説明

有機発光素子

【課題】優れた作動寿命を有し、高温での作動安定性を得ることができ、ドライブ電圧の増加が軽減された有機発光素子を提供する。
【解決手段】(i)アノードと、(ii)ポルフィリン及び正孔輸送材料の混合物を含有する正孔輸送層と、(iii)(1)正孔輸送材料、及び(2)電子輸送材料の混合物を含有し、任意に有機発光材料を含有する混合領域と、(iv)カソードと、を有してなる有機発光素子であって、(v)前記混合領域と前記カソードとの間に挿入される電子輸送領域、ならびに(vi)前記アノード及び前記カソードの一方の上にコーティングされる任意の熱保護要素のうち少なくとも一方を、任意にさらに有してなる有機発光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電子素子に関し、より詳細には有機発光素子(有機EL素子)に関する。より具体的に言うと、本発明は、輝度が初期値に対してある比率(例えば初期輝度の約50%)まで低下するのに、少なくとも約1,000時間かかるような、比較的長い作動寿命を有する実質的に安定な有機発光(EL)素子に関し、約70℃〜約100℃などの高温において実質的に安定な有機発光(EL)素子に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の有機発光(EL)素子は、有機発光材料(Organic electroluminescentmaterial)と、互いに反対の極性を有する電極とを積層することによって作製されてきており、これらの素子は、発光(ルミネセンス)物質として単結晶アントラセンなどの単結晶材料を含む。これらの種類の素子は、およそ100ボルト以上の励起電圧が必要であると考えられている(例えば、特許文献1参照)。また、S.ナカらの論文に記載されているように(非特許文献1参照)、1層の混合層からなる有機発光素子は、一般に多層有機発光素子よりも効率が低い。これらの素子は、NPB(N,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−ベンジジン)などの正孔輸送材料と、Alq3(トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム)などの発光性電子輸送材料との1層の混合層のみを有し、これらの素子は不安定であり効率が低いと考えられている。さらに、1層の混合層は漏れ電流が比較的多くなる場合があり、そのため効率が低くなることがある。有機EL研究の最近の発展によって、広範にわたる用途における有機EL素子の将来性について評価が行われており、現在使用可能な素子の作動安定性については、例えば以下のような予測が可能である。有機発光素子の効率は、高温で素子を作動させると低下する。一般に、素子の寿命は、作動温度が10℃上昇するごとに約1/2に減少する可能性がある。さらに、高温では有機発光素子の劣化に対する感受性が増加する。その結果、約100cd/m2の通常の表示輝度レベルにおけるこれらの有機発光素子の作動寿命は、例えば、約60℃〜約80℃の温度で約100時間以下に制限される。
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,530,325号明細書
【特許文献2】米国特許第5,853,905号明細書
【特許文献3】米国特許第6,130,001号明細書
【特許文献4】米国特許第4,885,211号明細書
【非特許文献1】S.ナカら(S.Naka et al.),”Organic Electroluminescent Devices Based On Molecularly Doped Polymers,” Appl. Phys. Lett. 61, pp.761-763, 1992
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、実施形態において、例えば優れた作動寿命を有する有機発光素子を提供することを目的とする。本発明は、実施形態において、高温での作動安定性を得ることができ、例えば約70℃〜約100℃の温度で、例えば約1,500カンデラ/平方メートル(cd/m2)の高輝度で、数百時間(例えば1,200時間)の作動寿命を得ることができる有機発光素子、即ち、約80℃〜約100℃の温度で通常の表示輝度約100cd/m2の場合に最長数千時間(例えば約10,000時間)の作動寿命を得ることができる有機発光素子を提供することを目的とする。また、本発明は、実施形態において、ドライブ電圧の増加が軽減され、例えば、約90℃の温度で約250時間作動させた後でもドライブ電圧の初期値からの増加が約5%以下となる有機発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、<1> (i)アノードと、(ii)ポルフィリン及び正孔輸送材料の混合物を含有する正孔輸送層と、(iii)(1)正孔輸送材料、及び(2)電子輸送材料の混合物を含有し、任意に有機発光材料を含有する混合領域と、(iv)カソードと、を有してなる有機発光素子であって、(v)前記混合領域と前記カソードとの間に挿入される電子輸送領域、ならびに(vi)前記アノード及び前記カソードの一方の上にコーティングされる任意の熱保護要素のうち少なくとも一方を、任意にさらに有してなることを特徴とする有機発光素子である。
【0006】
<2> 下記(A)及び(B)のうち、少なくとも一方が存在する前記<1>に記載の有機発光素子である。
(A)第3級芳香族アミン及びインドロカルバゾール類からなる群より選択される、前記正孔輸送材料(ii)及び(iii)のうち、少なくとも一方。
(B)金属オキシノイド類、スチルベン類、トリアジン類、及びキノリン類からなる群より選択される、前記電子輸送材料(iii)及び(v)のうち、少なくとも一方。
【0007】
<3> 前記混合領域(iii)が、20重量%〜80重量%の第3級芳香族アミンの正孔輸送成分と、80重量%〜20重量%の金属オキシノイドの電子輸送成分とを含有する前記<1>に記載の有機発光素子である。
【0008】
<4> 前記混合領域(iii)が、35重量%〜65重量%の前記正孔輸送成分と、65重量%〜35重量%の前記電子輸送成分とを含有する前記<1>に記載の有機発光素子である。
【0009】
<5> 前記混合領域(iii)が、0.01重量%〜10重量%の蛍光発光成分を含有する前記<1>に記載の有機発光素子である。
【0010】
<6> 前記混合領域(iii)が、3重量%〜30重量%の燐光発光成分を含有する前記<1>に記載の有機発光素子である。
【0011】
<7> 前記電子輸送領域が少なくとも2つの層を有し、(1)前記電子輸送領域における第1の層が前記混合領域と接触し、前記第1の層が金属オキシノイド類及びキノリン類からなる群より選択される成分を含有し、(2)前記電子輸送領域における第2の層が前記カソードと接触し、前記第2の層が金属オキシノイド類、フタロシアニン類、及びトリアジン類からなる群より選択される成分を含有する前記<1>に記載の有機発光素子である。
【0012】
<8> SiO、SiO2、又はそれらの混合物の層で構成される前記熱保護コーティングが存在する前記<1>に記載の有機発光素子である。
【0013】
<9> (i)アノードと、(ii)ポルフィリン及び正孔輸送材料の混合物を含有する正孔輸送層と、(iii)(1)正孔輸送材料、及び(2)電子輸送材料の混合物を含有し、かつ有機発光材料を含有する混合領域と、(iv)カソードと、を有してなる素子であって、(v)前記混合領域と前記カソードとの間に挿入される電子輸送領域、ならびに(vi)前記アノード及び前記カソードの一方の上にコーティングされる熱保護要素のうち少なくとも一方を、任意にさらに有してなることを特徴とする素子である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の有機発光素子(以下、「素子」という場合がある。)の態様としては、以下のものが挙げられる。
