説明

有機発光表示装置およびその製造方法

【課題】被覆層を経由して水分が侵入するのを防止することができ、信頼性を高めた有機発光表示装置を提供する。
【解決手段】駆動パネル10と封止パネル20とが、中間層30を介して対向配置されている。駆動パネル10は、駆動用基板11上に、駆動素子層40およびこれを覆う被覆層50を介して、有機発光素子10R,10G,10Bを有している。中間層30は、駆動パネル10と封止パネル20との間に有機発光素子10R,10G,10Bを覆うように設けられると共に、被覆層50の表面50Aだけでなく端面50Bをも覆っている。被覆層50の端面50Bが駆動パネル10と封止パネル20との間から露出せず、外部の水分が被覆層50を経路として侵入することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子を有する駆動パネルと封止パネルとを中間層を介して対向配置した有機発光表示装置およびその製造方法に係り、特に上面発光の有機発光素子を用いたものに好適な有機発光表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに代わる表示装置として、有機発光素子を用いた有機発光ディスプレイが注目されている。有機発光ディスプレイは、自発光型であるので視野角が広く、消費電力が低いという特性を有し、また、高精細度の高速ビデオ信号に対しても十分な応答性を有するものと考えられており、実用化に向けて開発が進められている。
【0003】
有機発光ディスプレイでは、例えば、基板上にTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)などの駆動素子が形成され、この駆動素子の上に、平坦化層を介して有機発光素子が形成されている。平坦化層は、通常は表示領域のみに形成される(例えば、特許文献1参照。)。ただし、平坦化層を表示領域外部、基板の背面の周縁部に保護筐体を接着するためのシールの下まで延在させ、平坦化層をシール硬化時のストレスを吸収する緩衝層として利用するようにした構成もある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、平坦化層の材料については、例えば、有機発光素子への水分の進入を阻止するため、SOG(Spin On Glass )材料など水分を蒸発させる温度に耐えうる膜を採用するようにした提案がある(例えば、特許文献3参照。)。あるいは、エポキシ基を含有するアルカリ可溶性樹脂と1,2−キノンジアジド化合物とを含有する材料を採用することにより、スルーホール等を高解像度で形成できることが報告されている(例えば、特許文献4参照。)。
【特許文献1】特開2001−102168号公報
【特許文献2】特開2001−102166号公報
【特許文献3】特開2001−102165号公報
【特許文献4】特開2002−182380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、高輝度・高開口度の有機発光ディスプレイとして、駆動パネルと封止パネルとを接着層を介して全面にわたって貼り合わせ、有機発光素子により発生した光を封止パネルの側から取り出すようにした上面発光・完全固体封止構造が提案されている。駆動パネルは、例えば、駆動用基板上に、TFT等の駆動素子層およびこれを覆う平坦化層としての被覆層を介して、複数の有機発光素子を有している。
【0006】
しかしながら、この構造では、被覆層をパターニングすることなく駆動用基板の全面にわたって形成していたので、接着層の端部から被覆層の端部が露出した状態となっていた。そのため、外部の水分が被覆層を経路として侵入し、有機発光素子の劣化の原因となるおそれがあった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、被覆層を経由して水分が侵入するのを防止することができ、信頼性を高めた有機発光表示装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による有機発光表示装置は、駆動用基板上に、駆動素子層および駆動素子層を覆う被覆層を介して、第1電極、発光層を含む有機層および第2電極を駆動用基板の側から順に積層した複数の有機発光素子を有する駆動パネルと、封止用基板を有し、封止用基板が駆動パネルの有機発光素子側に対向配置された封止パネルと、駆動パネルと封止パネルとの間に複数の有機発光素子を覆うように設けられた中間層とを備え、被覆層は有機材料により構成されると共に、中間層の端面からはみ出した部分と、はみ出した部分と被覆層の他の部分とを、中間層の端面よりも内側において分離する分離溝とを有するものである。
【0009】
