説明

有機発光装置向けの架橋可能な正孔輸送物質

有機発光装置向けの正孔輸送物質の作製に有用な架橋可能な化合物、該架橋可能な化合物から作製された正孔輸送層、および該正孔輸送層を含む発光装置。本発明は、正孔輸送物質として、および発光装置内での正孔輸送層の作製に有用である化合物を提供する。本発明は、多層発光装置に有用な二重層正孔輸送構造を提供する。本発明は、多層発光装置に有用な、一体化された正孔注入・正孔輸送層を提供する。本発明は、一つまたは複数の本発明の架橋可能な化合物から作られた正孔輸送層を含む発光装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
有機発光ダイオードおよび高分子発光ダイオード(LED)は、それらが持つフラットパネル・ディスプレイ用の発光要素として、および全般照明用白色光源としての潜在的応用性から、盛んに研究が進められているテーマである。一般的に、LEDは正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を有する多層構造を含み、正孔および電子の両方の注入および輸送のバランスを取っている。正孔および電子は、相対する側の電極から発光層に注入され、再結合して励起子を形成する。励起子の放射減衰の結果として光が放射される。
【0002】
低分子を基本とするLEDでは、積層(layer−by−layer)真空蒸着を用いたこの多層方式がそっくりそのまま採用されることが多い。高分子を基本としたLEDでは、フィルムは溶液処理を用いたスピンコーティング技術によって形成できる。
【0003】
スピンコーティング技術によって作製される高分子を基本とするLEDにはいくつかの利点がある。スピンコーティング技術は、製造コストを大幅に減らすことができ、更に広い面積をコーティングできる。これに加えて、蒸着低分子材料の代わりにスピンコーティングした正孔輸送高分子を用いると、ガラス転移温度を上げられる可能性があり、これにより装置の熱および形態的安定性を改善できる。
【0004】
スピンコーティングを用いた多層装置の作製に於ける課題は、最初にスピンコーティングした層が、第二層をスピンコーティングする時に用いられる溶媒によって再溶解し、悪影響を受ける可能性があることである。従って、最初にコーティングした層は、第二層を形成する際に用いる溶媒に対し耐性でなければならない。
【0005】
正孔輸送層(HTL)は、高効率の多層高分子発光ダイオード(PLED)の作製に重要な役割を果たす。HTLは、酸化インジウムスズ(ITO)アノードから発光層(EML)内への正孔注入を高めることができ、結果としてバランスの取れた電荷の注入/輸送を実現し、装置の性能を高める。最初に正孔輸送物質(HTM)がアノードに適用され、続いて順次積層してLEDを作製することが多い。それ故に正孔輸送物質は、多層PLEDにHTLとして使用する場合、二番目の積層スピンコーティングが可能な溶媒耐性を有している必要がある。
【0006】
スピンコーティング工程中に起こる界面混合を克服するための様々な方法;第二層適用前の熱または光化学的な架橋結合;ITO上への自己集合層の形成;および極性溶媒と非極性溶媒間の溶解度差の利用、が報告されている。しかしながら、これらの方法の多くは、複雑で効率の低い高分子合成を含み、製造される製品は一貫性を欠き、品質に再現性がない。それゆえに、直接インサイチュー(in situ)架橋結合ができ、同時に耐溶媒性であるネットワークを生成できる高純度かつ低分子HTMが必要となる。
【0007】
最近、PLEDの効率は、高分子ホストに一重項および三重項励起の両方を捕獲するリン光発光性ドーパントを組み入れることによって大幅に向上している。この場合、ホスト内に形成された一重項および三重項励起は共に、Forster and Dexterエネルギー転移プロセスによってリン光発光性ドーパントに移すことができ、装置は高い内部量子効率を手に入れることができる。高エネルギーリン光体を含む青色−または緑色−発光電気リン光PLEDでは、三重項ドーパントからホストへのバックエネルギートランスファー(back energy transfer)を回避するために、リン光発光体よりも高い三重項エネルギーを持つ、バンドギャップの大きなホスト物質が必要となる。これらのギャップの大きなホストはHOMOエネルギーレベルが高いため(通常約−5.8eVより大きい)、装置構成にHTLを一つだけを使用した場合、ITOからMELへの効率的な正孔注入を達成するのは難しい。これらの問題を軽減するには、正孔注入および電荷の閉じ込めを向上させ、PLED装置の効率を改善するための、縦続的な正孔注入(cascade hole−injection)および輸送を提供する多段階的な電気的プロファイルを有する複数のHTLを必要とする。
【0008】
同じ考え方は、QDのHOMOエネルギーレベルが高いために(通常は約−6.0eVより大きい)正孔注入は非常に非能率的である量子ドット(QD)OLEDにも応用できる。
【0009】
PLED内での多HTL構造の実現には、多層構造が溶媒耐性および適合性を有するHTLを含むことが好ましいが故の課題も存在する。最近、光架橋結合可能な、オキセタン官能性を有するトリアリールアミン誘導体の連続的な積層蒸着を通した縦続正孔注入が実証された。ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−alt−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン)(TFB)、およびエタノール溶解性PVK塩であるPVK−SOLiのような他高分子も、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):(ポリスチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)とEML間の第2HTLとして機能するのに好適な物質と報告されている。しかしながら、上記の高分子は、変換工程(例えばPPV)中に反応性の副産物を生ずるか、または装置の長期安定性にとって有害である金属イオン(例えばPVK−SOLi)を有する。これらの問題に加えて、青色励起を制限できる十分な高さの三重項エネルギーを有する上記物質が存在しないことが、それらの電気リン光発光装置での使用をさらに限定的にしている。それ故に、正孔輸送物質が、溶媒耐性および適合性だけでなく、高い三重項エネルギーも有している、PLED中の多HTL構造が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
LED装置および正孔輸送物質の開発の進歩にもかかわらず、溶媒耐性および適合性を持つ化合物、正孔注入および電荷封じ込めが向上した正孔輸送構造、ならびに長期安定性と高い効率を持つLED装置が求められている。本発明は、これらの要求を満たし、さらに関連する利点を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
一つの局面では、本発明は、正孔輸送物質として、および発光装置内での正孔輸送層の作製に有用である化合物を提供する。
【0012】
一つの態様では、本発明は:
(a)トリアリールアミン部分を含む共役π電子系;および
(b)二つ以上の架橋可能な部分;
を含む化合物であって、
アノード酸化プロセスにおいて可逆的酸化が可能で、安定なカチオンラジカルを形成する化合物を提供する。
【0013】
一つの態様では、本発明は次式を有する化合物を提供する:
【0014】
【化4】

式中RはArまたはAr−(L−Lであり;
はArまたはAr−(L−Lであり;
はArまたはAr−(L−Lであり;
Ar、Ar、Ar、およびArは、非置換アリール基および置換アリール基から独立して選択され;
、L、およびLは、LをAr、Ar、およびArとそれぞれ共有結合するリンカー部分であり;
m、n、o、およびpは、0または1から独立して選択され;
Lは架橋可能な部分である化合物であって、二つ以上のL部分を有する。
【0015】
一つの態様では、本発明は次式を有する化合物を提供する:
【0016】
【化5】

式中R1aは、Ar1aまたはAr1a−(L1a−Lであり;
1bは、Ar1bまたはAr1b−(L1b−Lであり;
2aは、Ar2aまたはAr2ba−(L2a−Lであり;
2bは、Ar2bまたはAr2b−(L2b−Lであり;
3aは、Ar3aまたはAr3a−(L3a−Lであり;
3bは、Ar3bまたはAr3b−(L3b−Lであり;
Ar1a、Ar1b、Ar2a、Ar2b、Ar3a、およびAr3bは、非置換アリール基および置換アリール基から独立して選択され;
1a、L1b、L2a、L2b、L3a、およびL3bは、LをAr1a、Ar1b、Ar2a、Ar2b、Ar3a、およびAr3bとそれぞれ共有結合するリンカー部分であり;
m、n、o、およびpは、0または1から独立して選択され;
Lは、架橋可能な部分である化合物であって、二つ以上のL基を有する。
【0017】
一つの態様では、本発明は次式を有する化合物を提供する:
【0018】
【化6】

式中RはArまたはAr−(L−Lであり;
はArまたはAr−(L−Lであり;
はArまたはAr−(L−Lであり;
Ar、Ar、およびArは、非置換アリール基および置換アリール基から独立して選択され;
、L、およびLは、LをAr、Ar、およびArとそれぞれ共有結合するリンカー部分であり;
m、n、o、およびpは、0または1から独立して選択され;
Lは架橋可能な部分である化合物であって、二つ以上のL基を有する。
【0019】
別の局面では、本発明は、多層発光装置に有用な正孔輸送層を提供する。
【0020】
一つの態様では、本発明の正孔輸送層は、式Iを有する架橋可能な化合物に由来する架橋された正孔輸送物質を含む。
【0021】
一つの態様では、本発明の正孔輸送層は、式IIを有する架橋可能な化合物に由来する架橋された正孔輸送物質を含む。
【0022】
一つの態様では、本発明の正孔輸送層は、式IIIを有する架橋可能な化合物に由来する正孔輸送物質を含む。
【0023】
別の局面では、本発明は、多層発光装置に有用な二重層正孔輸送構造を提供する。
【0024】
一つの態様では、正孔輸送二重層は:
(a)架橋された正孔輸送物質を含み、かつ第一固体状態イオン化ポテンシャルを有する第一層;
(b)架橋された正孔輸送物質を含み、かつ第二固体状態イオン化ポテンシャルを有する第二層を含み、
前記第一固体状態イオン化ポテンシャルは、前記第二固体状態イオン化ポテンシャルよりも小さい。
【0025】
前記第一または第二層の架橋された正孔輸送物質は、式I、II、またはIIIを有する本発明の架橋可能な化合物から誘導できる。
【0026】
一つの局面では、本発明は、多層発光装置に有用な、一体化された正孔注入・正孔輸送層を提供する。
【0027】
一つの態様では、一体型正孔注入・正孔輸送層は、
(a)正孔注入層、および
(b)正孔輸送層を含み、このとき正孔輸送層は架橋された正孔輸送物質を含み、該架橋された正孔輸送物質は、架橋化によって正孔注入層の表面上に形成される。
【0028】
架橋された正孔輸送物質は、式I、II、またはIIIを有する本発明の架橋可能な化合物から誘導できる。
【0029】
別の局面では、本発明は、一つまたは複数の本発明の架橋可能な化合物から作られた正孔輸送層を含む発光装置を提供する。
【0030】
一つの態様では、装置は、
(a)アノード;
(b)カソード;
(c)アノードとカソードとの中間にある発光層;および
(d)アノードと発光層との中間にあって、式I、II、またはIIIを有する架橋可能な化合物に由来する架橋正孔輸送物質を含む正孔輸送層、を含む。
【0031】
一つの態様では、装置は、
(a)アノード;
(b)カソード;
(c)アノードとカソードとの中間にある発光層;および
(d)アノードと発光層との中間にある正孔輸送層を含み:
前記正孔輸送層は:
(i)架橋された正孔輸送物質を含み、かつ第一固体状態イオン化ポテンシャルを有する第一層;
(ii)架橋された正孔輸送物質を含み、第二固体状態イオン化ポテンシャルを有する第二層を含み、前記第一固体状態イオン化ポテンシャルは、前記第二固体状態イオン化ポテンシャルより小さい二重層構造を含む。
【0032】
第一層または第二層の架橋された正孔輸送物質は、式I、II、またはIIIを有する本発明の架橋可能化合物から誘導できる。
【0033】
一つの態様では、装置は、
(a)アノード;
(b)カソード;
(c)アノードとカソードとの中間にある発光層;および
(d)アノードと発光層との中間にある一体型正孔注入・正孔輸送層を含み、前記一体型正孔注入・輸送層は、正孔注入層および正孔輸送層を含み、該正孔輸送層は式I、II、またはIIIを有する架橋可能な化合物に由来する架橋された正孔輸送物質を含む。
【0034】
前記の局面および本発明に付随する利点の多くは、以下の詳細な説明を参照することより容易に認識されるが、添付の図面を合わせて考慮すれば一層理解が進むだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
発明の詳細な説明
本発明は、発光装置向けの正孔輸送層の作製にとって有用な化合物、該化合物から作製された発光装置向けの正孔輸送層、該正孔輸送層を含む発光装置、および該化合物、層、および装置を作製するための方法を提供する。本発明の化合物は、架橋可能な化合物であり、かつ架橋することによって安定および効率的な正孔輸送層を形成する。
【0036】
高性能な有機または高分子発光装置は、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を有する多層構成を持ち、正孔および電子両方の注入と輸送のバランスを取る。正孔輸送層を形成するために、低分子正孔物質は真空下で昇華させてアノード上に蒸着させることができる。あるいは、正孔輸送物質は、溶液プロセスを介して任意のアノード上にスピンコーティングできる。スピンコーティング技術は、製造コストを大幅に低減でき、大面積のコーティングを可能にする。これに加えて、蒸着した低分子物質に代わってスピンコーティングした正孔輸送高分子を用いることは、場合によってはガラス転移温度を上げ、それに伴って装置の熱および形態安定性を向上させることができる。本発明は、より低い固体状態イオン化ポテンシャルを有するアノードまたは正孔輸送層(HTL)上にスピンコーティングでき、かつインサイチュー架橋反応を受けて、発光装置に有用なHTLとして溶媒耐性ネットワークを生成する架橋可能な化合物を提供する。
【0037】
有機発光装置の基本原理は、一方の電極からの電子の注入、およびもう一方の電極からの正孔の注入を含む。逆の電荷を持つ担体を捕獲または再結合するまで電子は電子輸送層(ETL)を通り移動し、一方正孔はHTLを通り移動し、続いて励起こした電子−正孔状態は放射減衰するか励起こされる。このプロセス中に放射される光の色は、励起のバンドギャプによって決まる。
【0038】
高い効率と長い寿命を得るためには、装置は次の特徴を備えなければならない:金属電極と有機物質間の境界面の注入バリアーが低く、可能な限り多くの電荷がシステム内に入れること;電子および正孔の密度および移動性のバランスがとれており、例えば正孔の多くが、電子によって捕獲される前にカソードに到達してシステムの効率を下げることがないこと;再結合ゾーンが金属カソードから離れており、再結合前に正孔がカソードによって消滅させられないこと;および全ての有機物質の熱安定性が高く、製造条件に耐えられること。
【0039】
電子および性能の密度および移動性のバランスを得るためには、陽電荷の注入速度が負電荷の注入速度に等しい時は、電子輸送層(ETL)はカソードの仕事関数に近い電子親和性(EA)を有していなければならず、かつ正孔輸送物質(HTM)のイオン化ポテンシャル(IP)は、アノード、通常酸化インジウムスズ(ITO)の仕事関数に適合していなければならない。
【0040】
正孔輸送層の役割は、アノードから有機層内への正孔注入、正孔の受け取り、および注入された正孔の発光層への輸送を促進することであるから、正孔輸送物質は、アノードの仕事関数に近いか、またはHOMOに適合する、より低い固体状態イオン化ポテンシャルを有し、正孔の注入を支援しなければならない。これに加えて、高い効率の装置を実現するためには、正孔輸送層は電子が発光層からアノードに逸出することも阻止しなければならず、そのためには正孔輸送物質は、電子阻止を補助する低い電子親和性または高いLUMOを有する必要がある。
【0041】
略語
以下は、本明細書に使用される略語とそれらの定義のリストである。
AFM 原子間力顕微鏡
BNPD ビ−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン
BNPD−BVB ビ−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン−ビス(ビニルベンジルエーテル)(2−NPD)
BTPD ビ−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン
BTPD−BVB ビ−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン−ビス(ビニルベンジルエーテル)(2−TPD)
Bu−TCTA 4,4’,4’’−トリス(N−3−n−ブチル−カルバゾール)トリフェニルアミン
Bu−TCTA−PFCB 4,4’,4’’−トリス(N−3−n−ブチル−カルバゾール)トリフェニルアミン−ペルフルオロシクロブタン
Bu−TCTA−TTFV 4,4’,4’’−トリス(N−3−n−ブチル−カルバゾール)トリフェニルアミン−トリス(トリフルオロビニルエーテル)
BVB ビス(ビニルベンジル)
CV サイクリックボルタンメトリー
DCE 1,2−ジクロロエタン
DMAP 4−(ジメチルアミノ)ピリジン
DMF N’N−ジメチルホルムアミド
DSC 示差走査熱量計
EDC 1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−塩酸エチルカルボジイミド
EIL 電子注入層
EL エレクトロルミネセンス
EML 発光層
ETL 電子輸送層
FIr6 ビス(4’,6’−ジフルオロフェニルピリジナート)テトラキス(1−ピラゾリル)母ラート
HIL 正孔注入層
HOMO 最高被占有分子軌道
HTL 正孔輸送層
HTM 正孔輸送物質
IPN 相互貫入ネットワーク
ITO 酸化インジウムスズ
LE 発光高率
LED 発光ダイオード
LOMO 最低被占有分子軌道
NIS N−ヨードスクシニミド
NPD N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン
NPD−BVB N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン−ビス(ビニルベンジルエーテル)(1−NPD)
OLED 有機発光ダイオード
PE 電力高率
PEDOT:PSS ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):(ポリスチレンスルホン酸)
PFBT5 ポリ[2,7−(9,9’−ジヘキシルフルオレン)−コ−4,7−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール)]
PFCB ペルフルオロシクロブタン
PL 光ルミネセンス
PLED 高分子発光ダイオード
PPV ポリ(p−フェニレンビニレン)
PS ポリスチレン
PS−TPD−TFV ポリスチレン−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−(1,1’)−ビフェニル−4,4’−ジアミン−トリフルオロ−ビニルエーテル
PS−TPD−PFCB ポリスチレン−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−(1,1’)−ビフェニル−4,4’−ジアミン−ペルフルオロシクロブタン
PVK ポリ(N−ビニルカルバゾール)
RMS 二乗平均平方根
TBAF テトラブチルアンモニウムフロリド
TBDMS t−ブチルジメチルシリルトリフラート
TCTA トリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン
TCTA−BVB トリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン−ビス(ビニルベンジルエーテル)
TCTA−PFCB トリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン−ペルフルオロシクロブタン
TCTA−TTFV トリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン−トリス(トリフルオロビニルエーテル)
TFB ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−alt−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン)
TFV トリフルオロビニルエーテル
TGA 熱重量分析
TPBI 1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン
TPD N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−(1,1’)−ビフェニル−4,4’−ジアミン
TPD−BVB N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−(1,1’)−ビフェニル−4,4’−ジアミン−ビス(ビニルベンジルエーテル)(1−TPD)
TTFV トリス(トリフルオロビニルエーテル)
VB ビニルベンジルエーテル
WOLED 白色有機発光ダイオード
XPS X線光電子分光法
一つの局面では、本発明は、正孔輸送物質として、かつ発光装置の正孔輸送層の作製にとって有用である化合物を提供する。
【0042】
一つの態様では、本発明の化合物は、トリアリールアミン部分および二つ以上の架橋可能な部分を含む共役π電子系を有する。トリアリールアミン部分は、化合物に正孔輸送特性を付与し、架橋可能な部分は、正孔輸送層として有用である架橋された物質の形成を可能にする。本発明の化合物は、エレクトロルミネセント条件下において可逆的アノード酸化して安定なカチオンラジカルを形成できる。
【0043】
一つの態様では、化合物は、該化合物に由来する層を含むエレクトロルミネセント装置のアノード(例えばITO)の仕事関数に近い固体状態イオン化ポテンシャルを有する。一つの態様では、化合物の固体状態イオン化ポテンシャルは約4.7eVより大きい。一つの態様では、化合物の固体状態イオン化ポテンシャルは約5.0eVより大きい。一つの態様では、化合物の固体状態イオン化ポテンシャルは約5.2eVより大きい。一つの態様では、化合物の固体状態イオン化ポテンシャルは約5.5eVより大きい。一つの態様では、化合物の固体状態イオン化ポテンシャルは約5.7eVより大きい。一つの態様では、化合物の固体状態イオン化ポテンシャルは約5.9eVより大きい。
【0044】
特定の態様では、本発明の化合物は、一つより多い(例えば二、三、または四つ)トリアリールアミン部分を含む。代表的なトリアリールアミン部分としては、トリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン(TCTA)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−(1,1’)−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)、ビ−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−(1,1’)−ビフェニル−4,4’−ジアミン(BTPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)、およびビ−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(BNPD)が挙げられる。
【0045】
TCTA、Bu−TCTA、TPD、NPD,BTPD、およびBNPDのような代表的なトリアリールアミン部分の合成は、実施例1および2に記載され、図6〜10に描かれている。
【0046】
本発明の化合物の架橋可能な部分は、本発明の化合物の架橋および有用な正孔輸送物質の形成に好適であればどのような架橋可能な部分でもよい。一つの態様では、架橋可能な部分は、熱架橋可能基である。代表的な熱架橋可能な部分としては、トリフルオロビニルエーテル(TFV)成分(例えばトリフルオロビニルフェニルエーテル)およびビニルベンジルエーテル(VB)成分が挙げられる。一つの態様では、架橋可能基は、光化学的架橋可能な部分である。代表的な光化学的な架橋可能な部分としては、ケイ皮酸およびオキセタン成分が挙げられる。
【0047】
架橋可能基は、リンカー部分を通してトリアリールアミン部分に共有結合する。リンカー部分は、トリアリール成分に架橋可能な部分を共有結合できる、一つもしくは複数の原子、または原子の群でよい。リンカー部分は、例えばエーテルおよび/またはエステル結合を含む、様々なタイプの結合を含むことができる。
【0048】
代表的なリンカー部分としては、置換アルキル基または非置換アルキル基、置換および非置換アリール基、ならびに置換および非置換ヘテロアリール基が挙げられる。アリール基は、直鎖または枝分かれしたC1〜C12基を含んでよい。いくつかの態様では、アルキル基の炭素原子は、例えば窒素、酸素、およびイオウ原子を含む他の原子で置換できる。一つの態様では、リンカーはメチレン基である。一つの態様では、リンカーはジメチレンエーテル基(−CH−O−CH−)である。一つの態様では、リンカーは−CH−O−C(=O)−である。
【0049】
一つの態様では、本発明は式Iを有する化合物を提供する:
【0050】
【化7】