(i)アノードと、(ii)ポルフィリン及び正孔輸送材料の混合物を含有する正孔輸送層と、(iii)(1)正孔輸送材料、及び(2)電子輸送材料の混合物を含有し、任意に有機発光材料を含有する混合領域と、(iv)カソードと、を有してなる有機発光素子であって、(v)前記混合領域と前記カソードとの間に挿入される電子輸送領域、ならびに(vi)前記アノード及び前記カソードの一方の上にコーティングされる任意の熱保護要素のうち少なくとも一方を、任意にさらに有してなる有機発光素子である。
【0015】
下記(A)及び(B)のうち、少なくとも一方が存在する有機発光素子である。
(A)第3級芳香族アミン及びインドロカルバゾール類からなる群より選択される、前記正孔輸送材料(ii)及び(iii)のうち、少なくとも一方。
(B)金属オキシノイド類、スチルベン類、トリアジン類、及びキノリン類からなる群より選択される、前記電子輸送材料(iii)及び(v)のうち、少なくとも一方。
【0016】
下記(A)及び(B)のうち、少なくとも一方が存在する有機発光素子である。
(A)正孔輸送層中の正孔輸送材料又は成分と、前記混合領域を構成する正孔輸送成分とが、同一又は類似している。
(B)選択された電子輸送領域が存在しており、前記混合領域(iii)及び前記電子輸送領域(v)を構成する電子輸送成分が、互いに同一又は類似している。
【0017】
下記(A)及び(B)のうち、少なくとも一方が存在する有機発光素子である。
(A)前記正孔輸送層を構成する正孔輸送成分と、前記混合領域を構成する正孔輸送成分とが異なる成分である。
(B)電子輸送領域が存在しており、前記電子輸送領域が含有する電子輸送成分と、混合領域を構成する電子輸送成分とが異なる成分である。
【0018】
前記ポルフィリンがフタロシアニンである素子、前記ポルフィリンが銅フタロシアニン(CuPc)である素子である。
【0019】
前記正孔輸送層(ii)が、約25重量%〜約99重量%のCuPcと、約75重量%〜約1重量%の正孔輸送成分とを含有し、これらの全量が約100%となる素子である。前記正孔輸送層(ii)が、約50重量%〜約99重量%のCuPcと、約50重量%〜約1重量%の正孔輸送成分とを含有する素子である。
【0020】
前記正孔輸送層(ii)における正孔輸送成分が、N,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、N,N'−ビス(p−ビフェニル)−N,N'−ジフェニルベンジジン(ビフェニルTPD)、5,11−ジ−ナフチル−5,11−ジヒドロインドロ[3,2−b]カルバゾール、及び2,8−ジメチル−5,11−ジ−ナフチル−5,11−ジヒドロインドロ[3,2−b]カルバゾールからなる群より選択される素子である。
【0021】
前記混合領域(iii)が、約20重量%〜約80重量%の第3級芳香族アミンの正孔輸送成分と、約80重量%〜約20重量%の金属オキシノイドの電子輸送成分とを含有する素子である。
【0022】
前記混合領域(iii)が、約35重量%〜約65重量%の正孔輸送成分と、約65重量%〜約35重量%の電子輸送成分とを含有する素子である。
【0023】
(iii)における正孔輸送成分が、N,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−ベンジジン(NPB)及びN,N'−ビス(p−ビフェニル)−N,N'−ジフェニルベンジジン(ビフェニルTPD)からなる群より選択される第3級芳香族アミンであり、電子輸送成分が、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)及びビス(8−ヒドロキシキノラト)−(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(Balq)からなる群より選択される金属オキシノイドである素子である。
【0024】
前記混合領域が、約0.01重量%〜約10重量%の蛍光発光成分を含有する素子である。前記蛍光成分が、クマリン、ジシアノメチレン、ピラン、ポリメチン、オキサベンズアントラン、キサンテン、ピリリウム、カルボスチル、ペリレン、アクリドン、キナクリドン、ルブレン、アントラセン、コロネン、フェナントレセン、ピレン、ブタジエン、スチルベン、ランタニド金属キレート錯体、希土類金属キレート錯体、及び4−(ジシアノメチレン)−2−I−プロピル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピランからなる群より選択される素子である。前記蛍光成分が、ルブレン、N,N'−ジメチルキナクリドン(DMQ)、10−2−(ベンゾチアゾリル)−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−(1)ベンゾピロピラノ(6,7,−8−ij)キノリジン−11−オン(C545T)からなる群より選択される素子である。
【0025】
前記混合領域が、約3重量%〜約30重量%の燐光発光成分を含有する素子である。前記燐光発光成分が2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ホルピン白金(II)(2,3,7,8,12,13,17,18−octaethyl−21H,23H−phorpine platinum(II))(PtOEP)及びfacトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)からなる群より選択される素子である。
【0026】
前記電子輸送領域が、少なくとも2つの層を有する素子である。
(1)電子輸送領域における第1の層が混合領域と接触し、この第1の層が金属オキシノイド類及びキノリン類からなる群より選択される成分を含有し、(2)電子輸送領域における第2の層がカソードと接触し、この第2の層が金属オキシノイド類、フタロシアニン類、及びトリアジン類からなる群より選択される成分を含有する素子である。前記第1の層が、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)又はビス(8−ヒドロキシキノラト)−(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(Balq)である金属オキシノイドを含有し、前記第2の層が、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)又はビス(8−ヒドロキシキノラト)−(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(Balq)である金属オキシノイド、銅フタロシアニン(CuPc)であるフタロシアニン、あるいは4,4'−ビス−[2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジニル)]−1,1'−ビフェニル、4,4'−ビス−[2−(4,6−ジ−p−トリル−1,3,5−トリアジニル)]−1,1'−ビフェニル、又は4,4'−ビス−[2−(4,6−ジ−m−トリル−1,3,5−トリアジニル)]−1,1'−ビフェニルであるトリアジン類を含有する素子である。
【0027】
下記(A)及び(B)のうち、少なくとも一方が存在する有機発光素子である。
(A)酸化インジウムスズの層を有してなるアノード。
