説明

有機肥料の製造方法およびその製造プラント

【課題】 製造効率もよく、しかも、完熟され悪臭の発生もなく、その堆肥を農作地に投入すると病原性真菌増殖の温床となることもなく、また、作物の病気の発生も少なく、栽培する作物の発育も良好で品質も向上する有機肥料の製造方法およびその製造プラントを提供する。
【解決手段】 醗酵熟成室に微生物を混入した有機性廃棄物を堆積して醗酵熟成させる有機肥料の製造方法において、
醗酵熟成室の醗酵床には、孔径1mm〜2.5mmの噴出孔が複数設けられた温風供給管が配管されており、この醗酵床上に微生物を混入した有機性廃棄物を、上面を略平らにして1m〜2.5mの高さに堆積し、温風供給管より温風を噴出させて供給しつつ堆積した有機性廃棄物を醸す状態で醗酵熟成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有機肥料の製造方法およびその製造プラントに関し、特に、牛糞、豚糞、鶏糞等の家畜糞尿、焼酎粕、ビール粕、食品廃棄物、等の有機性廃棄物を醗酵熟成させる有機肥料の製造方法およびその製造プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
有機性廃棄物を野積みして堆積化する方法は、長期間を要し、きわめて効率が悪く、しかも悪臭問題、流域汚染などの深刻な問題がある。そこで、最近は種々の有機肥料の製造方法が提案されている。代表的なものを例示すると次のとおりである。
(1)有機性廃棄物に微生物(醗酵菌)を混合し、醗酵させて有機肥料を製造する方法(例えば、特許文献1および2参照)。
(2)未熟肥料を有機性廃棄物に還元して有機肥料を製造する方法(例えば、特許文献3参照)。
(3)元菌体を水で希釈して保温とエアレーション下で菌液を得、この菌液を植物質微細片に含浸させて乾燥菌体を得、この乾燥菌を有機性廃棄物に混入し長時間貯蔵して有機肥料を製造する方法(例えば、特許文献4参照)。
(4)有機性廃棄物を加圧および昇温下で撹拌、切断、混練して有機肥料を製造する方法(例えば、特許文献5および6参照)。
【特許文献1】特開2003−88361号公報(請求項20および21)
【特許文献2】特開2002−137981号公報(請求項1)
【特許文献3】特開平11−12071号公報(請求項1、0005)
【特許文献4】特公平7−42185号公報(請求項1、0004、図1)
【特許文献5】特開2003−95779号公報(請求項1、0072、図2)
【特許文献6】特開平2−167878号公報(請求項1、第4頁下段左欄第1行〜第9行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の有機肥料の製造方法は、それぞれ好ましい特徴を有するが、解決すべき課題もある。
(1)有機性廃棄物に微生物を混合し、醗酵させて有機肥料を製造する方法では、堆積して醗酵熟成させるために、表面と内部とで醗酵ムラが生じたり、醗酵菌の特性が生かされず、充分な醗酵分解による熟成がなされない課題がある。充分な醗酵分解がされないまま有機肥料として農作地に使用すると、有機肥料が雨等で水分を含むと悪臭を発生すると共に、病原性真菌増殖の温床となったりして作物に病気等の悪影響を与え、土壌の性質も悪くし、作物の発育不良、品質の低下を招く原因にもなる。
(2)また、未熟肥料を有機性廃棄物に還元して有機肥料を製造する方法は、未熟肥料を還元する手数がかかるし、装置としても未熟肥料を還元する手段が必要となるので、その分構造が複雑となり高価となる。
(3)元菌体から得た菌液を植物質微細片に含浸させて乾燥菌体とし、これを有機性廃棄物に混入して貯蔵して有機肥料を得る方法は、乾燥菌体を混入した有機性廃棄物を、長期間貯蔵して醗酵熟成させるので、製造に長期間要し、製造効率が悪く、しかも専用の設備が必要となるため高い設備費用がかかるし、元菌体から乾燥菌体を得る設備を備え、ここでは泥状の原料を使用するので、故障が多くメンテナンス等でも費用がかかる課題がある。
