説明

有機発光素子、有機発光素子を有する装置および照明装置、ならびに有機発光素子の製造方法

【課題】水または空気中酸素等との反応による劣化の危険性が低減され、さらには特に多面的に使用可能である有機発光素子を提供することである。
【解決手段】本発明による有機発光素子は、基板と、第1の電極と、有機材料を含む少なくとも1つの層を有し動作中に電磁放射を放出するのに適した層スタックと、第2の電極と、エネルギーを交番電磁場から取り出し少なくとも部分的に電気的エネルギーに変換するのに適した受信装置とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子と有機発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は通常、水および酸素と非常に結びつきやすい有機材料を含んでおり、これによって通常、素子の劣化が加速化されてしまう。有機材料と水および酸素との接触を可能な限り十分に回避するためには、通常は有機発光素子を封止する。このことは、たとえばWO01/45140A2に記載されている。
【0003】
従来の有機発光素子において電気的なコンタクトを行うためには、電気的な導体路を、封止部を貫通して外部へ案内していた。このような導体路は、素子とドライバ電子回路とを接続するための電気的な面コンタクトで終了する。封止部を貫通して案内された導体路の領域では、該封止部の十分な気密性を容易に実現することはできない。導体路は透過チャネルとして作用し、水や酸素や別の腐食性の材料を外部から有機材料に侵入させてしまう。
【特許文献1】WO01/45140A2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、水または空気中酸素等との反応による劣化の危険性が低減され、さらには特に多面的に使用可能である有機発光素子を提供することである。また、このような素子の製造方法を改善することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、請求項1記載の有機発光素子と、請求項17記載の装置と、請求項24記載の照明装置と、請求項26記載の有機発光素子の製造方法とによって解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
各従属請求項に、有利な実施形態および発展形態が記載されている。特許請求の範囲の開示内容は明示的に本明細書に含まれるものとする。
【0007】
本発明による有機発光素子は、以下のものを有する:
・基板
・第1の電極
・有機材料を含む少なくとも1つの層を有し、動作中に電磁放射を放出するのに適した層スタック
・第2の電極
・エネルギーを交番電磁場から取り出し少なくとも部分的に電気的エネルギーに変換するのに適した受信装置
前記基板はたとえば、以下の材料のうち少なくとも1つを含むか、または以下の材料のうち少なくとも1つから成る:ガラス、シリコン等の半導体材料、鋼または特殊鋼等の金属、またはプラスチック。該プラスチックはたとえば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリカルボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリスルホン(PSO)、ポリ(p‐フェニレンエーテルスルホン)(PES)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ(ビニルクロリド)(PVC)、ポリスチロール(PS)またはポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)である。
【0008】
この基板は、プレートまたは薄膜の形態で設けられるのが目的に適っている。たとえば基板はガラスプレートであり、このガラスプレートは1つの実施形態では、0.5mm以上かつ/または3mm以下の厚さを有する。たとえば、ガラスプレートは1mmの厚さを有する。1つの実施形態では、基板は非常に薄く、かつ/またはフレキシブルである。たとえばフレキシブルな基板であれば、50μm以上100μm以下の厚さを有する薄いガラスプレートである。1つの実施形態では、薄くかつ/またはフレキシブルな基板は、金属および/またはプラスチックを含む薄膜である。このような薄膜はたとえば50μm以上400μm以下の厚さを有し、とりわけ100μm以上200μm以下の厚さを有する。このことにより、たとえば特に軽量かつ/またはフレキシブルな素子が実現される。
【0009】
層スタックによって動作中に生成される放射のうち少なくとも一部が基板を通って出力結合される場合、基板は、該層スタックによって放出された放射に対して少なくとも部分的に透過性である材料を含むのが目的に適っている。
【0010】
第1の電極は、有利には基板上に設けられる。この場合には、第1の電極はアノードであるかまたはカソードである。第1の電極がアノードである場合、第1の電極は、電子に対して高い仕事関数を有する材料を含み、有利には4.5eV以上の仕事関数を有する材料を含むのが目的に適っている。アノードにはたとえば、Pt,Au,Inおよび/またはPd等である金属が含まれ、かつ/または、とりわけインジウム‐錫‐酸化物(ITO)、酸化鉛および/または酸化錫である透光性の導電性酸化物が含まれ、かつ/または、LiFおよび/またはグラファイトが含まれ、かつ/または、Si,GeないしはGaAs等である無機半導体材料が含まれ、かつ/または、ポリピロール、ポリアニリン(PANI)および/またはポリ‐3,4‐エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等である導電性ポリマーが含まれる。
【0011】
第1の電極がカソードである場合、通常は、電子に対して低い仕事関数を有する材料を含む。たとえばカソードは、CaまたはMgを含むか、Mg:Ag,Yb,Ba等であるマグネシウム合金を含むか、またはLi:Al等であるアルミニウム合金を含むか、またはこれらの材料のうち少なくとも2つの材料の組み合わせを含む。
【0012】
1つの実施形態では第1の電極の厚さおよび/または材料は、層スタックから動作中に放出される放射が少なくとも部分的に第1の電極を通って出力結合されるように選定される。第1の電極がアノードである場合、材料としてたとえば透過性の導電性酸化物が適している。このような導電性酸化物は通常、層スタックから動作中に放出される放射に対して少なくとも部分的に透過性である。
【0013】
択一的に、層スタックから動作中に生成された電磁放射は第2の電極を通って出力結合することができる。この第2の電極は、第1の電極に向かい合う層スタックの側に設けられるのが目的に適っている。その際には、第1の電極は有利には付加的に、層スタックから放出された放射に対して良好な反射特性を有する金属層を有する。たとえばこの金属層は、Ag,Al、Mg,Caおよび/またはPtを含み、かつ/または、これらの材料のうち少なくとも2つの材料を含む合金を含む。
【0014】
第2の電極は、カソードとするかまたはアノードとすることができる。第1の電極がアノードである場合には第2の電極はカソードであり、第1の電極がカソードである場合には第2の電極はアノードである。適切な材料は、第1の電極に関して記載した材料に相応する。有利にはカソードは、少なくとも1つのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む第1の層を有する。特に有利にはカソードは、たとえばAl,Agおよび/またはAu等である金属を含む第2の層も有する。
【0015】
層スタックは通常、第1の電極の表面に設けられる。層スタックは、少なくとも1つの有機材料を含む少なくとも1つの層を有する。この有機材料は、たとえば低分子材料("small molecules")および/またはポリマーである。
【0016】
層スタックは、動作中に発光する層を有し、この層は、発光材料とりわけ有機発光材料を含む。適切な発光材料にはたとえば、小さい分子量または大きい分子量を有する有機光ルミネセンス材料、有機電気ルミネセンス材料、有機蛍光材料および有機燐光材料が挙げられる。
【0017】
小さい分子量を有する適切な材料(低分子材料)はたとえば、トリス(8‐ヒドロキシ‐キノリナート)アルミニウム(Alq)等のトリス‐8‐アルミニウム‐キノリノール錯体、1,4‐ビス(2,2‐ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)およびクマリンである。
【0018】
大きい分子量を有する適切な有機材料はたとえば、有機ポリマーまたは有機金属ポリマーである。これに含まれるのは、ポリフルオレン、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリチオフェンビニレン、ポリ‐p‐フェニレンビニレン(PPV)およびポリスピロポリマーが含まれ、さらにこれらのファミリー、コポリマー、誘導体および混合体も含まれる。
【0019】
