有機電界発光素子およびその駆動方法、並びに照明装置
【課題】発光に必要なキャリアを外部からの電流注入によらずに供給することが可能な有機電界発光素子およびその駆動方法、並びにこれを備えた照明装置を提供する。
【解決手段】正電極12と負電極13との間に発光層14を設ける。発光層14には、有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質15を含有させる。触媒物質15は、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容する。これにより、触媒物質15は電気的に中性でありながら発光層14中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子を発生させる。負電荷および正電荷は、駆動電界の作用により発光層14中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで有機発光分子が励起し発光する。赤,緑および青の発光層を互いに接して設けることにより白色発光を得ることも可能である。
【解決手段】正電極12と負電極13との間に発光層14を設ける。発光層14には、有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質15を含有させる。触媒物質15は、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容する。これにより、触媒物質15は電気的に中性でありながら発光層14中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子を発生させる。負電荷および正電荷は、駆動電界の作用により発光層14中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで有機発光分子が励起し発光する。赤,緑および青の発光層を互いに接して設けることにより白色発光を得ることも可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面光源または表示装置に用いられる有機電界発光素子およびその駆動方法、並びにこの有機電界発光素子を備えた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(有機EL素子)は、陽極と陰極との間に、有機化合物からなる発光層を有し、低電圧駆動の大面積表示素子を実現するものとして近年注目されている。1987年、Tangらは素子の高効率化のため、キャリア輸送性の異なる有機化合物を積層し、ホールと電子がそれぞれ陽極、陰極よりバランスよく注入される構造とし、実用化に十分な高輝度、高効率を得ることに成功した(非特許文献1参照。)。しかしながら、発光層内のキャリア伝導はいわゆる分子間のホッピング伝導によるものであり、発光層の膜厚が厚いと注入された正負キャリアが再結合する前に伝導過程で失活して熱に変わってしまう。そのため、発光層の厚さはおおよそ100nm程度以下が良いとされた。
【0003】
一方、高輝度および長寿命化の両立を意図して、いわゆるスタック型有機EL素子も提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。スタック型有機EL素子は、電気的にフローティングしている電荷発生層またはコネクタ層なるものを介して発光ユニットを数段重ねたものである。発光層が1段の場合には、前述の通り厚さが100nm程度以下としかすることができない。これに比べて、発光層をN段にした場合には、キャリアの失活なしに膜厚をN倍にしたのと同等にでき、見かけの電流効率を最大でN倍とすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−39617号公報
【特許文献2】特許第3933591号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】C. W. Tang、外1名、“Organic electroluminescent diodes”、Applied Physics Letters、American Institute of Physics、1987年、第51巻、第12号、p.913−p.915
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Tangらの報告以降、現在までに開発された有機EL素子の構造は、その素子特性改善つまり、電極からのキャリア注入性能の向上、正/負の両キャリア輸送のバランス改善、発光層での効率およびバランスの良いキャリア再結合などを目的としていた。これは、有機EL素子の発光層が本質的に絶縁体であり、キャリアが発光層中に存在しないために、発光に必要な正/負、両キャリアを外部から発光層内へバランス良く注入する必要があるからである。一般に、優れた素子特性を発現させるためには、電極と発光層以外に電子注入層/電子輸送層/正孔輸送層/正孔注入層のうち全部または一部を設ける必要があった。更に、上記の素子構成より電極が正極と負極とに明確に定義され、定められた極性に従い電界を印加する必要があった。
【0007】
また、有機EL素子は面発光を特徴としているが、電流注入駆動であるために電極の抵抗成分による電極内の電圧降下により、面内での電流注入が電極面積の増加とともに不安定になるという問題があった。この問題は特に、光取り出しのためにITO、IZOなどの比抵抗の高い透明材料を電極に用いた場合においては顕著となっていた。
【0008】
一方、従来のスタック型の構造は光学薄膜の積層構造としての性質を有しており、各層の膜厚と光学定数で規定される光波の干渉条件が存在する。このことは最終的な光取り出し効率が最大となるよう膜厚と光学定数を設計しなければならないことを意味しており、その設計値から外れた構造では発光層の数がN段でも電流効率がN倍とはならなかった。
【0009】
特に発光波長の異なる複数の発光層を含むスタック型有機EL素子の場合には、それぞれの波長の光取り出し効率が同時に最大となるように膜厚や光学定数を設計することは極めて困難であった。そのため、発光波長の異なる複数の発光層を積層することにより白色発光を実現しようとすると、輝度向上の点で不利となってしまっていた。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、発光に必要なキャリアを外部からの電流注入によらずに供給することが可能な有機電界発光素子およびその駆動方法、並びにこの有機電界発光素子を備えた照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による有機電界発光素子は、二つの電極と共に、有機発光分子を含む少なくとも一層の発光層を備え、発光層は、有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質を含有し、触媒物質は、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容することで、触媒物質は電気的に中性でありながら発光層中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子を発生させ、負電荷および正電荷が二つの電極の間に印加される駆動電界の作用により発光層中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで有機発光分子が励起し発光するものである。
【0012】
本発明による有機電界発光素子の駆動方法は、二つの電極と共に、有機発光分子を含む少なくとも一層の発光層を備え、発光層は、有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質を含有し、触媒物質は、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容することで、触媒物質は電気的に中性でありながら発光層中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子を発生させ、負電荷および正電荷が二つの電極の間に印加される駆動電界の作用により発光層中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで有機発光分子が励起し発光する有機電界発光素子を駆動するものである。
【0013】
本発明による照明装置は、上記本発明の有機電界発光素子を備えたものである。
【0014】
本発明の有機電界発光素子、または本発明の有機電界発光素子の駆動方法では、触媒物質が、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容する。これにより、触媒物質は電気的に中性でありながら発光層中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子が発生する。負電荷および正電荷は、二つの電極の間に印加される駆動電界の作用により発光層中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで有機発光分子が励起し発光する。