(4)また、有機性廃棄物を加圧および昇温下で撹拌、切断、混練して有機肥料を製造する方法は、迅速に効率よく製造することはできるが、強制的に製造するため充分な醗酵分解による熟成がなされないまま製造されてしまい、製造された有機肥料は、必要充分な熟成度を満たしていない。そのため雨等により有機肥料が水分を含むと悪臭を発生すると共に、病原性真菌増殖の温床となったりして作物に病気等の悪影響を与え、土壌の性質も悪くし、作物の発育不良、品質低下を招く原因にもなる。
(5)さらに、未熟肥料を有機性廃棄物に還元して有機肥料を製造する方法においても、また、元菌体から得た菌液を植物質微細片に含浸させて乾燥菌体とし、これを有機性廃棄物に混入して貯蔵して有機肥料を得る方法おいても、あるいは有機性廃棄物を加圧および昇温下で撹拌、切断、混練して有機肥料を製造する方法においても、いずれも高価な装置が必要となるので、その設備費およびメンテナンス費用がかかり、経営を圧迫する課題がある。
【0004】
この発明は、このような点に鑑み提案されたものであり、その目的は、微生物(醗酵菌)を混合した有機性廃棄物を堆積し、醗酵熟成させる有機肥料の製造方法でありながら、製造効率もよく、しかも、完熟され悪臭の発生もなく、その堆肥を農作地に投入すると病原性真菌増殖の温床となることもなく、また、作物の病気の発生も少なく、栽培する作物の発育も良好で品質も向上する有機肥料の製造方法およびその製造プラントの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、この発明の有機肥料の製造方法は、醗酵熟成室に微生物を混入した有機性廃棄物を堆積して醗酵熟成させる有機肥料の製造方法において、
醗酵熟成室の醗酵床には、孔径1mm〜2.5mmの噴出孔が複数設けられた温風供給管が配管されており、この醗酵床上に微生物を混入した有機性廃棄物を、上面を略平らにして1m〜2.5mの高さに堆積し、温風供給管より温風を噴出させて供給しつつ堆積した有機性廃棄物を醸す状態で醗酵熟成させることを特徴とする。
【0006】
従って、温風供給管が配設された醗酵床上に、微生物の混合された有機性廃棄物が、上面を略平らとして1m〜2.5mの高さに堆積され、温風供給管の複数の噴出孔からは温風が噴出されるので、温風は有機性廃棄物内を下面より上面に向けて流れることになり、これにより微生物の活動が活発になると共に有機性廃棄物は醸す状態となって醗酵熟成される。特に、温風供給管に設けられた噴出孔の孔径は、1mm〜2.5mmと小孔であるため、送風圧力が同じとすれば大径の孔より勢いよく噴出するので小孔であることと相俟って孔詰まりがなく、送風機の馬力も小さいものが使用できる。勢いよく噴出された温風は、堆積された下方の有機性廃棄物が障害となりその後は低速となり、醸すように有機性廃棄物内を上方に向けて流れるようになる。即ち、有機性廃棄物は、醸す状態で醗酵熟成される。従って、有機性廃棄物は、完全に醗酵熟成された完熟有機肥料となり、農作地に投入しても病原性真菌増殖の温床となることもなく、作物の病気の発生も少なく、栽培する作物の発育も良好となる。
【0007】
なお、この発明の有機性廃棄物とは、畜産廃棄物、水産廃棄物、醸造廃棄物、その他の食品廃棄物(例えば、茶がら、油かす、コーヒーかす等)、等を総称して示す。
また、この発明の微生物(醗酵菌)とは、有機物の腐敗は進行させず、分解・醗酵を促進するのに有用な微生物群を集めたものであり、繊維分解菌、硝安化成菌、澱粉糖化菌、蛋白分解菌、及びリグニナーゼ生産性ペニシリウム属菌からなる混合菌、またはバチルス属微生物を挙げることができ、前記バチルス属微生物としては、アフラトキシン分解性を有するバチルス・サブチルスDB9011株、または、バチルス・サブチルス FERM BP−3418株を例示することができる。なお、有機物分解微生物は、多種のものが市販されているので、それを用いてもよい。市販されているものとして商品名バクトクリアー(株式会社枝エー・エイチ・シー製)を例示することができる。
なお、この発明は、有機性廃棄物に、おが屑、茶がら、コーヒーかす、わら屑、等の副原料を混合し、醗酵熟成させる場合も包含する。
【0008】
また、この発明の有機肥料の製造方法は、堆積した有機性廃棄物を、水分調整および適宜の間隔で切り返しを行なうことを特徴とする。
この水分調整で醗酵熟成にともない有機性廃棄物が乾燥し、醗酵熟成が緩慢となるのが防止でき、常に最適な醗酵条件に保持できるし、また、切り返しで醗酵ムラによる不均一な醗酵熟成を防止し、全体に均一に醗酵熟成された有機肥料を得ることができる。
