説明

有機酸を製造する方法及び装置

【課題】 バイオマス資源に多く含まれる糖類を用いて、比較的温和な条件下で、COxを生成せずに、有機酸又はそのアルカリ塩と水素とを同時に製造する。また、糖類から所定の有機酸又はそのアルカリ塩を選択的に生成する。さらに、糖類以外のバイオマス資源からも有機酸又はそのアルカリ塩を製造する。
【解決手段】 150〜450℃の加熱条件下及び無酸素雰囲気下で、糖類とアルカリ金属の水酸化物を反応させて有機酸又はそのアルカリ塩と水素とを同時に生成する。糖類とアルカリ金属の水酸化物のモル比は、糖類に含まれる炭素1モルに対してアルカリ金属の水酸化物を0.5〜10モルとする。また、加熱温度等を制御することにより、ギ酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、ジカルボン酸又はこれらのアルカリ塩が選択的に生成する。さらに、糖類に代えてリグリンを用いることでも有機酸又はそのアルカリ塩が生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス資源を原料に用いて有機酸又はそのアルカリ塩を製造する方法及び装置に関し、詳しくは、有機酸又はそのアルカリ塩と水素とを同時に製造する方法及び装置や、有機酸又はそのアルカリ塩の中でもギ酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、ジカルボン酸又はそれらのアルカリ塩等を選択的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、特に最近注目されている固体高分子型燃料電池(PEFC)には、燃料電池の電極被毒を防止する観点から、一酸化炭素を含まない水素を供給する必要がある。従来の水素製造プロセスでは、天然ガス、石油、石炭等の化石燃料を水蒸気改質反応によって水素を生成している。この際、化石燃料に含まれる炭素の大部分は炭酸ガスにして大気中に放出している。しかし、京都議定書の締約国として、温室効果ガスである炭酸ガスの排出抑制は焦眉の急である。
【0003】
また、上記の水素製造プロセスでは、電極毒物質であるCOの残留(1〜3%)を避けることができない。それゆえ、プレッシャースイング吸着法(PSA法)等を用いた大型で高コストの設備によって、水素の深度精製(CO<20ppm)を余儀なくされている。また、水蒸気改質反応は、約800℃と非常に高い温度まで加熱する必要がある。
【0004】
特開平10−251001号公報には、水酸化ナトリウムを反応媒体とし、水と炭素との熱化学分解反応によって水素を製造する方法が記載されている。この方法は、水酸化ナトリウムに対して炭素を大過剰に供給することで、水酸化ナトリウムを触媒的に作用させることができるとする利点があるものの、副生物としてCOやCO2が生成するという問題点がある。
【0005】
一方、バイオマス資源は、有限な資源でありかつ大気中に多量のCO2を排出する化石燃料とは異なり、再生産が可能でありかつカーボンニュートラルである。そのため、バイオマス資源の有効利用について現在多くの研究がなされている。しかしながら、廃木材や新聞紙などの木質バイオマスや食品残渣などの糖質系バイオマスの多くは有効利用されずに廃棄処理されている状況にある。
【0006】
バイオマス資源の有効利用法として、例えば、米国特許第2750414号明細書には、低濃度の水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウム水溶液に木材を加えて加熱することで、有機酸を得る方法が記載されている。しかしながら、この方法では、副生物としてCOやCO2が生成するという問題点がある。
【特許文献1】特開平10−251001号公報
【特許文献2】米国特許第2750414号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑み、バイオマス資源に多く含まれる糖類を用いて、比較的温和な条件下で、COx(CO及びCO2)を生成せずに、有機酸又はそのアルカリ塩と水素とを同時に製造することができる方法及び装置を提供することを目的とする。また、本発明は、糖類を用いて所定の有機酸又はそのアルカリ塩を選択的に生成することができる有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法を提供することを目的とする。さらに、糖類を含まないバイオマス資源からも有機酸又はそのアルカリ塩を生成することができる有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、150〜450℃の加熱条件下及び無酸素雰囲気下で、糖類とアルカリ金属の水酸化物を反応させて水素と有機酸又はそのアルカリ塩とを同時に生成する工程を含む有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法であって、前記糖類と前記アルカリ金属の水酸化物のモル比を、糖類に含まれる炭素1モルに対してアルカリ金属の水酸化物を0.5〜10モルとすることを特徴とするものである。例えば、糖類をセルロースとし、アルカリ金属の水酸化物をNaOHとした場合の反応を以下の式1に示す。
【0009】
【化1】

【0010】
式1に示すように、150〜450℃の温度域において、セルロースは、NaOH及び水との反応によって、グリコール酸、ギ酸、乳酸、酢酸などの低分子量の有機酸(又はこれらのナトリウム塩)に分解する。また、これら有機酸の一部は、上記温度域においてNaOH及び水と反応し、これによって水素を生成する。なお、有機酸に含まれる炭素原子は、NaOHと反応してNa2CO3を生成するため、COおよびCO2の生成は回避され、COxフリーでかつ水素を高純度で含む気体を得ることができる。なお、得られる気体中にはメタンを僅かに含むことがある。
【0011】
また、本発明は、別の態様として、有機酸又はそのアルカリ塩を製造する装置であって、糖類とアルカリ金属の水酸化物との反応により水素と有機酸又はそのアルカリ塩とを同時に生成する無酸素雰囲気下の反応室と、前記反応室の温度を150〜450℃にする加熱手段と、糖類に含まれる炭素1モルに対してアルカリ金属の水酸化物が0.5〜10モルとなるように、前記糖類と前記アルカリ金属の水酸化物を前記反応室に連続的に供給する定量供給手段と、前記反応室内で生成した水素を排出する配管と、前記反応室から有機酸又はそのアルカリ塩を含有する固体状の残留物を連続的に取り出す排出手段とを含むことを特徴とするものである。
【0012】
このように、無酸素雰囲気に維持された反応室に、糖類とアルカリ金属の水酸化物を一定の比率で連続的に供給することで、水素を連続的に生成することができる。また、反応により生成した固体状の残留物中には有機酸のアルカリ塩が含有している。したがって、連続的に一定量の水素及び有機酸のアルカリ塩を得ることができる。また、例えば、有機酸のアルカリ塩は溶解するが、副生物であるNa2CO3等の炭酸塩は溶解しない溶媒を用いることで、残留物中から有機酸を分離することができる。したがって、連続的に一定量の水素及び有機酸を得ることができる。
【0013】