本発明による有機発光表示装置の製造方法は、駆動用基板に、駆動素子層および駆動素子層を覆う被覆層を介して、第1電極、発光層を含む有機層および第2電極を駆動用基板の側から順に積層した複数の有機発光素子を形成し、駆動パネルを形成する工程と、複数の有機発光素子を覆う中間層を形成する工程と、中間層を介して、駆動パネルの発光素子側に、封止用基板を有する封止パネルを対向配置する工程とを含み、被覆層を有機材料により構成すると共に被覆層に分離溝を設け、中間層を、分離溝が中間層の端面よりも内側になるように形成することにより、被覆層に中間層の端面からはみ出したはみ出し部分を形成すると共に、はみ出し部分と被覆層の他の部分を分離溝で分離するようにしたものである。
【0010】
本発明による有機発光表示装置では、被覆層が、中間層の端面からはみ出した部分と、はみ出した部分と被覆層の他の部分とを、中間層の端面よりも内側において分離する分離溝とを有しているので、外部の水分がはみ出した部分を経路として発光素子部分へ侵入することがない。
【0011】
本発明による有機発光表示装置の製造方法では、駆動用基板に、駆動素子層およびこれを覆う被覆層を介して複数の有機発光素子が形成され、駆動パネルが形成される。このとき、被覆層は有機材料により構成されると共に被覆層に分離溝が設けられる。次いで、複数の有機発光素子を覆う中間層が、分離溝が中間層の端面よりも内側になるように形成される。これにより、被覆層に、中間層の端面からはみ出したはみ出し部分が形成されると共に、はみ出し部分と被覆層の他の部分が分離溝で分離される。続いて、中間層を介して、駆動パネルの発光素子側に、封止用基板を有する封止パネルが対向配置される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有機発光表示装置およびその製造方法によれば、被覆層が、中間層の端面からはみ出した部分と、はみ出した部分と被覆層の他の部分とを、中間層の端面よりも内側において分離する分離溝とを有するように構成したので、外部の水分がはみ出した部分を経路として内部の素子部分に侵入することがなくなる。よって、素子が劣化することがなくなり、有機発光表示装置の信頼性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態に係る表示装置の断面構造を表すものである。この表示装置は、例えば極薄型の有機発光ディスプレイとして用いられるものであり、駆動パネル10と封止パネル20とが対向配置され、駆動パネル10と封止パネル20との間に中間層30が設けられている。駆動パネル10は、例えば、図1(A)に示したように、ガラスなどの絶縁材料よりなる駆動用基板11上に、駆動素子層40およびこの駆動素子層40を覆う被覆層50を介して、赤色の光を発生する有機発光素子10Rと、緑色の光を発生する有機発光素子10Gと、青色の光を発生する有機発光素子10Bとが、順に全体としてマトリクス状に設けられている。また、駆動用基板11の周辺部分には、図1(B)に示したように、周辺回路部60および補助配線70が設けられている。
【0015】
有機発光素子10R,10G,10Bは、例えば、駆動用基板11の側から、陽極としての第1電極12、絶縁層13、発光層を含む有機層14、および陰極としての第2電極15がこの順に積層されている。第2電極15は、有機発光素子10R,10G,10Bのすべてを覆う共通電極として形成され、補助配線70の支線70Aに電気的に接続されている。また、第2電極15は、駆動用基板11の周辺部分まで延長され、補助配線70に電気的に接続されている。
【0016】
第1電極12は、反射層としての機能も兼ねており、例えば、白金(Pt),金(Au),クロム(Cr)またはタングステン(W)などの金属または合金により構成されている。
【0017】
絶縁層13は、第1電極12と第2電極15との絶縁性を確保すると共に、有機発光素子10R,10G,10Bにおける発光領域の形状を正確に所望の形状とするためのものである。この絶縁層13は、例えば、二酸化ケイ素(SiO2 )などの絶縁材料により構成されている。
【0018】
有機層14は、有機発光素子の発光色によって構成が異なっている。有機発光素子10R,10Bは、正孔輸送層,発光層および電子輸送層が第1電極12の側からこの順に積層された構造を有しており、有機発光素子10Gは、正孔輸送層および発光層が第1電極12の側からこの順に積層された構造を有している。正孔輸送層は、発光層への正孔注入効率を高めるためのものである。発光層は、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層は、発光層への電子注入効率を高めるためのものである。
【0019】