(B)(i)Mg及びAgで構成される層、(ii)Alで構成される層、(iii)酸化インジウムスズで構成される層、ならびに(iv)(1)有機化合物、(2)Mg、及び(3)Agで構成される層からなる群より選択される層を有してなるカソード。
【0028】
前記カソードが、アルカリ金属又はその化合物をさらに含有する素子である。前記アルカリ金属が、Li、Na、K、及びCsからなる群より選択される素子である。前記熱保護コーティングが、SiO、SiO2、又はそれらの混合物の層で構成される素子である。前記混合領域の厚さが、約5nm〜約500nmであり、前記正孔輸送層の厚さが約5nm〜約250nmであり、前記電子輸送領域の厚さが約5nm〜約100nmである素子である。
【0029】
(i)約50重量%〜約99重量%の銅フタロシアニン(CuPc)と、約50重量%〜約1重量%の正孔輸送成分とで構成され、かつアノード上にコーティングされてなる正孔輸送層と、(ii)前記正孔輸送領域上に存在する混合領域であって、約35重量%〜約65重量%のN,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−ベンジジン(NPB)又はN,N'−ビス(p−ビフェニル)−N,N'−ジフェニルベンジジン(ビフェニルTPD)と、約65重量%〜約35重量%のトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム、又はビス(8−ヒドロキシキノラト)−(4−フェニルフェノラト)アルミニウムとで構成され、すべての重量%が混合領域を構成する成分の全重量を基準としており、厚さが約20nm〜約200nmである混合領域と、(iii)前記混合領域上に存在する電子輸送領域であって、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)又はビス(8−ヒドロキシキノラト)−(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(Balq)で構成され、厚さが約5nm〜約50nmである電子輸送領域と、(iv)電子輸送領域上に存在するカソードと、を有してなる素子である。
【0030】
前記混合領域が、(i)ルブレン、N,N'−ジメチルキナクリドン(DMQ)及び10−2−(ベンゾチアゾリル)−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−(1)ベンゾピロピラノ(6,7,−8−ij)キノリジン−11−オン(C545T)からなる群より選択される約0.2重量%〜約2重量%のルミネセンス成分(発光成分)、(ii)約0.2重量%〜約5重量%の(2−(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ(ij)キノリジン−9−イル)エテニル)−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)、ならびに(iii)約5重量%〜約15重量%の2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ホルピン白金(II)(PtOEP)のうち、いずれか1つをさらに含有し、上記すべての重量%が、混合領域を構成する成分の全重量を基準にしている素子である。
【0031】
(i)基板上に存在し、約30〜約300nmの厚さを有する酸化インジウムスズからなるアノードであって、このアノードと基板とは約400nm〜約750nmの波長の放射線の少なくとも約70%を透過することができるアノードと、(ii)前記アノード上に存在し、前記アノードと接触する正孔輸送層であって、約50重量%〜約99重量%の銅フタロシアニン(CuPc)と、約50重量%〜約1重量%の正孔輸送成分とで構成される正孔輸送層と、(iii)前記正孔輸送領域上に存在し、約35重量%〜約65重量%のN,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−ベンジジン(NPB)又はN,N'−ビス(p−ビフェニル)−N,N'−ジフェニルベンジジン(ビフェニルTPD)と、約65重量%〜約35重量%のトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム、又はビス(8−ヒドロキシキノラト)−(4−フェニルフェノラト)アルミニウムとで構成される混合領域であって、すべての重量%は、混合領域を構成する成分の全重量を基準にしており、厚さが20nm〜約200nmである混合領域と、(iv)前記混合領域上に存在し、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)又はビス(8−ヒドロキシキノラト)−(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(Balq)で構成される電子輸送領域と、(v)前記電子輸送領域上に存在するカソードであって、(1)Mg:Ag合金又はAlで構成され、厚さが約50nm〜約500nmの層、及び(2)約40体積%〜約55体積%のMgと、約2体積%〜約10体積%のAgと、約55体積%〜約40体積%のAlq3とで構成され、厚さが約100nm〜約600nmである第1の層を、金属又は合金を含んだ厚さが約50nm〜約500nmの第2の層でコーティングしたもの、のうちいずれか一方で構成されるカソードと、(vi)SiO、SiO2、又はそれらの混合物で構成され、厚さが約100nm〜約1,000nmである熱保護層と、を有してなる素子である。
【0032】
(i)アノードが厚さ約30〜約300nmの酸化インジウムスズであり、前記アノードが基板上にコーティングされており、(ii)正孔輸送層が前記アノード上に存在し、この層が約50重量%〜約99重量%の銅フタロシアニン(CuPc)と、約50重量%〜約1重量%の正孔輸送成分とで構成され、この層の厚さが約5nm〜約100nmであり、(iii)混合領域が、前記記正孔輸送領域上に存在する混合領域であって、約35重量%〜約65重量%のN,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−ベンジジン(NPB)又はN,N'−ビス(p−ビフェニル)−N,N'−ジフェニルベンジジン(ビフェニルTPD)と、約65重量%〜約35重量%のトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム、又はビス(8−ヒドロキシキノラト)−(4−フェニルフェノラト)アルミニウムとで構成され、その厚さが約20nm〜約200nmであり、(iv)電子輸送領域が、混合領域上に存在する電子輸送領域であって、(1)厚さが約5nm〜約25nmであり前記混合領域と接触する第1の層と、(2)厚さが約5nm〜約25nmであり前記カソードと接触する第2の層とを有し、該第2の層が、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)、ビス(8−ヒドロキシキノラト)−(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(Balq)、又は銅フタロシアニン(CuPc)で構成されており、(v)カソードが、前記電子輸送領域上に存在するカソードであって、(1)厚さ約50nm〜約500nmのMg:Ag合金又はAlで構成される層、ならびに(2)約40体積%〜約55体積%のMgと、約2体積%〜約10体積%のAgと、約55体積%〜約40体積%のAlq3とで構成され、厚さが約100nm〜約600nmであり、厚さが約50nm〜約500nmであって金属又は合金を含有する第2の層によりコーティングされている第1の層、のうちいずれか一方で構成されており、(vi)前記熱保護層が、カソード上に存在する熱保護層であって、厚さ約100nm〜約1,000nmである、素子である。
