説明

有機電界発光素子を用いた光源

【課題】基板上に少なくとも2つ以上平行に配列した長短比の大きな線状の有機電界発光素子を有する光源であって、保存耐久性及び剛直性の少なくとも一つに優れる光源を提供する。
【解決手段】基板と、該基板上に少なくとも2つ以上平行に配列した線状の有機電界発光素子と、該発光素子の上部を覆って基板に封止する封止部材と、を有する光源であって、前記有機電界発光素子の長短比が200以上であり、且つ、前記封止部材の前記有機電界発光素子の長手方向に沿った長さが200mm以上で、厚みが4mm以上であることを特徴とする光源。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状の有機電界発光素子を用いた光源(発光光源)に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(以下、適宜「有機EL素子」又は「発光素子」と称する。)は、低電圧で高輝度の発光を得ることができるため、例えば、表示素子、フルカラーディスプレイ、バックライト、照明光源等の各種光源としての用途が有望視され、多くの開発が行われている。
有機EL素子用途の一つとして、当該発光素子を細長い線状光源にする技術が開示される(例えば、特許文献1参照。)。
また、有機EL素子は、有機物質からなる有機化合物層を電極間に設けた素子であり、素子内に水分が存在すると、電気分解により水が酸素と水素に分解され、発生した酸素と水素が素子の耐久性を悪化させるという問題がある。このため、作製した素子を封止して空気中の酸素や水分を遮断する方法が採られている。特に、素子を封止する手法については、各種形態の封止部材を用いた種々の封止方法が考えられている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−51380号公報
【特許文献2】特開2004−9548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、長短比(素子の長さ/巾)が大きな有機EL素子は、その長短比の大きさに起因して、当該素子を備えた構造体自体が歪む場合がある。この場合、特に、当該素子を光源の用途とすると、光源位置が不均一になり画像の鮮鋭度を損ねる。
また、長短比(素子の長さ/巾)が大きな有機EL素子を確実に封止する技術は未だ提供されていないため、素子の保存耐久性という点に問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基板上に少なくとも2つ以上平行に配置した長短比の大きな線状の有機電界発光素子を有する光源であって、保存耐久性及び剛直性の少なくとも一つに優れる光源(発光光源)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 基板と、該基板上に少なくとも2つ以上平行に配列した線状の有機電界発光素子と、該発光素子の上部を覆って基板に封止する封止部材と、を有する光源であって、前記有機電界発光素子の長短比が200以上であり、且つ、前記封止部材の前記有機電界発光素子の長手方向に沿った長さが200mm以上で厚みが4mm以上であることを特徴とする光源。
【0005】
<2> 前記基板と前記封止部材とにおける、線熱膨張係数の差が、10×10-6未満であることを特徴とする<1>に記載の光源。
線熱膨張係数の差を10×10-6未満とすることで、光源の歪みを防止し剛直性を発揮させることができる。
【0006】
<3> 前記封止部材は、前記有機電界発光素子と非接触で、前記基板との間に中空を構成することを特徴とする<1>又は<2>に記載の光源。
基板との間に中空が構成されることにより、封止部材と基板との間に乾燥剤を設置して素子の保存耐久性をより向上させたり、封止部材と有機電界発光素子とが接触することで生じる故障を避けることができる。
【0007】
<4> 前記有機電界発光素子上に保護層を有することを特徴とする<1>〜<3>のいずれか一項に記載の光源。
有機電界発光素子上に保護層を有することにより、有機EL素子の保存耐久性をより向上させるとともに、耐衝撃性をも向上させることができる。
【0008】
<5> 前記有機電界発光素子が、陽極と陰極との間に各々が発光層を含む複数の発光ユニットを有し、前記複数の発光ユニット間に電荷発生層を有することを特徴とする<1>〜<4>のいずれか一項に記載の光源。
有機電界発光素子が、陽極と陰極との間に各々が発光層を含む複数の発光ユニットを有し、前記複数の発光ユニット間に電荷発生層を有することにより、有機EL素子の発光効率をより向上させることができる。
【0009】
<6> 前記有機電界発光素子が、陽極と陰極との間に各々が発光層を含む複数の発光ユニットを有し、前記複数の発光ユニット間に導電性層を有することを特徴とする<1>〜<4>いずれか一項に記載の光源。
