説明

有機薄膜太陽電池およびその製造方法(1)

【課題】 有機薄膜太陽電池の製品のロットごとのバラツキが少なく、太陽電池の面積が大きくなっても高い変換効率を達成する。
【解決手段】 有機薄膜太陽電池がドナーまたはアクセプターの層の表面がナノスケールの幅の微細な溝に囲まれた多数の島状に形成され、該微細な溝にもう片方のドナーまたはアクセプターの層が充填された構造を有するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、有機薄膜太陽電池の変換効率向上などに適用できる発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、有機薄膜太陽電池は、2次元的な平面の接合では接合面積が不足し、光電変換効率が低いことが知られている。そこで、有機薄膜太陽電池の変換効率を向上させる発明として、非特許文献1や非特許文献2のようにドナーとアクセプターの混合物の相分離によるバルクヘテロ接合構造を形成し、ドナーとアクセプターの接合界面を増やす工夫により有機薄膜太陽電池の光発生電荷を増加させる試みがなされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】C.J.Brabecら、Advanced Functional Materials,第11巻、15頁
【非特許文献2】J.Xue,S.Uchida,B.P.Land,S.R.Forrest,Appl.Phys.Lett.,85, p.5757(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ドナーとアクセプターの混合物の相分離によるバルクヘテロ接合構造ではドナーとアクセプターの分布が不均一であり、その不均一の度合いは太陽電池の面積が大きくなればなるほど大きくなる傾向にあった。このため、製品のロットごとのバラツキが大きく、また太陽電池の面積が大きくなればなるほど、高い変換効率を達成することができない問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ドナーまたはアクセプターの層の表面がナノスケールの幅の微細な溝に囲まれた多数の島状に形成され、該微細な溝にもう片方のドナーまたはアクセプターの層が充填された構造を有することを特徴とする有機薄膜太陽電池である。また上記の発明において、前記微細な溝の幅が1〜50nmであり、該微細な溝に囲まれた多数の島状構造の一個あたりの平均面積が10〜500nmであってもよい。
【0006】
また本発明は、ドナーまたはアクセプターの層の上に島状構造の金属膜を形成し、該金属膜をマスクとしてドナーまたはアクセプターの層をエッチングすることによりナノスケール幅の微細な溝を形成し、該微細な溝にもう片方のドナーまたはアクセプターの層を充填することにより前記有機薄膜太陽電池を形成することを特徴とする有機薄膜太陽電池の製造方法である。また上記の発明において、前記島状構造の金属膜がスズ、インジウム、ビスマス、鉛およびそれらの合金のいずれかからなるものであってもよい。
【0007】
また上記の発明において、離型性を有する基体シート上にドナーまたはアクセプターの層を形成し、該ドナーまたはアクセプターの層の上に島状構造の金属膜を形成し、該金属膜をマスクとしてドナーまたはアクセプターの層を貫通してエッチングすることによりナノスケール幅の微細な溝を形成し、該微細な溝にもう片方のドナーまたはアクセプターの層を充填し、その上から電極を形成した後、前記各層を基材に転写し、転写後の最表面にもう片方の電極を形成してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有機薄膜太陽電池は、本発明は、ドナーまたはアクセプターの層の表面がナノスケールの幅の微細な溝に囲まれた多数の島状に形成され、該微細な溝にもう片方のドナーまたはアクセプターの層が充填された構造を有することを特徴とする。したがって、ドナーとアクセプターの接合界面が非常に均一であり、太陽電池の面積が大きくなってもその均一性は保持される。このため、製品のロットごとのバラツキが少なく、太陽電池の面積が大きくなっても高い変換効率を達成することができる効果がある。
【0009】
また本発明の有機薄膜太陽電池は、前記微細な溝の幅が1〜50nmであり、該微細な溝に囲まれた多数の島状構造の一個あたりの平均面積が10〜500nmであることを特徴とする有機薄膜太陽電池である。したがって、単位面積あたりのドナーとアクセプターの接合界面が非常に多くなり多数の光発生電荷が生じるため、高い変換効率を達成することができる効果がある。