【0015】
本発明の照明装置では、上記本発明の有機電界発光素子で発生した光により照明がなされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有機電界発光素子、または本発明の有機電界発光素子の駆動方法によれば、発光層に、有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質を含有させて、この触媒物質により発光に必要なキャリアを供給するようにしたので、発光に必要なキャリアを外部からの電流注入によらずに供給することが可能となる。この有機電界発光素子を用いて照明装置を構成すれば、電極からの電流注入によらない安定した発光が可能となり、大面積での均一な発光が求められる用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した触媒物質の一例およびその動作を説明するための図である。
【図3】図1に示した触媒物質の他の例およびその動作を説明するための図である。
【図4】図1に示した触媒物質の更に他の例およびその動作を説明するための図である。
【図5】図1に示した触媒物質の更に他の例を表す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【図7】図6に示した有機電界発光素子を備えた照明装置の一例の外観を表す斜視図である。
【図8】照明装置の他の例の外観を表す斜視図である。
【図9】照明装置の更に他の例の外観を表す斜視図である。
【図10】図6に示した有機電界発光素子を備えた液晶表示装置の概略構成を表す断面図である。
【図11】変形例1に係る有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【図12】変形例2に係る有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(発光層が一層の例)
2.第2の実施の形態(発光層を二つ以上備えた例;照明装置、液晶表示装置)
3.変形例1(交流駆動)
4.変形例2(電極と発光層との間に絶縁層を設ける例)
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る有機電界発光素子の構成を表すものである。この有機電界発光素子は、照明装置または液晶用バックライト装置などに用いられるものであり、例えば、基板11上に、正電極(アノード電極)12および負電極(カソード電極)13と共に発光層14を有している。正電極12,発光層14および負電極13は、例えば、基板11上にこの順に積層されている。正電極12および負電極13は、本発明における「二つの電極」の一具体例に対応する。
【0020】
基板11は、例えば、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などにより構成されている。
【0021】
正電極12は、例えば、ITO(インジウム・スズ複合酸化物)またはIZO(インジウム・亜鉛複合酸化物)により構成されている。また、正電極12は、反射電極により構成してもよい。その場合、正電極12は、例えば、厚みが100nm以上1000nm以下であり、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。例えば、正電極12を構成する材料としては、クロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金が挙げられる。
【0022】
負電極13は、例えば、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好ましい。また、負電極13は、ITO(インジウム・スズ複合酸化物)またはIZO(インジウム・亜鉛複合酸化物)により構成されていてもよい。負電極13の厚みは、例えば、30nm以上100nm以下であることが好ましい。30nm以上であれば良好な電気伝導を得ることが可能であり、100nm以下であれば表面粗さの影響が許容できるからである。
【0023】
発光層14は、有機発光分子を含み、正電極12および負電極13の間に印加された駆動電界により正電荷と負電荷との再結合が起こり、光を発生するものである。発光層14の材料は発光色により異なっている。赤色の光を発生する発光層14は、例えば、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(ADN)に2,6≡ビス[4´≡メトキシジフェニルアミノ)スチリル]≡1,5≡ジシアノナフタレン(BSN)を30重量%混合したものにより構成されている。緑色の光を発生する発光層14は、例えば、8≡ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3 )、またはADNにクマリン6(Coumarin6)を5体積%混合したものにより構成されている。青色の光を発生する発光層14は、例えば、ADNに4,4´≡ビス[2≡{4≡(N,N≡ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を2.5重量%混合したものにより構成されている。また、発光層14は、高分子材料により構成されていてもよい。
【0024】
この発光層14は、有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質15を含有している。この触媒物質15は、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容することで、触媒物質15は電気的に中性でありながら発光層14中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子を発生させ、負電荷および正電荷が駆動電界の作用により発光層14中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで有機発光分子が励起し発光するものである。これにより、この有機電界発光素子では、発光に必要なキャリアを外部からの電流注入によらずに供給することが可能となっている。
【0025】
触媒物質15は、例えば、発光層媒質14A中に分散されている。なお、発光層媒質14Aとは、発光層14の触媒物質15以外の材料(ホスト材料および有機発光分子すなわちゲスト材料)をいう。
【0026】
発光層14の厚さは、例えば100nm以上であることが好ましい。輝度つまり電流効率を高めることが可能となるからである。また、本実施の形態では上述したように触媒物質15によりキャリアを発光層14内部で供給可能となることから、正電極12と負電極13との間の距離に相当する発光層14の厚みを100nm以下とする必要はなくなる。従って、従来のような電荷発生層やコネクタ層などの中間膜を設けることなく、発光層14の厚みを単純に増やすことで輝度の向上つまり電流効率の向上が可能となる。加えて、中間膜が存在しないために光学的界面の存在による干渉の影響がなくなり、発光層14の厚みを自由に設計することが可能となる。ここに「発光層14の厚さ」とは、略均一媒質とみなせる厚さをいう。
【0027】
触媒物質15は、例えば、1nm以上100nm以下の粒径を有する粒子状物質であることが好ましい。触媒物質15を粒子状とすれば、後述する製造工程において、溶液状の発光層14材料へ含有させる場合に、粒子状の触媒物質15を分散させた溶液との混合により制御しやすいからである。なお、触媒物質15の形状や寸法は特に限定されず、粒子状物質のほか、例えば100nm以上の長さを有する柱状物質でもよい。
【0028】
触媒物質15としては、例えば、光触媒物質が挙げられる。光触媒物質は、図2(A)および図2(B)に示したように、電磁波Wを吸収し励起することで、有機発光分子との電子供与および/または受容を生じるものである。
【0029】
また、触媒物質15は、有機電荷移動錯体でもよい。有機電荷移動錯体は、図3(A)および図3(B)に示したように、正電極12および負電極13の間に印加される電界(駆動電界)とは別の外部電界および/または外部磁界Fによって分極または相転移し、これにより有機発光分子との電子供与および/または受容を生じるものである。
【0030】
外部電界Fは、印加方向または周波数を駆動電界(正電極12および負電極13により発生させる電界)の方向または周波数とは異ならせたものである。具体的には、外部電界Fは、マイクロ波〜光波程度の比較的大きな周波数を有するものとし、駆動電界は直流電界とすることが可能である。
【0031】
あるいは、触媒物質15は、有機発光分子14Cとの間で酸化還元反応を生じる物質でもよい。このような触媒物質15は、図4(A)および図4(B)に示したように、温度および/または応力の上昇により、酸化還元反応速度が増大、または反応に寄与する分子が増加し、これにより有機発光分子との電子供与および/または受容を生じるものである。
【0032】