有機電界発光素子が、陽極と陰極との間に各々が発光層を含む複数の発光ユニットを有し、前記複数の発光ユニット間に導電性層を有することにより、有機EL素子の発光効率をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板上に少なくとも2つ以上平行に配列した長短比の大きな線状の有機電界発光素子を有する光源であって、保存耐久性及び剛直性の少なくとも一つに優れる光源(発光光源)が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の光源は、基板と、該基板上に少なくとも2つ以上平行に配列した線状の有機電界発光素子と、該発光素子の上部を覆って基板に封止する封止部材と、を有する光源であって、前記有機電界発光素子の長短比が200以上であり、且つ、前記封止部材の前記有機電界発光素子の長手方向に沿った長さが200mm以上で、厚みが4mm以上であることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、封止部材の有機EL素子の長手方向に沿った長さは200mm以上で厚さが4mm以上であることが必要である。
封止部材の厚さとしては、4〜20mmが好ましく、4〜10mmがより好ましい。
封止部材の有機EL素子の長手方向に沿った長さは200mm以上であり、配列する有機EL素子数に従って、当該素子の全体を覆うように設定される。
【0013】
封止部材を、有機EL素子の長手方向に沿った長さが200mm以上で厚さが4mm以上にすることで、2つ以上の線状の有機EL素子により形成された部分(画素部分)を確実に封止して外部からの水分・酸素等の侵入を防止できるため、素子の保存耐久性が向上する。また、光源の構造全体が剛直性を発揮するため歪むことがなく、画素部分の巾が狭い場合(例えば、長方形状に画素部分が形成される場合)であっても、外部からの水分・酸素等の侵入を防止できる。
【0014】
光源の歪みを防止し剛直性を発揮させる観点からは、基板と封止部材とにおける、線熱膨張係数の差が、10×10-6未満であることが好ましく、7×10-6未満がより好ましく、3×10-6未満が更に好ましい。線熱膨張係数の測定温度は特に限定されないが、光源の使用温度範囲内であることが好ましく、−20℃以上100℃以下が好ましく、0℃以上100℃以下がより好ましく、20℃以上100℃以下がさらに好ましく、20℃以上80℃以下が特に好ましく、20℃が最も好ましい。ここで、線熱膨張係数は、公知の測定方法に基づいて測定が可能であるが、材料に応じて、JIS等で記載された方法に準拠して測定される。例えば、ガラス材料にはJIS R3102(1995)、金属材料にはJIS Z2285(2003)、プラスチック材料にはJIS K7197(1991)に記載の測定方法が好適に適用できる。
【0015】
封止部材の材料としては、上記の線熱膨張係数の条件を満たせば、特に限定はなく、ソーダガラスや無アルカリガラス等の無機材料、ステンレスやアルミ合金等の金属材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルや、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、テフロン(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン−ポリエチレン共重合体、等の高分子量材料、などが挙げられ、基板との組合せで適宜選択して使用することができる。
封止部材は、有機EL素子の上部を覆って基板に封止する部材であり、逆凹状の他、断面2次モーメントを向上させて更に剛直性を挙げるために、例えば封止部材の基板側の表面や反対側の表面にリブや凹凸を設けたりすることもできる。
【0016】
基板の材料としては、特に限定されないが、ジルコニア安定化イットリウム、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルや、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、テフロン(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン−ポリエチレン共重合体、等の高分子量材料が挙げられる。
【0017】
本発明における有機EL素子の長短比(アスペクト比)の範囲は、200以上であることが必要であり、上限は特に制限はないが、16000以下であることが好ましい。アスペクト比の範囲は、好ましくは300以上16000以下、より好ましくは500以上16000以下、さらに好ましくは1000以上10000以下である。特に好ましくは2000以上10000以下であり、最も好ましくは5000以上10000以下である。
ここで、長短比とは、有機EL素子の長手方向の長さを、長手方向と直交する方向の長さで除した値である。
有機EL素子の長手方向の長さは、素子の適用態様に応じて適宜設定しうるが、大面積平面状光源の提供及びその製造の容易さの観点からは、100〜2000mmが好ましく、100〜1000mmがより好ましい。
【0018】
本発明の光源は、長短比の大きな線状の有機EL素子を、基板上に少なくとも2つ以上平行に配列して有する。大面積の平面状光源の提供の観点からは、該線状の有機EL素子を100個以上平行に配列することが好ましく、200個以上平行に配列することがさらに好ましい。該線状の有機EL素子の幅は、画像鮮鋭度の観点から、5μm以上1mm以下が好ましく、10μm以上500μm以下がより好ましく、10μm以上100μm以下が特に好ましい。該線状の有機EL素子間の間隔は、画像鮮鋭度の観点から、5μm以上1mm以下が好ましく、10μm以上500μm以下がより好ましく、10μm以上100μm以下が特に好ましい。