【0009】
また、この発明の有機肥料の製造方法は、醗酵熟成室を、複数並列して設け、切り返しする間隔で、堆積した有機性廃棄物を、1の醗酵熟成室から他の醗酵熟成室に順次移すことを特徴とする。
これにより有機性廃棄物を1の醗酵熟成室から他の醗酵熟成室に移すことで切り返しを行なうことができる。また、複数の醗酵熟成室における最終の醗酵熟成室に到達した有機性廃棄物が、この最終の醗酵熟成室で完熟した有機肥料として完成するようにすれば、複数の醗酵熟成室の全てを使用して、順送りして有機肥料を製造することができるので、最初の有機性廃棄物が1の醗酵熟成室から最終の醗酵熟成室に到達するまでに時間を要しても、順送りされた後の空の醗酵熟成室には有機性廃棄物が補充堆積されるので、このようにして全ての醗酵熟成室が充満された後は、切り返しを行なう間隔で有機肥料が製造されるので、製造効率も向上する。
【0010】
また、この発明の有機肥料の製造プラントは、微生物が混合された有機性廃棄物を堆積して醗酵熟成させる醗酵熟成室と、有機性廃棄物を集積する集積エリアと、醗酵熟成室で醗酵熟成された有機肥料を梱包する梱包エリアとを備え、
醗酵熟成室の醗酵床には、孔径1mm〜2.5mmの噴出孔が複数設けられた温風供給管が配設されていることを特徴とする。
【0011】
これにより集積エリアには、トラック等の車輌にて有機性廃棄物を搬入することができ、この集積エリアに搬入された有機性廃棄物には、ここで微生物(醗酵菌)を混入することができる。また、有機性廃棄物に副原料を混合する場合も、この集積エリアで行なうことができる。ここでの副原料は、有機肥料化する主原料以外のものを指し、例えば、畜産廃棄物が主原料の場合は、それ以外の有機性廃棄物が副原料であり、水産廃棄物が主原料の場合は、それ以外の有機性廃棄物が副原料であり、畜産廃棄物と醸造廃棄物を混入して処理する場合は、その両者が主原料であり、それ以外の有機性廃棄物が副原料である。
次に、この集積エリアで微生物が混入された有機性廃棄物は、醗酵熟成室に移し堆積し醗酵熟成することができる。この醗酵熟成室の醗酵床には、複数の噴出孔が設けられた温風供給管が配設されているので、堆積された有機性廃棄物は、温風供給管の噴出孔より温風を噴出し、加熱し微生物の活動を活発にすると共に、有機性廃棄物内を流れる温風で有機性廃棄物を醸す状態で醗酵熟成させることができる。また、温風供給管の噴出孔の孔径は、1mm〜2.5mmと小さいので、送風圧力が同じとすれば大径の孔より勢いよく噴出し、小孔であることと相俟って孔詰まりがなく、送風機の馬力も小さいものが使用できる。
勢いよく噴出された温風は、堆積された下方の有機性廃棄物が障害となり。その後は低速となり、有機性廃棄物内を醸すように上方に向けて流れるようになる。即ち、有機性廃棄物は、醸す状態で醗酵熟成される。これにより有機性廃棄物は、完全に醗酵熟成された完熟有機肥料となる。
最後に、前記醗酵熟成室で醗酵熟成された完熟有機肥料は、醗酵熟成室から梱包エリアに移され、ここで梱包・箱詰めされて出荷される。
【0012】
また、この発明の有機肥料の製造プラントの前記醗酵熟成室は、複数が並列して設けられていることを特徴とする。
これにより有機性廃棄物を1の醗酵熟成室から他の醗酵熟成室に移すことで切り返しを行ない、順次醗酵熟成を行なうことができる。従って、有機性廃棄物は、複数の醗酵熟成室の最初の醗酵熟成室から最終の醗酵熟成室に到達した時に、この最終の醗酵熟成室で完熟した有機肥料として完成するようにすることができる。このようにすれば複数の醗酵熟成室の全てを使用して、有機性廃棄物を順送りして有機肥料を製造することができ、最初の有機性廃棄物が1の醗酵熟成室から最終の醗酵熟成室に到達するまでに時間を要するが、順送りされた後の醗酵熟成室に有機性廃棄物が補充堆積されるので、このようにして全ての醗酵熟成室が充満された後は、切り返しを行なう間隔で有機肥料を製造することができる。
【0013】
また、この発明の有機肥料の製造プラントの醗酵熟成室、集積エリアおよび梱包エリアは、密閉された同一建物内に設けられ、醗酵熟成室と集積エリアおよび醗酵熟成室と梱包エリアとは、通路で連結されていることを特徴とする。
