説明

有機電界発光素子、表示媒体

【課題】素子寿命が長い有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】有機化合物層の少なくとも1層が、特定の構造の酸素を有する置換基を有するビスジアリール芳香族ジアミンの電荷輸送性化合物の少なくとも1種と、3個以下のアルキル基置換ベンゼン及びホルムアルデヒドの反応体である芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂、との反応体からなる電荷輸送性高分子を含有する有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子、表示媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
表示素子、バックライト、照明光源、電子写真用露光装置、標識、看板等の分野では、電気エネルギーを光に変換して発光する素子として電界発光素子が知られている。電界発光素子は、広く応用が期待されている。
【0003】
電界発光素子は、発光材料の種類によって無機電界発光素子と有機電界発光素子とに大別される。このうち、有機電界発光素子は、有機色素等の発光材料を含む発光層を備えるもので、陰極から電子が、陽極から正孔がそれぞれ発光層に注入されることにより、発光層中の発光材料が高いエネルギー準位に励起され、励起された発光材料が基底状態に戻る際の余分なエネルギーを光として放出する現象を利用したものである。
【0004】
例えば、非特許文献1では、蒸着法による発光層の薄膜化が試みられている。
また、例えば、特許文献1及び非特許文献2では、機能分離型の有機電界発光素子が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−194393号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Thin Solid Films,94,171(1982)
【非特許文献2】Appl.Phys.Lett.,51,913(1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、一般式(I)で表される電荷輸送性化合物の少なくとも1種と、一般式(II)で表される芳香族炭化水素及びホルムアルデヒドの反応体である芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と、を反応させて得る電荷輸送性高分子を適用しない場合に比べ、素子寿命が長い有機電界発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、
請求項1に係る発明は、
少なくとも一方が透明又は半透明である陽極及び陰極よりなる一対の電極と、
前記一対の電極間に挟まれた1つ以上の層で構成される有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層を構成する少なくとも1層が、下記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物の少なくとも1種と、下記一般式(II)で表される芳香族炭化水素及びホルムアルデヒドの反応体である芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と、の反応体からなる電荷輸送性高分子を含有する有機電界発光素子。
【0009】
【化1】

【0010】
〔一般式(I)中、Ar、Ar、Ar及びArは各々独立に置換又は未置換のアリール基を表し、Arは置換又は未置換のアリール基又は置換又は未置換のアリーレン基を表し、c1、c2、c3、c4及びc5は各々独立に0又は1を表し、kは0又は1を表し、Dは各々独立に、下記一般式(I−A)で表される1価の有機基を表し、c1、c2、c3、c4及びc5の総数は2以上4以下である。〕
【0011】
【化2】

【0012】
〔一般式(I−A)中、Rは水素原子、又は1価の有機基を表し、Lはアルキレン基を表す。〕
【0013】
【化3】

【0014】
〔一般式(II)中、R11は炭素数1以上6以下のアルキル基を表し、a1は0以上3以下の整数を表し、a1が2又は3のとき、R11はそれぞれ同一であっても異なってもよい。〕
【0015】
請求項2に係る発明は、
前記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物が、下記一般式(III)で表される化合物である請求項1に記載の有機電界発光素子。
【0016】
【化4】

【0017】
〔一般式(III)中、X、X及びXは各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数1以上10以下のアルコキシル基、置換若しくは未置換のアリール基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、置換若しくは未置換のスチリル基、置換若しくは未置換のブタジエン基、又は置換若しくは未置換のヒドラゾン基を表し、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1以上18以下の1価の有機基を表し、L、L及びLは各々独立にアルキレン基を表し、p1、p2及びp3は各々独立に、0以上2以下の整数を表し、q1、q2及びq3は各々独立に、0又は1を表し、(q1+q2+q3)≧2の条件を満たす。〕
【0018】
請求項3に係る発明は、
前記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物が、下記一般式(IV)で表される化合物である請求項1に記載の有機電界発光素子。
【0019】
【化5】

【0020】
〔一般式(IV)中、X、X、X、X、X及びXは各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数1以上10以下のアルコキシル基、置換若しくは未置換のアリール基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、置換若しくは未置換のスチリル基、置換若しくは未置換のブタジエン基、又は置換若しくは未置換のヒドラゾン基を表し、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1以上18以下の1価の有機基を表し、L、L、L及びLは各々独立にアルキレン基を表し、p1、p2、p3、p4、p5及びp6は各々独立に、0以上2以下の整数を表し、q1、q2、q3及びq4は各々独立に、0又は1を表し、(q1+q2+q3+q4)≧2の条件を満たす。〕
【0021】
請求項4に係る発明は、
前記一般式(III)において、X、X及びXの少なくとも一つが、置換若しくは未置換のアリール基、又は炭素数7以上10以下のアラルキル基である請求項2に記載の有機電界発光素子。
【0022】
請求項5に係る発明は、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子と、
前記有機電界発光素子を駆動する駆動手段と、
を備えることを特徴とする表示媒体。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明によれば、一般式(I)で表される電荷輸送性化合物の少なくとも1種と、一般式(II)で表される芳香族炭化水素及びホルムアルデヒドの反応体である芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と、の反応体からなる電荷輸送性高分子を適用しない場合に比べ、素子寿命が長い有機電界発光素子が提供される。
請求項2及び3に係る発明によれば、一般式(I)で表される電荷輸送性化合物として、一般式(III)で表される化合物、又は一般式(IV)で表される化合物を適用しない場合に比べ、高い輝度が得られる有機電界発光素子が提供される。
請求項4に係る発明によれば、一般式(III)で表される化合物において、X、X及びXの少なくとも一つがアリール基又はアラルキル基でない場合に比べ、高い輝度が得られる有機電界発光素子が提供される。
請求項5に係る発明によれば、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を適用しない場合に比べ、表示抜けが抑制された表示媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係る表示媒体を示した概略構成図である。
【図2】他の本実施形態に係る表示媒体を示した概略構成図である。
【図3】他の本実施形態に係る表示媒体を示した概略構成図である。
【図4】他の本実施形態に係る表示媒体を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
【0026】
(有機電界発光素子)
本実施形態に係る有機電界発光素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である陽極及び陰極よりなる一対の電極と、前記一対の電極間に挟まれた1つ以上の層で構成される有機化合物層と、を有する。前記有機化合物層を構成する少なくとも1層は、特定の電荷輸送性高分子を含有する。そして、特定の電荷輸送性高分子は、下記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物の少なくとも1種と、下記一般式(II)で表される芳香族炭化水素及びホルムアルデヒドの反応体である芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と、との反応体からなる電荷輸送性高分子である。
【0027】
本実施形態に係る有機電界発光素子では、有機化合物層を構成する少なくとも1層に、特定の電荷輸送性高分子を含ませることで、素子寿命が長くなる。そして、当該本実施形態に係る有機電界発光素子を、表示媒体に適用することで、表示抜けが抑制される。
【0028】
ここで、オイル状態が一般的な芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と、電荷輸送能が高い一般式(I)で表される電荷輸送性化合物と、を反応させた特定の電荷輸送性高分子を用いて、有機化合物層の少なくとも一層を構成させると、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂部分による他の層への密着性および成膜性の向上と、一般式(I)で表される電荷輸送性化合物による電気特性の向上の両立が図れると考えられる。
その結果、発光時の安定性及び保存安定性が向上し、繰り返し駆動しても高い発光強度が得られると考えられる。
【0029】
なお、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と、一般式(I)で表される電荷輸送性化合物と、を反応させずに別々に混合した混合物では、相分離を起こすなど層として形成され難く、層を構成したとしても、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂による膜の強度低下や、一般式(I)で表される電荷輸送性化合物の膜内部での部分結晶化による膜欠陥、および密着性の低下が見られ、密着性や成膜性、電気特性の向上など、全てを両立することは図り難い。
【0030】
以上から、本実施形態に係る有機電界発光素子では、素子寿命が長くなると考えられる。また、本実施形態に係る有機電界発光素子では、高い輝度も得られると考えられる。
【0031】
更なる副次的な効果として、オイル状の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂に、一般式(I)で表される電荷輸送性化合物を反応させると、得られた化合物ではベタつきが抑えられて取り扱い性に優れるものとなり、膜の維持性も向上する。
【0032】
以下、特定の電荷輸送性高分子について説明する。
特定の電荷輸送性高分子は、下記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物の少なくとも1種と、下記一般式(II)で表される芳香族炭化水素及びホルムアルデヒドの反応体である芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と、を反応させて得る電荷輸送性高分子である。
【0033】
まず、下記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物について説明する。
【0034】
【化6】

