説明

有機発光表示装置及び有機発光表示装置の製造方法

【課題】有機発光表示装置および有機発光表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】可撓性基板、前記可撓性基板上に形成され、薄膜トランジスタを含む駆動回路部、前記可撓性基板上に形成され、前記駆動回路部と連結された有機発光素子、前記可撓性基板上に形成されて、前記有機発光素子および前記駆動回路部をカバーする封止薄膜、前記封止薄膜に対向配置された第1保護フィルム、前記可撓性基板に対向配置された第2保護フィルム、前記封止薄膜と前記第1保護フィルムの間に配置された第1粘着剤;および、前記可撓性基板と前記第2保護フィルムの間に配置された第2粘着剤、を含む、有機発光表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光表示装置及び有機発光表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光表示装置(organic light emitting diode display)は、正孔注入電極と電子注入電極、そしてこれらの間に形成されている有機発光層を含み、アノードから注入される正孔と、カソードから注入される電子とが有機発光層で再結合して、消滅しながら光を出す自発光型表示装置である。
【0003】
また、有機発光表示装置は、低い消費電力、高い輝度、及び高い反応速度などの高品位特性を有するので、携帯用電子機器の次世代表示装置として注目を浴びている。
【0004】
しかし、有機発光表示装置を、重くて破損しやすいガラス基板を用いて具現する場合、携帯性及び大画面表示が制限される。したがって、近来には、重量が軽くて衝撃に強いだけでなく、プラスチックのような可撓性基板を用いて、フレキシブルな有機発光表示装置が開発されている。このようにフレキシブルな有機発光表示装置は、折り畳んだり巻き物形態に巻き上げることができるので、携帯性を向上(極大化)することができ、多様な分野で活用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、フレキシブルな有機発光表示装置であっても、過度に曲げたり反復的に曲げたりすると、薄膜トランジスタのような素子が損傷したり導電配線が断線する恐れがあるという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、反復的なベンディングに対する耐久性を向上させ、曲げられる程度を向上することが可能な、新規かつ改良された有機発光表示装置及び有機発光表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、可撓性基板、前記可撓性基板上に形成され、薄膜トランジスタを含む駆動回路部、前記可撓性基板上に形成され、前記駆動回路部と連結された有機発光素子、前記可撓性基板上に形成されて、前記有機発光素子および前記駆動回路部をカバーする封止薄膜、前記封止薄膜に対向配置された第1保護フィルム、前記可撓性基板に対向配置された第2保護フィルム、前記封止薄膜と前記第1保護フィルムの間に配置された第1粘着剤、および、前記可撓性基板と前記第2保護フィルムの間に配置された第2粘着剤;を含む、有機発光表示装置が提供される。
【0008】
前記第1の保護フィルムの外側面から前記駆動回路部までの厚さと、前記第2の保護フィルムの外側面から前記駆動回路部までの厚さとが同一であってもよい。
【0009】
前記封止薄膜、前記第1粘着剤、および前記第1保護フィルムを全て合計した厚さと、前記可撓性基板、前記第2粘着剤、および前記第2保護フィルムを全て合計した厚さとが互いに同一であってもよい。
【0010】
ベンディングモーメントが加えられる際、前記第1保護フィルムと前記第2保護フィルムの間で形成される中立面に前記駆動回路部の前記薄膜トランジスタが位置してもよい。
【0011】
前記第1保護フィルムと前記第2保護フィルムは互いに同一な物性を有し、前記第1粘着剤と前記第2粘着剤は互いに同一な物性を有してもよい。
【0012】
前記第1保護フィルムおよび前記第2保護フィルムは、各々、10μm〜100μm範囲内の厚さを有してもよい。また、前記第1粘着剤および前記第2粘着剤は、各々、1μm〜30μm範囲内の厚さを有してもよい。
【0013】
前記第1保護フィルムおよび前記第2保護フィルムのうちの少なくともいずれかは偏光機能を有してもよい。
【0014】
