説明

有機電気光学装置及びその製造方法

本発明は有機発光装置及びその製造方法に関する。方法は、第一基板(200)上に1種以上の第一材料(202)を含有する第一部材(21)を形成し、第二基板(206)上に1種以上の第二材料(208)を含有する第二部材(22)を形成し、第二部材(22)に1以上の開口(216)を貫通形成し、第三部材(23)を形成し、第一部材(21)、第二部材(22)及び第三部材(23)を互いに下記構造に積層する工程を含む。第二部材(22)が第一部材(21)と第三部材(23)との間に位置し、1種以上の第一材料(202)と1種以上の第二材料(208)が第一基板(200)と第二基板(206)との間に位置する有機電気光学装置の少なくとも一部を形成し、第三部材(23)が第二部材(22)に結合され、第三部材(23)が1以上の開口(216)を介して第一部材(21)に結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般に電気光学分野に関し、特に有機電気光学装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電気光学装置には、例えば有機発光装置(OLED)及び有機光電装置がある。OLEDは代表的には、1以上の半導体有機薄膜を2つの電極間に挟んだ構成で、通常電極の一つは透明である。順方向バイアスをかけると、注入された電子と正孔が有機層内で再結合して光を発生する。有機発光装置は、ディスプレイ及び照明工業において大きな可能性をもっている。高輝度、速い応答時間、軽量そして低い電力消費から、OLEDディスプレイは近い将来に液晶ディスプレイ(LCD)に置き換わると予想されている。
【0003】
別のタイプの有機電気光学装置は光電装置である。光電池は代表的には、1対の電極と電極間に配置された光吸収性光電材料を備える。光電材料に光を照射すると、光電材料中で原子に閉じこめられていた電子が光エネルギーにより解放されて自由に動くようになる。こうして自由電子及び正孔が発生する。自由電子及び正孔は効率よく分離されるので、電気エネルギーが連続的に抽出される。有機光電装置は代表的には、OLEDと同様の材料組成及び/又は構造を有するが、反対のエネルギー変換プロセスを実行する。
【0004】
有機発光装置は伝統的には、バッチプロセスにより、ガラスや可撓性プラスチックのような透明なアノード担持基板上に複数の有機薄膜を順次堆積し、次いで薄い金属カソードを形成することにより製造されている。しかし、この製造方法にはいくつもの欠点がある。例えば、有機材料及び/又は金属電極の堆積を容易にするために、代表的には1回以上の真空プロセスが必要である。真空プロセスがあると、基板のロールを連続的に製品のロールに変換できる非常に望ましいロールからロールへのプロセス(R2Rプロセス)のコストが大幅に上昇する。その上、OLEDにおけるカソード金属及び活性材料は空気や水蒸気に敏感で、包装しない状態で放置するとすぐに分解するので、従来技術で作製した装置を不活性ガス環境でカプセル封入することがしばしば必要である。このような余計なパッケージプロセス工程は代表的には時間もコストもかかる。従来の堆積法では、大面積の信頼性の高いOLED製品を製造するのも困難になり得る。真空プロセスであるため、従来の方法で製造したOLED製品のサイズは、通常、高真空装置のサイズで限定される。
【0005】
公知のシステムや方法には、これらのまた他の欠点がある。
【特許文献1】米国特許第5516577号明細書
【特許文献2】米国特許第5965979号明細書
【非特許文献1】Gufeng He, Yongfang Li, Jie Liu and Yang Yang, ”Enhanced Electroluminescence Using Polystyrene as a Matrix,” Applied Physics Letters, Volume 80, Number 22, 3 June 2002, p. 4247−4249
【非特許文献2】Anil R. Duggal, J. J. Shiang, Christian M. Heller, and Donald F. Foust, ”Organic Light−emitting Devices for Illumination Quality White Light,” Applied Physics Letters, Volume 80, Number 19, 13 May 2002, p. 3470−3472
【非特許文献3】Ullrich Mitschke and Peter Bauerle, ”The Electroluminescence of Organic Materials,” J. Mater. Chem., 2000, 10, 1471−1507 (June 6, 2000)