【0019】
本発明のごとく、多数の線状光源を平行に並べることで平面状光源を構成する方法は、点状光源をX−Y方向にマトリクス状に設置して平面状光源を構成する方法に比べて、より簡便に平面状光源を形成することができ、また光源を駆動する回路や電源等も単純な構成にすることができる。さらに、本発明の光源においては、線状の有機EL素子の点灯ライン頻度を制御することで輝度階調制御することもできるし、該線状の有機EL素子を時間に応じて順次発光させることで、視覚的な効果を得ることもできる。
【0020】
本発明における有機EL素子は、一対の電極間に、有機化合物層は、有機発光層(以下、単に「発光層」と称する場合がある。)を含む少なくとも一層の有機化合物層を有して構成され、発光層の他、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層などを有していてもよい。
本発明における有機EL素子の一つの好ましい態様は、陽極と陰極との間に各々が発光層を含む複数の発光ユニットを有し、前記複数の発光ユニット間に電荷発生層を有する態様である。また、他の好ましい態様は、陽極と陰極との間に各々が発光層を含む複数の発光ユニットを有し、前記複数の発光ユニット間に導電性層を有する態様である。
【0021】
有機EL素子は、例えば、基板上に、電極を形成し、この上に絶縁層を形成した後、有機EL素子の形成部分に対応する絶縁層をエッチング等により除去し、さらに有機化合物層、及び電極を順次形成することにより設けることができる。
有機EL素子上には、更に保護層を有していてもよい。
なお、有機EL素子を構成する各要素(電極、有機化合物層、保護層等の具体的な態様)については後に更に詳述する。
【0022】
封止は、基板上に有機EL素子を形成した後、封止部材及び/又は基板の外周部分に封止剤を塗布し、この上に封止部材を載置して、基板と封止部材とを接着することにより行うことができる。
封止剤としては、紫外線硬化樹脂、光硬化樹脂、熱硬化樹脂等、有機EL素子の封止に用いる公知の接着剤等を用いることができる。
【0023】
本発明において、封止部材は、有機電界発光素子と非接触で、基板との間に中空を構成することが好ましい。
中空部分には、水分吸収剤(乾燥剤)又は不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
【0024】
また、中空は封止部材と基板とに当接して、中空を分割する部材により分割されていてもよい。
【0025】
図1は、本発明の光源の一実施形態を現した図であり、図1(A)は上面図、図1(B)は図1(A)中のA−A線に沿った断面図である。
図1(A)において、光源10は、基板12、基板12上に平行に配列された有機EL素子14、封止部材20を有する。
有機EL素子14は、その長手方向が基板12のX方向の端部に沿うように、Y方向に平行に配列される。
図1(B)に示すように、有機EL素子14は、基板12上に設けられた電極14Aと、対向電極である電極14Cとの間に、有機化合物層14Bを有して構成される。
封止部材20は逆凹状の封止部材であり、平行に配列された有機EL素子14の全体を覆って基板20に封止する。
また、本実施形態では、基板12と封止部材20とにより中空30が構成されている。
【0026】
<有機EL素子>
以下、本発明における有機EL素子について説明する。
本発明における有機EL素子は、既述のごとく、長短比が200以上の線状の素子であり、基板上に少なくとも2つ以上平行に配列される。
本発明における有機EL素子は、基板上に陰極と陽極とを有し、両電極の間に発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有する。発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
【0027】
本発明における有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。発光層としては一層だけでもよい、また、第一発光層、第二発光層、第三発光層等に発光層を分割してもよい。さらに、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0028】
−発光層−
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていてもよく、ホスト材料と発光材料との混合層とした構成でもよい。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であってもよい。発光材料は1種であっても2種以上であってもよい。
ホスト材料は、電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であってもよく、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料とを混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。