これにより醗酵熟成室、集積エリアおよび梱包エリアは、密閉された建物内に設けられているので、たとえ悪臭が発生しても外部に漏れることが少ない。
また、醗酵熟成室と集積エリア、および醗酵熟成室と梱包エリアとは、通路で連結されているので、集積エリアに搬入された有機性廃棄物を、醗酵熟成室に運び入れる場合でも、また、完成した有機肥料を醗酵熟成室から梱包エリアに運び出す場合でも、ショベルカー等の運搬車や装置が使用できる。
【0014】
さらに、この発明の有機肥料の製造プラントの醗酵熟成室は、少なくとも三方が側壁にて囲われていることを特徴とする。
これにより醗酵熟成室内の有機性廃棄物の醗酵温度を最適の範囲に保持することができ、従って、有機性廃棄物の醗酵熟成を促進することができる。
また、醗酵熟成室の少なくとも1つの側壁は、醗酵熟成室内が目視できる高さとする。これにより醗酵熟成室内の有機性廃棄物の醗酵熟成度を目視して確認することができる。従って、切り返しを行なう時期の判断を適切に行なうことができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の有機肥料の製造方法およびその製造プラントによれば、次のような効果を奏する。
(1)微生物(醗酵菌)を混合した有機性廃棄物を堆積し、醗酵熟成させる有機肥料の製造方法及びその製造プラントでありながら、製造効率もよく、しかも完熟されるので悪臭の発生もなく、その堆肥を農作地に投入すると病原性真菌増殖の温床となることもなく、また、作物の病気の発生も少なく、栽培する作物の発育も良好で品質も向上する有機肥料を得ることができる。
(2)高価な装置は不要であるし、装置などのメンテナンスもないので経営を圧迫することもない。
【0016】
(3)温風供給管が配設された醗酵床上に、微生物の混合された有機性廃棄物が、上面を略平らとして1m〜2.5mの高さに堆積され、温風供給管の複数の噴出孔からは温風が噴出されるので、温風は有機性廃棄物内を下面より上面に向けて流れることになり、これにより微生物の活動が活発になると共に有機性廃棄物は醸す状態となって醗酵熟成される。従って、完全に醗酵熟成された完熟有機肥料を得ることができる。
(4)また、有機性廃棄物は上面を略平らとして1m〜2.5mの高さに堆積されて醗酵熟成されるので、下段、中段および上段において均一に醗酵熟成され、醗酵ムラが生じないし、切り返しでより一層均一に醗酵熟成される。
(5)温風供給管に設けられた噴出孔の孔径は、1mm〜2.5mmと小孔であるため、送風圧力が同じとすれば大径の孔より勢いよく噴出するので小孔であることと相俟って孔詰まりがなく、温風供給装置(送風機)の馬力も小さいものが使用できる。
【0017】
(6)醗酵熟成室が複数設けられ、切り返しをする間隔で、堆積した有機性廃棄物を1の醗酵熟成室から他の醗酵熟成室に順次移すことができる。これにより有機性廃棄物を1の醗酵熟成室から他の醗酵熟成室に移すことで切り返しを行ない、順次醗酵熟成を行なうことができる。従って、有機性廃棄物は、複数の醗酵熟成室の最初の醗酵熟成室から最終の醗酵熟成室に到達した時に、この最終の醗酵熟成室で完熟した有機肥料として完成するようにすることができる。このようにすれば複数の醗酵熟成室の全てを使用して、有機性廃棄物を順送りしては醗酵熟成させて、有機肥料を製造することができ、最初の有機性廃棄物が1の醗酵熟成室から最終の醗酵熟成室に到達するまでに時間を要するが、順送りされた後の醗酵熟成室に有機性廃棄物が順次補充堆積されるので、このようにして全ての醗酵熟成室が充満された後は、切り返しを行なう間隔で有機肥料を製造することができる。従って、製造効率が高い効果を有する。
【0018】
(7)醗酵熟成室、集積エリアおよび梱包エリアは、密閉された建物内に設けられているので、たとえ悪臭が発生しても外部に漏れることが少ない。
(8)また、醗酵熟成室と集積エリア、および醗酵熟成室と梱包エリアとは、通路で連結されているので、集積エリアに搬入された有機性廃棄物を、醗酵熟成室に運び入れる場合でも、また、完成した有機肥料を醗酵熟成室から梱包エリアに運び出す場合でも、ショベルカー等の運搬車や装置が使用できる。従って、能率のよい作業が可能となる。