このような触媒物質15による有機発光分子14Cとの電子供与/受容(キャリアの発生)には、上述した電磁波W、外部電界および/または外部磁界F、温度または応力の上昇のいずれかを必要とする。一方、負電荷および正電荷が発光層14中を伝導する(キャリアの伝導)には駆動電界が必須である。
【0033】
更に、触媒物質15は、少なくとも2種類以上の物質からなり、そのうち1つが電子供与性物質であり、別の1つが電子受容性物質であるものでもよい。その場合、電子供与性物質と電子受容性物質との距離は5nm以下であることが好ましい。5nmという上限値は、電子供与性物質と電子受容性物質との間の電荷移動が容易に生じ得る(ペアで動作しうる)ことを想定しており、5nmは、電気伝導は生じないけれどもトンネル効果が可能な距離であることから設定したものである。
【0034】
図5は、このような触媒物質15の一例として、HBC−TNF(ヘキサベンゾコロネン−トリニトロフルオレノン)の構造を表したものである。HBC−TNFは、HBC(電子供与物質に該当)とTNF(電子受容物質に該当)とがO−O鎖で結合された構成を有し、このO−O鎖の結合距離は約1nm(10A)である。
【0035】
なお、正電極12,負電極13および発光層14は、必要に応じて保護層(図示せず)により被覆されていてもよい。保護層は、例えば、厚みが30nm以上100nm以下の、酸化シリコン(SiO2 ),窒化シリコン(SiN)などにより構成されている。なお、保護層の保護効果は上記の厚み範囲であれば実現可能であり、また厚すぎると応力などによりクラックが入る可能性がある。また、光学干渉などの効果は上記厚み範囲内で適正に設計可能である。
【0036】
この有機電界発光素子は、例えば次のようにして製造することができる。
【0037】
まず、上述した材料よりなる基板11を用意し、この基板11に、例えば蒸着法により、上述した材料よりなる正電極12を形成する。
【0038】
次いで、正電極12の上に、触媒物質15を含有する発光層14を形成する。発光層14の形成方法は、乾式成膜(ドライプロセス)または湿式成膜(ウェットプロセス)のいずれも用いることが可能である。以下、それぞれの成膜方法について例を挙げて説明する。
【0039】
(ドライプロセスによる方法:共蒸着)
例えば、発光層媒質14Aとして、例えば真空蒸着法で成膜が可能なAlq3を用い、触媒物質15として同様に真空蒸着法で成膜が可能なMoO3(三酸化モリブデン)を用いる場合には、Alq3とMoO3とを、同一の真空蒸着装置内で同時蒸着(共蒸着)することが可能である。その際、MoO3の成膜レートをAlq3の成膜レートに対して1/10以下とする。これにより、Alq3よりなる発光層媒質14Aの中にMoO3微粒子よりなる触媒物質15が分散された発光層14が得られる。
【0040】
(ドライプロセスによる方法:蒸着+PLD(パルスレーザーデポジション))
一方、例えば、発光層媒質14Aとして、例えば真空蒸着法で成膜が可能なAlq3を用い、触媒物質15として抵抗加熱による真空蒸着法では成膜が困難なWO3(三酸化タングステン)を用いる場合には、蒸着用の加熱ボートとPLD用のターゲットを備えた真空装置を用い、Alq3を蒸着法で、WO3をPLD法で同時成膜する。なお、PLD法は、チャンバー外部からエキシマレーザー(ArF:193nm、KrF:248nm)やNd:YAGレーザーなどのレーザー光をターゲットに照射することで、ターゲットから原子(分子)の引き剥がし(アブレーション)を行い、ターゲットに対向する基板に薄膜を形成する成膜方法である。これにより融点や沸点の高い酸化物も容易に成膜できる。
【0041】
(ウェットプロセスによる方法)
ウェットプロセスによる成膜は、スピンコート法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法など様々な方法があり、成膜に必要な溶液を用意すればどの手法でも発光層14の成膜が可能である。
【0042】
成膜に必要な溶液は、溶液態様の発光層材料と、触媒物質15を溶媒に分散させた溶液とを混合することにより得る。具体的には、触媒物質15として例えば平均粒子径5nmのV2O5ナノ粒子を例えばエタノール溶媒に分散してなるコロイド液と、PPV(ポリフェニレンビニレン)系の材料を例えばジクロロエタン溶媒に溶解してなる溶液とを混合することにより、成膜に必要な溶液が得られる。
【0043】
発光層14を形成したのち、発光層14の上に、例えば蒸着法により、上述した材料よりなる負電極13を形成する。続いて、必要に応じて、例えば蒸着法により、上述した材料よりなる保護層(図示せず)を形成して封止する。
【0044】
この有機電界発光素子では、電磁波W、外部電界および/あるいは外部磁界F、または温度および/または応力の上昇により、触媒物質15が、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容する。これにより、触媒物質15は電気的に中性でありながら発光層14中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子を発生させる。負電荷および正電荷は、駆動電界の作用により発光層14中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで有機発光分子が励起し発光する。この光は、基板11の側および/または負電極13の側から取り出される。
【0045】
ここでは、触媒物質15から正負キャリアが同数供給されるので、従来の外部注入のみによりキャリアを供給する駆動方法よりもバランスの良いキャリア再結合が可能となり、正電極12および負電極13の電圧降下によるキャリア注入効率の低下などの影響が少なくなる。
【0046】
このように本実施の形態では、発光層14に、有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質15を含有させて、この触媒物質15により発光に必要なキャリアを供給するようにしたので、発光に必要なキャリアを外部からの電流注入によらずに供給することが可能となる。また、触媒物質15から正負キャリアが同数供給されるので、従来の外部注入のみによりキャリアを供給する駆動方法よりもバランスの良いキャリア再結合が可能となる。よって、正電極12および負電極13の電圧降下によるキャリア注入効率の低下などの影響が少なくなり、特に大面積で安定した発光特性を得ることが可能となる。
【0047】
更に、キャリアを発光層14内部で発生可能となることから、正電極12と負電極13との間の距離に相当する発光層14の厚みを100nm以下とする必要がなくなる。更に、従来のような電荷発生層やコネクタ層などの中間膜を設けることなく、発光層14の厚みを単純に増やすことで輝度の向上つまり電流効率の向上が可能となる。加えて、中間膜が存在しないために光学的界面の存在による干渉の影響がなくなり、発光層14の厚みを自由に設計することが可能となる。
【0048】
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る有機電界発光素子の断面構成を表したものである。この有機電界発光素子は、発光波長の互いに異なる発光層を二つ以上(図6では例えば三つ)有していることを除いては、上記第1の実施の形態と同様の構成を有し、同様にして製造することが可能であり、その作用および効果も同様である。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0049】
この有機電界発光素子は、発光波長の互いに異なる三つの発光層、すなわち赤色発光層14R,緑色発光層14Gおよび青色発光層14Bを有する白色発光の有機電界発光素子である。赤色発光層14R,緑色発光層14Gおよび青色発光層14Bは、互いに接して設けられている。よって、従来のような中間膜は不要であり、発光輝度の最大化を容易にすることが可能となる。
【0050】
この有機電界発光素子では、第1の実施の形態と同様にして、発光に必要なキャリアが触媒物質15により供給され、赤色発光層14R,緑色発光層14Gおよび青色発光層14Bのそれぞれにおいて有機発光分子が発光し、白色光が発生する。この光は、基板11の側および/または負電極13の側から取り出される。
【0051】
(照明装置)
図7および図8は、この第2の実施の形態の有機電界発光素子が適用される卓上用の照明装置の外観を表したものである。この照明装置は、例えば、基台41に設けられた支柱42に、照明部43を取り付けたものであり、この照明部43は、上記第2の実施の形態に係る白色発光の有機電界発光素子により構成されている。照明部43は、基板11として樹脂基板などの湾曲可能なものを用いることにより、図7に示した筒状、または図8に示した曲面状など、任意の形状とすることが可能である。
【0052】
図9は、第2の実施の形態の有機電界発光素子が適用される室内用の照明装置の外観を表したものである。この照明装置は、例えば、上記第2の実施の形態に係る白色発光の有機電界発光素子により構成された照明部44を有している。照明部44は、建造物の天井50Aに適宜の個数および間隔で配置されている。なお、照明部44は、用途に応じて、天井50Aに限らず、壁50Bまたは床(図示せず)など任意の場所に設置することが可能である。