さらに、本発明は、別の態様として、以下の有機酸又はそのアルカリ塩を選択的に生成する有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法である。有機酸又はそのアルカリ塩としてギ酸又はそのアルカリ塩を選択的に生成する有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法は、0〜100℃の加熱条件下で、セロビオースとアルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩を反応させることを特徴とする。有機酸又はそのアルカリ塩として酢酸又はそのアルカリ塩を選択的に生成する有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法は、250〜450℃の加熱条件下で、糖類とアルカリ金属の水酸化物を反応させることを特徴とする。有機酸又はそのアルカリ塩としてグリコール酸又はそのアルカリ塩を選択的に生成する有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法は、220〜300℃の加熱条件下で、多糖類とアルカリ金属の水酸化物を反応させることを特徴とする。有機酸又はそのアルカリ塩として乳酸又はそのアルカリ塩を選択的に生成する有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法は、100〜250℃の加熱条件下で、単糖類とアルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩を反応させることを特徴とする。有機酸又はそのアルカリ塩としてジカルボン酸又はそのアルカリ塩を選択的に生成する有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法は、140〜380℃の加熱条件下で、糖類とアルカリ金属の水酸化物を反応させることを特徴とする。
【0014】
このように、加熱温度を所定の範囲に制御するとともに、原料となる糖類およびアルカリを所定の組み合わせとすることで、有機酸又はそのアルカリ塩としてギ酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、ジカルボン酸又はそれらのアルカリ塩を選択的に得ることができる。
【0015】
さらにまた、本発明は、別の態様として、140〜360℃の加熱条件下で、リグニンとアルカリ金属の水酸化物を反応させて有機酸又はそのアルカリ塩を生成する有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法である。
【0016】
このように、糖類に含まれないリグニン等のバイオマス資源からも有機酸又はそのアルカリ塩を生成することができる。特に、リグニンからは付加価値の高いグリセリン酸又はそのアルカリ塩を生成することができる。
【発明の効果】
【0017】
上記の通り、本発明によれば、バイオマス資源に多く含まれる糖類を用いて、比較的温和な条件下で、COxを生成せずに、有機酸又はそのアルカリ塩と水素とを同時に製造する方法及び装置を提供することができる。また、本発明によれば、糖類を用いて所定の有機酸又はそのアルカリ塩を選択的に生成する有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、糖類を含まないバイオマス資源からも有機酸又はそのアルカリ塩を生成する有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。先ず、本発明に係る有機酸又はそのアルカリ塩と水素とを同時に製造する方法の実施の形態について説明する。本実施の形態では、先ず、所定の加熱条件下及び無酸素雰囲気下で、糖類とアルカリ金属の水酸化物を反応させることで、COXフリーの水素を得る。
【0019】
糖類としては、例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類等を使用することができる。単糖類としてはグルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等を使用でき、二糖類としてはスクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース等を使用でき、三糖類としてはマルトトリオース等を使用でき、多糖類としてはデンプン、セルロース、グリコーゲン等を使用できる。
【0020】
また、糖類としてバイオマス資源を用いることが好ましい。バイオマス資源としては、例えば、サトウキビ、テンサイ等のスクロース系バイオマスや、米、麦、トウモロコシ、イモ等のデンプン系バイオマスや、小径木、間伐材、おが屑、木屑、古紙、もみ殻、稲わら、バガス、天然繊維、新聞紙、包装紙、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ダンボール等のセルロース系の木質バイオマス等を使用することが好ましい。本発明は、バイオマス資源から直接的に有機酸及び水素を生成することができるので、従来、有効利用されずに廃棄処理されていた廃木材や新聞紙などの木質バイオマスや食品残渣などの糖質系バイオマスといったバイオ資源からも効率的に有機酸及び水素を生成することができる。
【0021】
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)等を使用し、このうち特にNaOHが好ましい。NaOHを使用すると、本発明の反応によって、ガラス等の原料として利用され、NaOHより工業的価値の高い炭酸ナトリウム(Na2CO3)が生成するので、反応副生物も有効利用することができる。
【0022】
アルカリ金属の水酸化物の添加量としては、糖類に含まれる炭素(C)1モルに対して、0.5モル以上添加する必要がある。添加量が0.5モル未満では、糖類の熱分解によりCOおよびCO2が生成してしまう。一方、添加量を0.5モル以上にすることで、糖類中の炭素(C)はアルカリ金属の炭酸塩を生成するため、COXの生成を防止することができる。また、水素及び有機酸の生成速度も向上させることができる。なお、アルカリ金属の水酸化物は炭素に対して多めに存在することが好ましいが、10モルを超えて過剰に添加してもその効果は飽和状態となるので、添加量の上限は10モルとすることが好ましい。より好ましい添加量の範囲は2〜5モルである。
【0023】
この糖類とアルカリ金属の水酸化物との反応には、水蒸気を導入することができる。水蒸気の導入量としては、糖類に含まれる炭素(C)1モルに対して、0.5〜10モルの範囲で導入することが好ましい。導入量を0.5モル以上にすることで、アルカリ金属酸化物の生成を抑制してアルカリ金属炭酸塩の生成を促進することができる。一方、導入量を10モル以下にすることで、反応室に供給する熱量を抑制することができる。より好ましい導入量の範囲は1〜4モルの範囲である。
【0024】
加熱条件としては、使用する原料により異なるが、原料を少なくとも150℃以上に加熱する必要がある。加熱温度が150℃未満では、糖類を分解して水素を生成することができない。一方、加熱温度の上限は450℃に抑える必要がある。加熱温度が450℃を超えると、生成した有機酸のほとんどが分解して水素又はメタンと炭酸塩になってしまい、有機酸を得ることができない。より好ましい上限は350℃である。例えば、有機酸をグリコール酸(C243)、ギ酸(HCOOH)、乳酸(C363)、酢酸(C242)とし、アルカリ金属の水酸化物をNaOHとした場合、以下の式2〜5のように表すことができる。
【0025】
243+4NaOH→3H2+2Na2CO3+H2O・・・(式2)
HCOOH+2NaOH→H2+Na2CO3+H2O・・・(式3)
