説明

有機金属錯体、発光素子、表示装置、電子機器、及び照明装置

【課題】りん光を発光することが可能な有機金属錯体を提供する。
【解決手段】例えば(G1)で示される有機金属錯体。(式中、R乃至R10は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを、Mは第9族元素または第10族元素を表す。Mが第9族元素のときはn=3であり、Mが第10族元素のときはn=2である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する発明は、電流励起によって発光することが可能な有機金属錯体に関する。特に、三重項励起状態からの発光が得られる有機金属錯体に関する。また、それを用いた発光素子、表示装置、電子機器、発光装置、及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の電極(陽極及び陰極)間に発光材料を含む層(発光層)を有する発光素子は、発光材料として、様々な有機化合物を用いることが可能であることが報告されている。
【0003】
当該発光素子は、一対の電極間に発光層を挟んで電圧を印加することにより、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が発光層で再結合して分子励起子を形成し、その分子励起子が基底状態に戻る際にエネルギーを放出して発光するといわれている。励起状態には一重項励起と三重項励起が知られ、発光はどちらの励起状態を経ても可能である。
【0004】
このような電流励起の発光素子においては、一重項励起状態に比べて三重項励起状態の方がより多くの励起子が生成されるため、三重項励起状態から発光できる材料(りん光材料)を用いることで、発光素子の発光効率を高めることができる。このため、発光材料としてりん光材料を用いる試みが多くなされている。
【0005】
緑色〜青色を示す代表的なりん光材料として、イリジウム(Ir)を中心金属とし、複素環骨格を有する配位子が配位する金属錯体がある(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1では、トリアゾール誘導体を配位子とするイリジウム錯体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−137872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1において報告されているように、緑色や青色を示すりん光材料の開発も進んできてはいるものの、未だ発光効率良好であり、且つ青緑から青色のりん光を呈する物質は少なく、さらなる開発が望まれている。
【0008】
本発明の一態様は、上記問題を鑑みてなされたものであり、発光効率が良好であり、且つ青緑から青色のりん光を発光することが可能な新規物質を提供することを課題とする。または、りん光を発光することが可能な新規物質を用いた発光素子、発光装置、表示装置、照明装置、もしくは電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、4−ビフェニル−3−フェニル4H−1,2,4−トリアゾール誘導体を配位子とするオルトメタル錯体が緑色〜青色の波長域のりん光を示すことを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の一態様は、下記一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0011】
【化1】

【0012】
但し、式中、R乃至R10は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。
【0013】
また、本発明の他の一態様は、下記一般式(G2)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【化2】

【0014】
但し、式中、R11乃至R20は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。
【0015】
また、本発明の他の一態様は、下記一般式(G3)で表される有機金属錯体である。
【0016】
【化3】

【0017】
但し、式中、R乃至R10は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。また、Mが第9族元素のときはn=3であり、Mが第10族元素のときはn=2である。
【0018】
また、本発明の他の一態様は、下記一般式(G4)で表される有機金属錯体である。
【0019】
【化4】

【0020】
但し、式中、R11乃至R20は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。また、Mが第9族元素のときはn=3であり、Mが第10族元素のときはn=2である。
【0021】
また、本発明の他の一態様は、下記一般式(G5)で表される有機金属錯体である。
【0022】
【化5】

【0023】
但し、式中、R乃至R10は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。
【0024】
また、本発明の他の一態様は、下記一般式(G6)で表される有機金属錯体である。
【0025】
【化6】

【0026】
但し、式中、R11乃至R20は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。
【0027】
ここで、R又はR11における炭素数1乃至4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0028】
なお、R又はR11におけるアルキル基としては炭素数2以上4以下のアルキル基がより好ましく、特に炭素数3以上4以下のアルキル基が好ましい。R又はR11を炭素数2以上4以下のアルキル基とした有機金属錯体は分子間相互作用が抑制され、R又はR11が水素である場合と比較して分子量が大きくなるにもかかわらず、昇華温度を低下させることができる。その結果、当該有機金属錯体の蒸着性を向上できる。
【0029】
また、R又はR11におけるアルキル基は分岐のアルキル基がより好ましい。分岐のアルキル基は、当該有機金属錯体の極性の高さを抑制し、カラムクロマトグラフィーによる精製における回収率を向上することができる。また、分岐のアルキル基を導入することにより、作製された当該有機金属錯体を含む発光素子の駆動電圧を低減できる。
【0030】
従って、R又はR11におけるアルキル基はイソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基がさらに好ましい。
【0031】
また、R乃至R10又はR12乃至R20の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基が挙げられる。なお、RとR、RとR、R13とR14及びR18とR19は互いに結合して環を形成していても良く、これらに結合する2価の基としては、メチレン基、エチレン基などが挙げられる。これらにメチレン基が結合した場合、トリアゾールの4位に結合するビフェニル基はフルオレニル基と見ることもできる。
【0032】
また、本発明の他の一態様は、下記構造式(1)で表される有機金属錯体である。
【0033】
【化7】

【0034】
また、本発明の他の一態様は、下記構造式(2)で表される有機金属錯体である。
【0035】
【化8】

【0036】
また、本発明の他の一態様は、下記構造式(3)で表される有機金属錯体である。
【0037】
【化9】

【0038】
また、本発明の一態様は、前記有機金属錯体を含む層を一対の電極間に有する発光素子である。また、前記有機金属錯体を含む層は発光層であってもよい。
【0039】
また、本発明の一態様は、前記有機金属錯体を含む第1の発光ユニットと、前記有機金属錯体よりも長波長の発光を呈する発光材料を含む第2の発光ユニットとを一対の電極間に有する発光素子である。
【0040】
また、本発明の一態様は、前記有機金属錯体を含む第1の発光ユニットと、前記有機金属錯体よりも長波長の発光を呈する第1の発光材料を含む第2の発光ユニットと、前記有機金属錯体よりも長波長、かつ前記第1の発光材料よりも短波長の発光を呈する第2の発光材料を含む第3の発光ユニットとを一対の電極間に有する発光素子である。
【0041】
また、本発明の一態様は、前記発光素子を画素部に有する表示装置である。
【0042】
また、本発明の一態様は、前記表示装置を表示部に用いた電子機器である。
【0043】
また、本発明の一態様は、前記発光素子を光源として用いた照明装置である。
【0044】
また、本明細書において、「発光装置」とは、発光素子を有するデバイス全般を指し、具体的には、テレビや携帯電話機等の表示装置に用いるバックライト、信号機、街灯や街頭イルミネーション等の照明用途のライト、照明装置、ビニールハウスなどで使用できる育苗用のライトなどを範疇に含む。
【0045】
また、本明細書において、「AとBとが接続されている」と記載する場合は、AとBとが電気的に接続されている場合(つまり、AとBとの間に別の素子や別の回路を挟んで接続されている場合)と、AとBとが機能的に接続されている場合(つまり、AとBとの間に別の回路を挟んで機能的に接続されている場合)と、AとBとが直接接続されている場合(つまり、AとBとの間に別の素子や別の回路を挟まずに接続されている場合)とを含むものとする。
【発明の効果】
【0046】
本発明の一態様により、りん光を発光することが可能な新規物質を提供することができる。また本発明の一態様により、発光効率の高い新規物質を提供することができる。また本発明の一態様により、当該新規物質を用いた発光素子、発光装置、表示装置、照明装置、及び電子機器を提供することができる。また本発明の一態様により、発光効率の高い発光素子、発光装置、表示装置、照明装置、もしくは電子機器を提供することができる。また本発明の一態様により、信頼性に優れた発光素子、発光装置、表示装置、照明装置、もしくは電子機器を提供することができる。また本発明の一態様により、消費電力が低い発光素子、発光装置、表示装置、照明装置、もしくは電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一態様に係る発光素子の概念図。
【図2】本発明の一態様に係る発光装置の一例を示す図。
【図3】本発明の一態様に係る発光装置の一例を示す図。
【図4】本発明の一態様に係る発光装置の一例を示す図。
【図5】本発明の一態様に係る電子機器及び照明装置の一例を示す図。
【図6】本発明の一態様に係る照明装置の一例を示す図。
【図7】本発明の一態様に係る車載表示装置の一例を示す図。
【図8】本発明の一態様に係る照明装置の一例を示す図。
【図9】Ir(iPrptz−3b)のNMRチャート。
【図10】Ir(iPrptz−3b)の吸収、発光スペクトル。
【図11】Ir(iPrptz−4b)のNMRチャート。
【図12】Ir(iPrptz−4b)の吸収、発光スペクトル。
【図13】Ir(iPrptz−fl)のNMRチャート。
【図14】Ir(iPrptz−fl)の吸収、発光スペクトル。
【図15】実施例4で作製した発光素子の概念図。
【図16】発光素子1の電流密度−輝度特性。
【図17】発光素子1の電圧−輝度特性。
【図18】発光素子1の輝度−電流効率特性。
【図19】発光素子1の発光スペクトル。
【図20】発光素子2の電流密度−輝度特性。
【図21】発光素子2の電圧−輝度特性。
【図22】発光素子2の輝度−電流効率特性。
【図23】発光素子2の発光スペクトル。
【図24】発光素子1及び発光素子2の発光スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の一態様に係る実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更しうることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態において、同じ物を指し示す符号は異なる図面において共通とする。
【0049】
また、以下に説明する実施の形態及び実施例それぞれにおいて、特に断りがない限り、本明細書に記載されている他の実施形態及び実施例と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0050】
(実施の形態1)
本発明の一態様は、4−ビフェニル−3−フェニル4H−1,2,4−トリアゾール誘導体を配位子とするオルトメタル錯体である。すなわち、本実施の形態で説明する本発明の一態様は、一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0051】
【化10】