式中のRはArまたはAr−(L−Lであり;RはArまたはAr−(L−Lであり;かつRはArまたはAr−(L−Lであり;
Ar、Ar、Ar、およびArは、非置換アリール基および置換アリール基から独立して選択され;
、L、およびLは、LをAr、Ar、およびArとそれぞれ共有結合するリンカー部分であり;
m、n、o、およびpは、0または1から独立して選択され;
Lは架橋可能な部分である化合物であって、L基を二つ以上含む。
【0051】
一つの態様では、本発明は、式IIを有する化合物を提供する:
【0052】
【化8】

式中のR1aは、Ar1aまたはAr1a−(L1a−Lであり;
1bは、Ar1bまたはAr1b−(L1b−Lであり;
2aは、Ar2aまたはAr2ba−(L2a−Lであり;
2bは、Ar2bまたはAr2b−(L2b−Lであり;
3aは、Ar3aまたはAr3a−(L3a−Lであり;
3bは、Ar3bまたはAr3b−(L3b−Lであり;
Ar1a、Ar1b、Ar2a、Ar2b、Ar3a、およびAr3bは、非置換アリール基および置換アリール基から独立して選択され;
1a、L1b、L2a、L2b、L3a、およびL3bは、LをAr1a、Ar1b、Ar2a、Ar2b、Ar3a、およびAr3bとそれぞれ共有結合するリンカー部分であり;
m、n、o、およびpは、0または1から独立して選択され;
Lは、架橋可能な部分である化合物であって、二つ以上のL基を有する。
【0053】
一つの態様では、本発明は式IIIを有する化合物を提供する:
【0054】
【化9】

式中RはArまたはAr−(L−Lであり;
はArまたはAr−(L−Lであり;
はArまたはAr−(L−Lであり;
Ar、Ar、およびArは、非置換アリール基および置換アリール基から独立して選択され;
、L、およびLは、LをAr、Ar、およびArとそれぞれ共有結合するリンカー部分であり;
m、n、o、およびpは、0または1から独立して選択され;
Lは架橋可能な部分である化合物であって、二つ以上のL基を有する化合物を提供する。
【0055】
上記の態様に関しては、Ar、Ar、およびArに好適なアリール基としては、置換または非置換のフェニル、置換または非置換のナフチル、および置換または非置換のカルバゾール基が挙げられる。代表的なアリール基としては1−ナフチル、フェニル、4−メチルフェニル、および3−n−ブチル−9−カルバゾールが挙げられる。
【0056】
上記態様では、架橋可能基は、リンカー部分を通してトリアリールアミン部分と共有結合する。好適なリンカー部分としては、上記のリンカー部分が挙げられる。
【0057】
特定の態様では、架橋可能な部分Lは、成分−Ar−(L−、Ar−(L−L、Ar−(L−L、またはAr−(L−を通してトリアリールアミン部分に結合し、このときL、L、L、およびLは任意選択的である。L、L、L、およびLは、例えばエーテル、エステル、アミド、カルバマート、カルボナート、スルホンアミド、およびスルホナート基、ならびにこれらの基の組合せを含む様々な基を含むことができる。L、L、L、およびL中には、置換または非置換のフェニル、置換または非置換のナフチル、および置換または非置換カルバゾール基のような、一つまたは複数の芳香族成分が存在してよい。一つの態様では、L、L、L、およびLはフェニル部分を含む。一つの態様では、L、L、L、およびLはフェニルおよびカルバゾール成分の両方を含む。一つの態様では、L、L、L、およびLは、フェニルおよび3−n−ブチル−9−カルバゾール成分の両方を含む。
【0058】
本発明の代表的な架橋可能な化合物(TCTA誘導体)の評価
多層発光装置の正孔輸送層の役割は、アノードから有機または高分子層への正孔注入、正孔の受け取り、および注入された正孔の発光層への輸送を促進することである。正孔輸送は、中性分子からそのラジカルカチオンへの電子の輸送を含む。正孔輸送分子は、その性質から電子受容体であり、かつカチオンラジカルを容易に形成するように低いイオン化ポテンシャルを有していなければならない。それ故に、正孔輸送物質として効果的であるためには、化合物はアノード、伝統的にはITOの仕事関数に近い固体状態イオン化ポテンシャルを有していなければならない。
【0059】
誘導化のイオン化ポテンシャルに及ぼす影響を評価するために、DCE中のTCTA誘導体のイオン化ポテンシャルをサイクリックボルタンメトリー(CV)によって決定した。全ての化合物は、可逆的な酸化的挙動を示し、開始ポテンシャルは約0.55Vで、これはTCTAの開始ポテンシャルと同等である。このことは、TFVまたはVB基によるTCTAの誘導化は、TCTAの電子特性に影響しないことを示す。TCTA誘導体のHOMOエネルギーレベルは、TCTAに報告されたデータによれば、−5.7eVとされた。Y.Kuwabara et al.,Adv.Mater.1994,6,677。
【0060】
正孔輸送物質の熱安定性は、LEDの性能にとって重要である。本発明では、化合物は高温でインサイチュー架橋を受けていることから、正孔輸送層として架橋されたネットワークを形成する上でこれら物質が熱安定性であることが不可欠である。
【0061】
正孔輸送物質として有効なもとになるためには、本発明のTCTA誘導体は、架橋可能であり、熱的および形態的に安定なフィルムを形成できなければならない。TCTA誘導値の熱安定性を決定し、結果を図13に示した。全てのTCTA誘導体は、高い熱安定性を示し、TGAによって最高300℃までに観察された重量損失は約5%に過ぎず、それらが熱劣化に対して安定であることを示した(図13)。三種類の化合物のうちTCTA−BVBが最も高い安定性を示した。
【0062】
別の局面では、本発明は多層PLEDSに有用な正孔輸送層を提供する。本発明の正孔輸送層は、一つまたは複数の、本明細書に記載した本発明の架橋可能化合物を架橋することによって形成される。
【0063】
一つの態様では、本発明の正孔輸送層は、上記の式Iを有する架橋可能化合物に由来する架橋された物質である正孔輸送物質を含む。
【0064】
一つの態様では、本発明の正孔輸送層は、上記の式IIを有する架橋可能化合物に由来する架橋された物質である正孔輸送物質を含む。
【0065】
一つの態様では、本発明の正孔輸送層は、上記の式IIIを有する架橋可能化合物に由来する架橋された物質である正孔輸送物質を含む。
【0066】
本発明の化合物は、インサイチュー架橋を受けて、正孔輸送層の役割を果たす架橋されたネットワークまたはフィルムを提供する。架橋は、多層装置製造中のスピンコーティングの間に起こるだろう。例えば、本発明の化合物は、それらの1,1−ジクロロエタン(DCE)溶液から、ITOのような基体上にスピンコーティングできる。硬化後、化合物は、正孔輸送能力を有する架橋された物質を形成する。
【0067】
代表的な正孔輸送層:TCTA誘導体
TCTA誘導体に関する最適な架橋条件は、示差走査熱量測定(DSC)により、TCTA誘導体を350℃まで、10℃/分で加熱して決定した(図15)。加熱するとTCTA−TTFVは88℃のガラス転移温度(T)を示すが、一方Bu−TCTA−TTFVは柔軟なアルキル鎖が在るためにより低い55℃のTを示す。TCTA−BVBのTは、77℃と測定された。Tg’より高く更に加熱すると、両TFV含有TCTAは約195℃の発熱開始温度(この温度はトリフルオロビニルエーテルに典型な二量体形成温度である)と、更に252℃に別の発熱ピークを示す。しかしながらこの温度では、それらのTGA測定から明らかなように、両化合物は既に分解を始めている。TCTA−BVBは、はるかに低い温度(150℃)で重合を開始し、スチレンの自己重合メカニズムと一致する170℃に発熱ピークを持つ。迅速かつ高収量の架橋プロセスを保証するために、TFV含有TCTAの閉環重合を不活性雰囲気中で、225℃で30分間実施し、一方TCTA−BVBの重合は180℃で30分間実施し、TCTAネットワークを形成した。TCTA−TTFVおよびBu−TCTA−TTFVの架橋されたものは、TCTA−PFCBおよびBu−TCTA−PFCBと呼ばれる。
【0068】
約20nmの厚みを持つTCTA誘導体のフィルムは、それらのDCE溶液からガラス基体上にスピンコーティングされる。熱硬化した後、架橋されたフィルムの溶解性を、発光高分子のスピンコーティングに用いられる一般的な溶媒であるクロロベンゼン、DCE、トルエン、クロロホルムのような各種有機溶媒で洗浄する前後について、それらのUV−Visスペクトルを測定して調べた。UV−Visスペクトルが変化しないことは、それらが多層コーティングに適した溶媒耐性を有していること、およびHTLとしてPLEDに組み入れることができることを示す。
【0069】
未処理のITO基体上のTFV−官能化TCTAフィルムの形状に及ぼす結晶化の影響についても調べた。硬化前、30×30μmの走査面積について行ったAFMから、平滑かつ特徴のないフィルムが観察され、RMS粗度は、TCTA−TTFVおよびBu−TCTA−TTFVフィルムそれぞれについて0.63nmおよび0.55nmであった。TCTA結晶化温度(190℃)より高い温度である225℃で30分間硬化した後、熱アニールがITO表面上にTCTAの結晶化/凝集化を誘導することが光学顕微鏡下で明瞭に認めることができた。これらフィルムの表面は非常に粗くなり、図16に示すようにTCTA−PFCBおよびBu−TCTA−PFCBの両方について尖点形態が観察された。
【0070】
代表的な正孔輸送層:TPD、NPD、BTPD、およびBNPD誘導体
TPD(N,N’−ジ−トリル−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン)およびα−NPD(N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン)のようなビフェニルジアミンを基本とするHTMは、その高い電荷担体移動性ならびに昇華および調製の容易さから、広範囲の実務に頻繁に用いられている。しかしながら、それらは、低いガラス転移温度、結晶化しやすさ、および不十分な形態的安定性を含め、有機フィルムの長期安定性に関係して不利益をもたらすこともある。更には、精緻かつ時間のかかる真空蒸着法は、製造コストを比較的高くするのが常である。本発明で提供されるTPDまたはNPSを含む架橋可能な化合物は、これらの問題を軽減するのに用いることができる。
【0071】
代表的な化合物である1−TPD、1−NPD、2−TPD、および2−NPDは、THF、ジクロロメタン、およびクロロホルムのような一般的な有機溶媒に極めて溶解性である。これらの全てをジクロロエタンに溶解し(0.5重量%)、次にアノードITO基体上にスピンコーティング(2000rpm)した。完全に溶媒耐性なフィルムを得るのに必要な、各物質の最低硬化温度を表1に掲載する。溶液から生じた各HTM層は、アルゴン保護下で、対応する温度で30分間硬化および架橋した。
【0072】
表1.正孔輸送物質(HTM)の物理特性
【0073】
【表1】

α分子中のTPDまたはNPD成分の分子量パーセンテージ。は、吸収スペクトルで判定した時に完全な溶媒耐性を獲得する最低硬化温度である。は分解温度であり、5%重量損失時のTGAから決定した。DSCの初回走査は300℃まで加熱され、Tは第二加熱によって決定した。HOMOエネルギーレベルは、真空レベル以下でのフェロセン値−4.8eVを用いて、CVにより計算した。
【0074】
正孔導体/架橋剤の割合を調節して活性正孔輸送含有量を上げること、および絶縁成分を減らすことは、正孔輸送能の最適化にとって重要である。表1に示すように、二種類のVB架橋剤を用いた二種類の結合ジアミン分子から成る2−TPDおよび2−NPDは、二種類の架橋剤を含むが、ジアミン分子は一種類である1−TPDおよび1−NPD(63.6重量%および66.6重量%)に対し、活性化正孔輸送体の含有量(75.3重量%および77.6重量%)を向上させることを目的に設計された。
【0075】
架橋されたフィルムの溶解性は、クロロベンゼンによる洗浄前後のUV−Visスペクトルをモニタリングすることによって調べたが、クロロベンゼンはモノマー前駆物質と発光高分子の両方にとって良好な溶媒である。完全に不溶性である、架橋された1−TPDのフィルムが形成されたが、これは吸収スペクトルが変化しないことで証明された(図17)。各架橋されたフィルムはほぼ透明であり、可視領域では吸収はごく僅かであり、装置内での発光層からの光の損失を減らすことができることは注目に値する。各モノマー前駆物質内にある二種類のVB成分は、ラジカルメカニズムを介して熱重合を受けることから、生じたフィルムは直鎖高分子ではなく、共有結合により架橋結合したネットワークであり、従って効果温度を160℃という低温にしても十分な溶媒耐性を獲得することができるが、この温度はPFCBポリマーに用いられる225℃に比べてはるかに低い。
【0076】
モノマー1−TPDに関するDSCの初回走査において、最大発熱ピークが、スチレンの熱架橋化の結果と思われる150℃付近にあることは、完全な溶媒耐性ネットワークを生じるのに必要な最低硬化温度が160℃であることと良く一致する。第二DSC加熱中に151℃のガラス転移温度が観察された(図18)。
【0077】
HTMの分解温度(T)は、熱重量分析(TGA)によって決定された。生じた架橋されたHTMのネットワークは350〜371℃の範囲の高いTを有した。NPD誘導体は、そのTPD類似体に比べると約10℃安定である。2−TPDおよび2−NPDも、それらの対応するモノマーである1−TPDおよび1−NPDに比べ、それぞれ11℃安定である(表1)。
【0078】
ITO上で架橋された物質の電気化学的特性は、サイクリックボルタンメトリー(CV)によって決定した。典型的な例を、図19に1−TPDについて示す。明らかなように、アノード走査の第一および第二酸化ピークが重複する。他の三種類の物質と同様に架橋された1−TPDのCV曲線は、10回の連続サイクルの後にも変化も分解も示さず、架橋層がITO上にしっかりと付着し、HTMの重要な必要条件である完全に可逆的かつ安定した電気化学特性を備えていることを証明した。これら架橋されたHTMの最高被占有分子軌道(HOMO)値は、CVから推定され、表1に示した。ナフチル基はフェニル基に比べ窒素位置の電子密度を下げることから、1−NPDおよび2−NPDのHOMOは、一般的には1−TPDおよび2−PTDより高い。これらの値は、ITOの仕事関数に非常に近い(酸素プラズマ処理後−5.1eV)。
【0079】
ITO上にスピンコーティングし架橋されたHTMの表面粗度は、AFMによって調べた(図20)。バルク状態での重合には時に物質の収縮が伴い、その結果フィルムに微小な亀裂を生じる。どのサンプルについても、10×10μmの走査面積に関し亀裂またはピンホールがない均一なフィルムが観察され、1−TPD、2−TPD、1−NPD、および2−NPDの二乗平均平方根(RMS)表面粗度はそれぞれ0.91、0.99、0.90、および0.81nmであり、全ての物質が熱架橋処理後にITO上に、RMS粗度が約3nmである未処理のITO基体に比べ比較的平滑なフィルムを形成したことを示した。各物質の架橋フィルムの厚みは、約25〜30nmの範囲内であった。
【0080】
アノードとしてITOを、カソードとして金を有する正孔だけを通す(Hole−only)装置を調製し、HTMの輸送特性の特徴を調べた。電流−電圧図を図21に示す。2−TPDおよび2−NPDは共に、それらの対応する類似物1−TPDおよび1−NPDに比べ低い開始電圧を示し、より高い活性正孔輸送導体含有量がより高い正孔移動性をもたらしている可能性を示した。これ以外に、2−TPDおよび2−NPDでは、架橋された二つのジアミン化合物が短いエーテル結合(−CH−O−CH−)によってより接近し、その結果トリアリールアミンが架橋されたネットワーク内の正孔輸送の促進にとって好ましい方向をとったという説明も可能であろう。正孔の移動し易さは、2−NPD>2−TPD>1−NPD>1−TPDであり、これもNPDを基本とするHTMが、対応するTPDを基本とするHTMに比べ高い移動性を有することを示唆している。
【0081】
別の局面では、本発明は一つまたは複数の、本発明の架橋可能な化合物から作られた正孔輸送層を含む発光装置を提供する。
【0082】
図42は、本発明の代表的な多層発光装置を描いたものである。図42に示すように、多層発光装置200は、電源100、アノード140、カソード150、正孔輸送層210、発光層120、電子輸送層220を含む。装置はさらに、正孔注入層110および電子注入層130も含む。
【0083】
正孔および電子注入層110および130は、それぞれ正孔および電子の効率的な注入を容易にする。正孔は、アノード120から正孔注入層110および正孔輸送層210を通り発光層120内に注入される。電子は、カソード150から電子注入層130および電子輸送層220を通り発光層120内に注入される。合わさって、正孔および電子は発光層120内でエキシトンを生成し、このとき正孔および電子間のエネルギーに対応した光がエキシトンから発せられる。
【0084】
アノード140は伝統的に、比較的高い仕事関数を有する、酸化インジウムスズまたはインジウム酸化亜鉛のような透明な導体物質から作られる。カソード150は伝統的に、比較的低い仕事関数を有する、アルミニウム、カルシウム、またはアルミニウム合金のような半透明な伝導物質から作られる。
【0085】
上記の代表的な装置の正孔輸送層は、本明細書に記載する正孔輸送二重層および一体型正孔注入・正孔輸送層を含む、本明細書に記載する正孔輸送層のどれか一つでよいことが理解されるだろう。
【0086】
一つの態様では、装置は
(a)アノード;
(b)カソード;
(c)アノードとカソードとの中間にある発光層;および
(d)アノードおよび発光層の中間にある正孔輸送層を含み、
前記正孔輸送層は、上記の式I、II、またはIIIを有する架橋可能な化合物に由来する架橋された正孔輸送物質を含む。
【0087】
特定の態様では、上記の装置は、正孔注入層を更に含む。一つの態様では、アノードと正孔輸送層の中間にある該正孔注入層は、正孔注入層の表面上に架橋されることで形成される。
【0088】
単一HTLを有する代表的なPLED装置
一つの態様では、本発明の装置は、TPD成分を含む正孔輸送層を含む。
【0089】
一つの態様では、本発明の装置は、一つまたは複数のTPD、BTPD、NPD、またはBNPD成分を含む正孔輸送層を含む。
【0090】
1−TPD、2−TPD、1−NPD、または2−NPD成分を含有する正孔輸送層を持つ二重層LED装置は、ITO/HTL/PFBT5/CsF/Alの構成に基づいて作製される。PFBT5で表される発光高分子ポリ[2,7−(9,9’−ジヘキシルフルオレン)−alt−4,7−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール)]を緑色発光層に選択した。このランダムコポリマー中のベンゾチアジアゾールに対するポリフルオレンの供給比は95:5である(図22)。
【0091】
PLEDは、事前に清浄化し、酸素プラズマ処理しておいたITO被覆ガラス基体上に作製した。プラズマ処理後、基体をグローブボックス内に移動し、その後の全てのフィルム形成工程はアルゴン保護下で実施した。HTLは、対応するHTM溶液をITO上にスピンコーティングし、次にそれをホットプレート上でその架橋温度で30分間熱架橋化することによって形成させた。次にHTLの上面にEMLをスピンコーティングした。続いてカソードとして厚さ1nmのフッ化セシウム(CsF)および厚さ200nmのAlを蒸着させた。二つの装置構成内の各層の厚さは次の通りである:ITO/PEDOT:PSS(約60nm)/HTL(約25〜約30nm)/PFBT5(約80nm)/CsF(1nm)/Al(200nm)。性能試験は、カプセル封入せずに、空気中で室温にて実施した。電流密度−電圧(J−V)特性は、Hewlett−Packard 4155B半導体パラメータ分析装置で測定した。PLおよびELスペクトルは、分光計(Instaspec IV,Oriel Co.)によって記録した。EL発光の光力は、較正済みのSi−フォトダイオードおよびNewport−2835−Cマルチファンクショナル光学計測器によって測定した。光度単位(cd/m)は、発光がランバート空間分布すると仮定して、装置のELスペクトルと共に前方出力を用いて計算した。
【0092】
全ての装置が、PFBT5発光層だけから、540nm付近の均一で安定した発光を行った。実際、物質中にトリアリールアミンユニットが含まれることが、正孔輸送能力の決定に重要な役割を果たし、それは装置性能全般に明確に現れた。表2に見られる様に、2−TPDを正孔輸送層(HTL)として用いた装置は、対応する同等物の1−TPDに比し、全ての装置性能パラメータを劇的に改善した。同じ傾向は、1−NPDと2−NPDのペアについても、全ての装置パラメータに関して観察された。HTLが2−NPDに基づく装置は、12.6Vの駆動電圧において点灯電圧が4.6Vと最も低く、外部量子効率が1.89%と最も高く、発光効率が6.21cd/Aと最高であり、かつ輝度が13600cd/mと最高であることを記しておく。NPDを基本とする物質が、TPDを基本とする同類物に比べてより良い装置性能を与えることは注目に値するが、これは正孔だけを通す装置の結果に一致する。電圧の関数としての電流密度および輝度の曲線をそれぞれ図23および24に示した。
【0093】
表2.構造:ITO/HTL/PFBT5/CsF/Alに基づく、本発明の代表的な装置のエレクトロルミネセンスデータ
【0094】
【表2】