【0053】
(液晶表示装置)
図10は、第2の実施の形態の有機電界発光素子が適用される液晶表示装置の概略構成を表したものである。この液晶表示装置は、液晶テレビジョン装置などとして用いられるものであり、液晶パネル61と、バックライト装置(面光源装置)62とを有する透過型カラー液晶表示装置である。
【0054】
液晶パネル61は、一対の透明基板の間に液晶層を挟んだ透過型液晶表示パネルである。透明基板の内面には透明電極膜、配向膜、カラーフィルタ等が設けられている。透明基板の外面には、それぞれ偏光板が設けられている。なお、必要に応じて、透明基板と偏光板との間には、位相差板等の光学補償シートが配置されていてもよい。
【0055】
バックライト装置62は、光源63と、拡散板64とを有しており、光源63は、上記第2の実施の形態に係る白色発光の有機電界発光素子により構成されている。拡散板64は、光学機能シート65と適宜組み合わせられてスクリーンを構成するものであり、第1面64Aに光源63からの光が照射され、第1面64Aの反対側の第2面64Bから、光が再放射されるようになっている。拡散板64は、光源63から距離Dを隔てて置かれている。光源63から放射された光は、拡散板64および光学機能シート65よりなるスクリーンと、光源63との間の空間で混合されることで、拡散板64に入射される光が均一化されるようになっている。
【0056】
(変形例1)
図11は、変形例1に係る有機電界発光素子の断面構成を表したものである。この有機電界発光素子は、交流電源20により、正電極12および負電極13の間に駆動電界を印加すると共にこの駆動電界の方向を一定周期で切り替えるようにしたものである。交流電源20は、駆動電界として、例えば数kHz以下の交流電界を印加する。このことを除いては、変形例1の有機電界発光素子は上記第1の実施の形態と同様の構成を有し、同様にして製造することができ、その作用および効果も同様である。
【0057】
この有機電界発光素子では、第1の実施の形態と同様に発光に必要なキャリアが触媒物質15により供給されるので、交流電界による発光も可能となる。発生した光は、基板11の側および/または負電極13の側から取り出される。
【0058】
(変形例2)
図12は、変形例2に係る有機電界発光素子の断面構成を表したものである。この有機電界発光素子は、正電極12と発光層14との間、および負電極13と発光層14との間に絶縁層16を有していることを除いては、上記第1の実施の形態と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0059】
絶縁層16は、正電極12と発光層14との間、および負電極13と発光層14との間を電気的に絶縁し、正電極12または負電極13から発光層14への電荷の注入を行わないようにするためのものである。絶縁層16は、例えば、厚みが30nm以上100nm以下であり、酸化シリコン(SiO2 ),窒化シリコン(SiN)などにより構成されている。絶縁層16の絶縁効果は上記の厚み範囲であれば実現可能であり、また厚すぎると応力などによりクラックが入る可能性がある。また、光学干渉などの効果は上記厚み範囲内で適正に設計可能である。
【0060】
この有機電界発光素子では、第1の実施の形態と同様にして、発光に必要なキャリアが触媒物質15により供給され、有機発光分子が発光する。この光は、基板11の側および/または負電極13の側から取り出される。
【0061】
このとき、第1の実施の形態では、触媒物質15により供給されたキャリアによる発光と共に、正電極12および負電極13からもキャリアが注入され、これによる発光も生じうる。これに対して、本変形例では、正電極12と発光層14との間、および負電極13と発光層14との間は絶縁層16により電気的に絶縁されており、正電極12または負電極13から発光層14への電荷の注入は行われないので、発光に必要なキャリアは触媒物質15のみにより供給され、正電極12および負電極13はキャリアを伝導させる駆動電界を発生させることのみに寄与する。よって、正電極12および負電極13の電圧降下によるキャリア注入効率の低下などの影響がなくなり、特に大面積での発光特性が安定する。
【0062】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。
【0063】
また、例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0064】
更に、上記実施の形態では、有機電界発光素子の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
11…基板、12…正電極、13…負電極、14…発光層、15…触媒物質、16…絶縁層、20…交流電源
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面光源または表示装置に用いられる有機電界発光素子およびその駆動方法、並びにこの有機電界発光素子を備えた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(有機EL素子)は、陽極と陰極との間に、有機化合物からなる発光層を有し、低電圧駆動の大面積表示素子を実現するものとして近年注目されている。1987年、Tangらは素子の高効率化のため、キャリア輸送性の異なる有機化合物を積層し、ホールと電子がそれぞれ陽極、陰極よりバランスよく注入される構造とし、実用化に十分な高輝度、高効率を得ることに成功した(非特許文献1参照。)。しかしながら、発光層内のキャリア伝導はいわゆる分子間のホッピング伝導によるものであり、発光層の膜厚が厚いと注入された正負キャリアが再結合する前に伝導過程で失活して熱に変わってしまう。そのため、発光層の厚さはおおよそ100nm程度以下が良いとされた。
【0003】
一方、高輝度および長寿命化の両立を意図して、いわゆるスタック型有機EL素子も提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。スタック型有機EL素子は、電気的にフローティングしている電荷発生層またはコネクタ層なるものを介して発光ユニットを数段重ねたものである。発光層が1段の場合には、前述の通り厚さが100nm程度以下としかすることができない。これに比べて、発光層をN段にした場合には、キャリアの失活なしに膜厚をN倍にしたのと同等にでき、見かけの電流効率を最大でN倍とすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−39617号公報
【特許文献2】特許第3933591号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】C. W. Tang、外1名、“Organic electroluminescent diodes”、Applied Physics Letters、American Institute of Physics、1987年、第51巻、第12号、p.913−p.915
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Tangらの報告以降、現在までに開発された有機EL素子の構造は、その素子特性改善つまり、電極からのキャリア注入性能の向上、正/負の両キャリア輸送のバランス改善、発光層での効率およびバランスの良いキャリア再結合などを目的としていた。これは、有機EL素子の発光層が本質的に絶縁体であり、キャリアが発光層中に存在しないために、発光に必要な正/負、両キャリアを外部から発光層内へバランス良く注入する必要があるからである。一般に、優れた素子特性を発現させるためには、電極と発光層以外に電子注入層/電子輸送層/正孔輸送層/正孔注入層のうち全部または一部を設ける必要があった。更に、上記の素子構成より電極が正極と負極とに明確に定義され、定められた極性に従い電界を印加する必要があった。
【0007】
また、有機EL素子は面発光を特徴としているが、電流注入駆動であるために電極の抵抗成分による電極内の電圧降下により、面内での電流注入が電極面積の増加とともに不安定になるという問題があった。この問題は特に、光取り出しのためにITO、IZOなどの比抵抗の高い透明材料を電極に用いた場合においては顕著となっていた。
【0008】
一方、従来のスタック型の構造は光学薄膜の積層構造としての性質を有しており、各層の膜厚と光学定数で規定される光波の干渉条件が存在する。このことは最終的な光取り出し効率が最大となるよう膜厚と光学定数を設計しなければならないことを意味しており、その設計値から外れた構造では発光層の数がN段でも電流効率がN倍とはならなかった。
【0009】