【0010】
また本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法は、ドナーまたはアクセプターの層の上に島状構造の金属膜を形成し、該金属膜をマスクとしてドナーまたはアクセプターの層をエッチングすることによりナノスケール幅の微細な溝を形成し、該微細な溝にもう片方のドナーまたはアクセプターの層を充填することを特徴とする。したがって、ナノスケール幅の微細な溝を生産性よく形成できる効果がある。また、異方性エッチングならば微細な溝がほぼ平行に多数形成されるので、理想的なナノ構造を容易に形成することができる効果がある。
【0011】
また本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法は、前記島状構造の金属膜がスズ、インジウム、ビスマス、鉛およびそれらの合金のいずれかからなるものであることを特徴とする。したがって、島状構造の金属膜からなるマスクを大面積で生産性よくかつ効率的に形成できる効果がある。
【0012】
また本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法は、離型性を有する基体シート上にドナーまたはアクセプターの層を形成し、該ドナーまたはアクセプターの層の上に島状構造の金属膜を形成し、該金属膜をマスクとしてドナーまたはアクセプターの層を貫通してエッチングすることによりナノスケール幅の微細な溝を形成し、該微細な溝にもう片方のドナーまたはアクセプターの層を充填し、その上から電極を形成した後、前記各層を基材に転写し、転写後の最表面にもう片方の電極を形成することを特徴とする。したがって、ドナーまたはアクセプターの層を完全に貫通させた微細な溝を生産性よくかつ効率的に形成でき、理想的なバルクヘテロ接合構造である直立超格子構造を生産性よくかつ効率的に形成できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の有機薄膜太陽電池の一実施例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法の一実施例を示す模式断面図であり、(a)は、ドナーまたはアクセプターの層の上に島状構造の金属膜を形成する工程を示し、(b)は、該金属膜をマスクとしてドナーまたはアクセプターの層をエッチングしてナノスケール幅の微細な溝を形成した工程を示し、(c)は、該微細な溝にもう片方のドナーまたはアクセプターの層を充填した工程を示す。
【図3】本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法の一実施例を示す模式断面図であり、(a)は、離型性を有する基体シート上にドナーまたはアクセプターの層を形成する工程を示し、(b)は、該ドナーまたはアクセプターの層の上に島状構造の金属膜を形成する工程を示し、(c)は、エッチングによりナノスケール幅の貫通する微細な溝を形成された工程を示し、(d)は、該微細な溝にもう片方のドナーまたはアクセプターの層を充填した工程を示し、(e)は、その上から電極を形成した後、前記各層を基材に転写し離型性を有する基体シートを剥離する工程を示し、(f)は、転写後の最表面にもう片方の電極を形成した工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の有機薄膜太陽電池5は、ドナーまたはアクセプターの層7の表面がナノスケールの幅の微細な溝1に囲まれた多数の島状構造9に形成され、該微細な溝1にもう片方のドナーまたはアクセプターの層8が充填された構造を有する(図1参照)。そして、ドナーまたはアクセプターの層7および8の他方の表面には光発生電荷を採りだして電流にするための電極20、21が形成される。
【0015】
ドナーの層7または8の材質としては、架橋型ポリチオフェン、ポリ3ヘキシルチオフェン(P3HT)やフタロシアニン誘導体などが挙げられ、アクセプターの層7または8の材質としては、PCBMやPCPDTBTなどのフラーレン誘導体や酸化亜鉛などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