363+6NaOH→6H2+3Na2CO3・・・(式4)
242+2NaOH→CH4+Na2CO3+H2O・・・(式5)
【0026】
すなわち、所定の加熱温度を超えると、一旦生成した有機酸は消失してしまうので、全体の化学式は、例えば、糖類をセルロース(単位構造であるC6105で表す)とし、アルカリ金属の水酸化物をNaOHとした場合、以下の式6のようになる。
【0027】
6105+12NaOH+H2O→12H2+6Na2CO3・・・(式6)
【0028】
なお、糖類とアルカリ金属の水酸化物とを所定の温度に加熱した後、その温度を一定時間にわたり維持して有機酸を生成してもよいが、所定の温度に加熱した後、急冷することでも上記の反応により十分な量の有機酸が生成する。前者の場合は、バッチ式で有機酸を製造することができる。この場合の加熱温度は、例えばセルロースでは150〜350℃が好ましい。後者の場合は、連続的に有機酸を製造することができる。この場合の加熱温度は、例えばセルロースでは200〜450℃が好ましい。
【0029】
また、本反応は、糖類の燃焼を防ぐため、無酸素雰囲気下で行い、例えば水蒸気、不活性ガス又は水蒸気と不活性ガスの混合ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、アルゴン(Ar)などの0族元素のガスや窒素ガスを用いることが好ましい。混合ガス中における水蒸気の含有量は、1〜100体積%が好ましく、50〜100体積%がより好ましい。また、不活性ガスを流通させることで、生成した水素を反応系外に除去することができる。
【0030】
糖類とアルカリ金属の水酸化物は、反応が起こるように混合されていれば特に限定されないが、糖類は反応が促進するように様々な形状にすることが好ましい。例えば、粉状、粒状、ペレット状、フレーク状、チップ状、小片状、多孔質状にすることが好ましい。また、糖類の種類によっては、液状、スラリー状にしてもよい。また、アルカリ金属の水酸化物は、濃度10〜99重量%の水溶液として糖類に担持させることが好ましい。
【0031】
本実施の形態では、次に、上記反応により生成した固体状の残留物から有機酸を分離する。本反応により生成する有機酸は、上記のグリコール酸、ギ酸、乳酸、酢酸の他、D−グルクロン酸、グルコン酸、グリセリン酸、レブリン酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸や、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸等のジカルボン酸といった低分子量の有機酸であって、ナトリウム塩等の有機酸のアルカリ塩として残留物中に存在する。また、残留物中には、これら有機酸塩の他、未反応の糖類、原料に不純物として含まれるシリカやアルカリ土類金属炭酸塩、副生物であるNaCO3やNa2O等のアルカリ金属の炭酸塩や酸化物が存在する。よって、これら副生物から有機酸を分離する必要がある。
【0032】
残留物中から有機酸を分離する方法としては、例えば、残留物をエタノールや、アセトン、エーテル等の有機溶媒に浸漬して、有機酸のアルカリ塩を有機溶媒に溶解させることで、このような溶媒に不溶な副生物と分離することができる。その後、濾過等の固液分離を行うことによって、副生物を含有する固形物を除去して、有機酸を含む液体を得ることができる。なお、各有機酸をそれぞれ分離する場合は、有機酸の種類によって異なるが、例えば、塩酸、硫酸等の酸水溶液と有機溶媒で抽出分離することができる。
【0033】
次に、本発明に係る有機酸と水素を同時に製造する装置の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る装置は、糖類とアルカリ金属の水酸化物との反応により水素と有機酸又はそのアルカリ塩とを同時に生成する反応室と、この反応室の温度を150〜450℃にする加熱手段と、糖類に含まれる炭素1モルに対してアルカリ金属の水酸化物が0.5〜10モルとなるように、糖類とアルカリ金属の水酸化物を反応室に連続的に供給する定量供給手段と、反応室を無酸素雰囲気に維持するために反応室に水蒸気、不活性ガス、又はこれらの混合ガスを供給する配管と、反応室内で生成した水素を排出する配管と、反応室から固体状の残留物を取り出す排出手段と、前記残留物中から有機酸を分離する分離手段とを備えている。
【0034】
本反応を行うための反応室は、いわゆる流動床方式であって、例えば、円筒形状の回転型反応炉(ロータリーキルン)や、単軸又は2軸スクリュー式押出機を用いることができる。反応室は、ステンレススチールやアルミニウム等の金属、アルミナやジルコニア等のセラミックスまたはフェノール樹脂やポリフェニレンサルファイド等の耐熱性プラスチック等の耐熱性、耐アルカリ性に優れた素材で作られていることが好ましい。なお、金属触媒の存在は有機酸を水素に分解してしまうので、有機酸の生成量を確保したい場合は、反応室には金属触媒を添加しないことが好ましい。
【0035】
加熱手段としては、抵抗加熱によるヒータや、正特性サーミスタ(PTCヒータ)、化学反応の酸化熱を利用する加熱器、触媒燃焼による加熱器、誘導加熱による加熱器、熱風を反応室外周に供給して原料を間接加熱する外熱式加熱手段などを用いることができる。
【0036】
定量供給手段としては、糖類と、アルカリ金属の水酸化物またはその水溶液とをそれぞれ計量して、所定のモル比となるように供給速度を調節して反応室に供給することができるものであれば、特に限定されるものではない。これらは混合してから反応室に供給してもよいし、別々に供給してもよい。
【0037】
反応室内に水蒸気や不活性ガスを供給する配管は、水蒸気と不活性ガスの混合ガスを反応室内に供給するように構成してもよいし、別々に供給するように構成してもよい。水蒸気を得るために、反応室の外に気化器などを設けることもできる。水素を排出する配管は、燃料電池などの水素を利用する装置に供給できるように構成してもよい。また、水素を排出する配管からは、反応室内に導入した不活性ガス及び未反応の水蒸気が、水素とともに排出される。
【0038】
反応室から固体状の残留物を取り出す排出手段としては、例えば、反応室としてロータリーキルンを採用した場合、円筒軸を傾けることで、キルンの回転により、床面の高さが低い方のキルン端部の開口部から、残留物が自由落下して排出される。必要により、残留物を掻き出すためのスパイラルブレードなどを残留物の出口に設けてもよい。
【0039】
分離手段としては、例えば、残留物が供給される上記所定の有機溶媒が収容された容器と、有機酸が溶解した有機溶媒と固形物とを固液分離するフィルターとの組み合わせ等を用いることができる。排出手段と分離手段との間に、例えば、室温まで残留物を冷却することができる冷却手段を設けてもよい。例えば、室温または低温の不活性ガスを送風すること等によって、残留物を冷却することができる。
【0040】
さらに、本発明に係る有機酸又はそのアルカリ塩を選択的に製造する方法の実施の形態について説明する(以下、特に言及がない限り、有機酸又はそのアルカリ塩をまとめて単に「有機酸」という)。なお、この実施の形態は、所定の有機酸の選択率を高くすることを第1の目的とするものである。よって、この実施の形態には、有機酸と同時に水素が生成しない場合も含まれている。
【0041】