対応する硬化温度で架橋された。点灯電圧。最大外部量子効率。最大発光効率。電力効率。最大輝度。最大輝度に対応する駆動電圧。
【0095】
装置は、熱自己開始型架橋剤としてVBを持つTPDまたはα−NPD分子を含む、本発明で開示する正孔輸送物質を用いて作製した。各物質中の二つのVB基のインサイチュー重合は、開始剤を加えずに熱だけによって実施し、副産物は生成されなかった。硬化温度は160℃まで低下させても、次の発光層のスピンコーティング段階に適した溶媒耐性高分子ネットワークの正孔輸送層を得ることができる。装置構造ITO/HTL/PFBT5/CsF/Alにより、NPDを基本とする物質はTPDを基本とするものに比しより高い装置性能を与える。最高の正孔伝導体密度(77重量%)を持つBNPDが最も高い正孔輸送能力を示した。
【0096】
別の局面では、本発明は、多層PLEDに有用な二重層正孔輸送構造を提供する。
【0097】
一つの態様では、二重層は、上記本発明の架橋可能な正孔輸送化合物(例えば式I、II、またはIII)の一つまたは複数から作ることができる層を含む。
【0098】
一つの態様では、正孔輸送二重層は:
(a)架橋された正孔輸送物質を含み、かつ第一固体状態イオン化ポテンシャルを有する第一層;
(b)架橋された正孔輸送物質を含み、かつ第二固体状態イオン化ポテンシャルを有する第二層を含み、
前記第一固体状態イオン化ポテンシャルは前記第二固体状態イオン化ポテンシャルより低い。
【0099】
一つの態様では、該第一および第二層の正孔輸送物質は熱により架橋化される。
【0100】
第一固体状態イオン化ポテンシャルと第二固体状態イオン化ポテンシャル間の差は、約0.2eV〜約0.4eVでよい。一つの態様では、第一層は約5.3eVの固体状態イオン化ポテンシャルを有することができる。一つの態様では、第二層は、約5.7eVの固体状態イオン化ポテンシャルを有することができる。
【0101】
一つの態様では、第一層の厚さは、第二層の厚さの約二倍である。例えば、第一層の厚さは約20nmより厚くてよく、第二層の厚さは約10nmより厚くてよい。
【0102】
代表的な正孔輸送二重層:第一層内のTPDまたはNPD成分および第二層内のTCTA誘導体
理想的な正孔輸送層は、正孔注入を最大化し、発光層からアノードへの電子の逃避を阻止するだけでなく、励起をEML内に封じ込める働きもする。蛍光共役高分子および赤色発光リン光発光体に関しては、N,N’−ジ−トリル−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)を基本とするHTLを使用することによって、比較的容易に三倍の作用を得ることができる。しかしながら、ビス(4’,6’−ジフルオロフェニルピリジナート)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(Flr6)のような高い励起エネルギーを有し、従って通常は−5.7eVより高いHOMOレベルを持つ、より大きなバンドギャップを持つホストを必要とする青色のリン光発光体については、単層HTLではこの要件を満たすことは難しい。
【0103】
トリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン(TCTA)は、そのエネルギーレベルが適していることから(HOMOレベル−5.7eVおよび最低非占有分子軌道(LUMO)レベル−2.3eV)、HOMOレベルが−5.3eV〜約−5.5eVであるTPDまたは1,4−[(1−ナフチルフェニル)−アミノ]ビフェニル(NPD)層の上面に蒸着した時、縦続的な正孔注入構成を形成することが報告されている。R.J.Holmes et al.Appl.Phys.Lett.83,3818 (2003); X.Ren et al.Chem.Mater.16,4743 (2004); G.He et al.Appl.Phys.Lett.85,3911 (2004); C.C.Wu et al.Adv.Mater.16,61 (2004);およびB.W.D’Andrade et al.Adv.Mater.16,624 (2004)。しかしながら、高分子を基本とする青色発光および白色発光電気リン光LEDの縦続的HTLへの利用は、溶媒−腐食問題から達成されていない。
【0104】
本発明は、この問題を、第一層は複数のTPDまたはNPD成分を含み、かつ第二層は複数のTCTA成分を含む二重層正孔輸送構造を提供することによって解決する。一つの態様では、第一層は、架橋されたPS−TPD−TFVを含み第二層は架橋されたTCTA−TTFVを含む。一つの態様では、第一層は、架橋されたPS−TPD−TFVを含み、第二層は架橋されたTCTA−BVBを含む。TCTA/TPD二重層は、20nmの厚さの架橋されたPS−TPD−PFCB上に、20nmの厚さのTCTA誘導体をスピンコーティングすることによって作られた。
【0105】
PLEDへの応用では、装置の寿命および性能を低下させることの多い凝集またはピンホールといった欠陥のない高品質の薄フィルムを得ることが重要である。20nmの厚さを持つ、架橋されたPS−TPD−PFCB上に20nmの厚さのTCTA誘導体をスピンコートした二重HTLの表面構造を、熱硬化の前後について、タッピングモードの原子間力顕微鏡(AFM)および光学顕微鏡を用いて調べた。PS−TPD−PFCB由来の第一HTLは、非常に平滑で、RMS粗度は0.63nmであり、PS−TPD−PFCBフィルムによりITO表面が効果的に平滑化されていることを示した。PS−TPD−PFCB上に同様に三種類のTCTA誘導体をスピンコートしたフィルムも極めて平滑であり、RMS粗度は1nm未満であった。しかしながらTFV−含有TCTAでは、表面の粗度は、225℃で30分間加熱硬化した後に劇的に上昇した。図25AおよびBに示すように架橋後に多くのアイランド(island)が形成された。TCTA−PFCB中のこれらアイランドの高さは300nmより高く、これはBu−TCTA−PFCB(AFMで測定した)中のアイランドの高さに比べて100nm以上高い。これとは好対照に、はるかに低い温度で得られた(180℃、30分間)、架橋されたTCTA−BVBフィルムの粗度は、処理前に得られた同じ架橋されたフィルムに比べて若干上昇したに過ぎなかった(0.49nm)。この二重層フィルムのRMS粗度は1.62nmであり、架橋されたTCTA−BVBとPS−TPD−PFCB間の粘着が良好であることを示している(図26)。理論により限定するつもりはないが、TFV含有TCTAでのアイランド形成に関係すると思われる原因が二つ考えられる。一つは、最上部のTCTA−PFCB層と最下層のPS−TPD−PFCB層間の脱湿潤化によるものである。TFV官能化TCTAはフルオロ含有量が高いことから、これらTCTA層の表面エネルギーはPS−TPD−PFCBの表面エネルギーより低い。結果としてTCTA−PFCB/Bu−TCTA−PFCBとPS−TPD−PFCB境界面間の粘着は非常に弱く、加熱中にこれら二つの層間に脱湿潤化をもたらす。もう一つの考えられる原因は、高温重合工程中に熱が引き起こすTCTAの結晶化によるものである。
【0106】
別の局面では、本発明は、一つまたは複数の、本発明の架橋可能な化合物から作られた正孔輸送二重層を含む発光装置を提供する。
【0107】
一つの態様では、装置は、
(a)アノード;
(b)カソード;
(c)該アノードと該カソードの中間にある発光層;および
(d)該アノードと該発光層の中間にある正孔輸送層
を含み:
前記正孔輸送層は、
(i)架橋された正孔輸送物質を含み、かつ第一固体状態イオン化ポテンシャルを有する第一層;
(ii)架橋された正孔輸送物質を含み、かつ第二固体状態イオン化ポテンシャルを有する第二層を含む正孔輸送二重層を含み、
前記第一固体状態イオン化ポテンシャルは前記第二固体状態イオン化ポテンシャルより小さい。
【0108】
一つの態様では、二重層の架橋された正孔輸送物質は、上記の本発明の架橋可能化合物から作製できる(即ち架橋された正孔輸送物質は、上に定義した式I、II、またはIIIを有する架橋可能化合物に由来する)。
【0109】
一つの態様では、第二固体状態イオン化ポテンシャルと第一固体状態の間の差は約0.2eV〜約0.4eVである。
【0110】
TPD/TCTA正孔輸送二重層を用いた代表的な青色リン光PLED装置
青色リン光LEDに関しては、大部分の青色リン光発光体がそれらの最高被占有分子軌道(HOMO)において高いエネルギーレベルを有していることから、(例えば、ビス(4’,6’−ジフルオロフェニルピリジナート)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(FIr6)のHOMOは−6.1eV)、装置に効率的な正孔注入を行うのは難しい。この問題を解消するために、本発明は、縦続的な正孔注入/輸送および効果的な電子素子/励起封じ込めを促進するために、エネルギーレベルが勾配を成す二種類の架橋可能なHTL、即ち架橋可能なテトラフェニルビフェニルジアミン(TPD、HOMOレベル−5.3eV)およびトリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン(TCTA、HOMOレベル−5.7eV)を用いた高分子を基本とするリン光青色LEDを提供する。
【0111】
TPDを基本とする正孔輸送物質(HTM)の前駆体高分子、PS−TPD−TFVは、ポリスチレン(PS)の主鎖上に、ジブチル置換TPD(93モル%)および熱による架橋が可能なトリフルオロビニルエーテル(TFV)側鎖(7モル%)を非常に高率で負荷されている。TCTAを基本とするHTMの前駆体、TCTA−TTFVは、ヒドロキシ官能化TCTAを4−トリフルオロビニルオキシ−安息香酸と図6の合成概略に従って反応させることによって得た。電子注入物質である1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(TPBI)、および青色三重項発光体のFir6は、文献に報告されている方法に従って合成した。Y.Kuwabara,et al.Adv.Mater.6,677 (1994); J.Li,et al.Polyhedron 23,419 (2004)。ホスト高分子のポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)は、Aldrich−Sigmaから購入した。10重量%のFIr6のPVK混合溶液を用いて、スピンコーティングによりEMLを形成した。
【0112】
LEDは、事前に清浄化し、Oプラズマ処理しておいたITOを被覆したガラス基体上に作製した。プラズマ処理後、基体をグローブボックス内に移し、その後の全てのフィルム形成プロセスはアルゴン保護環境内で実施した。二重層HTLを持つLEDについては、通常の厚さ20nmを持つ第一層は、ITO上にPS−TPD−TFV溶液をスピンコーティングし、次にホットプレート上で235℃、40分間熱架橋して形成した。良好な溶媒耐性を持つ、堅牢かつ均一なフィルムを形成することができ、今後PS−TPD−PFCBと呼ぶ。この層の上面に、通常の厚さ10nmを持つ第二HTLを、TCTA−TTFV溶液をスピンコーティングし、次に225℃で40分間熱架橋して形成させた。この架橋化層はTCTA−PFCBと呼ぶ。コントロールとして、通常の厚さ30nmを持つ単層のPS−TPD−PFCBを、二重層装置のHTLと同じ手順で形成した。これら二種類の装置について、次にHTLの上面に通常の厚さ40nmを持つEMLをスピンコーティングした。次に約1×10−6トルの真空下で、TPBI層(25nm)を昇華させた。最後に、フッ化セシウム(CsF)(1nm)およびアルミニウム(20nm)をカソードとして蒸着させた。
【0113】
紫外線で硬化させたエポキシを使ってカバーグラスで封入した後、LEDをグローボックスから出し、性能試験を室温で実施した。電流密度−電圧(J−V)特性は、Hewlett−Packard 4155B半導体パラメータ分析装置で測定した。光ルミネセント(PL)およびエレクトロルミネセント(EL)スペクトルは、ペルチェ冷却した電荷結合素子(CCD)に基づく分光計(Instaspec IV,Oriel Co.)によって記録した。EL発光の光力は、較正済みのSi−フォトダイオードおよびNewport−2835−Cマルチファンクショナル光学計測器によって測定した。光度単位(cd/m)は、発光がランバート空間分布すると仮定して、装置のELスペクトルと共に前方出力を用いて計算した。
【0114】
図28のエネルギーレベル図より、カソードの正孔注入/輸送がこの二重層HTL構成によって形作れることは明らかである。正孔は0.4eVの中位のエネルギー障壁を越えてITOからPS−TPD−PFCB層へ注入され、このHTLを通り移動して第二境界面に達し、次に0.4eVの第二の中位エネルギー障壁を越えてTCTA−PFCB層に注入される。最終的に、大部分の正孔は、0.4eVのエネルギー障壁を更に一つ越えてEML中に分散したFIr6ゲスト(−6.1eV)のHOMO内に直接注入されるだろう。これに対し、単層HTLを採用した場合は、そのHOMOレベルの高さに関係なく、正孔は0.6eVより高いエネルギー障壁を少なくとも一つ(またはその単層HTLのHOMOレベルが正確に中間にあるならば0.6eVの障害を2回; TPDを基本とする単層のHTLの場合は、第二の障壁は0.8eVとなるだろう)越えなければならない。注入効率は基本的にエネルギー障壁の指数の3/2のオーダーに逆比例することから、極めて大きな障壁によって正孔注入は大きく妨害されるだろう。その一方で、FIr6の2.72eVという大きな三重項エネルギーを考えると、バンドギャップが約2.8eVのTPDを基本とする単層HTLでは励起封じ込めが不十分であるのに対し、約3.4eVのバンドギャップを持つこのTCTAを基本とするHTLを加えることによってアノード側により効率的な励起封じ込めが実現できる。
【0115】
図29Aは、FLr6のフィルムおよびPVKにそれを10重量%混合したものからの、316nmで励起こした時のPLスペクトルを示す。これらが一緒になったものは、PS−TPD−PFCBからの406nmにおけるTPDの弱いPL発光である。図29Bは、二種類のHTL構成を持つLEDからのELスペクトルを示す。スペクトルが似ていることは、PLおよびELプロセスのどちらにおいても、発光が混合物中のFIr6に主に由来することを示している。しかしながら図29Bの挿入図からは、TPDを基本とするHTL内への電子の漏れを示す406nm付近のTPD発光が、TCTAを基本とするHTLの付加によって大きく抑制されていることが分かる。
【0116】
LEDのJ−Vおよび輝度−電圧(B−V)特性は図30に示されており、一方発光効率(LE)−電流密度特性は図31に示されている。二重層HTLを用いることによって、明瞭に性能は向上した。PS−TPD−PFCBの単層HTLを用いたLEDでは、1.25ph/el%の最大外部量子効率(ηext)と2.39cd/Aの最大LEが得られた。しかしながら、TCTA−PFCB層を追加することによって、ηextおよびLEは、それぞれ3.00ph/el%および6.09cd/Aに達した。
【0117】
PLEDの性能および長期安定性に対するTCTA誘導体(TCTA−TTFV、Bu−TCTA−TTFV、TCTA−BVB)の形態安定性についても、上記と同じ装置構造(ITO/PS−TPD−PFCB/TCTA−誘導体/PVK:FIr6(10重量%)/TPBI/CsF/Al)を作製し、縦続的正孔注入におけるTCTA−誘導体の機能を研究することによって研究した。装置性能を表3にまとめた。
【0118】
表3.ITO/PS−TPD−PFCB/HTL2/PVK:FIr6(10重量%)/CsF/Alの構造を有する二重層HTLを使ったPLED装置の性能
【0119】
【表3】