【0019】
(9)醗酵熟成室の少なくとも三方が側壁にて囲われているので、醗酵熟成室内の有機性廃棄物の醗酵温度を最適の範囲に保持することができ、従って、有機性廃棄物の醗酵熟成を促進することができる。
(10)また、醗酵熟成室の少なくとも1つの側壁が、醗酵熟成室内が目視できる高さとなっているので、醗酵熟成室内の有機性廃棄物の醗酵熟成度を目視して確認することができる。従って、切り返しを行なう時期の判断を適切に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、この発明の実施の形態を示す全体の平面図、図2は、醗酵熟成室部分の拡大平面図、図3は、醗酵熟成室部分の斜視図、図4は、醗酵熟成室の醗酵床に配設された温風供給管部分を拡大して示す斜視図、図5は、醗酵熟成室の使用状態を示す斜視図、図6は、醗酵熟成室の作用状態を説明する部分断面図である。
【0021】
同図において、有機肥料の製造プラントは、微生物が混合された有機性廃棄物を堆積して醗酵熟成させる醗酵熟成室2が設けられる醗酵熟成エリア1と、有機性廃棄物を集積する集積エリア15と、醗酵熟成室2で醗酵熟成された有機肥料を袋詰め・梱包する梱包エリア20とを備える。集積エリア15は、醗酵熟成エリア1の一方側に設けられ、梱包エリア20は、醗酵熟成エリア1の他方側に設けられ、醗酵熟成エリア1、集積エリア15および梱包エリア20は、醗酵熟成エリア1を貫通する通路3で連結されている。これらの醗酵熟成エリア1、集積エリア15および梱包エリア20は、同じ建物16内に密閉して設けられる(図1参照)。
【0022】
醗酵熟成エリア1には、醗酵熟成室2が設けられる。この醗酵熟成室2は、本例では通路3の一端側に沿って10室(2a〜2j)が、他端側に沿って10室(2k〜2t)が。それぞれ並列して設けられている。この全ての醗酵熟成室2の出入口4は、通路3側に面して設けられる。
醗酵熟成室2は、図2および図3に示すように三方が側壁5a、5b、5cで囲まれて形成され、通路3側が出入口4となっている。この出入口4は、開口したままでもよいが、本例では、出入口4に閉塞板6が着脱自在に設けられ、有機性廃棄物の搬入、搬出時には閉塞板6を取り外し出入口4を開口し、有機性廃棄物の醗酵熟成時には閉塞板6で出入口4を閉塞できる構成となっている。このようにすると、有機性廃棄物の醗酵熟成時には出入口4を閉塞できるので、醗酵熟成の四方が側壁5a、5b、5cおよび閉塞板6で囲まれた格好になり、有機性廃棄物の醗酵温度を最適の範囲に保持することができ、有機性廃棄物の醗酵熟成を促進することができ、また、有機性廃棄物の搬入、搬出時には取り外して、有機性廃棄物の搬入、搬出を容易にすることができるので好ましい。
本例の閉塞板6は、出入口4近傍の側壁5b、5cの内側にガイド板7a、7bで縦方向のガイド溝8が、対向する格好で設けられ、このガイド溝8に沿って閉塞板6を入れたり出したりすることによって着脱自在となっている。この出入口4は閉塞板6でなく開閉戸扉によって開閉するようにしてもよい。
【0023】
また、前記醗酵熟成室2を囲む側壁5a、5b、5cおよび閉塞板6のうち、いずれかは醗酵熟成室2内が目視できる高さとするのが、醗酵熟成度を目視して確認することができるので好ましい。本例では、出入口4に設けられた閉塞板6が、通路3側に面しているので、この高さを目視できる高さにすると、通路3より醗酵熟成室2内が目視できるので好ましい。なお、側壁5a、5b、5cおよび閉塞板6を、醗酵熟成室2内が目視できない高さとして、側壁5a、5b、5cおよび閉塞板6のいずれかにのぞき窓を設ける構成としてもよい。
【0024】