本実施の形態には、アルカリ金属の水酸化物に代えて、アルカリ金属の炭酸塩を用いて有機酸を生成することが含まれる。アルカリ金属の炭酸塩は2価のアルカリであるから、その添加量は、糖類に含まれる炭素(C)1モルに対して、0.25モル以上である。添加量の上限は5モルとすることが好ましく、より好ましい添加量の範囲は1〜2.5モルである。アルカリ金属の炭酸塩を使用することで、所定の有機酸の選択率が向上する場合も有る一方、水素およびメタンとともにCOおよびCO2が発生する場合がある。
【0042】
有機酸としてギ酸を選択的に生成するためには、0〜100℃の加熱条件下で、セロビオースとアルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩を反応させることが好ましい。ギ酸は、温度が高くなると上記の式3の反応で消失するので、この温度範囲で、特に室温付近で糖類を反応させることがより好ましい。なお、100℃以下の温度では水素は発生しない。また、糖類の中でもセロビオースを用いることで、生成する全ての有機酸の合計生成量のうちのギ酸の生成量の割合(以下、選択率という)が大幅に向上する。さらに、Na2CO3等のアルカリ金属の炭酸塩を使用することもできる。
【0043】
有機酸として酢酸を選択的に生成するためには、250〜450℃の加熱条件下で、糖類とアルカリ金属の水酸化物を反応させることが好ましい。酢酸は、糖類から直接生成するとともに、生成した他の有機酸が250℃以上の温度で分解することによっても生成する。また、酢酸は、250〜450℃の範囲で非常に安定している。よって、この温度範囲では酢酸の選択率が顕著に高い。
【0044】
有機酸としてグリコール酸を選択的に生成するためには、220〜300℃の加熱条件下で、多糖類とアルカリ金属の水酸化物を反応させることが好ましい。多糖類は、単糖類や二糖類、三糖類に比べて、グリコール酸の選択率が極めて高い。また、220〜300℃の温度範囲とすることで、グリコール酸の選択率が大幅に向上する。なお、グリコール酸は、水蒸気が存在すると水素に分解する傾向があるため、反応雰囲気には、水蒸気を加えない方が好ましい。
【0045】
有機酸として乳酸を選択的に生成するためには、100〜250℃の加熱条件下で、単糖類とアルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩を反応させることが好ましい。単糖類は、二糖類や三糖類、多糖類に比べて、乳酸の選択率が非常に高い。また、乳酸は、温度が250℃を超えると酢酸に分解してしまうことから、反応温度は250℃以下にする。
【0046】
有機酸としてジカルボン酸を選択的に生成するためには、140〜380℃の加熱条件下で、糖類とアルカリ金属の水酸化物を反応させることが好ましい。ジカルボン酸としては、主にシュウ酸とコハク酸が生成し、微量ながらマレイン酸やグルタル酸も含まれる。また場合により、酒石酸やリンゴ酸が生成する。糖類としては、セルロースやデンプンが好ましく、特にセルロースを用いることでコハク酸の選択率を向上させることができる。また、水蒸気を導入することでも、コハク酸の選択率を向上させることができる。ジカルボン酸のうちシュウ酸は、300℃付近で分解する傾向があることから、300〜350℃の加熱条件にすることで、コハク酸の選択率を向上させることができる。
【0047】
なお、このような所定の有機酸を選択的に製造する装置としては、例えば、上述した有機酸と水素を同時に製造する装置において、加熱手段を、所定の有機酸が選択的に生成される上記所定の温度に加熱する加熱手段とし、定量供給手段を、所定の糖類とアルカリ金属の水酸化物または炭酸塩とを反応室に供給する定量供給手段とした構成のものでよい。
【0048】
さらにまた、本発明に係る糖類を含まないバイオマス資源から有機酸を製造する方法の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態では、有機酸と同時に水素が生成しない場合も含まれている。
【0049】
本実施の形態では、糖類以外のバイオマス資源を用いて有機酸を生成する。このようなバイオマス資源として、リグニンを使用する。リグニンは、セルロースとヘミセルロースとともに木質バイオマスの主要な構成要素である。しかし、木質バイオマスのうち利用されるのは主にセルロースであり、リグニンは廃棄処理されている。本発明によれば、リグニンを用いて有機酸を生成することができるので、リグニンを有効利用することができる。
【0050】
リグニンから有機酸を生成するためには、140〜360℃の加熱条件下で、リグニンとアルカリ金属の水酸化物を反応させることが好ましい。有機酸としては、付加価値の高いグリセリン酸が高い選択率で生成する他、酢酸やコハク酸が生成する。より好ましい温度範囲は、200〜300℃である。
【0051】
なお、このような糖類以外のバイオマス資源を用いて有機酸を製造する装置としては、例えば、上述した糖類を用いて有機酸を製造する装置において、加熱手段を、上記の所定の温度に加熱する加熱手段とし、定量供給手段を、リグニンに含まれる炭素1モルに対してアルカリ金属の水酸化物が0.5〜10モルとなるようにリグニンとアルカリ金属の水酸化物を反応室に供給する定量供給手段とした構成のものでよい。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
セルロース(Aldrich社製)0.45g(2.78mmol)をアルミナボートにのせ、それに50wt%のNaOH水溶液(和光純薬工業社製)を所定量(NaOH:33.3mmol)滴下し、スパチュラにて両者を混合した。そして、図1に示す常圧固定床流通式反応装置を用いて、上記の試料から有機酸及び水素を生成する実験を行った。
【0053】
先ず、アルミナ反応管3中央部に上記のアルミナボート11に載せた試料10を入れ、Arパージ(50ml/min、101kPa)を30分間行った。その後、電気炉4により反応管3を加熱して、Ar(20ml/min、101kPa)雰囲気下、100℃で20分間乾燥を行った。そして、マイクロフィーダ1から気化器2を介して水蒸気を導入しながら、反応管3内の温度を100℃から250℃まで2℃/分で昇温し、250℃に到達した時点で昇温を中止して、その後室温まで冷却した。なお、水蒸気は、水蒸気供給速度を9.4ml/min、Ar流速を40ml/minとし、分圧をH2O=19.3kPa、Ar=81.7kPaで導入した。また、気化器2の温度は100℃とした。
【0054】
この間、アルミナ反応管3内で生成した気体は、氷により温度0℃に保持されたトラップ装置5を介して、サンプリング装置6に導入した。そして、気相生成物を分析するために、さらに気相の一部をガスクロマトグラフ7(GL Sciences社製、GC323、カラム:活性炭)に導入した。その結果、気相生成物として、水素を検出したが、メタン、COおよびCO2は検出されなかった。
【0055】
また、反応により生成した分解生成物を定性および定量分析するため、アルミナ反応管3内のアルミナボート11上に残った残留物中から分解生成物を分離し、この分解生成物について、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて分析を行った。残留物中からの分解生成物の分離手順を図2に示す。
【0056】