有機発光表示装置は、曲率半径が3mmより大きくて10mmより小さい範囲内で曲がれてもよい。前記可撓性基板はプラスチック素材からなってもよい。前記第1保護フィルムおよび前記第2保護フィルムは、フレキシブルなプラスチック素材からなってもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ガラス基板上に可撓性基板を形成する段階、前記可撓性基板上に、薄膜トランジスタを含む駆動回路部と、前記駆動回路部と連結された有機発光素子とを形成する段階、前記可撓性基板上に、前記有機発光素子、および前記駆動回路部をカバーする封止薄膜を形成する段階、前記封止薄膜に、第1粘着剤を用いて第1保護フィルムを付着する段階、前記ガラス基板を前記可撓性基板から分離させる段階、および、前記可撓性基板に、第2粘着剤を用いて第2保護フィルムを付着する段階、を含む有機発光表示装置の製造方法が提供される。
【0016】
前記第1保護フィルムの外側面から前記駆動回路部までの厚さと、前記第2保護フィルムの外側面から前記駆動回路部までの厚さとが同一であってもよい。
【0017】
前記封止薄膜、前記第1粘着剤、および前記第1保護フィルムを全て合計した厚さと、前記可撓性基板、前記第2粘着剤、および前記第2保護フィルムを全て合計した厚さとが互いに同一であってもよい。
【0018】
ベンディングモーメントが加えられる際、前記第1保護フィルムと前記第2保護フィルムの間で形成される中立面に前記駆動回路部の薄膜トランジスタを位置させてもよい。
【0019】
前記第1保護フィルムと前記第2保護フィルムは互いに同一な物性を有し、前記第1粘着剤と前記第2粘着剤は互いに同一な物性を有してもよい。
【0020】
前記第1保護フィルムおよび前記第2保護フィルムは、各々、10μm〜100μm範囲内の厚さを有してもよい。前記第1粘着剤および前記第2粘着剤は、各々、1μm〜30μm範囲内の厚さを有してもよい。
【0021】
前記第1保護フィルムおよび前記第2保護フィルムのうちの少なくともいずれかは偏光機能を有してもよい。
【0022】
前記有機発光表示装置は、曲率半径が3mmより大きくて10mmより小さい範囲内で曲がれてもよい。前記可撓性基板はプラスチック素材からなってもよい。記第1保護フィルムおよび前記第2保護フィルムは、フレキシブルなプラスチック素材からなってもよい。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明によれば、有機発行表示装置は、反復的なベンディング(bending)に対する耐久性が向上し、曲げられる程度を極大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例による有機発光表示装置の断面図である。
【図2】図1の有機発光表示装置がベンディングされた状態を示した断面図である。
【図3】図1の有機発光表示装置の製造工程の一部を示した断面図である。
【図4】図1の有機発光表示装置の製造工程の一部を示した断面図である。
【図5】図1の有機発光表示装置の表示パネルの内部構造を拡大して示した配置図である。
【図6】図5のVI−VI線による断面図である。
【図7】本発明の一実施例による実験例と比較例を対比して実験した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施例について、本発明が属する技術分野にて通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は色々な相異した形態で具現することができ、ここで説明する実施例に限られない。
【0026】
また、本発明を明確に説明するために、説明上不要な部分は省略しており、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜のために任意に示したものであるので、本発明が必ずしも示されたものに限定されない。
【0027】
なお、図面においては、色々な層及び領域を明確に表現するために、厚さを拡大して示した。そして、説明の便宜のために、一部の層及び領域の厚さを誇張して示した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の“上に”あるという場合、これは他の部分の“直上に”ある場合だけでなく、その中間にまた他の部分が位置する場合も含む。
【0028】
以下、図1〜図2を参照して、本発明の一実施例について説明する。
【0029】
図1に示したように、本発明の一実施例による有機発光表示装置101は、表示パネル110、第1保護フィルム410、第1粘着剤310、第2保護フィルム420、および第2粘着剤320を含む。
【0030】
表示パネル110は、可撓性基板111、駆動回路部(DC)、有機発光素子70、および封止薄膜250を含む。
【0031】
可撓性基板111はフレキシブルなプラスチック素材から作られる。しかし、本発明の一実施例がこれに限定されるわけではなく、可撓性基板111はステンレス鋼などからなる金属性基板で形成されてもよい。また、可撓性基板111として、その他のフレキシブルな多様な素材が使用されてもよい。
【0032】
