説明

有機発光素子およびそれを有する表示装置

【課題】 燐光発光層のホスト材料は最低励起一重項(S1)が高いため、キャリアの注入障壁が大きい。そのため、燐光発光素子は蛍光発光素子に比べて駆動電圧が高い。
【解決手段】 一対の電極と前記一対の電極の間に配置される発光層とを有し、前記発光層はゲスト材料とホスト材料とを有し、前記ゲスト材料は燐光発光材料であり、前記ホスト材料の最低励起一重項準位と最低励起三重項準位とのエネルギー差が0.03eV以下であることを特徴とする有機発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機発光素子およびそれを有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、一対の電極とこれら一対の電極の間に配置される発光層を有する素子である。これら電極からキャリアが供給されることで発光層内の有機化合物を励起し、この励起状態から基底状態に戻る際に発光する。
【0003】
有機発光素子の発光には最低励起一重項(S1)から発光する蛍光、最低励起三重項(T1)から発光する燐光が知られている。また、同一化合物のS1とT1とを比較するとS1の準位が高いことが知られている。
【0004】
燐光発光素子において、発光層の主成分であるホスト材料のT1は、副成分であるゲスト材料のT1よりも準位が高い。これはエネルギーをホスト材料のT1からゲスト材料のT1へ移動させるためである。一方で蛍光発光素子の場合、エネルギーはホスト材料のS1からゲスト材料のS1へ移動する。同じ色を発光する燐光発光素子と蛍光発光素子がある場合、燐光発光素子のゲスト材料のT1と蛍光発光素子のゲスト材料のS1は同じ準位である。それぞれの素子のホスト材料に注目すると蛍光発光素子のホスト材料のS1よりも燐光発光素子のホスト材料のS1は高準位であることが一般であり、蛍光発光素子のS1より低いS1の燐光発光素子は見つかっていない。
【0005】
S1の準位が高いということはバンドギャップ即ち、HOMO−LUMOエネルギーギャップも大きい。発光層に隣接する隣接層として用いることができる材料は選択の幅が限られるため、発光層のエネルギーギャップに合わせて隣接層のエネルギーギャップを大きくすることは難しい。従って、燐光発光素子では、発光層と発光層と隣接する隣接層とのHOMO同士の障壁あるいはLUMO同士の障壁が大きくなり、エネルギー障壁が大きい傾向がある。このことから燐光発光素子は駆動電圧が高いといえる。
【0006】
一方、駆動電圧を下げても発光効率が低下しては素子としての性能は低いので、駆動電圧が下がっても発光効率は維持または向上させることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−267255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように一般的に燐光発光素子は駆動電圧が高く、一例として特許文献1に記載の燐光発光素子は駆動電圧が8.1Vと高い。これはホスト材料のS1が高いため、ホスト材料へのホールおよび電子の注入障壁が大きくなるためである。
【0009】
本発明は駆動電圧の低い燐光発光素子を提供することを目的とする。より具体的には有機化合物層がホール輸送層、発光層、電子輸送層の三層構成である有機発光素子において、5.0V以下の駆動電圧で、かつ13cd/A以上の発光効率を有する燐光発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
よって本発明は、一対の電極と前記一対の電極の間に配置される発光層とを有し、前記発光層はゲスト材料とホスト材料とを有し、前記ゲスト材料は燐光発光材料であり、前記ホスト材料の最低励起一重項準位と最低励起三重項準位とのエネルギー差が0.03eV以下であることを特徴とする有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発光層のホスト材料のS1が低いので、ホスト材料へのキャリア注入障壁が小さく、駆動電圧が低い燐光発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】最低励起一重項と最低励起三重項とを示す模式図である。