先ず、アルミナ反応管3からアルミナボート11を取り出し、図2(a)に示すように、アルミナボート11上に残った残留物中の可溶性成分をイオン交換水21(50ml)に溶解した。そして、図2(b)に示すように、外部標準物質としてフェノール水溶液22(10μmol)を添加した。このように調製した試料溶液23を5ml採取し、図2(c)に示すように、HCl水溶液24(5ml)を加えて、pH0.8程度に中和した。次に、この中和した試料溶液25を図2(d)に示すようにガラスフィルタ26でろ過した。そして、図2(e)に示すように、ろ過した試料溶液27を1.2ml採取し、これを15mlのイオン交換水28で希釈して、pH2程度とした。この希釈した溶液をHPLCで分析した。
【0057】
HPLCの設定条件を以下に示す。
カラム:Synergi 4μ Hydro−RP80A(Phenomenex社製、250×4.6mm)
検出波長:UV210nm
カラム温度:25℃
移動相:20mM KH2PO4(aq.)+H3PO4(aq.)(pH2.9)
流速:0.7mL/分
【0058】
HPLCによる分析結果を図3(b)に示す。なお、図3(a)には、13種類の各有機酸をHPLCで分析した結果を示した。図3(b)に示すように、14の生成物が検出され、そのうち4つの生成物はグリコール酸、ギ酸、乳酸、酢酸であることがわかった。残り10の生成物については、図3(a)に示した有機酸(シュウ酸、グリセルアルデヒド、酒石酸、グリセリン酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、プロピオン酸、グルタル酸)に該当せず、特定することはできなかった。
【0059】
(実施例2)
昇温温度を250℃に代えて150℃から600℃の範囲に変化させたことを除き、実施例1と同様の条件にて有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の生成量(μmol)を測定した。その結果を図4に示す。
【0060】
図4に示すように、ギ酸は200℃付近から生成し、240℃程度で最大生成量(0.83mmol)に達した後、反応温度の上昇とともに徐々に減少し、265℃で完全に消失した。グリコール酸は200℃付近から生成し、265℃程度で最大生成量(3.74mmol)に達した後、反応温度の上昇とともに徐々に減少し、390℃で完全に消失した。乳酸は200℃付近から生成し、240℃程度で最大生成量(0.27mmol)に達した後、反応温度の上昇とともに徐々に減少し、330℃で完全に消失した。酢酸は240℃付近から生成し、330℃程度で最大生成量(1.52mmol)に達した後、反応温度の上昇とともに緩やかに減少し、600℃で完全に消失した。
【0061】
なお、セルロースに代えて、生成物の1つであるグリコール酸を水蒸気流通下でNaOHと反応させて水素の生成を行い、水素の生成速度(mmol/min)を測定した。その結果を図5に示す。図5に示すように、グリコール酸は280℃付近より分解して水素を生成し、330℃で水素生成速度は最大に達した後、水素生成速度は徐々に減少し、ついに390℃で水素の生成はほぼ観測されなくなった。
【0062】
この結果から、グリコール酸の生成量が280℃で最大を示すのは(図4)、温度が280℃を超えるとグリコール酸の分解が始まるからであり(図5)、グリコール酸の生成量が390℃でゼロになるのは(図4)、温度が390℃を超えるとグリコール酸は完全に分解されて消失してしまうからであることが分かった(図5)。その他のギ酸、乳酸、酢酸の有機酸においても同様に実験を行い、有機酸の生成量の変化は、有機酸が分解して水素が生成する温度とよく対応していることが分かった。
【0063】
(実施例3)
反応管3内を所定の温度に昇温した後、2〜3時間にわたり一定に保持し、水素の生成がほぼ観測されなくなるまで反応を続けたことを除き、実施例2と同様の条件にて有機酸の生成を行い、有機酸の生成量を測定した。その結果を図6に示す。
【0064】
図6に示すように、反応温度を一定に保持した場合は、図4のように保持しなかった場合と比較して、低温から有機酸が生成していたことがわかった。例えば、グリコール酸生成量は、一定温度に保持した場合、200℃で3mmol程度生成していたが、これは所定温度到達後すぐに冷却した場合の250℃での結果に相当する量であった。すなわち、50℃程度低温で相当量のグリコール酸が生成した。また、他の有機酸も同様により低温から生成していた。ギ酸および乳酸は150℃程度から、酢酸は200℃から生成した。
【0065】
また、各有機酸の生成量が最大に達する温度も、一定温度に保持した場合、低温にシフトしていた。ギ酸および乳酸は200℃、グリコール酸は250℃、酢酸は280℃でそれぞれ最大量に達した。このように反応温度を一定に保持することで、低い温度でも有機酸の生成量を増加させることができることが分かった。
【0066】
(実施例4)
D−グルコース(和光純薬工業社製)及びスクロース(和光純薬工業社製)を試料中の炭素分が0.20g(16.7mmol)となる重量を使用したこと、昇温速度を1.9℃/分としたこと、100℃から600℃までの間で測定を行ったことを除き、実施例2と同様の条件にて有機酸及び水素の生成を行い、水素の生成速度(μmol/min)を測定した。その結果を図7に示す。なお、参考のため、セルロースの結果も併記した。
【0067】
図7に示すように、グルコースとスクロースも、セルロースと同様に、200℃〜350℃の範囲で優れた水素生成速度を示すことを確認した。すなわち、グルコースとスクロースも、セルロースと同様に、約350℃でほとんどの有機酸が水素に分解して消失したことがわかる。また、いずれの糖類でも、400℃前後でメタンが比較的に多く生成したが、COおよびCO2の生成は見られなかった。
【0068】
(実施例5)
セルロースに代えて、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、セロビオース、スクロース、マルトース、マルトトリオース、デンブン及びリグニンを各0.45g使用したことを除き、実施例1と同様の条件にて有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の生成量(μmol)を測定した。その結果を図8に示す。なお、セルロースの結果も併せて記載した。
【0069】
図8に示すように、セルロースと同様に、単糖類、二糖類、三糖類や、デンプン等の他の多糖類からもギ酸、酢酸、グリコール酸、乳酸の各有機酸が多量に生成したことが確認できた。一方、リグニンからも有機酸が生成したが、その量は糖類に比べて極端に少なかった。
【0070】
また、各糖類において、生成した4種類の有機酸の全量を100とした場合の各有機酸の量の割合(%)を図9に示す。図9に示すように、乳酸の選択率は、単糖類が約60%以上で最も高く、これに次いで二糖類、三糖類が約40〜50%と高く、多糖類は約5%と極端に低かった。一方、グリコール酸の選択率は、多糖類が約70%以上で顕著に高く、三糖類が約30%、二糖類が約20%、単糖類が5〜10%であった。
【0071】
(実施例6)
セルロースに代えてD−グルコースを0.45g(2.50mmol)使用したこと、及び昇温温度を250℃に代えて室温(25℃)から600℃の範囲に変化させたことを除き、実施例1と同様の条件にて有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の生成量を測定した。その結果を図10(a)に示す。
【0072】
図10(a)に示すように、250℃以下では乳酸が2.5mmolと多量に生成し、250℃〜450℃で酢酸が3.9mmolと多量に生成した。ギ酸とグリコール酸も生成が確認されたが、その量は乳酸や酢酸に比べ微量であった。なお、乳酸は室温でも約1200μmol生成した。ギ酸とグリコール酸も300〜500μmolと乳酸に比べて微量であったが室温でも生成した。
