説明

有機電界発光素子及び電荷輸送材料

【課題】高効率、低駆動電圧で駆動耐久性が高く、更に高輝度駆動時の効率低下及び色度変化が小さい有機EL素子を提供すること。
【解決手段】基板上に、一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記有機層のいずれか少なくとも一層に例えば下記化合物を含む有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機電界発光素子及び電荷輸送材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」、「発光素子」、「EL素子」、又は「素子」ともいう)は、低電圧駆動で高輝度の発光が得られることから活発に研究開発が行われている。有機電界発光素子は、一対の電極間に有機層を有し、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが有機層において再結合し、生成した励起子のエネルギーを発光に利用するものである。
【0003】
近年、燐光発光材料を用いることにより、素子の高効率化が進んでいる。燐光発光材料としてイリジウム錯体や白金錯体などを用いた燐光発光素子に関する発明が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
しかしながら、従来の有機電界発光素子では、駆動時の電圧が低く、かつ効率と耐久性に優れるという課題は実用上十分なレベルでは達成できていない。
燐光発光素子で高効率、低駆動電圧と高耐久性を実現できていない原因の一つに、化学的安定性(酸化、還元に対する安定性)及びキャリア注入・輸送性が高く、最低励起三重項エネルギー(「Tエネルギー」、「T」ともいう)の大きな電荷輸送材料が限られていることが挙げられる。電荷輸送材料のTが燐光発光材料のTより小さいと発光を消光してしまうため電荷輸送材料には燐光発光材料より大きなTが求められる。また、電荷輸送材料のTが燐光発光材料のTより大きい場合でも、両者のT差が小さい場合には一部、燐光発光材料から電荷輸送材料への逆エネルギー移動が起こるため、効率低下や耐久性低下の原因となる。従って、Tが十分に大きく、化学的安定性及びキャリア注入・輸送性の高い電荷輸送材料が求められている。
【0005】
燐光材料と共に発光層を形成する材料として、下記に示すようなカルバゾリル基と窒素含有へテロ環基がビフェニルで連結された構造を有する化合物を用いた有機電界発光素子が開示されている(特許文献3参照)。
【0006】
【化1】

【0007】
また、特許文献4には、下記に示すような2つの窒素含有へテロ環基がフェニレンで連結した構造を有する化合物を用いた有機EL素子が記載されている。
【0008】
【化2】

【0009】
また、例えば、照明装置などのように、高輝度で駆動した場合に、効率の低下、及び色度の変化が少ない素子が求められるが、特許文献3及び4など従来の技術ではこれらの課題は解決されていない。
【0010】
また、有機電界発光素子の製造において、一対の電極間に設けられる有機層である薄膜を形成する方法としては、蒸着法として真空蒸着、湿式法としてスピンコーティング法、印刷法、インクジェット法等が行われている。
中でも湿式法(ウェットプロセス)を用いると、蒸着等のドライプロセスでは成膜が困難な高分子の有機化合物も使用可能となり、フレキシブルなディスプレイ等に用いる場合は耐屈曲性や膜強度等の耐久性の点で適しており、特に大面積化した場合に好ましい。
しかし湿式法により得られた有機電界発光素子には発光効率や素子耐久性に劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6303238号明細書
【特許文献2】国際公開第00/57676号
【特許文献3】国際公開第05/085387号
【特許文献4】国際公開第05/022962号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献3に記載された材料、及び特許文献4に記載された材料はTが大きく、還元に対しては安定であるが、酸化に対する安定性が不十分であることがわかった。また、該材料を素子に使用した場合、耐久性、高輝度駆動時の効率低下、及び色度変化が大きいことがわかった。
【0013】
本発明の目的は、高効率、低駆動電圧で駆動耐久性が高く、更に高輝度駆動時の効率低下及び色度変化が小さい有機EL素子を提供することである。また、本発明の別の目的は化学的安定性及び両キャリア(電子/ホール)注入・輸送性が高く、Tが大きな電荷輸送材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題は下記手段により解決された。
〔1〕
基板上に、一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記有機層のいずれか少なくとも一層に下記一般式(1)で表される化合物を含む有機電界発光素子。
【0015】
【化3】

【0016】
〔一般式(1)中、Lはアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表す。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。R〜Rは複数存在する場合、複数のR〜Rは同一でも異なってもよい。A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。tは0〜2の整数を表す。〕
〔2〕
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物である〔1〕に記載の有機電界発光素子。
【0017】
【化4】

【0018】
〔一般式(2)中、Lは単結合又はアリーレン基を表す。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。R〜Rが複数存在する場合、複数のR〜Rは同一でも異なってもよい。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。R、R、及びLのうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成してもよい。A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。tは0〜2の整数を表す。u及びvはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。〕
〔3〕
前記一般式(2)で表される化合物が下記一般式(3)で表される化合物である〔2〕に記載の有機電界発光素子。
【0019】
【化5】