【図2】有機発光素子と有機発光素子と接続するスイッチング素子とを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、一対の電極と前記一対の電極の間に配置される発光層とを有し、前記発光層はゲスト材料とホスト材料とを有し、前記ゲスト材料は燐光発光材料であり、前記ホスト材料の最低励起一重項準位と最低励起三重項準位とのエネルギー差が0.03eV以下であることを特徴とする有機発光素子である。
【0014】
本発明者は、燐光発光素子において、ホスト材料のT1の高さを維持したまま、ホスト材料のS1を低くすれば駆動電圧を低くできることに着想した。そのためには、ホスト材料のS1とホスト材料のT1とのエネルギー差が小さければ、小さいほど良い。あるいは、素子の発光効率を高めるために、ホスト材料の逆項間交差を利用することもできる。そのためには0.03eV以下とすると好ましいことを見出した。
【0015】
この値を下回れば発光色を問わず、燐光発光素子は駆動電圧5.0V以下かつ発光効率13cd/A以上という目標を達成できる。なお、0.03eVとは実験から経験的に得られる値であり、測定条件上小数点第2位までが信頼に足りる値である。
【0016】
この0.03eVという値は室温において、エネルギーがホスト材料のT1からホスト材料のS1に逆項間交差しうるほど小さいエネルギー差であることを意味する。ホスト材料のT1からホスト材料のS1に逆項間交差することはホスト材料のT1から熱失活するはずだったエネルギーを再度発光しうるエネルギーにできる経路なので発光効率の向上に寄与することが考えられる。
【0017】
ここで、ホスト材料とは発光層中の最も重量比の大きい化合物であり、ゲスト材料とは発光層中のホスト材料よりも重量比が小さく、具体的にはホスト材料に対して0.1wt%以上30wt%以下のもので主たる発光をする化合物である。
【0018】
ここで燐光とはT1からの発光であり、発光寿命が蛍光に比べて長いことが特徴である。通常の蛍光発光は、S1からの発光のためナノ秒レベルの発光寿命であるのに対して、T1からの発光であるため、発光寿命がマイクロ秒レベルである。
【0019】
燐光は、温度の上昇と共に無輻射失活速度が大きくなるため、温度上昇と共に発光強度は低下する。
【0020】
燐光発光素子において、ホスト材料のT1とゲスト材料のT1との差はホスト材料のS1を高くしないために小さいものを選択することが好ましい。
【0021】
本発明について図1を用いて説明する。図1は各準位のエネルギーの高さを示すエネルギーダイヤグラムである。
【0022】
図1の符号2はゲスト材料のT1であり、符号3は燐光発光が有するエネルギーであり、符号4は基底状態のエネルギーであり、0eVである。3のエネルギーが燐光の発光波長を決める。符号1のホスト材料のT1は符号2のゲスト材料のT1よりも高いことが燐光発光の必須条件である。符号1のホスト材料のT1と符号5のホスト材料のS1とが符号6の項間交差でエネルギーの移動を行う。符号5のホスト材料のS1にエネルギーを供給するために必要なエネルギーの大きさが符号8で表され、結果として発光素子の駆動電圧に影響を与える。
【0023】
これは、エネルギー8、即ちS1が高いとホスト材料へのキャリア注入障壁が大きくなるため、駆動電圧が大きくなることを意味する。
【0024】
ここで、符号7に参考としての燐光発光素子のホスト材料のS1とこのS1にエネルギーを供給するために必要なエネルギー9とを示す。参考例としてのホスト材料のS1と比較して符号5で示す本発明に係るホスト材料のS1は低い。
【0025】
ホスト材料のS1とホスト材料のT1との差は小さいほど好ましい。なぜならば、この差が小さいほど結果的にホスト材料のS1を低くすることができ、駆動電圧を低くできると考えられるからである。
【0026】
本発明に係る燐光発光素子はホスト材料のS1が低いので駆動電圧を低くすることができる。具体的にはS1とT1との差が0.03eV以下なので駆動電圧5.0V以下でかつ発光効率13cd/Aの燐光発光素子を提供することができる。
【0027】
本発明に係るホスト材料は0.03eV以下という条件を満たすものであれば、どのような化合物でもよいと考えられるが、遷移金属錯体が好ましい。
【0028】
遷移金属錯体の中でも銅や白金が好ましく、化合物内の遷移金属は一種類である方が安定に存在することができる。
【0029】
以下に本実施形態に係るホスト材料の具体例を示す。
【0030】
【化1】

