説明

有機発光素子

【課題】有機発光素子を提供する。
【解決手段】第1電極と第2電極との間に発光層を有する有機発光素子において、発光層は、マトリックスポリマー、二つ以上のリン光ホスト物質、及び一つ以上のリン光ドーパントを含む有機発光素子である。これにより、混合リン光ホスト物質を使用してエネルギー伝達効率を向上させることによって、素子の効率及び寿命特性を改善でき、スピンコーティングのような溶液工程で素子を製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子に係り、さらに詳細には、溶液工程が可能な構造であって、二つ以上のリン光ホスト物質を含む有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子の発光材料は、その発光メカニズムによって一重項状態のエキシトンを利用する蛍光材料と三重項状態を利用するリン光材料とに分けられる。
【0003】
リン光材料は、一般的に重い原子を含有する有機金属化合物構造を有しており、このようなリン光材料を利用すれば、元来禁制遷移であった三重項状態のエキシトンが許容遷移を経て発光する。リン光材料は、75%生成確率を有する三重項エキシトンを使用できて25%の生成確率を有する一重項エキシトンを利用する蛍光材料より非常に高い発光効率を有しうる。
【0004】
リン光材料を利用した発光層(EML:light−EMitting Layer)は、ホスト物質とこれからエネルギー移動されて発光するドーパント物質とで構成される。前記ドーパント物質としては、プリンストン大学及び南カリフォルニア大学でイリジウム金属化合物を利用した色々な材料が報告されている。特に、青色発光材料としては、(4,6−Fppy)Irpicやフッ素化されたppy(fluorinated ppy)リガンド構造を基本とするIr化合物が開発され、これら物質のホスト材料としては、CBP(4,4’−N,N’−dicarbazole−biphenyl)物質が多く使われている。CBP分子は、その三重項状態のエネルギーバンドギャップが緑色または赤色発光材料のエネルギーギャップには十分なエネルギー移動を可能にするが、青色材料のエネルギーギャップよりは小さいため、発熱エネルギー転移ではなく非常に非効率的な吸熱転移が起こると報告されている。このような結果で、CBPホストは、青色ドーパントへのエネルギー移動が十分でないので、青色発光効率が低く、寿命が短いという問題点の原因として指摘されている。
【0005】
最近、リン光材料を利用したEMLの形成時にCBPより大きい三重項エネルギーバンドギャップを有するホスト物質及び溶液工程で製造するためにマトリックスポリマーを利用する方法が報告された。
【0006】
しかし、これまで知られたホスト物質を利用する場合、リン光デバイスの効率及び寿命特性が満足すべきレベルに至らなくて、改善の余地が多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、前記問題点を解決してスピンコーティングのような溶液工程が可能であり、二つ以上のリン光ホスト物質を使用して効率及び寿命特性に優れた有機発光素子を提供することである。
【0008】
また、本発明が解決しようとする他の技術的課題は、前記問題点を解決して溶液工程を使用する有機発光素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するために、本発明は、第1電極と第2電極との間にEMLを有する有機発光素子において、前記EMLは、マトリックスポリマー、二つ以上のリン光ホスト物質、及び一つ以上のリン光ドーパントを含む有機発光素子を提供する。
【0010】
前記他の課題を達成するために、本発明は、第1電極と第2電極との間にEMLを備える有機発光素子の製造方法において、前記EMLの製造方法が、マトリックスポリマー、二つ以上のホスト物質、一つ以上のリン光ドーパント物質を混合してEML形成用組成物を製造する第1ステップと、前記組成物を第1電極の上部に塗布する第2ステップと、を含む有機発光素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有機発光素子のEMLは、マトリックスポリマー、二つ以上のリン光ホスト物質、及びリン光ドーパントを含み、スピンコーティングのような溶液工程で製造可能な構造であって素子の効率及び寿命特性を改善させうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
第1電極と第2電極との間にEMLを形成する時に二つ以上のホスト物質を使用して製造する有機発光素子の効率及び寿命を向上させた具体的な例は、本出願人の韓国特許出願第04−98372号及び第04−89652号に開示されている。
【0014】
前記特許文献では、前記二つ以上のホスト物質を使用する場合、EMLを形成するために真空蒸着法を使用した。しかし、真空蒸着法によるEMLの製造は、結晶化安定性、工程の容易性及び大面積化などの点で溶液工程に比べて不利であった。したがって、効率及び寿命特性に優れ、溶液工程で製造可能な有機発光素子及びその製造方法が要求されてきた。