【0052】
一般式(G1)において、R乃至R10は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。
【0053】
また、本実施の形態で説明する本発明の一態様は一般式(G2)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0054】
【化11】

【0055】
一般式(G2)において、R11乃至R20は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。
【0056】
上記、一般式(G1)、又は一般式(G2)で表される構造を含む有機金属錯体は以下のようにも表すことができる。
【0057】
すなわち、本発明の一態様は下記一般式(G3)で表される有機金属錯体である。
【0058】
【化12】

【0059】
一般式(G3)において、R乃至R10は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。また、Mが第9族元素のときはn=3であり、Mが第10族元素のときはn=2である。
【0060】
また、本発明の一態様は下記一般式(G4)で表される有機金属錯体である。
【0061】
【化13】

【0062】
一般式(G4)において、R11乃至R20は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。また、Mが第9族元素のときはn=3であり、Mが第10族元素のときはn=2である。
【0063】
上記一般式で表される有機金属錯体においては、Mがイリジウムである物質は発光効率が高く有用である。このことから、本実施の形態で説明する有機金属錯体において、より好ましい構成は下記一般式(G5)及び一般式(G6)で表される有機金属錯体である。
【0064】
【化14】

【0065】
一般式(G5)において、R乃至R10は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。
【0066】
【化15】

【0067】
一般式(G6)において、R11乃至R20は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。
【0068】
ここで、R又はR11における炭素数1乃至4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0069】
なお、R又はR11におけるアルキル基としては炭素数2以上4以下のアルキル基がより好ましく、特に炭素数3以上4以下のアルキル基が好ましい。R又はR11を炭素数2以上4以下のアルキル基とした有機金属錯体は分子間相互作用が抑制され、R又はR11が水素である場合と比較して分子量が大きくなるにもかかわらず、昇華温度を低下させることができる。その結果、当該有機金属錯体の蒸着性を向上できる。
【0070】
また、R又はR11におけるアルキル基は分岐のアルキル基がより好ましい。分岐のアルキル基は、当該有機金属錯体の極性が高くなることを抑制し、当該有機金属錯体のカラムクロマトグラフィーによる精製における回収率を向上させることができる。また、分岐のアルキル基を導入することにより、作製された当該有機金属錯体を含む発光素子の駆動電圧を低減することができる。
【0071】
従って、R又はR11におけるアルキル基はイソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基がさらに好ましい。
【0072】
また、R乃至R10又はR12乃至R20の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基が挙げられる。なお、RとR、RとR、R13とR14及びR18とR19は互いに結合して環を形成していても良く、これらに結合する2価の基としては、メチレン基、エチレン基などが挙げられる。これらにメチレン基が結合した場合、トリアゾールの4位に結合するビフェニル基はフルオレニル基と見ることもできる。
【0073】
また、一般式(G5)と(G6)において、トリアゾール環の4位の窒素にビフェニル基を導入することで、作製された当該有機金属錯体を含む発光素子の発光色の青色純度が良くなることを見出した。特に一般式(G5)で表される有機金属錯体は、発光スペクトルの半値幅が顕著に小さくなるため、青色の色純度が向上する効果が大きく、トリアゾール環の4位の窒素にはm−ビフェニル基の導入がより好ましい。なお、これらビフェニル基は置換基を有していても良い。
【0074】
一般式(G1)乃至一般式(G6)で表される構造を含む有機金属錯体の具体例としては、構造式(100)〜(121)で表される有機金属錯体が挙げられる。ただし、本発明はこれらの構造式で表される有機金属錯体のみに限定されるものではない。
【0075】
【化16】

【0076】
【化17】

【0077】
【化18】

【0078】
【化19】

【0079】
以上に示す本発明の一態様である有機金属錯体は、りん光を発光することが可能な新規物質である。
【0080】
次に、一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体の合成方法の一例について説明する。
【0081】
<ステップ1;4−ビフェニル−3−フェニル4H−1,2,4−トリアゾール誘導体の合成法>
まず、下記一般式(G0)で表される4−ビフェニル−3−フェニル4H−1,2,4−トリアゾール誘導体の合成法の一例について説明する。なお、一般式(G0)中、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。また、Arは、置換基を有していてもよいp−ビフェニル基、m−ビフェニル基のいずれかを表す。Arが置換基を有する場合は、炭素数1乃至4のアルキル基を適用できる。また、これら置換基は隣り合う基同士が結合し、環を形成していても良い。
【0082】
【化20】

【0083】
下記スキーム(a)に示すように、フェニル基及びビフェニル基を含むチオエーテル化合物、またはフェニル基及びビフェニル基を含むN−置換チオアミド化合物(A1)と、アルキルヒドラジド化合物(A2)とを反応させることにより、4−ビフェニル−3−フェニル4H−1,2,4−トリアゾール誘導体を得ることができる。なお、スキーム(a)において、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基、Arは、置換基を有していてもよいp−ビフェニル基、m−ビフェニル基のいずれかを表す。Arが置換基を有する場合は、炭素数1乃至4のアルキル基を適用できる。また、これら置換基は隣り合う基同士が結合し、環を形成していても良い。
【0084】
【化21】

【0085】
ただし、4−ビフェニル−3−フェニル4H−1,2,4−トリアゾール誘導体の合成方法は、上記スキーム(a)のみに限定されるものではない。例えば、他の合成法の一例として、R及びビフェニル基を含むチオエーテル化合物、またはR及びビフェニル基を含むN−置換チオアミド化合物を、フェニルヒドラジド化合物と反応させる方法もある。また、下記スキーム(a’)に示すように、ジヒドラジド化合物(A1’)と第1級アミン化合物(A2’)とを反応させる方法もある。なお、スキーム(a’)において、Rは、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。また、Arは、置換基を有していてもよいp−ビフェニル基、m−ビフェニル基のいずれかを表す。Arが置換基を有する場合は、炭素数1乃至4のアルキル基を適用できる。また、これら置換基は隣り合う基同士が結合し、環を形成していても良い。
【0086】
【化22】

【0087】
以上のように、4−ビフェニル−3−フェニル4H−1,2,4−トリアゾール誘導体は、ごく簡便な合成スキームにより合成することができる。
【0088】
<ステップ2;4−ビフェニル−3−フェニル4H−1,2,4−トリアゾール誘導体を配位子とするオルトメタル錯体の合成法>
下記合成スキーム(b)に示すように、ステップ1で得られる4−ビフェニル−3−フェニル4H−1,2,4−トリアゾール誘導体と、ハロゲンを含む第9族もしくは第10族の金属化合物(塩化ロジウム水和物、塩化パラジウム、塩化イリジウム水和物、ヘキサクロロイリジウム酸アンモニウム、テトラクロロ白金酸カリウム等)、または第9族もしくは第10族の有機金属錯体化合物(アセチルアセトナト錯体、ジエチルスルフィド錯体等)とを混合した後、加熱することにより、一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体を得ることができる。また、この加熱プロセスは、ステップ1で得られる4−ビフェニル−3−フェニル4H−1,2,4−トリアゾール誘導体と、ハロゲンを含む第9族もしくは第10族の金属化合物、または第9族もしくは第10族の有機金属錯体化合物とをアルコール系溶媒(グリセロール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等)に溶解した後に行ってもよい。なお、スキーム(b)において、Mは第9族元素または第10族元素を表す。また、Mが第9族元素のときはn=3であり、Mが第10族元素のときはn=2である。
【0089】
【化23】