【0031】
例示化合物H1乃至H3は一般式[1]で表され、H4乃至H6は一般式[2]で表される。
【0032】
一般式[1]
【0033】
【化2】

【0034】
(Xはいずれもハロゲン原子を示す。)
【0035】
一般式[2]
【0036】
【化3】

【0037】
(R乃至Rはそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基から選ばれる。
このアルキル基は例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基をあげることができる。)
【0038】
H5およびH6はH4の化合物が置換基を有した化合物と見ることができる。H5はフッ素原子を置換基として有し、H6はメチル基を置換基として有する。置換基の位置を問わず効果は変わらないと考えられる。
【0039】
表1は、本実施形態のホスト材料と参考例のホスト材料とのS1およびT1の実測である。
【0040】
なお、S1は、10−5M程度のモル濃度に調製したトルエン溶液中の吸収スペクトルの吸収端波長を測定し以下の式1を用いて算出した。
【0041】
T1は化合物の粉末状態での発光スペクトルを測定し、その高エネルギー側の発光端(スペクトルの立ち上がり)波長を測定し以下の式1から算出した。
【0042】
【数1】

【0043】
Eはエネルギーであり、hはプランク定数、cは光速、eは素電荷、λは測定した波長である。
【0044】
【表1】

【0045】
【化4】

【0046】
【化5】

【0047】
【化6】

【0048】
参考例であるRH−1は青燐光素子、RH−2は緑及び赤燐光素子、RH−3は赤燐光素子のホストとして用いられる化合物である。これらのS1の値に対して本実施形態の化合物のS1の値はいずれも非常に小さい値である。本実施形態のこれらホスト材料は、青・緑・赤の各色燐光発光材料に対してS1が小さい、すなわち、HOMOとLUMOとのエネルギーギャップが小さい材料である。従って、陽極・陰極に用いる電極の仕事関数と本実施形態のホスト材料とのエネルギー差が小さくなり、ホールの注入障壁、電子の注入障壁が小さくなるため、素子の低電圧駆動が実現できる。
【0049】
本実施形態に係る有機発光素子は、対向する一対の電極としての陽極と陰極と、これらの電極の間に配置される発光層を有する素子である。この有機発光素子はホスト材料とゲスト材料とを有する発光層を有しており、ホスト材料のS1とホスト材料のT1とのエネルギー差が0.03eV以下である。このため、この有機発光素子は有機化合物層がホール輸送層、発光層、電子輸送層の3層構成の場合、駆動電圧5.0V以下、発光効率13cd/A以上を満たす。実施例では駆動電圧4.9Vが達成されているので、
この駆動電圧を下げる効果は有機化合物層が3層構成の有機発光素子に限られず、何層構成であっても同様に駆動電圧が低下し、高い発光効率を得られると発明者は考える。
【0050】
この有機発光素子は上記3層構成以外にも複数層を有してよい。複数層とは、ホール注入層、ホールブロッキング層、エキシトンブロッキング層、電子注入層等が挙げられ、これらの層を適宜組み合わせて用いることができる。
【0051】
陽極材料には、仕事関数が大きなものが用いられる。例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Pd、Co、Se、V、W等の金属単体あるいはこれらの合金、ITO、IZO等の金属酸化物等が挙げられるがこれらに限定されない。また、陽極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
【0052】
発光層と陽極との間に設けられるホール輸送層あるいはホール注入層を構成する化合物は、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、オキサゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、及びポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(シリレン)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本実施形態に係る発光層はホスト材料とゲスト材料を有し、ゲスト材料には公知の燐光発光材料を用いることができる。この発光層はアシスト材料をさらに有してもよい。アシスト材料とは重量比がホスト材料よりも小さく、主たる発光に寄与せずゲスト材料を助ける材料である。
【0054】
発光層と陰極との間に設けられる電子注入層あるいは電子輸送層を構成する化合物は、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