【0015】
本発明では、第1電極と第2電極との間にEMLを形成する時にマトリックスポリマー、二つ以上のリン光ホスト物質、及び一つ以上のリン光ドーパントを使用することによって、有機発光素子の効率及び寿命特性を改善させた。溶液工程でEMLを形成し、二つ以上のホスト物質を使用することによって、EML内で再結合確率を高めて効率の向上及び寿命延長が可能である。
【0016】
前記リン光ホスト物質は、第1ホスト物質及び第2ホスト物質からなり、前記物質のHOMO準位が異なり、及び/またはLUMO準位が異なる化合物をリン光ホストとして使用することが望ましい。
【0017】
二つの物質のエネルギーレベルが異なる場合には、ホール及び電子が注入されて移動するとき、さらに安定したエネルギーレベルに沿って移動するため、EMLで再結合確率が高く、電荷がEMLの外部に流出されない。二つの物質のエネルギーレベルが同じであれば、このような効果が得られない。したがって、前記二つのホスト物質のHOMO準位及びLUMO準位が異なるか、またはHOMO準位及びLUMO準位のうち一つが異なって初めて、安定したエネルギーレベルに沿って電荷が移動できる。
【0018】
前記第1ホスト物質及び第2ホスト物質の三重項エネルギーレベルは、2.3ないし3.5eVであることが望ましい。三重項エネルギーレベルが2.3eV未満である場合には、リン光ドーパントへの三重項エネルギー移動が不可能でデバイスの特性が低下し、3.5eVを超える場合には、駆動電圧が上昇するか、または効率が低下するため、望ましくない。
【0019】
本発明の二つ以上のリン光ホスト物質は、ホール輸送特性を有する物質及び/または電子輸送特性を有する物質のうち選択された二つ以上でありうる。すなわち、二つ以上のホール輸送物質、少なくとも一つのホール輸送物質及び少なくとも一つの電子輸送物質、または二つ以上の電子輸送物質で構成されうる。
【0020】
前記ホール輸送特性を有するホスト物質は、カルバゾール化合物であることが望ましい。
【0021】
前記カルバゾール化合物の非限定的な例としては、1,3,5−トリカルバゾリルベンゼン、4,4’−ビスカルバゾリルビフェニル(CBP)、ポリビニルカルバゾール、m−ビスカルバゾリルフェニル、4,4’−ビスカルバゾリル−2,2’−ジメチルビフェニル[dmCBP]、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン、1,3,5−トリス(2−カルバゾリルフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−カルバゾリル−5−メトキシフェニル)ベンゼン及びビス(4−カルバゾリルフェニル)シランからなる群から選択された一つ以上であることが望ましい。
【0022】
前記電子輸送特性を有するホスト物質としては、金属及び有機リガンドを含む有機金属錯体、スピロフルオレン系化合物、オキサジアゾール系化合物、フェナントロリン系化合物、トリアジン系化合物、及びトリアゾール系化合物のうち選択された一つ以上の化合物であることが望ましい。
【0023】
前記有機金属錯体の非限定的な例としては、ビス(8−ヒドロキシキノラト)ビフェノキシ金属、ビス(8−ヒドロキシキノラト)フェノキシ金属、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノラト)ビフェノキシ金属、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノラト)フェノキシ金属)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニル−フェノラト)金属、及びビス(2−(2−ヒドロキシフェニル)キノラト)金属からなる群から選択され、前記金属は、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)、またはガリウム(Ga)である。
【0024】
前記電子輸送物質は、特に、ビス(8−ヒドロキシキノラト)ビフェノキシアルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノラト)フェノキシアルミニウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノラト)ビフェノキシアルミニウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノラト)フェノキシアルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニル−フェノラト)アルミニウム(BAlq)、またはビス(2−(2−ヒドロキシフェニル)キノラト)亜鉛であることが望ましい。
【0025】