また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0029】
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、特に制限はなく、公知のものから適宜選択することができる。例えば、特開2004−146067号公報の段落番号[0027]、特開2004−103577号公報の段落番号[0057]等に記載のものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されない。
【0030】
また、本発明に使用できる燐光発光材料は、特に制限はなく、公知のものから適宜選択することができる。例えば、特開2004−221068号公報の段落番号[0051]から[0057]等に記載のものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されない。
【0031】
本発明における有機EL素子は、発光効率を向上させるため、陽極と陰極との間に各々が発光層を含む複数の発光ユニットを有し、前記複数の発光ユニット間に電荷発生層を有する構成をとることができる。
前記電荷発生層は、電界印加時に電荷(正孔及び電子)を発生する機能を有すると共に、発生した電荷を電荷発生層と隣接する層に注入させる機能を有する層である。
前記電荷発生層は導電性層として構成することも好ましい。
【0032】
電荷発生層を形成する材料は、上記の機能を有する材料であれば何でもよく、単一化合物で形成されていても、複数の化合物で形成されていてもよい。
具体的には、導電性を有するものであっても、ドープされた有機層のように半導電性を有するものであっても、また、電気絶縁性を有するものであってもよく、特開平11−329748や、特開2003−272860公報や、特開2004−39617公報に記載の材料が挙げられる。
更に具体的には、ITO、IZO(インジウム亜鉛酸化物)などの透明導電材料、C60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等などの導電性有機物、Ca、Ag、Al、Mg:Ag合金、Al:Li合金、Mg:Li合金などの金属材料、正孔伝導性材料、電子伝導性材料、及びそれらを混合させたものを用いてもよい。
正孔伝導性材料は、例えば、2−TNATA、NPDなどの正孔輸送有機材料にF4−TCNQ、TCNQ、FeCl3などの電子求引性を有する酸化剤をドープさせたものや、P型導電性高分子、P型半導体などが挙げられ、電子伝導性材料は電子輸送有機材料に4.0eV未満の仕事関数を有する金属もしくは金属化合物をドープしたものや、N型導電性高分子、N型半導体が挙げられる。N型半導体としては、N型Si、N型CdS、N型ZnSなどが挙げられ、P型半導体としては、P型Si、P型CdTe、P型CuOなどが挙げられる。
また、電荷発生層として、V25などの電気絶縁性材料を用いることもできる。
【0033】
電荷発生層は、単層でも複数積層させたものでもよい。複数積層させた構造としては、透明伝導材料や金属材料などの導電性を有する材料と正孔伝導性材料、または、電子伝導性材料を積層させた構造、上記の正孔伝導性材料と電子伝導性材料を積層させた構造の層などが挙げられる。
【0034】
電荷発生層は、一般に、可視光の透過率が50%以上になるよう、膜厚・材料を選択することが好ましい。また膜厚は、特に限定されるものではないが、0.5〜200nmが好ましく、1〜100nmがより好ましく、3〜50nmがさらに好ましく、5〜30nmが特に好ましい。
電荷発生層の形成方法は、特に限定されるものではなく、前述した有機化合物層の形成方法を用いることができる。
【0035】
電荷発生層は複数の発光ユニット間に形成するが、電荷発生層の陽極側および陰極側には、隣接する層に電荷を注入する機能を有する材料を含んでいてもよい。陽極側に隣接する層への電子の注入性を上げるため、例えば、BaO、SrO、Li2O、LiCl、LiF、MgF2、MgO、CaF2などの電子注入性化合物を電荷発生層の陽極側に積層させてもよい。
以上で挙げられた内容以外にも、特開2003−45676号公報、米国特許第6337492号、同第6107734号、同第6872472号等に記載を元にして、電荷発生層の材料を選択することができる。
【0036】
本発明における有機EL素子として、複数の発光ユニット間に電荷発生層を有する層構成を適用した場合の有機EL素子の構成例を図2に示す。また、有機EL素子として、複数の発光ユニット間に導電性層を有する層構成を適用した場合の有機EL素子の構成例をを図3に示す。本発明はこれに限られるものではない。
【0037】
図2において、40は本発明の光源における有機EL素子を示す。有機EL素子40は、基板42上に設けられた陽極44及び陰極50の間に、発光層を含む発光ユニット46A、46B、46C、及び46Dと、該発光ユニットの各々の間に電荷発生層48A、48B、及び48Cと、を有して構成される。陽極44及び陰極50は、電源52を介して連結される。
発光層を含む発光ユニット46A、46B、46C、及び46Dは、同一層構成であっても異なっていてもよい。電荷発生層48A、48B、及び48Cは、同一層構成であっても異なっていてもよい。