【0073】
また、乳酸と酢酸の生成が250℃付近ではっきり分かれたことから、D−グルコースに代えて乳酸(2.5mmol)を用いて同様に有機酸の生成実験を行った。その結果を図10(b)に示す。図10(b)に示すように、温度が250℃を超えると、乳酸が消費されて酢酸が生成した。よって、D−グルコースから生成した酢酸3.9mmolのうち、1.3mmolは乳酸を経て生成したと考えられる。
【0074】
(実施例7)
セルロースに代えてセロビオースを0.45g(1.31mmol)使用したこと、及び昇温温度を250℃に代えて室温(25℃)から600℃の範囲に変化させたことを除き、実施例1と同様の条件にて水素及び有機酸の生成を行い、水素、メタン及び有機酸の生成量を測定した。その結果を図11に示す。
【0075】
図11に示すように、セロビオースでは200℃から水素が生成し、約300℃で最大生成量に達した後、300〜500℃にかけて微量ながら水素が生成した。また400℃前後でメタンが比較的に多く生成したが、COおよびCO2の生成は見られなかった。有機酸の生成に関しては、室温でギ酸が多量に生成し、乳酸とグリコール酸も微量であるが生成した。100℃〜200℃の温度範囲では、ギ酸の生成量が減少し、ギ酸と乳酸が同量程度生成した。300℃でギ酸と乳酸の生成はなくなり、酢酸が多量に生成した。すなわち、25〜100℃の低温の温度範囲では、ギ酸の選択率が非常に高かった。
【0076】
(実施例8)
250℃まで加熱した後、冷却するまでの時間を0〜120分に変化させたことを除き、実施例1と同様に有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の生成量を測定した。その結果を図12(a)に示す。また、セルロースに代えて、これと同じ条件でグルコースについても実験を行った。その結果を図12(b)に示す。
【0077】
図12(a)に示すように、グリコール酸は、温度が250℃になった後に急冷するよりも、反応時間を設けた方が、生成量が多いことがわかった。また、グリコール酸は、反応時間の長さによらず生成量がほぼ一定であり、250℃で安定であることがわかった。
【0078】
図12(b)に示すように、反応時間が長くなるに従って、乳酸の生成量が減少し、逆に酢酸の生成量が増加した。これから、乳酸がNaOHと反応して酢酸とNa2CO3に転化することがわかった。よって、反応時間を長くすることで250℃でも酢酸を選択的に生成できることがわかった。ギ酸は、セルロースでもグルコースでも、急冷した場合に比べ、反応時間を設けると生成量が激減していた。これから、ギ酸は250℃の温度では水素とNa2CO3に転化しやすいことがわかった。
【0079】
(実施例9)
NaOHに代えて、アルカリ無添加、LiOH、KOH、RbOH(以上、33.3mmol)、及びCa(OH)2(16.7mmol)を用いたことを除き、実施例1と同様の条件で有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の生成量を測定した。その結果を図13に示す。なお、NaOHの結果も併せて記載する。
【0080】
図13に示すように、KOHは、NaOHよりも有機酸の収率が高かった。また、RbOHとLiOHも、これらに比べて低いものの、多量の有機酸が生成することが確認された。一方、Ca(OH)2では有機酸の生成が確認されたものの、その収率は極端に低かった。また、アルカリ無添加の場合は有機酸は検出されなかった。
【0081】
(実施例10)
NaOHに代えてNa2CO3(16.7mmol)を用いたこと、及び昇温温度を250℃に代えて100℃から600℃の範囲に変化させたことを除き、実施例1と同様の条件で有機酸及び水素の生成を行い、水素、メタン、CO、CO2、有機酸の生成量を測定した。その結果を図14(b)、図15(b)に示す。なお、比較のためNaOHの結果を図14(a)、図15(a)に示す。
【0082】
図14(b)に示すように、Na2CO3を用いた場合、250〜450℃の範囲では水素はほとんど検出されず、その代わりにCO及びCO2が検出された。一方で、図15(b)に示すように、Na2CO3を用いた場合は、NaOHに比べ、グリコール酸及び酢酸の生成が激減した。このようにグリコール酸及び酢酸の生成が激減したので、ギ酸生成の選択率が著しく高くなった。
【0083】
(実施例11)
NaOHの添加量を33.3mmolに代えて、0、2.9mmol、8.6mmol、16.7mmol、51.1mmol及び66.6mmolとしてNaOHとセルロースのモル比を変化させたことを除き、実施例1と同様の条件で有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の生成量を測定した。その結果を図16に示す。なお、比較のため33.3mmolの結果も併せて記載する。
【0084】
図16に示すように、NaOHとセルロースのモル比を変化させることで、特にギ酸とグリコール酸の生成量が大きく変わることがわかった。セルロースに対するNaOHのモル比が12以下であると、ギ酸の生成量と選択率が増大し、グリコール酸が低下した。一方、セルロースに対するNaOHのモル比が12を超えると、グリコール酸の生成量と選択率が増大した。さらに、セルロースに対するNaOHのモル比が24以上で、ギ酸は消失した。なお、セルロースに対するNaOHのモル比が1の場合、水素の生成は確認できず、CO及びCO2の生成が確認された。水素の生成は、セルロースに対するNaOHのモル比が3以上の場合に確認された。
【0085】
(実施例12)
セルロースとNaOHとを反応させる際に、水蒸気を導入しなかったことを除き、実施例1と同様の条件で有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の生成量を測定した。その結果を図17に示す。なお、比較のために水蒸気を導入した場合の結果も併せて記載する。
【0086】
図17に示すように、水蒸気を導入しない方が各有機酸の生成量が多かった。そこで、ギ酸(9.71mmol)、乳酸(5.36mmol)、グリコール酸(5.93mmol)、酢酸(2.80mmol)の各有機酸について、水蒸気を導入した場合と導入しなかった場合の両方の条件でNaOHと反応させて水素の生成を行い、水素及びメタンの生成速度(μmol/min)を測定した。昇温温度は150℃〜550℃の範囲で行った。その結果を図18に示す。図18中、黒塗りの印が水蒸気を導入した場合であり、白抜きの印が水蒸気を導入しなかった場合である。なお、セルロースの結果についても併せて記載する。
【0087】
図18(b)に示すように、600K付近では、水蒸気を導入した方が水素の生成速度が高かった。このことから、セルロースから生成した有機酸がさらに水素に分解されるのを、水蒸気の導入が促進していると考えられる。また、図18(a)に示すように、600K付近では、水蒸気を導入した方がメタンの生成速度が低かった。このことから、セルロースから生成した有機酸がさらにメタンに分解されるのを、水蒸気の導入が抑制していると考えられる。
【0088】
(実施例13)