【0035】
一般式(I)中、Ar、Ar、Ar及びArは各々独立に置換又は未置換のアリール基を表す。
Arは置換又は未置換のアリール基又は置換又は未置換のアリーレン基を表す。
c1、c2、c3、c4及びc5は各々独立に0又は1を表す。
kは0又は1を表す。
Dは各々独立に、下記一般式(I−A)で表される1価の有機基を表す。
c1、c2、c3、c4及びc5の総数は2以上4以下である。
【0036】
【化7】

【0037】
一般式(I−A)中、Rは水素原子、又は1価の有機基を表し、Lはアルキレン基を表す。
【0038】
ここで、上記一般式(I−A)中、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、水素原子、又は炭素数1以上18以下の1価の有機基であることが望ましく、水素原子又は炭素数1以上18以下の1価の脂肪族炭化水素基であることがより望ましく、水素原子又はアルキル基であることが更に望ましく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基であることが更に望ましい。
【0039】
また、上記一般式(I−A)中、Lは枝分かれしてもよい炭素数1以上18以下のアルキレン基であることが望ましく、電荷輸送性高分子を合成する際の反応性の高さの観点からメチレン基であることがより望ましい。なお、上記一般式(I)において、R又はLが複数存在する場合、それぞれは同一でも異なっていてもよい。
【0040】
また、上記一般式(I)中のAr、Ar、Ar及びArで示される置換若しくは未置換のアリール基としては、下記式(1)乃至(7)で表されるアリール基が望ましい。
【0041】
【化8】



【0042】
上記式(1)中、R69は水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、それらで置換されたフェニル基若しくは未置換のフェニル基、又は炭素数7以上10以下のアラルキル基を表す。
上記式(2)、(3)中、R70乃至R72は各々独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、それらで置換されたフェニル基若しくは未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基又はハロゲン原子を表す。
上記式(7)中、Arは、置換又は未置換のアリーレン基を表す。
上記式(1)乃至(7)中、Dは、上記一般式(I−A)で表される1値の有機基を表す。
上記式(1)乃至(7)中、cは、上記一般式(I)におけるc1、c2、c3又はc4に対応するものであり、0又は1を表す。
上記式(7)中、sは0又は1を表す。
上記式(3)中、tは1以上3以下の整数を表す。
【0043】
また、上記式(7)で表されるアリール基におけるArとしては、下記式(8)又は(9)で表されるアリーレン基が望ましい。
【0044】
【化9】



【0045】
上記式(8)及び(9)中、R73及びR74は、各々独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、又は未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、又はハロゲン原子を表す。
上記式(8)及び(9)中、tは各々独立に、1以上3以下の整数を表す。
【0046】
また、上記式(7)で表されるアリール基におけるZ’としては、下記式(10)乃至(17)で表される2価の基が望ましい。
【0047】
【化10】



【0048】
上記式(16),(17)中、R75及びR76は各々独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、又は未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、又はハロゲン原子を表す。
上記式(16),(17)中、Wは2価の基を表す。
上記式(10),(11)中、v及びwはそれぞれ1以上10以下の整数を表す。
上記式(16),(17)中、tはそれぞれ1以上3以下の整数を表す。
【0049】
また、上記式(16)乃至(17)中、Wは下記式(18)乃至(26)で表される2価の基であることが望ましい。なお、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
【0050】
【化11】



【0051】
また、上記一般式(I)におけるArの具体的構造としては、kが0のときは上記Ar乃至Arの具体的構造として例示したアリール基であり、kが1のときは上記Ar乃至Arの具体的構造として例示したアリール基から特定の水素原子を除いたアリーレン基である。このとき、Arとして示されるアリール基又はアリーレン基中のcは、上記一般式(I)中のc5に相当する。
【0052】
一般式(I)において、c1、c2、c3、c4及びc5の総数の好適な範囲は、3又は4の整数である。
【0053】
一般式(I)において、各符号が表す各基に置換する置換基としては、例えば水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。前記アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。前記アルコキシ基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えばフェニル基、トルイル基等が挙げられる。前記アラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。前記置換アミノ基における置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられ、具体例は前述と同様である
【0054】
また、一般式(I)で表される電荷輸送性化合物の中で、下記一般式(III)又は一般式(IV)で表される化合物がより望ましい。これら化合物は、他の種類に比べ電気特性が高いことから、高い輝度の素子が得られる。
【0055】
【化12】