【0033】
前記混合領域が、正孔電子再結合に応答して発光可能である素子である。それぞれの領域が、約1〜約7つの層を含んでなる素子である。それぞれの領域が、約2〜約4つの層を含んでなる素子である。
【0034】
(iii)における正孔輸送成分又は電子輸送成分が、ルミネセンス材料(発光材料)としてさらに機能する素子である。(iii)が、ルミネセンス材料(発光材料)をさらに含んでなる素子である。
【0035】
(i)アノードと、(ii)ポルフィリン及び正孔輸送材料の混合物を含有する1層の正孔輸送層と、(iii)1層でも、2〜約7層、通常は2〜約4層の複数層であってもよい混合領域であって、各層の厚さが例えば約5nm〜約5,000nmであり、(1)正孔輸送材料、及び(2)電子輸送材料の混合物を含有し、有機発光材料をさらに含有し、正孔電子再結合に応答して発光する混合領域と、(iv)カソードと、を有してなる発光(エレクトロルミネセンス;EL)素子であって、有機発光素子は、(i)通常は2〜約4層であり、前記混合領域と前記カソードとの間に挿入される電子輸送領域、ならびに(ii)前記アノードと前記カソードの一方、あるいは双方の上にコーティングされる熱保護要素又は熱保護層と、をさらに有するができる。
【0036】
前記正孔輸送層及び前記電子輸送領域の機能によって、よりバランスのとれた電荷注入過程が実現され、対極へのキャリアの漏れを減少させると考えられており、そのため、例えば、文献に開示されている有機発光素子などに参照される、他の有機発光素子よりも高い効率を示すことができる(例えば、特許文献2及び3を参照)。
【0037】
本発明の特定の実施形態による有機発光素子の一例が図1に示されている。有機発光素子10は、正孔注入アノードとして機能する第1の電極12と、第1の電極12上に積層又はコーティングされ、ポルフィリン及び正孔輸送材料の混合物を含有する1層の正孔輸送層13と、正孔輸送層13上に積層又はコーティングされ(1)正孔輸送材料及び(2)電子輸送材料の混合物を含み、蛍光又は燐光材料などの有機発光(ルミネセンス)材料を含むことができる混合領域14と、混合領域14上に積層又はコーティングされる電子輸送領域15と、電子輸送領域15上に積層又はコーティングされ電子注入電極として機能する第2の電極16とを有する。
【0038】
使用される材料の電荷輸送特性に依存して、本発明の実施形態では、混合領域とカソードとの間などに存在する電子輸送領域を省くことが望ましい場合もあり、この場合では混合領域はカソードと接触する。このような有機発光素子の代表的実施形態が図2に示されており、素子20は、正孔注入アノードとして機能する第1の電極22、第1の電極22上に積層されポルフィリンと正孔輸送材料の混合物を含む1層の正孔輸送層23と、正孔輸送層23上に積層され(1)ルミネセンス材料(発光材料)としても機能する場合もある正孔輸送材料及び(2)電子輸送材料の混合物を含み蛍光又は燐光材料などの有機発光(ルミネセンス)材料を含有する混合領域24と、混合領域24上に積層され電子注入カソードとして機能する第2の電極26とを含む。実施形態では、正孔輸送層13、23は、約50重量%〜約99重量%のポルフィリンと、約50重量%〜約1重量%の正孔輸送材料とで構成され、有機発光素子10及び20の性能は、正孔輸送層13及び23中のポルフィリンと正孔輸送材料の混合比に依存する場合がある。また実施形態では、第1の電極12、22上、又は第2の電極16、26上に熱保護要素を積層することができ、したがって熱保護要素はカソード、アノード、又はその両方の上に積層することができる。
【0039】
正孔輸送層13、23を構成する正孔輸送材料、ならびに混合領域14、24を構成する正孔輸送材料は、同じ材料でも異なる材料でもよく、混合領域14、24と正孔輸送層13、23で異なる正孔輸送材料を使用することで、有機発光素子10、20の安定性の向上などの多数の所望の性質が得られる場合がある。
【0040】
同様に、混合領域14を構成する電子輸送材料と、電子輸送領域15を構成する電子輸送材料も同じ材料でも異なる材料でもよく、混合領域14と電子輸送領域15で異なる電子輸送材料を使用することによって、有機発光素子10の効率増加等の、所望の性質が得られる場合がある。さらに、多層電子輸送領域の異なる層に使用される電子輸送材料も、異なる種類でも同種のものでもよい。
【0041】
電極のうちの一方は、(i)Mgなどの金属の第1成分と、(ii)AlQ3などの有機材料の第2成分と、(iii)Agなどの金属、有機材料、及び無機材料からなる群より選択される少なくとも1種類の第3成分と、を含む金属−有機混合領域を有する。したがって、例えば、有機発光素子のカソード16は、(i)Mgなどの金属の第1成分と、(ii)AlQ3などの有機材料の第2成分と、(iii)Agなどの金属、有機材料、及び無機材料からなる群より選択される少なくとも1種類の第3成分と、を含む金属−有機混合領域を有することができる。
【0042】
実施形態における有機発光素子は、交流(AC)及び/又は直流(DC)のDCドライブ条件で作動させることができる。ACドライブ条件は、作動寿命を延長させる場合があり、特に高温における素子作動条件の場合に作動寿命を延長させる。より具体的な作動電圧としては、例えば約3〜20ボルトが挙げられ、さらに具体的には約5〜約15ボルトであり、ドライブ電流としては、例えば約1〜約1,000mA/cm2の密度が挙げられ、より具体的には約10mA/cm2〜約200mA/cm2である。
【0043】
アノード12、22は、酸化インジウムスズ(ITO)、ケイ素、酸化スズ、金、又は白金などの好適な正電荷注入電極を含むことができる。その他のアノードに好適な材料としては、例えば仕事関数が約4eV以上、より特定的には約4eV〜約6eVである導電性炭素、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどのπ−共役ポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
アノード12、22は任意の好適な形態であってよい。透明又は実質的に透明なガラス板又はプラスチックフィルムなどの光透過性基板上に導電性薄層をコーティングすることができ、したがってアノードは、酸化スズ又は酸化インジウムスズ(ITO)をガラス基板上にコーティングして作製される光透過性アノードを含んでもよい。また、厚さが例えば約200Å未満、特に約75Å〜約150Åである非常に薄い光透過性金属アノードを使用してもよく、これらの薄いアノードは金、パラジウムなどの金属を含んでもよい。さらに、導電性炭素又はポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの共役ポリマーの厚さが、例えば50Å〜約175Åの透明又は半透明薄層をアノードとして使用してもよい。アノード12、22及びカソード16、26の多数の例が特許文献4に開示されており、この記載内容全体を本明細書に援用する。アノード12、22の厚さは、約1nm〜約5,000nmにすることができ、特に約30nm〜約300nmにすることができる。
【0045】
正孔輸送層13、23は、ポルフィリンと正孔輸送材料とを種々の比率で含むことができる。通常、正孔輸送層は約25重量%〜約99重量%のポルフィリンと、約75重量%〜約1重量%の正孔輸送材料とで構成される。より特定的には、この層は約50重量%〜約99重量%のポルフィリンと、約50重量%〜約1重量%の正孔輸送材料とで構成される。実施形態における有機発光素子10、20の性能は、正孔輸送層13、23中のポルフィリンと正孔輸送材料の比率に依存する場合がある。