【0090】
なお、上述の化合物(A1)、(A2)、(A1’)、(A2’)は、市販されているか、または容易に合成可能である。
【0091】
(実施の形態2)
実施の形態1に記載の有機金属錯体を用いた本発明の一態様である発光素子の一態様について、図1(A)を用いて説明する。
【0092】
発光素子は、一対の電極(第1の電極102及び第2の電極104)と、前記一対の電極間に挟まれたEL層103を有する。また、本実施の形態で説明する発光素子は、基板101上に設けられている。
【0093】
基板101は、発光素子の支持体として用いられる。基板101としては、ガラス基板、プラスチック基板などを用いることができる。また、基板101として、可撓性を有する基板(フレキシブル基板)や曲面を有する基板を用いることもできる。なお、発光素子の支持体として機能するものであれば、基板101としてこれら以外の基板を用いることも可能である。
【0094】
第1の電極102及び第2の電極104は、一方が陽極として機能し、他方が陰極として機能する。本実施の形態においては、第1の電極102を陽極として用い、第2の電極104を陰極として用いるものとして説明するが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0095】
陽極として用いる材料は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、またはこれらの混合物などが好ましい。具体的には、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0096】
陰極として用いる材料は、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物などが好ましい。具体的には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等の元素周期表の第1族または第2族に属する元素が挙げられる。また、これらを含む合金(例えばMgAg、AlLi)を用いることもできる。また、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)などの希土類金属、または希土類金属を含む合金を用いることもできる。
【0097】
また、EL層103の一部として、第2の電極104に接する電子注入層を設ける場合、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITOなどの様々な導電性材料を第2の電極104として用いることができる。これら導電性材料は、スパッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である。
【0098】
EL層103は、単層構造で構成されることも可能であるが、通常積層構造から構成される。EL層103の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質を含む層(電子輸送層)または正孔輸送性の高い物質を含む層(正孔輸送層)、電子注入性の高い物質を含む層(電子注入層)、正孔注入性の高い物質を含む層(正孔注入層)、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質を含む層、発光材料を含む層(発光層)などを適宜組み合わせて構成すればよい。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等を適宜組み合わせて構成することができる。図1(A)においては、第1の電極102の上に形成されたEL層103として、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114が順に積層された構造を示している。
【0099】
発光素子は、第1の電極102と第2の電極104との間に生じた電位差により電流が流れ、発光性の高い物質を含む層である発光層113において正孔と電子とが再結合し、発光するものである。つまり発光層113に発光領域が形成されるような構成となっている。
【0100】
発光は、第1の電極102または第2の電極104のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極102または第2の電極104のいずれか一方または両方は、透光性を有する電極で成る。第1の電極102のみが透光性を有する電極である場合、発光は第1の電極102を通って基板側から取り出される。また、第2の電極104のみが透光性を有する電極である場合、発光は第2の電極104を通って基板と逆側から取り出される。第1の電極102および第2の電極104がいずれも透光性を有する電極である場合、発光は第1の電極102および第2の電極104を通って、基板側および基板と逆側の両方から取り出される。
【0101】
一般式(G1)で表される有機金属錯体は、例えば発光層113に用いることができる。この場合、一般式(G1)で表される有機金属錯体からなる薄膜で発光層113が形成されていてもよいし、一般式(G1)で表される有機金属錯体がホスト材料にドーピングされた薄膜で発光層113が形成されていてもよい。なお、有機金属錯体がホスト材料にドーピングされた薄膜で発光層113が形成される場合、一般式(G1)において、Rにおけるアルキル基は分岐のアルキル基がより好ましい。分岐のアルキル基は、立体障害により当該有機金属錯体にキャリアが入るのを抑制するため、そのキャリアトラップ性が弱まり、結果として素子の駆動電圧を低減する効果がある。従って、Rにおけるアルキル基はイソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基がさらに好ましい。
【0102】
発光層113に接する正孔輸送層112や電子輸送層114、特に発光層113における発光領域に近い方に接するキャリア(電子または正孔)輸送層は、発光層113で生成した励起子からのエネルギー移動を抑制するため、発光層を構成する発光材料、または発光層に含まれる発光中心物質が有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する物質で構成することが好ましい。
【0103】
正孔注入層111は、正孔注入性の高い物質を含む層であり、第1の電極102から正孔輸送層112へ正孔の注入を補助する機能を有する層である。正孔注入層111を設けることによって、第1の電極102と正孔輸送層112との間のイオン化ポテンシャルの差が緩和され、正孔が注入され易くなる。正孔注入層111は、正孔輸送層112を形成している物質よりもイオン化ポテンシャルが小さく、第1の電極102を形成している物質よりもイオン化ポテンシャルが大きい物質、または正孔輸送層112と第1の電極102との間に1〜2nmの薄膜として設けたときにエネルギーバンドが曲がるような物質を用いて形成することが好ましい。つまり、正孔注入層111におけるイオン化ポテンシャルが正孔輸送層112におけるイオン化ポテンシャルよりも相対的に小さくなるような物質を正孔注入層111として選択することが好ましい。正孔注入性の高い物質の具体例としては、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、またはポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(PEDOT/PSS)等の高分子が挙げられる。
【0104】
正孔輸送層112は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。本明細書中において正孔輸送性の高い物質とは、電子よりも正孔の移動度が高いものを指し、好ましくは電子の移動度に対する正孔の移動度の比の値(=正孔移動度/電子移動度)が100よりも大きい物質である。また、正孔輸送性の高い物質としては、1×10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質が好ましい。正孔輸送性の高い物質の具体例としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス{N−[4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル]−N−フェニルアミノ}ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N,N−ジ(m−トリル)アミノ]ベンゼン(略称:m−MTDAB)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、フタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)が挙げられる。また、正孔輸送層112は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0105】
電子輸送層114は、電子輸送性の高い物質を含む層である。本明細書中において電子輸送性の高い物質とは、正孔よりも電子の移動度が高いものを指し、好ましくは正孔の移動度に対する電子の移動度の比の値(=電子移動度/正孔移動度)が100よりも大きい物質である。また、電子輸送性の高い物質としては、1×10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。電子輸送性の高い物質の具体例としては、キノリン骨格を有する金属錯体、ベンゾキノリン骨格を有する金属錯体、オキサゾール系配位子を有する金属錯体、チアゾール系配位子を有する金属錯体が挙げられる。キノリン骨格を有する金属錯体の具体例としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)が挙げられる。また、ベンゾキノリン骨格を有する金属錯体の具体例としては、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)が挙げられる。また、オキサゾール系配位子を有する金属錯体の具体例としては、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)が挙げられる。また、チアゾール系配位子を有する金属錯体の具体例としては、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)が挙げられる。また、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ 01)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。具体例を挙げた上述の物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、前記以外の物質を電子輸送層114として用いてもよい。また、電子輸送層114は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0106】
また、発光層113と電子輸送層114との間に電子キャリアの移動を制御する層を設けてもよい。電子キャリアの移動を制御する層は、上述したような電子輸送性の高い材料に対して、電子トラップ性の高い物質を少量添加した層である。電子キャリアの移動を制御する層を設けることにより、電子キャリアの移動を抑制し、キャリアバランスを調節することが可能となる。このような構成は、発光層を電子が突き抜けてしまうことにより発生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
【0107】
また、電子輸送層114と第2の電極104との間に、第2の電極104に接して電子注入層を設けてもよい。電子注入層としては、電子輸送性を有する物質からなる層中に、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)などのようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を含有させたものを用いればよい。電子注入層を設けることにより、第2の電極104からの電子注入を効率良く行うことができる。
【0108】
また、EL層103の形成方法は、真空蒸着法、インクジェット法、またはスピンコート法等、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。また、EL層103を積層構造とする場合、各層毎に異なる成膜方法を用いて形成してもよいし、各層全てを同一の成膜方法で形成してもよい。
【0109】
また、第1の電極102、第2の電極104は、ゾル−ゲル法を用いた湿式法で形成してもよいし、金属材料のペーストを用いた湿式法で形成してもよい。また、スパッタリング法や真空蒸着法などの乾式法で形成してもよい。
【0110】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様として、実施の形態1に記載の有機金属錯体をもちい、複数の発光ユニットを積層した構成を有する発光素子(以下、「タンデム型の発光素子」という)の態様について、図1(B)を参照しながら説明する。タンデム型の発光素子は、第1の電極と第2の電極との間に、複数の発光ユニットを有する発光素子である。発光ユニットとしては、実施の形態2で示したEL層103と同様な構成を用いることができる。つまり、実施の形態2で示した発光素子は、1つの発光ユニットを有する発光素子であり、本実施の形態3の発光素子は、複数の発光ユニットを有する発光素子ということができる。
【0111】
図1(B)において、第1の電極501と第2の電極502との間には、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512が積層されている。第1の電極501と第2の電極502は、実施の形態2と同様なものを適用することができる。また、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512は同じ構成であっても異なる構成であってもよい。各ユニットの構成は、すくなくとも一方が実施の形態2と同様な構成であれば、他方は他の公知の構成であってもよい。
【0112】
第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512との間には、電荷発生層513が設けられている。電荷発生層513は、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含み、第1の電極501と第2の電極502に電圧を印加したときに、一方の側の発光ユニットに電子を注入し、他方の側の発光ユニットに正孔を注入する機能を有する。有機化合物と金属酸化物の複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。
【0113】
有機化合物は、正孔輸送性の有機化合物として正孔移動度が10−6cm/Vs以上であるものを用いることが好ましい。有機化合物の具体例としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール化合物、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)が挙げられる。また、金属酸化物は、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を用いればよく、具体例としては、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムが挙げられ、これらの金属酸化物は電子受容性が高いため、好ましい。特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、且つ扱いやすいため、特に好ましい。
【0114】
また、電荷発生層513は、単層構造でもよいし、積層構造でもよい。例えば、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物、及び電子輸送性の高い化合物を含む層とを積層した構造としてもよいし、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、透明導電膜とを積層した構造としてもよい。
【0115】
本実施の形態では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、タンデム型の発光素子は、3つ以上の発光ユニットを有する発光素子でもよい。なお、3つ以上の発光ユニットを有する発光素子の場合、各発光ユニットの間には電荷発生層を有する。例えば、本発明の一態様である有機金属錯体を用いて作製される第1のユニットと、前記有機金属錯体よりも長波長の発光(例えば、赤色の発光)を呈する発光材料を用いて作製される第2のユニットとを有する発光素子を構成してもよい。また、本発明の一態様である有機金属錯体を用いて作製される第1のユニットと、前記有機金属錯体よりも長波長の発光(例えば、赤色の発光)を呈する第1の発光材料を用いて作製される第2のユニットと、前記有機金属錯体よりも長波長、かつ前記第1の発光材料よりも短波長の発光(例えば、緑色の発光)を呈する第2の発光材料を用いて作製される第3のユニットとを有する発光素子を構成してもよい。これらの発光素子を用いることにより、白色の発光装置を得ることができる。
【0116】
そして、本実施の形態に係るタンデム型の発光素子は、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度の発光を得ることができる。また、長寿命素子を実現することができる。
【0117】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様として、実施の形態1で説明した有機金属錯体を用いた発光素子を用いて作製される発光装置である、パッシブマトリクス型の発光装置、及びアクティブマトリクス型の発光装置について説明する。
【0118】
図2、図3にパッシブマトリクス型の発光装置の例を示す。
【0119】
パッシブマトリクス型(単純マトリクス型ともいう)の発光装置は、ストライプ状(帯状)に並列された複数の陽極と、ストライプ状に並列された複数の陰極とが互いに直交するように設けられており、その交差部に発光層が挟まれた構造となっている。従って、選択された(電圧が印加された)陽極と選択された陰極との交点にあたる画素が点灯することになる。
【0120】
図2(A)乃至図2(C)は、封止前における画素部の上面図を示す図であり、図2(A)乃至図2(C)中の鎖線A−A’で切断した断面図が図2(D)である。
【0121】
基板601上には、下地絶縁層として絶縁層602が形成されている。なお、絶縁層602が必要でなければ特に形成しなくともよい。絶縁層602上には、ストライプ状の複数の第1の電極603が等間隔で配置されている(図2(A))。なお、本実施の形態で示す第1の電極603は、実施の形態3における第1の電極501に相当する。
【0122】
また、第1の電極603上には、各画素に対応する開口部605を有する隔壁604が設けられている。隔壁604は、絶縁材料で形成されている。例えば、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト、もしくはベンゾシクロブテン等の感光性または非感光性の有機材料や、アルキル基を含むSiOx膜等のSOG膜を絶縁材料として用いることができる。また、各画素に対応する開口部605は、発光領域となる(図2(B))。
【0123】
開口部を有する隔壁604上には、第1の電極603と交差する複数の隔壁606が設けられている(図2(C))。複数の隔壁606は、それぞれ互いに平行に設けられており、逆テーパ形状を有している。
【0124】
第1の電極603及び隔壁604上には、EL層607及び第2の電極608が順次積層されている(図2(D))。なお、本実施の形態で示すEL層607は、実施の形態3におけるEL層103に相当し、第2の電極608は、実施の形態3の第2の電極502に相当する。隔壁604及び隔壁606を合わせた高さは、EL層607及び第2の電極608の膜厚より大きくなるように設定されているため、図2(D)に示すように複数の領域に分離されたEL層607、及び第2の電極608が形成される。なお、複数に分離された領域は、それぞれ電気的に独立している。
【0125】
第2の電極608は、第1の電極603と交差する方向に伸長するストライプ状の電極である。なお、逆テーパ状の隔壁606上にもEL層607及び第2の電極608を形成する導電層の一部が形成されるが、EL層607、及び第2の電極608とは分断されている。
【0126】
また、必要であれば、基板601に封止缶やガラス基板などの封止材をシール材などの接着剤で貼り合わせて封止し、発光素子が密閉された空間に配置されるようにしても良い。これにより、発光素子の劣化を防止することができる。なお、密閉された空間には、充填材や、乾燥した不活性ガスを充填しても良い。さらに、水分などによる発光素子の劣化を防ぐために基板と封止材との間に乾燥材などを封入することが好ましい。乾燥剤によって微量な水分が除去され、十分乾燥される。乾燥剤としては、酸化カルシウムや酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物、ゼオライト、またはシリカゲル等を用いることができる。アルカリ土類金属の酸化物は、化学吸着によって水分を吸収する性質を有する。また、ゼオライトやシリカゲルは、物理吸着によって水分を吸着する性質を有する。
【0127】
次に、図2(A)乃至図2(D)に示したパッシブマトリクス型の発光装置にFPC(フレキシブルプリントサーキット)などを実装した場合の上面図を図3に示す。
【0128】
図3において、画像表示を構成する画素部は、走査線群とデータ線群が互いに直交するように交差している。
【0129】
ここで、図2における第2の電極608が、図3の走査線703に相当し、図2における第1の電極603が、図3のデータ線708に相当し、逆テーパ状の隔壁606が隔壁706に相当する。データ線708と走査線703の間には、図2のEL層607が挟まれており、領域705で示される交差部が画素1つ分となる。
【0130】
走査線703は配線端で接続配線709と電気的に接続され、接続配線709が入力端子710を介してFPC711bに接続される。また、データ線708は入力端子712を介してFPC711aに接続される。
【0131】
また、必要に応じて、光の射出面に偏光板、円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板または円偏光板に加えて反射防止膜を設けてもよい。反射防止膜を設けることにより、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0132】
なお、図3では、駆動回路を基板上に設けない例を示したが、基板上に駆動回路を有するICチップを実装させてもよい。
【0133】