前記スピロフルオレン系化合物は、2個のスピロフルオレンの間に連結環を有して連結される構造であって、前記連結は、トリアゾール、オキサゾール、ナフタレン、アントラセン、またはフェニルに置換され、各フルオレンの9位がO、S、Se、N−R、P−Rに置換された構造であるか、または2個のスピロフルオレンの間をN−RまたはP−Rが直接連結する構造となりうる。前記Rは、それぞれHであるか、または炭素数1ないし20個のアルキル基、炭素数1ないし20個のアルキル基を有する炭素数5ないし20のアリール基、炭素数2ないし20のヘテロアリール基、炭素数1ないし20のアルコキシ基を有する炭素数6ないし20のアリール基からなる群から選択される置換基である。望ましくは、前記スピロフルオレン系化合物は、2,5−ジスピロビフルオレン−1,3,4−オキサゾールである。
【0026】
前記オキサジアゾール系化合物の非限定的な例としては、(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサゾールが挙げられ、前記フェナントロリン系化合物の非限定的な例としては、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−9,10−フェナントロリン(BCP)が挙げられ、前記トリアジン系化合物の非限定的な例としては、2,4,6−トリス(ジフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリカルバゾロ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、または2,4,6−トリス(N−フェニル−1−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジンが挙げられる。前記トリアゾール系化合物の非限定的な例としては、3−フェニル−4−(1−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾールが挙げられる。
【0027】
前記第1ホスト物質及び第2ホスト物質の混合重量比は、1:9ないし9:1であり、望ましくは、1:3ないし3:1であり、さらに望ましくは、3:1である。もし、ホスト物質の含量が前記範囲を逸脱する場合には、単一ホストに比べて発光効率特性が改善されないため、望ましくない。
【0028】
本発明は、前述したように単独のホスト物質のみが使われるものではなく、二つ以上の混合物形態に使われることによって効率及び寿命特性が改善されうる。また、このようなEMLの製造において、溶液工程が可能でスピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、インクジェットプリンティング、または熱転写法などの方法によってEMLが形成されうる。このような溶液工程を行うためには、ベンゼン、トルエン、及びクロロベンゼンのような有機溶媒に対する溶解度特性に優れたマトリックスポリマーが使用されねばならない。
【0029】
本発明のマトリックスポリマーは、エネルギーレベルバンドギャップが広い通常の物質を利用できる。これに限定されるものではないが、ポリフェニレンビニレン(PPV)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリフルオレン系樹脂、及びこれらの誘導体のうち選択された一つ以上が望ましい。
【0030】
前記マトリックスポリマーの含量は、二つ以上のホスト物質100重量部を基準として50ないし200重量部であることが望ましい。
【0031】
本発明のEMLの形成時に使われるリン光ドーパントは、Ir(L)3またはIr(L)2L’で表示され、L及びL’は、下記の構造から選択されうる:
【0032】
【化1】

【0033】
前記リン光ドーパントの非限定的な例としては、ビスチエニルピリジンアセチルアセトネートイリジウム、ビス(ベンゾチエニルピリジン)アセチルアセトネートイリジウム、ビス(2−フェニルベンゾチアゾール)アセチルアセトネートイリジウム、ビス(1−フェニルイソキノリン)イリジウムアセチルアセトネート、トリス(フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−ビフェニルピリジン)イリジウム、トリス(3−ビフェニルピリジン)イリジウム、及びトリス(4−ビフェニルピリジン)イリジウムから選択された一つ以上でありうる。
【0034】
本発明に使われるリン光ドーパントの含量は、リン光ホスト物質100重量部を基準として1ないし45重量部であることが望ましい。前記リン光ドーパントの含量が1重量部未満である場合には、効率及び寿命特性が低下して望ましくなく、45重量部を超える場合には、濃度消光現象による効率の低下によって望ましくない。
【0035】
リン光ドーパントを含むEMLの形成時に、リン光ホスト物質として、ホール輸送特性を有するカルバゾール化合物と、電子輸送特性を有するオキサジアゾール系化合物、フェナントロリン系化合物、トリアジン系化合物、及びトリアゾール系化合物のうちから選択された一つ以上の化合物とを共に使用でき、このような場合には、ホールブロッキング層(HBL:Hole Blocking Layer)を形成しないので、デバイス構造が単純化され、発光効率及び寿命特性を向上させうる。
【0036】