【0046】
正孔輸送層13、23用に選択することができる好適なポルフィリンとしては、米国特許第4,356,429号明細書に開示されるポルフィリン、1,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン銅(II)、銅フタロシアニンが挙げられる。
【0047】
アノード及び混合領域14、24などと接触する正孔輸送層13、23に好適な正孔輸送材料としては、ポリアニリン及びその酸ドープ形態、ポリピロール、ポリ(フェニレンビニレン)、又はそれらの混合物などの導電性材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。正孔輸送材料の特定の具体例としては、米国特許第4,539,507号、第4,720,432号、及び第5,061,569号に例示されるような芳香族第3級アミンが挙げられる。芳香族第3級アミンの例としては、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−1,1'−ビフェニル−4,4'−ジアミン、N,N,N',N'−テトラアリールベンジジンなどの芳香族アミン(N,N,N',N'−テトラアリールベンジジンの具体例は、N,N'−ジ−1−ナフチル−N,N'−ジフェニル−1,1'−ビフェニル−4,4'−ジアミンである)、4,4'−ビス(9−カルバゾリル)−1,1'−ビフェニル化合物などの4,4'−ビス(9−カルバゾリル)−1,1'−ビフェニル化合物など、引用される米国特許第5,942,340号及び第5,952,115号に記載の成分のインドロカルバゾール類、例えば、5,11−ジ−ナフチル−5,11−ジヒドロインドロ[3,2−b]カルバゾール及び2,8−ジメチル−5,11−ジ−ナフチル−5,11−ジヒドロインドロ[3,2−b]カルバゾール、N,N,N',N'−テトラアリールベンジジンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。正孔輸送層13、23の厚さは約1nm〜約500nm、あるいは約5nm〜約150nmにすることができ、より特定的には約10〜約50nmにすることができる。混合領域14、24は電子輸送材料をさらに含むことができる。混合領域の形成に使用される正孔輸送材料層と電子輸送材料層の少なくとも一方は、実施形態ではルミネセンス材料(発光材料)として機能するように選択することができる。さらに、混合領域は、正孔輸送領域及び電子輸送領域以外にルミネセンス材料(発光材料)をさらに含んでもよい。混合領域14、24、及び混合領域14と接触する電子輸送領域15用に選択することができる電子輸送材料は同じ材料でも異なる材料でもよい。さらに、多層電子輸送領域の異なる層に使用される電子輸送材料も異なっていても同じであってもよい。
【0048】
混合領域14、24及び電子輸送領域15に使用される電子輸送材料の具体例としては、米国特許第4,539,507号、第5,151,629号、第5,150,006号、第5,141,671号、及び第5,846,666号に開示される金属オキシノイド、トリス(8−ヒドロキシキノリネート)アルミニウム(Alq3)、ビス(8−ヒドロキシキノラト)−(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(Balq)、トリス(8−ヒドロキシキノリネート)ガリウム、ビス(8−ヒドロキシキノリネート)マグネシウム、米国特許第5,516,577号に開示される4,4'−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニルなどのスチルベン誘導体、米国特許第5,846,666号に例示されるビス(8−キノリンチオラト)亜鉛、ビス(8−キノリンチオラト)カドミウムなどの金属チオキシノイド化合物、ビス(8−キノリンチオラト)亜鉛、ビス(8−キノリンチオラト)カドミウム、トリス(8−キノリンチオラト)ガリウム、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラト]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラト]ベリリウム、ビス[5−(4−クロロフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラト]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−p−ピリジル−1,3,4−オキサジアゾラト]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−p−ピリジル−1,3,4−オキサジアゾラト]ベリリウムが挙げられ、混合領域14、24及び電子輸送領域15に使用されるものとして、例えば、1,4−ビス(4−フェニルキノリン−2−イル)ベンゼン、4,4'−ビス(4−フェニルキノリン−2−イル)−1,1'−ビフェニル(TA)などのキノリン類、例えば、4,4'−ビス−[2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジニル)]−1,1'−ビフェニル及び2,4,6−トリス(4−ビフェニルイル)−1,3,5−トリアジンなどの米国特許第6,057,048号及び米国特許第6,229,012号に記載されるトリアジン類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
通常、混合領域14、24は約20重量%〜約80重量%の正孔輸送材料と、約80重量%〜約20重量%の電子輸送材料を含む。より特定的には、混合領域14、24は約35重量%〜約65重量%の正孔輸送材料と、約65重量%〜約35重量%の電子輸送材料を含む。さらに混合領域がルミネセンス材料(発光材料)を含む実施形態では、混合領域14、24は、例えば、約0.01重量%〜約10重量%の蛍光発光材料、又は約0.01重量%〜約25重量%の燐光発光材料を含むことができ、ここですべての重量%は、混合領域を構成する材料の全重量を基準にしている。
【0050】
混合領域に混入することができる材料及び/又は素子中に存在することができる成分であるルミネセンス材料(発光材料)の代表例は、光エミッターとして機能することができ、そのようなものとしては例えば、クマリン、ジシアノメチレンピラン、ポリメチン、オキサベンズアントラン、キサンテン、ピリリウム、カルボスチル、ペリレンなどの米国特許第4,769,292号に開示される蛍光色素、公知のキナクリドンから選択される色素で、例えばN,N'−ジメチルキナクリドン、N,N'−ジメチル−2−メチルキナクリドン、N,N'−ジメチル−2,9−ジメチルキナクリドンなどのキナクリドン色素、米国特許第5,227,252号、第5,276,381号、及び第5,593,788号に記載されるようなキナクリドン、2−メチルキナクリドンなどのキナクリドン色素、米国特許第3,172,862号に例示されるペリレン、ルブレン、アントラセン、コロネン、フェナントレセン、ピレンなど、米国特許第4,356,429号及び5,516,577号に例示される1,4−ジフェニルブタジエン及びテトラフェニルブタジエンなどのブタジエン、ならびにスチルベン類など、米国特許第5,601,903号に記載される蛍光材料、米国特許第5,935,720号に例示される4−(ジシアノメチレン)−2−I−プロピル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン及び(2−(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ(ij)キノリジン−9−イル)エテニル)−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)などの蛍光成分、公知のクマリン類、10−2−(ベンゾチアゾリル)−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−(1)ベンゾピロピラノ(6,7,−8−ij)キノリジン−11−オン(C545T)及び米国特許第6,020,078号に開示される物質、トリス(アセチルアセトナト)(フェナントロリン)テルビウムなどのランタニド金属キレート錯体、バルド(Baldo)ら、「Highly