第二HTLとして架橋されたTCTA−BVBを用いた時、輝度441cd/m時の効率は3.17%に達した。最大輝度も、9.5Vで17400cd/mまで増加した。光出力と量子効率の両方が改善されたことは、HOMOレベルの適合度が向上した二重層HTLの利用がITOからEMLへの効果的な正孔注入を向上させ、バランスのとれた電荷輸送を容易にすることを証明している。Bu−TCTA−PFCBはTCTA−PFCBに比べ若干平滑なフィルムを形成したが、HTLとしてBu−TCTA−PFCBを用いることを基本とした装置は、TCTA−PFCBまたは架橋されたTCTA−BVBのどちらかから得たものに比べてはるかに高い点灯電圧および駆動電圧を示す。これらの結果は、装置内の正孔輸送を阻止するブチル基を絶縁することに由来するものかもしれない(図32)。
【0120】
二種類のHTL間の適合性も装置の特性および再現性に大きく影響する。TCTA−PFCB層の高い脱湿潤性であることから、PS−TPD−PFCBにこれをコーティングした場合、これらHTLから作られた装置は壊れやすく、再現性が極めて低い。これに対して架橋されたTCTA−BVBのHTLから作られた装置は、それらの形態が安定していることから、それらの最大発光まで繰り返し上げることができる。
【0121】
一つの局面では、本発明は多層発光装置に有用な一体型の正孔注入・正孔輸送層を提供する。これらの層は、一つまたは複数の、上記した本発明の架橋可能な正孔輸送化合物から作られる。
【0122】
一つの態様では、一体型正孔注入・正孔輸送層は:
(a)正孔注入層、および
(b)架橋された正孔輸送物質を含む正孔輸送層を含み、このとき正孔輸送物質は、正孔注入層の表面上で架橋されて形成される。
【0123】
一体型正孔注入・正孔輸送層の正孔輸送層は、上記した本発明の化合物から形成できる。一つの態様では、正孔注入層は、PEDOT:PSS、ポリアニリン:カンファースルホン酸(PANI:CSA)、ポリピロール:ドデシルベンゼンスルホン酸(Ppy:BDSA)、およびpドープ化したHTMを含む複数の伝導物質でよい。一つの態様では、正孔輸送層は、複数のTCTA成分を含むことができる。一つの態様では、正孔輸送層は、複数のTPD成分を含むことができる。一つの態様では、正孔輸送物質は、上に定義したような、式Iを有する架橋可能な化合物に由来する。一つの態様では、正孔輸送物質は、上に定義したような、式IIを有する架橋可能な化合物に由来する。一つの態様では、正孔輸送物質は、上に定義したような、式IIIを有する架橋可能な化合物に由来する。
【0124】
代表的な一体型正孔注入/輸送層;TCTA/PEDOT:PPSおよびTPD/PEDOT:PSS
図12に示すように、架橋可能なビニルベンジルエーテル基を二つ持つTCTA誘導体を合成した。架橋後のTCTA−BVBの化学構造の変化を図27に示す。
【0125】
ビニルベンジルエーテル基の二重結合は、150℃より高い温度でニートフィルムに重合できるだろう。F.R.Mayo,J.Am.Chem.Soc.1968,90,1289;およびN,Teramoto et al.,J.Appl.Polym.Sci.2004,91,46。TCTA−BVBの示差走査熱量(DSC)測定に見られるように(図34Aの挿入図)、元のTCTA−BVBは約80℃のTを示すが、これは純粋なTCTAのTに比べるとはるかに低い。発熱ピークが170℃にあることも示されているが、これは架橋プロセスに対応する。180℃で30分間、等温加熱した後、サンプルを室温までゆっくり冷まし、再度走査した。約175℃を中心とした幅広いTの転移が第二ランプから検出され、架橋されたセグメントの長さのスケールが多様であることを示した。一方で、明瞭な発熱ピークは250℃まで出現せず、TCTA−BABが完全に架橋されたことを示した。この観察結果に一致して、180℃で30分間硬化したフィルムでは溶媒耐性が獲得された(図34B)。新たに硬化したフィルムのUV−可視吸収は、EMLのスピンコーティングに用いられる溶媒であるクロロベンゼンで洗浄した後のものと同じままであった。これとは対照的に、フィルムを160℃で30分間硬化させると、図34Aに示すように、必要な溶媒耐性を獲得できなかった。それ故に、装置製造に用いる典型的な架橋条件は、180℃で30分間維持される。
【0126】
TCTA−BVBのDCE溶液をスピンコーティングすることによって、事前に乾燥させておいた(125℃、10分間)PEDOT:PSS層の上面に、均一なフィルムを形成できるだろう。180℃で30分間加熱硬化させた後も、フィルムは鏡様の平滑さを維持した。公称厚さ15nmのTCTA−BVBの硬化フィルムの形態を図34Bの挿入図に示す。フィルムの二乗平均平方根(RMS)粗度は1.24nmで、ITO上の二種類のコントロール(125℃10分間熱処理したPEDOT:PSSフィルムでは1.41nm、180℃、30分間処理した別の一つでは1.49nm)に比べ小さかった。
【0127】
こうして得られたフィルムの表面の元素分布を知るために、X線光電子分光法(XPS)による測定を、異なるTCTA−BVB被覆厚を持つPEDOT:PSSとPEDOT:PSS/架橋TCTA−BVBの両二重層フィルムについて実施した。図35Aに示すように、C、O、S、およびNaの相対表面原子濃度は、それらのC(1s)、O(1s)、S(2p)、およびNa(1s)ピークから定量的に計算した。各種TCTA−BVBの厚さに伴うそれらの変動を図35Bおよび35Cに示すが、図中の値は、これらピークの3点高解像度走査の平均値である。興味深いことに、PEDOT:PSS層内だけに存在するSおよびNa元素由来のシグナルは、TCTA−BVBの厚みが増すにつれて劇的に低下する。Naのシグナルは、TCTA−BVBの厚さが>15nmになると完全に消失したが、Sのシグナルは残り、PEDOT:PSSフィルムのS強度の約半分に減少したに過ぎなかった。これは、PSS鎖が、それをスピンコーティングしている間にTCTA−BVB層内を貫通したか、またはTCTA−BVB分子の一部がPSSに富む表面の隙間に貫入し、そこでインサイチュー架橋されたことを示す。しかしながら、TCTA−BVBの厚さが更に25nmまで上昇すると、Sのシグナルは完全に消失した。この界面領域より上にある架橋されたTCTA−BVBは、PEDOT:PSS鎖およびその他可動性成分がEML内に貫入して発光を消光するのを防ぐスペーサーとして機能できる。
【0128】
1−TPDはまた、PEDOT:PSSを用いた一体型正孔注入/輸送構造の作製にも用いることができる。DSC測定は、180℃、30分間の等温硬化後、1−TPDはほぼ完全に架橋し、ガラス転移温度(T)は約150℃に達することを示している。
【0129】
1−TPDのDCE溶液からは、事前に清浄化し、乾燥させておいた(125℃、10分間)PEDOT:PSS層の上面に、均一なフィルムが形成できるだろう。180℃、30分間の熱効果後もフィルムは鏡様の平滑さを保ち、二乗平均平方根(RMS)表面粗度は、PEDOT:PSSを被覆した酸化インジウムスズ(ITO)よりも小さかった。フィルムを、発光溶液を作るための溶媒であるクロロベンゼンでスピン洗浄しても、紫外−可視(UV−vis)吸収に影響はなく、良好な溶媒耐性が獲得されたことが示された。
【0130】
別の局面では、本発明は、一つまたは複数の、本発明の架橋可能な化合物から作られた一体型正孔注入・正孔輸送層を含む発光装置を提供する。
【0131】
一つの態様では、装置は:
(a)アノード;
(b)カソード;
(c)該アノードと該カソードの中間にある発光層;および
(d)該アノードと該発光層の中間にある一体型正孔注入・正孔輸送層を含み、前記一体型正孔注入・正孔輸送層は、正孔注入層および正孔輸送層を含む。
【0132】
一つの態様では、二重層の架橋された正孔輸送物質は、上記の、本発明の架橋可能な化合物(即ち、上に定義したような式I、II、またはIIIを有する架橋可能化合物に由来する架橋された正孔輸送物質)から作ることができる。
【0133】
一体型正孔注入・正孔輸送層TCTA−BVB・PEDOT:PSSを使った代表的な白色OLED装置
白色有機発光ダイオード(WOLED)に関しては、低い電力消費達成に関する最も重要な判断基準は高い電力効率(PE)である。低分子を基本とする装置の場合、アノード側をp型ドーピングしHILを形成し、カソード側をn型ドーピングしてEILを形成することが駆動電圧を大きく下げ、PEを上げると報告されている。これらドーピング層による発光の消光を防止するために、pドープHTLとEML間に空間として中性正孔輸送層(約10nm)を配し、同時にETLとEML間に電子輸送空間(約10nm)を配することが多い。
【0134】
一つの態様では、本発明は、正孔注入層と一体化したTCTAを含む正孔輸送層を持つ装置を提供する。
【0135】
高い効率の高分子WOLEDは、TCTAを基本とするHTLをPEDOT:PSS層の上面に熱架橋することによって形成された正孔注入/輸送二重層を用い作製した。伝導性高分子ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4−スチレンスルホナート)(PEDOT:PSS)は、正孔注入層として広く用いられている。完全に架橋されたHTLの優れた溶媒耐性は、その後のEMLの溶液処理を保証する。HILとHTL間の中間面に形成される可能性のある表面混合構造は、縦続的な正孔注入を促進し、かつ駆動電圧を下げると同時に、上部の架橋された純粋なTCTA−BVB部分は電子−阻止/励起−封じ込め層として機能し、EMLの消光を阻止するのに役立つ。高い電力効率(前方発光については約5.6 lm/Wであり、装置が発する全ての光をカウントした場合は>11 lm/W)によって800cd/mの前方輝度が達成できる。装置は、極めて安定な白色光も放射し、この時国際証明委員会(CIE)座標は(0.379、0.367)から(0.328、0.351)に変化するが、これは基準白色光の座標(0.333、0.333)に極めて近い。
【0136】
本発明の装置のEMLは、ホストとしてPVKを79重量%、青色発光体としてFIrpicを20重量%、緑色発光体としてIr(ppy)を0.5重量%、そして赤色発光体としてOs−RIを0.5重量%含むクロロベンゼンの混合溶液を、ITO/PEDOT:PSS/架橋されたTCTA−BVB基体の上面に、TCTA−BVBの公称厚みを15nm、25nm、および34nmにそれぞれ変えてスピンコーティングすることで形成した。作製したLEDは、以後装置2、3、4と呼ぶ。PEDOT:PSSだけの装置を装置1とした。各構成要素の化学構造を図33に示し、それらのエネルギーレベルを図36に示す。
【0137】
ドープシステム内で励起を起こす主なメカニズムは、荷電担体の直接捕獲と再結合を介したものであることは十分証明されている。X.Gong et al.,Adv.Funct.Mater.2003,14,439。この他構成要素ドープシステムでは、青色発光体から緑色発光体および赤色発光体へのエネルギー転移も完全に可能である。B.W.D’Andrade et al.,Adv.Mater.,2004,16,624。
【0138】
図37Aおよび表4に示すように、コントロールの装置1の点灯電圧は5.2Vであり、最大外部量子効率(ηext)は2.07%であり、PEは前方輝度800cd/m時で2.08 lm/Wであった。これらの値は既報の混合系と極めてよく似ていた。Y.Kawamura et al.,J.Appl.Phys.2002,92,87。装置2および3では、点灯電圧は4.8Vに下がり、縦続的注入を介した正孔注入障壁低下効果を示した。
【0139】
図37Bおよび表4に示すように、TCTA−BVB層を用いた装置は全てPEDOT:PSSのみのコントロール装置に比べ約2倍以上の効率を示し、担体−注入と再結合のバランスがより良好であることを示している。これは、TCTAの最低非占有分子軌道(LUMO)レベルは−2.3eVであることによるEML/TCTA−BVB界面での縦続的跳躍の促進と効果的な電子遮断の結果である。その一方で、TCTAのバンドギャップ(3.3〜3.4eV)はMEL内の発光体の励起エネルギーよりも遙かに大きいことにより、より効率的な励起封じ込めも達成できる。装置3が達成した最高性能は、最大ηext5.85%、PE 6.15 lm/W、そして発光効率(LE)10.9cd/Aを示した。PEは前方輝度800cd/mにおいて極めて高値を保った(5.59 lm/W)。TCTA−BVBの厚みがより薄い装置4では、点灯電圧は5.6Vに上昇し、性能装置も低下したが、これはTCTA−BVB内の電子移動性がPEDOT:PSS内の移動性に比べて低く、適合しないことによると思われる。
【0140】
表4.アノード側の通常方向から記録した装置性能。装置構造:ITO/PEDOT:PSS(60nm)/HTL/FIrpic、Ir(ppy)3およびOS−RIのPVK混合物(30nm)/TPBI(25nm)/CsF(1nm)/Al(200nm)
【0141】
【表4】

[a]lm/W単位で表した電力効率
[b]cd/A単位で表した発光
図38は、様々な駆動電圧での装置3から測定されたエレクトロルミネセント(EL)スペクトルを示す。6V(0.379、0.367)から12V(0.328、0.351)までのCIE座標を持つ、良好な色安定性対駆動電圧が達成できた。高電圧における青色発光のわずかな上昇は、混合物中において限定量の低エネルギー発光体の特定の優先飽和を反映している。
【0142】
一般的な照明の用途では、装置から発せられる、照明に関わる全ての光を考慮しなければならない。GongとForrestの試算、X.Gong et al.,Adv.Mater.2005,17,2053;B.W.D’Andrade et al.,Adv.Mater.1994,6,677に従えば、全LEおよびPEを得るには、対応する前方表示外部効率の数値に係数2を乗じなければならない。これを考慮すれば、装置3では、11 lm/Wを超えるPE値は、前方輝度800cd/mで実現できるだろう。
【0143】
一体型正孔注入・正孔輸送層を持つ代表的なLED装置:TCTA−BVB/PEDOT:PSSおよびTPD−BVB/PEDOT:PSS
二種類のMEL、一つはポリフルオレンを基本とする、ベンゾチアジアゾール含有率5%の共役ポリマー混合物(PFBT5)、もう一つはリン光発光特性を有する青色発光Ir(III)−複合体、ビス(4’,6’−ジフルオロフェニルピリジナート)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(Flr6)を選択し、一体型正孔注入/輸送層1−TPD/PEDOT:PSSおよびTCTA/PEDOT:PSSをそれぞれ持つLED装置を製造した。
【0144】
図39に示すように、主にポリフルオレンによるPFBT5のHOMOレベルは−5.7eVであり、従って1−TPDは、TPDのHOMOレベルはおおよそ−5.3eVであることから、満足いく正孔注入が提供できるだろう。この場合、この層を加える主な便益には、PEDOT:PSSからEMLへの消光の回避だけでなく、有効な励起封じ込めもあるだろう。HOMOレベルが−6.1eVであるFlr6を基本とするEMLでは、効率的に正孔を注入/輸送するために必要な縦続高速路を提供するには、約−5.7eVにHOMOレベルがあるTCTA−BVBが必要となる。
【0145】
正孔輸送層および発光層(EML)は、アルゴン充填したグローブボックス内で、スピンコーティングだけによって形成される。両装置については、EMLの厚みは30nmに制御され、1−TPDまたはTCTA−BVBに由来する架橋された正孔輸送層の公称厚みは約25nmである。
【0146】
簡素化を目的として、ITO/PEDOT:PSS/1−TPD(25nm)/PF−BT5(30nm)/TPB1(25nm)/CsF/Alの構造を持つLEDをD1と称し、対応する、1−TPD中間層を持たないコントロール装置をC1と称する。同様にITO/PEDOT:PSS/TCTA−BAB(25nm)/10重量%Flr6を含むPVK(30nm)/TPBI(25nm)/CsF/Alの構造を有するものをD2と称し、TCTA−BVB中間層を持たないコントロール装置をC2と称する。性能試験は、グローボックスからLEDを出してから30分以内に、封入せずに環境周囲で実施した。
【0147】
これらのLEDの電流密度対駆動電圧(J−V)特性および輝度対駆動電圧関係(B−V)は図40に示し、併せて挿入図にELスペクトルを示す。D1の光点灯電圧(Von)は、1−TPD層を加えることによるバランスの取れた担体−注入のおかげで4.4Vまで低下したのに対し、この中間層を持たないC1は6.6Vであった。同様のVonの低下はD2についても観察され、C2の6.6VからD2では5.0Vに低下した。このように、図41に明示するように、HTLを加えることによってηextとPEの両方が劇的な向上を示した。
【0148】
比較が明瞭になるよう、性能データのいくつかを表5にまとめた。HTLを加えることによって、外部量子効率は、最大時および輝度100cd/m時の効率の両方を約3倍増加させることができた。これらの量子効率増加は、通常通りに駆動電圧を上げてもおこらない。これに対し電導性PEDOT:PSS層と好適に調節されたHOMOレベルを持つ架橋されたHTLとの一体化では、同時に駆動電力も下げる。結果として、電力効率も同時に約4倍増加できた。
【0149】
表5.PF−BT5を基本とする、1−TPD中間層を持つ(D1)および持たない(C1)、ならびにPVKを基本とし、FIr6を含む、TCTA−BVB中間層を持つ(D2)および持たない(C2)LEDの装置性能データ。
【0150】
【表5】