また、醗酵熟成室2の醗酵床9には、孔径1mm〜2.5mmの噴出孔11が複数設けられた温風供給管10が配設される。この温風供給管10は、醗酵床9の床面より上方に突出して設けてもよいが、これだと有機性廃棄物を搬入、搬出するときの運搬車(例えば、ショベルカー)の障害になったり、切り返し時にも邪魔になるので、図3および図4に示すように醗酵床9に溝9aを設け、この中に配設して醗酵床9の床面より突出しないようにするのが好ましい。噴出孔11の孔径を1mm〜2.5mmとしたのは、孔詰まりの防止と、温風供給装置13の馬力の小さいものが使用できるからである。即ち、噴出孔11の孔径が1mm〜2.5mmと小孔であると、送風圧力が同じとすれば大径の孔より勢いよく噴出するので小孔であることと相俟って孔詰まりがなく、温風供給装置13の馬力も小さいものが使用できる。従って、温風供給管10が配管された醗酵床9上に有機性廃棄物が堆積されても、孔詰まりせずに温風は確実に供給される。噴出孔11の孔径が1mm未満では小さすぎて温風の供給が不十分となるし、大きな送風圧力が必要となり、2.5mmを超えると大きすぎて孔詰まりが発生する。なお、醗酵床9に配管された温風供給管10の先端の開口は、図2、図3および図4に示すようにキャップ12で閉塞され、ここから供給された温風が放出されないようにされている。
また、醗酵床9に配管された温風供給管10には、図2に示すように加熱器、送風機等を備える温風供給装置13が、管路14にて連結されている。これにより温風供給管10に温風が供給される。
【0025】
また、集積エリア15は、搬入された有機性廃棄物を一旦集積しておく場所であり、有機性廃棄物におが屑、茶がら、コーヒーかす、わら屑、等の副原料を混合し、醗酵熟成させる場合は、副原料もここに収納される。有機性廃棄物への微生物(醗酵菌)の混合、および副原料の混合もここで行なわれる。建物16の集積エリア15位置には、入口17が設けられ、有機性廃棄物は、この入口17より運搬車等で集積エリア15に搬入される。
【0026】
さらに、梱包エリア20は、醗酵熟成室2で醗酵熟成された有機肥料をここに搬入して集積し、ここで袋詰め、梱包がされる場所であり、袋詰め、梱包された有機肥料は、建物16の出口18より出荷される。
【0027】
次に、前記実施の形態の作用を説明する。集積エリア15に搬入された有機性廃棄物には、ここで微生物(醗酵菌)を混入する。また、有機性廃棄物に副原料も混合する場合は、更にここで副原料も混合する。この微生物が混入された有機性廃棄物は、運搬車、例えばショベルカー19で集積エリア15から通路3を使って醗酵熟成室2に移して堆積する。この時の堆積高さは、図5に示すような上面が略平らとする1m〜2.5mの高さとする。図3ではショベルカー19で有機性廃棄物が醗酵熟成室2に搬入しようとしている状態が示され、図5では醗酵熟成室2に有機性廃棄物が搬入され堆積され醗酵熟成されている状態が示されている。図3では閉塞板6が装着された状態で示しているが、有機性廃棄物を搬入する時は、閉塞板6は取り外されて出入口4は開口されている。本例では醗酵熟成室2のうち最初に位置する醗酵熟成室2a、2kに搬入して堆積する。この時の堆積高さは、上面を略体らとする1m〜2.5mである(以下、同じ)。
【0028】
そこで温風供給装置13(図2参照)を駆動して温風を供給すると、温風供給管10の噴出孔11より温風が噴出する。この時、各醗酵熟成室2a〜2tの温風供給管10が、管路14と分岐した部分にはバルブ(図示省略)が設けられ、不使用の醗酵熟成室2の温風供給管10には、温風が供給されないようになっている。醗酵熟成室2の醗酵床9には、複数の噴出孔11を有する複数の温風供給管10が配設されているので、堆積された有機性廃棄物は、温風供給管10の噴出孔11より噴出した温風で加熱され微生物の活動が活発となると共に、有機性廃棄物内を下方から上方に向けて流れる温風で有機性廃棄物は醸す状態で醗酵熟成される。そして、温風供給管の噴出孔の孔径は、1mm〜2.5mmと小さいので、送風圧力が同じとすれば大径の孔より勢いよく噴出し、小孔であることと相俟って孔詰まりがなく、温風供給装置(送風機)13の馬力も小さいものが使用できる。従って、最初は勢いよく噴出された温風は、堆積された下方の有機性廃棄物が障害となり。その後は低速となり、有機性廃棄物内を醸すように上方に向けて流れるようになる。即ち、有機性廃棄物は、醸す状態で醗酵熟成される。また、有機性廃棄物は、上面を略平らとして1m〜2.5mの高さに堆積されて醗酵熟成されるので、下段、中段、上段の各層において均一に醗酵熟成され、醗酵ムラが生じない。図6には、有機性廃棄物が、醸す状態で醗酵熟成される状態がよく示されている。
【0029】