駆動回路部(DC)は薄膜トランジスタ10、20(図5に示した)を含み、有機発光素子70を駆動する。有機発光素子70は駆動回路部(DC)と連結されて、駆動回路部(DC)から伝達された駆動信号に応じて光を放出し、画像を表示する。
【0033】
有機発光素子70および駆動回路部(DC)の具体的な構造は図5および図6に示したが、本発明の実施例が図5および図6に示された構造に限定されるわけではない。有機発光素子70および駆動回路部(DC)は、当該技術分野の専門家が容易に変形実施できる範囲内で、多様な構造で形成され得る。
【0034】
封止薄膜250は、具体的に示してはいないが、多層構造で形成される。封止薄膜250は、複数の無機膜から作ることや、無機膜と有機膜を混合して作るができる。本発明の一実施例において、封止薄膜250は、当該技術分野に務める者に公知された多様な種類の無機膜および有機膜を用いて形成することができる。
【0035】
また、表示パネル110は、可撓性基板111と駆動回路部(DC)の間に配置されたバリア膜120をさらに含む。バリア膜120は、多様な無機膜および有機膜の中で一つ以上の膜で形成される。バリア膜120は、水分のように不要な成分が可撓性基板111を透過して有機発光素子70に侵入することを防止する。有機発光素子70に侵入した水分は、有機発光素子70の寿命を短縮させる。
【0036】
一般に、封止薄膜250とバリア膜120は、有機発光素子に水分が侵入するのを防止するために、10−6g/m/day以下の2透湿率(water vapor transmission rate, WWTR)を有するのが好ましい。
【0037】
第1保護フィルム410は封止薄膜250に対向配置される。そして、第1粘着剤310は、第1保護フィルム410と封止薄膜250の間に配置される。つまり、第1保護フィルム410は、第1粘着剤310を介して封止薄膜250に付着される。
【0038】
第2保護フィルム420は可撓性基板111に対向配置される。そして、第2粘着剤320は、第2保護フィルム420と可撓性基板111の間に配置される。つまり、第2保護フィルム420は、第2粘着剤320を介して可撓性基板111に付着される。
【0039】
また、第1保護フィルム410および第2保護フィルム420は互いに同一な物性を有し、表示パネル110の器具強度を向上させる役割を果たす。第1保護フィルム410および第2保護フィルム420はプラスチックを素材から作られ、可撓性基板111と同様にフレキシブルな特性を有する。本発明の一実施例において、第1保護フィルム410および第2保護フィルム420として、当該技術分野に務める者に公知された多様な種類のフィルムが用いられる。
【0040】
また、第1保護フィルム410および第2保護フィルム420のうちの一つ以上は偏光機能を有する。ここで、偏光機能を有する保護フィルムの配置は、有機発光素子70が光を放出する方向に応じて決定される。具体的に、有機発光素子70が前面発光、つまり、第1保護フィルム410方向に光を放出して画像を表わす場合は、第1保護フィルム410が偏光機能を有するように形成される。一方、有機発光素子70が背面発光、つまり、第2保護フィルム420方向に光を放出して画像を表わす場合は、第2保護フィルム420が偏光機能を有するように形成される。また、有機発光素子70が両面発光する場合であれば、第1保護フィルム410と第2保護フィルム420の全てが偏光機能を有することも可能である。
【0041】
第1保護フィルム410および第2保護フィルム420のうちのいずれか一方のみが偏光機能を有する場合、他方は、偏光機能はなくても、物性は実質的に同一である物質で形成される。ここで、物性が実質的に同一であるとは、同一物質ではないが、実際に非常に似ている物性を有すること意味する。なお、第1保護フィルム410および第2保護フィルム420の双方が偏光機能を有しない場合も当然に想定される。
【0042】
そして、第1粘着剤310および第2粘着剤320もまた互いに実質的に同一な物性を有する。第1粘着剤310および第2粘着剤320は、第1保護フィルム410、第2保護フィルム420、可撓性基板111、および封止薄膜250などと比較して、相対的に柔らかい性質を有する。本発明の一実施例で、第1粘着剤310および第2粘着剤320として、当該技術分野に務める者に公知された多様な種類の粘着剤が用いられる。
【0043】
また、図1に示したように、第1保護フィルム410の外側面から駆動回路部(DC)までの厚さ(d1)と、第2保護フィルム420の外側面から駆動回路部(DC)までの厚さ(d2)が同一に形成される。つまり、第1粘着剤310と第2粘着剤320を、同一な製品で同一な厚さで形成した場合、封止薄膜250および可撓性基板111などの厚さを考慮して、第1保護フィルム410および第2保護フィルム420の厚さを各々決定する。
【0044】