また、ICチップを実装させる場合には、画素部の周辺(外側)の領域に、画素部へ各信号を伝送する駆動回路が形成されたデータ線側IC、走査線側ICをそれぞれ実装する。実装方式は、COG方式、TCP、ワイヤボンディング方式等を用いることができる。TCPはTABテープにICを実装したものであり、TABテープを素子形成基板上の配線に接続してICを実装する。データ線側IC及び走査線側ICは、シリコン基板やSOI(Silicon On Insulator)基板に形成されたものであってもよいし、ガラス基板、石英基板、またはプラスチック基板上に形成されたものであってもよい。
【0134】
次に、アクティブマトリクス型の発光装置の例について、図4を用いて説明する。なお、図4(A)は発光装置を示す上面図であり、図4(B)は図4(A)を鎖線A−A’で切断した断面図である。本実施の形態に係るアクティブマトリクス型の発光装置は、素子基板801上に設けられた画素部802と、駆動回路部(ソース側駆動回路)803と、駆動回路部(ゲート側駆動回路)804とを有する。画素部802、駆動回路部803、及び駆動回路部804は、シール材805によって、素子基板801と封止基板806との間に封止されている。
【0135】
素子基板801上には、駆動回路部803及び駆動回路部804に外部からの信号(ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、またはリセット信号等)や電位を伝達する外部入力端子を接続するための引き回し配線807が設けられる。ここでは、外部入力端子としてFPC808を設ける例を示している。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていてもよい。本明細書における発光装置は、発光装置本体だけでなく、発光装置本体にFPCまたはPWBが取り付けられた状態のものも範疇に含むものとする。
【0136】
次に、アクティブマトリクス型の発光装置の断面構造について図4(B)を用いて説明する。なお、素子基板801上には駆動回路部803及び駆動回路部804及び画素部802が形成されているが、図4(B)においては、ソース側駆動回路である駆動回路部803と、画素部802を示している。
【0137】
駆動回路部803は、nチャネル型TFT809とpチャネル型TFT810とを組み合わせたCMOS回路を有する例を示している。なお、駆動回路部を形成する回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路、またはNMOS回路で形成することができる。また、本実施の形態では、画素部が形成された基板上に駆動回路が形成されたドライバー一体型を示すが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、画素部が形成された基板とは別の基板に駆動回路を形成することもできる。
【0138】
画素部802は、スイッチング用のTFT811と、電流制御用のTFT812と、電流制御用TFT812の配線(ソース電極またはドレイン電極)に電気的に接続された陽極813とを含む複数の画素により形成されている。また、陽極813の端部を覆って絶縁物814が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂を用いることにより形成する。なお、スイッチング用のTFT811や電流制御用のTFT812といったTFTの構造は、特に限定されない。例えば、スタガ型のTFTでもよいし、逆スタガ型のTFTでもよい。また、トップゲート型のTFTでもよいし、ボトムゲート型のTFTでもよい。また、TFTに用いる半導体の材料についても特に限定されず、シリコンを用いてもよいし、インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物等の酸化物半導体を用いてもよい。また、TFTに用いる半導体の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体を用いてもよいし、結晶性半導体を用いてもよい。
【0139】
発光素子817は、陽極813、EL層815、及び陰極816によって構成されている。発光素子の構造、材料等については実施の形態2で説明したため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、図4における陽極813、EL層815、及び陰極816はそれぞれ実施の形態2における第1の電極102、EL層103、第2の電極104に相当する。また、ここでは図示しないが、陰極816は外部入力端子であるFPC808に電気的に接続されている。
【0140】
絶縁物814は、陽極813の端部に設けられている。そして、絶縁物814の上層に形成される陰極816の被覆性を少なくとも良好なものとするため、絶縁物814の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにするのが好ましい。例えば、絶縁物814の上端部または下端部に曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせるのが好ましい。また、絶縁物814の材料としては、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型の感光性樹脂、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型の感光性樹脂などの有機化合物や、酸化シリコン、酸窒化シリコン等の無機化合物を用いることができる。
【0141】
また、図4(B)に示す断面図では発光素子817を1つのみ図示しているが、画素部802においては、複数の発光素子がマトリクス状に配置されている。例えば、画素部802に3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子をそれぞれ選択的に形成し、フルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、カラーフィルタと組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光装置としてもよい。
【0142】
また、発光素子817は、素子基板801、封止基板806、及びシール材805で囲まれた空間818に設けられている。空間818は、希ガスまたは窒素ガスが充填されていてもよいし、シール材805で充填されていてもよい。
【0143】
シール材805は、できるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが好ましく、例えばエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、封止基板806としては、ガラス基板、石英基板、またはFRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステル、もしくはアクリルからなるプラスチック基板等を用いることができる。
【0144】
以上のようにして、アクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。このような発光装置は、発光効率の高い実施の形態1に記載の有機金属錯体を含む発光素子を用いていることから、消費電力の小さい発光装置とすることができる。
【0145】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した発光装置を用いて作製される電子機器及び照明装置の具体例について、図5、図6を用いて説明する。
【0146】
本発明を適用可能な電子機器の一例として、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどのカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、遊技機(パチンコ機、スロットマシン等)、ゲーム筐体が挙げられる。これらの電子機器および照明装置の具体例を図5、図6に示す。
【0147】
図5(A)は、テレビジョン装置9100を示している。テレビジョン装置9100は、筐体9101に表示部9103が組み込まれている。本発明の一態様を用いて作製される発光装置は、表示部9103に用いることが可能であり、表示部9103により映像を表示することが可能である。なお、ここではスタンド9105により筐体9101を支持した構成を示している。
【0148】
テレビジョン装置9100の操作は、筐体9101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機9110により行うことができる。リモコン操作機9110が備える操作キー9109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機9110に、当該リモコン操作機9110から出力する情報を表示する表示部9107を設ける構成としてもよい。
【0149】
図5(A)に示すテレビジョン装置9100は、受信機やモデムなどを備えている。テレビジョン装置9100は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0150】
発光効率の高い実施の形態1に記載の有機金属錯体を含む発光素子を用いた発光装置は、消費電力の小さな発光装置であるため、当該発光装置をテレビジョン装置の表示部9103に用いることで、従来に比べて消費電力の小さいテレビジョン装置とすることができる。
【0151】
図5(B)はコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス9206等を含む。コンピュータは、本発明の一態様を用いて作製される発光装置をその表示部9203に用いることにより作製される。
【0152】
また、発光効率の高い実施の形態1に記載の有機金属錯体を含む発光素子を用いた発光装置は、消費電力の小さな発光装置であるため、当該発光装置をコンピュータの表示部9203に用いることで、従来に比べて消費電力の小さい表示部とすることが可能となる。
【0153】
図5(C)は携帯型ゲーム機であり、筐体9301と筐体9302の2つの筐体で構成されており、連結部9303により、開閉可能に連結されている。筐体9301には表示部9304が組み込まれ、筐体9302には表示部9305が組み込まれている。また、図5(C)に示す携帯型ゲーム機は、操作キー9309、接続端子9310、センサ9311(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9312等の入力手段を備えている。さらに、スピーカ部9306、記録媒体挿入部9307、LEDランプ9308等を備えていてもよい。もちろん、携帯型ゲーム機の構成は上述のものに限定されず、表示部9304および表示部9305の両方、または一方に上記実施の形態を適用して形成される発光装置が少なくとも用いられていればよい。
【0154】
図5(C)に示す携帯型ゲーム機は、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型ゲーム機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図5(C)に示す携帯型ゲーム機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0155】
また、発光効率の高い実施の形態1に記載の有機金属錯体を含む発光素子を用いた発光装置は、消費電力の小さな発光装置であるため、当該発光装置を携帯型ゲーム機の表示部(9304、9305)に用いることで、従来に比べて消費電力の小さな携帯型ゲーム機とすることが可能となる。
【0156】
図5(E)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機9500は、筐体9501に組み込まれた表示部9502の他、操作ボタン9503、外部接続ポート9504、スピーカ9505、マイク9506などを備えている。携帯電話機9500は、本発明の一態様を用いて作製される発光装置を表示部9502に用いることにより作製される。
【0157】
図5(E)に示す携帯電話機9500は、表示部9502を指などで触れることで、情報を入力する、電話を掛ける、またはメールを作成するなどの操作を行うことができる。
【0158】
表示部9502の画面は、主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0159】
例えば、電話を掛ける、またはメールを作成する場合は、表示部9502を文字の入力を主とする入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部9502の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0160】
また、携帯電話機9500内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機9500の向き(縦向きか横向きか)を判断して、表示部9502の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0161】
また、画面モードの切り替えは、表示部9502を触れる、または筐体9501の操作ボタン9503の操作により行われる。また、表示部9502に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0162】
また、入力モードにおいて、表示部9502の光センサで検出される信号を検知し、表示部9502のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0163】
また、表示部9502は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部9502に掌や指を触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0164】
発光効率の高い実施の形態1に記載の有機金属錯体を含む発光素子を用いた発光装置は、消費電力の小さな発光装置であるため、当該発光装置を携帯電話機の表示部9502に用いることで、従来に比べて消費電力の小さな携帯電話機とすることが可能となる。
【0165】
図5(D)は卓上型の照明装置であり、照明部9401、傘9402、可変アーム9403、支柱9404、台9405、電源スイッチ9406を含む。卓上型の照明装置は、本発明の一態様を用いて作製される発光装置を照明部9401に用いることにより作製される。なお、照明装置の形式は、卓上型に限らず、天井固定型や、壁掛け型、携帯型も含まれる。
【0166】
図6は、本発明の一態様を用いて作製される発光装置を、室内の照明装置1001として用いた例である。本発明の一態様を用いて作製される発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、上記実施の形態で示した発光装置は、薄型化が可能であるため、ロール型の照明装置1002として用いることもできる。なお、図6に示すように、室内の照明装置1001を備えた部屋で、図5(D)で説明したような卓上型の照明装置1003を併用してもよい。
【0167】
また、発光効率の高い実施の形態1に記載の有機金属錯体を含む発光素子を用いた発光装置は、消費電力の小さな発光装置であるため、当該発光装置を照明装置として用いることで、従来に比べて消費電力の小さな照明装置とすることができる。
【0168】
実施の形態1に記載の有機金属錯体を用いた実施の形態2または実施の形態3に記載の発光素子は、自動車のフロントガラスやダッシュボードにも搭載することができる。図7に実施の形態2または実施の形態3に記載の発光素子を自動車のフロントガラスやダッシュボードに用いる一態様を示す。表示5000乃至表示5005は実施の形態2または実施の形態3に記載の発光素子を用いて設けられた表示である。
【0169】
表示5000と表示5001は自動車のフロントガラスに設けられた実施の形態2または実施の形態3に記載の発光素子を搭載した表示装置である。実施の形態2または実施の形態3に記載の発光素子は、第1の電極と第2の電極を透光性を有する電極で作製することによって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態の表示装置とすることができる。シースルー状態の表示であれば、自動車のフロントガラスに設置したとしても、視界の妨げになることなく設置することができる。なお、駆動のためのトランジスタなどを設ける場合には、有機半導体材料による有機トランジスタや、酸化物半導体を用いたトランジスタなど、透光性を有するトランジスタを用いると良い。
【0170】
表示5002はピラー部分に設けられた実施の形態2または実施の形態3に記載の発光素子を搭載した表示装置である。表示5002には、車体に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界を補完することができる。また、同様に、ダッシュボード部分に設けられた表示5003は車体によって遮られた視界を、自動車の外側に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、死角を補い、安全性を高めることができる。見えない部分を補完するように映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。
【0171】
表示5004や表示5005はナビゲーション情報、スピードメーターやタコメーター、走行距離、給油量、ギア状態、エアコンの設定など、その他様々な情報を提供することができる。表示は使用者の好みに合わせて適宜その表示項目やレイアウトを変更することができる。なお、これら情報は表示5000乃至表示5003にも設けることができる。また、表示5000乃至表示5005は照明装置として用いることも可能である。
【0172】
実施の形態2または実施の形態3に記載の発光素子は実施の形態1に記載の有機金属錯体を含むことによって、発光効率の高い発光素子とすることができ、消費電力が小さい発光素子である。このことから、表示5000乃至表示5005大きな画面を数多く設けても、バッテリーに負荷をかけることが少なく、快適に使用することができることから実施の形態2または実施の形態3に記載の発光素子を用いた発光装置または照明装置は、車載用の発光装置又は照明装置として好適に用いることができる。
【0173】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態1に記載の有機金属錯体を用いた発光素子を照明装置として用いる例を図8を参照しながら説明する。図8(B)は照明装置の上面図、図8(A)は図8(B)におけるc−d断面図である。
【0174】
本実施の形態における照明装置は、支持体である透光性を有する基板400上に、第1の電極401が形成されている。基板400及び第1の電極401は実施の形態2における基板101及び第1の電極102に相当する。
【0175】
第1の電極401上には補助配線402が設けられている。本実施の形態では、第1の電極401側から発光を取り出す例を示したため、第1の電極401は透光性を有する材料により形成する。補助配線402は透光性を有する材料の導電率の低さを補うために設けられており、第1の電極401の抵抗が高いことによる電圧降下を起因とする発光面内の輝度むらを抑制する機能を有する。補助配線402は少なくとも第1の電極401の材料よりも導電率の大きい材料を用いて形成し、好ましくはアルミニウムなどの導電率の大きい材料を用いて形成すると良い。なお、補助配線402における第1の電極401と接する部分以外の表面は絶縁層で覆われていることが好ましい。これは、取り出すことができない補助配線402上部からの発光を抑制するためであり、無効電流を低減し、電力効率の低下を抑制するためである。なお、補助配線402の形成と同時に第2の電極404に電圧を供給するためのパッド412を形成しても良い。
【0176】
第1の電極401と補助配線402上にはEL層403が形成されている。EL層403には実施の形態1に記載の有機金属錯体が含まれている。EL層403は実施の形態2におけるEL層103の構成、もしくは実施の形態3における発光ユニット511、512及び電荷発生層513を合わせた構成に相当する。当該記載を参照されたい。なお、EL層403は第1の電極401よりも平面的に見て少し大きく形成することが、第1の電極401と第2の電極404とのショートを抑制する絶縁層の役割も担えるため好ましい構成である。
【0177】
EL層403を覆って第2の電極404を形成する。第2の電極404は実施の形態2における第2の電極104に相当し、同様の構成を有する。本実施の形態においては、発光は第1の電極401側から取り出されるため、第2の電極404は反射率の高い材料によって形成されることが好ましい。本実施の形態において、第2の電極404はパッド412と接続することによって、電圧が供給されるものとする。
【0178】
以上、第1の電極401、EL層403、及び第2の電極404(及び補助電極402)を有する発光素子を本実施の形態で示す照明装置は有している。当該発光素子は発光効率の高い発光素子であるため、本実施の形態における照明装置は消費電力の小さい照明装置とすることができる。また、当該発光素子は信頼性の高い発光素子であることから、本実施の形態における照明装置は信頼性の高い照明装置とすることができる。
【0179】
以上の構成を有する発光素子を、シール材405、406を用いて封止基板407を固着し、封止することによって照明装置が完成する。シール材405、406はどちらか一方でもかまわない。また、内側のシール材406には乾燥剤を混ぜることもでき、これにより、水分を吸着することができ、信頼性の向上につながる。
【0180】
また、パッド412、第1の電極401及び補助配線402の一部をシール材405、406の外に伸張して設けることによって、外部入力端子とすることができる。また、その上にコンバーターなどを搭載したICチップ420などを設けても良い。
【0181】
以上、本実施の形態に記載の照明装置は、発光素子に、発光効率の高い実施の形態1に記載の有機金属錯体含むことから、消費電力の小さい照明装置とすることができる。
【0182】
以上のように、本発明の一態様を用いて作製される発光装置を用いて電子機器や照明装置を提供することができる。本発明の一態様を用いて作製される発光装置の適用範囲は極めて広く、様々な分野の電子機器に適用することが可能である。
【実施例1】
【0183】
(合成例1)
本合成例では、実施の形態1の構造式(112)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、トリス[4−(3−ビフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPrptz−3b))の合成例を具体的に例示する。Ir(iPrptz−3b)の構造式を示す。
【0184】
【化24】

