説明

有機電界発光ディスプレイ及びその製造方法

【課題】正孔輸送層を選択的にUV表面処理を施し、インクジェット方式の発光層を形成する際、印刷品質を向上することができるのみならず、画素間のリーク電流を低減することができる有機電界発光ディスプレイ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板200上に下部電極240を形成するステップと;前記下部電極240の一部分を露出させる開口部255を具備した絶縁膜230を成膜するステップと;基板200の全面に有機薄膜層を形成するステップと;前記有機薄膜層を選択的に表面処理を施すステップと;前記有機薄膜層の表面処理を施していない部分261に発光層270を形成するステップ;及び基板200の全面に上部電極280を形成するステップと;を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光ディスプレイに関し、より詳しくは、正孔輸送層を選択的に表面処理を施すことで隣接する画素間のリーク電流を抑え、発光層のインクジェットの印刷品質を向上することができる高分子有機電界発光ディスプレイ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の有機電界発光ディスプレイの断面構造を示す図であって、1つの画素に限定して示すものである。同図に示すように、絶縁基板400上にバッファ層410を形成し、バッファ層上に通常の方法で活性層に形成されたソース/ドレイン領域421、423と、ゲート425、及び前記ソース/ドレイン領域421、423と電気的に接続されるソース/ドレイン電極427、429とを具備した薄膜トランジスタ420を形成する。
【0003】
前記薄膜トランジスタ420が形成されたバッファ層410上に絶縁膜430を成膜した後、前記ソース/ドレイン電極427、429のいずれか、例えば、ドレイン電極429を露出させるビアホール435を形成する。
【0004】
前記絶縁膜430上に前記ビアホール435を介して前記ドレイン電極429と接続される下部電極440を形成する。基板の全面に平坦化膜450を蒸着した後、パターニングして前記下部電極440を露出させる開口部455を形成する。
【0005】
次いで、基板の全面にPEDOTまたはPANIなどのような有機材料をスピンコーティングして正孔輸送層(HTL、hole transport layer:ホール輸送層)460を形成し、前記開口部455の正孔輸送層460上にインクジェット方式で発光層470を形成し、基板の全面にかけて上部電極480を形成する。
【0006】
通常、有機電界発光ディスプレイの発光層に高分子有機材料が使用される場合は、インクジェット方式またはレーザー転写法(LITI)を用いて発光層を形成する。
【0007】
インクジェット方式は、EL(Electro−Luminescence)材料、例えば、高分子有機EL材料を含む溶液が入れられたヘッドが基板と一定間隔を隔てて配列された状態で、溶液がヘッドから基板に高速噴射されて下部電極上に発光層を形成する方式である。
【0008】
有機電界発光ディスプレイでは、各画素毎にR、G、B発光層が互いに独立して形成する必要があるが、インクジェット方式の場合、ヘッドからの噴射された高分子有機材料を含む溶液が隣接する画素に拡散するという不具合があった。
【0009】
かかる問題点を解決するために、各画素毎に下部電極のエッジ部分を取り囲むように絶縁材料でなるバンク層(bank layer)を形成した後、発光層を形成する方法が、韓国特許出願番号10−1999−7010647号に提示されている。かかるバンク層を用いてインクジェット方式で発光層を形成する方法では、バンク層により高分子有機材料を含む溶液が隣接する他の画素に拡散することを抑え、当該画素の下部電極の上部のみに提供することにより、発光層を各画素毎に独立して形成することを可能にした。
【特許文献1】韓国特許出願番号10−1999−7010647号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記バンク層を用いるインクジェット方式の場合でも、バンク層を形成した後、基板の全面にかけて正孔輸送層が形成されるため、基板上のすべての画素に正孔輸送層の表面特性が保持され、その結果、バンク層を越えて高分子有機材料を含む溶液が拡散し、印刷品質を劣化するという不具合があった。
【0011】
また、従来の有機電界発光ディスプレイでは、伝導性を有する正孔輸送層460が下部電極440と発光層470との間に形成され、下部電極440から発光層470への正孔の注入効率を向上し、発光効率を向上することができた。しかし、伝導性を有する正孔輸送層が基板の全面にかけて形成されるため、伝導性の正孔輸送層460と下部電極440との間をリーク電流が流れ、隣接する画素のオフされた画素でも発光するという不具合があった。