本発明の様に、ITOアノードと発光層の間にPEDOT:PSSとHTMが連続する二重層を組み合わせることには幾つかの利点がある。第一は、PEDOT:PSSはITO表面を平滑にし、電気的短絡を減らし、正孔注入表面のアノード障壁の高さを下げることができる。第二に、PEDOT:PSSと発光層の間にHTM中間層を挿入すると、近接するPEDOT:PSS界面での放射励起の消光を防止し、電子遮断効果を提供して電荷担体のバランスを向上し、縦続的な正孔注入および輸送の経路を開くことができる。かくして本発明は、電導性HILおよび架橋可能なHTLを一つに統合することによって、製造したLEDに低駆動電圧、縦続的な正孔注入、および効果的な電子遮断/励起封じ込めを実現する。このことは、高い量子効率および電力効率を持つ装置と言い換えられる。
【実施例】
【0151】
材料.別途指定しない限り、全ての化学物質はAldrichから標準的なものを購入した。テトラヒドロフラン(THF)およびエーテルは、ベンゾフェノンをインジケータとして用いてナトリウムから窒素下で蒸留した。Flr6および1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(TPBI)は、文献の手順に従って合成した。Li,J.et al.,Polyhedron.23,419,2004; Shi,J.et al.,米国特許第5,646,948号。
【0152】
装置および方法.Hおよび13C NMRスペクトルは、Bruker 300または500 FT NMR分光計を用いて、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として測定した。高解像度質量分析(HRMS)は、UW Bio Mass Spectrometry Labが実施した。元素分析はMidwest Microlabsで決定した。UV−vis吸収スペクトルは、Perkin−Elmer Lambda 9 UV/vis/NIR分光光度計を用いて測定した。
【0153】
熱転移は、TA Instruments示差走査熱量計(DSC)2010および熱重量分析計(TGA)2950用いて、窒素雰囲気下で10℃/分の加熱速度で測定した。サイクリックボルタンメトリーのデータは、ITOガラス上にスピンコーティングして硬化させた薄フィルムを作用電極とする通常の三電極セルを用いて、BAS CV−50Wボルタンメトリック分析装置によって得た。Ptガーゼを対極として用い、Ag/Ag+を参照電極として用い、0.1Mの過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)のアセトニトリル溶液を電解液とし、フェロセンを外部標準とした。
【0154】
テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸のジクロロエタン溶液である0.1M電解液内でのTCTA誘導体(0.5mM)のサイクリックボルタンメトリー図は、白金作用電極、白金補助電極、およびAg+/Ag参照電極を用いて、100mV/秒の掃引速度得た。300〜350kHzの典型的な共鳴振動数を有するエッチングシリコンチップを取り付けたDigital Instruments Nanoscope III原子間力顕微鏡およびOlympus BX 60光学顕微鏡を用いて、TCTA誘導体のフィルム形態を調べた。
【0155】
実施例1
TCTA誘導体の合成
本実施例では、TCTA−TTFV、Bu−TCTA−TTFV、およびTCTA−BVBの合成を記載した。
【0156】
TCTA−TTFVの合成を図11に図示した。4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)の合成は、トリフェニルアミンから二段階反応を用いて行った。まずトリフェニルアミンをN−ヨードスクシンイミド(NIS)を用い、酢酸中で三ヨウ化した。次に
銅および炭酸カリウム存在下での、対応するアミンとカルバゾール間のウルマン反応によりTCTAを得た。Y.Kuwabara,et al.Adv.Mater.1994,6,677:およびJ.P.Chen,WO 2003/059014。
【0157】
Vilsmeier条件下でPOCl/N’N−ジメチルホルムアミド(DMF)によりTCTAを直接トリホルミル化し、モノ−、ジ−、トリ−ホルミル化TCTAの混合物を得た。あるいは、TCTAは、三当量のNISによってヨウ化した;次にTCTAの二ヨウ化塩をn−BuLiを用いてリチウム化し、続いてDMFで処理することによってTCTAにホルミル基を導入した。生じたTCTAジアルデヒドを還元して、定量的収率でヒドロキシ含有TCTAを得た。トリス(トリフルオロビニルエーテル)含有TCTA(TCTA−TTFV)は、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を濃縮剤として用い、TCTAトリヒドロキシドを4−トリフルオロビニルオキシ−安息香酸と反応させることによって得た。
【0158】
Bu−TCTAの詳細な合成は、図12に図示した。n−ブチル基をTCTAに導入し、熱硬化中の結晶化を防止した。ブチル置換TCTAである4,4’,4’’−トリス(N−3−n−ブチル−カルバゾリル)トリフェニルアミン(Bu−TCTA)は、次にトリス(4−ヨードフェニル)アミンと、3−n−ブチル−5,6,7,8−9H−カルバゾールの脱水素化によって得た3−n−ブチル−9H−カルバゾール間のウルマン反応を通して合成した。3−n−ブチル−5,6,7,8−9H−カルバゾールは、シクロヘキサノンとn−塩酸ブチルフェニルヒドラジンから酸性条件下で合成した。A.R.Katrizky,et al.J.Heterocyclic Chem.1988,25,671を見よ。
【0159】
TCTA−TTFVについて上記したのと同様の手順を用いて、トリス(トリフルオロビニルエーテル)含有Bu−TCTA(Bu−TCTA−TTFV)を、図16に概略的に図示したようにして調製した。
【0160】
TCTA−BVBの合成は、図17に図示した。4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)は二当量のN−ヨードスクシンイミド(NIS)によって酢酸中でヨウ化した。ホルミル基は、n−BuLiを用いたTCTA二ヨウ化塩のリチウム化、それに続くDMF処理によってTCTA内に導入された。生じたTCTAジアルデヒドを還元し、ヒドロキシ含有TCTAを得た。あるいは、ホルミル基は、過剰量のジメチルホルムアミド(DMF)およびオキシ塩化リン(POCl)を用いたVilsmeier反応によってTCTA内に導入された。TCTAジアルデヒドを更に還元してジヒドロキシ含有TCTAを得た。水素化ナトリウムを脱水剤として用いた4−塩化ビニルベンジルによるジヒドロキシTCTAのエーテル化により、ビス(ビニルベンジルエーテル)含有TCTA(TCTA−BVB)を得た。
【0161】
攪拌中のトリス(4−ヨードフェニル)アミン(1).トリフェニルアミン(7.36g、30,0mmol)およびN−ヨードスクシンイミド(NIS、21.60g、96.0mmol)のクロロホルム(180mL)混合液に、酢酸(120mL)を室温、遮光下で加えた。溶液を室温で一晩攪拌した。反応混合液を水に注ぎ入れ、チオ硫酸ナトリウムで洗浄し、塩化メチレンで抽出した。まとめた塩化メチレン層を水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。粗生成物をヘキサン/塩化メチレン(7:1)を溶出液とするシリカゲルカラムにかけて精製し、わずかに茶色をした固体を得た(16.54g、88%)。H NMR(300MHz、CDCl):δ7.56(d,6H,J=8.7Hz)、6.83(d,6H,J=9.0Hz)。
【0162】
4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA、2).攪拌中のトリス(4−ヨードフェニル)アミン(9.34g、15.0mmol)、カルバゾール(10.03g、60.0mmol)、銅粉末(750mg、11.8mmol)、および炭酸カリウム(16.2g、117.2mmol)の混合液に、窒素下でニトロベンゼン(40mL)を加えた。混合液を三日間還流した。高温溶液を濾過し、濾液をメタノールに滴下して加えた。次に沈殿物を濾過し、メタノールおよび水で連続して洗浄した。それをベンゼンに再溶解し、ヘキサンからヘキサン/トルエン(3:2)の勾配溶液を溶出液とするシリカゲルカラムにかけて精製し、わずかに茶色をした固体を得た(7.88g、71%)。H NMR(300MHz,CDCl):δ8.17(d,6H,J=8.1Hz)、7.60−7.42(m,24H)、7.31(t,6H,J=7.5Hz)。
【0163】
TCTA−3CHO(3).N’,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(10.97g、150mmol)をPOCl3(3.87g、25mmol)に、0℃で滴下して加え、得られた溶液を0℃で2時間攪拌し、TCTA(2)(2.22g、3mmol)の塩化メチレンとDCEの混合溶液に室温で加えた。得られた混合液を一晩還流し、氷水150mLに注ぎ入れた。NaOAcを加えてpHを約7に調節した。水層は塩化メチレンで抽出した;有機層は一つにまとめNaSO上で乾燥させた。ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去し、粗生成物を塩化メチレン/酢酸エチル(1:1)を溶出液とするシリカゲルフラッシュカラムを通して精製し、黄色の固体として3を457mg得た(18%)。H NMR(300MHz,CDCl):δ10.17(s,3H)、8.72(d,3H,J=1.2Hz)、8.26(dd,3H,J=7.8Hz,J=1.2Hz)、8.02(dd,3H,J=8.5Hz,J=1.5Hz)、7.64−7.54(m,21H)、7.46−7.41(m,3H)。
【0164】
TCTA−3CHOH(4).3(457mg、0.55mmol)のTHF10mlおよびエタノール10mlの混合溶液にNaBH(126mg、3.30mmol)を室温で加えた。得られた懸濁液を24時間攪拌し、ロータリーエバポレーターによって溶媒を除いた。粗生成物は、酢酸エチルを溶出液とするシリカゲルフラッシュカラムを通して精製し、黄色がかった固体を得た(417mg、91%)。H NMR(300MHz,CDCl):δ8.18(d,6H,J=7.8Hz)、7.61−7.45(m,24H)、7.32(t,3H,J=7.8Hz)、4.92(s,6H)。
【0165】
TCTA−TTFV(5).4(117mg、0.14mmol)、4−トリフルオロビニルオキシ−安息香酸(107mg、0.49mmol)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP、26mg、0.20mmol)の塩化メチレン(30mL)の攪拌中の溶液に、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC、103mg、0.54mmol)を加えた。反応混合液を室温で20時間攪拌した。溶媒は、減圧下で蒸発させた。得られた固体を塩化メチレンに再度溶解し、水で洗浄、NaSOで乾燥させてから濃縮した。粗生成物は、塩化メチレン/ヘキサン(8:2)を溶出液に用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、僅かに黄色を帯びた固体としてTCTA−TTFVを得た(68mg、34%)。H NMR(300MHz,CDCl):δ8.27(s,3H)、8.20(d,3H,J=7.8Hz)、7.14(d,6H,J=8.5Hz)、7.61−7.49(m,24H)、7.35(t,3H,J=7.8Hz)、7.15(d,6H,J=8.1Hz)、5.59(s,6H)。C8451についての分析計算値:C,70.49;H,3.59;N,3.91。実測値:C,70.65;H,3.77;N,3.95。
【0166】
p−ブチルフェニルヒドラジン(6).亜硝酸ナトリウム(11.74g、0.17mol)の水溶液(50mL)を30分間かけて氷冷しながら攪拌している4−n−ブチルアニリン(24.30g、0.16mol)の6Nの塩酸(190mL)懸濁液に加えた。更に15分後、無水塩化スズ(108.3g、0.4mol)の6N塩酸(190mL)懸濁液をゆっくり加え、得られた懸濁液を0℃で3時間攪拌した。固体を濾過し、40%の水酸化カリウム溶液(200mL)および酢酸エチル(200mL)の混合液に溶解した。有機層を分離し、水層を酢酸エチルで更に抽出した。まとめた有機抽出物を10%塩酸(120mL)で洗浄すると、有機層内に固形物が生じ始めた。それを0℃まで冷却した後、固体を濾過した。有機層を分離し、NaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発させた。生じた固体をエタノールから再結晶化し、白色の固体を得た(17.35g、54%)。H NMR(300MHz,DMSO−d):δ10.18(s、3H)、7.10(d,2H,J=8.4Hz)、6.92(d,2H,J=8.7Hz)、2.51(t,2H,=7.5Hz)、1.50(pentet,2H,J=7.5Hz)、1.27(sextet,2H,J=7.8Hz)、0.88(t,3H,J=7.5Hz)。
【0167】
3−n−ブチル−5,6,7,8−9H−カルバゾール(7).p−ブチルフェニルヒドラジン(8.31g、40mmol)、シクロヘキサノン(4.32g、44mmol)、および酢酸(16g)を1日間還流した。次に混合液を5℃まで冷却した。生じた固体を濾過し、水で洗浄し、エタノールから再結晶化し、表題の化合物を得た(5.64g、62%)。H NMR(300MHz,CDCl):δ7.57(s,1H)、7.20(d,1H,J=8.4Hz)、6.98(d,1H,J=8.1Hz)、2.73(t,6H,J=7.5Hz)、1.92(d,4H,J=5.4Hz)、1.62(pentet,2H,J=7.2Hz)、1.41(sextet,2H,J=7.2Hz)、0.93(t,3H、J=7.5Hz)。
【0168】
3−n−ブチル−9H−カルバゾール(8).7(5.64g、24.8mmol)および10重量%の白金を担持した活性炭(1.09g)の混合物を250〜260℃に、水素の発生が終わるまで加熱した。次に混合物をTHFで抽出し、溶媒を蒸発させた。固体をエタノールから再結晶化し、僅かに茶色をした固体として8を得た(3.85g、69%)。H NMR(300MHz,DMSO−d):δ8.03(d,1H,J=7.8Hz)、7.86(s,1H)、7.40(d,1H,J=8.1Hz)、7.31(t,6H,J=7.5Hz)、7.17(dd,J=8.4Hz,J=1.8Hz)、7.08(t,1H,J=8.1Hz)、2.69(t,2H,J=7.2Hz)、1.60(pentet、2H、J=7.5Hz)、1.31(sextet,2H,J=7.5Hz)、0.89(t,3H、J=7.5Hz)。
【0169】
Bu−TCTA(9).トリス(4−ヨードフェニル)アミン(1.87g、3.0mmol)、3−n−ブチル−9H−カルバゾール(2.68g、12.0mmol)、銅粉末(86mg、1.35mmol)、および炭酸カリウム(2.49g、18.0mmol)の攪拌中の混合物に、窒素下でニトロベンゼン(10mL)を加えた。混合物を3日間還流した。高温溶液を濾過し、濾液をメタノール中に滴下して加えた。沈殿物を濾過し、メタノールおよび水で連続して洗浄した。次にそれをベンゼンに再溶解し、ヘキサンからヘキサン/ベンゼン(4:1)の勾配溶媒を溶出液とするシリカゲルカラムに通して僅かに茶色をした固体を得た(943mg、34%)。H NMR(300MHz,CDCl):δ8.13(dd,3H,J=7.5Hz,J=0.9Hz)、7.96(d,3H,J=0.9Hz)、7.38−7.40(m、21H)、7.29(t,6H,J=6.6Hz)、2.83(t、6H、J=7.8Hz)、1.73(pentet,6H,J=7.8Hz)、1.43(sextet,6H,J=7.5Hz)、0.97(t,9H、J=7.2Hz)。
【0170】
Bu−TCTA−3I(10).攪拌しているBu−TCTA(935mg、1.03mmol)およびNIS(811mg、3.60mmol)のクロロホルム(6mL)混合液に、遮光しながら室温で酢酸を加えた。溶液を室温で一晩攪拌した。次に反応混合液を水の中に注ぎ入れ、チオ硫酸ナトリウムで洗浄し、塩化メチレンで抽出した。一つにまとめた塩化メチレン層を水で洗浄し、NaSOで乾燥させてから濃縮した。粗生成物は、ヘキサン/塩化メチレン(6:4)を溶出液に用いたシリカゲルカラムを通して精製し、僅かに茶色をした固体を得た(1.30g、98%)。H NMR(300MHz,CDCl):δ8.44(s,3H)、7.89(s,3H)、7.66−7.50(m,21H)、7.29−7.28(m,3H)、2.83(t,6H,J=7.8Hz)、1.69(pentet,6H,J=7.5Hz)、1.41(sextet,6H,J=7.2Hz)、0.96(t,9H,J=7.8Hz)。
【0171】
Bu−TCTA−3CH2OH(12).10(1.38g、1.07mmol)の乾燥THF(50mL)溶液に、窒素雰囲気下で−78℃にてn−ブチルリチウム(1.5mL、2.5Mヘキサン溶液)を滴下して加えた。溶液を−78℃で2時間攪拌した後DMFを加えた(0.40mL、2.1mmol)。得られた反応混合液をゆっくりと室温まで温め、更に2時間攪拌した。水を用いて反応を停止し、THF溶媒を真空下で蒸発させた。残留物を塩化メチレンで抽出し、一つにまとめた有機層を水で洗浄し、NaSOで乾燥させてから濃縮した。粗生成物11を、エタノール(10mL)およびベンゼン(10mL)の混合溶媒内でNaBH4を用いて還元した。得られた懸濁液を24時間攪拌し、溶媒をロータリーエバポレーターによって除去した。粗生成物は、塩化メチレン/酢酸エチル(9:1)を溶出液に用いたシリカゲルカラムを通して精製し、12を収率31%で得た。H NMR(300MHz,CDCl):δ8.17(s,3H)、7.98(s,3H)、7.60−7.44(m,21H)、7.29(dd,3H,J=8.4Hz,J=1.5Hz)、4.90(s,6H)、2.84(t,6H,J=7.8Hz)、1.74(pentet,6H,J=7.2Hz)、1.45(sextet,6H,J=7.5Hz)、1.26(t,9H,J=6.9Hz)。
【0172】
Bu−TCTA−TTFV(13).12の溶液(255mg、0.26mmol)、4−トリフルオロビニルオキシ−安息香酸(184mg、0.84mmol)、およびDMAP(32mg、0.26mmol)の塩化メタン(10mL)混合液に、EDC(184mg、0.96mmol)を加えた。反応混合液を室温で20時間攪拌した。溶媒は減圧下で蒸発させた。固体を塩化メチレンに再溶解し、水で洗浄し、NaSOで乾燥させてから濃縮した。粗生成物は、塩化メチレン/ヘキサン(4:1)を溶出液に用いたカラムクロマトグラフィーによって精製し、わずかに黄色みかかった固体としてBu−TCTA−TTFVを得た(282mg、68%)。H NMR(300MHz,CDCl):δ8.25(s,3H)、8.14(d,6H,J=9.1Hz)、7.80(s,3H)、7.60−7.51(m,18H)、7.44(t,3H,J=8.4Hz)、7.33−7.30(m,3H)、7.15(d,6H,J=8.1Hz)、5.58(s,6H)、2.85(t,6H,J=7.2Hz)、1.74(pentet,6H,J=7.2Hz)、1.46(sextet,6H,J=7.8Hz)、1.01(t,9H,J=7.2Hz)。C9675についての分析計算値:C,72.08;H,4.73;N,3.50。実測値:C,71.99;H,4.95;N,3.43。
【0173】
TCTA−21(14).攪拌中のTCTA(1.40g、1.89mmol)およびNIS(893mg、2.97mmol)のクロロホルム混合液に、遮光下、室温で酢酸(8mL)を加えた。溶液は室温で一晩攪拌した。反応混合液を水に注ぎ込み、チオ硫酸ナトリウムで洗浄し、塩化メチレンで抽出した。一つにまとめた塩化メチレン層は水で洗浄し、NaSOで乾燥させてから濃縮した。粗生成物は、ヘキサン/塩化メチレン(6:4)を溶出液に用いたシリカゲルカラムを通して精製し、わずかに茶色をした固体を得た(1.36g、72%)。H NMR(300MHz,CDCl):δ8.49(s,2H,J=1.8Hz)、8.19(d,2H,J=7.8Hz)、8.12(d,2H,J=7.8Hz)、7.71(dd,2H,J=8.7Hz,J=1.8Hz)、7.62−7.45(m,20H)、7.37−7.31(m,6H)。
【0174】
TCTA−2CHO(15).14(834mg、0.84mmol)の乾燥THF(30mL)溶液に、n−ブチルリチウム(0.74mL、2.5Mヘキサン溶液)を、窒素雰囲気下、−78℃で滴下して加えた。溶液を−78℃で45分間攪拌した後、DMF(0.16mL、2.1mmol)を加えた。得られた反応混合液をゆっくり室温まで温め、一晩攪拌した。反応は水で停止し、THF溶媒を真空下に蒸発させた。残留物を塩化メチレンで抽出した。一つにまとめた有機層を水で洗浄し、NaSOで乾燥させてから濃縮した。粗生成物は、ヘキサン/塩化メチレン(1:1)から塩化メチレンの勾配溶媒を溶出液に用いたシリカゲルカラムを通して精製して黄色の固体を得た(384mg、57%)。H NMR(300MHz,CDCl):δ10.17(s,2H)、8.72(s,2H)、8.25(d,2H,J=7.8Hz)、8.20(d,2H,J=7.8Hz)、8.02(dd,2H,J=8.4Hz,J=1.2Hz)、7.67−7.40(m,24H)、7.34(t,2H,J=6.6Hz)。
【0175】
TCTA−2CHOH(16).15の溶液(384mg、0.48mmol)のベンゼン(10mL)およびエタノール(10mL)の混合溶媒溶液に、NaBH(109mg、2.88mmol)を室温で加えた。得られた懸濁液を24時間攪拌し、溶媒をロータリーエバポレーターによって除去した。粗生成物を、塩化メチレン/酢酸エチル(9:1)を溶出液とするシリカゲルカラムを通して精製し、白色の固体を得た(369mg、96%)。H NMR(CDCl)δ8.18(d,6H,J=7.5Hz)、7.63−7.45(m,24H)、7.34(t,4H,J=6.9Hz)、4.92(s,4H)。
【0176】
TCTA−BVB(17).16(530mg、0.69mmol)の溶液に水素化ナトリウム(53mg、2.1mmol)を窒素下、室温で加えた。2.5時間攪拌した後、塩化4−ビニルベンジル(427mg、2.8mmol)を加え、混合液を一晩攪拌した。懸濁液を水に注ぎ込み、塩化メチレンで抽出した。抽出物をNaSOで乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、ヘキサン/塩化メチレン(3:2)を溶出液に用いるカラムクロマトグラフィーによって精製し、わずかに黄色みを帯びた固体としてTCTA−BVBを得た(371mg、52%)。H NMR(CDCl)δ8.21(d,J=6.9Hz,3H)、7.64−7.33(m,36H)、6.77(q,2H,J=10.8Hz,J=6.9Hz)、5.80(d,2H,J=17.7Hz)、5.29(d,2H,J=10.5Hz)、4.80(s,4H)、4.65(s,4H)。C7456についての分析計算値:C,86.02;H,5.46;N,5.42。実測値:C,85.95;H,5.54;N,5.37。
【0177】
実施例2
TPDおよびNPD誘導体の合成
本実施例では、TPDおよびNPD誘導体の合成について記載した。
【0178】
N,N’−ジ−トリル−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)およびN,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)は、ビフェニル部分を含有し、それらの持つ高い電荷担持移動性から、正孔輸送物質として広く用いられている。ビニルベンジルまたはトリフルオロビニルのような熱で架橋できる成分をTPDまたはα−NPD核に連結することによって、本発明は、スピンコーティング工程中にインサイチュー架橋反応を受けて、正孔輸送層として溶媒耐性ネットワークを生成できる、架橋可能なTPDまたはα−NPD化合物を提供する。
【0179】
ジヒドロキシTPD 4は、図8の合成概略図に従って得た;ジヒドロキシNPD 8は、図9の合成概略図に従って得た。ジヒドロキシBNPD 12aおよびジヒドロキシBTPD 12bは、図10の合成概略図に従って得た。次に、図14に従って、ジヒドロキシTPD 4、ジヒドロキシNPD 8、ジヒドロキシBNPD 12a、およびジヒドロキシBTPD 12bは、NaHを塩基として用いることによって、4−塩化ビニルベンジルでエーテル化し、代表的な化合物1−TPD、1−NPD、2−TPD、および2−NPDを得た。
【0180】
TPD作製の合成の詳細は図8に図示する。連続的なHarwing−BuchwaldのPd触媒アミノ化では、まずアニリンが4−ブロモトルエンにカップリングして化合物1を生じ、次にこれを4,4’−ジブロモビフェニルと反応させ2を得た。二糖量のオキサ塩化リンおよびDMFを用いて化合物2のVilsmeierホルミル化し、生成物3を得た。水素化ホウ素ナトリウムを用いて3を還元し、TPDを基本とする化合物4を生成した。
【0181】
NPD作製の合成の詳細は図9に図示する。同様に4,4’−ジブロモビフェニルを用いた1−ナフチルアミンのPd触媒カップリングは化合物5aを生じ、これを次にTBDMS保護した4−ブロモアルコールと反応させ7を得た。1.0Mフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)THF溶液を用いた7のTBDMS基の脱シリル化は、NPDを基本とする化合物8を生じた。
【0182】
BTPDおよびBNPD作製の合成の詳細は図10に図示する。一当量の保護された4−ブロモベンジルアルコールを用いたNPDを基本とする化合物5aおよびTPDを基本とする化合物のPd触媒C−Nカップリングは、片側反応生成物9aおよび9bを生成した。次に二当量の二級アミン9を10とカップリングさせて11を得て、これをTBAFにより脱保護化し、BNPDを基本とする化合物12aおよびBTPDを基本とする化合物12bの連結二量体を得た。
【0183】
図9は、代表的なTPDまたはα−NPDを基本とする誘導体の合成を描いている。2ユニットの架橋基、ビニルベンジルをTPDまたはα−NPD核に結合し、架橋可能なTPD−BVBまたはNPD−BVBを得ることができる。活性な正孔輸送含有量が高いほど、正孔輸送容量が高いことが認識されている。正孔輸送能力を最適化するために、BTPDおよびBNPDを基本とする誘導体のような、より高い正孔輸送容量を持つTPDまたはα−NPDを基本とする誘導体を合成した。代表的な化合物、BTPD−BVBおよびBNPD−BVは共に、二つのビニルベンジル(VBまたはスチレン)架橋基を持つ二つの連結ジアミン分子から成る。
【0184】
化合物3の合成.2(2.58g、5mmol)およびDMF(0.88mL、11.4mmol)の1,2−ジクロロエタン(20mL)の溶液に、シリンジを使ってPOCl(1.1mL、11.8mmol)を加えた。混合液を90℃で13時間攪拌した。室温まで冷却した後、溶液をNaOAc溶液(50mL中に 1g)に注ぎ込み、30分間攪拌した。混合液をCHClおよび水で抽出した。有機溶媒を除去した後、残留物をシリカゲルのクロムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、v/v、3/1)によって直接精製し、生成物3を得た(1.9g、66%):H NMR(500MHz,CDCl)δ2.40(s,6H)、7.09(d,J=8.5Hz,2H)、7.14(d,J=8.5Hz,2H)、7.22(d,J=8.5Hz,2H)、7.25(d,J=8.5Hz,2H)、7.55(d,J=8.5Hz,2H)、7.72(d,J=8.5Hz,2H)、9.84(s,1H);13C NMR(125MHz,CDCl)。δ21.0,119.1,125.9,126.6,127.8,128.7,130.4,131.3,135.3,136.4,143.2,145.2,153.2,190.5;HRMS(ESI)(M+H.C4032):計算値:572.2464;実測値:572.2458。
【0185】
化合物4の合成4.3(1.8g、3.15mmol)のEtOH(100mL)の溶液に、NaBH(0.95g、25.2mmol)を加えた。混合液をN下で18時間還流した。水を加え、反応液を停止した。EtOHを除去した後、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、v/v、1/1)によって直接精製し、生成物4を得た(1.6g、88%):H NMR(500MHz,CDCl)δ2.36(s,6H)、4.64(s,4H)、7.06(d,J=8.5Hz,2H)、7.09−7.14(m,12H)、7.26(d,J=8.5Hz,2H)、7.43(d,J=9Hz,2H);13C NMR(125MHz,CDCl)。δ20.8,64.9,123.4,123.5,124.9,127.1,128.2,129.9,132.9,134.3,134.5,144.3,146.6,147.3;HRMS(ESI)(M+H.C4036):計算値:576.2777;実測値:576.2783。
【0186】
化合物の1−TPDの合成.4(0.8g、1.39mmol)の乾燥DMF(10mL)の溶液に、NaH(0.1g、4.17mmol)を加えた。混合液を室温で1時間攪拌してから、0℃まで冷却した。シリンジを使って塩化4−ビニルベンジル(0.47mL、3.3mmol)を上記溶液に滴下して加えた。混合液を60℃で24時間加熱した。水を加えて反応を停止した。有機層をCHClおよび水で抽出しDMFを取り除いた。CHCl除去後、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、v/v、8/1)によって直接精製し、固体の1−TPD(0.6g、54%)を得た。:H NMR(300MHz,CDCl)δ2.35(s,6H)、4.51(s,4H)、4.60(s,4H)、5.27(d,J=10.8Hz,2H)、5.77(d,J=17.4Hz,2H)、6.75(dd,J=10.8Hz,J=17.4Hz,2H)、7.0−7.2(m,16H)、7.2−7.3(m,3H)、7.3−7.5(m,13H);13C NMR(125MHz,CDCl)。δ20.8,71.8,71.9,113.8,123.5,123.6,125.0,126.2,127.2,128.0,129.0,130.0,132.0,132.9,134.4,136.6,137.0,138.0,145.0,146.8,147.4;HRMS(ESI)(M+H.C5852):計算値:808.4029;実測値:808.4036。
【0187】
化合物7の合成.5a(2.5g、5.73mmol)、6(3.8g、12.6mmol)、Pd(dba)(0.19g、0.2mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン(0.17g、0.3mmol)、およびt−BuONa(1.8g、18.7mmol)のトルエン(100mL)溶液を110℃で24時間攪拌した。溶媒は真空で除去し、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、v/v、9/1)によって精製し、固体7を得た(2.3g)。H NMR(500MHz,CDCl)δ0.16(s,12H)、0.98(s,18H)、4.74(s,4H)、7.08(d,J=8Hz,4H)、7.10(d,J=8.5Hz,4H)、7.23(d,J=8.5Hz,4H)、7.39(d,J=7.5Hz,4H)、7.42(d,J=8.5Hz,4H)、7.49(d,J=7.5Hz,2H)。7.52(d,J=7.5Hz,2H)、7.82(d,J,=8Hz,2H)、7.93(d,J=8.5Hz,2H)、8.01(d,J=8.5Hz,2H);13C NMR(125MHz,CDCl)。δ18.4,16.0,64.8,121.6,122.0,124.3,126.1,126.31,126.34,127.0,127.09,127.10,128.3,131.2,133.6,134.8,135.3,143.5,147.2,147.4;HRMS(ESI)(M+H.C5864Si):計算値:876.4506;実測値:876.4514。
【0188】
化合物8の合成.7(2.4g、2.73mmol)のTHF(20mL)の溶液に、1M TBAFのTHF(6mL、6mmol)溶液を加えた。混合液を室温で2時間攪拌した。THF除去後、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、v/v、1/1次に3/1)により精製し、生成物8を得た(1.6g、90%)。H NMR(500MHz,CDCl)δ4.61(s,4H)、7.09(d,J=8.5Hz,8H)、7.23(d,J=8.5Hz,4H)、7.34−7.44(m,8H)、7.46−7.55(m、4H)、7.81(d,J=8.5Hz,2H)、7.93(d,J=8.5Hz,2H)、7.99(d,J=8.5Hz,2H);13C NMR(125MHz,CDCl)。δ64.9,121.8,121.9,124.1,126.1,126.3,126.4,126.5,127.06,127.11,128.2,128.4,131.1,133.8,134.0,135.2,143.3,147.1,147.8;HRMS(ESI)(M+H.C4636):計算値:648.277;実測値:648.2778。
【0189】
1−NPDの合成.8(0.75g、1.16mmol)の乾燥DMF(8mL)の溶液に、NaH(83.5mg、3.48mmol)を加えた。混合液を室温で1時間攪拌してから0℃まで冷却した。塩化4−ビニルベンジル(0.4mL、2.78mmol)を上記の溶液にシリンジをつかって加えた。混合液は60℃で24時間加熱した。水を加えて、反応を停止した。有機溶媒をCHClおよび水で抽出してDMFを除いた。CHClを除去した後、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、v/v、6/1)で直接精製し、固体1−NPDを得た(0.61g、60%)。H NMR(500MHz,CDCl):δ4.53(s,4H)、4.63(s,4H)、5.31(d,J=10Hz,2H)、5.82(d,J=17.5Hz,2H)、6.79(dd,J=10Hz,J=17.5Hz,2H)、7.13(s,br,8H)、7.27(d,J=6Hz,4H)、7.35−7.65(m,20H)、7.84(d,J=6.5Hz,2H)、7.95(d,J=6.5Hz,2H)、8.03(d,J=7Hz,2H);13C NMR(125MHz,CDCl)。δ71.8,113.7,121.7,121.9,124.2,126.1,126.2,126.3,126.4,126.5,127.0,127.2,127.9,128.3,129.0,131.1,131.3,133.8,135.2,136.5,136.9,137.9,143.3,147.1,147.8;HRMS(ESI)(M+H.C6452):計算値:880.4029;実測値:880.4035。
【0190】
化合物9bの合成.5b(2.9g、7.95mmol)、6(2.4g、7.95mmol)、Pd(dba)(0.12g、0.13mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン(0.14g、0.25mmol)、およびt−BuONa(1g、10.4mmol)のトルエン(100mL)溶液を110℃で24時間攪拌した。溶媒は真空で除去し、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、v/v、6/1)によって精製し、固体9bを得た(1.86g、40%)。H NMR(500MHz,CDCl)δ0.22(s,6H)、1.06(s,9H)、2.41(s,6H)、4.80(s,2H)、7.05−7.25(m,14H)、7.31(d,J=8Hz,2H)、7.51(d,J=5.5Hz,2H)、7.54(d,J=8Hz,2H);13C NMR(125MHz,CDCl)。δ−5.0,18.4,20.8,26.0,64.8,117.1,118.9,123.0,123.5,123.8,123.8,124.7,126.9,127.1,129.9,132.5,135.4,145.2,146.8;HRMS(ESI)(M+H.C3944OSi):計算値:584.3223;実測値:584.3229。
【0191】
化合物11bの合成.Pd(dba)(45.8g、0.05mmol)およびトリ−tert−ブチルホスファン(61mg、0.3mmol)をN下で乾燥トルエン(15mL)に溶解した。室温で10分間攪拌した後、9b(1.3g、2.2mmol)、10(0.5g、1.1mmol)、およびt−BuONa(0.25g、2.6mmol)を溶液に加えた。溶液を脱気し、5分間Nを用いてから100℃で16時間加熱した。室温まで冷却した後、溶媒を真空で除き、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、v/v、8/1)を用いて精製し、固体11bを得た(0.9g、60%)。H NMR(500MHz,CDCl)δ0.17(s,12H)、1.01(s,18H)、2.38(s,12H)、4.57(s,4H)、4.76(s,4H)、7.08(d,J=3.5Hz,4H)、7.10(d,J=3.5Hz,4H)、7.11−7.18(m,24H)、7.26(d,J=8Hz,4H)、7.30(d,J=8.5Hz,4H)、7.46(d、J=3.5Hz、4H)、7.47(d.J=3.5Hz,4H);13C NMR(125MHz,CDCl)。δ−5.2,18.4,20.8,26.0,64.8,72.0,123.3,123.5,123.6,123.9,124.8,125.0,127.13,127.14,129.0,129.89,129,94,132.2,132.7,132.9,134.5,135.6,145.1,145.2,146.71,146.72,147.0,147.4;HRMS(ESI)(M+H.C9399Si):計算値:1361.7225;実測値:1361.7228。
【0192】
化合物12bの合成。11b(0.85g、0.63mmol)のTHF(10mL)溶液に1MのTBAFのTHF(1.4mL、1.4mmol)溶液を加えた。混合液は室温で10時間攪拌した。THF除去後に残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、v/v、1/1)で精製し、生成物12bを得た(0.6g、84%)。H NMR(500MHz,CDCl)δ2.37(s,12H)、4.57(s,4H)、4.66(s,4H)、7.06−7.11(m,8H)、7.11−7.19(m,24H)、7.28(d,J=7Hz,4H)、7.30(d,J=7.5Hz,4H)、7.46(d,J=8Hz,8H);13C NMR(125MHz,CDCl)。δ20.8,25.6,65.0,71.4,123.5,123.5,123.55,123.60,125.0,127.15,127.17,128.2,129.0,129.9,130.0,132.1,132.88,132.93,134.3,134.5,134.7,144.97,144.99,146.7,146.8,147.4,147.5;HRMS(ESI)(M+H.C8171):計算値:1133.5495;実測値:1133.5483。
【0193】
化合物2−TPDの合成.12b(0.4g、0.35mmol)の乾燥DMF(5mL)の溶液にNaH(25.2mg、1.05mmol)を加えた。混合液を室温で1時間攪拌してから0℃まで冷却した。シリンジを使って塩化4−ビニルベンジル(0.12mL、0.84mmol)を上記溶液に加えた。混合液を60℃で24時間加熱した。水を加えて反応を停止した。有機溶媒をCHClおよび水で抽出して、DMFを除去した。CHClを除去した後、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、v/v、5/1)で直接精製し、固体2−TPDを得た(0.34g、71%)。H NMR(500MHz,CDCl):δ2.37(s,12H)、4.57(s,4H)、4.53(s,4H)、4.57(s,4H)、4.62(s,4H)、5.29(d,J=11Hz,2H)、5.80(d,J=17.5Hz,4H)、6.77(dd,J=11Hz,J=17.5Hz,2H)、7.09(d,J=8Hz,8H)、7.11−7.20(m,24H)、7.26(d,J=8.5Hz,4H)、7.30(d,J=7.5Hz,4H)、7.47(d,J=7.5Hz,12H);13C NMR(125MHz,CDCl)。δ20.8,71.8,71.9,72.0,113.8,123.49,123.52,123.57,123.59,125.0,126.2,127.2,128.0,129.01,129.04,129.9,132.0,132.2,132.9,134.41,134.44,136.5,137.0,138.0,145.0,146.75,146.77,147.41,147.44;HRMS(ESI)(M+H.C9987):計算値:1365.6747;実測値:1365.6757。