1つの実施形態では、層スタックは正孔輸送層および/または電子輸送層も有し、正孔輸送層は有利にはアノードに隣接し、電子輸送層は有利にはカソードに隣接する。このような正孔輸送層ないしは電子輸送層は、たとえばUS2005/0158523A1に記載されており、この開示内容はその点では、引用によって本願の開示内容に含まれるものとする。正孔輸送層はたとえば、PEDOT、4,4′,4″‐トリス(N‐(1‐ナフチル)‐N‐フェニル‐アミノ)‐トリフェニルアミン(1‐Naphdata)および/または4,4′‐ビス[N‐(1‐ナフチル)‐N‐フェニル‐アミノ]ビフェニル(α‐NPD)を有するか、またはこれらの材料のうち少なくとも1つの材料から成る。電子輸送層は、たとえば4,7‐ジフェニル‐1,10‐フェナントロリン(BPhen)および/またはAlqを有するか、またはこれから成る。
【0020】
有機発光素子は動作を行うために、交番電磁場にさらされるのが目的に適っている。この交番電磁場は有利には、時間的に変化する電場および/または磁場である。この時間的な変化は、特に有利には周期的に行われる。たとえば、電磁場は高周波フィールドまたはマイクロ波である。1つの実施形態では、交番電磁場は30kHz以上500kHz以下の周波数を有し、別の1つの実施形態では10MHz以上15MHz以下の周波数を有する。
【0021】
たとえば、受信装置はこの交番電磁場からエネルギーを取り出す。受信装置は、このエネルギーを少なくとも部分的に電気的エネルギーに変換し、電流を層スタックに注入するのに適するように構成される。このようにして受信装置は、動作中に層スタックに、放射放出に必要な電気的エネルギーを供給する。こうするためには、受信装置は有利には、第1の電極および第2の電極に導電接続されている。
【0022】
1つの実施形態では、受信装置はコイルおよび/またはアンテナを有し、該コイルは有利にはマイクロコイルである。該アンテナは、交番電磁場からエネルギーを取り出すように構成されるのが目的に適っている。通常、交番電磁場はコイルおよび/またはアンテナに電圧を誘導し、この電圧は、層スタックと場合によっては別の電気的および/または電子的な構成要素とによって閉成された回路に、該層スタックを流れる電流を引き起こす。マイクロコイルの断面は、たとえば2mm以下の高さを有し、有利には1mm以下の高さを有し、かつ/または5mm以下の幅を有し、有利には3mm以下の幅を有する。マイクロコイルの長さは、1つの実施形態では20mm以上50mm以下であり、たとえば30mmである。少なくとも1つの実施形態では、マイクロコイルはフェライトコアを有する。
【0023】
交番電磁場から受信装置によって取り出されたエネルギーを該交番電磁場の1周期または数周期より長い時間すなわち期間にわたって保存または蓄積する装置(たとえば蓄電池)は、素子の動作には必要ない。むしろ有利には、交番電磁場から取り出されたエネルギーによって実際には同時に、層スタックに電流が供給される。
【0024】
コイルないしはアンテナは、たとえば基板上に配置されており、とりわけコイルないしはアンテナは、基板の主延在平面を上から見ると、該基板から突出していない。
【0025】
1つの実施形態では、コイルないしはアンテナは層スタックに隣接して基板上に配置されている。素子の別の実施形態では、第2の電極の表面上に絶縁層が配置され、該絶縁層は第2の電極を少なくとも部分的に被覆する。アンテナは有利には、少なくとも部分的に前記絶縁層上に配置されている。たとえば、アンテナは1つの導体路または複数の導体路を有し、この導体路は有利には絶縁層上に蒸着される。特に有利には、導体路は第1の電極および/または第2の電極までも延在する。
【0026】
アンテナないしはコイルはたとえば螺旋形状を有し、たとえば3角形、4角形、6角形または8角形の螺旋形状を有する。3角形、6角形ないしは8角形の螺旋の場合、螺旋の巻線は3つ、6つないしは8つの角を有する。螺旋の1つまたは複数の巻線の角は、1つの実施例では丸みづけされている。アンテナでは別の幾何学的形状も考えられる。
【0027】
アンテナは通常2つの端部を有し、そのうちたとえば第1の端部は第1の電極に接続されており、第2の端部は第2の電極に接続されている。択一的に、アンテナの第1の端部と第1の電極との間および/または該アンテナの第2の端部と第2の電極との間には、受信装置の少なくとも1つの別の電気的構成部分または電子的構成部分を配置することができる。これはたとえば、抵抗、ダイオード、コンデンサ、コイルおよび/または複数の構成部分から成る回路とすることができる。
【0028】
目的に適った実施形態では、絶縁層は第2の電極の縁部領域を被覆し、該第2の電極の中間領域を露出する。その際にはたとえば、アンテナの第2の端部は第2の電極の中間領域に設けられ、該中間領域に導電接続されている。この実施形態の1つの変形形態では、第2の電極の縁部領域は絶縁層によって被覆されないままにされ、この縁部領域にはとりわけアンテナの第2の端部が配置され、この縁部領域で該第2の端部は第2の電極に導電接続されている。
【0029】
絶縁層はたとえば、Al、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチロール(PS)および/またはポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)を含むか、またはこれらの材料のうち1つから成る。
【0030】
択一的に、この絶縁層を自己組織化の単層とすることができる。この自己組織化単層は、有利には分子群を有し、とりわけ分子群の単層から成る。分子群にはたとえば、第2の電極に定着されるのに適したアンカー基が含まれる。有利には、分子群は誘電体単位も有し、この誘電体単位はアンカー基に、第2の電極から離れた側で配置されている。このような自己組織化単層および分子群は、たとえばDE10328811A1、DE102004005082A1およびDE102004057760A1に記載されている。この点に関して、これらの文献の開示内容は引用によって本願に含まれるものとする。分子群から成る自己組織化単層である絶縁層は特に簡単に製造でき、第2の電極が被覆されない欠陥場所を全く有さないかまたはほとんど有さない。さらに、このような絶縁層は有利には、特に高い電気的抵抗を有する。
【0031】
第2の電極を少なくとも部分的に被覆する絶縁層上にアンテナが配置されている場合、層スタックによって動作中に生成された放射は1つの実施形態では、基本的に第1の電極および基板を通って出力結合される(「ボトムエミッタ」)。
【0032】
別の実施形態では、層スタックから動作中に生成された電磁放射は少なくとも部分的に、第2の電極を通って出力結合される(「トップエミッタ」)。
【0033】
こうするために、たとえばアンテナは、層スタックから放出された電磁放射に対して少なくとも部分的に透過性である材料を含み、とりわけ透過性の導電性酸化物(Transparent Conducting Oxide, TCO)および/または薄い金属層を含む。該導電性酸化物は、たとえばインジウム‐錫‐酸化物である。この場合、電磁放射の少なくとも一部はアンテナを通って出力結合される。
【0034】
択一的に、層スタックから動作中に放出された放射は、実質的に透過性でないアンテナが表面上に配置された第1の電極および/または第2の電極を通って出力結合されるようにすることもできる。この場合、たとえば層スタックの主延在平面を上から見た場合に該アンテナが放射放出性の層スタックの面の僅かな一部のみ、とりわけ縁部領域のみを被覆する場合、放射は実際には、アンテナによって被覆されていない場所のみを通って出力結合される。
【0035】
別の実施形態では、アンテナは基板と第1の電極との間に配置される。ここで有利には、アンテナと第1の電極との間に絶縁層が配置され、この絶縁層は第1の電極を少なくとも部分的に被覆する。この実施形態では、層スタックから動作中に生成された電磁放射は有利には、少なくとも部分的に第2の電極を通って出力結合される。
【0036】
1つの実施形態では、受信装置は交流電流を整流するのに適するものである。こうするためには、受信装置はたとえば少なくとも1つのダイオードを有する。たとえば受信装置は、コイルまたはアンテナと層スタックとに直列接続されたダイオードを有する。別の実施形態では受信装置は整流ブリッジを有し、1つの実施形態ではこの整流ブリッジは、4つのダイオードを含むグレッツ結線である。
【0037】
別の実施形態では、受信装置は少なくとも1つのコンデンサを有する。このコンデンサはたとえば、電圧ないしは電流を平滑化するために使用される。これによって有利には、可能な限り一定の直流電流が層スタックに注入され、素子の放出が可能な限り均質になる。1つの実施形態では、受信装置は振動回路を有し、この振動回路は少なくともアンテナおよび/またはコイルとコンデンサとを有する。有利には、前記振動回路の共振周波数は交番電磁場の周波数に整合されている。このことによって有利には、交番電磁場からエネルギーを特に高効率で取り出すことができる。
【0038】
ダイオードおよび/またはコンデンサ、かつ/または場合によっては、受信装置に含まれる別の電子的構成要素は、小型されて構成されるのが目的に適っている。
【0039】
択一的に、ダイオードおよび/またはコンデンサおよび/または別の電子的構成要素である層構造体を、基板上に配置することができる。前記層構造体はたとえば、少なくとも1つの有機半導体層および/または無機半導体層および/または金属層を含む。とりわけ、前記層構造体は蒸着されるか、または分子ビームエピタクシー(MBB)によって被着される。有機半導体層および/または無機半導体層および/または金属層はとりわけ、たとえばフォトリソグラフィによって構造化される。たとえば、有機半導体層および/または無機半導体層および/または金属層は集積回路を構成する。このことにより、有機発光素子の構成サイズを特に小さくすることができる。