【0038】
図3において、60は本発明の光源における有機EL素子を示す。有機EL素子60は、基板62上に設けられた陽極64及び陰極70の間に、発光層を含む発光ユニット66A、66B、66C、及び66Dと、該発光ユニットの各々の間に導電性層68A、68B、及び68Cと、を有して構成される。陽極64及び陰極70は、電源72を介して連結される。
発光層を含む発光ユニット66A、66B、66C、及び66Dは、同一層構成であっても異なっていてもよい。導電性層68A、68B、及び68Cは、同一層構成であっても異なっていてもよい。
【0039】
有機EL素子における、基板、電極、各有機層、その他の層、等の他の構成要素については、例えば、特開2004−221068号公報の段落番号[0013]から[0082]、特開2004−214178号公報の[0017]から[0091]、特開2004−146067号公報の[0024]から[0035]、特開2004−103577号公報の[0017]から[0068]、特開2003−323987号公報の[0014]から[0062]、特開2002−305083号公報の[0015]から[0077]、特開2001−172284号公報の[0008]から[0028]、特開2000−186094号公報の[0013]から[0075]、特表2003−515897号公報の[0016]から[0118]等に記載のものが、本発明においても同様に適用することができる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
本発明における有機EL素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0041】
本発明における有機EL素子は、水分や酸素の進入を防止するために、素子上に保護層を有していることが好ましい。保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2等の金属酸化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、SiNx、SiOxy などの窒化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
保護層の形成方法についても特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0042】
本発明の光源の用途は特に限定されないが、例えば読み取り光源に用いると、走査機械機構を必要とせず高精細に画像(電子潜像)を読み取ることが可能になる。また、サイン光源としてライン画素を線順次点灯、ランダム点灯して視覚効果を向上したり、高精細・高輝度光源のため、点灯ライン頻度での輝度階調制御が可能になり、電流/電圧制御を必要としない電源回路が可能になる等、種種の分野に好適に使用できる。
【実施例】
【0043】
以下に、本発明について、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
[実施例1]
465×440×0.7mmのITO基板(ソーダガラス、線熱膨張係数:9×10-6)上に、下記構成(A)の有機EL素子により、画素430mm×50μm(長短比:8600)、画素間が100μmピッチになるように隔壁で隔てられた画素部分(430×430mm)を設けた。封止部材(ソーダガラス、線熱膨張係数:9×10-6、433mm×433mm×5mm、内部の有機EL素子側のガラス掘り込み深さ:1mm、外周の糊代部分:1mm巾)の有機EL素子側の中央部に乾燥剤HD−S(ダイニック製)を入れた後、外周の糊代部分に封止剤XNR5516−HV−B1(長瀬産業(株)製)を塗布して画素部分を覆うように載置し、基板と封止部材のギャップが12μmになるように加圧しながら水銀灯400Wを用いて6J/cm2(365nm)で硬化し封止した。
以上のようにして、実施例1の光源を作製した。
【0045】
<構成(A)>
陽極 :ITO(基板)
正孔注入層 :CuPc(銅フタロシアニン)[10nm]
正孔輸送層 :NPD[30nm]
発光層 :mCP(95%),Firpic(5%)の混合層[30nm]
正孔ブロック層:Balq2[10nm]
電子輸送層 :Alq3[40nm]
電子注入層 :LiF[0.5nm]
陰極 :Al[100nm]
【0046】
以下に、CuPc、NPD、mCP、Firpic、Balq2、及びAlq3の構造を示す。
【0047】
【化1】

【0048】
[実施例2]
275×310×0.7mmのITO基板(ソーダガラス、線熱膨張係数:9×10-6)上に、前記構成Aの有機EL素子により、画素240mm×25μm(長短比:9600)、画素間が50μmピッチになるように隔壁で隔てられた画素部分(240×300mm)を設けた。封止部材(ソーダガラス、線熱膨張係数:9×10-6、243mm×303mm×5mm、内部の有機EL素子側のガラス掘り込み深さ:1mm、外周の糊代部分:1mm巾)の有機EL素子側の中央部に乾燥剤HD−S(ダイニック製)を入れた後、外周の糊代部分に封止剤XNR5516−HV−B1(長瀬産業製)を塗布して画素部分を覆うように載置し、基板と封止部材のギャップが12μmになるように加圧しながら水銀灯400Wを用いて6J/cm2(365nm)で硬化し封止した。