特に発光波長の異なる複数の発光層を含むスタック型有機EL素子の場合には、それぞれの波長の光取り出し効率が同時に最大となるように膜厚や光学定数を設計することは極めて困難であった。そのため、発光波長の異なる複数の発光層を積層することにより白色発光を実現しようとすると、輝度向上の点で不利となってしまっていた。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、発光に必要なキャリアを外部からの電流注入によらずに供給することが可能な有機電界発光素子およびその駆動方法、並びにこの有機電界発光素子を備えた照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による有機電界発光素子は、二つの電極と共に、有機発光分子を含む少なくとも一層の発光層を備え、発光層は、有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質を含有し、触媒物質は、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容することで、触媒物質は電気的に中性でありながら発光層中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子を発生させ、負電荷および正電荷が二つの電極の間に印加される駆動電界の作用により発光層中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで有機発光分子が励起し発光するものである。
【0012】
本発明による有機電界発光素子の駆動方法は、二つの電極と共に、有機発光分子を含む少なくとも一層の発光層を備え、発光層は、有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質を含有し、触媒物質は、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容することで、触媒物質は電気的に中性でありながら発光層中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子を発生させ、負電荷および正電荷が二つの電極の間に印加される駆動電界の作用により発光層中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで有機発光分子が励起し発光する有機電界発光素子を駆動するものである。
【0013】
本発明による照明装置は、上記本発明の有機電界発光素子を備えたものである。
【0014】
本発明の有機電界発光素子、または本発明の有機電界発光素子の駆動方法では、触媒物質が、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容する。これにより、触媒物質は電気的に中性でありながら発光層中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子が発生する。負電荷および正電荷は、二つの電極の間に印加される駆動電界の作用により発光層中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで有機発光分子が励起し発光する。
【0015】
本発明の照明装置では、上記本発明の有機電界発光素子で発生した光により照明がなされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有機電界発光素子、または本発明の有機電界発光素子の駆動方法によれば、発光層に、有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質を含有させて、この触媒物質により発光に必要なキャリアを供給するようにしたので、発光に必要なキャリアを外部からの電流注入によらずに供給することが可能となる。この有機電界発光素子を用いて照明装置を構成すれば、電極からの電流注入によらない安定した発光が可能となり、大面積での均一な発光が求められる用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した触媒物質の一例およびその動作を説明するための図である。
【図3】図1に示した触媒物質の他の例およびその動作を説明するための図である。
【図4】図1に示した触媒物質の更に他の例およびその動作を説明するための図である。
【図5】図1に示した触媒物質の更に他の例を表す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【図7】図6に示した有機電界発光素子を備えた照明装置の一例の外観を表す斜視図である。
【図8】照明装置の他の例の外観を表す斜視図である。
【図9】照明装置の更に他の例の外観を表す斜視図である。
【図10】図6に示した有機電界発光素子を備えた液晶表示装置の概略構成を表す断面図である。
【図11】変形例1に係る有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【図12】変形例2に係る有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(発光層が一層の例)
2.第2の実施の形態(発光層を二つ以上備えた例;照明装置、液晶表示装置)
3.変形例1(交流駆動)
4.変形例2(電極と発光層との間に絶縁層を設ける例)
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る有機電界発光素子の構成を表すものである。この有機電界発光素子は、照明装置または液晶用バックライト装置などに用いられるものであり、例えば、基板11上に、正電極(アノード電極)12および負電極(カソード電極)13と共に発光層14を有している。正電極12,発光層14および負電極13は、例えば、基板11上にこの順に積層されている。正電極12および負電極13は、本発明における「二つの電極」の一具体例に対応する。
【0020】
基板11は、例えば、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などにより構成されている。
【0021】
正電極12は、例えば、ITO(インジウム・スズ複合酸化物)またはIZO(インジウム・亜鉛複合酸化物)により構成されている。また、正電極12は、反射電極により構成してもよい。その場合、正電極12は、例えば、厚みが100nm以上1000nm以下であり、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。例えば、正電極12を構成する材料としては、クロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金が挙げられる。
【0022】
負電極13は、例えば、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好ましい。また、負電極13は、ITO(インジウム・スズ複合酸化物)またはIZO(インジウム・亜鉛複合酸化物)により構成されていてもよい。負電極13の厚みは、例えば、30nm以上100nm以下であることが好ましい。30nm以上であれば良好な電気伝導を得ることが可能であり、100nm以下であれば表面粗さの影響が許容できるからである。
【0023】
発光層14は、有機発光分子を含み、正電極12および負電極13の間に印加された駆動電界により正電荷と負電荷との再結合が起こり、光を発生するものである。発光層14の材料は発光色により異なっている。赤色の光を発生する発光層14は、例えば、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(ADN)に2,6≡ビス[4´≡メトキシジフェニルアミノ)スチリル]≡1,5≡ジシアノナフタレン(BSN)を30重量%混合したものにより構成されている。緑色の光を発生する発光層14は、例えば、8≡ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3 )、またはADNにクマリン6(Coumarin6)を5体積%混合したものにより構成されている。青色の光を発生する発光層14は、例えば、ADNに4,4´≡ビス[2≡{4≡(N,N≡ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を2.5重量%混合したものにより構成されている。また、発光層14は、高分子材料により構成されていてもよい。
【0024】
この発光層14は、有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質15を含有している。この触媒物質15は、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容することで、触媒物質15は電気的に中性でありながら発光層14中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子を発生させ、負電荷および正電荷が駆動電界の作用により発光層14中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで有機発光分子が励起し発光するものである。これにより、この有機電界発光素子では、発光に必要なキャリアを外部からの電流注入によらずに供給することが可能となっている。