【0040】
ダイオードおよび/またはコンデンサ、かつ/または場合によっては別の電子的構成要素は、たとえば基板上に配置され、たとえば層スタックに隣接して、かつ/または該層スタックの上に配置される。たとえば層構造体は、第1の電極と基板との間に配置されるか、または層スタックによって被覆されていない基板の領域に、すなわち層スタックの側方に配置される。択一的に、その次に層構造体を、有機層スタックの基板から離れた側に配置することもできる。
【0041】
目的に適った実施形態では、有機発光素子は封止部を有する。この封止部は、基板も一緒に層スタックを包囲するように、該基板上に配置される。換言すると、基板および封止部は、内部に層スタックが配置された内部空間を完全に包囲する。このようにして有利には、層スタックと腐食性物質との接触、とりわけ層スタック中に含まれる有機材料と腐食性物質との接触、たとえば水または酸素との接触が回避される。
【0042】
たとえば前記封止部はキャップであり、このキャップは有利には、ガラスまたはセラミックまたはプラスチックを含むか、またはこれら材料のうち少なくとも1つの材料から成る。1つの実施形態では、前記キャップはたとえばカラーフィルタおよび/または蛍光変換材料を含む。別の実施形態では、前記キャップは層スタックとの間に直接的な接触部分を有さない。こうするためにはたとえば、スペーサ粒子および/または支柱を設けることができる。このことはたとえば、WO01/45140およびWO01/44865に記載されており、その点ではこれらの文献の開示内容は、引用によって本願の開示内容に含まれるものとする。1つの実施形態では、前記キャップの層スタックに向かい合う側に、たとえばバリウム等のゲッタ材料が設けられる。このゲッタ材料はとりわけ、層スタックを損傷するおそれのあるガスを化学的または物理的に結合するのに適するものである。このようなゲッタ材料は、たとえばUS2004/0051449およびUS2004/0048033に記載されており、その点に関してはこれら文献の開示内容は、引用によって本願の開示内容に含まれるものとする。
【0043】
基板とキャップの縁部領域との間に配置された接着材により、該キャップと基板とを機械的に安定的に結合するのが目的に適っている。有利には前記接着材は、水および酸素ないしは別の酸化性物質に対して実質的に非透過性のものである。たとえば、エポキシド樹脂またははんだガラスをベースとする接着材を使用する。
【0044】
択一的な実施形態では、有機発光素子は少なくとも1つのポリマー層と無機層とによって封止されており、有利にはこれらの層の系列によって封止されており、この系列はとりわけ交番的な系列である。たとえば、ポリマー層および無機層の前記のような系列は、少なくとも1つの活性ポリマー層と少なくとも1つのセラミック層とを有する。この活性ポリマー層は有利には、湿気および/または酸化性物質を結合するのに適した層である。このような層系列は、たとえばWO2004/107468に開示されており、その点ではこの開示内容は、引用によって本願の開示内容に含まれるものとする。少なくとも1つの実施形態では、前記のような封止部は非常に薄く、かつ/またはフレキシブルである。有利にはこのような薄層封止部によって、特に小さい構成高さを有する素子が実現される。さらに有利には、フレキシブルな素子の製造が可能になる。
【0045】
有利な実施形態では、基板を上から見ると、封止部は該基板を完全に被覆する。特に有利には、基板を上から見ると、基板および封止部は相互に同一平面上に配置される。換言すると、主延在平面を上から見ると、基板および封止部の寸法は等しく、合同にされている。このような同一平面の配置に対して択一的に、基板を上から見ると封止部は、基板の縁部から突出することもできる。この場合、有利には封止部の一部は、基板の主延在平面に該基板の側方に配置され、該主延在平面に対して平行でなくとりわけ周方向の基板の側面を部分的または完全に被覆する。特に有利には、前記封止部は接着材によって、基板の側面に接着されている。たとえば前記封止部は、基板を収容するために段を有し、とりわけ周方向の段を有する。有利には前記段の領域において、基板の層スタックに向かい合う側および該基板の側面は、接着材によって前記封止部に結合されている。
【0046】
特に有利には、封止された素子の外表面は電気的な面コンタクトを有さない。ここでは外表面は、素子の表面のうちで内部空間と反対側の部分であり、とりわけ基板および封止部の層スタックと反対側の面である。換言すると、封止部と基板とによって囲まれ層スタックを包囲する内部空間から外部空間へ案内される電気的端子および/または導体路は存在しない。
【0047】
有利には、このような素子は内部空間と外部空間との間に電気的な貫通案内部を有さない。このような電気的な貫通案内部はたとえば拡散チャネルとなる可能性があり、水および/または酸素ないしは別の酸化性物質が内部空間に侵入するのを容易にし、素子の経時劣化を加速してしまう。外部の電気的面コンタクトを有さない有機発光素子の場合、さらに有利には、基板の底面に対して特に大きい活性面積が実現される。というのもたとえば、外部の電気的面コンタクトを形成するための基板の部分領域を、層スタックによって占有されないようにしなくてもよいからである。
【0048】
目的に適った実施形態では、受信装置は所定の波長または所定の波長領域の交番電磁場を検出するように構成される。その際には、有機発光素子はたとえば光学式高周波センサとして使用される。目的に適っているのは、受信装置が所定の波長または所定の波長領域の電磁場を受信したちょうどその時に、層スタックに電流を注入することによって、該層スタックが電磁放射を、有利には可視スペクトル領域にある電磁放射を放出することである。1つの実施形態では受信装置は、長さが所定の波長ないしは所定の波長領域に整合されたコイルまたはアンテナを有する。有利にはこのようなアンテナの長さは、所定の波長ないしは所定の波長領域のうち1つの波長の1/4の整数倍であり、特に有利には半分である。前記所定の波長領域のうち1つの波長は、とりわけ中間の波長である。
【0049】
このような有機発光素子は、たとえば有利には、高周波設備の動作状態、たとえば無線用であるたとえば送信設備の動作状態を表示するための表示エレメントとして適している。こうするためにはたとえば、素子はたとえば衣服に固定されるバッジとして形成される。このような表示エレメントは、たとえば有利には、遮断されていない送信設備の照射領域内に滞在する保守員に、光学的信号によって警告するのに適している。
【0050】
別の実施形態では有機発光素子は、情報を記憶するのに適したデータ記憶素子である。
【0051】
1つの実施形態では、データ記憶素子は1ビットの情報を記憶するのに適した素子である。たとえば、データ記憶素子を損傷無しとし、また破壊することができる。データ記憶素子の状態(「損傷無し」ないしは「破壊」)はそれぞれ、表すべきビットの状態(「1」ないしは「0」)に相応する。このようなデータ記憶素子を有する有機発光素子は保護ラベルとして、たとえば商品を保護するのに特に適している。この場合にはたとえば、データ記憶素子はコンデンサであり、たとえば薄膜コンデンサである。このようなコンデンサは、とりわけ目標短絡場所を有する。
【0052】
別の実施形態では、データ記憶素子は半導体素子であり、とりわけ集積回路を有する。たとえばこの半導体素子は、RFID(Radio Frequency Identification)チップである。
【0053】
データ記憶素子を有する有機発光素子は、該データ記憶素子からまたは該データ記憶素子へ情報が伝送される場合に、電磁放射‐有利には可視スペクトル領域にある電磁放射‐を放出するのに適している。このようにして、たとえば有利には、RFIDチップ上の書き込みプロセスおよび/または読み出しプロセスを表示するか、または保護ラベルの不活性化を表示することができる。
【0054】
本発明による装置は、少なくとも1つの有機発光素子と制御ユニットとを有し、該制御ユニットは動作中に該発光素子の受信装置に電気エネルギーを供給する。前記制御ユニットはここでは、とりわけ有機発光素子からガルバニック分離されている。すなわち、有機発光素子とりわけ受信装置と制御ユニットとの間に導電接続は存在しない。
【0055】
素子と制御ユニットとを前記のように分離することにより、有利には、該素子または本装置の制御ユニットをたとえば欠陥時に、個別に交換することができる。この素子を、たとえば別のスペクトル分布で電磁放射を放出する本発明による別の有機発光素子によって交換することも、簡単に実現できる。
【0056】
ここでは有利には、従来の構成の素子と異なり、素子をワイヤまたはケーブルによって電気的な面コンタクトに電気的にコンタクトする必要はない。このような面コンタクトは薄い金属層であり、機械的な損傷および腐食に対して脆弱である。このようにして、従来の構成の素子で、とりわけ高頻度のコンタクトの結果として生じる摩滅現象および誤機能は有利に回避される。
【0057】
有利な実施形態では、制御ユニットは動作時に、交流電流および/または時間的に変化する直流電流から交番電磁場を生成するように構成される。こうするためにはたとえば、コイルおよび/またはアンテナを介して、時間的に変化する磁場および/または電場が生成され、制御ユニットから出力結合されるように構成する。交流電流ないしは時間的に変化する直流電流はたとえば、正弦波形、矩形または3角波形のプロフィールを有する。制御ユニットによって生成された交番電磁場は、有利には誘導的に、有機発光素子の受信装置に入力結合される。容量的な入力結合も考えられる。特に有利には、交番電磁場の周波数および/または強度は受信装置に整合される。このようにして、特に高効率の入力結合が実現される。
