
【化14】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
で示される有機発光性化合物であり、より好ましくは、式(IV)
【化15】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
及び式(V)
【化16】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
で示される有機発光性化合物である。
【0016】
本発明有機発光性化合物の一好適例の合成方法の例を下記の反応工程式に示す。各反応工程自体は、既知の有機合成方法であるため、化合物は新規であるが、容易に合成することができる(Liebigs Ann. Chem. 1979, 1818-1827,特許文献1,特許文献2参照)。
【0017】
【化17】

【0018】
本発明有機発光性化合物は、置換基の選択にもよるが、例えば吸収極大波長は350〜400nm、発光極大波長は480〜500nm、発光量子収率Φは0.8〜1.0であり、優れた光物性を有する。
【0019】
本発明有機発光性化合物には、様々な用途があるが、中でも好適に用いられるのは、発光素子、有機EL素子に含まれる発光層、レーザー色素、発光性試薬等である。
本発明の有機発光性化合物を用いる発光層は、一般に行なわれる方法で製造することができ、特に制限されない。例えば、本発明の有機発光性化合物を溶媒に溶解させ、ディップコーティング、スピンコーティング等の塗布法、各種の印刷法、またはインクジェット法により、成膜または画素として形成できる。本発明の有機発光性化合物を用いる発光層は、例えば発光素子等に使用することが可能である。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、以下の例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0021】
実施例1:
[Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-Eの合成]
(1)N−ヘキシル−2−ニトロアニリンの合成
【化18】

100mlのナスフラスコにo−クロロニトロベンゼン 3.71ml(3.17×10-2mol)、ヘキシルアミン 12.65ml(9.54×10-2mol)を入れ、100℃で8時間加熱した。反応後、ジエチルエーテル 150mlを加え、1N HClaq.100mlで2回洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過(G3ガラスフィルター)し、濃縮した。
【0022】
(2)N−ヘキシル−1,2−フェニレンジアミンの合成
【化19】

50mlのナスフラスコにN−ヘキシル−2−ニトロアニリン 約610mg(2.74×10-3mol)、塩化スズ・2水和物 1.877g(8.32×10-3mol)、エタノール 10ml、濃塩酸 5mlを入れた。3時間加熱還流し、室温まで冷やした。水を50ml加え、クロロホルム 40ml、2回で抽出を行い、クロロホルム層を5% NaHCO3aq.30mlで2回、洗浄した。無水硫酸マグネシウム乾燥後、ろ過(G3ガラスフィルター)し、5ml程度まで濃縮した。そこにベンゼンを加え、10ml程度まで濃縮し、このまま次の反応に使用した。
【0023】
(3)2,2'−ビピリジン−5,5'−ジカルボン酸の合成
【化20】

300ml三つ口ナスフラスコに5,5'−ジメチル−2,2'−ビピリジン 5g(2.71×10-2mol)、過マンガン酸カリウム 17.11g(0.11mol)、蒸留水 130mlを入れ、メカニカルスターラーで撹拌下、還流を行った。30分後、過マンガン酸カリウム 17.23g(0.11mol)を追加した。1.5時間後、反応を止め、室温まで冷やし、ろ過(G4ガラスフィルター)し、よく水で洗浄した。ろ液に濃塩酸を加え、pH1に調整し、析出した固体をろ過(G4ガラスフィルター)し、乾固した。この固体をジエチルエーテルでよく洗浄し、乾燥した。
【0024】
(4)2,2'−ビピリジン−5,5'−ジカルボン酸エチルエステルの合成
【化21】

200mlのナスフラスコに2,2'−ビピリジン−5,5'−ジカルボン酸 4.22g(1.73×10-2mol)、塩化チオニル 110mlを入れ、3時間還流した。3時間後、塩化チオニルを蒸留除去し、エタノール 80ml加え、3時間還流した。反応終了後、エタノールを濃縮除去し、クロロホルム 100mlに溶かし、飽和炭酸ナトリウム水溶液 50mlで3回洗浄し、水層をクロロホルム 50mlで2回抽出し、有機層をまとめて水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過(G3ガラスフィルター)し、濃縮、乾固後、得られた固体は冷エタノールで洗浄し、乾燥した。
【0025】
(5)2,2'−ビピリジン−5−カルボン酸−5'−カルボン酸エチルエステル(HOOC-bpy-COOEt)の合成
【化22】