ドナーまたはアクセプターの層7の形成方法は、スピンコートなどの各種コート法、グラビア印刷などの各種印刷法などが挙げられ、電極20が形成された基材14の上に形成される。ドナーまたはアクセプターの層7の厚みは50〜150nm程度が好ましい。厚みが厚いほど光発生電荷が生じる界面を大きくできるが100nm以上になると光発生電荷が電極に到達する前に消失してしまう割合が高くなり、150nm以上ではかえって変換効率が低下するからである。
【0017】
微細な溝1はその幅が1〜50nm程度にし、該微細な溝1に囲まれた多数の島状構造9のドナーまたはアクセプターの層7の一個あたりの平均面積は10〜500nm程度になるのが好ましく、その中でも島状構造9の総面積と微細な溝1の総断面積とが同程度、すなわち微細な溝1の幅が5〜20nm、島状構造9の平均面積が100〜300nmになるようにするのが最も好ましい。
【0018】
微細な溝1の幅を1nm未満にしようとすると島状構造9の形成が困難となり、微細な溝1の幅を50nmよりも大きくしようとすると、光発生電荷が生じる界面が少なくなり、また光発生電荷が消失してしまう割合が高くなる。また、島状構造9の一個あたりの平均面積を10nm未満にすることは技術的に困難であり、500nmを超えると光発生電荷が生じる界面が少なくなり、また光発生電荷が消失してしまう割合が高くなる。
【0019】
このようなナノスケールの幅の微細な溝1および該微細な溝1に囲まれた多数の島状構造9を形成する方法としては、まずドナーまたはアクセプターの層7の表面に、島状構造の金属膜3を形成した後(図2(a)参照)、該島状構造の金属膜3をマスクとしてドナーまたはアクセプターの層7をエッチングしてナノスケール幅の微細な溝を形成する方法が挙げられる(図2(b)参照)。
【0020】
島状構造の金属膜3は、スズ、インジウム、ビスマス、鉛およびそれらの合金などからなる層が挙げられ、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などで形成するとよい。厚みは5〜40nm程度で形成し、光線透過率を測定すれば7%〜20%程度の値を示す厚みにすることが好ましい。上記の金属材料および適切な形成手段で、上記の光線透過率を示す値で島状構造の金属膜3を形成し、該島状構造の金属膜3をマスクとしてドナーまたはアクセプターの層7をエッチングすれば、前述のナノスケールの幅の微細な溝1および該微細な溝1に囲まれた多数の島状構造9が形成される。
【0021】
エッチングは、島状構造の金属膜3よりもドナーまたはアクセプターの層7の方がエッチングされやすい方式であればよく、とくに異方性エッチング方式が好ましい。異方性エッチングとは、膜面方向の方位に対してはエッチングが抑制される性質のエッチングのことであり、これにより細く深い(高アスペクト比の)微細な溝1を掘ることができるからである。具体的には、酸素、アルゴン、フッ素系ガスなどのプラズマを用いたドライエッチング方式などが挙げられる。
【0022】
なお、マスクの機能を果たした島状構造の金属膜3はそのまま残存させてもよいし、エッチングで若干エッチングされ得る材料の選択や厚みを薄く設定することなどで、島状構造の金属膜3も少しずつエッチングされるようにし、微細な溝1が形成されると同時に島状構造の金属膜3も消失させるよう設定してもよい。
【0023】
次いで、上記形成された微細な溝1に対して、もう片方のドナーまたはアクセプターの層8を充填する(図2(c)参照)。それらの材質は前述で挙げたドナーまたはアクセプターの層7の材質などで構わない。ただ、当然ながら前述の層7がドナーならば、微細な溝1に充填するのはアクセプターの層8であり、前述の層7がアクセプターならば、微細な溝1に充填するのはドナーの層8となる。
【0024】
微細な溝1に対してドナーまたはアクセプターの層8を充填する方式としては、スピンコートなどの各種コート法、グラビア印刷などの各種印刷法などのほか、蒸着やスパッタリングなどの方式が挙げられる。ドナーまたはアクセプターの層8の充填は微細な溝1を丁度埋め尽くす程度にするのが最もよく、一部は多数の島状構造9の部分まで被覆してしまっても良い。ただ、該島状構造9の部分を被覆してしまった厚みが数十nmを超えると変換効率が低下することがある。
【0025】
そして、ドナーまたはアクセプターの層8上には電極21が形成される。電極20および電極21の材質は、太陽光が入射してくる側の電極はインジウムスズ酸化物、酸化亜鉛、あるいは銀ナノワイヤやカーボンナノチュ―ブを含ませた透明導電膜で形成し、その対極の電極はアルミニウム、金、銀、銅などの材質で形成するとよい。また、電極20とドナーとの間にはポリスチレンスルホン酸をドーパントに用いたポリ3, 4―エチレンジオキシチオフェン(PEDOT/PSS)、電極21とアクセプターの層8との間には酸化チタンなどのバッファー層を設けてもよく、これらの層の追加により変換効率がさらに向上する。