【0058】
情報を記憶するのに適したデータ記憶素子を有する有機発光素子、たとえばRFIDチップを有する有機発光素子には、有利には制御ユニットから電気エネルギーが供給され、さらにこの制御ユニットは、情報をデータ記憶素子へ伝送し、かつ/または該データ記憶素子から受信するのに適した制御ユニットである。特に有利には、制御ユニットによって生成された交番電磁場は、エネルギーの伝送にも情報の伝送にも使用される。たとえば、情報を伝送するために、この交番電磁場の周波数および/または位相および/または振幅を変調することができる。セキュリティラベルである有機発光素子の場合に有利な制御装置は、とりわけデータ記憶素子を破壊するのに適した交番電磁場を生成するデアクティベータである。受信装置は有利には、伝送された情報を‐たとえば交番電磁場の復調によって‐受信し、データ記憶素子へ伝送するために構成される。それに対して択一的または付加的に、少なくとも1つの実施形態では受信装置は、情報をデータ記憶素子から制御ユニットへ送信するために構成される。
【0059】
1つの実施形態では、たとえばデータ記憶素子から制御ユニットへ情報が伝送される場合には、負荷変調と称される振幅変調の一形態が使用される。この負荷変調では、異なる時点でたとえば受信装置によって交番電磁場から捕捉される電気エネルギーの量が異なる。このことはたとえば、受信装置の変調抵抗のスイッチオンおよびスイッチオフによって実現される。交番電磁場から異なって取り出されるエネルギーは、この場合は制御ユニットによって検出されるのが目的に適っている。
【0060】
制御装置によって生成された交番電磁場の周波数は、たとえば30kHz以上500kHz以下であるか、または10MHz以上15MHz以下である。この周波数領域は、有機発光素子が、情報の記憶に適した半導体素子を有する場合に特に有利である。
【0061】
別の実施形態では、有機発光素子は保持部の内部または外部に配置されている。有利には、前記保持部は制御ユニットを有する。たとえば前記保持部は内部空間を有し、この内部空間内に制御ユニットが配置されるか、または該保持部の外表面と制御ユニットの外表面とを相互に、機械的に安定的に、とりわけ取り外し不可に接続することができる。
【0062】
目的に適っているのは、素子が保持部に機械的に安定的に接続されていることである。このようにして有利には、制御装置に対して受信装置を定義されたように配置することができ、たとえば交番電磁場を特に高効率で、受信装置に入力結合することができる。この接続部は可逆的に構成することができ、‐換言すると簡単に取り外し可能に構成でき、または非可逆的に構成することができる。たとえば、素子は少なくとも1つの保持手段を有し、この保持手段は有利には、保持部の少なくとも1つの支持手段に接続されるように形成される。特に有利には、保持手段と支持手段との接続を簡単に解除可能に構成する。こうするためにはたとえば、支持手段および/または保持手段をばね支承し、かつ/またはフレキシブルに形成する。
【0063】
別の実施形態では、制御ユニットは高周波装置である。たとえばこの高周波装置は、マイクロ波装置である。このような高周波装置は通常、生成された交番電磁場を対象物に照射するように構成されている。したがって有機発光素子は、交番電磁場によってエネルギー供給されるように、該電磁場によって照射される領域内に配置されるのが目的に適っている。
【0064】
たとえば高周波装置は内部空間を有し、動作中には対象物はこの内部空間に挿入され、この対象物に、高周波装置によって生成された交番電磁場が照射される。有機発光素子は有利には、生成された交番電磁場からエネルギーを供給されるように、前記内部空間内に設けられるか、または該内部空間に隣接して設けられる。
【0065】
有機発光素子は有利には、高周波装置の動作状態を表示するのに適するように構成される。この素子は通常、高周波装置が交番電磁場を生成したときにちょうど、電磁放射を放出する。1つの実施形態では、有機発光素子によって放出された放射の強度は交番電磁場の強度に依存する。
【0066】
換言すると素子は、このような高周波装置の光学的な監視ディスプレイとして使用される。
【0067】
この実施形態の1つの変形形態では、制御ユニットであるこのような高周波装置の複数の有機発光素子にエネルギーが供給される。ここでは少なくとも1つの素子の受信ユニットは、制御ユニットによって生成された交番電磁場が所定の最小強度を超えた場合にのみ、有機発光素子が電磁放射を放出するように構成される。有利には複数の素子の受信ユニットは、制御ユニットによって生成された交番電磁場の異なる最小強度で、有機発光素子の電磁放射の放出を引き起こすように構成される。たとえば受信装置のコイルないしはアンテナは、異なる幾何学的形状および/または異なる数の巻線を有する。この実施形態において有利には、素子の動作状態によって形成されたパターンから、制御ユニットによって生成された電磁放射の強度を推定することができる。
【0068】
本発明の別の側面では、少なくとも1つの本発明による有機発光素子を含む照明装置に関する。このような照明装置は発光面の周辺に、有利には給電線路を有する必要がない。とりわけ有利には、有機発光素子にエネルギーを供給するための導体路および/または給電線路が有機発光素子に接続されていない。
【0069】
この照明装置の1つの実施形態では、有機発光素子に交番電磁場によってエネルギーを供給する制御ユニットが、たとえば該照明装置の縁部領域に設けられている。
【0070】
たとえば、有機発光素子はガラスプレートの中間領域に配置される。その際に有利には、ガラスプレートの中間領域、特に有利にはガラスプレート全体に給電線路が設けられておらず、とりわけ導電路が設けられていない。
【0071】
本発明の別の側面では、1つの照明装置に複数の本発明による有機発光素子が含まれる。これらは層スタックの主延在面に、有利には少なくとも1つの方向で相互に同一平面上に配置され、これらは1つまたは複数の発光面を構成する。この発光面は、平坦とするかまたは湾曲することができる。1つの実施形態では、照明装置は表示装置である。
【0072】
特に有利には、素子の層スタックは該素子の主延在面に、少なくとも、素子が相互に同一平面上に配置されている1つまたは複数の方向に実質的に、該素子自体と等しい寸法を有する。「実質的に等しい寸法」はここでは、素子がたとえば、キャップおよび基板等が接着されておりかつ層スタックが設けられていない縁部領域を有することも含む。しかしこのような縁部領域は、特に狭幅であるのが目的に適っている。
【0073】
この実施形態において有利には、素子の外表面は電気的な面コンタクトを有さない。換言すると、基板を上から見た場合に素子の層スタックに隣接して側方に配置された面コンタクトが存在せず、かつ、素子の放射放出面と反対側の裏面に形成された電気的な面コンタクトも存在しない。
【0074】
したがって、個々の素子の層スタック間の非発光領域の面は特に小さいか、または存在しない。有利には、個々の素子間の境界は観察者側から認識されないか、または明らかには認識されない。したがって有利には、実質的に均質に発光する大きな面を有機発光素子によって形成することができる。素子の封止された内部空間から外部へ案内される導体路等は透過チャネルとなり、この導体路に沿って素子に水および/または空気中の酸素および/または別の腐食性物質が侵入して層スタックの劣化が加速化されるが、さらに有利にはこのような導体路は存在しない。それゆえ、このような照明装置は長寿命である。
【0075】
従来の照明装置ないしは表示装置とは異なり、個々の素子をたとえばフラットリボンケーブル等のケーブルによって駆動電子回路に電気的に接続する必要はない。このことによって有利には、照明装置の製造に必要な時間が短縮され、より低コストの製造が可能になる。
【0076】
1つの実施形態では、照明装置は1つまたは複数の保持部を有し、この保持部の内部ないしは外部に有機発光素子が配置される。有利には保持部は、1つの有機発光素子または複数の有機発光素子にエネルギーを供給する制御装置を含む。特に有利には、各素子に1つの保持部および/または制御ユニットが配属される。
【0077】
1つの実施形態では照明装置は、異なるスペクトル領域で発光する有機発光素子を有する。このような照明装置によって、簡単に異なるパターンを生成することができる。
【0078】
本発明による有機発光素子の製造方法は、とりわけ以下のステップを有する:
・基板を設けるステップ
・有機金属を含む少なくとも1つの層を有し電磁放射を生成するのに適した層スタックを該基板上に形成するステップ
・該基板および層スタック上に封止部を設けるステップ
前記封止部は、素子の外表面に電気的な面コンタクトが存在しないように設けられる。
【0079】
この製造方法によって有利には、特に良好に封止された有機発光素子の製造が実現される。さらに、層スタックの製造後に素子の外表面において電気的な面コンタクトを露出することがなくなる。このようにすることは、従来の素子の製造では必要であり、製造時間および製造コストを上昇させていた。
【0080】