【非特許文献4】G. Parthasarathy, J. Liu and A. R. Duggal, ”Organic Light Emitting Devices From Displays to Lighting,” The Electrochemical Society Interface, Summer 2003, p. 42−47
【非特許文献5】Tzung−Fang Guo, Seugmoon Pyo, Shun−Chi Chang and Yang Yang, ”High Performance Polymer Light−Emitting Diodes Fabricated by a Low Temperature Lamination Process,” Adv. Funct. Mater. 2001, 11, No. 5, October 2001, p. 339−343
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、公知のシステム及び方法の上記その他の欠点を克服した、有機電気光学装置及びその製造方法に関する。なお、以下に有機発光装置及びその製造方法だけを説明するが、本発明の実施形態は、発光装置、光電装置及び光検出器を含むあらゆるタイプの有機電気光学装置に適用できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、本発明は電気光学装置の製造方法を提供し、本方法は、第一基板上に1種以上の第一材料を含有する第一部材を形成し、第二基板上に1種以上の第二材料を含有する第二部材を形成し、第二部材に1以上の開口を貫通形成し、第三部材を形成し、第一部材、第二部材及び第三部材を互いに下記構造に積層する工程を含む。即ち、第二部材が第一部材と第三部材との間に位置し、1種以上の第一材料と1種以上の第二材料が第一基板と第二基板との間に位置する有機電気光学装置の少なくとも一部を形成し、第三部材が第二部材に結合され、第三部材が1以上の開口を介して第一部材に結合される。
【0008】
本発明の別の実施形態によれば、本発明は電気光学装置を提供し、本電気光学装置は、第一基板上に1種以上の第一材料を含有する第一部材、第二基板上に1種以上の第二材料を含有する第二部材であって、1以上の開口が貫通形成されている第二部材、及び第三部材を備え、第一部材、第二部材及び第三部材が互いに下記構造に積層されている。即ち、第二部材が第一部材と第三部材との間に位置し、1種以上の第一材料と1種以上の第二材料が第一基板と第二基板との間に位置する有機電気光学装置の少なくとも一部を形成し、第三部材が第二部材に結合され、第三部材が1以上の開口を介して第一部材に結合されている。
【0009】
本発明の他の実施形態によれば、本発明は電気光学装置を提供し、本電気光学装置は、第一基板上に1種以上の第一材料を含有する第一部材、第二基板上に1種以上の第二材料を含有する第二部材、及び第三部材を備え、第一部材及び第三部材の面積が第二部材より大きく、第一部材、第二部材及び第三部材が互いに下記構造に積層されている。即ち、第三部材が第一部材に第二部材の端縁を越えた位置で結合され、第二部材が第一部材と第三部材との間に位置しかつそれらによりカプセル封入され、1種以上の第一材料と1種以上の第二材料が第一基板と第二基板との間に位置する有機電気光学装置の少なくとも一部を形成する。
【0010】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明は有機発光装置を提供し、本有機発光装置は、1以上の複合材料層を備え、この複合材料層が1種以上の有機発光材料と1種以上の接着材料を混合状態で含有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の十分な理解を容易にするために、以下に添付の図面について言及するが、図面中同様の部材には同一符号を付してある。これらの図面は、本発明を限定すると解釈すべきでなく、本発明の例示に過ぎない。
【0012】
以下、添付図面に示した本発明の種々の実施形態について詳しく説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態にしたがって有機発光装置を製造する方法の1例を示すフローチャートである。図1に関連した以下の説明は、この例示方法の概略を述べる。本発明の種々の実施形態についての詳しい説明は、図2〜6に関連して後で行う。
【0014】
例示方法は工程100から出発する。
【0015】