30mlのナスフラスコにtert−BuOK 156.10mg(1.39×10-3mol)、エタノール 21mlを入れ、撹拌下、2,2'−ビピリジン−5,5'−ジカルボン酸エチルエステル 346.12mg(1.15×10-3mol)のベンゼン溶液約8mlを加え、室温で8時間撹拌した。反応終了後、エタノール、ベンゼンをできるだけ濃縮し、氷冷下でクロロホルムを約30ml加え、これを5% NaHCO3aq.50mlにあけた。5% NaHCO3aq.50mlで3回、目的物を抽出し、次いで水層をクロロホルム 30mlで洗浄した。水層を1N HClaq.を用いてpHが1〜2程度に調整し、析出した固体をろ過(G5ガラスフィルター)し、乾固した。
同定:1H−NMR(300 MHz, DMSO-d6);
δ 9.210 - 9.185 (m, 2H), 8.600 - 8.549 (m, 2H), 8.484 - 8.429 (m, 2H), 4.379 (q, 2H), 1.355 (t, 3H).
EI−MS(m/z)Calcd for M+ C14H12N2O4: 272.08, found: 272.
【0026】
(6)5−(1N−ヘキシル−ベンゾイミダゾール−2−イル)−2,2'−ビピリジン−5'−カルボン酸エチルエステル(Bzim(C6)-bpy-COOEt)の合成
【化23】

30mlのナスフラスコにHOOC-bpy-COOEt333 mg(1.22×10-3mol)、塩化チオニル10mlを入れ、室温で6時間撹拌した。その後、塩化チオニルを濃縮除去し、N−ヘキシル−1,2−フェニレンジアミンのベンゼン溶液を加え、24時間加熱還流を行った。反応終了後、ベンゼンを濃縮除去し、クロロホルム 40mlを加え、飽和炭酸ナトリウム水溶液 25ml、2回で洗浄した。その水層をクロロホルム 20mlで洗浄後、有機層をまとめ、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過(G3ガラスフィルター)し、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl3/3%−CH3OH,2.5φcm×25cm)により大部分の不純物を取り除いた。これ以上精製は行わず、次の反応に使用した。
同定:1H−NMR(300 MHz, CDCl3);
δ 9.321 (dd, J = 0.6, 2.1 Hz, 1H), 9.075 (dd, J = 0.6, 2.2 Hz, 1H), 8.672 (dd, J = 0.6, 8.1 Hz, 1H), 8.594 (dd, J = 0.7, 8.2 Hz, 1H), 8.457 (dd, J = 2.1, 8.3 Hz, 1H), 8.260 (dd, J = 2.3, 8.3 Hz, 1H), 7.891 - 7.839 (m, 1H), 7.477 - 7.424 (m, 1H), 7.397 - 7.302 (m, 2H), 4.463 (q, 2H), 4.292 (t, 2H), 1.895 - 1.821 (m, 2H), 1.454 (t, 3H), 1.319 - 1.216 (m, 6H), 0.857 - 0.813 (m, 3H).
EI−MS(m/z)Calcd for M+ C26H28N4O2: 428.22, found: 428.
【0027】
(7)5−(1N−ヘキシル−ベンゾイミダゾール−2−イル)−2,2'−ビピリジン−5'−カルボン酸(Bzim(C6)-bpy-COOH)の合成
【化24】