【0056】
一般式(III)中、X、X及びXは各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数1以上10以下のアルコキシル基、置換若しくは未置換のアリール基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、置換若しくは未置換のスチリル基、置換若しくは未置換のブタジエン基、又は置換若しくは未置換のヒドラゾン基を表す。
、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1以上18以下の1価の有機基を表す。
、L及びLは各々独立にアルキレン基を表す。
p1、p2及びp3は各々独立に、0以上2以下の整数を表す。
q1、q2及びq3は各々独立に、0又は1を表し、(q1+q2+q3)≧2の条件を満たす。
【0057】
特に、一般式(III)におけるX、X及びXの少なくとも一つは、置換若しくは未置換のアリール基、又は炭素数7以上10以下のアラルキル基であることがよい。トリアリールアミン骨格にさらに共役系の置換基が置換されることで、電気特性が向上されると考えられ、高い輝度の素子が得られる。
一般式(III)におけるR、R及びRは、一般式(I−A)におけるRに相当する。よって、一般式(III)における好適なR、R及びRは、一般式(I−A)におけるRと同様である。
一般式(III)におけるL、L及びLは、一般式(I−A)におけるLに相当する。よって、一般式(III)における好適なL、L及びLは、一般式(I−A)におけるLと同様である。
一般式(III)におけるq1、q2及びq3の総数は、一般式(I)におけるc1、c2、c3、c4及びc5の総数に相当する。よって、一般式(III)におけるq1、q2及びq3の総数の好適な範囲は、一般式(I)におけるc1、c2、c3、c4及びc5の総数と同様である。
【0058】
【化13】

【0059】
一般式(IV)中、X、X、X、X、X及びXは各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数1以上10以下のアルコキシル基、置換若しくは未置換のアリール基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、置換若しくは未置換のスチリル基、置換若しくは未置換のブタジエン基、又は置換若しくは未置換のヒドラゾン基を表す。
、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1以上18以下の1価の有機基を表す。
、L、L及びLは各々独立にアルキレン基を表す。
p1、p2、p3、p4、p5及びp6は各々独立に、0以上2以下の整数を表す。
q1、q2、q3及びq4は各々独立に、0又は1を表し、(q1+q2+q3+q4)≧2の条件を満たす。
【0060】
一般式(IV)におけるR、R、R、及びRは、一般式(I)におけるRに相当する。よって、一般式(IV)における好適なR、R、R、及びRは、一般式(I−A)におけるRと同様である。
一般式(IV)におけるL、L、L及びLは、一般式(I−A)におけるLに相当する。よって、一般式(IV)における好適なL、L、L及びLは、一般式(I−A)におけるLと同様である。
一般式(IV)におけるq1、q2、q3及びq4の総数は、一般式(I)におけるc1、c2、c3、c4及びc5の総数に相当する。よって、一般式(IV)におけるq1、q2、q3及びq4の総数の好適な範囲は、一般式(I)におけるc1、c2、c3、c4及びc5の総数と同様である。
【0061】
上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物の具体例としては、例えば、以下に示す例示化合物(I−1)乃至(I−50)が挙げられる。なお、上記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。また、下記表中、結合手は記載されているが末端に置換基が記載されていないものは末端にメチル基を有するものを表す。
【0062】
【化14】



【0063】
【化15】



【0064】
【化16】



【0065】
【化17】



【0066】
【化18】



【0067】
【化19】



【0068】
【化20】



【0069】
一般式(I)で表される電荷輸送性化合物の合成方法は、一般的に知られている方法により合成される。一例として、一般式(I)で表される電荷輸送性化合物における、一般式(I−A)のLがメチレン基(−CH−)の場合の合成例を以下に説明する。
ここで、下記スキーム中、電荷輸送性を有する基(I−a)を示す「F」は、一般式(I)で表される電荷輸送性化合物における「D」を除いた骨格構造を示している。また、一般式(I−d)のRは、一般式(I−A)のRに相当する。
【0070】
【化21】



【0071】
電荷輸送性を有する基(I−a)をオキシ塩化リンとジメチルホルムアミドを用いたホルミル化によりn価のホルミル体(I−b)を得る。この場合、n価に応じて必要なオキシ塩化リンとジメチルホルムアミドの量は異なるが、一般的には電荷輸送性を有する基(I−a)に対し、2倍当量以上20倍当量以下が望ましい。より望ましくは2倍当量以上10倍当量以下が望ましい。
【0072】
反応温度は例えば0℃以上100℃以下の範囲で設定される。溶解性を制御するために、塩化メチレン、クロロホルム、ベンゼン、トルエンなどの一般的な溶剤を用いてもよい。
【0073】
次に、得られたホルミル体(I−b)を水素化ホウ素ナトリウム等で還元することで、一般式(I)で表される電荷輸送性化合物(I−c)が得られる。この場合、ホルミル体(I−b)に対し、加える水素化ホウ素ナトリウムの量は、1倍当量以上10倍当量以下が望ましく、より望ましくは、1倍当量以上5倍当量以下である。
【0074】
また、用いる溶媒は、炭素数1以上4以下の低級アルコールが望ましいが、場合によっては、ベンゼンやトルエンといった反応しない溶剤を混合してもよい。反応温度は例えば0℃以上溶剤の沸点以下の範囲で設定されるが、望ましくは、室温(例えば25℃)以上100℃以下である。
【0075】
さらに、化合物(I−c)は、一般式(I)で表される電荷輸送性化合物(I−d)に誘導されてもよい。この場合、一般的なアルキル化剤であれば特に限定しないが、例えば、ヨウ化アルキルや、硫酸アルキルを用いてもよく、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トルエン、ベンゼン、など一般的な溶剤を使いてもよい。
【0076】
また、別法としては、カルボン酸(エステル基)を有する電荷輸送性の基(I−e)をテトラヒドロフラン中で、水素化アルミニウムリチウムなどの還元剤を用いても(I−c)が得られる。この場合の水素化アルミニウムリチウムの量は、0.5倍当量以上5倍当量以下が望ましく、反応温度は0℃以上70℃以下が望ましい。
ここで、下記スキーム中、電荷輸送性を有する基(I−e)を示す「F」も、一般式(I)で表される電荷輸送性化合物における「D」を除いた骨格構造を示している。
【0077】
【化22】



【0078】
なお、上記に挙げた、反応試薬、溶剤、温度は、特に限定するものではなく、例えば、目的の化合物に応じて設定され、合成方法もこれに限るものではない。
【0079】
次に、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂について説明する。
芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、下記一般式(II)で表される芳香族炭化水素と、ホルムアルデヒドとを反応させて得る。
【0080】
【化23】