有機発光素子10Rの正孔輸送層の構成材料としては、例えば、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)が挙げられ、有機発光素子10Rの発光層の構成材料としては、例えば、2,5−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)―N−フェニルアミノ]]スチリルベンゼン―1,4−ジカーボニトリル(BSB)が挙げられ、有機発光素子10Rの電子輸送層の構成材料としては、例えば、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3 )が挙げられる。
【0020】
有機発光素子10Bの正孔輸送層の構成材料としては、例えば、α−NPDが挙げられ、有機発光素子10Bの発光層の構成材料としては、例えば、4,4′−ビス(2,2′−ジフェニルビニン)ビフェニル(DPVBi)が挙げられ、有機発光素子10Bの電子輸送層の構成材料としては、例えば、Alq3 が挙げられる。
【0021】
有機発光素子10Gの正孔輸送層の構成材料としては、例えば、α−NPDが挙げられ、有機発光素子10Gの発光層の構成材料としては、例えば、Alq3 にクマリン6(C6;Coumarin6)を1体積%混合したものが挙げられる。
【0022】
第2電極15は、半透過性電極により構成されており、発光層で発生した光は第2電極15の側から取り出されるようになっている。第2電極15は、例えば、銀(Ag),アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属または合金により構成されている。
【0023】
封止パネル20は、封止用基板21を有しており、この封止用基板21は、駆動パネル10の有機発光素子10R,10G,10Bの側に配置され、中間層30と共に有機発光素子10R,10G,10Bを封止している。封止用基板21は、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。封止用基板21には、例えば、カラーフィルタおよびブラックマトリクスとしての反射光吸収膜(図示せず)が設けられており、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光を取り出すと共に、有機発光素子10R,10G,10Bおよびその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっている。
【0024】
中間層30は、駆動パネル10と封止パネル20との間に有機発光素子10R,10G,10Bを覆うように設けられると共に、被覆層50の表面50Aおよび端面50Bを覆っている。これにより、この表示装置では、被覆層50の端面50Bが駆動パネル10と封止パネル20との間から外部に露出することがなく、外部の水分が被覆層50を経路として内部の有機発光素子10R,10G,10Bに侵入することが防止されている。
【0025】
中間層30は、例えば、有機発光素子10R,10G,10B並びに被覆層50の表面50Aおよび端面50Bを覆う保護膜31と、この保護膜31と封止用基板21との間の接着層32とを有している。保護膜31は、有機発光素子10R,10G,10Bを保護し、その劣化を防止するためのものであり、例えば、酸化シリコン(SiO2 ),窒化シリコン(SiN)などの透明誘電体により構成されている。接着層32は、例えば、熱硬化性樹脂により構成され、駆動パネル10および保護膜31と封止パネル20とを全面にわたって貼り合わせるものである。なお、駆動用基板11の周辺部分においては、接着層32は、駆動用基板11上に保護膜31を介して形成されていることが好ましい。保護膜31は、ガラスよりなる駆動用基板11よりも接着層32との密着性が良いからである。
【0026】
駆動素子層40は、有機発光素子10R,10G,10Bを駆動する駆動素子としてTFT41を含んでいる。TFT41のゲート電極(図示せず)は、図示しない走査回路に接続され、ソースおよびドレイン(いずれも図示せず)は、例えば酸化シリコンあるいはPSG(Phospho-Silicate Glass)などよりなる層間絶縁膜42を介して設けられた配線43に接続されている。配線43は、層間絶縁膜42に設けられた図示しない接続孔を介してTFT41のソースおよびドレインに接続され、信号線として用いられる。配線43は、例えばアルミニウム(Al)もしくはアルミニウム(Al)―銅(Cu)合金により構成されている。なお、TFT41の構成は、特に限定されず、例えば、ボトムゲート型でもトップゲート型でもよい。
【0027】