50mlナスフラスコにBzim(C6)-bpy-COOEt、エタノール 8ml、1N NaOHaq.8mlを入れ、2時間加熱還流を行った。反応終了後、エタノールを濃縮除去し、水を約20ml加え、ジエチルエーテル 15mlで2回洗浄した。水層に濃塩酸を加え、pH2程度にし、析出した固体をろ過(G5ガラスフィルター)し、乾固した。
同定:1H−NMR(300 MHz, DMSO-d6);
δ 9.201 (dd, J = 2.1, 10.7 Hz, 2H), 8.938 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 8.897 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 8.475 (dd, J = 2.1, 8.3 Hz, 2H), 7.8993 - 7.8074 (m, 2H), 7.4814 - 7.4348 (m, 2H), 4.4664 - 4.4166 (m, 2H), 1.7292 - 1.7292 (m, 2H), 1.1273 - 1.0744 (m, 6H), 0.7438 - 0.7005 (m, 3H).
【0028】
(8)2,6−ビス[5'−(1−ヘキシル−ベンゾイミダゾール−2−イル)−2,2'−ビピリジル−5−イル]−1,5−ジヒドロ−ベンゾ[1,2−d:4,5−d']ジイミダゾール(Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(H))の合成
【化25】

50ml三つ口フラスコに1,2,4,5−ベンゼンテトラミンテトラクロライド 159.17mg(5.62×10-4mol)、ポリリン酸 12.3gを入れ、120℃で35分間、発泡がおさまるまで加熱した。発泡がおさまった後、Bzim(C6)-bpy-COOH 450mg(1.12×10-3mol)を加え、200℃でアルゴン下、24時間加熱した。反応後、室温まで放冷し、水、約300mlを加えた。固体が析出したのでろ過(G5ガラスフィルター)し、乾固した。次に、50ml三角フラスコに得られた固体と10% NaOHaq.30mlを入れ、時々超音波に当てながら6時間撹拌した。6時間後、ろ過(G5ガラスフィルター)し、乾固した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl3/15%−CH3OH,6.0φcm×5.5cm)、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl3/15%−CH3OH,3.8φcm×24.5cm)、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl3/10%−CH3OH,2.8φcm×22cm)の順で精製を行い、最終的にクロロホルム/メタノールで再結晶を行った。
同定:FAB−MS(m/z)Calcd for M+ C54H51N12: 866.43, found: 867.4360.
【0029】
(9)Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-Eの合成
【化26】