【0081】
一般式(II)中、R11は炭素数1以上6以下のアルキル基を表し、a1は0以上3以下の整数を表し、a1が2又は3のとき、R11はそれぞれ同一であっても異なってもよい。
【0082】
一般式(II)で表される芳香族炭化水素を用いた芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂化合物は水酸基の如く極性基を有さないため、有機化合物層で電荷がトラップされず、電荷輸送を妨げない。
【0083】
一般式(II)中、R11は、炭素数1以上6以下のアルキル基を表し、炭素数1以上4以下のアルキル基が望ましく、メチル基がより望ましい。
【0084】
一般式(II)中、a1は0以上3以下の整数を表し、1以上2以下が望ましく、2が更に望ましい。
【0085】
芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂化合物は、一般式(II)で表される芳香族炭化水素と、ホルムアルデヒドとを反応させて得た、下記一般式(V)で表される繰り返し単位を有する化合物であることが望ましい。
【0086】
【化24】

【0087】
一般式(V)中、R11は、炭素数1以上6以下のアルキル基を表し、一般式(II)におけるR11と同義であり、望ましくはメチル基である。
一般式(V)中、a1は、0以上3以下の整数を表し、一般式(II)におけるa1と同義である。
m及びqは、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。
【0088】
芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂化合物としては、一般的に知られているものを適用してもよい。例えば、トルエンホルムアルデヒド樹脂化合物、キシレンホルムアルデヒド樹脂化合物、メシチレンホルムアルデヒド樹脂化合物、エチルベンゼンホルムアルデヒド樹脂化合物、イソプロピルベンゼンホルムアルデヒド樹脂化合物などが挙げられるが、一般式(I)の電荷輸送性化合物との反応性と相溶性から、キシレンホルムアルデヒド樹脂化合物が望ましく、前記一般式(VI)で表される繰り返し単位を有する化合物であることがより望ましく、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂であることが更に望ましい。
【0089】
【化25】

【0090】
一般式(VI)中、m及びqは、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。
【0091】
芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂化合物の合成方法としては、従来からの既知の方法が適用される。例えば、芳香族炭化水素に対し、ホルムアルデヒド(ホルマリンやパラホルムアルデヒド)を2倍当量以上5倍当量以下加え、硫酸触媒(たとえば、0.1当量以上1当量以下)を加えて80℃以上110℃以下で反応させる。また、芳香族炭化水素は、2種類以上混合してもよい。
【0092】
一般式(V)及び(VI)における繰り返し単位の数は特に限定しないが、一般的には1以上10以下の種々の繰り返し単位を有するオリゴマーの混合物として得られる。
【0093】
また、芳香族炭化水素同士を結合する構造は,メチレン結合、ジメチレンエーテル結合、アセタール結合などを有し、芳香族炭化水素の末端には、メチロール基、アセタール基、あるいはメトキシメチル基を有する。
【0094】
上記、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂化合物の一例として、市販されている下記構造式群の混合物であるフドー(株)製のキシレンホルムアルデヒド樹脂化合物(ニカノールG)を表すが、これに限るものではない。
【0095】
【化26】