可撓性基板111を除いた表示パネル110の厚さは数マイクロメーターに過ぎないため、意図しない間に曲がったり折り畳まれたりし易い。可撓性基板111も、通常数十マイクロメーターに過ぎないため、有機発光素子70および駆動回路部(DC)を物理的に保護し難いという点がある。
【0045】
したがって、表示パネル110のみを用いる場合、携帯性が返って悪くなる恐れがあり、損傷し易い。したがって、表示パネル110に第1保護フィルム410および第2保護フィルム420を付着して、表示パネル110の器具強度を向上させ、損傷を防止する。
【0046】
第1保護フィルム410および第2保護フィルム420のうちのいずれか一つだけでも表示パネル110の器具強度を向上させることはできる。しかし、第1保護フィルム410および第2保護フィルム420のうちのいずれか一つだけを表示パネル110に付着した状態でベンディングが反復されると、ベンディング時に発生する引張応力(ストレス)または圧縮応力が表示パネル110にそのまま伝達される。
【0047】
つまり、ベンディングモーメントが加えられる際に形成される中立面(neutral plane)(NP)(図2に図示)が、表示パネル110に比べて相対的に大きく厚い厚さを有する第1保護フィルム410または第2保護フィルム420の内部に形成され、第1保護フィルム410または第2保護フィルム420の周縁に位置する表示パネル110には相当な引張応力または圧縮応力が加えられる。この時、表示パネル110に加えられる応力は、表示パネル110が中立面(NP)から遠くなるほど強くなる。
【0048】
ここで、中立面(NP)とは、ベンディングモーメントが加えられる際に増えたり減らずに本来の長さを維持しながら曲がることだけが起こる面をいう。このように、表示パネル110に応力が反復的に加えられたり、破壊強度以上の応力が加えられると、表示パネル110内部に形成された薄膜トランジスタ10、20(図5に図示)のような素子が損傷したり導電配線が断線できる恐れがある。
【0049】
したがって、本発明の一実施例では、第1保護フィルム410の外側面から駆動回路部(DC)までの厚さ(d1)(図1に図示)と、第2保護フィルム420の外側面から駆動回路部(DC)までの厚さ(d2)(図1に図示)とが同一になるように、第1保護フィルム410と第2保護フィルム420の厚さを決定する。
【0050】
このような構成により、図2に示したように、ベンディングモーメントが加えられる際、第1保護フィルム410と第2保護フィルム420の間で形成される中立面(NP)を駆動回路部(DC)の薄膜トランジスタ20(図6に図示)に位置させることができる。また、中立面を駆動回路部(DC)の薄膜トランジスタ20に位置させるために、第1保護フィルム410と第2保護フィルム420が互いに同一な物性を有してもよい。
【0051】
したがって、有機発光表示装置101を無限大に繰り返してベンディングさせても薄膜トランジスタ20に加えられる応力が殆どないので、薄膜トランジスタ20の損傷を防止することができる。
【0052】
物体にベンディングモーメントを加えた場合に生じる中立面(NP)は、その物体の中心に形成される。したがって、駆動回路部(DC)を隔ててその上下が互いに同一な厚さ(d1、d2)を有し、最大限同一な物性を有する構成に配置すれば、有機発光表示装置101にベンディングモーメントが加えられて生じる中立面(NP)が駆動回路部(DC)を通過するようになる。
【0053】
一方、駆動回路部(DC)内での薄膜トランジスタ10、20(図5に図示)の位置や有機発光素子70の厚さ、画素定義膜190(図6に図示)の厚さ、そしてバリア膜120の厚さは、当該技術分野の従事者が多様に変形実施することができる。したがって、有機発光表示装置101の種類ごとに、薄膜トランジスタ10、20の位置が多少の差があり得る。
【0054】
ここで、中立面(NP)の範囲を、ベンディングモーメントを加えた場合に発生する引張応力や圧縮応力が薄膜トランジスタ10、20に損傷を全く与えないほどの微々たる水準まで広く設定する。これにより、封止薄膜250、第1粘着剤310、および第1保護フィルム410を全て合計した厚さと、可撓性基板111、第2粘着剤320、および第2保護フィルム420を全て合計した厚さとが互いに同一であれば、有機発光表示装置101にベンディングモーメントが加えられた際に生じる中立面(NP)が実質的に薄膜トランジスタ20を通過すると見なすことができる。
【0055】
また、駆動回路部(DC)を隔ててその上下が完全に同一な厚さ(d1、d2)を有さず、多少厚さに差があっても、第1保護フィルム410および第2保護フィルム420が全て付着されたことだけでも、駆動回路部(DC)の薄膜トランジスタ20(図6に図示)が中立面(NP)に隣接して位置するので、薄膜トランジスタ20の損傷を相当抑制することができる。
【0056】
このように、有機発光表示装置101にベンディングモーメントが加えられた際に生じる中立面(NP)が薄膜トランジスタ20を通過すれば、薄膜トランジスタ20に応力が加えられて発生する損傷を防止することができる。