10mlナスフラスコにBis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(H) 41.73mg(4.81×10-5mol)、NaH 12.15mg、DMF 2mlを入れ、室温で水素発生がおさまるまで撹拌した。発泡がおさまった後、1−ブロモヘキサン 0.02ml(1.16×10-4mol)を加え、80℃で2.5時間加熱した。反応後、水にあけ、クロロホルムで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過(G3ガラスフィルター)、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl3/5%−CH3OH,2.8φcm×22.5cm)により分離した。Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-Zは、酢酸エチルで再結晶を行い、精製した。Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-Eに関しては、塩化メチレン/酢酸エチルで再結晶を行ったが、精製できなかったため、次いでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl3/3%−CH3OH,2.8φcm×27.5cm)により精製した。
同定(Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-E):1H−NMR(600 MHz, CDCl3);
δ 9.172 (d, J = 1.8 Hz, 2H), 9.110 (d, J = 1.8 Hz, 2H), 8.722 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 8.709 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 8.350 (dd, J = 2.4, 8.4 Hz, 2H), 8.297 (dd, J = 1.8, 8.1 Hz, 2H), 7.890 - 7.879 (m, 2H), 8.874 (s, 2H), 7.483 - 7.468 (m, 2H), 7.391 - 7.347 (m, 4H), 4.409 (t, 4H), 4.319 (t, 4H), 1.981 (quintet, 4H), 1.895 (quintet, 4H), 1.369 - 1.247 (m, 24H), 0.870 - 0.843 (m, 12H).
SI−MS(m/z)Calcd for M+ C66H74N12: 1034.62, found: 1035.
【0030】
[Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-Eの光物性]
Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-Eの吸収極大362nmにおける吸光度が0.0564のアセトニトリル溶液をつくり、アルゴン下、吸収、蛍光スペクトルを測定した(図1)。362nm励起に対して、発光極大は499nmであり、5,5'-Bzim(H)-bpyのメタノール溶液における発光極大(445nm)よりかなり長波長側に観測された。空気中において発光スペクトルを測定すると、アルゴン下とほとんど変わらないことから(図2中、点線:空気下、実線:アルゴン下)、この発光はほとんど酸素による影響を受けない、励起一重項からの蛍光発光であると考えられる。また、9,10−ジフェニルアントラセン(シクロヘキサン溶液)を基準として、362nmでの励起による発光量子収率を測定すると0.93であり、高効率な発光特性を維持していることが明らかとなった。吸収スペクトルにおけるモル吸光係数(ε)は、アセトニトリル中では溶解度が低く、正確に求めることができなかったため、クロロホルム溶液を用いて測定した。クロロホルム中では極大波長は365nmであり、εは7.19×104-1cm-1と求められた。
Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-EのMeOH/EtOH(1:4(v/v))溶液を調製し、アルゴン雰囲気下、357nm励起による吸収蛍光スペクトルを測定したところ、発光極大は501nmであった(図3)。また、この溶液を用いて77Kにおける励起発光スペクトルを測定したところ、発光極大波長(0−0)は415nmであった(図4)。
【0031】
実施例2:
[Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-Zの合成]
実施例1の段階(1)〜(8)と同様に行い、段階(9)のシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:CHCl3/5%−CH3OH,2.8φcm×22.5cm)によりBis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-Zを分離し、酢酸エチルで再結晶を行い、精製したBis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-Zが得られた。
同定(Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-Z):1H−NMR(600 MHz, CDCl3);
δ 9.157 (d, J = 1.8 Hz, 2H), 9.108 (d, J = 1.8 Hz, 2H), 8.717 (d, J = 5.4 Hz, 2H), 8.704 (d, J = 5.4 Hz, 2H), 8.328 (dd, J = 2.4, 39 Hz, 2H), 8.343 (s, 1H), 8.297 (dd, J = 1.8, 7.8 Hz, 2H), 7.484 - 7.47 (m, 2H), 7.378 - 7.357 (m, 4H), 7.335 (s, 1H), 4.424 (t, 4H), 4.319 (t, 4H), 1.956 (quintet, 4H), 1.895 (quintet, 4H), 1.355 - 1.254 (m, 24H), 0.874 - 0.842 (m, 12H).
SI−MS(m/z)Calcd for M+ C66H74N12: 1034.62, found: 1035.
【0032】
[Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-Zの光物性]
Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-Zの吸収極大360nmにおける吸光度が0.0672のアセトニトリル溶液をつくり、アルゴン下、吸収、蛍光スペクトルを測定した(図5)。360nm励起に対して、発光スペクトルは486nmに極大をもち、E体(199nm)よりやや短波長側であった。実施例1のE体と同様に、空気下でのスペクトルを測定したが、アルゴン下と同様であり、ほとんど酸素の影響を受けない励起一重項からの蛍光発光であると考えられる(図6)。9,10−ジフェニルアントラセン(シクロヘキサン溶液)を基準として、360nmでの励起による発光量子収率は0.80と求められ、高効率な発光特性を維持しているものの、実施例1のE体よりやや発光効率が低下し、スペーサー部分のベンゾジイミダゾール誘導体の構造が発光特性に影響することが示唆された。吸収スペクトルにおけるモル吸光係数(ε)は、実施例1のE体と同様に、アセトニトリル中では溶解度が低く、正確に求めることができなかったため、クロロホルム溶液を用いて測定した。クロロホルム中では極大波長は363nmであり、εは8.45×104-1cm-1と求められた。
さらに、Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-ZのMeOH/EtOH(1:4(v/v))溶液を調製し、アルゴン雰囲気下、354nm励起による吸収蛍光スペクトルを測定したところ、発光極大は499nmであった(図7)。また、この溶液を用いて77Kにおける励起発光スペクトルを測定したところ、発光極大波長(0−0)は408nmであった(図8)。
【0033】
実施例3:
[Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(H)の合成]
実施例1の段階(1)〜(7)と同様に行い、段階(8)において精製したBis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(H)が得られた。
【0034】
[Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(H)の光物性]
Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(H)の吸収極大395nmにおける吸光度が0.1以下のCHCl3/MeOH(9:1(v/v))溶液を調製し、アルゴン下、吸収、蛍光スペクトルを測定した。395nm励起に対して、発光スペクトルは488nmに極大をもち、実施例1及び2と同様に、空気下でのスペクトルを測定したが、アルゴン下と同様であり、ほとんど酸素の影響を受けない励起一重項からの蛍光発光であると考えられる。9,10−ジフェニルアントラセン(シクロヘキサン溶液)を基準として、395nmでの励起による発光量子収率は0.88〜1.08と求められた。
【0035】
参考例1〜5:
下記に示す化合物を特許文献1及び特許文献2を参考にして合成し、実施例1〜3と同様に光物性について測定した(表1)。
【化27】