【0020】
〔一般式(3)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。R〜Rが複数存在する場合、複数のR〜Rは同一でも異なってもよい。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。tは0〜2の整数を表す。u及びvはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。〕
〔4〕
前記発光層に燐光性発光材料を含む、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
〔5〕
前記燐光性発光材料が、下記一般式(T−1)で表される〔4〕に記載の有機電界発光素子。
【0021】
【化6】

【0022】
〔一般式(T−1)中、RT1、RT2、RT3、及びRT4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
AはCR’又はNを表し、R’は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
Qは窒素を1つ以上含む5員若しくは6員の芳香族複素環、又は10〜12員の縮合芳香族複素環であり、置換基Zを有していてもよい。
T1、RT2、RT3、RT4、及びR’は、任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
置換基Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−C(O)R”、−C(O)OR”、−C(O)N(R”)、−CN、−NO、−SO、−SOR”、−SOR”、又は−SOR”を表し、R”はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
(X−Y)は、配位子を表す。mは1〜3の整数、nは0〜2の整数を表す。m+nは3である。〕
〔6〕
前記一般式(1)で表される化合物を、発光層又は発光層に隣接する層に含む〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
〔7〕
前記一般式(1)で表される化合物を、発光層に隣接する、発光層より陰極側の層に含む〔1〕〜〔5〕のいずれかに1項に記載の有機電界発光素子。
〔8〕
前記一般式(1)で表される化合物を、発光層及び発光層より陰極側の層に含む〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
〔9〕
発光層に隣接する、発光層より陽極側の層に、膜状態での最低励起三重項エネルギー(T)が2.50eV以上3.25eV以下であるアミン系材料を含有する、〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
〔10〕
発光層及び発光層の両隣の層に用いる材料のうち、燐光材料以外の全ての材料が、膜状態での最低励起三重項エネルギー(T)が2.50eV以上3.25eV以下である、〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
〔11〕
前記一般式(1)で表される化合物を含む有機層がウェットプロセスで形成された層である、〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
〔12〕
〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を用いた発光装置。
〔13〕
〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を用いた表示装置。
〔14〕
〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。
〔15〕
下記一般式(1)で表される電荷輸送材料。
【0023】
【化7】

【0024】
〔一般式(1)中、Lはアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表す。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。R〜Rは複数存在する場合、複数のR〜Rは同一でも異なってもよい。A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。tは0〜2の整数を表す。〕
〔16〕
前記一般式(1)が、下記一般式(2)で表される〔15〕に記載の電荷輸送材料。
【0025】
【化8】

【0026】
〔一般式(2)中、Lは単結合又はアリーレン基を表す。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。R〜Rが複数存在する場合、複数のR〜Rは同一でも異なってもよい。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。R、R、及びLのうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成してもよい。A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。tは0〜2の整数を表す。u及びvはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。〕
〔17〕
前記一般式(2)が、下記一般式(3)で表される〔16〕に記載の電荷輸送材料。
【0027】
【化9】

【0028】
〔一般式(3)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。R〜Rが複数存在する場合、複数のR〜Rは同一でも異なってもよい。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。tは0〜2の整数を表す。u及びvはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。〕
〔18〕
前記一般式(3)において、R及びRがメチル基である、〔17〕に記載の電荷輸送材料。
〔19〕
純度が99.9%以上である、〔15〕〜〔18〕のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
〔20〕
膜状態での最低励起三重項エネルギー(T)が2.69eV以上3.25eV以下である、〔15〕〜〔19〕のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
〔21〕
〔15〕〜〔20〕のいずれか1項に記載の電荷輸送材料を含む膜。
〔22〕
ウェットプロセスで形成された、〔21〕に記載の膜。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、高効率、低駆動電圧で駆動耐久性が高く、更に高輝度駆動時の効率低下及び色度変化が小さい有機EL素子を提供することができる。また、化学的安定性及び両キャリア(電子/ホール)注入・輸送性が高く、Tが大きな電荷輸送材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る有機EL素子の層構成の一例(第1実施形態)を示す概略図である。
【図2】本発明に係る発光装置の一例(第2実施形態)を示す概略図である。
【図3】本発明に係る照明装置の一例(第3実施形態)を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明において、置換基群A、置換基群B及び置換基群Zを以下のように定義する。
(置換基群A)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環基も包含し、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子であり、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリル、フリル、チエニル、セレノフェニル、テルロフェニル、ピペリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピロリジノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基、シロリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、ホスホリル基(例えばジフェニルホスホリル基、ジメチルホスホリル基などが挙げられる。)が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
【0032】
(置換基群B)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニル、ペンタフルオロフェニルなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子であり、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)
【0033】
〔有機電界発光素子〕
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記有機層のいずれか少なくとも一層に下記一般式(1)で表される化合物を含む。
【0034】
【化10】