【0057】
また、本発明の一実施例によれば、有機発光表示装置101をより大幅に曲げることができる。具体的に、有機発光表示装置101は、最小曲率半径(R)が3mmを超える範囲内で安定的に曲げられる。しかし、本発明の一実施例による有機発光表示装置101であっても、3mm以下の曲率半径(R)を有するように曲げると、駆動回路部(DC)の薄膜トランジスタ10、20(図5に図示)に損傷が生じる恐れがある。
【0058】
図2において、実線で示した矢印は、ベンディングモーメントが加えられた際に発生する引張応力と圧縮応力を示す。中立面(NP)から遠くなるほど、発生する引張応力または圧縮応力が強くなる。
【0059】
また、第1保護フィルム410および第2保護フィルム420は、各々、10μm〜100μm範囲内の厚さを有する。第1保護フィルム410および第2保護フィルム420の厚さが10μmより薄く形成されると、表示パネル110を安定的に保護することができない。反面、第1保護フィルム410および第2保護フィルム420の厚さが100μmより大きく形成されると、有機発光表示装置101の全体的な厚さが過剰に厚くなる。また、本発明の一実施例による有機発光表示装置101のフレキシブルな特性が低下する恐れがある。
【0060】
また、第1粘着剤310および第2粘着剤320は、各々、第1保護フィルム410および第2保護フィルム420を封止薄膜250および可撓性基板111に結合させる役割を果たす以外に、有機発光表示装置101がベンディングされる際に発生する応力を減少させる役割も共に果たす。第1粘着剤310および第2粘着剤320は相対的に柔らかく、淡い性質を有するので、有機発光表示装置101がベンディングされる際にある程度の滑り現象が起こる。したがって、第1粘着剤310と第2粘着剤320によって滑った分だけ、ベンディングモーメントが加えられた際に発生する引張応力および圧縮応力を減少させることができる。
【0061】
そして、第1粘着剤310および第2粘着剤320は、各々、1μm〜30μm範囲内の厚さを有する。第1粘着剤310および第2粘着剤320の厚さが1μmより薄く形成されると、第1保護フィルム410および第2保護フィルム420を安定的に付着させられない可能性があり、有機発光表示装置101がベンディングされる際に発生する応力を減少させる役割を正しく行うことができなくなる。反面、第1粘着剤310および第2粘着剤320の厚さが30μmより大きく形成されると、有機発光表示装置101の全体的な厚さが不要に厚くなる。また、第1粘着剤310および第2粘着剤320による滑り現象が過度に現れ、返って第1保護フィルム410および第2保護フィルム420を安定的に付着させられない可能性もある。
【0062】
このような構成により、有機発光表示装置101は反復的なベンディングに対する耐久性がほとんど無限大に向上し、曲げられる程度を極大化することができる。
【0063】
以下、図3および図4を参照して、図1の有機発光表示装置101の製造方法について説明する。
【0064】
まず、図3に示したように、ガラス板900上にフレキシブルな可撓性基板111を形成する。可撓性基板111は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、およびポリイミドなどのように耐熱性および耐久性に優れたプラスチックを素材から作られる。
プラスチック素材から作られた可撓性基板111は、熱を加えると曲がったり伸びる性質があるため、その上に各種電極や導電配線などの薄膜パターンを精密に形成し難いという点がある。したがって、可撓性基板111をガラス基板900に接着させた状態で、色々な薄膜パターンを形成する工程を行う。
【0065】
次に、可撓性基板111上にバリア膜120を形成し、その上に駆動回路部(DC)と有機発光素子70を形成する。そして、可撓性基板111上に、有機発光素子70および駆動回路部70をカバーする封止薄膜250を形成して、表示パネル110を完成する。
次に、図4に示したように、封止薄膜250の上に第1粘着剤310を用いて第1保護フィルム410を付着した後、ガラス基板900を可撓性基板111から分離させる。
次に、ガラス基板900が離れ落ちた可撓性基板111に、第2粘着剤320を用いて第2保護フィルム420を付着する。
【0066】
このような製造方法によって有機発光表示装置101は、反復的なベンディングに対する耐久性がほとんど無限大に向上し、曲げられる程度を極大化することができる。
【0067】
以下、図5および図6を参照して、有機発光表示装置101の表示パネル110の内部構造について詳しく説明する。図5は、表示パネル110の画素構造を示した配置図であり、図6は、図5のVI−VI線による表示パネル110の断面を示す。
【0068】