【0036】
[光物性のまとめ]
実施例1〜3及び参考例1〜5において合成した各化合物の光物性を表1に示す。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例1の化合物(Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-E)のアセトニトリル中、アルゴン下における吸収・蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図2】実施例1の化合物(Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-E)のアセトニトリル中における蛍光スペクトルを示すグラフである(実線:アルゴン下,点線:空気中)。
【図3】実施例1の化合物(Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-E)の室温、MeOH/EtOH(1:4(v/v)中、アルゴン下における吸収・発光スペクトルを示すグラフである。
【図4】実施例1の化合物(Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-E)の77K、MeOH/EtOH(1:4(v/v)マトリックス中、アルゴン下における励起・発光スペクトルを示すグラフである。
【図5】実施例2の化合物(Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-Z)のアセトニトリル中、アルゴン下における吸収・蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図6】実施例2の化合物(Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-Z)のアセトニトリル中における蛍光スペクトルを示すグラフである(実線:アルゴン下,点線:空気中)。
【図7】実施例2の化合物(Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-Z)の室温、MeOH/EtOH(1:4(v/v)中、アルゴン下における吸収・発光スペクトルを示すグラフである。
【図8】実施例2の化合物(Bis(Bzim(C6)-bpy)-Bzdim(C6)-Z)の77K、MeOH/EtOH(1:4(v/v)マトリックス中、アルゴン下における励起・発光スペクトルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、R1、R2、R'1、及びR'2は、各々独立して水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群から選択される基、またはR1、R2及びそれらが結合しているイミダゾール環により、及び/またはR'1、R'2及びそれらが結合しているイミダゾール環により、未置換またはアルキル基、アシル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群から独立に選択される基で置換されたベンゾイミダゾール基を形成する原子団を表わし、
3、R'3、R4、及びR'4は、各々独立して水素原子;未置換、または窒素原子、酸素原子、硫黄原子及び/またはハロゲン原子を含んでもよいアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基;及び未置換またはアルキル基、アリール基、アシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基及び/またはハロゲン原子で置換されたアリール基からなる群から選択される基を表わし、
1、X2、X'1、及びX'2は、各々独立して水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群から選択される基を表わし、
p、q、r、p'、q'、及びr'は、各々独立して0または1を表わし、
m、n、m'、及びn'は、各々独立して0または1〜3の整数を表わす。)
及び式(I)の異性体である式(I')
【化2】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
で示されることを特徴とする有機発光性化合物。
【請求項2】
式(II)
【化3】

(式中、Y1及びY'1は、各々独立して水素原子、アルキル基、アシル基、アリール基、及びハロゲン原子からなる群から選択される基を表わし、
s及びs'は、各々独立して0または1〜4の整数を表わし、
その他のすべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
及び式(II)の異性体である式(II')
【化4】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
で示される請求項1に記載の有機発光性化合物。
【請求項3】
式(III)
【化5】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
及び式(III)の異性体である式(III')
【化6】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
で示される請求項1または2に記載の有機発光性化合物。
【請求項4】
式(IV)
【化7】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
で示される請求項1〜3のいずれかに記載の有機発光性化合物。
【請求項5】
式(V)
【化8】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
で示される請求項1〜3のいずれかに記載の有機発光性化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の有機発光性化合物を含有する発光層。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−63286(P2008−63286A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243886(P2006−243886)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(598041566)学校法人北里学園 (180)
【Fターム(参考)】