【0026】
なお、前記微細な溝1はドナーまたはアクセプターの層7を完全に貫通させてもよいし、層の途中までであっても構わない。ただし、完全に貫通させた場合には、ドナーまたはアクセプターの層7の下部にある電極20までエッチングされないよう制御する必要がある。制御が難しい場合には、離型性を有する基体シート12上にドナーまたはアクセプターの層7を形成し(図3(a)参照)、該ドナーまたはアクセプターの層7の上に島状構造の金属膜3を形成し(図3(b)参照)、エッチングによりナノスケール幅の貫通する微細な溝1を形成し(図3(c)参照)、該微細な溝1にもう片方のドナーまたはアクセプターの層8を充填し(図3(d)参照)、その上から電極21を形成した後、前記各層を基材15に転写し離型性を有する基体シート12を剥離した後(図3(e)参照)、転写後の最表面にもう片方の電極20を形成する工程(図3(f)参照)により、ドナーまたはアクセプターの層7を完全に貫通させた微細な溝1を形成することもできる。
【実施例1】
【0027】
基材として厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、その表面に透明電極としてインジウムスズ酸化物膜をスパッタリング法で200nmの厚みで形成し、その上にPEDOT/PSSの水分散液をコーターで形成し、乾燥後、その上にドナー層としてポリ3ヘキシルチオフェン(P3HT)をコーターで100nmの厚みで形成した。次いで真空蒸着法を用いてスズからなる厚み20nmの多数の島状の金属膜を形成した。島状の金属膜は光線透過率が13%で、各島の一個あたりの平均面積は320nm程度で、島と島との間には8〜15nm程度の隙間が形成されていた。
【0028】
次いで、上記多数の島状の金属膜をマスクとして、四フッ化炭素ガスを用いたプラズマエッチングにより微細な溝を形成し、微細な溝がドナー層を貫通しインジウムスズ酸化物膜に達するまで、エッチングを行った。その結果、側壁の角度がほぼ垂直で細く深いアスペクト比10の程度の微細な溝をドナー層に多数形成することができた。
【0029】
次いで、この形成された多数の微細な溝にアクセプター層としてフラーレン60を真空蒸着法で充填した。次いでアクセプター層の上にバッファー層として酸化チタンからなる膜をスパッタリング法で200nmの厚みで形成し、その上に電極としてアルミニウム膜を真空蒸着法で800nmの厚みで形成し、有機薄膜太陽電池を得た。
【0030】
この有機薄膜太陽電池の断面は、従来の不均一なバルクへテロジャンクション接合構造と異なり、ほぼ理想に近いナノ構造になっており、変換効率も格段に向上していた。また、大面積にしてもこの構造はほぼ維持されていた。
【実施例2】
【0031】
基材として厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、その表面に電極としてアルミニウム膜を真空蒸着法で800nmの厚みで形成し、次いでその上にバッファー層として酸化チタンからなる膜をスパッタリング法で500nmの厚みで形成し、その上にアクセプター層としてC70フェニルブチル酸メチルエステル(PC70BM)を含む塗布膜をコーターで100nmの厚みで形成した。次いで真空蒸着法を用いてインジウムからなる厚み15nmの多数の島状の金属膜を形成した。島状の金属膜は光線透過率が15%で、各島の一個あたりの平均面積は250nm程度で、島と島との間には12〜20nm程度の隙間が形成されていた。
【0032】
次いで、上記多数の島状の金属膜をマスクとして酸素ガスを用いてアクセプター層をプラズマエッチングし、微細な溝がアクセプター層を貫通し酸化チタン膜に達するまで、この処理を行った。その結果、側壁の角度がほぼ垂直で細く深いアスペクト比8の程度の微細な溝をアクセプター層に多数形成することができた。
【0033】
次いで、この形成された多数の微細な溝にドナー層として亜鉛ドープフタロシアニンをジブチルエーテルに溶解した塗布液で充填し、乾燥した。その上に透明電極として銀ナノワイヤを含有した透明導電インキをグラビア印刷で500nmの厚みで形成し、有機薄膜太陽電池を得た。
【0034】