efficientorganic phosphorescent emission from organic electroluminescent devices(有機エレクトロルミネセンス素子による効率の高い有機燐光発光)」、Letters to Nature,395巻、pp 151−154(1998)に開示されるものなどのスピン軌道結合が起こりうる重金属原子を含有する有機金属化合物などの燐光材料、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ホルピン白金(II)(PtOEP)、及び米国特許第6,048,630号に開示されるその他の物質、ならびにfacトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)が挙げられる。混合領域14、24の厚さは約10nm〜約2,000nm、又は約20nm〜約200nmにすることができ、混合領域14、24を薄くすると、有機発光素子の作動電圧を低下させることができるので望ましい場合もあるが、有機発光素子の輝度(及びEL効率)が低下するので望ましくないこともある。
【0051】
混合領域14、24は、正孔輸送材料、電子輸送材料、及び任意のルミネセンス材料(発光材料)の選択された混合物を形成することができる任意の好適な方法によって作製することができる。例えば、混合領域14、24は、正孔輸送材料、電子輸送材料、及びルミネセンス材料(発光材料)を同時蒸着することによって作製することができる。
【0052】
電子輸送領域15は、例えば約1nm〜約100nm、又は約5nm〜約50nmの厚さの電子輸送材料を有することができる。多層電子輸送領域15が選択される場合の実施形態では、個々の層の厚さは例えば少なくとも約1nm、又は約1〜約10nmである。
【0053】
電子輸送領域15又は混合領域24の上に形成されるカソード16、26は、仕事関数が約4eV〜約6eVなどである金属などの高仕事関数成分、又は仕事関数が約2eV〜約4eVなどである金属などの低仕事関数成分などを含む金属などの好適な電子注入材料を含むことができる。カソード16、26は、約4eV未満の低仕事関数金属と、少なくとも1種類のその他の金属との組合せを含むことができる。第2のその他の金属に対する低仕事関数金属の有効な比率は、約0.1重量%未満〜約99.9重量%である。低仕事関数金属の具体例としては、リチウム又はナトリウムなどのアルカリ金属、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、又はバリウムなどの2A族すなわちアルカリ土類金属、ならびにスカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、ユーロピウム、テルビウム、又はアクチニウムなどの希土類金属及びアクチニド金属を含むIII族金属が挙げられるが、これらに限定されるものではない。リチウム、マグネシウム、及びカルシウムがより好ましい低仕事関数金属である。米国特許第4,885,211号及び米国特許第4,720,432号に記載されるMg−Ag合金カソードも例として挙げられる。また、カソードは、(i)Mgなどの金属の第1成分と、(ii)AlQ3などの有機材料の第2成分と、(iii)Agなどの金属、有機材料、及び無機材料からなる群より選択される少なくとも1種類の第3成分と、を含有する金属−有機混合領域を含むことができる。具体的なカソードが米国特許第5,429,884号に記載されており、このカソードは、アルミニウムやインジウムなどのその他の高仕事関数金属とのリチウム合金から作製することができる。カソード16、26は、米国特許第5,457,565号、第5,608,287号、及び第5,739,635号に記載されるような絶縁性材料である酸化物材料など、又はアルカリ金属化合物で構成され、電子輸送領域15又は混合領域24と接触する電子注入層を含むこともできる。カソード16、26の厚さは、例えば約10nm〜約1,000nmにすることができる。
【0054】
熱保護要素は任意にカソード16、26及び/又はアノード12、22上に形成することができる。通常、熱保護要素はSiO、SiO2及び/又はそれらの混合物で構成される層であり、その厚さは約300nm〜約5,000nmの範囲である。
【実施例】
【0055】
これらの実施例では、「領域」は他に述べられていない限り、1つの層を意味する。
(実施例I)
−90℃における作動安定性を示すための実施例−図1の素子10のような構造を有する有機発光素子を作製し、評価を行った。この素子では、銅フタロシアニン(CuPc)、N,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、及びトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)を、それぞれポルフィリン、正孔輸送材料、及び電子輸送材料として使用し、この有機発光素子10は正孔輸送層13、混合領域14、及び電子輸送領域15を含むものである。正孔輸送層13は約75重量%のCuPc及び約25重量%のNPBで構成された。混合領域14は約50重量%のNPB及び約50重量%のAlq3で構成された。正孔輸送層13の厚さは約25nmであり、混合領域14の厚さは約80nmであり、電子輸送領域15の厚さは約20nmであった。厚さ約200nmの酸化インジウムスズ(ITO)で構成されガラス基板上にあらかじめコーティングされたアノード12と、厚さ約120nmのMg:Ag(重量比10:1)合金で構成されるカソード16との間に、正孔輸送層13、混合層14、及び電子輸送領域15を形成した。一酸化ケイ素(SiO)で構成され、厚さが約200nmの熱保護要素をカソード16上にコーティングした。
【0056】
有機発光素子は、約8×10-4Pa(約6×10-6torr)の圧力で真空蒸着法を使用して製造した。正孔輸送層13は、所望の混合比を得るために約3A/s及び1A/sに個々の供給源の蒸発速度を制御しながら別々の供給源から純(全体的に純度約100%)CuPc及び純(全体的に純度約100%)NPBを同時蒸着することによって作製した。同様に、所望の混合比の混合領域14を得るため約3A/sにそれぞれの蒸発速度を制御しながら別々の供給源から純NPB及び純Alq3を同時蒸着することによって混合領域14を作製した。
【0057】
有機正孔輸送層13、混合領域14、及び電子輸送領域15を形成した後に、減圧を中断せずに電子輸送領域15上に金属カソード16を蒸着した。平均一定電流密度31.25mA/cm2におけるACドライブ条件で窒素ガス中90℃の温度で作動させた場合の上記有機発光素子の作動寿命について試験した。この電流密度で、有機発光素子によって輝度約600cd/m2(カンデラ/平方メートル)の緑色発光が得られた。
【0058】