【0194】
化合物9aの合成.5a(2g、4.58mmol)、6(1.38g、4.58mmol)、Pd(dba)(68mg、0.074mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン(83mg、0.15mmol)、およびt−BuONa(0.6g、6.2mmol)のトルエン(50mL)溶液を110℃で24時間攪拌した。溶媒は真空で除去し、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、v/v、6/1)によって精製し、固体9aを得た(1.35g、45%)。H NMR(500MHz,CDCl)δ0.16(s,6H)、1.00(s,9H)、4.73(s,2H)、6.02(s,1H)、7.03−7.19(m,6H)、7.23(d,J=8Hz,2H)、7.37−7.59(m,12H)、7.62(d,J=5.5Hz,1H)、7.82(d,J=8Hz,1H)、7.92(d,J=8.5Hz,1H)、7.94(d,J=8.5Hz,1H)、8.03(d,J=8Hz,1H)、8.08(d,J=8Hz,1H);13C NMR(125MHz,CDCl)。δ−5.1,18.4,26.0,64.8,115.9,117.7,121.7,121.8,122.0,124.4,125.7,126.0,126.1,126.3,126.4,127.0,127.1,127.4,127.7,128.4,128.5,131.3,133.0,133.9,134.7,134.8,135.3,138.7,143.6,147.3,147.3;HRMS(ESI)(M+H.C4544OSi):計算値:656.3233;実測値:656.3221。
【0195】
化合物11aの合成.Pd(dba)(23mg、0.025mmol)およびトリ−tert−ブチルホスファン(30mg、0.15mmol)をN下で乾燥トルエン(10mL)に溶解した。室温で10分間攪拌した後、9a(0.6g、0.9mmol)、10(0.2g、0.45mmol)、およびt−BuONa(0.1g、1.04mmol)を溶液に加えた。溶液を脱気し、5分間Nを用いてから100℃で16時間加熱した。室温まで冷却した後、溶媒を真空で除き、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、v/v、6/1)を用いて精製し、固体11aを得た(0.4g、59%)。H NMR(500MHz,CDCl)δ0.17(s,12H)、1.01(s,18H)、4.53(s,4H)、4.75(s,4H)、7.04−7.14(m,16H)、7.24(d,J=8Hz,4H)、7.25(d,J=8Hz,4H)、7.35−7.46(m,16H)、7.46−7.56(m,8H)、7.82(d,J=8.5Hz,4H)、7.94(d,J=6Hz,4H)、8.00(d、J=8Hz、2H)、8.02(d.J=8Hz,2H);13C NMR(125MHz,CDCl)。δ−5.2,18.4,26.0,64.8,71.9,121.6,121.7,121.9,122.0,124.25,124.33,126.08,126.11,126.3,126.35,126.38,126.5,127.0,127.1,127.2,128.3,129.0,131.2,131.5,133.5,133.9,134.9,135.2,143.4,143.5,147.1,147.2,147.4,147.8;HRMS(ESI)(M+H.C10498Si):計算値:1506.7177;実測値:1506.7167.b。
【0196】
化合物12aの合成.11a(0.4g、0.27mmol)のTHF(10mL)溶液に、1MのTBAFのTHF(0.58mL、0.58mmol)の溶液を加えた。混合液は室温で3時間攪拌した。THFを除去した後、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、v/v、1/1)で精製し、生成物12aを得た(0.27g、80%)。H NMR(500MHz,CDCl)δ4.50(s,4H)、4.64(s,4H)、7.03−7.18(m,16H)、7.22(d,J=6.5Hz,4H)、7.24(d,J=6.4Hz,4H)、7.35−7.45(m,16H)、7.45−7.6(m,8H)、7.80(d,J=6.5Hz,2H)、7.81(d,J=7Hz,2H)、7.91(d、J=7Hz、2H)、7.92(d.J=6.5Hz,2H)、7.95−8.2(m,4H);13C NMR(125MHz,CDCl)。δ65.0,71.9,,121.8,121.8,121.9,122.0,124.16,124.21,126.10,126.13,126.3,126.38,126.41,126.47,126.51,127.05,127.08,127.14,127.15,128.2,128.35,128.38,129.0,131.12,131.13,131.5,133.7,133.95,133.98,135.22,135.24,143.28,143.30,147.1,147.2,147.8,147.9;HRMS(ESI)(M+H.C9270):計算値:1278.5448;実測値:1278.5461。
【0197】
化合物2−NPDの合成.12a(0.22g、0.17mmol)のDMF(8mL)の溶液にNaH(12.5mg、0.52mmol)を加えた。混合液は室温で1時間攪拌してから、0℃まで冷却した。シリンジを使って、上記溶液に塩化4−ビニルベンジル(0.07mL、0.52mmol)を加えた。混合液を60℃で24時間加熱した。水を加えて反応を停止した。有機溶媒をCHClおよび水で抽出して、DMFを除去した。CHClを除去した後、残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/CHCl、v/v、1/4)で直接精製し、固体2−NPDを得た(0.1g、39%)。H NMR(500MHz,CDCl):δ4.50(s,4H)、4.51(s,4H)、4.60(s,4H)、5.28(d,J=11Hz,2H)、5.79(d,J=17.5Hz,2H)、6.76(dd,J=11Hz,J=17.5Hz,2H)、7.03−7.14(m,16H)、7.23(d,J=8Hz,4H)、7.24(d,J=8Hz,4H)、7.35−7.46(m,24H)、7.46−7.56(m,8H)、7.805(d,J=8Hz,2H)、7.813(d,J=8Hz,2H)、7.91(d,J=8Hz,2H)、7.92(d,J=8Hz,2H)、7.97(d,J=8Hz,2H)、7.98(d,J=8Hz,2H);13C NMR(125MHz,CDCl)。δ71.81,71.84,71.9,113.7,121.71,121.7,121.89,121.94,124.2,126.2,126.3,126.4,126.5,127.1,127.2,128.0,128.4,129.01,129.03,130.0,131.2,131.3,131.5,133.8,133.9,135.3,136.5,136.9,138.0,143.4,147.2,147.2,147.8,147.9;HRMS(ESI)(M+H.C11086):計算値:1510.6700;実測値:1510.6734。
【0198】
実施例3
正孔輸送二重層を有する代表的なPLED装置
本実施例では、正孔輸送二重層を有する代表的なPLED装置を組み立てる。前記正孔輸送二重層では、第一層は架橋されたポリスチレン−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−(1,1’)−ビフェニル−4,4’−ジアミン−トリフルオロ−ビニルエーテル(PS−TPD−TFV)を含み、第二層は架橋されたTCTA−TTFVまたは架橋されたBu−TCTA−TTFVのいずれかを含む。
【0199】
PLEDは、前もって清浄化し、Oプラズマ処理しておいたITO被覆ガラス基体の上に作製した。プラズマ処理後、基体はグローブボックス内に移され、その後のフィルム形成工程は全て、その中で、アルゴン保護下に実施された。二重HTLを有するLEDの場合、第一HTLは、ITO上にPS−TPD−TFV溶液をスピンコーティングし、次にそれをホットプレート上で235℃で40分間熱架橋することによって形成した。こうすることで良好な溶媒耐性を備えた強固で均質なフィルムが形成でき、我々はこの架橋された正孔輸送ネットワークをPS−TPD−PFCBと呼んだ。この層の上面に、第二HTLを、TCTA−TTFVまたはBu−TCTA−TTFVのいずれかをスピンコーティングし、次にそれらを225℃で40分間熱架橋するか、またはTCTA−BVB溶液をスピンコーティングし、180℃で30分間架橋することによって形成した。次に前記HTLの上面に40nmの厚みを持つEMLをスピンコーティングした。厚さ25nmのTPBI層を、1×10−6トル以下の真空下で昇華させた。厚さ1nmのフッ化セシウム(CsF)および200nmのAlをカソードとして連続して蒸着した。
【0200】
性能試験は、封入せずに、室温、空気中で実施した。電流密度−電圧(J−V)特性は、Hewlett−Packard 4155B半導体パラメータ分析装置を使って測定した。PLおよびELスペクトルは、分光光度計(Instaspec IV,Oriel Co.)によって記録した。EL発光の光力は、較正済みのSi−フォトダイオードおよびNewport 2835−Cマルチファンクショナル光学計測器によって測定した。光度単位(cd/m)は、発光がランバート空間分布すると仮定して、装置のELスペクトルと共に前方出力を用いて計算した。
【0201】
実施例4
一体型正孔注入・正孔輸送二重層を有する代表的な装置
本実施例では、一体型正孔注入・正孔輸送二重層を有する代表的なPLED装置は、事前に乾燥させておいたPEDOT:PSS層の上面にTCTA−VBをスピンコーティングおよび架橋することによって作製した。PEDOT:PSS層は、正孔注入層である。架橋されたTCTA−VB分子は、正孔輸送層を形成する。
【0202】
装置の組立て.HTL層は、TCTA−BVBの1,2−ジクロロエタン溶液を事前に乾燥させておいた(125℃、10分間)PEDOT:PSS層の上面にスピンコーティングすることによって形成した。180℃で30分間、完全に架橋された後、HIL/HTL二重層の上面に厚さ約30nmのエレクトロルミネセント(EL)層をスピンコーティングした。1×10−6トル以下の真空下で、1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(TPBI、約25nm)から成るETLを昇華させた。厚さ1nmを持つフッ化セシウムおよび200nmのアルミニウムをカソードとして連続的に蒸着した。
【0203】
性能測定.装置試験は、空気中、室温で実施した。ELスペクトルは、CCD検出器を備えたOriel Instaspec IV分光光度計を用いて記録した。電流密度−電圧(J−V)特性は、Hewlett−Packard 4155B半導体パラメータ分析装置を使って測定した。ITO側の通常方向のEL発光の光力は、較正済みのSi−フォトダイオードおよびNewport 2835−Cマルチファンクショナル光学計測器によって測定した。前方輝度と効率の関係は、発光がランバート空間分布すると仮定して、装置のELスペクトルと共に前方出力から計算した[35]。その後、前方発光LEおよびPEを、PR−650 Spectra Colorimeter(Photo Research Co.,)によって直接測定した輝度−電力密度関係を使って再較正した。同時にCIE座標をPR−650を使って測定した。
【0204】
AFMおよびXPS特性.比較の信頼性のために、ITO上のPEDOT:PSSの一つの小片を四つにスライスし、次にスピンコーティングおよび熱アニーリングをそれぞれ行って、それらの上に様々な厚みのTCTA−VB層を形成した。空気中でのタッピングモード測定は、Nanoscope III AFM(Digital Instruments)を用いて行った。XPS測定は、約5×10−9トルの圧の真空チャンバー内で、Al K−α供給源を備えたX−Probe(Surface Sciences Instruments)を用いて、標準分析角度(35°)で実施した。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】図1は、本発明の代表的な化合物、トリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン−トリス(トリフルオロビニルエーテル)(TCTA−TTFV)の構造を示す図である。
【図2】図2は、本発明の代表的な化合物、4,4’,4’’−トリス(N−3−n−ブチル−カルバゾール)トリフェニルアミン−トリス(トリフルオロビニルエーテル)(Bu−TCTA−TTFV)の構造を示す図である。
【図3】図3は、本発明の代表的な化合物、トリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン−ビス(ビニルベンジルエーテル)(TCTA−BVB)の構造を示す図である。
【図4】図4Aおよび4Bは、本発明の代表的な化合物、TPD−BVB(1−TPD)およびNPD−BVB(1−NPD)の構造を示す図である。
【図5】図5Aおよび5Bは、本発明の代表的な化合物、BTPD−BVB(2−TPD)およびBNPD−BVB(2−NPD)の構造を示す図である。
【図6−1】図6は、本発明の代表的な化合物、TCTA−TTFVの調製の概略図である。
【図6−2】図6は、本発明の代表的な化合物、TCTA−TTFVの調製の概略図である。
【図6−3】図6は、本発明の代表的な化合物、TCTA−TTFVの調製の概略図である。
【図6−4】図6は、本発明の代表的な化合物、TCTA−TTFVの調製の概略図である。
【図7−1】図7は、本発明の架橋可能化合物の作製に有用な化合物、4,4’,4’’−トリス(N−3−n−ブチル−カルバゾール)トリフェニルアミン(Bu−TCTA)の調製の概略図である。
【図7−2】図7は、本発明の架橋可能化合物の作製に有用な化合物、4,4’,4’’−トリス(N−3−n−ブチル−カルバゾール)トリフェニルアミン(Bu−TCTA)の調製の概略図である。
【図7−3】図7は、本発明の架橋可能化合物の作製に有用な化合物、4,4’,4’’−トリス(N−3−n−ブチル−カルバゾール)トリフェニルアミン(Bu−TCTA)の調製の概略図である。
【図8】図8は、本発明の架橋可能化合物の作製に有用な化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−(1,1’)−ビフェニル4,4’−ジアミン(TPD)の調製の概略図である。
【図9】図9は、本発明の架橋可能化合物の作製に有用な化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル4,4’−ジアミン(NPD)の調製の概略図である。
【図10−1】図10は、本発明の架橋可能化合物の作製に有用な化合物、ビ−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル4,4’−ジアミン(BNPD)およびビ−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−(1,1’)−ビフェニル−4,4’−ジアミン化合物(BTPD)の調製の概略図である。
【図10−2】図10は、本発明の架橋可能化合物の作製に有用な化合物、ビ−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル4,4’−ジアミン(BNPD)およびビ−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−(1,1’)−ビフェニル−4,4’−ジアミン化合物(BTPD)の調製の概略図である。
【図11−1】図11は、本発明の代表的化合物、4,4’,4’’−トリス(N−3−n−ブチル−カルバゾール)トリフェニルアミン−トリス(トリフルオロビニル)(Bu−TCTA−TTFV)の調製の概略図である。
【図11−2】図11は、本発明の代表的化合物、4,4’,4’’−トリス(N−3−n−ブチル−カルバゾール)トリフェニルアミン−トリス(トリフルオロビニル)(Bu−TCTA−TTFV)の調製の概略図である。
【図11−3】図11は、本発明の代表的化合物、4,4’,4’’−トリス(N−3−n−ブチル−カルバゾール)トリフェニルアミン−トリス(トリフルオロビニル)(Bu−TCTA−TTFV)の調製の概略図である。
【図12−1】図12は、本発明の代表的化合物、トリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン−ビス(ビニルベンジルエーテル)(TCTA−BVB)の調製の概略図である。
【図12−2】図12は、本発明の代表的化合物、トリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン−ビス(ビニルベンジルエーテル)(TCTA−BVB)の調製の概略図である。
【図12−3】図12は、本発明の代表的化合物、トリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン−ビス(ビニルベンジルエーテル)(TCTA−BVB)の調製の概略図である。
【図13】図13はトリフルオロビニルエーテルまたはビニルベンジルエーテル架橋可能基を有するTCTA−誘導体の重合反応の熱重量分析(TGA)を表す図である。
【図14】図14は、TPD、NPD、BTPD、およびBNPD誘導体の熱架橋可能誘導体の調製を表す概略図である。
【図15】図15は、トリフルオロビニルエーテルまたはビニルベンジルエーテル架橋可能基を有するTCTA−誘導体の重合反応の示差走査熱量(DSC)曲線を比較した図である。
【図16】図16Aおよび16Bは、225℃、30分間熱硬化させた後のITO基体上のTFV−官能化TCTAの光学顕微鏡像である。(16A)トリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン−ペルフルオロシクロブタン(TCTA−PFCB);(16B)4,4’,4’’−トリス(N−3−n−ブチル−カルバゾール)トリフェニルアミン−トリス(トリフルオロビニル)−ペルフルオロシクロブタン(Bu−TCTA−PFCB)。
【図17】図17は、160℃で30分間硬化させた1−TPDの吸収スペクトルを、クロロベンゼン洗浄前(実線)と洗浄後(破線)で比較した図である。
【図18】図18は、1−TPDの第一および第二加熱を示す温度対熱流図である。
【図19】図19は、BuNPFのアセトニトリル溶液(0.1M)中における、ITO基体上の1−TPDの架橋フィルムのサイクリック・ボルタモグラムを示す図である。
【図20】図20A〜20Dは、(20A)、1−TPD 粗度=0.91nm;(20B)2−TPD、RMS粗度=0.99nm;(20C)1−NPD、RMS粗度=0.90nm;および(20D)2−NPD、RMS粗度=0.81nmをITO上にスピンコーティングして硬化させたHTMの原子間力顕微鏡像。
【図21】図21は、正孔のみの装置ITO/HTL/Au内の電流の場依存性を示す電流密度−電圧曲線を比較した図である;1−TPD(実線)、1−NPD(点線)、2−TPD(破線)、および2−NPD(一点鎖線)。
【図22】図22は、発光性高分子のポリ[2,7−(9,9’−ジヘキシルフルオレン)−alt−4,5−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール)](PFBT5)の化学構造を示した図である。
【図23】図23は本発明のいくつかの代表的な装置(ITO/HTL/PFBT5/CsF/Al)と、架橋された正孔輸送物質:1−TPD、2−TPD、2−NPD、および1−NPDに由来する正孔輸送層とを、電圧の関数として電流密度を比較した図である。
【図24】図24は、本発明の四種類の代表的な装置(ITO/HTL/PFBT5/CSF/Al)と、架橋された正孔輸送物質:2NPD、2−TPD、1−NPD、および1−TPDに由来する正孔輸送層とを、電圧の関数として輝度を比較した図である。
【図25】図25Aと25Bは、225℃、30分間熱硬化後の、PS−TPD−PFCB層上のTFV−官能化TCTAの光学顕微鏡像を示した図である。(A)TCTA−PFCB (B)Bu−TCTA−PFCB。
【図26】図26は、180℃、30分間熱効果後の、PS−TPD−PFCB層上TCTA−BVBのタッピングモード原子間力顕微鏡(AFM)像。
【図27】図27は、本発明の代用的な架橋可能化合物、TCTA−BVBを架橋して、本発明の代表的な架橋された正孔輸送物質を得るまでの概略を表した図である。
【図28】図28Aは、正孔輸送二重層(TCTA−PFCBおよびPS−TPD−PFCB)と電子注入物質として1,3,5,−トリス(N−フェニルベンズミダゾール−2−イル)ベンゼン(TPBI)を、青色三重項発光体としてFIr6を用いた、本発明の代表的な装置の概略図;図28は、図28Aの装置のエネルギーレベル図である。
【図29A】図29Aは、FIr6フィルム(x)、PVKホスト中にPIr6を10重量%混合したフィルム(◇)、およびPS−TPD−PFCBフィルム(□)を316nmで励起こした時の光ルミネセンス(PL)スペクトルを比較した図である。図29Bは、二種類のHTL構成を持つLEDからのエレクトロルミネセンス(EL)スペクトルを表した図である:(1)PVK(40nm)/TPB1(25nm)/CsF(1nm)/A1中にITO/HTL/10%Flr6を含み、HTLが単層のPS−TPD=PFCB(30nm)であるLED(○)、および(2)PVK(40nm)/TPB1(25nm)/CsF(1nm)/A1中にITO/HTL/10%Flr6を含み、HTLが二重層のPS−TPD−PFCB(20nm)/TCTA−PFCB(10nm)であるLED(△);図29Bの差し込み図は、340nm〜450nmのELスペクトルの拡大図である。
【図29B】図29Aは、FIr6フィルム(x)、PVKホスト中にPIr6を10重量%混合したフィルム(◇)、およびPS−TPD−PFCBフィルム(□)を316nmで励起こした時の光ルミネセンス(PL)スペクトルを比較した図である。図29Bは、二種類のHTL構成を持つLEDからのエレクトロルミネセンス(EL)スペクトルを表した図である:(1)PVK(40nm)/TPB1(25nm)/CsF(1nm)/A1中にITO/HTL/10%Flr6を含み、HTLが単層のPS−TPD=PFCB(30nm)であるLED(○)、および(2)PVK(40nm)/TPB1(25nm)/CsF(1nm)/A1中にITO/HTL/10%Flr6を含み、HTLが二重層のPS−TPD−PFCB(20nm)/TCTA−PFCB(10nm)であるLED(△);図29Bの差し込み図は、340nm〜450nmのELスペクトルの拡大図である。
【図29C】図29Aは、FIr6フィルム(x)、PVKホスト中にPIr6を10重量%混合したフィルム(◇)、およびPS−TPD−PFCBフィルム(□)を316nmで励起こした時の光ルミネセンス(PL)スペクトルを比較した図である。図29Bは、二種類のHTL構成を持つLEDからのエレクトロルミネセンス(EL)スペクトルを表した図である:(1)PVK(40nm)/TPB1(25nm)/CsF(1nm)/A1中にITO/HTL/10%Flr6を含み、HTLが単層のPS−TPD=PFCB(30nm)であるLED(○)、および(2)PVK(40nm)/TPB1(25nm)/CsF(1nm)/A1中にITO/HTL/10%Flr6を含み、HTLが二重層のPS−TPD−PFCB(20nm)/TCTA−PFCB(10nm)であるLED(△);図29Bの差し込み図は、340nm〜450nmのELスペクトルの拡大図である。
【図30】図30は、二種類の正孔輸送構成:(1)正孔輸送単層PS−TPD−PFCB(○)および(2)正孔輸送二重層PS−TPD−PFCB/TCTA−PFCB(△)を有する、PVK中に10%Flr6を含むことを基本とした本発明の代表的な装置の電流密度と電圧曲線(○)および輝度と電圧曲線(実線)を比較した図である。
【図31】図31は、二種類の正孔輸送構成:(1)正孔輸送単層PS−TPD−PFCB(○)、および(2)正孔輸送二重層PS−TPD−PFCB/TCTA−PFCB(△)を有する、PVK中に10%Flr6を含むことを基本としたLEDの発光効率(LE)−電流密度特性を比較した図である。
【図32】図32Aは、第一正孔輸送物質としてPS−TPD−PFCBを、第二正孔輸送物質としてはTCTA−PFCB、Bu−TCTA−PFCB、またはTCTA−BVBを用いた二重HTL(ITO/PS−TPD−PFCB/TCTA−誘導体/PVK:Flr6(10重量%)TPBI/CsF/Al)を有する三種類の本発明の代表的な装置について、電流密度対電圧曲線を比較した図である;図32Bは、図32Aの三種類の代表的な装置について輝度曲線を比較した図である。
【図33】図33は、本発明の代表的なLED装置の発光層作製に有用な青色発光体Flrpic、緑色発光体Ir(ppy)、および赤色発光体Os−R1の化学構造を描いた図である。
【図34A】図34Aおよび34Bは、未洗浄の架橋TCTA−BVBフィルム(□)とクロロベンゼンで洗浄したもの(○)を比較した、温度対UV−Vis吸収および波長対UV−Vis吸収図である;図34Aは、160℃で30分間部分的に架橋されたTCTA−BVBフィルムのUV−Vis吸収を表した図である;図34Aの挿入図は、示差走査熱量(DSC)測定から得た、初期上昇期間中(黒四角)に未処理のTCTA−BVBの熱架橋プロセスがおおよそ150℃で始まり、170℃でピークに達し、Tは約80℃であり、発熱は170℃にピークを作ること;30分間、180℃に一定に保った後、サンプルを室温まで冷まし、再度走査した:第二上昇期(●)の間に、約175℃を中心としたTgを持つ広範囲の転移が検出された;上昇速度は、いずれの走査でも10℃/分であったことを示す熱流対温度の結果の図である;図25Bは、180℃、30分間で完全に架橋されたTCTA−BVBフィルムのUV−Vis吸収を示す図である;図34Bの挿入図は、ITO上のPEDOT:PSS層上面の架橋された(180℃、30分間)表面形態を示す図である。
【図34B】図34Aおよび34Bは、未洗浄の架橋TCTA−BVBフィルム(□)とクロロベンゼンで洗浄したもの(○)を比較した、温度対UV−Vis吸収および波長対UV−Vis吸収図である;図34Aは、160℃で30分間部分的に架橋されたTCTA−BVBフィルムのUV−Vis吸収を表した図である;図34Aの挿入図は、示差走査熱量(DSC)測定から得た、初期上昇期間中(黒四角)に未処理のTCTA−BVBの熱架橋プロセスがおおよそ150℃で始まり、170℃でピークに達し、Tは約80℃であり、発熱は170℃にピークを作ること;30分間、180℃に一定に保った後、サンプルを室温まで冷まし、再度走査した:第二上昇期(●)の間に、約175℃を中心としたTgを持つ広範囲の転移が検出された;上昇速度は、いずれの走査でも10℃/分であったことを示す熱流対温度の結果の図である;図25Bは、180℃、30分間で完全に架橋されたTCTA−BVBフィルムのUV−Vis吸収を示す図である;図34Bの挿入図は、ITO上のPEDOT:PSS層上面の架橋された(180℃、30分間)表面形態を示す図である。
【図34C】図34Aおよび34Bは、未洗浄の架橋TCTA−BVBフィルム(□)とクロロベンゼンで洗浄したもの(○)を比較した、温度対UV−Vis吸収および波長対UV−Vis吸収図である;図34Aは、160℃で30分間部分的に架橋されたTCTA−BVBフィルムのUV−Vis吸収を表した図である;図34Aの挿入図は、示差走査熱量(DSC)測定から得た、初期上昇期間中(黒四角)に未処理のTCTA−BVBの熱架橋プロセスがおおよそ150℃で始まり、170℃でピークに達し、Tは約80℃であり、発熱は170℃にピークを作ること;30分間、180℃に一定に保った後、サンプルを室温まで冷まし、再度走査した:第二上昇期(●)の間に、約175℃を中心としたTgを持つ広範囲の転移が検出された;上昇速度は、いずれの走査でも10℃/分であったことを示す熱流対温度の結果の図である;図25Bは、180℃、30分間で完全に架橋されたTCTA−BVBフィルムのUV−Vis吸収を示す図である;図34Bの挿入図は、ITO上のPEDOT:PSS層上面の架橋された(180℃、30分間)表面形態を示す図である。
【図34D】図34Aおよび34Bは、未洗浄の架橋TCTA−BVBフィルム(□)とクロロベンゼンで洗浄したもの(○)を比較した、温度対UV−Vis吸収および波長対UV−Vis吸収図である;図34Aは、160℃で30分間部分的に架橋されたTCTA−BVBフィルムのUV−Vis吸収を表した図である;図34Aの挿入図は、示差走査熱量(DSC)測定から得た、初期上昇期間中(黒四角)に未処理のTCTA−BVBの熱架橋プロセスがおおよそ150℃で始まり、170℃でピークに達し、Tは約80℃であり、発熱は170℃にピークを作ること;30分間、180℃に一定に保った後、サンプルを室温まで冷まし、再度走査した:第二上昇期(○)の間に、約175℃を中心としたTgを持つ広範囲の転移が検出された;上昇速度は、いずれの走査でも10℃/分であったことを示す熱流対温度の結果の図である;図25Bは、180℃、30分間で完全に架橋されたTCTA−BVBフィルムのUV−Vis吸収を示す図である;図34Bの挿入図は、ITO上のPEDOT:PSS層上面の架橋された(180℃、30分間)表面形態を示す図である。
【図35A】図35Aから35Cは、PEDOT:PSSフィルムおよび、様々なTCTA−BVB被覆厚を持つ、代表的な一体型の正孔注入/輸送二重層であるPEDOT:PSS/架橋TCTA−BVB二重層について実施したX線光電子分光(XPS)法の測定値を示す図である;図35Aは、ITO上のPEDOT:PSS層に180℃で30分間架橋されたTCTA−BVBのXPSスペクトルとPEDOT:PSSのXPSスペクトルを比較した図である;図35Bおよび35Cは、3回のスポット試験の結果を平均した、相対表面原子濃度の変動を示す図である;図35Bおよび35Cのx軸では、1はPEDOT:PSSにフィルムに対応し、2はPEDOT:PSS・TCTA−BVB(15nm)に対応し;3はPEDOT:PSS/TCTA−BVB(25nm)に対応し;4はPEDOT:PSS/TCTA−BVB(34nm)に対応する;全てのフィルムは、アルゴン保護されたグローブボックスの中、ホットプレート上で、180℃で30分間熱硬化した。
【図35B】図35Aから35Cは、PEDOT:PSSフィルムおよび、様々なTCTA−BVB被覆厚を持つ、代表的な一体型の正孔注入/輸送二重層であるPEDOT:PSS/架橋TCTA−BVB二重層について実施したX線光電子分光(XPS)法の測定値を示す図である;図35Aは、ITO上のPEDOT:PSS層に180℃で30分間架橋されたTCTA−BVBのXPSスペクトルとPEDOT:PSSのXPSスペクトルを比較した図である;図35Bおよび35Cは、3回のスポット試験の結果を平均した、相対表面原子濃度の変動を示す図である;図35Bおよび35Cのx軸では、1はPEDOT:PSSにフィルムに対応し、2はPEDOT:PSS・TCTA−BVB(15nm)に対応し;3はPEDOT:PSS/TCTA−BVB(25nm)に対応し;4はPEDOT:PSS/TCTA−BVB(34nm)に対応する;全てのフィルムは、アルゴン保護されたグローブボックスの中、ホットプレート上で、180℃で30分間熱硬化した。
【図35C】図35Aから35Cは、PEDOT:PSSフィルムおよび、様々なTCTA−BVB被覆厚を持つ、代表的な一体型の正孔注入/輸送二重層であるPEDOT:PSS/架橋TCTA−BVB二重層について実施したX線光電子分光(XPS)法の測定値を示す図である;図35Aは、ITO上のPEDOT:PSS層に180℃で30分間架橋されたTCTA−BVBのXPSスペクトルとPEDOT:PSSのXPSスペクトルを比較した図である;図35Bおよび35Cは、3回のスポット試験の結果を平均した、相対表面原子濃度の変動を示す図である;図35Bおよび35Cのx軸では、1はPEDOT:PSSにフィルムに対応し、2はPEDOT:PSS・TCTA−BVB(15nm)に対応し;3はPEDOT:PSS/TCTA−BVB(25nm)に対応し;4はPEDOT:PSS/TCTA−BVB(34nm)に対応する;全てのフィルムは、アルゴン保護されたグローブボックスの中、ホットプレート上で、180℃で30分間熱硬化した。
【図36】図36Aは、一体型正孔注入/輸送二重層を用いた、本発明の代表的な装置の概略図である;EMLはPVKホストを79重量%、青色発光体としてFlrpic を20重量%、緑色発光体としてIr(ppy)3を0.5重量%、赤色発光体としてOs−R1を0.5重量%含むクロロベンゼン混合液をITO/PEDOT:PSS/TCTA−BABの上面部にスピンコーティングすることによって作られた;図36Bは、図36Aの装置のエネルギーレベル図である。
【図37】図37Aは唯一のコントロール装置であるPEDOT:PSSと一体型正孔注入/輸送二重層を含む本発明の三種類の代表的な装置の電流密度対電圧(J−V、オープンシンボル)および輝度対電圧(B−V、クローズドシンボル)を比較した図である;一体型正孔注入/輸送二重層は、名目厚み15nm、25nm、および34nmをそれぞれ持つ各種TCTA−BVBを用いたPEDOT:PSS/架橋されたTCTA−BVBであり、EMLはPVK を79重量%、青色発色体としてFIrpicを20重量%、緑色発光体としてIr(ppy)3を0.5重量%、赤色発光体としてOs−R1を0.5重量%含む混合液から形作られた;図37Bは、図37Aの代表的な装置の電力効率(オープンシンボル)および発光効率(クローズドシンボル)の変動対電流密度を描いている。
【図38】図38は、様々な駆動電圧で測定した、一体型正孔注入/輸送層、PEDOT:PSS/TCTA−BVB(25nm)を用いた代表的なLED装置のエレクトロルミネセンス(EL)スペクトルを比較した図である;スペクトルは、明瞭にするために縦方向にずらしている。
【図39】図39は、一体型正孔注入/輸送層;(1)ITO/PEDOT:PSS/1−TPD(25nm)/PF−BT5(30nm)/TPBI(25nm)/CsF/Alおよび(2)ITO/PEDOT:PSS/TCTA−BAB(25nm)/Flr6を10重量%含むPVK(30nm)/TPBI(25nm)/CsF/Alを有する、本発明の代表的な二種類のLEDのエネルギーレベル図である。
【図40A】図40Aは、1−TPD中間層を持つものと持たない、PFBT5を基本とするLEDの電流密度対駆動電圧(J−V)および輝度対駆動電圧(B−V)を比較したグラフである;図40Bは、TCTA−BVB中間層を持つものと持たない、PVKをホストとしたFIr6を基本とするLEDの電流密度対駆動電圧(J−V)特性および輝度対駆動電圧関係(B−V)を比較したグラフである;挿入図は、これらLEDの正規化ELスペクトルを示した図である。
【図40B】図40Aは、1−TPD中間層を持つものと持たない、PFBT5を基本とするLEDの電流密度対駆動電圧(J−V)および輝度対駆動電圧(B−V)を比較したグラフである;図40Bは、TCTA−BVB中間層を持つものと持たない、PVKをホストとしたFIr6を基本とするLEDの電流密度対駆動電圧(J−V)特性および輝度対駆動電圧関係(B−V)を比較したグラフである;挿入図は、これらLEDの正規化ELスペクトルを示した図である。
【図40C】図40Aは、1−TPD中間層を持つものと持たない、PFBT5を基本とするLEDの電流密度対駆動電圧(J−V)および輝度対駆動電圧(B−V)を比較したグラフである;図40Bは、TCTA−BVB中間層を持つものと持たない、PVKをホストとしたFIr6を基本とするLEDの電流密度対駆動電圧(J−V)特性および輝度対駆動電圧関係(B−V)を比較したグラフである;挿入図は、これらLEDの正規化ELスペクトルを示した図である。
【図40D】図40Aは、1−TPD中間層を持つものと持たない、PFBT5を基本とするLEDの電流密度対駆動電圧(J−V)および輝度対駆動電圧(B−V)を比較したグラフである;図40Bは、TCTA−BVB中間層を持つものと持たない、PVKをホストとしたFIr6を基本とするLEDの電流密度対駆動電圧(J−V)特性および輝度対駆動電圧関係(B−V)を比較したグラフである;挿入図は、これらLEDの正規化ELスペクトルを示した図である。
【図41】図41Aは、1−TPD中間層を持つものと持たない、PFBT5を基本とするLEDの外部量子効率対電流密度(Q−J)および電力効率対電流密度(PE−J)を比較したグラフである;図41Bは、TCTA−BVB中間層を持つものと持たない、PVKをホストとしたFIr6を基本とするLEDの外部電子効率対電流密度(Q−J)および電力効率対電流密度(PE−J)関係を比較したグラフである。
【図42】図42は、本発明の代表的な多層発光装置の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)トリアリールアミン部分を含む共役π電子系;および
(b)二つ以上の架橋可能な部分;
を含む化合物であって、
該化合物は、アノード酸化工程において可逆的酸化が可能で、安定なカチオンラジカルを形成する、
化合物。
【請求項2】
約4.7eVより大きな固体状態イオン化ポテンシャルを有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
約5.0eVより大きな固体状態イオン化ポテンシャルを有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
約5.2eVより大きな固体状態イオン化ポテンシャルを有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
約5.5eVより大きな固体状態イオン化ポテンシャルを有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記トリアリールアミン部分は、トリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−(1,1’)−ビフェニル−4,4’−ジアミン、ビ−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−(1,1’)−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、およびビ−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンから成る群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記架橋可能な部分は、トリフルオロ−ビニルエーテルおよびビニルベンジルエーテルから成る群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物は、二つ以上のトリアリールアミン部分を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記架橋可能な部分は、エーテルまたはエステル結合によってトリアリールアミン部分に共有結合する、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
(a)トリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン−トリ(トリフルオロビニルエーテル)、
(b)トリス(4−(3−n−ブチル−カルバゾール)トリフェニルアミン−トリ(トリフルオロビニルエーテル)、
(c)トリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン−ビ(ビニルベンジルエーテル)、
(d)N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−(1,1’)−ビフェニル−4,4’−ジアミン−ビス(ビニルベンジルエーテル)、
(e)ビス−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’)−ビフェニル−4,4’−ジアミン−ビ(ビニルベンジルエーテル)、
(f)N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン−ビス(ビニルベンジルエーテル)、および
(g)ビス−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン−ビス(ビニルベンジルエーテル)から成る群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
式:
【化1】