【0185】
<ステップ1:N−(3−ビフェニル)イソブチルアミドの合成>
200mLの三ツ口フラスコに、3−アミノビフェニル5.0g(30mmol)、トリエチルアミン4.5g(44mmol)、テトラヒドロフラン(THF)40mLを入れ、室温で撹拌した。続いて、この混合溶液に、氷冷下、イソ酪酸クロリド3.2g(30mmol)とTHF30mLの混合溶液を50mL滴下ロートより滴下し、室温で5日間撹拌した。撹拌後、得られた反応混合物に水を加え、この混合物をクロロホルムで抽出した。得られた抽出溶液を飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。この混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して固体を得た。得られた固体をクロロホルムとヘキサンの混合溶媒にて洗浄し、吸引ろ過してN−(3−ビフェニル)イソブチルアミドの白色固体6.9gを、収率98%で得た。ステップ1の合成スキームを下式(a−1)に示す。
【0186】
【化25】

【0187】
<ステップ2:N−(3−ビフェニル)イソブチルチオアミドの合成>
ステップ1で得られたN−(3−ビフェニル)イソブチルアミド6.9g(29mmol)、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチア−2,4−ジホスフェタン−2,4−ジスルフィド(Lawesson試薬)5.8g(14mmol)、トルエン70mLを200mL三ツ口フラスコに入れ、120℃で3時間加熱還流した。この後、トルエンを留去して黄色油状物を得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒は、トルエンを用いた。得られたフラクションを濃縮して、黄色油状物としてN−(3−ビフェニル)イソブチルチオアミドを6.2g、収率84%で得た。ステップ2の合成スキームを下式(a−2)に示す。
【0188】
【化26】