この基板は上記のように、プレートまたは薄膜の形態で設けられるのが目的に適っている。薄膜の形態の基板は、有利には連続的な薄膜として形成され、たとえばロールに巻かれる。このようにして、素子を「エンドレス法」(ロールツーロール法)で低コストで製造することができる。
【0081】
有利には、第1の電極を基板上に堆積する。複数の素子を本方法で製造する場合、第1の電極層を構造化して堆積するか、または面全体に堆積し、この堆積後に構造化して個々の第1の電極に分離する。
【0082】
この第1の電極上に、有機材料を含む層スタックを形成する。この層スタックは有利には、低分子材料(「small molecules」)および/またはポリマーを含む。低分子材料は有利には蒸着し、ポリマーは有利には湿式化学的に適用され、特に有利には回転遠心法(スピンコーティング)によって適用される。たとえばオフセット印刷等のフラット印刷法、またはタンポン印刷、たとえばフレキソ印刷等の高圧法および低圧法、またはインクビーム印刷法等の種々の印刷技術も、層スタックを形成するのに適している。このような印刷法は、例えばWO99/07189A1に記載されており、この開示内容はその点で、引用によって本願の開示内容とする。
【0083】
1つの実施形態では、有機層列を面全体に設け、その次に部分的に基板から除去し、層スタック、または複数の素子を製造する場合には複数の層スタックが残るようにする。このように有機層列を部分的に除去するためには、たとえば機械的な手法を使用し、たとえば金属刃を使用する。択一的に溶剤を使用することができ、または層列をレーザアブレーションによって部分的に除去する。この溶剤は、たとえばマスクを通過して適用される。ここで有利には、紫外線スペクトル領域にあるレーザを使用し、特に有利には300nm以上400nm以下の波長を有するレーザを使用する。第1の電極の部分領域を露出することも有利である。
【0084】
択一的に、構造化を使用して有機層列を被着することにより、1つの層スタックないしは複数の層スタックを基板上に形成することができる。こうするためには、たとえば上記の印刷法が適している。とりわけ低分子の有機材料を熱蒸着によって、とりわけマスクを通過して基板に適用することもできる。有利にはこのような構造化による適用時に、第1の電極の部分領域は層スタックによって被覆されないままにされる。
【0085】
その次に、封止部を基板および層スタックに設ける。たとえば、上記のような有機層および無機層の列を層スタックおよび基板上に設ける。ここで有利には、この有機層および無機層の列は、基板の層スタックに向いている面を完全に被覆する。
【0086】
択一的に、プレートまたは薄膜である封止部を設けることもできる。適切な材料は、上記で素子に関する記述で記載されている。この封止部がたとえばプレートである場合、このプレートは、層スタックを収容するのに適した凹入部を有する。封止部の層スタックに向いている側に、場合によってはとりわけ凹入部の領域に、上記のようにゲッタ材料を設けることができる。その際には、封止部は有利には、素子の外表面における面コンタクトのための切欠部を有する必要がない。特に有利には、層スタックの主延在面における封止部の寸法は、基板と等しい。
【0087】
複数の有機発光素子を本方法によって製造する場合、封止は有利には、複数の層スタックにまとまった封止部を適用することによって行われる。このまとまった封止部は有利には、組み込まれて形成された個々の素子の複数の封止部である。有利にはこのまとまった封止部は、1つにまとまった領域であり、切欠部を有さない。特に有利には、この封止部は基板上に面全体に設けられる。
【0088】
1つの実施形態では、基板と層スタックとまとまった封止部とを有する複合体は、カットによって個々の有機発光素子に分離され、基板もまとまった封止部も分離される。第1の電極層が上記のステップで未だ構造化されていない場合、このカットによって同時に、第1の電極層を構造化することによって個々の第1の電極を形成することもできる。それゆえ、このような方法によって有利には、このような複合体を直線のカットによって単純に分離して、個々の素子を形成することができる。
【0089】
基板と封止部との接合は、たとえば接着材によって行われる。この接着材は基板および/または封止部に、有利には芋虫状の接着材の形態で部分的に適用される。この接着材は有利には、熱硬化可能および/または光硬化可能な接着材であり、たとえばエポキシド樹脂またははんだガラスをベースとする。この硬化を行うためには、たとえば加熱および/または電磁放射の照射を行い、この電磁放射はとりわけ、赤外線スペクトル領域および/または紫外線スペクトル領域にある放射である。1つの実施形態では、前記電磁放射はレーザ放射である。この電磁放射は有利にはフォーカシングされ、かつ/または部分的に遮蔽されることにより、たとえば実質的には、接着材によって被覆された基板および/または封止部の場所のみが照射されるようにする。このような個々の素子の封止法は、たとえばUS2006−0105493A1に記載されており、この開示内容はその点では、引用によって本願の開示内容に含まれるものとする。
【0090】
接着材への照射はここでは、基板および/または封止部を通して行われる。有利には、接着材に隣接する導体路または給電線路等は存在しない。このような給電線路および/または導体路は、有機発光素子の通常の製造法では、接着材の硬化を妨害してしまう。たとえばこれは通常、基板および/または封止部と異なる光学的特性および/または熱的特性および/または物理的特性を有する。接着材はここでは、給電線路および/または導体路にわたって延在せず、これらを透過して接着材に照射する必要もないので、接着材の照射ないしは加熱はすべての場所で可能な限り均質に行われ、接着材は均質に硬化される。このようにして、特に気密な封止部が実現される。
【0091】
択一的にこの封止部は、熱の供給および/または適切な化学的反応によってたとえば封止部および/または基板を溶融して基板に溶着ないしは接合し、とりわけエッチング法によって溶着ないしは接合する。有利には、従来の素子と異なって、接合すべき領域に導体路および/または面コンタクトを延在させない。この導体路および/または面コンタクトは、このような接合技術を使用すると溶融するかまたは破壊するおそれがある。
【実施例】
【0092】
以下で図1A〜7に関連して記載した実施例から、本発明のさらなる利点、有利な実施形態および発展形態を理解できる。
【0093】
実施例および図面において、同じ構成要素または同機能の構成要素にはそれぞれ同じ参照符号を付してある。ここに図示された要素および該要素相互間のサイズ比は、基本的に拡大比率どおりであると見なすべきではない。むしろ、たとえば層および/または縁部等の個々の要素は、図解しやすくしたり理解しやすくするために過度に不徳、ないしは過度に大きく図示されていることがある。
【0094】
本発明による方法の1つの実施例では、基板1を設ける。この基板は、ここではガラスプレートである。基板1上には、図1Aに示されているように第1の電極2を設ける。ここでは第1の電極2は、インジウム‐錫酸化物(ITO)から成る層であり、この層はスパッタリング法によって基板1上に堆積される。この実施例では第1の電極2から、次の処理ステップで構造化によって、アノードである第1の電極20が形成される。
【0095】
ここでは、第1の電極2上に蒸着法によって有機層列3が設けられる。有機層列3はとりわけ、第1の電極層2に隣接する正孔輸送層31を有する。この正孔輸送層31は、たとえば1‐Naphdataおよび/またはα‐NPDを含む。さらに活性層列3は、放射生成に適した活性層32を含む。この活性層32はここでは、電磁放射の放出に適した低分子材料を含み、このような低分子材料は、たとえばAlqおよび/またはDPVBi等である。さらに、活性層列3は電子輸送層33も有し、この電子輸送層33はたとえばAlqおよび/またはBPhenを有する。この電子輸送層33には第2の電極層4が隣接して設けられる。この第2の電極層4も同様に蒸着法によって、有機層列3上に形成される。
【0096】
択一的に、回転遠心法を使用して層列3を設けることもできる。その際には、層列3はたとえば、たとえばポリマーを含む2つの層のみを有する。これらの層は、第1の電極2に隣接する正孔輸送層31と、活性層32である。たとえば、正孔輸送層31はPEDOTを有し、かつ/または、活性層32はPPVおよび/またはポリフルオレンを有する。別の実施形態では、層列は付加的に、少なくとも1つの第3の層を有することもできる。この第3の層は、たとえば電子輸送層33である。少なくともこの場合は、層列は有利には、少なくとも1つの架橋可能なポリマーを有する。たとえばこの架橋可能なポリマーは、電磁放射を照射することによって架橋可能なものである。換言すると、光架橋可能なものである。この架橋可能なポリマーを含む層は有利には、該架橋可能なポリマーの架橋後、後続の層を適用するのに使用される溶剤に不溶なものである。
【0097】
有機層列3の厚さは有利には500nm以下であり、特に有利には200nm以下である。
【0098】
ここでは、次に構造化を行うことによって第2の電極4からカソード40を形成する。第2の電極4は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の薄い注入層と、カバー層とを有する。この注入層はたとえばカルシウムであり、カバー層はここではアルミニウムおよび/または銀を含む。