前記マトリックスポリマーは、ポリビニルカルバゾール(PVK)であることが望ましく、前記二つのリン光ホスト物質は、CBP及びBAlqであることが望ましく、前記リン光ドーパントは、ビス(1−フェニルイソキノリン)イリジウムアセチルアセトネートであることが望ましい。
【0037】
前記第1電極とEMLとの間にホール注入層(HIL:Hole Injection Layer)及びホール輸送層(HTL:Hole Transport Layer)のうち選択された一つ以上をさらに備え、前記EMLと第2電極との間にHBL、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)及び電子注入層(Electron Injection Layer)のうちから選択された一つ以上の層をさらに備えうる。
【0038】
図1を参照して、本発明の一実施例による有機発光素子の製造方法を説明すれば、次の通りである。
【0039】
まず、基板の上部に第1電極のアノード用物質をコーティングしてアノードを形成する。ここで、基板としては、通常有機発光素子で使われる基板を使用するが、透明性、表面平滑性、取扱い容易性及び防水性に優れる有機基板または透明プラスチック基板が望ましい。そして、アノード用物質としては、透明かつ伝導性に優れる酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)、酸化インジウム亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)を使用する。
【0040】
前記アノードの上部にHIL物質を熱真空蒸着するか、または使われる物質の種類によっては、溶液に溶かした後にスピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、インクジェットプリンティング、または熱転写法、有機気相蒸着(Organic Vapor Phase Deposition:OVPD)法などの方法を使用して、HILを選択的に形成する。ここで、HILの厚さは、50ないし1500Åであることが望ましい。もし、HILの厚さが50Å未満である場合には、ホール注入特性が低下し、1500Åを超える場合には、駆動電圧の上昇のために、望ましくない。
【0041】
前記HIL物質としては、特別に制限されず、銅フタロシアニン(CuPc)またはスターバースト型アミン類であるTCTA、m−MTDATA、IDE406(出光社製)などをHILとして使用できる。
【0042】
【化2】

【0043】
前記過程によって形成されたHILの上部にHTL物質を前記例示した多様な方法でコーティングしてHTLを選択的に形成する。前記HTL物質は、特別に制限されず、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPD)、IDE320(出光社製)などが使われる。ここで、HTLの厚さは、50ないし1500Åであることが望ましい。もし、HTLの厚さが50Å未満である場合には、ホール伝達特性が低下し、1500Åを超える場合には、駆動電圧の上昇のために、望ましくない。
【0044】
【化3】

【0045】
次いで、HTLの上部にマトリックスポリマー、二つ以上のリン光ホスト物質、及びリン光ドーパントを含む発光材料を利用して、EMLを形成する。
【0046】
本発明は、第1電極と第2電極との間にEMLを備える有機発光素子の製造方法において、前記EMLの製造方法がマトリックスポリマー、二つ以上のホスト物質、一つ以上のリン光ドーパント物質を混合してEML形成用組成物を製造する第1ステップと、前記組成物を第1電極の上部に塗布する第2ステップと、を含む有機発光素子の製造方法を提供する。
【0047】
前記第1ステップで使われた溶媒は、ベンゼン、トルエン、及びクロロベンゼンからなる群から選択された一つ以上の溶媒であることが望ましい。前記第2ステップの組成物をスピンコーティング、インクジェットプリンティング、ディップコーティング、ドクターブレーディングまたは熱転写法のうち一つの方法で塗布してEMLを形成する。
【0048】
前記EMLの厚さは、100ないし800Åであることが望ましく、さらに望ましくは、300ないし400Åである。もし、EMLの厚さが100Å未満であれば、効率及び寿命が低下し、800Åを超えれば、駆動電圧が上昇して望ましくない。
【0049】
前記EMLの上部にホールブロッキング用物質を真空蒸着またはスピンコーティングしてHBLを選択的に形成する。このときに使われるHBL用物質は、特別に制限されていないが、電子輸送能力を有しつつ、発光化合物より高いイオン化ポテンシャルを有さねばならず、代表的にBalq、BCP、TPBIなどが使われる。HBLの厚さは、30ないし500Åであることが望ましい。もし、HBLの厚さが30Å未満である場合には、ホール防止特性が悪くて効率が低下し、500Åを超える場合には、駆動電圧が上昇して望ましくない。
【0050】
【化4】

【0051】
前記HBLの上部に電子輸送物質を利用してETLを選択的に形成する。ETL材料としては、特別に制限されず、Alq3を利用できる。前記ETLの厚さは、50ないし600Åであることが望ましい。もし、ETLの厚さが50Å未満である場合には、寿命特性が低下し、600Åを超える場合には、駆動電圧が上昇して望ましくない。