【0189】
<ステップ3:N−[1−(エチルスルファニル)イソブチリデン]−3−ビフェニルアミンの合成>
ナトリウムエトキシド1.7g(24mmol)、ステップ1で合成したN−(3−ビフェニル)イソブチルチオアミド6.2g(24mmol)を500mLナスフラスコに入れ、エタノール40mLを加えて、室温で12時間撹拌した。撹拌後、この混合物にヨードエタン2.0mLを加え、60℃で3時間撹拌した。撹拌後、エタノールを留去して褐色油状物を得た。この油状物をジクロロメタンに溶かし、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。洗浄後、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。この混合物を自然ろ過し、得られたろ液を濃縮し、褐色油状物としてN−[1−(エチルスルファニル)イソブチリデン]−3−ビフェニルアミンを4.3g、収率63%で得た。ステップ3の合成スキームを下式(a−3)に示す。
【0190】
【化27】

【0191】
<ステップ4:4−(3−ビフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾールの合成>
N−[1−(エチルスルファニル)イソブチリデン]−3−ビフェニルアミン6.3g(25mmol)、ベンゾイルヒドラジン2.9g(21mmol)、1−ブタノール40mLを100mL三口フラスコに入れ130度で10時間加熱還流した。撹拌後、1−ブタノールを留去して褐色油状物を得た。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒は、酢酸エチル:トルエン=1:3を用いた。得られたフラクションを濃縮して、黄色油状物を得た。この油状物を真空乾燥させ、固体を析出させた。この固体のヘキサン懸濁液に超音波を照射し、白色固体を吸引濾過により回収したところ、4−(3−ビフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾールの白色粉末を3.1g、収率53%で得た。ステップ4の合成スキームを下式(a−4)に示す。
【0192】
【化28】

【0193】
<ステップ5:トリス[4−(3−ビフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPrptz−3b))の合成>
ステップ4で得られた4−(3−ビフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾール(略称:HiPrptz−3b)2.0g(5.9mmol)、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)0.577g(1.2mmol)を、三方コックを付けた反応容器に入れ、250℃で44時間加熱した。得られた反応混合物をジクロロメタンに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、ジクロロメタン:酢酸エチル=5:1の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して、固体を得た。得られた固体をジクロロメタンに溶かし、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)を通して吸引ろ過した。ろ液を濃縮して得られた固体をジクロロメタン/メタノールで再結晶したところ黄色固体を0.33g、収率23%で得た。ステップ5の合成スキームを下式(a−5)に示す。
【0194】
【化29】

【0195】
上記ステップ5で得られた黄色固体の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分析結果を下記に示す。また、H−NMRチャートを図9に示す。この結果から、本合成例1において、上述の構造式(112)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、Ir(iPrptz−3b)が得られたことがわかった。
【0196】
H−NMR.δ(CDCl):1.21−1.29(m,18H),2.94(br,3H),6.24(br,6H),6.48(br,3H),6.98(br,3H),7.34−7.50(m,12H),7.59−7.70(m,12H),7.84(d,3H).
【0197】
次に、Ir(iPrptz−3b)のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.112mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.112mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図10に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。また、図10において2本の実線が示されているが、細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示している。なお、図10に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.112mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
【0198】
図10に示すとおり、本発明の一態様である有機金属錯体Ir(iPrptz−3b)は、500nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは青緑色の発光が観測された。
【0199】
また、Ir(iPrptz−3b)のりん光量子収率(Φ)を測定した。りん光量子収率の測定には、絶対量子収率測定装置(浜松フォトニクス社製 C9920−02)を用い、脱気したトルエン溶液(0.01mmol/L)をセルに入れ、室温で測定を行った。測定の結果、Ir(iPrptz−3b)のりん光量子収率Φ=0.82であった。この結果から、Ir(iPrptz−3b)は極めて効率的なりん光発光を示す材料であること がわかった。
【実施例2】
【0200】
(合成例2)
本合成例では、実施の形態1の構造式(102)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、トリス[4−(4−ビフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPrptz−4b))の合成例を具体的に例示する。Ir(iPrptz−4b)の構造式を示す。
【0201】
【化30】

【0202】
<ステップ1:N−(4−ブロモフェニル)イソブチルアミドの合成>
4−ブロモアニリン16g(90mmol)、トリエチルアミン11g(108mmol)、テトラヒドロフラン(THF)250mLを500mL三ツ口フラスコに入れ撹拌した。この混合溶液に、氷冷下、イソ酪酸クロリド9.6g(90mmol)とTHF50mLの混合溶液を滴下し、室温で12時間撹拌した。撹拌後、この混合物をクロロホルムに溶かし、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。洗浄後、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して固体を得た。この固体をヘキサンで洗浄して、N−(4−ブロモフェニル)イソブチルアミドの白色固体を18g、収率82%で得た。ステップ1の反応スキームを下式(b−1)に示す。
【0203】
【化31】

【0204】
<ステップ2:N−(4−ブロモフェニル)イソブチルチオアミドの合成>
ステップ1で得られたN−(4−ブロモフェニル)イソブチルアミド18g(74mmol)、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチア−2,4−ジホスフェタン−2,4−ジスルフィド(Lawesson試薬)15g(37mmol)、トルエン120mLを500mL三ツ口フラスコに入れ、120℃で3時間加熱還流した。この後、トルエンを留去して黄色油状物を得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒は、トルエンを用いた。得られたフラクションを濃縮して、黄色固体を得た。得られた固体を吸引ろ過により回収し、少量のメタノールで洗浄したところ、N−(4−ブロモフェニル)イソブチルチオアミドの白色固体を13g、収率70%で得た。ステップ2の反応スキームを下式(b−2)に示す。
【0205】
【化32】

【0206】
<ステップ3:N−[1−(エチルスルファニル)イソブチリデン]−4−ブロモアニリンの合成>
ナトリウムエトキシド3.4g(50mmol)、ステップ2で合成したN−(4−ブロモフェニル)イソブチルチオアミド13g(50mmol)を300mL三口フラスコに入れ、エタノール80mL加えて、室温で2時間撹拌した。撹拌後、この混合物にヨードエタン4.0mLを加え、60℃で6時間撹拌した。撹拌後、エタノールを留去して褐色油状物を得た。この油状物をジクロロメタンに溶かし、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。洗浄後、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。この混合物を自然ろ過し、得られたろ液を濃縮して褐色油状物としてN−[1−(エチルスルファニル)イソブチリデン]−4−ブロモアニリンを13g、収率88%で得た。ステップ3の反応スキームを下式(b−3)に示す。
【0207】
【化33】