以上のようにして、実施例2の光源を作製した。
【0049】
[実施例3]
実施例1のITO基板に換えて、ITO基板に(無アルカリガラス、線熱膨張係数:3×10-6)に変更した以外は実施例1と同様にして実施例3の光源を作製した。
【0050】
[実施例4]
実施例1の封止部材に換えて、封止部材(SUS430、線熱膨張係数:11×10-6)に変更した以外は実施例1と同様にして実施例4の光源を作製した。
【0051】
[比較例1]
実施例1の封止部材に換えて、封止部材(ソーダガラス、線熱膨張係数:9×10-6、433mm×433mm×1.1mm、内部の有機EL素子側のガラス掘り込み深さ:0.5mm、外周の糊代部分:1mm巾)を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1の光源を作製した。
【0052】
[比較例2]
実施例1の封止部材に換えて、封止部材(アルミニウム、線熱膨張係数:25×10-6)を用いた以外は実施例1と同様にして比較例2の光源を作製した。
【0053】
得られた各光源を用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
<光源の中央部と端部との隙間>
各光源の基板側を、平面度が2μm以下である定盤(定盤温度20℃)の上面に当接して置いた後、レーザマイクロゲージで各光源の中央部と端部との隙間(撓み)を測定した。ここで平面度とは、定盤の所定範囲におけるその表面のうねりの高さをいう。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示されるように、実施例の光源は歪みがないことから画像鮮鋭度に優れ、かつ保存耐久性も優れていることが確認された。
【0056】
なお、実施例1乃至4の光源おける有機EL素子としては、層構成Aを発光ユニットとして複数設け、この複数の発光ユニット間に電荷発生層又は導電性層を形成して、例えば、図2又は図3に記載の構成にした有機EL素子を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)は本発明の一実施形態の上面図であり、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図である。
【図2】本発明の光源に適用しうる、複数の発光ユニット間に電荷発生層を有する有機EL素子の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の光源に適用しうる、複数の発光ユニット間に導電性層を有する有機EL素子の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0058】
10 光源
12 基板
14 有機電界発光素子
14a 電極
14b 有機化合物層
14c 電極
20 封止部材
30 中空
40 有機電界発光素子
42 基板
44 陽極
46A、46B、46C、46D 発光層を含む発光ユニット
48A、48B、48C 電荷発生層
50 陰極
52 電源
60 有機電界発光素子
62 基板
64 陽極
66A、66B、66C、66D 発光層を含む発光ユニット
68A、68B、68C 導電性層
70 陰極
72 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に少なくとも2つ以上平行に配列した線状の有機電界発光素子と、該発光素子の上部を覆って基板に封止する封止部材と、を有する光源であって、
前記有機電界発光素子の長短比が200以上であり、且つ、前記封止部材の前記有機電界発光素子の長手方向に沿った長さが200mm以上で厚みが4mm以上であることを特徴とする光源。
【請求項2】
前記基板と前記封止部材とにおける、線熱膨張係数の差が、10×10-6未満であることを特徴とする請求項1に記載の光源。
【請求項3】
前記封止部材は、前記有機電界発光素子と非接触で、前記基板との間に中空を構成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光源。
【請求項4】
前記有機電界発光素子上に保護層を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の光源。
【請求項5】
前記有機電界発光素子が、陽極と陰極との間に各々が発光層を含む複数の発光ユニットを有し、前記複数の発光ユニット間に電荷発生層を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の光源。
【請求項6】
前記有機電界発光素子が、陽極と陰極との間に各々が発光層を含む複数の発光ユニットを有し、前記複数の発光ユニット間に導電性層を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−43080(P2007−43080A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123911(P2006−123911)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】