【0099】
次に図1Bに示されているように、有機層列3を構造化して個々の層スタック300を形成する。ここでは、第1の電極層2の部分領域も露出する。この構造化は、たとえばレーザアブレーションによって行われる。本方法ではここで、第2の電極層4および第1の電極層2を構造化して、第2の電極40および第1の電極20も形成する。択一的に、第1の電極層2および/または第2の電極層4を適用時にすでに構造化することができる。択一的に第2の電極4の適用前に、有機層列3を構造化して個々の層スタック300を形成することもできる。
【0100】
次に、層スタック300の第2の電極40に絶縁層5を設ける。このステップおよび後続のステップは、有利には複数の層スタック300で同時に実施されるかまたは連続的に実施され、特に有利にはすべての層スタック300で同時に実施されるかまたは連続的に実施される。絶縁層はここでは切欠部51を有し、この切欠部51によって第2の電極40の中間領域が露出される(図2Aも参照されたい)。たとえば、絶縁層は蒸着またはスパッタリングによって適用される。絶縁層はたとえば、Al、ポリテトラフルオロエチレン、PSおよび/またはPMMAを含むか、またはこれらの材料のうち1つから成る。択一的に、この絶縁層を自己組織化の単層とすることができる。
【0101】
第1の電極20の露出された部分領域と絶縁層5と第2の電極40の中間部分には、有利には蒸着によってマスクを通して、導体路6が形成される(図1C参照)。たとえば、この導体路はアルミニウムおよび/または銀および/または金および/または銅を含むか、またはこれらの材料のうち1つから成る。ここでは導体路は、図2Bに示されたように、矩形の螺旋形状を有する。
【0102】
絶縁層5の切欠部51内部において、導体路の第1の端部61は第1の電極の露出部分領域に設けられ、該導体路の第2の端部62は第2の電極40の中間領域に設けられる。導体路6はアンテナであり、該アンテナの端部61,62によって第1の電極20と第2の電極40とを導電接続する。基板1は、ここでは別の導体路を有さない。
【0103】
次に、図1Dに示されているように、基板1上に部分的に接着材が適用される。有利には、この接着材は基板1の主延在面において、層スタック300を完全に包囲する。たとえば接着材は、たとえば紫外線放射または赤外線放射の照射および/または加熱によって硬化可能なものである。接着材7は、たとえばエポキシド樹脂である。
【0104】
次に、基板1上に一貫した封止部8が設けられる(図1Eを参照)。この一貫した封止部8はここではガラスから成り、それぞれ1つの層スタック300を収容するのに適した凹入部81を有する。一貫した封止部8は、半導体層スタック300が前記凹入部81内部に来るように、基板1上に配置される。ここでは、基板1および一貫した封止部8の該基板1の主延在面における寸法は等しい大きさであり、基板1および一貫した封止部8は相互に同一平面上に配置され、基板1を上から見るとこれらが合同であるようにされる。凹入部81相互間に配置された、一貫した封止部8の基板1に向かい合う側の領域は、少なくとも部分的に接着材7が塗布されている。
【0105】
次に接着材7を硬化し、一貫した封止部8と基板1との間に機械的に安定した接合部を形成する。層スタック300はここでは、水、空気中酸素および別の腐食性物質が可能な限り外部空間から凹入部81に侵入できないように、凹入部81に封入される。
【0106】
接着材7の硬化は、たとえば電磁放射の照射、とりわけ紫外線放射の照射によって行われる。この照射は、たとえば大面積照射時にはたとえばUVランプを使用して行われるか、または放射が特にフォーカシングされるレーザを使用して行われる。このことはたとえば、US2006−0105493A1に記載されている。この開示内容はその点に関しては、引用によって本願の開示内容に含まれるものとする。接着材7への照射はここでは、担体基板1および/または一貫した封止部8を通して行われる。その際に有利には、接着すべき場所に導体路等を電磁放射の放射経路に設けず、接着材7の照射がすべての場所で可能な限り均質に行われるようにする。このようにして、接着材7の均質な硬化が実現され、特に気密な封止部が得られる。
【0107】
次に層スタック300を、一貫した封止部8および接着材7および基板1のカット9によって、個々の有機発光素子10に分離する(図1Fを参照されたい)。ここでは、このステップで初めて基板1を、すなわち複数の層スタックに対する担体基板を構造化によって個々の基板100に分離し、一貫した封止部8を構造化によって個々のキャップ80に分離する。
【0108】
素子10は、有利には外部の面コンタクトを有さない。それゆえ、このような面コンタクトから有機層列を除去するという面倒なことが省略され、このような面コンタクトを収容するための基板100の部分領域を設ける必要もない。したがって、キャップ80および基板100を、図1Fに示されたように形状接続的に配置することができる。さらに、キャップ80と基板100との間において該キャップ80の凹入部81によって形成された素子の内部空間から外部空間へ案内しなければならない導体路は、従来の構成の有機発光素子では拡散チャネルとなる可能性があり、この拡散チャネルに沿って酸素および水が素子の内部空間81に侵入して層スタック300の経時変化を加速化する可能性があるが、このような導体路は存在しない。
【0109】
この実施例の1つの変形形態では、アンテナ6は、図2Cに示されているように8角形の螺旋形状である。
【0110】
例として図2Cに、電子的素子17も示されている。この素子17はここでは、第1の電極20とアンテナ6の第1の端部61との間に配置され、たとえば、層スタック300の基板100と反対側の面に配置される。択一的にこの素子17を、層スタック300の側方に基板100上に配置することもできる。
【0111】
たとえば電子的素子17は、層スタック300に注入された電流を整流するために設けられたダイオードである。ダイオード17は第1の電極20とアンテナ6の第1の端部61とに、とりわけたとえば接続ワイヤのボンディングまたははんだ付けによって導電接続され、これによってこの回路を閉成する。
【0112】
これに対して択一的に、このような電子的素子17ないしは複数のこのような素子17から成る回路を層構造体として、換言するとたとえば半導体層等の層の系列として、とりわけ構造化された層の系列として形成することもできる。たとえば、有利にはエピタキシャル半導体層列を有するこのような層構造体は、層スタック300と第1の電極20との間に配置される。
【0113】
図3Aおよび3Bの実施例による有機発光素子10では、前記の実施形態のように中間領域が絶縁層5によって被覆されないようにするのではなく、第2の電極40の縁部領域51が絶縁層5によって被覆されないようにする。アンテナは矩形の螺旋として、導体路から形成される。第1の電極20に導電接続された導体路6の第1の端部61から出発して、絶縁層5に巻線が形成されている。この巻線は、絶縁層5の縁部領域から該絶縁層5の中間領域まで螺旋状に延在する。ここから、導体路6の継手63が再び絶縁層5の縁部まで延在して第2の端部62に続く。この第2の端部62は絶縁層5の切欠部51に配置されており、第2の電極40に導電接続されている。継手63とアンテナ6の巻線との間には分離層16が配置されており、この分離層16は継手63を、該継手63が上を延在している巻線から電気的に絶縁する。このようにして、アンテナ6が継手63によって短絡するのが阻止される。
【0114】
図3Cに、この実施例の変形形態が示されている。図3Aおよび3Bの実施例と異なり、導体路6はこの実施例では矩形軸のように形成されており、第1の電極20の露出部分に導電接続され、ここから、有機層スタック300の向かい合う側に配置された絶縁層5の切欠部51まで延在し、ここで第2の電極40にも同様に導電接続されている。
【0115】
例として、図3Cはデータ記憶素子18も示している。このデータ記憶素子18はたとえば、目標短絡場所を有する薄膜コンデンサまたはRFIDチップであり、アンテナ6の第1の端部61および第2の端部62によって層スタック300に並列接続されており、たとえば接続ワイヤおよび/またははんだ付けないしはボンディングによって並列接続されている。このようにして、アンテナ6によって受信された交番電磁場は、有利にはデータ記憶素子18にも入力結合される。たとえばデータ記憶素子18は、層スタック300に隣接して基板100上に配置されるか、または層スタック300の基板100と反対側の面に隣接して設けられる。
【0116】
たとえば電圧平滑化のために設けられたコンデンサである電子的素子17も、データ記憶素子18と同様に層スタック300に電気的に並列接続することができる。
【0117】
切欠部51およびアンテナ6の構成は、第1の実施例および第2の実施例に記載された幾何学的形状に制限されない。むしろ、そのつどの要求に相応して適合することができる。
【0118】
図4に示された実施例では、アンテナ6は最初の2つの実施例のように、第2の電極40の基板100と反対側の面に配置されない。その代わり、アンテナ6は基板100と層スタック300との間に設けられる。
【0119】
その次に、アンテナ6上に第1の電極20が配置される。絶縁層5がアンテナ6を第1の電極20から絶縁する。この絶縁層5は切欠部51を有し、この切欠部51内まで第1の電極20が延在する。アンテナ6の第1の端部61も切欠部51内に設けられることにより、第1の電極20とアンテナ6との間に電気的なコンタクトが形成される。