図5および図6に示したように、表示パネル110は、一つの画素ごとに各々形成されたスイッチング薄膜トランジスタ10、駆動薄膜トランジスタ20、蓄電素子80、そして有機発光素子(OLED)70を含む。ここで、スイッチング薄膜トランジスタ10、駆動薄膜トランジスタ20、および蓄電素子80を含む構成を駆動回路部(DC)と言う。
【0069】
そして、表示基板110は、一方向に沿って配置されるゲートライン151、ゲートライン151と絶縁交差するデータライン171、および共通電源ライン172をさらに含む。ここで、一つの画素は、ゲートライン151、データライン171、および共通電源ライン172を境界で定義されることができるが、必ずしもこれに限定されるわけではない。画素は画像を表わす最小単位を言い、表示パネル110は複数の画素を用いて画像を表わす。
【0070】
図5では、一つの画素に二つの薄膜トランジスタ(TFT)と一つの蓄電素子を備えた2Tr−1Cap構造の能動駆動(active matrix, AM)型有機発光表示装置101を示しているが、本発明の一実施例がこれに限定されるわけではない。したがって、有機発光表示装置101は、一つの画素に三つ以上の薄膜トランジスタと二つ以上の蓄電素子を備えることができ、別途の配線がさらに形成されて多様な構造を有するように形成することもできる。
【0071】
有機発光素子70は、画素電極710と、画素電極710上に形成された有機発光層720と、有機発光層720上に形成された共通電極730とを含む。ここで、画素電極710は正孔注入電極の陽(+)極であり、共通電極730は電子注入電極の陰(−)極となる。しかし、本発明の一実施例が必ずしもこれに限定されるわけではなく、有機発光表示装置101の駆動方法により画素電極710が陰極となり、共通電極730が正極となることも可能である。画素電極710および共通電極730から各々、正孔と電子が有機発光層720内部に注入される。注入された正孔と電子が結合したエキシトン(exciton)が励起状態から基底状態へ落ちる時に発光が行われる。
【0072】
また、本発明の一実施例による有機発光表示装置101で、有機発光素子70は封止薄膜250方向へ光を放出する。つまり、有機発光素子70は前面発光型である。ここで、有機発光素子70が封止薄膜250方向へ光を放出するために、画素電極710としては反射型電極が用いられ、共通電極730としては透過型または半透過型電極が用いられる。しかし、本発明の一実施例で、有機発光表示装置101が前面発光型に限定されるわけではない。したがって、有機発光表示装置101は後面発光型または両面発光型であることも可能である。
【0073】
蓄電素子80は、層間絶縁膜160を隔てて配置された一対の蓄電板158、178を含む。ここで、層間絶縁膜160は誘電体となる。蓄電素子80で蓄電された電荷と両蓄電板158、178の間の電圧に応じて蓄電容量が決定される。
【0074】
スイッチング薄膜トランジスタ10は、スイッチング半導体層131、スイッチングゲート電極152、スイッチングソース電極173、およびスイッチングドレーン電極174を含む。駆動薄膜トランジスタ20は、駆動半導体層132、駆動ゲート電極155、駆動ソース電極176、および駆動ドレーン電極177を含む。
【0075】
また、図6では、トップ(top)ゲート構造の薄膜トランジスタを示しているが、本発明の一実施例がこれに限定されるわけではない。したがって、ボトム(bottom)ゲート構造の薄膜トランジスタが用いられることもできる。また、スイッチング半導体層131および駆動半導体層132のうちの一つ以上の半導体層は酸化物半導体層であることもできる。
【0076】
スイッチング薄膜トランジスタ10は、発光させようとする画素を選択するスイッチング素子として使用される。スイッチングゲート電極152はゲートライン151に連結される。スイッチングソース電極173はデータライン171に連結される。スイッチングドレーン電極174はスイッチングソース電極173から離隔配置され、ある一つの蓄電板158に連結される。
【0077】
駆動薄膜トランジスタ20は、選択された画素内の有機発光素子70の有機発光層720を発光させるための駆動電源を画素電極710に印加する。駆動ゲート電極155は、スイッチングドレーン電極174と連結された蓄電板158に連結される。駆動ソース電極176および他の一つの蓄電板178は、各々、共通電源ライン172に連結される。駆動ドレーン電極177は、コンタクト孔(contact hole)を介して有機発光素子70の画素電極710に連結される。
【0078】
このような構造により、スイッチング薄膜トランジスタ10は、ゲートライン151に印加されるゲート電圧に応じて作動してデータライン171に印加されるデータ電圧を、駆動薄膜トランジスタ20に伝達する役割を果たす。共通電源ライン172から駆動薄膜トランジスタ20に印加される共通電圧と、スイッチング薄膜トランジスタ10から伝達されたデータ電圧との差に相当する電圧が蓄電素子80に貯蔵され、蓄電素子80に貯蔵された電圧に対応する電流が、駆動薄膜トランジスタ20を通して有機発光素子70に流れて、有機発光素子70が発光する。