【0012】
一方、前記のように隔壁を使用して有機発光層が形成される画素領域を定義する方法は、画素電極のエッジ部分を取り囲むように厚い隔壁を形成する必要があるため、更なる隔壁を形成するためのプロセスが求められ、厚い隔壁による段差により後続のカソード電極と有機発光層間の接着不良が発生するという不具合があった。
【0013】
そこで、本発明は、前記のような従来の技術の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、発光層の印刷品質を向上し、リーク電流が抑えられる有機電界発光ディスプレイ及びその製造方法を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、正孔輸送層の発光領域以外の部分にUVを照射して抵抗値を変化させることによりリーク電流が抑えられる有機電界発光ディスプレイを提供することである。
【0015】
本発明のまた他の目的は、正孔輸送層の発光領域以外の部分にUVを照射して表面特性を変化させることにより、隣接する画素に有機材料を含む溶液が拡散することを抑え、発光層の印刷品質を向上することができる有機電界発光ディスプレイの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記のような目的を達成するために、本発明は、基板上に下部電極を形成するステップと;前記下部電極の一部分を露出させる開口部を具備した絶縁膜を成膜するステップと;基板の全面に有機薄膜層を形成するステップと;前記有機薄膜層を選択的に表面処理を施すステップと;前記有機薄膜層の表面処理を施していない部分に発光層を形成するステップ;及び基板の全面に上部電極を形成するステップと;を含む有機電界発光ディスプレイの製造方法を提供することを特徴とする。前記有機薄膜層の下部電極に対応する部分をマスキングした状態でUVを照射し、前記有機薄膜層を選択的に表面処理を施すことを特徴とする。前記発光層をインクジェット方式で形成し、インクジェット方式で発光層を形成する際、前記有機薄膜層の表面処理を施した部分が、発光層のためのインクが前記開口部のみに限定されるようにするバンク層としての役割を果たし、有機薄膜層の表面処理を施した部分が、非導電状態になり、下部電極とのリーク電流を抑える役割を果たすことを特徴とする。前記絶縁膜が、平坦化用絶縁膜、またはその上部にバンク層を具備した平坦化用絶縁膜からなり、有機薄膜層が、PEDOTまたはPENIなどのようなホール輸送層からなることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、基板上に順次に形成された下部電極と、ホール輸送層と、発光層、及び上部電極と、を含み、前記ホール輸送層における前記下部電極に対応する部分がその他の部分と相違する表面特性と抵抗値を有する有機電界発光ディスプレイを提供することを特徴とする。また、基板上に形成された下部電極と;前記下部電極の一部分が露出するように基板上に成膜された絶縁膜と;前記露出した下部電極と絶縁膜上に形成された有機薄膜層と;前記下部電極に対応する部分に形成された発光層;及び基板の全面に形成された上部電極と;を含み、前記有機薄膜層の発光層の下部の部分が、その他の部分と相違する表面特性を有する有機電界発光ディスプレイを提供することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によると、正孔輸送層の各画素の発光領域以外の部分にUVを照射して表面処理を施すことにより、インクジェット方式で発光層を形成する際、印刷品質を向上することができるのみならず、UVが照射された部分の抵抗値を増大し、隣接する画素間のリーク電流を抑えることができるという長所がある。以下では、本発明の好適な実施の形態を参照して説明するが、当該技術分野の熟練した当業者であれば、添付した特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を様々に修正及び変更可能であることが理解できるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態を、添付図面を参照して詳しく説明する。図1乃至図3は、本発明の好適な実施の形態にかかるアクティブマトリクス有機電界発光ディスプレイの製造方法を説明するための断面構造を示す図である。
【0020】