工程102で、有機発光装置の第一部材を形成する。例えば、第一基板にOLED材料の1以上の層を被覆、設層する。OLED材料は、例えば有機発光材料、電荷輸送材料又は電極材料の1種以上を任意所望の組合せで含有することができる。本発明の一実施形態では、第一基板自身が1種以上のOLED材料を含有してもよい。例えば、基板はインジウム錫酸化物(ITO)又は金属ホイルを含有することができる。第一基板は、薄膜コーティングがあってもなくても、有機発光装置の第一部材を形成する。第一又は第二部材に使用できるエレクトロルミネッセント(EL)材料の例には、共役主鎖を有するオリゴマー及びポリマー、例えばポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフェニレン、ポリチオフェン、ポリキノリン、ポリフルオレン及びこれらの誘導体及び混合物がある。EL材料の第二群として、共役主鎖をもたないオリゴマー及びポリマー、例えばポリ(ビニルカルバゾール)がある。EL材料の第三群として、発色団側鎖付きの非共役主鎖を有するオリゴマー及びポリマー、例えばクォーターフェニレンセグメントを有するポリスチレンがある。EL材料の第四群として、隔離された発色団付きの非共役主鎖を有するオリゴマー及びポリマー、例えばポリ(ジシラニレンオリゴチエニレン)がある。EL材料の第五群として、低分子量半導体材料、主として有機金属錯体、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム及びその誘導体、並びに有機蛍光染料、例えばクマリンがある。上述した材料は単独で用いても、他の材料とのどのような組合せで用いてもよい。
【0016】
工程104で、有機発光装置の第二部材を形成する。第二部材は第二基板を1種以上のOLED材料(上述した通り)で被覆した構成とすることができ、このOLED材料は第一部材のOLED材料とともに、有機発光装置のコア構造を形成する。本発明の一実施形態によれば、第二基板自身が1種以上のOLED材料を含有してもよい。所望の構造に応じて、第一基板及び第二基板の材料タイプ及び特性並びに第一及び第二基板を被覆するOLED材料の材料タイプ及び特性を、工程102より前に決定することができる。また、それに伴って適当な基板製造方法及び被覆方法を選択することができる。
【0017】
本発明の実施形態によれば、第二部材に1以上の開口を貫通形成することができる。開口はエッチング、レーザー穿孔又は当業界で周知の使用可能な技術で形成することができる。開口は、特定の用途に応じて、ホール(孔)、ライン、その他の形状とすることができる。これらの開口の形成は、第二基板上のOLED材料の堆積前でも後でもよい。本発明の一実施形態によれば、開口は第二基板にほぼ垂直にすることができる。第二部材の開口は、接着を増強するか、OLED部材間の電気的相互接続用通路を与えるか、その両方の作用をなす。別の実施形態によれば、開口のパターン、即ち開口の数、形状及び位置は、開口の目的用途に応じて、変えることができる。例えば、開口を一定間隔で並べてグリッドパターンを形成することができる。
【0018】
工程106で、有機発光装置の第三部材を形成する。第三部材は、代表的には、第二部材及び第一部材の材料などの他の材料と強固な機械的結合を形成することができる接着材料の1以上の層で第三基板を被覆した構成である。本発明の一実施形態によれば、接着材料は、熱可塑性フィルム又は他の適当な有機材料、例えばエポキシ、アクリレート、アクリルイミド、イソシアネート、ポリウレタン、メラミンホルムアルデヒド及び不飽和ポリエステルとすることができる。本発明の別の実施形態によれば、導電性接着材料、例えば導電性エポキシを用いてOLED部材及び/又は層間の相互接続を達成することができる。
【0019】
工程108で、有機発光装置の3つの部材を互いに積層してOLED装置を形成する。積層プロセスは、所望に応じて、熱、圧力及び/又は紫外線(UV)を適用することを含む。本発明の一実施形態によれば、市販のローララミネータ、例えばAttalam110L(登録商標、Attalus High Tech Industry S.A.製)を使用することができる。Attalam110Lラミネータは、4つのシリコンローラを有し、温度範囲が室温から160℃まで調節可能である。積層プロセスは、下記のように行う、即ち第二部材が第一及び第三部材の間に位置し、第一及び第二基板上のOLED材料がこれら2つの基板間にOLEDコア構造の少なくとも一部を形成し、第三部材が非開口区域で第二基板に、また開口を通して第一部材に結合されるように積層することができる。3つの部材を1工程で同時に積層しても、3部材のうち2つを積層してから、残りの部材をそれに積層又は他の手段で取り付ける2工程プロセスで積層してもよい。温度及び圧力を適当に設定したローララミネータを用いて前記部材を積層することができる。