【0052】
また、前記ETLの上部にEILが選択的に積層されうる。前記EILの形成材料としては、LiF、NaCl、CsF、LiO、BaO、及びLiqなどの物質を利用できる。前記EILの厚さは、1ないし100Åであることが望ましい。もし、EILの厚さが1Å未満である場合には、効果的なEILとしての役割を行えなくて駆動電圧が高く、100Åを超える場合には、絶縁層として作用して駆動電圧が高くて望ましくない。
【0053】
【化5】

【0054】
次いで、前記EILの上部に第2電極のカソード用金属を真空熱蒸着して第2電極のカソードを形成することによって有機発光素子が完成される。
【0055】
前記カソード金属としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)が利用される。
【0056】
本発明の有機発光素子は、アノード、HIL、HTL、EML、ETL、EIL、カソードの必要に応じて一層または二層の中間層をさらに形成してもよい。
【0057】
以下、本発明を下記の実施例によって説明するが、本発明が下記の実施例にのみ限定されるものではない。
【0058】
[実施例]
本発明の下記の実施例で使われる含量の単位は‘重量部’とし、これは、二つ以上のリン光ホスト物質100重量部を基準としたものである。
【0059】
実施例1
アノードは、コーニング15Ω/cm(1200Å)ITOガラス基板を50mm×50mm×0.7mmサイズに切断して、イソプロピルアルコール及び純水の中で各5分間超音波洗浄した後、30分間UV、オゾン洗浄して使用した。
【0060】
前記基板の上部にN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)を真空蒸着してHTLを600Åの厚さに形成した。
【0061】
前記HTLの上部にマトリックスポリマーのポリビニルカルバゾール(PVK)100重量部、リン光ホスト物質4,4’−ビスカルバゾリルビフェニル(CBP)とBAlqとをそれぞれ90重量部と10重量部、及びリン光ドーパントのビス(1−フェニルイソキノリン)イリジウムアセチルアセトネート[pq2Ir(acac)]10重量部をトルエンに溶解させて400Åの厚さにスピンコーティングしてEMLを形成した。
【0062】
前記EMLの上部に電子輸送物質であるAlq3をスピンコーティングして約300Åの厚さのETLを形成した。
【0063】
前記ETLの上部にLiF 10Å(EIL)とAl 1000Å(カソード)とを順次に蒸着してLiF/Al電極を形成して有機発光素子を製造した。
【0064】
実施例2
発光層の形成時にCBPの含量が75重量部であり、BAlqの含量が25重量部であることを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して有機発光素子を製造した。
【0065】
実施例3
発光層の形成時にCBPの含量が50重量部であり、BAlqの含量が50重量部であることを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して有機発光素子を製造した。
【0066】
実施例4
発光層の形成時にCBPの含量が25重量部であり、BAlqの含量が75重量部であることを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して有機発光素子を製造した。
【0067】
実施例5
発光層の形成時にCBPの含量が10重量部であり、BAlqの含量が90重量部であることを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して有機発光素子を製造した。
【0068】
比較例1
アノードは、コーニング15Ω/cm(1200Å)ITOガラス基板を50mm×50mm×0.7mmサイズに切断して、イソプロピルアルコール及び純水の中で各5分間超音波洗浄した後、30分間UV、オゾン洗浄して使用した。
【0069】
前記基板の上部にTPDを真空蒸着してHTLを600Åの厚さに形成した。前記HTLの上部にマトリックスポリマーであるPVK 100重量部、CBP 100重量部、及びpq2Ir(acac)10重量部をトルエンに溶解させて400Åの厚さにスピンコーティングしてEMLを形成した。
【0070】
前記EMLの上部に電子輸送物質であるAlq3をスピンコーティングして約300Åの厚さのETLを形成した。
【0071】
前記ETLの上部にLiF 10Å(EIL)とAl 1000Å(カソード)とを順次に真空蒸着してLiF/Al電極を形成して、図1に示したような有機発光素子を製造した。
【0072】
比較例2
リン光ホスト物質としてCBP 100重量部の代わりに、BAlq 100重量部を使用して400Åの厚さのEMLを形成したことを除いては、比較例1と同じ方法によって実施して有機発光素子を製造した。
【0073】
前記実施例1ないし5及び比較例1及び比較例2によって製造された有機発光素子において、発光効率及び寿命特性を調べた。