図1に示すように、絶縁基板200上にバッファ層210を形成し、前記バッファ層210上に薄膜トランジスタ220を形成する。前記薄膜トランジスタ220は、活性層に形成されたソース/ドレイン領域221、223と、ゲート225、及び前記ソース/ドレイン領域221、223と電気的に接続されるソース/ドレイン電極227、229とを具備する。
【0021】
前記薄膜トランジスタ220が形成されたバッファ層210上に絶縁膜230を成膜し、前記絶縁膜230をエッチングして前記ソース/ドレイン電極227、229のいずれか、例えば、ドレイン電極229を露出させるビアホール235を形成する。ここで、絶縁膜230は平坦化用絶縁膜からなる。前記絶縁膜230上に前記ビアホール235を介して前記ドレイン電極229と接続される下部電極240を形成する。
【0022】
基板の全面にアクリルのような平坦化材料をスピンコーティングして平坦化膜250を成膜し、前記下部電極240の一部分が露出するように前記平坦化膜250をエッチングして開口部255を形成する。前記開口部255を含む基板の全面にPEDOTまたはPANIのような伝導性高分子材料をスピンコーティングして正孔輸送層(ホール輸送層)260を形成する。
【0023】
図2に示すように、前記正孔輸送層260に選択的にUV(紫外線)310を照射して表面処理を施す(正孔輸送層260のうちUV(紫外線)310を照射して表面処理を施す部分と、照射されない部分とがある)。即ち、マスク300を用いて前記正孔輸送層260の前記下部電極240に対応する部分、即ち、各画素の発光領域に対応する部分をマスキングした状態で、正孔輸送層260にUV310を照射することにより、正孔輸送層260を選択的に表面処理を施す。
【0024】
この際、UVが照射され表面処理が施された部分265、即ち、各画素の非発光領域は疎水性を呈し、UVが照射されていない部分、即ち、発光領域は、親水性を呈する。従って、UVが照射されて表面処理が施された部分265は、UVが照射されていない部分とは相違する表面特性を有するのみならず、相対的に大きい抵抗値を有するようになり、非導電状態になる。
【0025】
図3に示すように、前記正孔輸送層260上にインクジェット方式で発光層270を形成する。なお、前記正孔輸送層260は、非発光領域に対応する部分265がUV表面処理され、前記下部電極240上部の発光領域に対応する部分261とは相違する表面特性(UVの照射の有無により生じる表面特性)を有するため、ヘッドから正孔輸送層260に噴射された高分子有機材料を含む溶液が隣り合う画素に拡散することを抑えるようになる。この結果、前記発光層270は、隣接する画素に影響を及ぼすことなく、当該画素の下部電極240の上部のみに形成される。
【0026】
また、前記正孔輸送層260の発光領域に対応する部分261は、導電状態をそのまま保持するため、下部電極240から有機発光層270への正孔注入効率を向上し、発光効率を向上する。そして、前記正孔輸送層260の発光領域に対応する部分261を除く部分265は、UV表面処理により非導電状態になるため、正孔輸送層260と下部電極240との間のリーク電流の流れが抑えられる。
【0027】
本発明のUV表面処理を用いた有機電界発光ディスプレイの製造方法は、アクティブマトリクス型及びパッシブマトリクス型ディスプレイ、並びに全面発光型及び背面発光型ディスプレイのいずれにも適用可能であるのみならず、インクジェット方式を用いるフラットパネルディスプレイの製造方法にも適用可能である。
【0028】
本発明の実施の形態では、平坦化膜上に正孔輸送層を形成してUV表面処理を施す方法について開示したが、前記平坦化膜250上にバンク層を形成した後、正孔輸送層を形成し、UV表面処理を施して有機電界発光ディスプレイを製造する方法にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態にかかるUV表面処理を用いた有機電界発光ディスプレイの製造方法を説明するための断面構造を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかるUV表面処理を用いた有機電界発光ディスプレイの製造方法を説明するための断面構造を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかるUV表面処理を用いた有機電界発光ディスプレイの製造方法を説明するための断面構造を示す図である。
【図4】従来の有機電界発光ディスプレイの断面構造を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
200 絶縁基板
210 バッファ層
220 薄膜トランジスタ
221 ソース領域
223 ドレイン領域
225 ゲート
235 ビアホール
227 ソース電極