【0020】
例示の方法は工程110で終了する。
【0021】
本発明の例示の実施形態には多数の利点がある。例えば、有機発光装置の3つの部材を、真空プロセス有りでも無しでも、予め製造することができ、そして積層プロセスは真空環境を必要としないので、OLED製造プロセスの効率が格段に改良され、したがって関連するコストが少なくなる。また、本発明の実施形態で指摘した製造方法の性質から、多数の層を有する大面積(例えば6インチx6インチ以上)の有機発光装置を実現することができ、この場合、適当なOLED材料の選択により、所望の電気的、光学的及び/又は機械的特性を得ることができる。第二部材の開口は、ガス気泡を捕捉する可能性を軽減し、積層中に有機層間の有機密着を実現するのに役立つ。本発明の実施形態により作製された最終OLED装置において、OLEDコア構造は既に第一及び第二基板により保護されている。したがって、気密シールの要求は、特別なパッケージ工程をとらなくても、既に満たされている。別の利点として、第三部材の構造及び/又は材料を適切に設計することにより、有機発光装置の光抽出効率をさらに高めることができる。例えば、光抽出を高めるために、望ましい粒径の散乱粒子を望ましい充填量で含有するように第三部材の設計と構造を工夫することができる。
【0022】
本発明の実施形態によれば、OLED装置の異なる規格に適合させるために、3つの部材の基板を様々に変えることができる。例えば、第三部材の基板は、OLED装置の発光色を調整又は転換することができる色変換材料の1以上の層を含む設計とすることができる。例えば、第三部材の基板は、蛍光体のような色変換材料を含有することができる。一実施形態によれば、第三部材の基板は、例えば青色光を白色光に変換する、ペリレンオレンジ、ペリレンレッド及び無機蛍光体粒子を含有する下方変換蛍光体系を含有する。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態による有機発光装置及びその製造方法を示す断面図である。図2に、例示の有機発光装置の第一部材21、第二部材22及び第三部材23が示されている。これらの部材を互いに積層してOLED装置24を形成する。
【0024】
本例で、第一部材21は基板200を備え、その上に発光(エミッタ)層204で覆われたカソード層202を有する。カソード層202は1種以上の低仕事関数の金属、例えばマグネシウム(Mg)又はカルシウム(Ca)を含有することができる。発光層204は1種以上の有機発光材料、例えばポリフェニレンビニレン(P−PPV)又はポリフルオレン(PF)を含有することができる。これらの有機材料層は、スピンキャスティング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、ウェッブコーティング、物理蒸着その他当業界で周知の方法などの適当な方法で形成することができる。第二部材22は、基板206、インジウム錫酸化物(ITO)層208及びポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)層210を備える。ITO層208はアノードとして作用し、PEDOT層210は電荷輸送材料として作用する導電ポリマーである。基板206は、例えば透明ガラス又はプラスチックとすることができる。第二部材22に開口216の配列を貫通形成することができる。この特定の例では、開口は、第二部材22にドリル穿孔又はエッチングにより形成した孔として示されている。開口の配向は第二部材22の上面及び下面にほぼ垂直とすることができる。第三部材23は基板212及び接着層214を備える。接着層214は、基板206及び発光層204に実質的な結合を形成できる熱可塑性又は他の有機材料とすることができる。したがって、部材21、22及び23を互いに積層してOLED装置24を形成するとき、接着材料214は図2に示すように、基板206の上面に結合するだけでなく、開口216を貫通して第一部材21の上面、この場合発光層204にも結合を形成することができる。積層の結果、3部材は強固に一体化され、一つの完成品となり、これは大面積に作っても、簡単に層剥離したりばらばらになったりしない。
【0025】
図3は、本発明の別の実施形態による有機発光装置及びその製造方法を示す断面図である。図3に、例示の有機発光装置の第一部材31、第二部材32及び第三部材33が示されている。これらの部材を互いに積層してOLED装置34を形成する。
【0026】