作動寿命試験より、初期輝度約600cd/m2からの素子の半減期(初期輝度の半分に素子の輝度が低下するまでに経過する時間)は、90℃で連続的に素子を作動させた場合に約500時間であった。標準的条件の通常の初期表示輝度100cd/m2よりも約6倍明るい初期輝度約600cd/m2で素子の半減期が測定されるため、測定値の半減期500時間は高応力条件下90℃での加速された半減期を表しており、これは90℃における通常の初期表示輝度100cd/m2の場合で半減期約3,000時間(6×500時間)に対応している。
【0059】
(実施例II)
−90℃における作動安定性を示す実施例−図1の素子10のような構造を有する有機発光素子を作製し、評価を行った。この素子では、銅フタロシアニン(CuPc)、N,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、及びトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)を、それぞれポルフィリン、正孔輸送材料、及び電子輸送材料として使用し、この有機発光素子10は、正孔輸送層13、混合領域14、及び電子輸送領域15を含むものであった。正孔輸送層13は約75重量%のCuPc及び約25重量%のNPBで構成された。混合領域14は約49.8重量%のNPB、約49.8重量%のAlq3、及びルミネセンス材料(発光材料)としての約0.4重量%のルブレン蛍光ドーパントで構成された。正孔輸送層13の厚さは約25nmであり、混合領域14の厚さは約80nmであり、電子輸送領域15の厚さは約20nmであった。厚さ約200nmの酸化インジウムスズ(ITO)で構成されガラス基板上にあらかじめコーティングされたアノード12と、厚さ約120nmのMg:Ag(重量比10:1)合金で構成されるカソード16との間に、正孔輸送層13、混合層14、及び電子輸送領域15を形成した。一酸化ケイ素(SiO)で構成され厚さが約200nmの熱保護要素をカソード16上にコーティングした。
【0060】
有機発光素子は、約8×10-4Pa(約6×10-6torr)の圧力で真空蒸着法を使用して製造した。正孔輸送層13は、所望の混合比を得るために約3A/s及び1A/sに個々の供給源の蒸発速度を制御しながら別々の供給源から純CuPc及び純NPBを同時蒸着することによって作製した。同様に、所望の混合比の混合領域14を得るため約0.1A/s〜約10A/sにそれぞれの蒸発速度を制御しながら別々の供給源から純NPB、純Alq3、及び純ルブレンを同時蒸着することによって混合領域14を作製した。
【0061】
有機正孔輸送層13、混合領域14、及び電子輸送領域15を形成した後に、減圧を中断せずに電子輸送領域15上に金属カソード16を蒸着した。平均一定電流密度31.25mA/cm2におけるACドライブ条件で窒素ガス中90℃の温度で作動させた場合の上記有機発光素子の作動寿命について試験した。この電流密度で、有機発光素子によって輝度約1,900cd/m2(カンデラ/平方メートル)の黄色発光が得られた。
【0062】
作動寿命試験より、初期輝度約1,900cd/m2からの素子の半減期(初期輝度の半分に素子の輝度が低下するまでに経過する時間)は、90℃で連続的に素子を作動させた場合に約500時間であった。標準的条件の通常の初期表示輝度100cd/m2よりも約19倍明るい初期輝度約1900cd/m2で素子の半減期が測定されるため、測定値の半減期500時間は高応力条件下90℃での加速された半減期を表しており、これは90℃における通常の初期表示輝度100cd/m2の場合で半減期約9,500時間(19×500時間)に対応している。
【0063】
実施例I及びIIは、例えば、約80℃〜約100℃の温度などの高温作動条件において初期輝度約100cd/m2で数千時間の素子半減期が選択される用途に本発明の実施形態による有機発光素子を使用可能であることを示している。さらに、本発明の有機発光素子は、混合領域14、24中に、異なる種類のルミネセンス材料(発光材料)を使用することによって、赤、黄、緑、又は青などの異なる色を発光することができる。
【0064】
対照的に、ヴァン・スライク(Van Slyke)らの記載による、ポルフィリンの独立した層の正孔輸送領域と、独立した正孔輸送材料とを含むEL素子の半減期が知られており、高温において初期輝度100cd/m2で数百時間以下に制限されると考えられており、これに関しては、例えば、J.R.シーツ(Sheats)らの「Organic ElectroluminescentDevices(有機エレクトロルミネセンス素子)」,Science 273,pp.884−888,1996のEL素子、及びS.トキト(Tokito)ら「High−Temperature Operation of an Electroluminescent Device Fabricated Using a Novel Triphenlamine Derivative(新規トリフェニルアミンを使用して製造したエレクトロルミネセンス素子の高温での動作)」,Appl.Phys.Lett.69,878(1996)のEL素子を参照することができる。
【0065】
(実施例III)
図1の素子10のような構造を有する第1の有機発光素子(素子III−A)を作製し、評価した。この素子では、銅フタロシアニン(CuPc)、N,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、及びトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)をそれぞれポルフィリン、正孔輸送材料、及び電子輸送材料として使用し、この有機発光素子10は正孔輸送層13、混合領域14(層全体)、及び電子輸送領域15を含むものであった。正孔輸送層13は約75重量%のCuPc及び約25重量%のNPBで構成された。混合領域14は約49.8重量%のNPB、約49.8重量%のAlq3、及びルミネセンス材料(発光材料)としての約0.4重量%のルブレン蛍光ドーパントで構成された。正孔輸送層13の厚さは約25nmであり、混合領域14の厚さは約80nmであり、電子輸送領域15の厚さは約20nmであった。厚さ約200nmの酸化インジウムスズ(ITO)で構成されガラス基板上にあらかじめコーティングされたアノード12と、厚さ約120nmのMg:Ag(重量比10:1)合金で構成されるカソード16との間に、正孔輸送層13、混合層14、及び電子輸送領域15を形成した。一酸化ケイ素(SiO)で構成され厚さが約200nmの熱保護要素をカソード16上にコーティングした。
【0066】
有機発光素子は、約8×10-4Pa(約6×10-6torr)の圧力で真空蒸着法を使用して製造した。所望の混合比の正孔輸送層13を得るために約3A/s及び1A/sに個々の供給源の蒸発速度を制御しながら別々の供給源から純CuPc及び純NPBを同時蒸着することによって正孔輸送層13を作製した。同様に、所望の混合比の混合領域14を得るため約0.1A/s〜約10A/sにそれぞれの蒸発速度を制御しながら別々の供給源から純NPB、純Alq3、及び純ルブレンを同時蒸着することによって混合領域14を作製した。
【0067】
有機正孔輸送層13、混合領域14、及び電子輸送領域15を形成した後に、減圧を中断せずに電子輸送領域15上に金属カソード16を蒸着した。2重層の正孔輸送領域を有すること以外は第1の有機発光素子III−Aと同様の構造を有する第2の有機発光素子(素子III−B)も比較のために製造し、評価を行った。この第2の有機発光素子では、2重層の正孔輸送領域は(1)アノードと接触する厚さ約15nmのCuPcのバッファ層と、(2)バッファ層上に積層され混合領域と接触する厚さ約10nmのNPBの正孔輸送層とを有するものであった。この第2の有機発光素子は、上記と同様に、アノード、混合領域、電子輸送領域、カソード、及び(SO)熱保護要素で構成された。
【0068】