【0096】
次に、特定の電荷輸送性高分子の詳細についてさらに説明する。
特定の電荷輸送性高分子は、前記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物と、前記芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂とをランダム共重合させて成るものであることがよい。
【0097】
すなわち、特定の電荷輸送性高分子は、一般式(I)で表される電荷輸送性化合物の−OR基(例えば、Rが水素原子の場合にはヒドロキシル基、Rがメチル基の場合にはアルコキシ基)と、前記芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂中のジメチレンエーテル結合、アセタール結合、又は末端のメチロール基やメトキシメチル基などの酸素含有基の部分と、を反応させて得るランダム共重合型の電荷輸送性高分子であることがよい。
【0098】
特定の電荷輸送性高分子の合成方法は、前記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物と、前記芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂とを混合し、種々の酸触媒を用いて加熱攪拌することで合成される。
この際、一般式(I)で表される電荷輸送性化合物と、前記芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂との混合比は特に限定しないが、通常は電荷輸送性化合物と芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂との総量に対し、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂が、20質量%以上80質量%以下であることが望ましい。芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の含有率がこの範囲内にあると、成膜性及び電荷輸送性に優れる。
より望ましくは30質量%以上70質量%以下、更に望ましくは40質量%以上60質量%以下である。
【0099】
また、酸触媒としては、周知のものが使用されるが、塩化鉄、塩化亜鉛等のルイス酸、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの中でも、成膜性や電気特性の観点からスルホン酸類が望ましい。
【0100】
加える酸触媒の量は、上記一般式(I)で表される化合物100質量部に対して例えば00.1質量%以上20質量%以下の範囲で設定されるが、0.1質量%以上10質量%以下であることが望ましい。
【0101】
また、特定の電荷輸送性高分子の原料である一般式(I)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。さらに、膜物性を制御するために、反応途中でホルマリンやパラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド類を逐次添加してもよい。
【0102】
特定の電荷輸送性高分子の重量平均分子量は、保護層の密着性の向上、後述の架橋物との相溶性、及び表面保護層塗布液中での溶解性の観点から、3,000以上500,000以下であることが望ましく、5,000以上100,000以下であることがより望ましく、20,000以上50,000以下であることが更に望ましい。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線による換算値として求めた値である。
【0103】
次に、本実施形態に係る有機電界発光素子の層構成について詳述する。
本実施形態に係る有機電界発光素子は、少なくとも一方が透明又は半透明であり陽極及び陰極よりなる一対の電極と、前記一対の電極に挟まれた一層以上の有機化合物層と、を有して構成され、該有機化合物層の少なくとも一層に上記特定の電荷輸送性高分子を少なくとも1種含有してなるものであればその層構成は特に限定されない。
【0104】
本実施形態に係る有機電界発光素子においては、有機化合物層が1つの場合は、有機化合物層は電荷輸送能を持つ発光層を意味し、該発光層が前記上記特定の電荷輸送性高分子を含有してなる。
【0105】
一方、有機化合物層が複数の場合(即ち、各層が異なる機能を有する機能分離型の場合)は、少なくともいずれか一層が発光層からなり、この発光層は電荷輸送能を持つ発光層であってもよい。この場合、前記発光層あるいは前記電荷輸送能を持つ発光層と、その他の層からなる層構成の具体例としては、下記(1)から(3)が挙げられる。
【0106】
(1)発光層と、電子輸送層及び電子注入層の少なくとも一層と、で構成される層構成。
(2)正孔輸送層及び正孔注入層の少なくとも一層と、発光層と、電子輸送層及び電子注入層の少なくとも一層と、で構成される層構成。
(3)正孔輸送層及び正孔注入層の少なくとも一層と、発光層と、で形成される層構成。
【0107】
これら層構成(1)から(3)の発光層及び電荷輸送能を持つ発光層以外の層は、電荷輸送層や電荷注入層としての機能を有する。
【0108】
なお、層構成(1)から(3)のいずれの層構成においても、いずれか一層に上記特定の電荷輸送性高分子が含まれていればよいが、好適には正孔輸送性材料として上記特定の電荷輸送性高分子が含まれていることが望ましい。特に、少なくとも発光層、正孔輸送層及び正孔注入層の少なくとも一つに前記上記特定の電荷輸送性高分子を含むことが好適である。
【0109】
また、本実施形態に係る有機電界発光素子において、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層は、上記特定の電荷輸送性高分子以外の他の電荷輸送材料(正孔輸送材料、電子輸送材料)を更に含んでもよい。この他の電荷輸送材料の詳細については後述する。
【0110】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態の有機電界発光素子について、より詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
図1乃至図4は、本実施形態の有機電界発光素子の層構成を説明するための模式的断面図であって、図1、図2、及び図3の場合は、有機化合物層が複数層で構成される場合の一例であり、図4の場合は、有機化合物層が1層で構成される場合の例を示す。なお、図1乃至図4において、同一の機能を有するものは同じ符号を付して説明する。
【0111】
図1に示す有機電界発光素子10は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、発光層4、電子輸送層5、及び背面電極7を順次積層してなり、層構成(1)に相当するものである。
なお、図1に示す有機電界発光素子10では、電子輸送層5に代えて、電子注入層を適用してもよく、電子輸送層及び電子注入層を適用してもよい。その場合には、発光層4側から背面電極7側へ、電子輸送層、電子注入層、背面電極7、の順に積層される。
また、発光層4は電荷輸送能を持つ発光層6であってもよい。つまり、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、電荷輸送能を持つ発光層6、電子輸送層5、及び背面電極7を順次積層したものであってもよい。
【0112】
図2に示す有機電界発光素子10は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、正孔輸送層3、発光層4、電子輸送層5、及び背面電極7が順次積層されたもので、層構成(2)に相当するものである。
なお、図2に示す有機電界発光素子10では、正孔輸送層3に代えて、正孔注入層を適用してもよく、正孔輸送層及び正孔注入層を適用してもよい。その場合には、透明電極2側から背面電極7側へ、正孔注入層、正孔輸送層、発光層4、の順に積層される。
また、電子輸送層5に代えて、電子注入層を適用してもよく、電子輸送層及び電子注入層を適用してもよい。その場合には、発光層4側から背面電極7側へ、電子輸送層、電子注入層、背面電極7の順に積層される。
また、発光層4は電荷輸送能を持つ発光層6であってもよい。つまり、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、正孔輸送層3、電荷輸送能を持つ発光層6、電子輸送層5、及び背面電極7を順次積層したものであってもよい。
【0113】
図3に示す有機電界発光素子10は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、正孔輸送層3、発光層4、及び背面電極7が順次積層されたもので、層構成(3)に相当するものである。
なお、図3に示す有機電界発光素子10では、正孔輸送層3に代えて、正孔注入層を適用してもよく、正孔輸送層及び正孔注入層を適用してもよい。その場合には、透明電極2側から背面電極7側へ、正孔注入層、正孔輸送層、発光層4、の順に積層される。
また、発光層4は電荷輸送能を持つ発光層6であってもよい。つまり、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、正孔輸送層3、電荷輸送能を持つ発光層6、及び背面電極7を順次積層したものであってもよい。
【0114】
図4に示す有機電界発光素子10は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、電荷輸送能を持つ発光層6及び背面電極7が順次積層されたものである。
【0115】
また、トップエミッション構造や陰極・陽極共に透明電極を用いて透過型にする場合、さらには図1乃至図4の層構成を複数段積重ねた構造としてもよい。
【0116】
前記特定の電荷輸送性高分子が含まれる層は、それを含んで形成される有機化合物層の機能によって、正孔輸送能、電子輸送能のいずれの機能をも付与される。
【0117】
例えば、図1に示される有機電界発光素子10の層構成の場合、前記特定の電荷輸送性高分子は、発光層4又は電子輸送層5のいずれに含有されてもよく、発光層4又は電子輸送層5としていずれも作用する。
図2に示される有機電界発光素子10の層構成の場合、前記特定の電荷輸送性高分子は、正孔輸送層3、発光層4又は電子輸送層5のいずれに含有されてもよく、正孔輸送層3、発光層4又は電電子輸送層5としていずれも作用する。
図3に示される有機電界発光素子10の層構成の場合、前記特定の電荷輸送性高分子は、正孔輸送層3又は発光層4のいずれに含有されてもよく、正孔輸送層3又は発光層4としていずれも作用する。
図4に示される有機電界発光素子10の層構成の場合、前記特定の電荷輸送性高分子は発光層6に含有され、電荷輸送能を有する発光層6として作用する。
【0118】
以下、各々を詳しく説明する。以下、符号を省略して説明する。
図1乃至図4に示される有機電界発光素子の層構成の場合、透明絶縁体基板は、発光を取り出すため透明又は半透明なものが望ましく、例えば、ガラス、石英、金属箔、又は樹脂製のフィルム等が挙げられるが、これらの材料に限定されるものではない。樹脂フィルムの構成樹脂としては、例えば、メタクリル樹脂(例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)等)、ポリエステル樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、又はポリカーボネート樹脂が挙げられる。また、透水性や透ガス性を抑える透湿防止層を、透明絶縁体基板の表面又は裏面に設けてもよい。透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。透湿防止層は、例えばスパッタリング法などにより形成する。
なお、上記透明又は半透明とは、可視領域の光の透過率が10%以上であることを意味し、更に透過率が75%以上であることが望ましい。
【0119】
透明電極は、透明絶縁体基板と同様に発光を取り出すため透明又は半透明であって、かつ正孔の注入を行うため仕事関数の大きなものがよく、例えば、仕事関数が4eV以上のものが望ましい。
【0120】
透明電極の具体例としては、例えば、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛等の酸化膜、又は、蒸着若しくはスパッタされた金、白金、パラジウム等が挙げられる。
透明電極2のシート抵抗(表面抵抗率)は、低いほど望ましく、数百Ω/□以下が望ましく、さらには100Ω/□以下がより望ましい。
また、透明電極における可視領域の光の透過率は10%以上で、更に透過率が75%以上であることが望ましい。
【0121】
図1乃至図3に示される有機電界発光素子の層構成の場合、電子輸送層や正孔輸送層等は、目的に応じて機能(電子輸送能、正孔輸送能)が付与された前記特定の電荷輸送性高分子単独で形成されていてもよいが、正孔移動度を調節するために、前記特定の電荷輸送性高分子以外の正孔輸送材料を、前記特定の電荷輸送性高分子に対して、0.1質量%以上50質量%以下の範囲で混合分散して形成されてもよい。
この正孔輸送材料としては、例えば、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、又はポルフィリン系化合物が挙げられるが、テトラフェニレンジアミン誘導体、又はトリフェニルアミン誘導体が望ましい。
【0122】
また、同様に、電子移動度を調整する場合は、前記特定の電荷輸送性高分子以外の電子輸送材料を、前記特定の電荷輸送性高分子に対して、0.1質量%以上50質量%以下の範囲で混合分散して形成されてもよい。
この電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、シロール誘導体、キレート型有機金属錯体、多核若しくは縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、トリアゾール誘導体、又はフルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられる。
【0123】
また、正孔移動度及び電子移動度の両方の調整が必要な場合は、前記特定の電荷輸送性高分子前記特定の電荷輸送性高分子に正孔輸送材料及び電子輸送材料の両方を一緒に混在させて形成してもよい。
【0124】
さらに、前記特定の電荷輸送性高分子に樹脂(ポリマー)や添加剤を加えて形成してもよい。
具体的な樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリシラン樹脂、ポリチオフェン、又はポリピロール等の導電性樹脂等が挙げられる。また、添加剤としては、例えば、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等が挙げられる。
【0125】
また、正孔注入層及び電子注入層の少なくも一方を設ける場合、当該層にはそれぞれ正孔注入材料又は電子注入材料を添加することがよい。
正孔注入材料としては、例えば、フェニレンジアミン誘導体、フタロシアニン誘導体、インダンスレン誘導体、ポリアルキレンジオキシチオフェン誘導体等が挙げられる。また、これらには、ルイス酸、スルホン酸等を混合してもよい。
電子注入材料としては、例えば、金属(例えばLi、Ca、Sr等)、金属フッ化物(例えばLiF、MgF等)、又は金属酸化物(例えばMgO、Al、LiO等)等が挙げられる。
【0126】
図1乃至図4に示される有機電界発光素子の層構成の場合、発光層は、発光材料を含んで構成される。
【0127】
発光材料としては、例えば、固体状態の化合物を用いる。発光材料は、低分子化合物又は高分子化合物どちらでもよい。発光材料が低分子化合物である場合の好適な例としては、例えば、キレート型有機金属錯体、多核若しくは縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、又はオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。発光材料が高分子化合物の場合、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又はポリアセチレン誘導体等が挙げられる。
【0128】
発光材料の好適な具体例としては、下記発光材料(VII−1)乃至(VII−17)が挙げられるが、これらに限られるものではない。なお、発光材料(VII−17)中、Zは以下の(VII−18)乃至(VII−28)から選択された基が挙げられ、n、h及びgは1以上の整数を示す。
【0129】
【化27】