本例で、第一部材31は基板300を備え、その上にPEDOT層304及び発光層306で覆われたITO層(アノード)302を有する。第二部材32は基板308、カソード層310及び発光層312を備える。第二部材32に開口318の配列を貫通形成することができる。第三部材33は基板314及び接着層316を備える。部材31、32及び33を互いに積層してOLED装置34を形成するとき、接着材料316は基板308の上面に結合するとともに、開口318を通して発光層306の上面にも結合することができる。
【0027】
図2及び図3に示すOLED装置は、本発明の種々の実施形態による2つの例にすぎないことが明らかである。OLED材料の選択、そして完成品に形成されるコアOLED構造における層の順序には多数の変更があり得る。実際、同じOLED装置であっても、積層前の3部材におけるOLED材料及び層の順序について多数の選択が可能である。
【0028】
図4は、本発明の他の実施形態による有機発光装置及びその製造方法を示す断面図である。図4に、例示の有機発光装置の第一部材41、第二部材42及び第三部材43が示されている。第二部材42は他の2つの部材より小さい。第一部材41は基板400を備え、その上にPEDOT層404で覆われたITO層(アノード)402を有する。第二部材42は基板408、カソード層410及び発光層412を備える。第二部材42に開口を設けても設けなくてもよい。第三部材43は基板414及び接着層416を備える。部材41、42及び43を互いに積層してOLED装置44を完成するとき、接着材料416は基板408の上面に結合するとともに、第二部材42の端部を越えた位置でPEDOT層404の上面にも結合することができる。第二部材42の寸法が第一部材41及び第三部材43に対して小さいので、第二部材42は積層後に第一部材41と第三部材43との間に封入される。第二部材42の寸法及び所望の接着(結合)強さに応じて、積層前に第二部材42に開口を形成するのが望ましことも、望ましくないこともある。
【0029】
図5は、導電性でもある接着材料を採用することで電気的相互接続を達成する本発明の実施形態によるさらに他の有機発光装置の断面図である。このOLEDは、部材51、52及び53を積層することにより作製する。第一部材51は基板500、これを覆うパターン化ITO層502及びパターン化PEDOT層504を備える。第二部材52は基板506、パターン化カソード層508及び有機発光層510を備える。第三部材53は非導電性基板512及びパターン化導電性エポキシ層514を備える。3つの部材を互いに積層するとき、導電性エポキシ層514は、3つの部材を互いに結合する接着剤として作用するだけでなく、OLED装置の異なる層間の電気的相互接続も達成することができる。3つの部材及び開口は所望の配置の電気的相互接続を達成するように設計することができる。図5に示す例示配置の装置は、直列接続構成を実現する。この構造は、多数の小さなOLEDを直列に接続したものとみなすことができ、適切な電圧バイアス下で、電流が導電性エポキシにより生成された相互接続点を経てある部分から別の部分に流れることができる。
【0030】
相互接続配置の別の例を図7に示す。このOLEDは、部材71、72及び73を積層することにより作製する。第一部材71は基板700、これを覆うITO層702及びPEDOT層704を備える。第二部材72は基板706、パターン化カソード層708及び有機発光層710を備える。第三部材73は導電性基板712及びパターン化導電性エポキシ層714を備える。3つの部材を互いに積層するとき、導電性エポキシ層714は、基板712と第一部材71間の電気的相互接続を達成することができる。一つの用途では、基板712は高導電性金属ホイルから構成し、これをバスラインとして構造化して低導電性ITO/PEDOT二層アノードのシート抵抗を小さくすることができる。その結果、図7に示す構造は、多数の小さなOLEDをバスライン(即ちバスバー)に並列に接続したものとみなすことができる。
【0031】
図5及び図7にそれぞれ例示した直列接続構成及び並列接続構成は、電気的相互接続を配置する際に組み合わせてもよい。他の変更も可能である。さらにエポキシ以外の導電性接着材料も使用できる。
【0032】
本発明の別の実施形態によれば、有機発光装置の活性有機層に1種以上の接着材料を添加するのが望ましいこともある。発光ポリマーを接着材料とブレンドすることの利点は二重になり得る。それは、積層表面同士をより一層密着させるのに役立つ。例えば、発光ポリマー層とPEDOT層の間、又は発光ポリマー層と金属電極層の間の表面接触を強化することができる。その上、発光ポリマーを接着材料とブレンドすることにより、OLEDの効率を高めることもできる。本発明の実施形態によれば、多数の接着剤及びその組合せを使用できる。使用できる接着剤の例には、エポキシ、アクリレート、アクリルイミド、イソシアネート、ポリウレタン、メラミンホルムアルデヒド及び不飽和ポリエステルがある。高い光抽出効率を維持するために、選択する接着材料は発光材料から発光される光に実質的に透明である必要がある。接着剤と有機発光材料との複合材料を製造するには、両者を同じ溶剤又は2つ以上の混和性溶剤の同じ混合物に溶解する。次に、スピンコーティング、スプレーコーティング、浸漬塗布、スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、ローラ塗布などの方法により、複合材料を塗工することができる。紫外線(UV)照射又は約50℃〜約250℃の温度への加熱により接着剤を硬化させることができる。代表的には、複合材料において、発光材料は重量基準でもっとも主要な成分である。