試薬のセルロースに代えて、パルプ不織布工場における製造過程で発生したパルプ端材(ハビックス社)を0.45g使用したこと、NaOH水溶液を2.66g(パルプ端材の炭素(C)1モルに対して、12モル)使用したこと、反応生成物の溶解液として3mmol/Lの過塩素酸水溶液を50ml用いたこと、反応生成物溶解液を中和せずに液体クロマトグラフ(HPLC)にて測定したこと、HPLCへの試料注入量を10μLにしたこと、HPLC用カラムとして日立化成工業社製のGL−C−610H−Sを使用したことを除き、実施例1と同様の条件で有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の同定および生成量を測定した。その結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
表1に示すように、実施例13では、15種類の生成物が検出され、そのうちの11の生成物を特定することができた。特定できた生成物は、グリコール酸、乳酸、ギ酸、酢酸の上述してきた4つの生成物に加え、シュウ酸、マレイン酸、グルコン酸、コハク酸、グルタル酸、プロピオン酸であることがわかった。残りの4つの生成物に関しては、酒石酸、D−グルクロン酸、リンゴ酸、グリセリン酸、レブリン酸の各有機酸に該当せず、特定することはできなかった。
【0091】
(実施例14)
250℃に昇温後、30分間、1時間又は2時間の反応時間経過後に冷却したことを除き、実施例13と同様の条件で有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の同定および生成量を測定した。また、各反応時間において、水蒸気を全く導入せずに反応を行ったことを除き、同様の実験を行った。これらの結果を表1に示す。表1に示すように、反応時間を設けることで、シュウ酸、グルコン酸、コハク酸、グリコール酸、酢酸の各有機酸の生成量が飛躍的に増加した。
【0092】
(実施例15)
温度を250℃から300℃に変えたこと、反応時間を0又は1時間にしたことを除き、実施例14と同様の条件で有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の同定および生成量を測定した。その結果を表1に示す。
【0093】
表1に示すように、300℃において反応時間を設けた場合、シュウ酸、グリコール酸の生成量が大幅に減少し、酢酸の生成量が増加した。また、グルコン酸は、水蒸気を導入した場合、1時間の反応時間経過後に消失したが、水蒸気を導入しなかった場合、生成量が増加した。逆にコハク酸は、水蒸気を導入した場合、1時間の反応時間を設けることで生成量が増加したが、水蒸気を導入しなかった場合、生成量が減少した。
【0094】
(実施例16)
温度を250℃から350℃に変えたこと、反応時間を0又は1時間にしたことを除き、実施例14と同様の条件で有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の同定および生成量を測定した。その結果を表1に示す。
【0095】
表1に示すように、350℃では、水蒸気を導入しなかった場合、グリコール酸は生成しなかった。また、水蒸気を導入した場合、グルコン酸は生成しなかった。そして、反応時間を設けた場合、これらグルコン酸とグリコール酸の生成量が減少した。コハク酸と酢酸は、水蒸気を導入しなかった場合、生成量が大幅に減少した。
【0096】
(実施例17)
温度と反応時間を、200℃で1時間、370℃で1時間、390℃で1時間に変えたことを除き、実施例14と同様の条件で有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の生成量を測定した。また、温度と反応時間を、150℃で1時間、350℃で30分、350℃で2時間、370℃で1時間、390℃で30分、390℃で1時間に変えたこと、及び全て水蒸気を導入しなかったことを除き、実施例14と同様の条件で有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の生成量を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
表2に示すように、350℃で、水蒸気を導入しなかった場合を比べると、反応時間の経過に従って有機酸の生成量の合計は減少し、1〜2時間後では微量の有機酸しか得ることができなかった。また、反応時間が1時間で、水蒸気を導入しなかった場合を比べると、温度が上昇するに従って有機酸の生成量の合計は減少し、390℃ではほとんど有機酸を得ることはできなかった。
【0099】
(実施例18)
パルプ端材に代えて試薬セルロース(Aldrich社製)を0.45g用いたこと、温度を250℃の他に350℃まで昇温したことを除き、実施例13と同様の条件で有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の同定および生成量を測定した。その結果を表3に示す。
【0100】
【表3】

【0101】
表3に示すように、250℃では、試料セルロースを用いた場合も、パルプ端材を用いた場合(実施例13、14の同じ条件のものを参照)とほぼ同様の結果であった。しかしながら、350℃では、試薬セルロースを用いた場合は、パルプ端材を用いた場合(実施例16の同じ条件のものを参照)と比べ、グルコン酸の生成がない一方、コハク酸および酢酸の生成量が高く、大きく異なった。
【0102】
(実施例19)
NaOH水溶液の添加量を、パルプ端材の炭素(C)1モルに対して、12モルから18モルに増加したこと、250℃又は350℃で1時間保持したこと、水蒸気を導入しなかったことを除き、実施例13と同様の条件で有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の同定および生成量を測定した。その結果を表3に示す。
【0103】
表3に示すように、250℃では、NaOH/パルプ端材の炭素のモル比を18に増加させた場合、同モル比が12の場合(実施例14の同じ条件のものを参照)と比べ、グリコール酸と酢酸の生成量が増加した他、D−グルクロン酸が生成した。その一方、グルコン酸の生成がなくなった。350℃では、モル比を18に増加させた場合も、12の場合(実施例16の同じ条件のものを参照)も有機酸の生成量は少なく、同じような結果となった。
【0104】
(実施例20)
NaOHに代えてKOHを使用して250℃又は350℃で1時間保持したこと、又はBaOHを使用して250℃で1時間保持したこと、及び水蒸気を導入しなかったことを除き、実施例13と同様の条件で有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の同定および生成量を測定した。その結果を表3に示す。なお、BaOHは水への溶解度が極めて低かったため、パルプ端材の炭素1モルに対して6モルを添加した。
【0105】
表3に示すように、250℃では、KOHを使用した場合、NaOHを使用した場合(実施例14の同じ条件のものを参照)と比べ、ギ酸とシュウ酸の生成量が増加した一方、乳酸とグルコン酸の生成量が減少した。BaOHを使用した場合、有機酸はほとんど生成しなかった。350℃では、KOHを使用した場合、NaOHを使用した場合(実施例16の同じ条件のものを参照)と比べ、酢酸、マレイン酸、プロピオン酸の生成量が増加し、有機酸の生成量の合計も大幅に増加した。
【0106】
(実施例21)
パルプ端材に代えて、リグニン(ナカライテクス社製)、デンプン(同社製)、杉、ヒノキを0.45g使用したこと、250℃で1時間保持したこと、及び水蒸気を導入しなかったことを除き、実施例13と同様の条件で有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の同定および生成量を測定した。その結果を表3に示す。