被覆層50は、駆動素子層40および周辺回路部60を覆うように設けられており、有機発光素子10R,10G,10Bの製造工程において駆動素子層40および周辺回路部60を保護するものである。また、被覆層50は、駆動素子層40が形成された駆動用基板11の表面を平坦化し、有機発光素子10R,10G,10Bにおける欠陥の発生を抑制するための平坦化層としての機能も有している。被覆層50には、有機発光素子10R,10G,10Bの第1電極12と配線43とを接続する接続孔51が設けられている。
【0028】
被覆層50は、微細な接続孔51が形成されるため、パターン精度が良い材料により構成されていることが好ましい。更に、被覆層50の上に有機発光素子10R,10G,10Bが形成されるので、有機発光素子10R,10G,10Bの劣化を防ぐため、吸水率の低い材料により構成されていればより好ましい。吸水率は、例えば、所定の測定条件下で約1%以下であることが好ましい。具体的には、被覆層50は、例えばポリイミド等の有機材料により構成されている。
【0029】
補助配線70および支線70Aは、第2電極15における電圧降下を抑制するものであり、例えば、アルミニウム(Al)あるいはクロム(Cr)のような低抵抗の導電性材料を単層あるいは積層構造としたものにより構成されている。補助配線70は、例えば、駆動用基板11の周辺部分において、有機発光素子10R,10G,10Bの形成されている領域を取り囲むように形成されている。支線70Aは、例えば、絶縁層13の上に行列状に形成されており、補助配線70に接続されている。補助配線70は、支線70Aよりも厚みを厚く、幅も広くすることが可能である。
【0030】
なお、補助配線70は、図1に示したように被覆層50の上に形成されていてもよいし、あるいは、駆動用基板11上に形成されていると共にコンタクトホールにより第2電極15と接続されていてもよい。このように補助配線70が駆動用基板11上に形成されている場合には、被覆層50は補助配線70を覆うように形成されていることが好ましい。被覆層50により補助配線70を保護することができるからである。
【0031】
図2は、駆動パネル10,封止パネル20,中間層30および被覆層50の平面的な位置関係を表すものである。駆動パネル10および封止パネル20は必ずしも同じ大きさである必要はなく、例えば、駆動用基板11の一部は、封止パネル20および中間層30により覆われておらず、露出している。この露出した部分には、例えばチタン(Ti)―アルミニウム(Al)合金よりなる端子部80が設けられている。
【0032】
中間層30は、図2に示したように、封止パネル20の全面に形成されている。また、被覆層50の形成範囲は、中間層30の形成された領域よりも内側の領域(図2の斜線を施した領域)となっている。
【0033】
この表示装置では、例えば、第1電極12と第2電極15との間に所定の電圧が印加されると、有機層14の発光層に電流が注入され、正孔と電子とが再結合することにより発光が起こる。この光は、封止パネル20の側から取り出される。ここでは、中間層30、すなわち、保護膜31および接着層32によって被覆層50の表面50Aだけでなく、その端面50Bが覆われている。したがって、被覆層50の端面50Bが駆動パネル10と封止パネル20との間から外部に露出せず、外部の水分が被覆層50を経路として内部に侵入することが防止され、有機発光素子10R,10G,10Bの劣化が防止される。
【0034】
この表示装置は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0035】
図3ないし図6はこの表示装置の製造方法を工程順に表すものである。まず、図3に示したように、例えば、上述した材料よりなる駆動用基板11に、TFT41,層間絶縁膜42および配線43を有する駆動素子層40と、周辺回路部60とを形成する。
【0036】
次に、図4に示したように、駆動用基板11の全面に、感光性を有する材料よりなる感光性膜91を形成する。感光性膜91の構成材料としては、例えば被覆層50の材料として上述した材料を用いることができる。
【0037】
続いて、図5に示したように、感光性膜91を露光および現像することにより、駆動素子層40および周辺回路部60を覆う被覆層50を形成する。同時に接続孔51も形成することが可能である。
【0038】
そののち、図6に示したように、有機発光素子10R,10G,10Bおよび端子部80(図2参照)を形成する。すなわち、まず、被覆層50の接続孔51に対応して、上述した材料よりなる第1電極12を形成し、駆動素子層40と第1電極12との電気的導通をとる。次いで、この第1電極12の上に、絶縁層13を所定のパターンで形成する。続いて、絶縁層13の上に補助配線70の支線70Aを形成すると共に、駆動用基板11の周辺部分には補助配線70を形成する。次に、上述した材料よりなる正孔注入層,正孔輸送層,発光層および電子輸送層を順次成膜して有機層14を形成したのち、上述した材料よりなる第2電極15を形成する。