【0033】
図10は、本発明の一実施形態にしたがって1種以上の接着材料を組み入れた有機発光装置の例を示す。このOLEDは基板1000、アノード(ITO)層1002、PEDOT層1004、複合層1006及びカソード層1008を備える。複合層1006は、発光ポリマーADS329と接着材料Norland68とを混合することにより形成することができる。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、接着剤をポリマー層に混入して2つの部材間の界面結合を増加する場合には、第一部材と第二部材だけを積層することによりOLEDを作製することができる。この場合、第三部材は必要ない。
【実施例】
【0035】
実施例1
OLED装置を下記のように製造した。第一部材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板をITO層及びPEDOT層で被覆して構成した。第二部材は、PET基板をITO層及びポリマーブレンドの層で被覆して構成した。ポリマーブレンドは、発光ポリマーADS329(ポリ(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)(American Dye Source社(カナダ国H9X 3T6ケベック州、バイエ・ディ・ウルフェ、モーガン通り555所在)から購入)を、接着材料Norland Optical Adhesive68(略称Norland68)(Norland Products社(米国08512ニュージャージー州クランベリ所在)から購入)とブレンドした。したがって、第一部材はPET/ITO/PEDOTの構造を有し、第二部材はPET/ITO/ポリマーブレンドの構造を有した。次にこれら2つの部材を互いに積層した後、UVを短時間(30秒間)照射した。積層前に、第二部材のみから(ADS329による)ホトルミネセンスが認められた。積層後、積層したフィルムをわざと分離した。今度は両側でホトルミネセンスが見られ、接着が強化されたせいで、第二部材中のADS329が部分的に第一部材中のPEDOTの表面に移動したことが分かった。
【0036】
実施例2
別の実験では、PET/ITO/PEDOT/ポリマーブレンド/Al/PETの構造を有する2つの実効装置を、別々の部材を積層することで作製した。ここで、Alはアルミニウムカソード層、ポリマーブレンドはADS329とNorland68とのブレンドである。第一の装置は、PET/ITO/PEDOT/ポリマーブレンドの構造を有する部材とPET/Alの構造を有する部材とを用いて作製した。第二の装置は、PET/ITO/PEDOTの構造を有する部材とPET/Al/ポリマーブレンドの構造を有する部材とを用いて作製した。ポリマーブレンド層はスピンコートし、積層したフィルムスタックを、空気中で長波長(365nm)UVランプに5分間照射することで、硬化した。両装置とも、機械的特性が高められ、即ちPEDOTと発光ポリマーとの接着並びに発光ポリマーとAlカソードとの接着が強化されていた。
【0037】
実施例3
別の実施例では、発光ポリマーADS329を接着材料Norland68と混合した。空気中室温にて琥珀バイアル中で52mgのADS329を19mgの脱ガスNorland68と混合し、混合物を窒素で40分間パージし、4mlのm−キシレン(無水)を添加し、(撹拌棒でかきまぜながら)溶液を75℃に1時間加熱し、窒素パージしたボックス内で室温まで冷却することにより、ブレンド溶液を調製した。有機発光装置(装置A)を下記の工程により作製した。工程(1):予め清浄化したUVオゾン処理ITO基板上にPEDOTをスピンコートする。工程(2):ITO/PEDOT基板を170℃で30分間ベークし、次いで窒素パージしたボックス内で室温まで冷却する。工程(3):ITO/PEDOT基板上に先に調製したブレンド溶液をスピンコートし、次いで長波長(365nm)UVランプで30秒間照射により部分的に硬化する。工程(4):サンプルをアルゴンパージしたボックス(水分及び酸素1ppm未満)に移す。工程(5):カソード材料、即ちNaF(4nm)/Al(100nm)を加熱蒸発しサンプル上に堆積する。工程(6):サンプルをカバーガラス片でNorland68を用いて封止する。発光ポリマーを用いるが、接着剤を用いずに、同様の装置(装置B)を作製した。