【0130】
【化28】

【0131】
【化29】

【0132】
また、発光層には、上記発光材料の中にゲスト材料として発光材料とは異なる色素化合物をドーピングしてもよい。前記色素化合物のドーピングの割合としては0.001質量%以上40質量%以下程度、望ましくは0.001質量%以上10質量%以下程度である。
この色素化合物として好適には、クマリン誘導体、DCM誘導体、キナクリドン誘導体、ペリミドン誘導体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ルブレン誘導体、ポルフィリン誘導体、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体(例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスニウム、イリジウム、白金、ネオジム、ユーロピウム及び金などの錯体化合物)等が挙げられる。特に、望ましい発光化合物として、イリジウム金属錯体、ユーロピウム錯体及び白金錯体が挙げられる。好適な具体例として、下記の発光化合物(VIII−1)乃至(VIII−6)が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0133】
【化30】

【0134】
発光層には、発光材料と共に、前記特定の電荷輸送性高分子を含んでもよいが、電荷輸送能を持つ発光層の場合、発光材料と前記特定の電荷輸送性高分子とを併用する。
また、発光層4に他の電子輸送材料を含有させてもよい。電子輸送材料としては、例えば、下記電子輸送材料(IX−1)乃至(IX−3)で表される化合物、並びに下記式(X)で表される化合物が挙げられる。発光層4が特定の電荷輸送性高分子と他の電子輸送材料との双方を含有する場合、他の電子輸送材料としては下記式(X)で表される化合物がよい。
【0135】
【化31】