229 ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に下部電極を形成するステップと、
前記下部電極の一部分を露出させる開口部を具備した絶縁膜を成膜するステップと、
基板の全面に有機薄膜層を形成するステップと、
前記有機薄膜層を選択的に表面処理を施すステップと、
前記有機薄膜層の表面処理を施していない部分に発光層を形成するステップと、
基板の全面に上部電極を形成するステップと、
を有することを特徴とする有機電界発光ディスプレイの製造方法。
【請求項2】
前記有機薄膜層の下部電極に対応する部分をマスキングした状態でUVを照射し、前記有機薄膜層を選択的に表面処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光ディスプレイの製造方法。
【請求項3】
前記発光層を、インクジェット方式で形成することを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光ディスプレイの製造方法。
【請求項4】
前記インクジェット方式で発光層を形成する際、前記有機薄膜層の表面処理を施した部分が、発光層のためのインクが前記開口部のみに限定されるようにするバンク層としての役割を果たすことを特徴とする請求項3に記載の有機電界発光ディスプレイの製造方法。
【請求項5】
前記絶縁膜が、平坦化用絶縁膜からなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光ディスプレイの製造方法。
【請求項6】
前記絶縁膜が、当該絶縁膜の上部にバンク層を具備した平坦化用絶縁膜からなることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光ディスプレイの製造方法。
【請求項7】
前記有機薄膜層が、ホール輸送層であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光ディスプレイの製造方法。
【請求項8】
前記ホール輸送層が、PEDOTまたはPENIなどからなることを特徴とする請求項7に記載の有機電界発光ディスプレイの製造方法。
【請求項9】
前記有機薄膜層の表面処理を施した部分が、非導電状態になり、下部電極とのリーク電流を抑える役割を果たすことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光ディスプレイの製造方法。
【請求項10】
基板上に順次に形成された下部電極、ホール輸送層、発光層、及び上部電極を含み、
前記ホール輸送層における前記下部電極に対応する部分がその他の部分と相違する表面特性と抵抗値を有することを特徴とする有機電界発光ディスプレイ。
【請求項11】
基板上に形成された下部電極と、
前記下部電極の一部分が露出するように基板上に成膜された絶縁膜と、
前記露出した下部電極と絶縁膜上に形成された有機薄膜層と、
前記下部電極に対応する部分に形成された発光層と、
基板の全面に形成された上部電極とを含み、
前記有機薄膜層の発光層の下部の部分が、その他の部分と相違する表面特性を有することを特徴とする有機電界発光ディスプレイ。
【請求項12】
前記有機薄膜層が、ホール輸送層であることを特徴とする請求項11に記載の有機電界発光ディスプレイ。
【請求項13】
前記ホール輸送層が、PEDOTまたはPENIなどからなることを特徴とする請求項12に記載の有機電界発光ディスプレイ。
【請求項14】
前記絶縁膜が、平坦化膜であることを特徴とする請求項11に記載の有機電界発光ディスプレイ。
【請求項15】
前記絶縁膜が、当該絶縁層の上部にバンク層を具備する平坦化膜であることを特徴とする請求項11に記載の有機電界発光ディスプレイ。
【請求項16】
前記有機薄膜層の発光層の下部の部分がUV処理を施した部分であってその他の部分より大きい抵抗値を有し、前記有機薄膜層と下部電極との間のリーク電流を抑える役割を果たすことを特徴とする請求項11に記載の有機電界発光ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−112747(P2008−112747A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24129(P2008−24129)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【分割の表示】特願2003−292943(P2003−292943)の分割
【原出願日】平成15年8月13日(2003.8.13)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】