【0039】
有機発光素子10R,10G,10Bを形成したのち、図7に示したように、保護膜31を、有機発光素子10R,10G,10B並びに被覆層50の表面50Aおよび端面50Bを覆うように形成する。続いて、上述した材料よりなる接着層32を形成する。これにより、中間層30が形成される。
【0040】
次に、上述した材料よりなり、必要に応じてカラーフィルタなどを形成した封止用基板21を有する封止パネル20を用意し、駆動パネル10および保護膜31と封止パネル20とを接着層32を介して全面にわたって貼り合わせる。以上により、図1および図2に示した表示装置が完成する。
【0041】
また、この表示装置は、例えば、次のようにして製造することもできる。
【0042】
まず、図3に示した工程により、駆動用基板11に、駆動素子層40および周辺回路部60を形成する。
【0043】
次いで、図8に示したように、被覆層50が形成される領域(図2の斜線を施した領域)と同等のサイズを有するシート状平坦化膜92を用意する。このシート状平坦化膜92を、駆動素子層40および周辺回路部60が形成された駆動用基板11の所定の位置に配置する。これにより、図9に示したように、被覆層50を形成する。
【0044】
続いて、図5に示した工程により、被覆層50に接続孔51を形成する。そののち、図6に示した工程により、有機発光素子10R,10G,10Bおよび端子部80を形成する。続いて、図7に示した工程により、保護膜31および接着層32を順に形成し、接着層32を介して駆動パネル10および保護膜31と封止パネル20とを全面にわたって貼り合わせる。以上により、図1および図2に示した表示装置が完成する。
【0045】
このように本実施の形態では、駆動パネル10と封止パネル20との間の中間層30が、有機発光素子10R,10G,10Bおよび被覆層50の表面50Aだけでなく、更に、被覆層50の端面50Bをも覆うように構成したので、被覆層50の端面50Bが駆動パネル10と封止パネル20との間から外部に露出することがなくなる。従って、外部の水分が被覆層50を経路として内部に侵入し、有機発光素子10R,10G,10Bを劣化させることがなくなり、これにより表示装置の信頼性が向上する。
【0046】
特に、本実施の形態では、保護膜31により有機発光素子10R,10G,10B並びに被覆層50の表面50Aおよび端面50Bを覆い、かつ保護膜31と封止用基板21との間に接着層32を介在させるようにしたので、保護膜31および接着層32によって有機発光素子10R,10G,10Bの劣化を効果的に防止することができる。よって、封止性能を向上させることができ、特に、駆動パネル10と封止パネル20とが接着層32を介して全面にわたって貼り合わせられた完全固体封止構造の表示装置に好適である。
【0047】
なお、本実施の形態では、中間層30が保護膜31および接着層32を有する場合について説明したが、保護膜31は必ずしも設けなくてもよい。例えば、図10に示したように、中間層30が保護膜31を含まず、接着層32のみを含むようにしてもよい。
【0048】
(変形例)
図11は、上記実施の形態の変形例に係る表示装置の断面構造を表すものである。この表示装置は上記実施の形態と同様に、駆動パネル10と封止パネル20との間に中間層30が設けられ、中間層30が被覆層50の表面50Aだけでなく端面50Bをも覆うように構成されたものである。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0049】
被覆層50は、中間層30の端面30Aからはみ出した部分52を有しており、はみ出した部分52と被覆層50の他の部分とは分離溝53により離間している。これにより、この表示装置では、外部の水分がはみ出した部分52を経路として内部に侵入することがなく、有機発光素子10R,10G,10Bの劣化が防止されるようになっている。
【0050】
この表示装置は、上記実施の形態と同様にして製造することができる。また、この表示装置の作用は上記実施の形態と同様である。
【0051】
このように本変形例では、被覆層50に、中間層30の端面30Aからはみ出した部分52を設け、はみ出した部分52と被覆層50の他の部分とを分離溝53により離間するようにしたので、外部の水分がはみ出した部分52を経路として内部に侵入することがなく、有機発光素子10R,10G,10Bの劣化を防止することができる。