この有機薄膜太陽電池の断面も、従来の不均一なバルクへテロジャンクション接合構造と異なり、ほぼ理想に近いナノ構造になっており、変換効率も格段に向上していた。また、大面積にしてもこの構造はほぼ維持されていた。
【実施例3】
【0035】
離型性を有する基体シートとして、メラミン樹脂をコートした厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その表面にドナー層としてポリ3ヘキシルチオフェン(P3HT)をコーターで100nmの厚みで形成した。次いで真空蒸着法を用いてスズからなる厚み25nmの多数の島状の金属膜を形成した。島状の金属膜は光線透過率が11%で、各島の一個あたりの平均面積は400nm程度で、島と島との間には5〜10nm程度の隙間が形成されていた。
【0036】
次いで、上記多数の島状の金属膜をマスクとしてアルゴンガスを用いてプラズマエッチングをし、微細な溝がドナー層を貫通しメラミン樹脂層に達するまで、この処理を行った。その結果、側壁の角度がほぼ垂直で細く深いアスペクト比10の程度の貫通した微細な溝をドナー層に多数形成することができた。
【0037】
次いで、この形成された多数の微細な溝にアクセプター層としてフラーレン60を真空蒸着法で充填した。次いでアクセプター層の上にバッファー層として酸化チタンからなる膜をスパッタリング法で200nmの厚みで形成し、その上に電極としてアルミニウム膜を真空蒸着法で800nmの厚みで形成し、その上に塩化ビニル系の接着層をグラビア印刷で全面に形成し、アクリル板に載置し、熱と圧力を加えて前記各層をアクリル板状に転写させた。
【0038】
次いで、離型性を有する基体シートを剥離除去し、露出した最表面に透明電極としてインジウムスズ酸化物膜をスパッタリング法で200nmの厚みで形成し、有機薄膜太陽電池を得た。
【0039】
この有機薄膜太陽電池の断面は、従来の不均一なバルクへテロジャンクション接合構造と異なり、ドナー層とアクセプター層が両電極を完全に貫通した直立超格子構造でほぼ理想に近いナノ構造になっており、変換効率も格段に向上していた。また、大面積にしてもこの構造はほぼ維持されていた。
【符号の説明】
【0040】
1 微細な溝
3 金属膜
5 有機薄膜太陽電池
7 ドナーまたはアクセプターの層
8 もう片方のドナーまたはアクセプターの層
9 多数の島状構造
12 離型性を有する基体シート
14、15 基材
20、21 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナーまたはアクセプターの層の表面がナノスケールの幅の微細な溝に囲まれた多数の島状に形成され、該微細な溝にもう片方のドナーまたはアクセプターの層が充填された構造を有することを特徴とする有機薄膜太陽電池。
【請求項2】
前記微細な溝の幅が1〜50nmであり、該微細な溝に囲まれた多数の島状構造の一個あたりの平均面積が10〜500nmである請求項1記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項3】
ドナーまたはアクセプターの層の上に島状構造の金属膜を形成し、該金属膜をマスクとしてドナーまたはアクセプターの層をエッチングすることによりナノスケール幅の微細な溝を形成し、該微細な溝にもう片方のドナーまたはアクセプターの層を充填することにより請求項1または請求項2に記載の有機薄膜太陽電池を形成することを特徴とする有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記島状構造の金属膜がスズ、インジウム、ビスマス、鉛およびそれらの合金のいずれかからなる請求項3に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項5】
離型性を有する基体シート上にドナーまたはアクセプターの層を形成し、該ドナーまたはアクセプターの層の上に島状構造の金属膜を形成し、該金属膜をマスクとしてドナーまたはアクセプターの層を貫通してエッチングすることによりナノスケール幅の微細な溝を形成し、該微細な溝にもう片方のドナーまたはアクセプターの層を充填し、その上から電極を形成した後、前記各層を基材に転写し、転写後の最表面にもう片方の電極を形成する請求項3または請求項4に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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