このようにして醗酵し、最初の醗酵熟成室2a、2kの有機性廃棄物の切り返しの時期が来たら、この醗酵熟成室2a、2kの有機性廃棄物は次の醗酵熟成室2b、2lに移す。この時、切り返しも行なう。即ち、醗酵熟成室2aの有機性廃棄物は次の醗酵熟成室2bに移し、醗酵熟成室2kの有機性廃棄物は次の醗酵熟成室2lに移すことで切り返しを行ない、この室で前記同様に醗酵熟成させる。
次に、空になった最初の醗酵熟成室1a、1kには、集積エリア15から微生物が混入された新しい有機性廃棄物を搬入し堆積して、同様に醗酵熟成させる。
次に切り返しの時期が来たら、醗酵熟成室2bの有機性廃棄物は、次の醗酵熟成室2cに移し、醗酵熟成室2lの有機性廃棄物は、次の醗酵熟成室2mに移すことで切り返しを行ない、この室で前記同様に醗酵熟成させる。また、醗酵熟成室1aの有機性廃棄物は、次の醗酵熟成室1bに移し、醗酵熟成室2kの有機性廃棄物は、次の醗酵熟成室1lに移すことで切り返しを行ない、この室で醗酵熟成させる。そして空になった最初の醗酵熟成室1a、1kには、集積エリア15から微生物の混入された新しい有機性廃棄物が搬入、堆積される。以下、同様にして最終の醗酵熟成室2j、2kに有機性廃棄物が到達し、この室での醗酵熟成が完了すると、有機性廃棄物は完全に完熟された完熟有機肥料となる。
【0030】
このように有機性廃棄物は、最初の醗酵熟成室1a、1kから次の醗酵熟成室2b〜2j、2k〜2tに順次移すことで切り返しを行ない、その室で順次醗酵熟成を行なうことができる。従って、有機性廃棄物は、最初の醗酵熟成室2a、2kから最終の醗酵熟成室2j、2tに到達した時に、この最終の醗酵熟成室2j、2tで完熟した有機肥料として完成するようにすれば、醗酵熟成室2a〜2j、2k〜2tの全てを使用して、有機性廃棄物を順送りしては醗酵熟成して有機肥料を製造することができ、最初の有機性廃棄物が最初の醗酵熟成室2a〜2kから最終の醗酵熟成室2j、2tに到達するまでに時間を要するが、順送りされた後の空になった最初の醗酵熟成室2a、2kには新しい有機性廃棄物が搬入、堆積されるので、このようにして全ての醗酵熟成室2a〜2j、2k〜2tが充満された後は、最終の醗酵熟成室2j、2tでは切り返しを行なう間隔で完熟した有機肥料が製造されることになる。
【0031】
この時の切り返しは、3日〜5日おきに行なうのが通常であるので、1つの醗酵熟成室2から他の醗酵熟成室2に移す間隔も3日〜5日おきとなる。従って、最終的には3〜5日おきに有機肥料も製造されることになる。正確な切り返しの時期は、醗酵熟成室2の有機性廃棄物の醗酵熟成度を目視して確認し決定するが、3日〜5日おきが目安となる。
そのため醗酵熟成室2の側壁5a、5b、5cおよび閉塞板6のいずれかは、醗酵熟成室2内が目視可能な高さとなっているか、またはのぞき窓が設けられているので、醗酵熟成室2内の有機性廃棄物の醗酵熟成状態の目視しての確認は容易に行なうことができる。
また、この有機性廃棄物の醗酵熟成工程において、水分が不足し有機性廃棄物の醗酵熟成が緩慢となるような場合には、水分の補給調整を行なう。
【0032】
なお、この実施の形態では、通路3の両側にそれぞれ10室の醗酵熟成室2a〜2j、2k〜2tを列設した場合で説明したが、これに制限されるものではなく、醗酵熟成室2の数や配列等は自由に選択できる。例えば、醗酵熟成室2の数が少なく、有機性廃棄物が最終の醗酵熟成室に到達して、ここで醗酵熟成させても完熟しない場合は、ここから最初または途中の醗酵熟成室に戻して循環させるようにしてもよいし、醗酵熟成室の配列も直列状だけでなく環状に設けてもよい。
【0033】
このようにして最終の醗酵熟成室2j、2tで完熟した有機性廃棄物は、ここから梱包エリア20に運び出され、ここで袋詰め・梱包されて出荷される。
また、醗酵熟成エリア1、集積エリア15および梱包エリア20は、建物16内に密閉した格好で設けられているので、悪臭が外部に漏れることも少ない。
また、図1に示すように集積エリア15から醗酵熟成エリア1への入口、および醗酵熟成エリア1から梱包エリア20への出口にカーテン21、22を設けてもよい。
【0034】