【0052】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。例えば、上記実施の形態においては、駆動用基板11に、第1電極12,絶縁層13,有機層14および第2電極15を駆動用基板11の側から順に積層し、封止パネル20の側から光を取り出すようにした場合について説明したが、積層順序を逆にして、駆動用基板11の上に、第2電極15,有機層14および第1電極12を駆動用基板11の側から順に積層し、駆動用基板11の側から光を取り出すようにすることもできる。
【0053】
更に、例えば、上記実施の形態では、第1電極12を陽極、第2電極15を陰極とする場合について説明したが、陽極および陰極を逆にして、第1電極12を陰極、第2電極15を陽極としてもよい。さらに、第1電極12を陰極、第2電極15を陽極とすると共に、駆動用基板11の上に、第2電極15,有機層14および第1電極12を駆動用基板11の側から順に積層し、駆動用基板11の側から光を取り出すようにすることもできる。
【0054】
加えて、上記実施の形態では、有機発光素子10R,10G,10Bの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【0055】
更にまた、上記実施の形態では、第2電極15が半透過性反射層により構成され、第2電極15の電圧降下を抑制するための補助配線70および支線70Aを備えている場合について説明したが、第2電極15は、半透過性反射層と透明電極とが第1電極12の側から順に積層された構造としてもよい。この透明電極は、半透過性反射層の電気抵抗を下げるためのものであり、発光層で発生した光に対して十分な透光性を有する導電性材料により構成されている。透明電極を構成する材料としては、例えば、ITOまたはインジウムと亜鉛(Zn)と酸素とを含む化合物が好ましい。室温で成膜しても良好な導電性を得ることができるからである。
【0056】
加えてまた、上記実施の形態では、駆動パネル10および保護膜31と封止パネル20とが接着層32を介して全面にわたって貼り合わせられている場合について説明したが、本発明は、例えば、駆動パネル10の周縁部のみに接着層32を形成して金属缶などを接着するようにした場合など、接着層32が駆動パネル10と封止パネル20との間の一部分のみに形成された場合についても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表示装置の断面構造を表す断面図である。
【図2】図1に示した駆動パネル,封止パネル,中間層および被覆層の位置関係を表す平面図である。
【図3】図1に示した表示装置の製造工程を説明するための断面図である。
【図4】図3の工程に続く製造工程を説明するための図である。
【図5】図4の工程に続く製造工程を説明するための図である。
【図6】図5の工程に続く製造工程を説明するための図である。
【図7】図6の工程に続く製造工程を説明するための図である。
【図8】図1に示した表示装置の他の製造方法を説明するための図である。
【図9】図8の工程に続く製造工程を説明するための図である。
【図10】図1に示した表示装置の変形例を表す断面図である。
【図11】図1に示した表示装置の変形例を表す断面図である。
【図12】図11に示した駆動パネル,封止パネル,中間層および被覆層の位置関係を表す平面図である。
【符号の説明】
【0058】
10…駆動パネル、11…駆動用基板、12…第1電極、13…絶縁層、14…有機層、15…第2電極、20…封止パネル、21…封止用基板、30…中間層、30A…端面、31…保護膜、32…接着層、40…駆動素子層、41…TFT、42…層間絶縁膜、43…配線、50…被覆層、50A…表面、50B…端面、51…接続孔、52…はみ出した部分、53…分離溝、60…周辺回路部、70…補助配線、70A…支線、80…端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用基板上に、駆動素子層および前記駆動素子層を覆う被覆層を介して、第1電極、発光層を含む有機層および第2電極を前記駆動用基板の側から順に積層した複数の有機発光素子を有する駆動パネルと、
封止用基板を有し、前記封止用基板が前記駆動パネルの前記有機発光素子側に対向配置された封止パネルと、
前記駆動パネルと前記封止パネルとの間に前記複数の有機発光素子を覆うように設けられた中間層と
を備え、
前記被覆層は有機材料により構成されると共に、前記中間層の端面からはみ出したはみ出し部分と、前記はみ出した部分と前記被覆層の他の部分とを、前記中間層の端面よりも内側において分離する分離溝とを有する
ことを特徴とする有機発光表示装置。
【請求項2】
前記被覆層は、ポリイミドにより構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光表示装置。
【請求項3】
前記中間層は、シリコン(Si)を含む透明誘電体により構成された保護膜を有する