【0136】
【化32】

【0137】
図1乃至図4に示される有機電界発光素子の層構成の場合、背面電極には、例えば、金属、金属酸化物、又は金属フッ化物等が挙げられる。
金属としては、例えばマグネシウム、アルミニウム、金、銀、インジウム、リチウム、カルシウム又はこれらの合金が挙げられる。前記金属酸化物としては、例えば、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化スズインジウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、又は酸化インジウム亜鉛等が挙げられる。また、前記金属フッ化物としては、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、又はフッ化アルミニウムが挙げられる。
【0138】
また、背面電極上には、保護層(図示せず)を設けてもよい。具体的な保護層の材料としては、金属(例えばIn、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al等)、金属酸化物(例えばMgO、SiO、TiO等)、樹脂(例えばポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂等)が挙げられる。保護層の形成には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD(気相成長)法、塗布法が適用される。
【0139】
これら図1乃至図4に示される有機電界発光素子は、まず透明電極の上に各有機電界発光素子の層構成に応じた個々の層を順次形成することにより作製される。なお、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び電荷輸送能を持つ発光層、並びに正孔注入層、電子注入層は、上記各材料を真空蒸着法、又は適切な有機溶媒に溶解若しくは分散し、得られた塗布液を用いて前記透明電極上に形成される。
【0140】
正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び電荷輸送能を持つ発光層、並びに正孔注入層、電子注入層の膜厚は、各々10μm以下、特に0.001μm以上5μm以下の範囲であることが望ましい。
上記各材料(前記非共役系高分子、発光材料等)の分散状態は分子分散状態でも結晶などの粒子状態でも構わない。
【0141】
また、図1及び図2に示す有機電界発光素子の場合には、電子輸送層又は電子注入層の上に背面電極を真空蒸着法、スパッタリング法等により形成することにより本実施形態に係る有機電界発光素子が得られる。
また、図3及び図4に示す有機電界発光素子の場合には、発光層(電荷輸送能を持つ発光層を含む)の上に背面電極を真空蒸着法、スパッタリング法等により形成することにより本実施形態に係る有機電界発光素子が得られる。
【0142】
なお、本実施形態に係る有機電界発光素子は、例えば、表示装置、電子ペーパー、バックライト、照明光源、電子写真用露光装置、標識、看板等の分野に好適に使用される。
【0143】
次に、本実施形態に係る表示媒体(装置)の構成について詳述する。
本実施形態に係る表示媒体は、上記本実施形態に係る有機電界発光素子と、有機電界発光素子を駆動するための駆動手段と、を有する。
表示媒体として具体的には例えば、図1乃至図4に示すように、有機電界発光素子の一対の電極(電極2、背面電極7)に連結され、当該一対の電極間に直流電圧を印加するための電圧印加装置9を、駆動手段として備えたものが挙げられる。
電圧印加装置9を用いた有機電界発光素子の駆動方法としては、例えば、一対の電極間に、4V以上20V以下で、電流密度1mA/cm以上200mA/cm以下の直流電圧を印加することによって有機電界発光素子を発光させる。
【0144】
また、本実施形態に係る有機電界発光素子は、最小単位(1画素単位)の構成について説明したが、例えば、当該1画素単位(有機電界発光素子)をマトリクス状及びセグメント状の少なくとも一方で配置した表示媒体に適用される。有機電界発光素子をマトリクス状に配置する場合、電極のみをマトリクス状に配置する態様であってもよいし、電極及び有機化合物層の両方をマトリクス状に配置する態様であってもよい。また、本実施形態において有機電界発光素子をセグメント状に配置する場合、電極のみをセグメント状に配置する態様であってもよいし、電極及び有機化合物層の両方をセグメント状に配置する態様であってもよい。なお、マトリクス状又はセグメント状の有機化合物層は、例えば、前述したインクジェット法を用いることにより容易に形成され得る。
【0145】
また、表示媒体の駆動方式としては、従来公知の技術が適用される。例えば、複数の行電極及び列電極を配し、行電極を走査駆動しながら各行電極に対応する画像情報に応じて列電極を一括して駆動させる単純マトリクス駆動や、各画素毎に配された画素電極によるアクティブマトリックス駆動等が利用される。
【実施例】
【0146】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0147】
[電荷輸送性高分子の合成]
(合成例1)
電荷輸送性化合物として下記例示化合物(I−11)70質量部と、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂としてキシレンホルムアルデヒド樹脂(ニカノールG フドー(株)製:一般式(II)においてR11がメチル基、a1が2の芳香族炭化水素とホルムアルデヒドとの反応体で、粘度995mPa・s/75℃)30質量部と、p−トルエンスルホン酸0.05質量部と、を窒素雰囲気下、100℃にて加熱攪拌し、その後2時間反応させたのち、反応物をトルエン1Lに溶解した。トルエン溶液をよく水洗いしたのち、メタノールに再沈させ、電荷輸送性高分子(1)を得た。重量平均分子量(MW)は2万であった。
【0148】
【化33】

【0149】
(合成例2)
合成例1における電荷輸送性化合物として例示化合物(I−11)70質量部の代わりに下記例示化合物(I−18)70質量部を用いたこと以外は、合成例1と同様にして合成を行い、電荷輸送性高分子(2)を得た。重量平均分子量(MW)は2.4万であった。
【0150】
【化34】

【0151】
(合成例3)
合成例1におけるキシレンホルムアルデヒド樹脂(ニカノールG フドー(株)製)30質量部の代わりに、キシレンホルムアルデヒド樹脂(ニカノールY−50 フドー(株)製:一般式(II)においてR11がメチル基、a1が2の芳香族炭化水素とホルムアルデヒドとの反応体で、粘度50mPa・s/25℃)20質量部を用いたこと以外は、合成例1と同様にして合成を行い、電荷輸送性高分子(3)を得た。重量平均分子量(MW)は1.9万であった。
【0152】
(合成例4)
合成例1における電荷輸送性化合物として例示化合物(I−11)70質量部の代わりに下記例示化合物(I−2)70質量部を用いたこと以外は、合成例1と同様にして合成を行い、電荷輸送性高分子(4)を得た。重量平均分子量(MW)は2.7万であった。
【0153】
【化35】

【0154】
(合成例5)
合成例1における電荷輸送性化合物として例示化合物(I−11)70質量部の代わりに下記例示化合物(I−45)70質量部を用いたこと以外は、合成例1と同様にして合成を行い、電荷輸送性高分子(5)を得た。重量平均分子量(MW)は3.5万であった。
【0155】
【化36】

【0156】
[電界発光素子の作製]
(実施例1)
ガラス基板上にITO膜を備えるITOガラス複合基板を用意し、そのITO膜を2mm幅の帯状にエッチングして、ストライプ状のITO電極(陽極)を形成した。このITOガラス複合基板をイソプロパノール(電子工業用、関東化学製)で超音波洗浄した後、スピンコーターで乾燥させた。
次に、ITO電極上に、昇華精製した銅フタロシアニンを真空蒸着することにより0.015μm厚の正孔注入層を形成した。
次に、電荷輸送性高分子(1)0.1質量部を、10質量%となるようにテトラヒドロフランに加えて溶液を調製した。その溶液を0.1μmのPTFEフィルターで濾過し、濾液を正孔注入層上にスピンコーター法により塗布し、乾燥させて、膜厚約0.05μmの正孔輸送層を形成した。
次に、正孔輸送層上に、発光材料(VII−1)を真空蒸着することにより0.065μm厚の発光層を形成した。
次に、発光層上に、Mg−Ag合金を共蒸着により真空蒸着して、2mm幅、0.15μm厚のストライプ状のMg−Ag電極(陰極)を形成した。ITO電極とMg−Ag電極とは、それぞれの長手方向が直交するように配置した。
このようにして得られた有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0157】
(実施例2)
実施例1と同様にして、ITOガラス複合基板をエッチングしてITO電極(陽極)を形成し、洗浄及び乾燥を行った。
次に、実施例1と同様の電荷輸送性高分子(1)2質量部と、ポリ(N−ビニルカルバゾール)2質量部と、発光材料(VII−1)0.1質量部とを、固形分としてそれらの合計が10質量%となるようにジクロロエタンに加えて溶液を調製した。その溶液を0.1μmのPTFEフィルターで濾過し、濾液をITOガラス複合基板のITO電極が形成された面上にスピンコーター法により塗布し、乾燥させて、膜厚約0.15μmの発光層を形成した。
次に、発光層上に、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.15μm厚のストライプ状のMg−Ag電極(陰極)を形成した。ITO電極とMg−Ag電極とは、それぞれの長手方向が交差するように配置した。
このようにして得られた有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0158】
(実施例3)
実施例1と同様にして、ITO電極、正孔注入層及び正孔輸送層の形成を行った。
次に、正孔輸送層上に、発光化合物(VIII−1)を真空蒸着することにより、厚さ0.060μmの発光層を形成した。
次に、発光層上に、電子輸送材料(IX−1)で表される化合物を真空蒸着することにより、厚さ0.030μmの電子輸送層を形成した。
次に、電子輸送層上に、Mg−Ag合金を共蒸着により真空蒸着して、2mm幅、0.15μm厚のストライプ状のMg−Ag電極(陰極)を形成した。ITO電極とMg−Ag電極とは、それぞれの長手方向が交差するように配置した。
このようにして得られた有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0159】
(実施例4)
実施例1における電荷輸送性高分子(1)の代わりに電荷輸送性高分子(2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0160】
(実施例5)
実施例2における電荷輸送性高分子(1)の代わりに電荷輸送性高分子(2)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0161】
(実施例6)
実施例1における電荷輸送性高分子(1)の代わりに電荷輸送性高分子(3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0162】
(実施例7)
実施例1における電荷輸送性高分子(1)の代わりに電荷輸送性高分子(4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0163】
(実施例8)
実施例1における電荷輸送性高分子(1)の代わりに電荷輸送性高分子(5)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0164】
(比較例1)
実施例1における電荷輸送性高分子(1)の代わりに下記構造式(XI)で表される化合物を真空蒸着により成膜したこと以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0165】
【化37】