【0074】
発光効率は、分光計を利用して測定し、寿命は、光ダイオードを利用して評価し、その結果を下記の表1に表した。
【0075】
比較例1及び比較例2の有機発光素子の発光効率は、それぞれ約8cd/A及び6cd/Aであり、実施例2の有機発光素子は、発光効率が10cd/Aであって、比較例1及び比較例2の場合に比べて効率が改善された。
【0076】
また、寿命特性は、最初発光輝度が50%線まで低下する時間で表すが、実施例2の有機発光素子は、500cd/mで300時間であり、比較例1及び比較例2の有機発光素子は、それぞれ500cd/mで100時間及び90時間で現れ、実施例は、比較例1及び比較例2の場合に比べて寿命特性が改善されることが確認できた。
【0077】
【表1】

【0078】
本発明は、実施例を参考として説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるということが分かるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、有機発光素子関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施例による有機発光素子の断面を示す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と第2電極との間に発光層を有する有機発光素子において、前記発光層は、マトリックスポリマー、二つ以上のリン光ホスト物質、及び一つ以上のリン光ドーパントを含む有機発光素子。
【請求項2】
前記マトリックスポリマーは、ポリフェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレン及びこれらの誘導体のうちから選択された一つ以上のポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記マトリックスポリマーの含量は、発光層リン光ホスト物質の総含量100重量部を基準として50ないし200重量部であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記リン光ホスト物質は、第1ホスト物質及び第2ホスト物質からなり、前記ホスト物質のHOMO準位が異なり、及び/またはLUMO準位が異なる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記二つのホスト物質の三重項エネルギーレベルは、2.3ないし3.5eVであることを特徴とする請求項4に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記リン光ホスト物質は、カルバゾール化合物であることを特徴とする請求項4に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記カルバゾール化合物は、1,3,5−トリカルバゾリルベンゼン、4,4’−ビスカルバゾリルビフェニル(CBP)、m−ビスカルバゾリルフェニル、4,4’−ビスカルバゾリル−2,2’−ジメチルビフェニル(dmCBP)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン、1,3,5−トリス(2−カルバゾリルフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−カルバゾリル−5−メトキシフェニル)ベンゼン、及びビス(4−カルバゾリルフェニル)シランからなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記リン光ホスト物質は、有機金属錯体、スピロフルオレン系化合物、オキサジアゾール系化合物、フェナントロリン系化合物、トリアジン系化合物及びトリアゾール系化合物のうちから選択される化合物であることを特徴とする請求項4に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記有機金属錯体は、ビス(8−ヒドロキシキノラト)ビフェノキシアルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノラト)フェノキシアルミニウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノラト)ビフェノキシアルミニウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノラト)ナフトキシアルミニウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノラト)フェノキシアルミニウム、ビス(2−(2−ヒドロキシフェニル)キノラト)亜鉛、またはビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニル−フェノラト)アルミニウムであることを特徴とする請求項8に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記スピロフルオレン系化合物は、2,5−ジスピロビフルオレン−1,3,4−オキサゾールであり、前記オキサジアゾール系化合物は、(4−ビフェニリル)−5−(4−TERT−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサゾールであり、前記フェナントロリン系化合物は、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−9,10−フェナントロリンであることを特徴とする請求項8に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記トリアジン系化合物は、2,4,6−トリス(ジアリールアミノ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(ジフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリカルバゾロ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(N−フェニル−1−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、または2,4,6−トリスビフェニル−1,3,5−トリアジンであり、前記トリアゾール系化合物は、3−フェニル−4−(1−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾールであることを特徴とする請求項8に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記第1ホスト物質と第2ホスト物質との混合重量比は、9:1ないし1:9であることを特徴とする請求項4に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記発光層でリン光ドーパントが、ビスチエニルピリジンアセチルアセトネートイリジウム、ビス(ベンゾチエニルピリジン)アセチルアセトネートイリジウム、ビス(2−フェニルベンゾチアゾール)アセチルアセトネートイリジウム、ビス(1−フェニルイソキノリン)イリジウムアセチルアセトネート、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム及びトリス(2−フェニルピリジン)イリジウムからなる群から選択される一つ以上のドーパントであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記リン光ドーパントの含量は、発光層リン光ホスト物質の総含量100重量部を基準として1ないし45重量部であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記発光層のマトリックスポリマーは、ポリビニルカルバゾールであり、前記リン光ホストは、CBP及びBalqであり、前記リン光ドーパントは、ビス(1−フェニルイソキノリン)イリジウムアセチルアセトネート[pq2Ir(acac)]であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記第1電極と発光層との間にホール注入層及びホール輸送層のうちから選択される一つ以上の層がさらに備えられることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項17】
前記発光層と第2電極との間にホールブロッキング層、電子輸送層及び電子注入層のうちから選択された一つ以上の層がさらに備えられることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項18】
第1電極と第2電極との間に発光層を備える有機発光素子の製造方法において、
前記発光層の製造方法は、
マトリックスポリマー、二つ以上のホスト物質、一つ以上のリン光ドーパント物質を混合して発光層形成用組成物を製造する第1ステップと、
前記組成物を第1電極の上部に塗布する第2ステップと、を含む有機発光素子の製造方法。
【請求項19】
前記第1ステップで使われた溶媒がベンゼン、トルエン、及びクロロベンゼンからなる群のうちから選択された一つ以上の溶媒であることを特徴とする請求項18に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項20】
前記第2ステップの組成物の塗布は、スピンコーティング法、インクジェットプリンティング法、ディップコーティング法、ドクターブレーディング法及び熱転写法からなる群のうちから選択された何れか一つで行われることを特徴とする請求項18に記載の有機発光素子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−245565(P2006−245565A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37077(P2006−37077)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】