平均一定電流密度31.25mA/cm2におけるACドライブ条件で窒素ガス中90℃の温度という同一条件で、素子を作動させた場合の第1及び第2の有機発光素子におけるドライブ電圧の変化(増加)を調べた。この電流密度で、第1の素子(素子III−A)及び第2の素子(III−B)の初期輝度は、それぞれ約1,900cd/m2及び1,750cd/m2(カンデラ/平方メートル)であり、2つの素子の初期ドライブ電圧は、それぞれ9ボルトと8.9ボルトであった。下記表1は、この温度及び電流密度において表記の時間のあいだ連続作動させた場合の、2つの素子におけるのドライブ電圧の増加を、各素子の初期ドライブ電圧に対するパーセントとして示している。
【0069】
【表1】

【0070】
上記表1の結果から、例えば、素子III−Bと比較すると、素子III−Aは、電流密度31.25mA/cm2、90℃という条件において、250時間の作動時間後でもはるかに小さな電圧上昇という形態で、より高いドライブ安定性を示すことが分かる。したがって、高温で長時間有機発光素子を作動させ、特にドライブ電圧の安定性がより高いことが望ましい用途には、素子III−Aがより好適であると考えられる。
【0071】
(実施例IV)
図1の素子10のような構造を有する第1の有機発光素子(以下では素子IV−Aと記載する)を作製し、評価した。この素子では、銅フタロシアニン(CuPc)、N,N'−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N'−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、及びトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)をそれぞれポルフィリン、正孔輸送材料、及び電子輸送材料として使用した。正孔輸送層13は約75重量%のCuPc及び約25重量%のNPBで構成され、混合領域14は約49.8重量%のNPB、約49.8重量%のAlq3、及びルミネセンス材料(発光材料)としての約0.4重量%のルブレン蛍光ドーパントで構成された。正孔輸送層13の厚さは約25nmであり、混合領域14の厚さは約80nmであり、電子輸送領域15の厚さは約20nmであった。厚さ約200nmの酸化インジウムスズ(ITO)で構成されガラス基板上にあらかじめコーティングされたアノード12と、厚さ約120nmのMg:Ag(重量比10:1)合金で構成されるカソード16との間に、正孔輸送層13、混合層14、及び電子輸送領域15を形成した。一酸化ケイ素(SiO)で構成され厚さが約200nmの熱保護要素をカソード16上にコーティングした。
【0072】
有機発光素子は、約8×10-4Pa(約6×10-6torr)の圧力で真空蒸着法を使用して製造した。所望の混合比の正孔輸送層13を得るために約3A/s及び1A/sに個々の供給源の蒸発速度を制御しながら別々の供給源から純CuPc及び純NPBを同時蒸着することによって正孔輸送層13を作製した。同様に、所望の混合比の混合領域14を得るため約0.1A/s〜約10A/sにそれぞれの蒸発速度を制御しながら別々の供給源から純NPB、純Alq3、及び純ルブレンを同時蒸着することによって混合領域14を作製した。
【0073】
有機正孔輸送層13、混合領域14、及び電子輸送領域15を形成した後に、減圧を中断せずに電子輸送領域15上に金属カソード16を蒸着した。正孔輸送層13が約50重量%のCuPc及び約50重量%のNPBで構成されることを除けばすべて素子IV−Aと同一である第2の有機発光素子(以下、「素子IV−B」と記載する。)を、上記素子IV−Aの作製と正確に同じ手順に従って作製した。
【0074】
正孔輸送層13が約25重量%のCuPc及び約75重量%のNPBで構成されることを除けばすべて素子IV−Aと同一である第3の有機発光素子(以下、「素子IV−C」と記載する)を、上記素子IV−Aの作製と正確に同じ手順に従って作製した。
【0075】
正孔輸送層13がCuPcで構成されNPBは含まないことを除けばすべて素子IV−Aと同一である第4の有機発光素子(以下、「素子IV−D」と記載する。)を、上記素子IV−Aの作製と正確に同じ手順に従って作製した。
【0076】
正孔輸送層13がNPBで構成されCuPcは含まないことを除けばすべて素子IV−Aと同一である第5の有機発光素子(以下、「素子IV−E」と記載する)を、上記素子IV−Aの作製と正確に同じ手順に従って作製した。
【0077】
電流密度31.25mA/cm2における初期輝度、この電流密度における初期ドライブ電圧、及びこの電流密度において90℃で約200時間作動させた後のドライブ電圧の増加を下記表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
有機発光素子10の正孔輸送層13中のポルフィリン(CuPc)含有率が増加し正孔輸送層(NPB)が減少すると、有機発光素子のドライブ電圧の増加が遅くなり(望ましい)、同時に素子輝度(明るさ)が低下(望ましくない)することがある。
【0080】
本発明による有機発光素子は、通常温度条件の種々の技術的用途で使用することができる。さらに、本発明の有機発光素子は高温作動安定性であるので、高温及び過酷な条件で使用することができる。例えば、本発明の素子は、自動車及びその他の種類の乗り物、コンピュータのモニター、テレビ及びその他の電子素子及びシステムなどに使用される多種多様な表示装置に使用することができる。さらに、本発明の素子は、高温になることが多い工業用途などの過酷な条件に使用することができる。実施形態における素子は、例えば、少なくとも約50℃又は約70℃の高温、あるいは、例えば、約100℃などのより高温において長い寿命(例えば少なくとも約1,000時間)で安定した性能を示す。したがって、本発明による有機発光素子は、従来の二層素子では好適でなかった用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は本発明に係る有機発光素子の断面図である。
【図2】図2は本発明に係る有機発光素子の断面図である。
【符号の説明】
【0082】
10,20…有機発光素子
12,22…アノード
13,23…正孔輸送層
14,24…混合領域
15…電子輸送領域
16,26…カソード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アノードと、(ii)ポルフィリン及び正孔輸送材料の混合物を含有する正孔輸送層と、(iii)(1)正孔輸送材料、及び(2)電子輸送材料の混合物を含有し、任意に有機発光材料を含有する混合領域と、(iv)カソードと、を有してなる有機発光素子であって、(v)前記混合領域と前記カソードとの間に挿入される電子輸送領域、ならびに(vi)前記アノード及び前記カソードの一方の上にコーティングされる任意の熱保護要素のうち少なくとも一方を、任意にさらに有してなることを特徴とする有機発光素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−60607(P2008−60607A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295454(P2007−295454)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【分割の表示】特願2002−324605(P2002−324605)の分割
【原出願日】平成14年11月8日(2002.11.8)
【出願人】(599127667)エルジー フィリップス エルシーディー カンパニー リミテッド (279)
【Fターム(参考)】