陰極材料には、仕事関数の小さなものが用いられる。例えば、Li等のアルカリ金属、Ca等のアルカリ土類金属、Al、Ti、Mn、Ag、Pb、Cr等の金属単体あるいはこれら金属単体の合金、ITO等の金属酸化物等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0056】
本発明に係る有機発光素子において、有機化合物層は、例えば次に示す方法により形成することができる。
【0057】
真空蒸着あるいは適当な溶媒に溶解させて所定の位置に塗布しその後溶媒を乾燥する溶液塗布法により層を形成することができる。
【0058】
以下本発明に係る有機発光素子の用途について説明する。
【0059】
本発明に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置に用いることができる。他にも電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライトなどがある。
【0060】
表示装置は本発明に係る有機発光素子を表示部に有する。この表示部とは複数の画素を有しており、この画素は本発明に係る有機発光素子とTFT素子とを有し、この有機発光素子の陽極または陰極とTFT素子のドレイン電極またはソース電極とが接続されている。表示装置はPC等の画像表示装置として用いることができる。
表示装置は画像入力部をさらに有する画像入力装置でもよい。
【0061】
画像入力装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの情報を入力する画像入力部と、入力された情報を表示する表示部とを有する。これに撮像光学系をさらに有すればデジタルカメラ等の撮像装置となる。また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部として、外部から入力された画像情報に基づいて画像を表示する画像出力機能と操作パネルとして画像への加工情報を入力する入力機能との両方を有していてもよい。また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0062】
次に、本発明に係る有機発光素子を使用した表示装置について説明する。
【0063】
図2は、本発明に係る有機発光素子と有機発光素子の発光非発光をスイッチングするスイッチング素子の1例であるTFT素子とを有する表示装置の断面模式図である。本図では有機発光素子とTFT素子との組が2組図示されている。不図示ではあるが発光輝度を制御するトランジスタをさらに有してよい。表示装置は、情報に応じてスイッチング素子を駆動することで、有機発光素子を点灯あるいは消灯することによって表示を行い、情報を伝える。構造の詳細を以下に説明する。
【0064】
図2の表示装置は、ガラス等の基板10とその上部にTFT素子又は有機化合物層を保護するための防湿膜11が設けられている。また符号12は金属のゲート電極12である。符号13はゲート絶縁膜13であり、符号14は半導体層14である。
【0065】
TFT素子17は半導体層14とドレイン電極15とソース電極16とを有している。TFT素子17の上部には絶縁膜18が設けられている。コンタクトホール19を介して有機発光素子の陽極20とソース電極16とが接続されている。表示装置はこの構成に限られず、陽極または陰極のうちいずれか一方とTFT素子のソース電極またはドレイン電極のいずれか一方とが接続されていればよい。
【0066】
有機化合物層21は本図では多層の有機化合物層を1つの層の如き図示をしている。陰極22の上には有機発光素子の劣化を抑制するための第一の保護層23や第二の保護層24が設けられている。
【0067】
本実施形態の有機発光素子を有する表示装置は長時間表示でも安定な表示ができる。
【実施例】
【0068】
以下実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0069】
[実施例1]
以下に示す構成の有機発光素子を作製した。
ITO/PF01(40nm)/H1(ホスト)+D1(ドーパント)(20nm)/Bphen(50nm)/KF(1nm)/Al(100nm)
厚さ1.1mmの無アルカリガラス基板にITO膜(120nm)をスパッタ法にて形成し、陽極側透明電極として用いた。この上に、PF01を、ホール輸送層として真空度3.0×10−5Paの条件下で真空蒸着法にて40nmの層厚で形成した。次に発光層として、化合物H1をホスト材料、下記に示すD1をドーパント材料とした。ホスト材料に対するドーパント材料の濃度を5vol%として、真空度3.0×10−5Paの条件下で共蒸着法にて発光層を20nm層厚で形成した。
【0070】
次に電子輸送層としてBphen(バソフェナントロリン)を真空度3.0×10−5Paの条件下で真空蒸着法にて50nmの層厚で形成した。次に電子注入層としてフッ化カリウム(KF)を真空度2.0×10−4Paの条件下で真空蒸着法にて1nm形成した。最後に陰極材料としてAlを真空度2.0×10−4Paの条件下で真空蒸着法にて100nm形成して、有機発光素子を得た。
【0071】
【化7】