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光表示装置。
【請求項4】
前記保護膜は、酸化シリコン(SiO2 )または窒化シリコン(SiN)により構成されている
ことを特徴とする請求項3記載の有機発光表示装置。
【請求項5】
前記保護膜は、前記分離溝内に埋め込まれている
ことを特徴とする請求項3記載の有機発光表示装置。
【請求項6】
前記中間層は、前記保護膜と前記封止用基板との間に、前記駆動パネルおよび前記保護膜と前記封止パネルとを全面にわたって貼り合わせるための接着層を含む
ことを特徴とする請求項3記載の有機発光表示装置。
【請求項7】
前記有機発光素子は、前記発光層で発生した光を前記第2電極の側から取り出す
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光表示装置。
【請求項8】
前記有機発光素子は、前記第2電極の電圧降下を抑制するための補助配線を有し、前記補助配線は、前記被覆層の上に形成され、または前記駆動用基板上に形成され且つ前記被覆層により覆われている
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光表示装置。
【請求項9】
駆動用基板に、駆動素子層および前記駆動素子層を覆う被覆層を介して、第1電極、発光層を含む有機層および第2電極を前記駆動用基板の側から順に積層した複数の有機発光素子を形成し、駆動パネルを形成する工程と、
前記複数の有機発光素子を覆う中間層を形成する工程と、
前記中間層を介して、前記駆動パネルの前記発光素子側に、封止用基板を有する封止パネルを対向配置する工程と
を含み、前記被覆層を有機材料により構成すると共に前記被覆層に分離溝を設け、
前記中間層を、前記分離溝が前記中間層の端面よりも内側になるように形成することにより、前記被覆層に前記中間層の端面からはみ出したはみ出し部分を形成すると共に、前記はみ出し部分と前記被覆層の他の部分を前記分離溝で分離する
ことを特徴とする有機発光表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記被覆層を、ポリイミドにより構成する
ことを特徴とする請求項9記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記中間層として、シリコン(Si)を含む透明誘電体により構成された保護膜を形成する
ことを特徴とする請求項9記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記保護膜を、酸化シリコン(SiO2 )または窒化シリコン(SiN)により構成する
ことを特徴とする請求項11記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記保護膜を、前記分離溝内に埋め込む
ことを特徴とする請求項11記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記被覆層を、シート状被覆膜を配置することにより形成する
ことを特徴とする請求項9記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記被覆層を、感光性を有する材料よりなる感光性膜を形成したのち前記感光性膜を露光および現像することにより形成する
ことを特徴とする請求項9記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記中間層として、前記保護膜の上に接着層を形成したのち、前記接着層を介して前記駆動パネルおよび前記保護膜と前記封止パネルとを全面にわたって貼り合わせる
ことを特徴とする請求項9記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記有機発光素子は、前記発光層で発生した光を前記第2電極の側から取り出す
ことを特徴とする請求項9記載の有機発光表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−280964(P2007−280964A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172506(P2007−172506)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【分割の表示】特願2004−10345(P2004−10345)の分割
【原出願日】平成16年1月19日(2004.1.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】