【0079】
有機発光素子70上には、図6に示したように、封止薄膜250が配置されて、有機発光素子70および駆動回路部(DC)を保護する。
【0080】
また、可撓性基板111の真上にはバリア膜120が形成される。バリア膜120は、多様な無機膜および有機膜の中で一つ以上の膜で形成されることができる。このバリア膜120は、水分のように不要な成分が可撓性基板111を透過して有機発光素子70に侵入することを防止する。
【0081】
以下、図2および図7を参照して、本発明の一実施例による実験例と比較例を説明する。実験例は、本発明の一実施例により、表示パネル110の封止薄膜250と可撓性基板111とに、各々、互いに同一な物性および厚さを有する第1保護フィルム410と第2保護フィルム420とを付着した。比較例は、表示パネル110の封止薄膜250にのみ第1保護フィルム410を付着した。
【0082】
図2に示したような方法で、実験例と比較例を各々曲げた後、曲率半径を徐々に減少させて行った。
【0083】
図7に示したように、比較例は、曲率半径が10mmに到達すると、薄膜トランジスタが損傷して、漏洩電流が基準値以上発生した。反面、実験例は、曲率半径が5mmに到達しても薄膜トランジスタが損傷しないことが分かり、曲率半径が3mmに到達してこそ薄膜トランジスタが損傷することが分かった。つまり、実験例が比較例に比べて安定的に曲がれる能力が優れていることが分かる。
【0084】
また、実験例は、曲率半径が5mmとなるように、10000回を反復的に曲げて広げる追加実験を行ったが、10000回を反復的に曲げて広げた後にも薄膜トランジスタが損傷していないことが分かった。
【0085】
このような実験により、本発明の一実施例による有機発光表示装置101は、反復的なベンディングに対する耐久性がほとんど無限大に向上し、曲げられる程度もまた極大化することが分かった。
【0086】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0087】
10、20 薄膜トランジスタ
70 有機発光素子
80 蓄電素子
101 有機発光表示装置
111 可撓性基板
110 表示パネル
120 バリア膜
131 スイッチング半導体層
132 駆動半導体層
151 ゲートライン
152 スイッチングゲート電極
155 駆動ゲート電極
158、178 蓄電板
160 層間絶縁膜
171 データライン
172 電源ライン
173 スイッチングソース電極
174 スイッチングドレーン電極
176 駆動ソース電極
177 ドレーン電極
190 画素定義膜
250 封止薄膜
310 第1粘着剤
320 第2粘着剤
410 第1保護フィルム
420 第2保護フィルム
710 画素電極
720 有機発光層
730 共通電極
900 ガラス基板
DC 駆動回路部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性基板;
前記可撓性基板上に形成され、薄膜トランジスタを含む駆動回路部;
前記可撓性基板上に形成され、前記駆動回路部と連結された有機発光素子;
前記可撓性基板上に形成されて、前記有機発光素子および前記駆動回路部をカバーする封止薄膜;
前記封止薄膜に対向配置された第1保護フィルム;
前記可撓性基板に対向配置された第2保護フィルム;
前記封止薄膜と前記第1保護フィルムの間に配置された第1粘着剤;および、
前記可撓性基板と前記第2保護フィルムの間に配置された第2粘着剤;を含む、有機発光表示装置。
【請求項2】
前記第1の保護フィルムの外側面から前記駆動回路部までの厚さと、前記第2の保護フィルムの外側面から前記駆動回路部までの厚さとが同一である、請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項3】
前記封止薄膜、前記第1粘着剤、および前記第1保護フィルムを全て合計した厚さと、前記可撓性基板、前記第2粘着剤、および前記第2保護フィルムを全て合計した厚さとが互いに同一である、請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項4】
ベンディングモーメントが加えられる際、前記第1保護フィルムと前記第2保護フィルムの間で形成される中立面に前記駆動回路部の前記薄膜トランジスタが位置する、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の有機発光表示装置。
【請求項5】