【0038】
これら2つの装置の性能を、電流−電圧−輝度測定にて調べた。結果を図6にプロットした。図6において、曲線61は装置Aの装置効率を示し、曲線62は装置Bの装置効率を示す。図示のように、装置Aは効率が装置Bよりはるかに高い。
【0039】
実施例4
図8は、本発明の実施形態による有機発光装置の1例を示す。このOLEDは3つの部材81、82及び83を積層することにより作製した。第一部材81は、予め清浄化したUVオゾン処理PET(800)/ITO(802)基板上に厚さ約60nmのPEDOT層804をスピンコートすることにより製造した。したがって、第一部材81はPET/ITO/PEDOTの構造を有する。第二部材82は、PET基板808上に厚さ80nmのAl層810を熱蒸着し、次いで基板に厚さ約80nmのポリフルオレン系発光ポリマー812をスピンコートすることにより製造した。したがって、第二部材82はPET/Al/発光ポリマーの構造を有する。第三部材83は、LS851自己積層カード保護膜814(3M社製)を納品のまま何の処理もしないで使用した。Attalam110L(登録商標)ローララミネータを用いて、3つの部材を130℃で積層した。完成したOLEDはPET/ITO/PEDOT/発光ポリマー/Al/PET/カード保護膜(3M社製)の構造を有する。定電圧(9V)を電気接点816及び818間にかけて測定した装置の効率は0.14cd/Aであった。比較実験では、上記手順にて、第三部材83なしの装置を作成した。この装置は層剥離のため機能しないことが分かった。これは、第一部材と第二部材との間の界面接着が弱いことを示す。
【0040】
図9は、本発明の実施形態による有機発光装置の別の例を示す。このOLEDは3つの部材91、92及び93を積層することにより作製した。第一部材91は、予め清浄化したUVオゾン処理ガラス(900)/ITO(902)基板上に厚さ約60nmのPEDOT層904をスピンコートすることにより製造した。したがって、第一部材91はガラス/ITO/PEDOTの構造を有する。第二部材92は、PET基板908上に厚さ80nmのAl層910を熱蒸発により堆積し、次いで厚さ約80nmのポリフルオレン系発光ポリマー912をスピンコートし、固定パンチを用いて部材92に1つの貫通孔906を形成することにより製造した。したがって、第二部材92は孔が貫通したPET/Al/発光ポリマーの構造を有する。第三部材93は、予め清浄化したカバーガラス916上にNorland68接着剤914を塗工することにより製造した。したがって、第三部材93はガラス/Norland68の構造を有する。3つの部材を150℃のホットプレート上で積層した。完成したOLEDはPET/ITO/PEDOT/発光ポリマー/Al/Norland68/ガラスの構造を有する。電気接点918及び920間にDC電圧をかけてOLEDを試験した。この装置からの発光は印加電圧に応答してオン/オフできた。
【0041】
以上の説明では多数の細部や特定の値を示したが、これらは説明の目的で入れただけであり、本発明を限定するものと解すべきではない。当業者に明らかなように、上に記載した実施形態に、本発明の要旨から逸脱することなく、上記以外の変更を加えることができる。したがって、そのような変更も特許請求の範囲及びその均等物に規定された本発明の要旨の範囲内に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態にしたがって有機発光装置を製造する方法の1例を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態による有機発光装置及びその製造方法の断面図である。
【図3】本発明の実施形態による別の有機発光装置及びその製造方法の断面図である。
【図4】本発明の実施形態による他の有機発光装置及びその製造方法の断面図である。
【図5】本発明の実施形態によるさらに他の有機発光装置の断面図である。
【図6】本発明の実施形態による2つの有機発光装置の性能を比較して示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態による有機発光装置の断面図である。
【図8】本発明の実施形態による別の有機発光装置の断面図である。
【図9】本発明の実施形態による他の有機発光装置の断面図である。
【図10】本発明の実施形態によるさらに他の有機発光装置の断面図である。
【符号の説明】