【0072】
【化8】

【0073】
【化9】

【0074】
有機発光素子は、以下の方法で評価を行った。駆動電源は、直流定電流電源(エーディーシー社製、商品名:R6243)を用いた。輝度は輝度計(トプコン社製、商品名:BM−7FAST)を用いた。本例で作製した有機発光素子の評価は、輝度100cd/mにおける、駆動電圧及び発光効率の値から評価を行った。
【0075】
本例で作製した有機発光素子は、発光のピーク波長が550nmの発光を示した。輝度100cd/mにおける駆動電圧は4.5Vであり、発光効率は20cd/Aであった。
【0076】
[実施例2]
実施例1におけるホスト材料をH4に、ドーパント材料をD2に変更した以外は実施例1と同様の方法により有機発光素子を作製した。
【0077】
【化10】

【0078】
本例で作製した有機発光素子は、発光のピーク波長が620nmの発光を示した。輝度100cd/mにおける駆動電圧は4.3Vであり、発光効率は13cd/Aであった。
【0079】
[実施例3]
実施例1におけるホスト材料をH6に、ドーパント材料をD3に変更した以外は実施例1と同様の方法により有機発光素子を作製した。
【0080】
【化11】

【0081】
本例で作製した有機発光素子は、発光のピーク波長が510nmの発光を示した。輝度100cd/mにおける駆動電圧は4.9Vであり、発光効率は21cd/Aであった。
【0082】
[比較例1]
実施例1におけるホスト材料をRH−2に変更した以外は、実施例1と同様の方法により有機発光素子を作製した。本例で作製した有機発光素子は、発光のピーク波長が550nmの発光を示した。輝度100cd/mにおける駆動電圧は5.4Vであり、発光効率は13cd/Aであった。
【0083】
[比較例2]
実施例2におけるホスト材料をRH−2に変更した以外は、実施例2と同様の方法により有機発光素子を作製した。本例で作製した有機発光素子は、発光のピーク波長が620nmの発光を示した。輝度100cd/mにおける駆動電圧は4.7Vであり、発光効率は11cd/Aであった。
【0084】
[比較例3]
実施例3におけるホスト材料をRH−2に変更した以外は、実施例3と同様の方法により有機発光素子を作製した。本例で作製した有機発光素子は、発光のピーク波長が510nmの発光を示した。輝度100cd/mにおける駆動電圧は6.5Vであり、発光効率は16cd/Aであった。
【符号の説明】
【0085】
1 ホスト材料の最低励起三重項準位
2 ゲスト材料の最低励起三重項準位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と前記一対の電極の間に配置される発光層とを有し、前記発光層はゲスト材料とホスト材料とを有し、前記ゲスト材料は燐光発光材料であり、前記ホスト材料の最低励起一重項準位と最低励起三重項準位とのエネルギー差が0.03eV以下であることを特徴とする有機発光素子。
【請求項2】
前記ホスト材料は下記の一般式[1]または一般式[2]または構造式[3]で示されることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
一般式[1]
【化1】


(Xはいずれもハロゲン原子を示す。)
一般式[2]
【化2】


(R乃至Rはそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基から選ばれる。)
構造式[3]
【化3】

【請求項3】
複数の画素を有し、前記画素は請求項1または2に記載の有機発光素子と前記有機発光素子に接続するスイッチング素子とを有することを特徴とする表示装置。
【請求項4】
画像を読み取るための画像入力部と画像を出力するための表示部とを有し、前記表示部は複数の画素を有し、前記画素は請求項1または2に記載の有機発光素子と前記有機発光素子に接続するスイッチング素子とを有することを特徴とする画像入力装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−199019(P2011−199019A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64318(P2010−64318)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】