【0025】
触媒物質15は、例えば、発光層媒質14A中に分散されている。なお、発光層媒質14Aとは、発光層14の触媒物質15以外の材料(ホスト材料および有機発光分子すなわちゲスト材料)をいう。
【0026】
発光層14の厚さは、例えば100nm以上であることが好ましい。輝度つまり電流効率を高めることが可能となるからである。また、本実施の形態では上述したように触媒物質15によりキャリアを発光層14内部で供給可能となることから、正電極12と負電極13との間の距離に相当する発光層14の厚みを100nm以下とする必要はなくなる。従って、従来のような電荷発生層やコネクタ層などの中間膜を設けることなく、発光層14の厚みを単純に増やすことで輝度の向上つまり電流効率の向上が可能となる。加えて、中間膜が存在しないために光学的界面の存在による干渉の影響がなくなり、発光層14の厚みを自由に設計することが可能となる。ここに「発光層14の厚さ」とは、略均一媒質とみなせる厚さをいう。
【0027】
触媒物質15は、例えば、1nm以上100nm以下の粒径を有する粒子状物質であることが好ましい。触媒物質15を粒子状とすれば、後述する製造工程において、溶液状の発光層14材料へ含有させる場合に、粒子状の触媒物質15を分散させた溶液との混合により制御しやすいからである。なお、触媒物質15の形状や寸法は特に限定されず、粒子状物質のほか、例えば100nm以上の長さを有する柱状物質でもよい。
【0028】
触媒物質15としては、例えば、光触媒物質が挙げられる。光触媒物質は、図2(A)および図2(B)に示したように、電磁波Wを吸収し励起することで、有機発光分子との電子供与および/または受容を生じるものである。
【0029】
また、触媒物質15は、有機電荷移動錯体でもよい。有機電荷移動錯体は、図3(A)および図3(B)に示したように、正電極12および負電極13の間に印加される電界(駆動電界)とは別の外部電界および/または外部磁界Fによって分極または相転移し、これにより有機発光分子との電子供与および/または受容を生じるものである。
【0030】
外部電界Fは、印加方向または周波数を駆動電界(正電極12および負電極13により発生させる電界)の方向または周波数とは異ならせたものである。具体的には、外部電界Fは、マイクロ波〜光波程度の比較的大きな周波数を有するものとし、駆動電界は直流電界とすることが可能である。
【0031】
あるいは、触媒物質15は、有機発光分子14Cとの間で酸化還元反応を生じる物質でもよい。このような触媒物質15は、図4(A)および図4(B)に示したように、温度および/または応力の上昇により、酸化還元反応速度が増大、または反応に寄与する分子が増加し、これにより有機発光分子との電子供与および/または受容を生じるものである。
【0032】
このような触媒物質15による有機発光分子14Cとの電子供与/受容(キャリアの発生)には、上述した電磁波W、外部電界および/または外部磁界F、温度または応力の上昇のいずれかを必要とする。一方、負電荷および正電荷が発光層14中を伝導する(キャリアの伝導)には駆動電界が必須である。
【0033】
更に、触媒物質15は、少なくとも2種類以上の物質からなり、そのうち1つが電子供与性物質であり、別の1つが電子受容性物質であるものでもよい。その場合、電子供与性物質と電子受容性物質との距離は5nm以下であることが好ましい。5nmという上限値は、電子供与性物質と電子受容性物質との間の電荷移動が容易に生じ得る(ペアで動作しうる)ことを想定しており、5nmは、電気伝導は生じないけれどもトンネル効果が可能な距離であることから設定したものである。
【0034】
図5は、このような触媒物質15の一例として、HBC−TNF(ヘキサベンゾコロネン−トリニトロフルオレノン)の構造を表したものである。HBC−TNFは、HBC(電子供与物質に該当)とTNF(電子受容物質に該当)とがO−O鎖で結合された構成を有し、このO−O鎖の結合距離は約1nm(10A)である。
【0035】
なお、正電極12,負電極13および発光層14は、必要に応じて保護層(図示せず)により被覆されていてもよい。保護層は、例えば、厚みが30nm以上100nm以下の、酸化シリコン(SiO2 ),窒化シリコン(SiN)などにより構成されている。なお、保護層の保護効果は上記の厚み範囲であれば実現可能であり、また厚すぎると応力などによりクラックが入る可能性がある。また、光学干渉などの効果は上記厚み範囲内で適正に設計可能である。
【0036】
この有機電界発光素子は、例えば次のようにして製造することができる。
【0037】
まず、上述した材料よりなる基板11を用意し、この基板11に、例えば蒸着法により、上述した材料よりなる正電極12を形成する。
【0038】
次いで、正電極12の上に、触媒物質15を含有する発光層14を形成する。発光層14の形成方法は、乾式成膜(ドライプロセス)または湿式成膜(ウェットプロセス)のいずれも用いることが可能である。以下、それぞれの成膜方法について例を挙げて説明する。
【0039】
(ドライプロセスによる方法:共蒸着)
例えば、発光層媒質14Aとして、例えば真空蒸着法で成膜が可能なAlq3を用い、触媒物質15として同様に真空蒸着法で成膜が可能なMoO3(三酸化モリブデン)を用いる場合には、Alq3とMoO3とを、同一の真空蒸着装置内で同時蒸着(共蒸着)することが可能である。その際、MoO3の成膜レートをAlq3の成膜レートに対して1/10以下とする。これにより、Alq3よりなる発光層媒質14Aの中にMoO3微粒子よりなる触媒物質15が分散された発光層14が得られる。
【0040】
(ドライプロセスによる方法:蒸着+PLD(パルスレーザーデポジション))
一方、例えば、発光層媒質14Aとして、例えば真空蒸着法で成膜が可能なAlq3を用い、触媒物質15として抵抗加熱による真空蒸着法では成膜が困難なWO3(三酸化タングステン)を用いる場合には、蒸着用の加熱ボートとPLD用のターゲットを備えた真空装置を用い、Alq3を蒸着法で、WO3をPLD法で同時成膜する。なお、PLD法は、チャンバー外部からエキシマレーザー(ArF:193nm、KrF:248nm)やNd:YAGレーザーなどのレーザー光をターゲットに照射することで、ターゲットから原子(分子)の引き剥がし(アブレーション)を行い、ターゲットに対向する基板に薄膜を形成する成膜方法である。これにより融点や沸点の高い酸化物も容易に成膜できる。
【0041】
(ウェットプロセスによる方法)
ウェットプロセスによる成膜は、スピンコート法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法など様々な方法があり、成膜に必要な溶液を用意すればどの手法でも発光層14の成膜が可能である。
【0042】
成膜に必要な溶液は、溶液態様の発光層材料と、触媒物質15を溶媒に分散させた溶液とを混合することにより得る。具体的には、触媒物質15として例えば平均粒子径5nmのV2O5ナノ粒子を例えばエタノール溶媒に分散してなるコロイド液と、PPV(ポリフェニレンビニレン)系の材料を例えばジクロロエタン溶媒に溶解してなる溶液とを混合することにより、成膜に必要な溶液が得られる。
【0043】
発光層14を形成したのち、発光層14の上に、例えば蒸着法により、上述した材料よりなる負電極13を形成する。続いて、必要に応じて、例えば蒸着法により、上述した材料よりなる保護層(図示せず)を形成して封止する。
【0044】
この有機電界発光素子では、電磁波W、外部電界および/あるいは外部磁界F、または温度および/または応力の上昇により、触媒物質15が、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容する。これにより、触媒物質15は電気的に中性でありながら発光層14中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子を発生させる。負電荷および正電荷は、駆動電界の作用により発光層14中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで有機発光分子が励起し発光する。この光は、基板11の側および/または負電極13の側から取り出される。
【0045】
ここでは、触媒物質15から正負キャリアが同数供給されるので、従来の外部注入のみによりキャリアを供給する駆動方法よりもバランスの良いキャリア再結合が可能となり、正電極12および負電極13の電圧降下によるキャリア注入効率の低下などの影響が少なくなる。
【0046】
このように本実施の形態では、発光層14に、有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質15を含有させて、この触媒物質15により発光に必要なキャリアを供給するようにしたので、発光に必要なキャリアを外部からの電流注入によらずに供給することが可能となる。また、触媒物質15から正負キャリアが同数供給されるので、従来の外部注入のみによりキャリアを供給する駆動方法よりもバランスの良いキャリア再結合が可能となる。よって、正電極12および負電極13の電圧降下によるキャリア注入効率の低下などの影響が少なくなり、特に大面積で安定した発光特性を得ることが可能となる。