【0120】
次に、第1の電極20上に層スタック300を設け、続いてその上に第2の電極40を設ける。
【0121】
アンテナの第2の端部62は、この実施例では層スタック300から側方に突出され、第2の電極40との間にコンタクト部分が形成される。この第2の電極はここでは層スタック200上に配置されているだけではなく、該層スタック200から側方に突出してアンテナ6の第2の端部62まで引き出されている。
【0122】
図1A〜3Cに示された第1の実施例および第2の実施例による有機発光素子では、層スタック300によって動作中に生成される電磁放射は基本的に第1の電極20および基板100を通過して出力結合されるのに対し(「ボトムエミッタ」)、図4の実施例による素子10の場合には、電磁放射は有利には、基本的に第2の電極40を通過して出力結合される(「トップエミッタ」)。したがってこの実施例では、基板100を透過性とする必要はない。第1の電極20は有利には、可能な限り高い反射係数を有する。それに対して、第2の電極40は有利には、層スタック300によって動作中に生成された電磁放射に対して少なくとも部分的に透過性である。図4の実施例の目的に適った構成では、第2の電極40はアノードであり、たとえばインジウム‐錫酸化物から成る。その際には、第1の電極20は有利にはカソードであり、たとえばアルミニウムを含む。
【0123】
図5Aに示された第1の実施例による装置は有機発光素子10を有し、この有機発光素子10は保持手段11によって保持部15内に配置されている。保持手段11はここでは突出部として、封止部80に形成されている。この突出部11は、保持部15のフレキシブルな支持手段12の適切な切欠部に‐有利には形状接続的に‐係合されている。
【0124】
このことによって、素子10の簡単かつ再現可能な方向づけが実現される。それと同時に、素子10を保持部15から容易に取り外すことができる。それゆえ、欠陥時には簡単な交換が保証され、かつ、異なる色および/または形状を有する素子10を使用者が使用でき、これを相互に簡単に交換できる高いバラエティ性も保証される。
【0125】
ここでは保持部15は、有機発光素子10にエネルギーを供給する制御装置13も有する。制御装置13と素子10とは導電接続されていない。エネルギー供給はむしろ、制御ユニット13によってコイルおよび/またはアンテナを使用して交流電流または時間的に変化する直流から生成された交番電磁場(矢印14によって示されている)によって行われ、これは制御ユニット13によって放射される。交番電磁場14はここでは、誘導的に有機発光素子10に入力結合され、ここでは導体路6から成るアンテナ6を有する受信装置によって受信される。アンテナ6は交番電磁場14からエネルギーを取り出して電気エネルギーに変換する。このようにして電流が層スタック300に注入され、層スタック300は活性層32を励起して電磁放射の放出を引き起こす。
【0126】
有利には、ボンディングパッド等によって素子の外表面に電気的にコンタクトするという、誤りに対して脆弱で時間的に面倒なことを行う必要がなくなる。
【0127】
図5Bの実施例による装置では、有機発光素子10は支持手段12によって、たとえば金属クリップによって保持装置15に固定され、とりわけ簡単に取り外し可能に固定される。保持部15の構成サイズは、有利には小さい。ここでは保持部15の外表面は、封止部80の主面または基板100の主面に隣接して設けられ、とりわけ該主面に相互に接して設けられる。このようにして、有利には装置の高さが特に小さくなる。
【0128】
図5Cに示されたこの実施形態の変形形態では、有機発光素子10は保持部15の切欠部150内に配置されている。有利には、素子10は切欠部150を部分的または完全に満たす。とりわけ、保持部15によって占有されていない素子10の外表面と、凹入部150を含む該保持部15の面の、該凹入部150を包囲する部分領域とは、実質的に1つの平面内に存在する。たとえば、少なくとも1つの支持手段12が素子10を保持部15に固定する。
【0129】
図5Cに支持手段として、該図の左側に例として金属クリップ12が示されている。この金属クリップ12は、凹入部150を包囲する保持部15の部分領域に固定されており、素子10のエッジから突出して、保持部15によって占有されていない該素子10の面まで延在する。
【0130】
この図の右側には、例として差し錠12が示されており、これはたとえばプラスチック材料から成る。差し錠12は、素子10の未占有面に対して平行に動かせるように、保持部15に固定される。このような差し錠12によって、素子10を特に簡単に交換することができる。
【0131】
たとえば、セキュリティラベルである有機発光素子の場合、素子10と保持部15との接続、たとえば素子10と保護すべき商品との接続は、たとえば接着材によって行われる。この接続は、この場合には簡単に取り外し可能でないように行うのが有利である。
【0132】
とりわけ、この場合のように装置が、データ記憶装置10を有する有機発光素子10を含む場合、保持部15は有利には制御ユニット13を有さない。有利には素子10は、制御ユニット13によって交番電磁場14によって照射される領域に挿入され、たとえば面上に定着されるかまたは面の側を通り過ぎて案内される。
【0133】
図6に示された第1の実施例による照明装置は有機発光素子10を有し、この有機発光素子10はここでは面全体で、たとえばガラスプレート等である保持部15に接合される。この接合は、たとえば接着フィルムによって形成される。保持部15はここでは、有機発光素子10に隣接する導体路または給電線路を有さない。とりわけ、有機発光素子にエネルギーを供給するための導体路および/または給電線路が有機発光素子に接続されていない。
【0134】
この実施例の1つの変形形態では保持部15は、マイクロ波設備である制御ユニット13を有する。たとえばこのようなマイクロ波設備は、該マイクロ波設備によって生成された交番電磁場を照射するために対象物を挿入できる内部空間と、該内部空間を封止するドアとを有する。このドアはたとえば、少なくとも部分的に透光性である。
【0135】
有機発光素子10はここではマイクロ波設備の内部空間内に配置され、有利には該マイクロ波設備のドアの該内部空間に向かい合う側に、とりわけ該ドアの透光性の場所に配置される。このようにして、マイクロ波設備13によって生成された交番電磁場14は誘導的に素子10に入力結合され、該素子10にエネルギーが供給される。このような有機発光素子は、マイクロ波設備13の動作状態を表示するのに特に適している。
【0136】
別の変形形態では、この高周波機器は誘導加熱調理器である。この誘導加熱調理器は、たとえば調理面15を有する。有機発光素子10はたとえばこの調理面15に配置されている。有機発光素子10は、高周波機器によって交番電磁場が照射される領域内に設けられ、有利には誘導加熱調理器の動作状態を表示する。
【0137】
ただ1つの有機発光素子10を設ける代わりに、たとえば複数の有機発光素子10を設けて高周波機器の動作状態を表示するのに使用することができる。とりわけ素子10はこの場合、該素子の発光パターンから交番電磁場の強度を読み取れるように構成される。
【0138】
第2の実施例による照明装置は、複数の有機発光素子10を有する。これらは層スタック300の主延在面に、相互に同一平面上に配置される。図7に、このような照明装置の一部が示されている。
【0139】
これらの有機発光素子は外部面コンタクトを有さないので、層スタック300の活性層32から出力結合された電磁放射は、素子10の可視面の大部分を通って、有利には実質的に該可視面全体を通って出力結合される。したがって照明装置は、可能な限り均質に発光する発光面を有し、この発光面で、個々の素子10によって成された発光面の各部分が、観察者によって大きく切り離されているようには認識されない。
【0140】
本発明は実施例に基づく上記の説明によってそれらの実施例に限定されるものではない。むしろ本発明はあらゆる新規の特徴ならびにそれらの特徴のあらゆる組み合わせを含むものであり、これには殊に特許請求の範囲に記載した特徴のあらゆる組み合わせが含まれる。このことはこのような特徴またはこのような組み合わせ自体が特許請求の範囲あるいは実施例に明示的には記載されていない場合であっても当てはまる。
【0141】
本願は、ドイツ連邦共和国特許出願第102006025115.6号および102006033713.1号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照により本願に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1A】異なる段階における、本発明の方法の実施例による複数の有機発光素子の概略的な断面図である。
【図1B】異なる段階における、本発明の方法の実施例による複数の有機発光素子の概略的な断面図である。
【図1C】異なる段階における、本発明の方法の実施例による複数の有機発光素子の概略的な断面図である。
【図1D】異なる段階における、本発明の方法の実施例による複数の有機発光素子の概略的な断面図である。
【図1E】異なる段階における、本発明の方法の実施例による複数の有機発光素子の概略的な断面図である。
【図1F】異なる段階における、本発明の方法の実施例による複数の有機発光素子の概略的な断面図である。