【0208】
<ステップ4:4−(4−ブロモフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾールの合成>
ステップ3で合成したN−[1−(エチルスルファニル)イソブチリデン]−4−ブロモアニリン13g(44mmol)、ベンゾイルヒドラジン3.9g(29mmol)、1−ブタノール40mLを300mLナスフラスコに入れ130度で10時間加熱還流した。この後、1−ブタノールを留去して固体を得た。この固体のメタノール懸濁液に超音波を照射し、白色固体を吸引濾過により回収したところ、4−(4−ブロモフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾールの白色粉末を2.8g、収率28%で得た。ステップ4の反応スキームを下式(b−4)に示す。
【0209】
【化34】

【0210】
<ステップ5:4−(4−ビフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾールの合成>
ステップ4で合成した4−(4−ブロモフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾール2.1g(6.1mmol)、フェニルボロン酸2.0g(16.0mmol)、トリ(オルト−トリル)ホスフィン0.243g(0.8mmol)、トルエン70mL、エタノール10mL、2M炭酸カリウム水溶液18mLを反応容器に入れ、反応容器内を窒素置換した。この混合物に酢酸パラジウム(II)36mg(0.16mmol)を加え、80℃で10時間加熱撹拌した。撹拌後、得られた反応溶液の水層と有機層を分液し、水層をトルエンで抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄した。洗浄後、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、得られた混合物を自然濾過して、ろ液を得た。得られたろ液を濃縮して粗生成物を得た。得られた租生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。展開溶媒はトルエン:酢酸エチル=3:2を用いた。得られたフラクションを濃縮して、白色固体を得た。得られた固体をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ4−(4−ビフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾールの白色固体を1.9g、収率89%で得た。ステップ5の反応スキームを下式(b−5)に示す。
【0211】
【化35】

【0212】
<ステップ6:Ir(iPrptz−4b)の合成>
ステップ5で得られた4−(4−ビフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾール1.8g(5.4mmol)、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)0.538g(1.1mmol)を、三方コックを付けた反応容器に入れ、アルゴン気流下で、250℃にて45時間加熱した。得られた反応混合物をジクロロメタンに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、まずジクロロメタンを用い、次いでジクロロメタン:酢酸エチル=10:1の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して、固体を得た。得られた固体を酢酸エチル/ヘキサンで再結晶したところ黄色固体を0.52g、収率39%で得た。ステップ6の反応スキームを下式(b−6)に示す。
【0213】
【化36】

【0214】
上記ステップ6で得られた黄色固体の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分析結果を下記に示す。また、H−NMRチャートを図11に示す。この結果から、本合成例2において、上述の構造式(102)で表される本発明の一態様である有機金属錯体Ir(iPrptz−4b)が得られたことがわかった。
【0215】
H−NMR.δ(CDCl):1.20−1.31(m,18H),2.85(sep,3H),6.38(d,3H),6.54(t,3H),6.77(t,3H),6.99(t,3H),7.40−7.46(m,6H),7.49−7.55(m,9H),7.69−7.72(m,6H),7.78−7.83(m,6H).
【0216】
次に、Ir(iPrptz−4b)のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.103mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.103mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図12に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。また、図12において2本の実線が示されているが、細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示している。なお、図12に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.103mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
【0217】
図12に示すとおり、本発明の一態様である有機金属錯体Ir(iPrptz−4b)は、502nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは青緑色の発光が観測された。
【0218】
また、Ir(iPrptz−4b)のりん光量子収率(Φ)を測定した。りん光量子収率の測定には、絶対量子収率測定装置(浜松フォトニクス社製 C9920−02)を用い、脱気したトルエン溶液(0.01mmol/L)をセルに入れ、室温で測定を行った。測定の結果、Ir(iPrptz−4b)のりん光量子収率Φ=0.53であった。この結果から、Ir(iPrptz−4b)は効率的なりん光発光を示す材料であることがわかった。
【実施例3】
【0219】
(合成例3)
本合成例では、実施の形態1の構造式(108)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、トリス[4−(9H−フルオレン−2−イル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPrptz−fl))の合成例を具体的に例示する。Ir(iPrptz−fl)の構造式を示す。
【0220】
【化37】

【0221】
<ステップ1:N−(9H−フルオレン−2−イル)イソブチルアミドの合成>
2−アミノフルオレン15g(83mmol)、トリエチルアミン10g(100mmol)、テトラヒドロフラン(THF)250mLを500mL三ツ口フラスコに入れ撹拌した。この混合溶液に、氷冷下、イソ酪酸クロリド8.8g(83mmol)とTHF50mLの混合溶液を滴下し、室温で12時間撹拌した。撹拌後、この混合物を水200mlに注ぎ入れ、1時間撹拌した。撹拌後、析出した固体を水で洗浄し、吸引ろ過して白色固体を得た。この固体のヘキサン懸濁液に超音波を照射し、固体を吸引濾過により回収したところ、N−(9H−フルオレン−2−イル)イソブチルアミドの白色固体を20g、収率97%で得た。ステップ1の合成スキームを下式(c−1)に示す。
【0222】
【化38】

【0223】
<ステップ2:N−(9H−フルオレン−2−イル)イソブチルチオアミドの合成>
N−(9H−フルオレン−2−イル)イソブチルアミド20g(80mmol)、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチア−2,4−ジホスフェタン−2,4−ジスルフィド(Lawesson試薬)16g(40mmol)、トルエン150mLを500mL三ツ口フラスコに入れ、130℃で4時間加熱還流した。この後、析出した固体をトルエンで洗浄し、吸引ろ過してN−(9H−フルオレン−2−イル)イソブチルチオアミドの黄色固体を21g、収率100%で得た。ステップ2の合成スキームを下式(c−2)に示す。
【0224】
【化39】

【0225】
<ステップ3:4−(9H−フルオレン−2−イル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾールの合成>
N−(9H−フルオレン−2−イル)イソブチルチオアミド13g(50mmol)、ベンゾイルヒドラジン8.2g(60mmol)、1−ブタノール70mLを200mL三口フラスコに入れ130度で10時間加熱還流した。この後、反応混合物中の固体を吸引ろ過により、取り除いた。得られたろ液を濃縮して固体を析出させた。この後、1−ブタノールを留去して個体を析出させた。析出させた固体を吸引ろ過により取り除き、ろ液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒は、酢酸エチル:トルエン=1:1の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して、固体を得た。得られた固体を酢酸エチルで再結晶したところ4−(9H−フルオレン−2−イル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾールの白色固体を1.3g、収率7%で得た。ステップ3の合成スキームを下式(c−3)に示す。
【0226】
【化40】

【0227】
<ステップ4:Ir(iPrptz−fl)の合成>
4−(9H−フルオレン−2−イル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾール2.0g(5.9mmol)、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)0.587g(1.2mmol)を、三方コックを付けた反応容器に入れ、アルゴン気流下で、250℃にて36時間加熱した。得られた反応混合物をジクロロメタンに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、まずジクロロメタンを用い、次いでジクロロメタン:酢酸エチル=10:1の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して、固体を得た。得られた固体を酢酸エチル/ヘキサンで再結晶したところ黄色固体を0.23g、収率15%で得た。ステップ4の合成スキームを下式(c−4)に示す。
【0228】
【化41】

【0229】
上記ステップ4で得られた黄色固体の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分析結果を下記に示す。また、H−NMRチャートを図13に示す。この結果から、本合成例3において、上述の構造式(108)で表される本発明の一態様である有機金属錯体Ir(iPrptz−fl)が得られたことがわかった。
【0230】
H−NMR.δ(CDCl):1.26−1.30(m,18H),2.86(br,3H),4.00(d,6H),6.33(d,3H),6.49(t,3H),6.74(t,3H),6.99(br,3H),7.37−7.63(m,15H),7.88−7.99(m,6H).
【0231】
次に、Ir(iPrptz−fl)のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.133mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.133mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図14に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。また、図14において2本の実線が示されているが、細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示している。なお、図14に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.133mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
【0232】
図14に示すとおり、本発明の一態様である有機金属錯体Ir(iPrptz−fl)は、498nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは青緑色の発光が観測された。
【0233】
また、Ir(iPrptz−fl)のりん光量子収率(Φ)を測定した。りん光量子収率の測定には、絶対量子収率測定装置(浜松フォトニクス社製 C9920−02)を用い、脱気したトルエン溶液(0.01mmol/L)をセルに入れ、室温で測定を行った。測定の結果、Ir(iPrptz−fl)のりん光量子収率Φ=0.51であった。この結果から、Ir(iPrptz−fl)は効率的なりん光発光を示す材料であることがわかった。
【実施例4】
【0234】
本発明の一態様である有機金属錯体を用いた発光素子の構成、作製方法および素子特性の測定結果について説明する。
【0235】
本実施例で作製した発光素子1及び発光素子2の素子構造を図15に示す。発光素子1及び発光素子2は基板1100上に設けた第1の電極1101上に、複数の層が積層されたEL層1103を介して第2の電極1102を有する。本実施例の発光素子1及び発光素子2のEL層1103は、正孔注入層1111、正孔輸送層1112、発光層1113、電子輸送層1114、並びに電子注入層1115が順次積層された構造を有する。なお、発光層1113は第1の発光層、及び第2の発光層を積層した構成を備える。
【0236】
作製した発光素子の概要を表1に示す。なお、発光素子1及び発光素子2においては、本発明の一態様である有機金属錯体を発光材料として発光層1113に適用した。
【0237】
【表1】