を有する化合物であって、
式中、RはArまたはAr−(L−Lであり;
はArまたはAr−(L−Lであり;
はArまたはAr−(L−Lであり;
Ar、Ar、Ar、およびArは、非置換アリール基および置換アリール基から独立して選択され;
、L、およびLは、LをAr、Ar、およびArとそれぞれ共有結合するリンカー部分であり;
m、n、o、およびpは、0または1から独立して選択され;
Lは架橋可能な部分であり;該化合物が、二つ以上のL部分を有する、
化合物。
【請求項12】
Ar、Ar、およびArは、4−カルバゾールフェニル部分である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
、L、およびLは、
(a)置換アルキル基または非置換アルキル基;
(b)置換アリール基または非置換アリール基;および
(c)置換ヘテロアリール基または非置換ヘテロアリール基;
から成る群より選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
Lは、ベンジルビニルエーテルおよびトリフルオロビニルエーテルから成る群から選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項15】
Ar、Ar、Ar、およびArは置換または非置換のフェニル、置換または非置換のナフチル、および置換または非置換の4−カルバゾールフェニルから成る群から選択される、請求項11に記載する化合物。
【請求項16】
式:
【化2】

を有する化合物であって、
式中R1aは、Ar1aまたはAr1a−(L1a−Lであり;
1bは、Ar1bまたはAr1b−(L1b−Lであり;
2aは、Ar2aまたはAr2ba−(L2a−Lであり;
1bは、Ar1bまたはAr1b−(L1b−Lであり;
3aは、Ar3aまたはAr3a−(L3a−Lであり;
1bは、Ar1bまたはAr1b−(L1b−Lであり;
Ar1a、Ar1b、Ar2a、Ar2b、Ar3a、およびAr3bは、非置換アリール基および置換アリール基から独立して選択され;
1a、L1b、L2a、L2b、L3a、およびL3bは、LをAr1a、Ar1b、Ar2a、Ar2b、Ar3a、およびAr3bとそれぞれ共有結合するリンカー部分であり;
m、n、o、およびpは、0または1から独立して選択され;
Lは、架橋可能な部分であり、該化合物が、二つ以上のL基を有する、
化合物。
【請求項17】
Ar1a、Ar1b、Ar2a、Ar2b、Ar3a、およびAr3bは、置換または非置換のフェニル、置換または非置換のナフチルおよび置換または非置換の4−カルバゾールフェニルから成る群より選択される、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
式:
【化3】