【図2A】本方法の段階における素子の概略的な平面図である。
【図2B】本方法の段階における素子の概略的な平面図である。
【図2C】第1の実施例の変形形態による素子の概略的な平面図である。
【図3A】別の実施例による有機発光素子の概略的な断面図である。
【図3B】図3Aの有機発光素子の概略的な平面図である。
【図3C】図3Aおよび3Bに示された有機発光素子の変形形態の概略的な平面図である。
【図4】第3の実施例による有機発光素子の概略的な断面図である。
【図5A】第1の実施例による有機発光素子を有する装置の概略的な断面図である。
【図5B】別の実施例による有機発光素子を有する装置の概略的な断面図である。
【図5C】図5Bの実施例の変形形態による有機発光素子を有する装置の概略的な断面図である。
【図6】第1の実施例による照明装置の一部の概略的な平面図である。
【図7】第2の実施例による照明装置の一部の概略的な平面図である。
【符号の説明】
【0143】
1 基板
2 第1の電極層
3 有機層列
31 正孔輸送層
32 活性層
33 電子輸送層
4 第2の電極層
5 絶縁層
6 導体路/アンテナ
61 導体路6の第1の端部
62 導体路6の第2の端部
7 接着材
8 封止部
81 凹入部
9 カット
10 個々の有機発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光素子において、
・基板(100)と、
・該基板上に配置された第1の電極(20)と、
・該第1の電極(20)に配置され、有機材料を含む少なくとも1つの層を有し、電磁放射を生成するのに適した層スタック(300)と、
・該層スタック上に配置された第2の電極(40)と、
・交番電磁場(14)からエネルギーを取り出し、少なくとも部分的に電気エネルギーに変換して該層スタック(300)に供給するのに適した受信装置(6)
とを有することを特徴とする、有機発光素子。
【請求項2】
前記受信装置(6)はコイルまたはアンテナを有する、請求項1記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記第2の電極(40)上に絶縁層(5)が設けられており、
該絶縁層(5)は、該第2の電極(40)を少なくとも部分的に被覆し、
該絶縁層(5)上に前記アンテナ(6)が少なくとも部分的に設けられている、請求項2記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記絶縁層(5)は前記第2の電極(40)の縁部領域を被覆し、該第2の電極(40)の中間領域を露出する、請求項3記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記アンテナ(6)は前記中間領域において前記第2の電極(40)に接続されている、請求項4記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記絶縁層(5)は前記第2の電極(40)の縁部領域を露出する、請求項3記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記アンテナ(6)は前記縁部領域において前記第2の電極(40)に接続されている、請求項6記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記受信装置(6)は、交流電流を整流するのに適したものである、請求項1から7までのいずれか1項記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記受信装置(6)は整流のために、少なくとも1つのダイオードを有する、請求項8記載の有機発光素子。
【請求項10】
封止部(80)を有しており、
該封止部(80)は、前記基板(100)とともに前記層スタック(300)を包囲するように該基板(100)上に配置される、請求項1から9までのいずれか1項記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記封止部(80)は、前記基板を上から見た場合に該基板(100)を完全に被覆する、請求項10記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記封止部(80)と前記基板(100)とは、該基板を上から見た場合に、相互に同一平面上に配置されている、請求項11記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記有機発光素子の外表面は、電気的な面コンタクトを有さない、請求項10から12までのいずれか1項記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記受信装置(6)は、所定の波長または所定の波長領域の交番電磁場を検出するように設けられている、請求項1から13までのいずれか1項記載の有機発光素子。
【請求項15】
長さが前記所定の波長または前記所定の波長領域の1つの波長の1/4の整数倍であるアンテナ(6)を有する、請求項14記載の有機発光素子。
【請求項16】
情報の記憶に適したデータ記憶素子を有する、請求項1から15までのいずれか1項記載の有機発光素子。
【請求項17】
少なくとも、請求項1から16までのいずれか1項記載の有機発光素子(10)を有する装置において、
動作時に交番電磁場(14)を生成する制御ユニット(13)を有し、
該交番電磁場(14)は該有機発光素子(10)に、受信装置(6)によってエネルギーを供給するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項18】
前記有機発光素子(10)は、前記制御ユニット(13)からガルバニック分離されている、請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記制御ユニット(13)は前記交番電磁場(14)を、交流電流および/または時間的に変化する直流電流から生成する、請求項17または18記載の装置。
【請求項20】
前記制御ユニット(13)によって生成された交番電磁場(14)は誘導的に、前記受信装置(6)に入力結合される、請求項19記載の装置。
【請求項21】
保持部(15)を有しており、
該保持部(15)と前記有機発光素子(10)とが、機械的に安定的に結合されている、請求項17から20までのいずれか1項記載の装置。
【請求項22】
前記保持部(15)は前記制御ユニット(13)を有する、請求項21記載の装置。
【請求項23】
前記制御ユニット(13)は高周波装置、とりわけマイクロ波設備であり、動作中に一領域に前記交番電磁場(14)を照射し、
該高周波装置は、対象物に該交番電磁場を照射するように設けられており、
前記有機発光素子(10)は該領域内に配置されている、請求項1から22までのいずれか1項記載の装置。
【請求項24】
少なくとも、請求項17から23までのいずれか1項記載の装置を有する照明装置。
【請求項25】
複数の有機発光素子(10)が前記照明装置の主延在平面において、少なくとも1つの方向で相互に同一平面上に配置されていることにより、1つの発光面を構成する、請求項24記載の照明装置。
【請求項26】
有機発光素子の製造方法において、
・基板(100)を設けるステップと、
・有機材料を含み電磁放射を生成するのに適した少なくとも1つの層を有する層スタック(300)を該基板上に形成するステップと、
・該基板(100)および層スタック(300)上に封止部(80)を設けるステップ
とを有し、
該封止部を、該有機発光素子の表面に電気的な面コンタクトが存在しないように設けることを特徴とする、製造方法。
【請求項27】
複数の有機発光素子(10)を形成し、その際には、
複数の層スタック(300)を基板(1)上に形成し、
まとまった封止部(8)を複数の層スタック(100)上に設ける、請求項26記載の製造方法。
【請求項28】
前記有機発光素子(10)をカット(8)によって分離し、該カット(8)によって、前記基板(1)およびまとまった封止部(8)も分離する、請求項27記載の製造方法。
【請求項29】
前記まとまった封止部(8)は、前記層スタック(300)を収容するために切欠部(81)を有する、請求項27または28記載の製造方法。
【請求項30】
前記基板(100)と封止部(80)とを、構造化された接続層(7)によって接続する、請求項26から29までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項31】
前記構造化された接続層(7)は熱硬化可能および/または光硬化可能なものである、請求項30記載の製造方法。
【請求項32】
前記構造化された接続層(7)を、電磁放射の照射によって硬化する、請求項31記載の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−324598(P2007−324598A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143885(P2007−143885)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Wernerwerkstrasse 2, D−93049 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】