【0047】
更に、キャリアを発光層14内部で発生可能となることから、正電極12と負電極13との間の距離に相当する発光層14の厚みを100nm以下とする必要がなくなる。更に、従来のような電荷発生層やコネクタ層などの中間膜を設けることなく、発光層14の厚みを単純に増やすことで輝度の向上つまり電流効率の向上が可能となる。加えて、中間膜が存在しないために光学的界面の存在による干渉の影響がなくなり、発光層14の厚みを自由に設計することが可能となる。
【0048】
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る有機電界発光素子の断面構成を表したものである。この有機電界発光素子は、発光波長の互いに異なる発光層を二つ以上(図6では例えば三つ)有していることを除いては、上記第1の実施の形態と同様の構成を有し、同様にして製造することが可能であり、その作用および効果も同様である。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0049】
この有機電界発光素子は、発光波長の互いに異なる三つの発光層、すなわち赤色発光層14R,緑色発光層14Gおよび青色発光層14Bを有する白色発光の有機電界発光素子である。赤色発光層14R,緑色発光層14Gおよび青色発光層14Bは、互いに接して設けられている。よって、従来のような中間膜は不要であり、発光輝度の最大化を容易にすることが可能となる。
【0050】
この有機電界発光素子では、第1の実施の形態と同様にして、発光に必要なキャリアが触媒物質15により供給され、赤色発光層14R,緑色発光層14Gおよび青色発光層14Bのそれぞれにおいて有機発光分子が発光し、白色光が発生する。この光は、基板11の側および/または負電極13の側から取り出される。
【0051】
(照明装置)
図7および図8は、この第2の実施の形態の有機電界発光素子が適用される卓上用の照明装置の外観を表したものである。この照明装置は、例えば、基台41に設けられた支柱42に、照明部43を取り付けたものであり、この照明部43は、上記第2の実施の形態に係る白色発光の有機電界発光素子により構成されている。照明部43は、基板11として樹脂基板などの湾曲可能なものを用いることにより、図7に示した筒状、または図8に示した曲面状など、任意の形状とすることが可能である。
【0052】
図9は、第2の実施の形態の有機電界発光素子が適用される室内用の照明装置の外観を表したものである。この照明装置は、例えば、上記第2の実施の形態に係る白色発光の有機電界発光素子により構成された照明部44を有している。照明部44は、建造物の天井50Aに適宜の個数および間隔で配置されている。なお、照明部44は、用途に応じて、天井50Aに限らず、壁50Bまたは床(図示せず)など任意の場所に設置することが可能である。
【0053】
(液晶表示装置)
図10は、第2の実施の形態の有機電界発光素子が適用される液晶表示装置の概略構成を表したものである。この液晶表示装置は、液晶テレビジョン装置などとして用いられるものであり、液晶パネル61と、バックライト装置(面光源装置)62とを有する透過型カラー液晶表示装置である。
【0054】
液晶パネル61は、一対の透明基板の間に液晶層を挟んだ透過型液晶表示パネルである。透明基板の内面には透明電極膜、配向膜、カラーフィルタ等が設けられている。透明基板の外面には、それぞれ偏光板が設けられている。なお、必要に応じて、透明基板と偏光板との間には、位相差板等の光学補償シートが配置されていてもよい。
【0055】
バックライト装置62は、光源63と、拡散板64とを有しており、光源63は、上記第2の実施の形態に係る白色発光の有機電界発光素子により構成されている。拡散板64は、光学機能シート65と適宜組み合わせられてスクリーンを構成するものであり、第1面64Aに光源63からの光が照射され、第1面64Aの反対側の第2面64Bから、光が再放射されるようになっている。拡散板64は、光源63から距離Dを隔てて置かれている。光源63から放射された光は、拡散板64および光学機能シート65よりなるスクリーンと、光源63との間の空間で混合されることで、拡散板64に入射される光が均一化されるようになっている。
【0056】
(変形例1)
図11は、変形例1に係る有機電界発光素子の断面構成を表したものである。この有機電界発光素子は、交流電源20により、正電極12および負電極13の間に駆動電界を印加すると共にこの駆動電界の方向を一定周期で切り替えるようにしたものである。交流電源20は、駆動電界として、例えば数kHz以下の交流電界を印加する。このことを除いては、変形例1の有機電界発光素子は上記第1の実施の形態と同様の構成を有し、同様にして製造することができ、その作用および効果も同様である。
【0057】
この有機電界発光素子では、第1の実施の形態と同様に発光に必要なキャリアが触媒物質15により供給されるので、交流電界による発光も可能となる。発生した光は、基板11の側および/または負電極13の側から取り出される。
【0058】
(変形例2)
図12は、変形例2に係る有機電界発光素子の断面構成を表したものである。この有機電界発光素子は、正電極12と発光層14との間、および負電極13と発光層14との間に絶縁層16を有していることを除いては、上記第1の実施の形態と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0059】
絶縁層16は、正電極12と発光層14との間、および負電極13と発光層14との間を電気的に絶縁し、正電極12または負電極13から発光層14への電荷の注入を行わないようにするためのものである。絶縁層16は、例えば、厚みが30nm以上100nm以下であり、酸化シリコン(SiO2 ),窒化シリコン(SiN)などにより構成されている。絶縁層16の絶縁効果は上記の厚み範囲であれば実現可能であり、また厚すぎると応力などによりクラックが入る可能性がある。また、光学干渉などの効果は上記厚み範囲内で適正に設計可能である。
【0060】
この有機電界発光素子では、第1の実施の形態と同様にして、発光に必要なキャリアが触媒物質15により供給され、有機発光分子が発光する。この光は、基板11の側および/または負電極13の側から取り出される。
【0061】
このとき、第1の実施の形態では、触媒物質15により供給されたキャリアによる発光と共に、正電極12および負電極13からもキャリアが注入され、これによる発光も生じうる。これに対して、本変形例では、正電極12と発光層14との間、および負電極13と発光層14との間は絶縁層16により電気的に絶縁されており、正電極12または負電極13から発光層14への電荷の注入は行われないので、発光に必要なキャリアは触媒物質15のみにより供給され、正電極12および負電極13はキャリアを伝導させる駆動電界を発生させることのみに寄与する。よって、正電極12および負電極13の電圧降下によるキャリア注入効率の低下などの影響がなくなり、特に大面積での発光特性が安定する。
【0062】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。
【0063】
また、例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0064】
更に、上記実施の形態では、有機電界発光素子の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
11…基板、12…正電極、13…負電極、14…発光層、15…触媒物質、16…絶縁層、20…交流電源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの電極と共に、有機発光分子を含む少なくとも一層の発光層を備え、
前記発光層は、前記有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質を含有し、前記触媒物質は、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容することで、前記触媒物質は電気的に中性でありながら前記発光層中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子を発生させ、前記負電荷および前記正電荷が前記二つの電極の間に印加される駆動電界の作用により前記発光層中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで前記有機発光分子が励起し発光する
有機電界発光素子。
【請求項2】
前記発光層を二つ以上備え、前記二つ以上の発光層は互いに接していると共に互いに異なる発光波長を有する
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記発光層の略均一媒質とみなせる厚さが100nm以上である