を有する化合物であって、
式中Rは、ArまたはAr−(L−Lであり;
は、ArまたはAr−(L−Lであり;
は、ArまたはAr−(L−Lであり;
Ar、Ar、およびArは、非置換アリール基および置換アリール基から独立して選択され;
、L、およびLは、LをAr、Ar、およびArとそれぞれ共有結合するリンカー部分であり;
m、n、o、およびpは、0または1から独立して選択され;
Lは、架橋可能な部分であり;該化合物が、二つ以上のL基を有する、
化合物。
【請求項19】
Ar、Ar、およびArは置換または非置換のフェニル、置換または非置換のナフチル、および置換または非置換の4−カルバゾールフェニル基から成る群から選択される、請求項18に記載する化合物。
【請求項20】
請求項11に記載の架橋可能な化合物に由来する架橋された正孔輸送物質を含む、正孔輸送層。
【請求項21】
請求項16に記載の架橋可能な化合物に由来する架橋された正孔輸送物質を含む、正孔輸送層。
【請求項22】
請求項18に記載の架橋可能な化合物に由来する架橋された正孔輸送物質を含む、正孔輸送層。
【請求項23】
(a)架橋された正孔輸送物質を含み、かつ第一固体状態イオン化ポテンシャルを有する第一層;
(b)架橋された正孔輸送物質を含み、かつ第二固体状態イオン化ポテンシャルを有する第二層;
を含む正孔輸送二重層構造であって、
該第一固体状態イオン化ポテンシャルは、該第二固体状態イオン化ポテンシャルより小さい、
正孔輸送二重層構造。
【請求項24】
前記第二固体状態イオン化ポテンシャルと前記第一固体状態イオン化ポテンシャルとの間の差が約0.2eV〜約0.4eVである、請求項23に記載の構造。
【請求項25】
前記第一層は約5.3eVの固体状態イオン化ポテンシャルを有する、請求項23に記載の構造。
【請求項26】
前記第一層は約5.7eVの固体状態イオン化ポテンシャルを有する、請求項23に記載の構造。
【請求項27】
前記第一層は、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−(1,1’)−ビフェニル−4,4’−ジアミン部分またはN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン部分を含む、請求項23に記載の構造。
【請求項28】
前記第二層は、トリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン部分を含む、請求項23に記載の構造。
【請求項29】
前記第一層は、架橋されたポリスチレン−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’)−ビフェニル−4,4’−ジアミン−トリフルオロビニルエーテルを含む、請求項23に記載の構造。
【請求項30】
前記第二層は、架橋されたトリス(4−カルバゾール)トリフェニルアミン−トリス(トリフルオロビニルエーテル)を含む、請求項23に記載の構造。
【請求項31】
前記第二層は、請求項1、11、16、または18のいずれか一項に記載の化合物に由来する架橋された物質を含む、請求項23に記載の構造。
【請求項32】
(a)正孔注入層、および
(b)正孔輸送層であって、該正孔輸送層は架橋された正孔輸送物質を含み;かつ該架橋された正孔輸送物質は、前記正孔注入層の表面上に架橋されることによって形成される、正孔輸送層、
を含む、一体型正孔注入・正孔輸送層。
【請求項33】
前記正孔輸送層は、ペルフルオロシクロブタン成分を含む、請求項32に記載の層。
【請求項34】
正孔輸送物質は、請求項1、11、16、または18のいずれか一項に記載の化合物に由来する、請求項32に記載の層。
【請求項35】
(a)アノード;
(b)カソード;
(c)該アノードと該カソードとの中間にある発光層;および
(d)該アノードと該発光層との中間にある正孔輸送層であって、該正孔輸送層は、請求項1、11、16、または18のいずれか一項に記載の架橋可能な化合物に由来する架橋された正孔輸送物質を含む、正孔輸送層;
を含む、装置。
【請求項36】
正孔注入層を更に含む、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
電子注入層を更に含む、請求項35に記載の装置。
【請求項38】
電子輸送層を更に含む、請求項35に記載の装置。
【請求項39】
(a)アノード;
(b)カソード;
(c)該アノードと該カソードとの中間にある発光層;および
(d)該アノードと該発光層との中間にある正孔輸送層であって、前記正孔輸送層は、
(i)架橋された正孔輸送物質を含み、かつ第一固体状態イオン化ポテンシャルを有する第一層;
(ii)架橋された正孔輸送物質を含み、第二固体状態イオン化ポテンシャルを有する第二層;
を含む二重層構造を含む、正孔輸送層;
を含む装置であって、該第一固体状態イオン化ポテンシャルは、該第二固体状態イオン化ポテンシャルより小さい、装置。
【請求項40】
正孔注入層を更に含む、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
電子注入層を更に含む、請求項39に記載の装置。
【請求項42】
電子輸送層を更に含む、請求項39に記載の装置。
【請求項43】
(a)アノード;
(b)カソード;
(c)該アノードと該カソードとの中間にある発光層;および
(d)該アノードと該発光層との中間にある一体型正孔注入・正孔輸送層であって、該一体型正孔注入・正孔輸送層は正孔注入層および正孔輸送層を含み、該正孔輸送層は請求項1、11、16、または18のいずれか一項に記載の架橋可能な化合物に由来する架橋された正孔輸送物質を含む、一体型正孔注入・正孔輸送層;
を含む、装置。
【請求項44】
電子注入層を更に含む、請求項43に記載の装置。
【請求項45】
電子輸送層を更に含む、請求項43に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図20D】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図29C】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34A】
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【図34B】
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【図34C】
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【図34D】
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【図35A】
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【図35B】
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【図35C】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40A】
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【図40B】
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【図40C】
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【図40D】
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【図41】
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【図42】
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【公表番号】特表2009−536656(P2009−536656A)
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509856(P2009−509856)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/011301
【国際公開番号】WO2007/133633
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(505343206)ユニバーシティ オブ ワシントン (2)
【Fターム(参考)】