なお、前記実施の形態は、この発明を制限するものではなく、この発明は要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形が許容される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施の形態を示す全体の平面図である。
【図2】醗酵熟成室部分の拡大平面図である。
【図3】醗酵熟成室部分の斜視図である。
【図4】醗酵熟成室の醗酵床に配設された温風供給管部分を拡大して示す斜視図である。
【図5】醗酵熟成室の使用状態を示す斜視図である。
【図6】醗酵熟成室の作用状態を説明する部分断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 醗酵熟成エリア
2 醗酵熟成室
2a〜2t 列設した個々の醗酵熟成室
3 通路
4 出入口
5a、5b、5c 側壁
6 閉塞板
8 ガイド板
9 醗酵床
9a 溝
10 温風供給管
11 噴出孔
13 温風供給装置
15 集積エリア
16 建物
17 入口
18 出口
19 ショベルカー
20 梱包エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
醗酵熟成室に微生物を混入した有機性廃棄物を堆積して醗酵熟成させる有機肥料の製造方法において、
醗酵熟成室の醗酵床には、孔径1mm〜2.5mmの噴出孔が複数設けられた温風供給管が配管されており、この醗酵床上に微生物を混入した有機性廃棄物を、上面を略平らにして1m〜2.5mの高さに堆積し、温風供給管より温風を噴出させて供給しつつ堆積した有機性廃棄物を醸す状態で醗酵熟成させることを特徴とする有機肥料の製造方法。
【請求項2】
前記堆積した有機性廃棄物は、水分調整および適宜の間隔で切り返しを行なうことを特徴とする請求項1記載の有機肥料の製造方法。
【請求項3】
前記醗酵熟成室は、複数が並列して設けられ、切り返しする間隔で、堆積した有機性廃棄物を、1の醗酵熟成室から他の醗酵熟成室に順次移すことを特徴とする請求項1記載の有機肥料の製造方法。
【請求項4】
前記微生物は、繊維分解菌、硝安化成菌、澱粉糖化菌、蛋白分解菌、及びリグニナーゼ生産性ペニシリウム属菌からなる混合菌、またはバチルス属微生物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機肥料の製造方法。
【請求項5】
前記バチルス属微生物は、アフラトキシン分解性を有するバチルス・サブチルスDB9011株、または、バチルス・サブチルス FERM BP−3418株であることを特徴とする請求項4記載の有機肥料の製造方法。
【請求項6】
微生物が混合された有機性廃棄物を堆積して醗酵熟成させる醗酵熟成室と、有機性廃棄物を集積する集積エリアと、醗酵熟成室で醗酵熟成された有機肥料を梱包する梱包エリアとを備え、
醗酵熟成室の醗酵床には、孔径1mm〜2.5mmの噴出孔が複数設けられた温風供給管が配設されていることを特徴とする有機肥料の製造プラント。
【請求項7】
前記醗酵熟成室は、複数が並列して設けられていることを特徴とする請求項6記載の有機肥料の製造プラント。
【請求項8】
前記醗酵熟成室、集積エリアおよび梱包エリアは、密閉された同一建物内に設けられ、醗酵熟成室と集積エリアおよび醗酵熟成室と梱包エリアとは、通路で連結されていることを特徴とする請求項6または7記載の有機肥料の製造プラント。
【請求項9】
前記醗酵熟成室は、少なくとも三方が側壁にて囲われていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の有機肥料の製造プラント。
【請求項10】
前記醗酵熟成室の少なくとも1つの側壁は、醗酵熟成室内が目視できる高さであることを特徴とする請求項9記載の有機肥料の製造プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−210827(P2007−210827A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31374(P2006−31374)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(505256870)
【出願人】(506045255)
【Fターム(参考)】