【0166】
(比較例2)
実施例1と同様にして、ITOガラス複合基板をエッチングしてITO電極(陽極)を形成し、洗浄及び乾燥を行った。
次に、ポリビニルカルバゾール(PVK)2質量部と、発光化合物(VIII−1)0.1質量部と、電子輸送材料(IX−1)1質量部とを、それらの合計が10質量%となるようにジクロロエタンに加えて溶液を調製した。その溶液を0.1μmのPTFEフィルターで濾過し、濾液をITOガラス複合基板のITO電極が形成された面上にディップ法により塗布し、乾燥させて、0.15μm厚の発光層を形成した。
次に、発光層上に、Mg−Ag合金を共蒸着により真空蒸着して、2mm幅、0.15μm厚のストライプ状のMg−Ag電極(陰極)を形成した。ITO電極とMg−Ag電極とは、それぞれの長手方向が交差するように配置した。
得られた有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0167】
(比較例3)
合成例1における電荷輸送性化合物として例示化合物(I−11)70質量部の代わりに下記比較化合物(XII)70質量部を用いたこと以外は、合成例1と同様にして合成を行い、比較電荷輸送性高分子(C1)を得た。重量平均分子量(MW)は2.0万であった。
この比較電荷輸送性高分子(C1)を実施例1における電荷輸送性高分子(1)の代わりに用い、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0168】
【化38】

【0169】
(素子特性の評価)
実施例及び比較例で得られた各有機電界発光素子について、以下のようにして素子特性を評価した。
真空中(0.133Pa)でITO電極とMg−Ag電極との間に直流電圧を印加して発光させ、そのときの最高輝度、及び発光色を評価した。それらの結果を表9に示す。
また、乾燥窒素中で有機電界発光素子の発光寿命の測定を行った。発光寿命の評価は、初期輝度が50cd/mとなるように電流値を設定し、定電流駆動により輝度が初期値から半減するまでの時間を素子寿命とした。この時の駆動電流密度を素子寿命と共に下記表1に示す。
【0170】
【表1】

【0171】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、高輝度であり、素子寿命が長い有機電界発光素子が得られたことがわかる。
【符号の説明】
【0172】
1 透明絶縁体基板
2 透明電極
3 正孔輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 電荷輸送能を有する発光層
7 背面電極
9 電圧印加装置
10 有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明又は半透明である陽極及び陰極よりなる一対の電極と、
前記一対の電極間に挟まれた1つ以上の層で構成される有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層を構成する少なくとも1層が、下記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物の少なくとも1種と、下記一般式(II)で表される芳香族炭化水素及びホルムアルデヒドの反応体である芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と、の反応体からなる電荷輸送性高分子を含有する有機電界発光素子。
【化1】

〔一般式(I)中、Ar、Ar、Ar及びArは各々独立に置換又は未置換のアリール基を表し、Arは置換又は未置換のアリール基又は置換又は未置換のアリーレン基を表し、c1、c2、c3、c4及びc5は各々独立に0又は1を表し、kは0又は1を表し、Dは各々独立に、下記一般式(I-A)で表される1価の有機基を表し、c1、c2、c3、c4及びc5の総数は2以上4以下である。〕
【化2】

〔一般式(I-A)中、Rは水素原子、又は1価の有機基を表し、Lはアルキレン基を表す。〕

【化3】

〔一般式(II)中、R11は炭素数1以上6以下のアルキル基を表し、a1は0以上3以下の整数を表し、a1が2又は3のとき、R11はそれぞれ同一であっても異なってもよい。〕
【請求項2】
前記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物が、下記一般式(III)で表される化合物である請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化4】

〔一般式(III)中、X、X及びXは各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数1以上10以下のアルコキシル基、置換若しくは未置換のアリール基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、置換若しくは未置換のスチリル基、置換若しくは未置換のブタジエン基、又は置換若しくは未置換のヒドラゾン基を表し、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1以上18以下の1価の有機基を表し、L、L及びLは各々独立にアルキレン基を表し、p1、p2及びp3は各々独立に、0以上2以下の整数を表し、q1、q2及びq3は各々独立に、0又は1を表し、(q1+q2+q3)≧2の条件を満たす。〕
【請求項3】
前記一般式(I)で表される電荷輸送性化合物が、下記一般式(IV)で表される化合物である請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化5】

〔一般式(IV)中、X、X、X、X、X及びXは各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数1以上10以下のアルコキシル基、置換若しくは未置換のアリール基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、置換若しくは未置換のスチリル基、置換若しくは未置換のブタジエン基、又は置換若しくは未置換のヒドラゾン基を表し、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1以上18以下の1価の有機基を表し、L、L、L及びLは各々独立にアルキレン基を表し、p1、p2、p3、p4、p5及びp6は各々独立に、0以上2以下の整数を表し、q1、q2、q3及びq4は各々独立に、0又は1を表し、(q1+q2+q3+q4)≧2の条件を満たす。〕
【請求項4】
前記一般式(III)において、X、X及びXの少なくとも一つが、置換若しくは未置換のアリール基、又は炭素数7以上10以下のアラルキル基である請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子と、
前記有機電界発光素子を駆動する駆動手段と、
を備えることを特徴とする表示媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−9545(P2011−9545A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152539(P2009−152539)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】