【0043】
21 第一部材
200 基板
202 カソード層
204 発光層
22 第二部材
206 基板
208 ITO層
210 PEDOT層
216 開口
23 第三部材
212 基板
214 接着材料
24 OLED装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板(200)上に1種以上の第一材料(202)を含有する第一部材(21)を形成し、
第二基板(206)上に1種以上の第二材料(208)を含有する第二部材(22)を形成し、第二部材(22)に1以上の開口(216)を貫通形成し、
第三部材(23)を形成し、
第一部材(21)、第二部材(22)及び第三部材(23)を互いに下記構造に積層する工程を含み、
第二部材(22)が第一部材(21)と第三部材(23)との間に位置し、
1種以上の第一材料(202)と1種以上の第二材料(208)が第一基板(200)と第二基板(206)との間に位置する有機電気光学装置の少なくとも一部を形成し、
第三部材(23)が第二部材(22)に結合され、
第三部材(23)が1以上の開口(216)を介して第一部材(21)に結合される、
電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記第三部材(23)は、第一部材(21)、第二部材(22)及び第三部材(23)間に1以上の開口(216)を介して電気相互接続を達成する1種以上の導電性材料を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第三部材(23)は、有機発光装置の1以上の発光色を変換できる1種以上の色変換材料を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第一部材(21)又は第二部材(22)は、1種以上の有機発光材料と1種以上の接着材料を混合状態で含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第一基板(200)上に1種以上の第一材料(202)を含有する第一部材(21)、
第二基板(206)上に1種以上の第二材料(208)を含有する第二部材(22)であって、1以上の開口(216)が貫通形成されている第二部材(22)、及び
第三部材(23)を備え、
第一部材(21)、第二部材(22)及び第三部材(23)が互いに下記構造に積層され、
第二部材(22)が第一部材(21)と第三部材(23)との間に位置し、
1種以上の第一材料(202)と1種以上の第二材料(208)が第一基板(200)と第二基板(206)との間に位置する有機電気光学装置の少なくとも一部を形成し、
第三部材(23)が第二部材(22)に結合され、
第三部材(23)が1以上の開口(216)を介して第一部材(21)に結合された、
電気光学装置。
【請求項6】
前記第三部材(23)は、第一部材(21)、第二部材(22)及び第三部材(23)間に1以上の開口(216)を介して電気相互接続を達成する1種以上の導電性材料を含有する、請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記第三部材(23)は、有機発光装置の1以上の発光色を変換できる1種以上の色変換材料を含有する、請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記第一部材(21)又は第二部材(22)は、1種以上の有機発光材料と1種以上の接着材料を混合状態で含有する、請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項9】
1種以上の有機発光材料と1種以上の接着材料を混合することにより1種以上の複合材料を形成し、
前記1種以上の複合材料を有機発光装置の層(1006)として用いることにより有機発光装置を形成する
工程を含む、有機発光装置の製造方法。
【請求項10】
1以上の複合材料層(1006)を備え、複合材料層(1006)が1種以上の有機発光材料と1種以上の接着材料を混合状態で含有する、有機発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−510280(P2007−510280A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538223(P2006−538223)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/035683
【国際公開番号】WO2005/045950
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】