【0238】
また、使用した有機化合物の構造式を以下に示す。
【0239】
【化42】

【0240】
(発光素子1、発光素子2の作製)
発光素子1及び発光素子2の作製方法について説明する。なお、発光素子1は、実施の形態1の構造式(112)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、トリス[4−(3−ビフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPrptz−3b))を発光材料として発光層1113に含み、発光素子2は、実施の形態1の構造式(102)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、トリス[4−(4−ビフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPrptz−4b))を発光材料として発光層1113に含む。
【0241】
まず、ガラス基板1100上に酸化珪素を含むインジウムスズ酸化物(略称:ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、陽極として機能する第1の電極1101を形成した。第1の電極1101の膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0242】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成されたガラス基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した。
【0243】
次に、正孔注入層1111を第1の電極1101上に形成した。正孔注入層1111は4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)と酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、有機化合物と無機化合物とを複合してなる複合材料を含む層を用いた。複合材料を含む層の膜厚は60nmとし、CBPと酸化モリブデンの比率は、重量比で2:1(=CBP:酸化モリブデン)となるように調節した。
【0244】
次に、正孔輸送層1112を正孔注入層1111上に形成した。正孔輸送層1112は抵抗加熱を用いた蒸着法により、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)を20nmの膜厚となるように成膜した。
【0245】
次に、発光層1113を正孔輸送層1112上に形成した。発光素子1では、発光層1113は、mCPとIr(iPrptz−3b)を30nmの膜厚となるように共蒸着して形成した後、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)とIr(iPrptz−3b)を10nmの膜厚となるように共蒸着して形成した。mCPとIr(iPrptz−3b)の重量比は、1:0.08(=mCP:Ir(iPrptz−3b))となるように蒸着レートを調整した。また、mDBTBIm−IIとIr(iPrptz−3b)の重量比は、1:0.08(=mDBTBIm−II:Ir(iPrptz−3b))となるように蒸着レートを調整した。発光素子2では、発光層1113は、mCPとIr(iPrptz−4b)を30nmの膜厚となるように共蒸着して形成した後、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)とIr(iPrptz−4b)を10nmの膜厚となるように共蒸着して形成した。mCPとIr(iPrptz−4b)の重量比は、1:0.08(=mCP:Ir(iPrptz−4b))となるように蒸着レートを調整した。また、mDBTBIm−IIとIr(iPrptz−4b)の重量比は、1:0.08(=mDBTBIm−II:Ir(iPrptz−4b))となるように蒸着レートを調整した。
【0246】
次に、電子輸送層1114を発光層1113上に形成した。電子輸送層1114は抵抗加熱を用いた蒸着法により、バソフェナントロリン(略称:BPhen)を15nmの膜厚となるように成膜した。
【0247】
次に、電子注入層1115を電子輸送層1114上に形成した。電子注入層1115としてフッ化リチウム(LiF)を、1nmの膜厚となるように蒸着した。
【0248】
最後に、第2の電極1102を電子注入層1115上に形成した。第2の電極1102としてアルミニウムを、200nmの膜厚となるよう蒸着して発光素子1及び発光素子2を作製した。
【0249】
以上により得られた発光素子1及び発光素子2が大気に曝されないように窒素雰囲気のグローブボックス内において封止した後、これら発光素子1及び発光素子2の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0250】
(評価結果)
発光素子1の電流密度−輝度特性を図16、電圧−輝度特性を図17に、また輝度−電流効率特性を図18に示す。また、0.1mAの電流を流したときの発光スペクトルを図19に示す。
【0251】
発光素子2の電流密度−輝度特性を図20、電圧−輝度特性を図21に、また輝度−電流効率特性を図22に示す。また、0.1mAの電流を流したときの発光スペクトルを図23に示す。
【0252】
また、発光素子1及び発光素子2の1000cd/m付近における各特性を表2に示す。
【0253】
【表2】

【0254】
以上より、本発明の一態様である発光素子1及び発光素子2は、発光効率の高い青緑から青色のりん光を呈することが可能な発光素子であることがわかる。
【0255】
また、図24に発光素子1と発光素子2のスペクトルを同時に示し、波長範囲を変更した図を示した。図24より特に発光中心物質としてIr(iPrptz−3b)を用いた発光素子1は、スペクトルの幅が狭く長波長側の相対的な強度が小さいことから、良好な青色の発光を呈することがわかる。表2からも、発光素子1はCIE色度座標において(x=0.19、y=0.32)(602cd/m)の良好な色純度の青色発光を呈する発光素子であるということができる。
【0256】
以上の測定結果から、Ir(iPrptz−3b)を発光中心物質として用いた発光素子1はスペクトルがシャープで色純度が高い青色のりん光を呈する発光素子であることがわかった。
【0257】
また、Ir(iPrptz−4b)を発光中心物質として用いた発光素子2は、量子効率15.5%と特に良好な発光効率を示した。このように、Ir(iPrptz−4b)を発光中心物質として用いた発光素子2は発光効率の高い青色のりん光を呈する発光素子であることがわかった。
【0258】
(参考例1)
上記実施例4で用いた2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)の合成方法について具体的に説明する。mDBTBIm−IIの構造を以下に示す。
【0259】
【化43】

【0260】
≪2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)の合成≫
2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)の合成スキームを(f−1)に示す。
【0261】
【化44】

【0262】
2−(3−ブロモフェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール1.2g(3.3mmol)と、ジベンゾチオフェン−4−ボロン酸0.8g(3.3mmol)と、トリ(オルト−トリル)ホスフィン50mg(0.2mmol)を50mLの三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に2.0mmol/L炭酸カリウム水溶液3.3mLと、トルエン12mLと、エタノール4mLを加え、減圧下で攪拌することにより脱気した。この混合物に酢酸パラジウム(II)7.4mg(33μmol)を加え、窒素気流下、80℃で6時間攪拌した。
【0263】
所定時間経過後、得られた混合物の水層をトルエンで抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。この混合物を自然濾過により濾別し、濾液を濃縮して油状物を得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、トルエンを展開溶媒に用いて行った。得られたフラクションを濃縮して油状物を得た。この油状物を高速液体カラムクロマトグラフィーにより精製した。高速液体カラムクロマトグラフィーはクロロホルムを展開溶媒に用いて行った。得られたフラクションを濃縮して油状物を得た。この油状物をトルエンとヘキサンの混合溶媒で再結晶したところ、目的物である淡黄色粉末を収量0.8g、収率51%で得た。
【0264】
得られた淡黄色粉末0.8gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力3.0Pa、アルゴン流量5mL/minの条件で、淡黄色粉末を215℃で加熱して行った。昇華精製後、目的物の白色粉末を収量0.6g、収率82%で得た。
【0265】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)であることがわかった。
【0266】
得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ=7.23−7.60(m,13H)、7.71−7.82(m,3H)、7.90−7.92(m,2H)、8.10−8.17(m,2H)。
【符号の説明】
【0267】
101 基板
102 第1の電極
103 EL層
104 第2の電極
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 発光層
114 電子輸送層
400 基板
401 第1の電極
402 補助電極
403 EL層
404 第2の電極
405 シール材
406 シール材
407 封止基板
408 空間
412 パッド
420 ICチップ
501 第1の電極
502 第2の電極
511 第1の発光ユニット
512 第2の発光ユニット
513 電荷発生層
601 基板
603 第1の電極
607 EL層
608 第2の電極
801 基板
805 シール材
806 封止基板
815 EL層
818 空間
1100 基板
1101 第1の電極
1102 第2の電極
1103 EL層
1111 正孔注入層
1112 正孔輸送層
1113 発光層
1114 電子輸送層
1115 電子注入層
5000 表示
5001 表示
5002 表示
5003 表示
5004 表示
5005 表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体。
【化1】


(式中、R乃至R10は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。)
【請求項2】
一般式(G2)で表される構造を含む有機金属錯体。
【化2】


(式中、R11乃至R20は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。)
【請求項3】
一般式(G3)で表される有機金属錯体。
【化3】


(式中、R乃至R10は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。また、Mが第9族元素のときはn=3であり、Mが第10族元素のときはn=2である。)
【請求項4】
一般式(G4)で表される有機金属錯体。
【化4】


(式中、R11乃至R20は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。また、Mが第9族元素のときはn=3であり、Mが第10族元素のときはn=2である。)
【請求項5】
一般式(G5)で表される有機金属錯体。
【化5】


(式中、R乃至R10は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。)
【請求項6】
一般式(G6)で表される有機金属錯体。
【化6】


(式中、R11乃至R20は、炭素数1乃至4のアルキル基のいずれかを表す。)
【請求項7】
構造式(1)で表される有機金属錯体。
【化7】

【請求項8】
構造式(2)で表される有機金属錯体。
【化8】

【請求項9】
構造式(3)で表される有機金属錯体。
【化9】

【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一に記載の有機金属錯体を含む層を一対の電極間に有する発光素子。
【請求項11】
請求項10において、前記有機金属錯体を含む層は発光層である発光素子。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか一に記載の有機金属錯体を含む第1の発光ユニットと、前記有機金属錯体よりも長波長の発光を呈する発光材料を含む第2の発光ユニットとを一対の電極間に有する発光素子。
【請求項13】
請求項1乃至9のいずれか一に記載の有機金属錯体を含む第1の発光ユニットと、前記有機金属錯体よりも長波長の発光を呈する第1の発光材料を含む第2の発光ユニットと、前記有機金属錯体よりも長波長、かつ前記第1の発光材料よりも短波長の発光を呈する第2の発光材料を含む第3の発光ユニットとを一対の電極間に有する発光素子。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれか一に記載の発光素子を画素部に有する表示装置。
【請求項15】
請求項14に記載の表示装置を表示部に用いた電子機器。
【請求項16】
請求項10乃至13のいずれか一に記載の発光素子を光源として用いた照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−214463(P2012−214463A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−75818(P2012−75818)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】