【0107】
表3に示すように、リグニンを用いた場合は、グリセリン酸が高い選択率で生成し、その他、酢酸やコハク酸が生成した。デンプンを用いた場合は、セルロースと同様にグリコール酸が高い選択率で生成した。杉を用いた場合は、セルロースと同様にグリコール酸が高い選択率で生成したが、セルロースと異なる点ではグルコン酸が生成されなかった。ヒノキを用いた場合も、セルロースと同様にグリコール酸が高い選択率で生成したが、セルロースと異なる点では乳酸とグルコン酸が生成されなかった。
【0108】
(実施例22)
リグニンを使用したこと、150〜350℃の温度で1時間保持したこと、及び水蒸気を導入しなかったことを除き、実施例13と同様の条件で有機酸及び水素の生成を行い、有機酸の生成量を測定した。その結果を表4に示す。また、200℃の温度では、水蒸気を導入した場合についても同様の試験を実施した。なお、200℃と300℃の条件では反応生成物溶解液を中和して液体クロマトグラフで測定した。中和を行った場合シュウ酸の生成量は測定不能であった。
【0109】
【表4】

【0110】
表4に示すように、水蒸気の導入の有無にかかわらず、150〜350℃のいずれの温度でもリグニンからグリセリン酸が主に生成した。特に、200〜300℃の温度範囲でグリセリン酸が高い選択率で生成した。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】実施例で使用した固定床流通反応装置の概略を示す模式図である。
【図2】実施例における残留物中の生成物の分析手順を示す模式図である。
【図3】HPLCによる有機酸の分析結果を示すグラフである。
【図4】反応温度到達後に急冷した場合の各有機酸の生成量を示すグラフである。
【図5】グリコール酸からの水素生成速度を示すグラフである。
【図6】反応温度到達後2〜3時間保持した場合の各有機酸の生成量を示すグラフである。
【図7】各糖類からの水素生成速度を示すグラフである。
【図8】各糖類からの有機酸生成量を示すグラフである。
【図9】各糖類からの有機酸の選択率を示すグラフである。
【図10】(a)はグルコースからの有機酸生成量を示すグラフであり、(b)は乳酸からの有機酸生成量を示すグラフである。
【図11】(a)はセロビオースからの水素及びメタンの生成速度を示すグラフであり、(b)はセロビオースからの有機酸生成量を示すグラフである。
【図12】(a)はセルロースからの有機酸生成量を示すグラフであり、(b)はグルコースからの有機酸生成量を示すグラフである。
【図13】各種アルカリ金属の水酸化物を用いた場合の有機酸生成量を示すグラフである。
【図14】水素、メタン、CO及びCO2の生成速度を示すグラフであり、(a)はNaOHを用いた場合、(b)はNa2CO3を用いた場合のグラフである。
【図15】有機酸生成量を示すグラフであり、(a)はNaOHを用いた場合、(b)はNa2CO3を用いた場合のグラフである。
【図16】NaOHとセルロースのモル比を変化させた場合の有機酸生成量を示すグラフである。
【図17】水蒸気を導入しなかった場合の有機酸生成量を示すグラフである。
【図18】水蒸気を導入した場合としなかった場合の各有機酸からの気体の生成速度を示すグラフであり、(a)はメタン、(b)は水素を示すグラフである。
【符号の説明】
【0112】
1 マイクロフィーダ
2 気化器
3 アルミナ反応管
4 電気炉
5 トラップ装置
6 サンプリング装置
7 ガスクロマトグラフ
10 試料(糖類+アルカリ)
11 アルミナボート
21、27 イオン交換水
22 フェノール水溶液
23 塩酸水溶液
26 ガラスフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
150〜450℃の加熱条件下及び無酸素雰囲気下で、糖類とアルカリ金属の水酸化物を反応させて水素と有機酸又はそのアルカリ塩とを同時に生成する工程を含み、前記糖類と前記アルカリ金属の水酸化物のモル比を、糖類に含まれる炭素1モルに対してアルカリ金属の水酸化物を0.5〜10モルとする有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法。
【請求項2】
前記糖類として、セルロースを主成分とするバイオマス資源を使用する請求項1に記載の有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法。
【請求項3】
0〜100℃の加熱条件下で、セロビオースとアルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩を反応させてギ酸又はそのアルカリ塩を選択的に生成する有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法。
【請求項4】
250〜450℃の加熱条件下で、糖類とアルカリ金属の水酸化物を反応させて酢酸又はそのアルカリ塩を選択的に生成する有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法。
【請求項5】
220〜300℃の加熱条件下で、多糖類とアルカリ金属の水酸化物を反応させてグリコール酸又はそのアルカリ塩を選択的に生成する有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法。
【請求項6】
100〜250℃の加熱条件下で、単糖類とアルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩を反応させて乳酸又はそのアルカリ塩を選択的に生成する有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法。
【請求項7】
140〜380℃の加熱条件下で、糖類とアルカリ金属の水酸化物を反応させてジカルボン酸又はそのアルカリ塩を生成する有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法。
【請求項8】
140〜360℃の加熱条件下で、リグニンとアルカリ金属の水酸化物を反応させて有機酸又はそのアルカリ塩を生成する有機酸又はそのアルカリ塩の製造方法。
【請求項9】
糖類とアルカリ金属の水酸化物との反応により水素と有機酸又はそのアルカリ塩とを同時に生成する無酸素雰囲気下の反応室と、前記反応室の温度を150〜450℃にする加熱手段と、糖類に含まれる炭素1モルに対してアルカリ金属の水酸化物が0.5〜10モルとなるように、前記糖類と前記アルカリ金属の水酸化物を前記反応室に連続的に供給する定量供給手段と、前記反応室内で生成した水素を排出する配管と、前記反応室から有機酸又はそのアルカリ塩を含有する固体状の残留物を連続的に取り出す排出手段とを含んでなる有機酸又はそのアルカリ塩の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−91707(P2007−91707A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117365(P2006−117365)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(594050762)ハビックス株式会社 (6)
【Fターム(参考)】