前記第1保護フィルムと前記第2保護フィルムは互いに同一な物性を有し、前記第1粘着剤と前記第2粘着剤は互いに同一な物性を有する、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の有機発光表示装置。
【請求項6】
前記第1保護フィルムおよび前記第2保護フィルムは、各々、10μm〜100μm範囲内の厚さを有する、請求項5に記載の有機発光表示装置。
【請求項7】
前記第1粘着剤および前記第2粘着剤は、各々、1μm〜30μm範囲内の厚さを有する、請求項5に記載の有機発光表示装置。
【請求項8】
前記第1保護フィルムおよび前記第2保護フィルムのうちの少なくともいずれかは偏光機能を有する、請求項5に記載の有機発光表示装置。
【請求項9】
曲率半径が3mmより大きくて10mmより小さい範囲内で曲がれる、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の有機発光表示装置。
【請求項10】
前記可撓性基板はプラスチック素材からなる、請求項9に記載の有機発光表示装置。
【請求項11】
前記第1保護フィルムおよび前記第2保護フィルムは、フレキシブルなプラスチック素材からなる、請求項9に記載の有機発光表示装置。
【請求項12】
ガラス基板上に可撓性基板を形成する段階;
前記可撓性基板上に、薄膜トランジスタを含む駆動回路部と、前記駆動回路部と連結された有機発光素子とを形成する段階;
前記可撓性基板上に、前記有機発光素子、および前記駆動回路部をカバーする封止薄膜を形成する段階;
前記封止薄膜に、第1粘着剤を用いて第1保護フィルムを付着する段階;
前記ガラス基板を前記可撓性基板から分離させる段階;および、
前記可撓性基板に、第2粘着剤を用いて第2保護フィルムを付着する段階;を含む有機発光表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1保護フィルムの外側面から前記駆動回路部までの厚さと、前記第2保護フィルムの外側面から前記駆動回路部までの厚さとが同一である、請求項12に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記封止薄膜、前記第1粘着剤、および前記第1保護フィルムを全て合計した厚さと、前記可撓性基板、前記第2粘着剤、および前記第2保護フィルムを全て合計した厚さとが互いに同一である、請求項12に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項15】
ベンディングモーメントが加えられる際、前記第1保護フィルムと前記第2保護フィルムの間で形成される中立面に前記駆動回路部の薄膜トランジスタを位置させる、請求項12〜14のうちのいずれか一項に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記第1保護フィルムと前記第2保護フィルムは互いに同一な物性を有し、前記第1粘着剤と前記第2粘着剤は互いに同一な物性を有する、請求項12〜14のうちのいずれか一項に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記第1保護フィルムおよび前記第2保護フィルムは、各々、10μm〜100μm範囲内の厚さを有する、請求項16に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項18】
前記第1粘着剤および前記第2粘着剤は、各々、1μm〜30μm範囲内の厚さを有する、請求項16に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項19】
前記第1保護フィルムおよび前記第2保護フィルムのうちの少なくともいずれかは偏光機能を有する、請求項16に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項20】
曲率半径が3mmより大きくて10mmより小さい範囲内で曲がれる、請求項12〜14のうちのいずれか一項に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項21】
前記可撓性基板はプラスチック素材からなる、請求項20に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項22】
記第1保護フィルムおよび前記第2保護フィルムは、フレキシブルなプラスチック素材からなる、請求項20に記載の有機発光表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−282966(P2010−282966A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126218(P2010−126218)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【Fターム(参考)】