請求項1または2記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記触媒物質は1nm以上100nm以下の粒径を有する粒子状物質である
請求項3記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記触媒物質は電磁波を吸収し励起することで、前記有機発光分子との電子供与および/または受容を生じる
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記触媒物質は、前記駆動電界とは別の外部電界および/または外部磁界により前記有機発光分子との電子供与および/または受容を生じる
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記触媒物質は温度および/または応力の上昇により前記有機発光分子との電子供与および/または受容を生じる
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記触媒物質は少なくとも2種類以上の物質からなり、そのうち1つが電子供与性物質であり、別の1つが電子受容性物質であり、前記電子供与性物質と前記電子受容性物質との距離は5nm以下である
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記二つの電極の間に駆動電界を印加すると共に前記駆動電界の方向を一定周期で切り替える電源を備えた
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記電極と前記発光層との間に絶縁層を備えた
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
二つの電極と共に、有機発光分子を含む少なくとも一層の発光層を備え、前記発光層は、前記有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質を含有し、前記触媒物質は、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容することで、前記触媒物質は電気的に中性でありながら前記発光層中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子を発生させ、前記負電荷および前記正電荷が前記二つの電極の間に印加される駆動電界の作用により前記発光層中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで前記有機発光分子が励起し発光する
有機電界発光素子の駆動方法。
【請求項12】
前記有機電界発光素子の二つの電極と前記発光層との間に絶縁層を設けて電気的に絶縁し、前記二つの電極から前記発光層への電荷の注入を行わない
請求項11記載の有機電界発光素子の駆動方法。
【請求項13】
二つの電極と共に、有機発光分子を含む少なくとも一層の発光層を備え、
前記発光層は、前記有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質を含有し、前記触媒物質は、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容することで、前記触媒物質は電気的に中性でありながら前記発光層中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子を発生させ、前記負電荷および前記正電荷が前記二つの電極の間に印加される駆動電界の作用により前記発光層中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで前記有機発光分子が励起し発光する有機電界発光素子を備えた
照明装置。
【請求項1】
二つの電極と共に、有機発光分子を含む少なくとも一層の発光層を備え、
前記発光層は、前記有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質を含有し、前記触媒物質は、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容することで、前記触媒物質は電気的に中性でありながら前記発光層中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子を発生させ、前記負電荷および前記正電荷が前記二つの電極の間に印加される駆動電界の作用により前記発光層中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで前記有機発光分子が励起し発光する
有機電界発光素子。
【請求項2】
前記発光層を二つ以上備え、前記二つ以上の発光層は互いに接していると共に互いに異なる発光波長を有する
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記発光層の略均一媒質とみなせる厚さが100nm以上である
請求項1または2記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記触媒物質は1nm以上100nm以下の粒径を有する粒子状物質である
請求項3記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記触媒物質は電磁波を吸収し励起することで、前記有機発光分子との電子供与および/または受容を生じる
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記触媒物質は、前記駆動電界とは別の外部電界および/または外部磁界により前記有機発光分子との電子供与および/または受容を生じる
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記触媒物質は温度および/または応力の上昇により前記有機発光分子との電子供与および/または受容を生じる
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記触媒物質は少なくとも2種類以上の物質からなり、そのうち1つが電子供与性物質であり、別の1つが電子受容性物質であり、前記電子供与性物質と前記電子受容性物質との距離は5nm以下である
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記二つの電極の間に駆動電界を印加すると共に前記駆動電界の方向を一定周期で切り替える電源を備えた
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記電極と前記発光層との間に絶縁層を備えた
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
二つの電極と共に、有機発光分子を含む少なくとも一層の発光層を備え、前記発光層は、前記有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質を含有し、前記触媒物質は、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容することで、前記触媒物質は電気的に中性でありながら前記発光層中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子を発生させ、前記負電荷および前記正電荷が前記二つの電極の間に印加される駆動電界の作用により前記発光層中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで前記有機発光分子が励起し発光する
有機電界発光素子の駆動方法。
【請求項12】
前記有機電界発光素子の二つの電極と前記発光層との間に絶縁層を設けて電気的に絶縁し、前記二つの電極から前記発光層への電荷の注入を行わない
請求項11記載の有機電界発光素子の駆動方法。
【請求項13】
二つの電極と共に、有機発光分子を含む少なくとも一層の発光層を備え、
前記発光層は、前記有機発光分子との間で電子の授受を生じる触媒物質を含有し、前記触媒物質は、少なくとも1つの有機発光分子へは電子を供与し、他の少なくとも1つの有機発光分子からは電子を受容することで、前記触媒物質は電気的に中性でありながら前記発光層中に負電荷と正電荷とに帯電する別々の有機発光分子を発生させ、前記負電荷および前記正電荷が前記二つの電極の間に印加される駆動電界の作用により前記発光層中を伝導したのち、同一の有機発光分子中で再結合することで前記有機発光分子が励起し発光する有機電界発光素子を備えた
照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−287779(P2010−287779A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141279(P2009−141279)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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