【0035】
〔一般式(1)中、Lはアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表す。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。R〜Rは複数存在する場合、複数のR〜Rは同一でも異なってもよい。A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。tは0〜2の整数を表す。〕
【0036】
〔一般式(1)で表される化合物〕
以下、一般式(1)で表される化合物(電荷輸送材料とも呼ぶ)について説明する。
一般式(1)で表される電荷輸送材料は、化学的安定性(酸化、還元に対する安定性)及び両キャリア(電子/ホール)注入・輸送性が高く、かつTが大きいため、特に有機EL素子に好適である。
【0037】
【化11】

【0038】
〔一般式(1)中、Lはアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表す。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。R〜Rは複数存在する場合、複数のR〜Rは同一でも異なってもよい。A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。tは0〜2の整数を表す。〕
【0039】
一般式(1)で表される電荷輸送材料は、下記一般式(1−A)で表される部分構造と下記一般式(1−B)で表される部分構造とを有する。
【0040】
【化12】

【0041】
〔一般式(1−A)及び(1−B)中、R〜R、A〜A、p、q、r、s及びtはそれぞれ前記一般式(1)におけるR〜R、A〜A、p、q、r、s及びtと同義である。〕
【0042】
一般式(A1)で表される部分構造はホール輸送部位として機能することができ、一般式(B1)で表される部分構造は電子輸送部位として機能することができる。
一般式(1)で表される電荷輸送材料は、分子内に電子輸送部位とホール輸送部位を有することで両キャリア(電子/ホール)注入・輸送性を示し、酸化(ラジカルカチオン状態)に対しても還元(ラジカルアニオン状態)に対しても化学的に安定な材料となる。
本発明の有機電界発光素子は、一般式(1)で表される化合物を、発光層又は発光層に隣接する層に含むことが好ましい。
また、本発明の有機電界発光素子は、一般式(1)で表される化合物を、発光層に隣接する、発光層より陰極側の層に含むことも好ましい。
また、本発明の有機電界発光素子は、一般式(1)で表される化合物を、発光層及び発光層より陰極側の層に含むことも好ましい。
一般式(1)で表される電荷輸送材料はTが高く、両電荷(ホール及び電子)の注入性、輸送性、及び両電荷に対する安定性に優れるため、ホール輸送材料、電子輸送材料、及び発光層のホスト材料のいずれにおいても好ましく用いることができ、発光層に隣接するホール輸送層の材料、発光層に隣接する電子輸送層の材料、発光層のホスト材料のいずれかに用いることが特に好ましい。
【0043】
一般式(1)で表される電荷輸送材料を用いることで、素子の効率、駆動電圧、耐久性を高いレベルで達成できるだけでなく、高輝度駆動時の効率低下や色度変化が小さい素子を得ることができる。高輝度駆動時の効率低下や色度変化が小さい原因としては明らかではないが、一般式(1)で表される電荷輸送材料は両電荷の注入性が高く、電荷ブロック性が低いため、一般式(1)で表される電荷輸送材料を含有する層と該層に隣接する層との界面でホールや電子の蓄積が起こりにくいためと考えられる。発光層に隣接する層でホールや電子をブロックすることは一般に発光層中での再結合確率を高め、高効率につながるが、一方で、発光層とブロック層の界面で電荷が蓄積することになる。特に高輝度駆動時にはこの電荷の蓄積が顕著となり、効率低下や色度変化につながると考えられる。
一般式(A1)で表される部分構造は特定のアクリダン構造を有する。該特定のアクリダン構造は、前記特許文献3に記載の化合物が有するカルバゾリル基よりもホール注入・輸送性が高い(ホールブロック性が低い)ため、特許文献3に記載された化合物よりも効率低下、及び色度変化が起こりにくいものと推定される。
【0044】
一般式(1)において、Lはアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表す。キャリア輸送性、化学的安定性、及びTの観点から、Lとして好ましくは、炭素数6〜24のアリーレン基、又は酸素原子、硫黄原子、若しくは窒素原子を含む炭素数6〜24の2価の芳香族複素環基であり、より好ましくは炭素数6〜18のアリーレン基であり、更に好ましくは、フェニレン基、ビフェニレン基、又はターフェニレン基であり、特に好ましくはビフェニレン基である。
が表すアリーレン基又は2価の芳香族複素環基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、前記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられ、アルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、及びシリル基が好ましく、アルキル基、アリール基、シアノ基がより好ましく、アリール基、シアノ基が更に好ましい。
該Lが有してもよい置換基としてのアルキル基としては炭素数1〜18であることが好ましく、炭素数1〜12であることがより好ましく、炭素数1〜6であることが更に好ましい。該アルキル基としては、例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
該Lが有してもよい置換基としてのアリール基としては、炭素数6〜24であることが好ましく、炭素数6〜18であることがより好ましく、炭素数6〜12であることが更に好ましく、具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、テトラセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、トリフェニレニル基、フェナントリル基、クリセニル基が挙げられ、フェニル基、又はビフェニル基であることが特に好ましい。
該Lが有してもよい置換基としての芳香族複素環基としては、5員又は6員の芳香族複素環基が好ましく、具体的にはピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造が挙げられ、好ましくはピリジン、ピラジン、ピリミジン、イミダゾール、ピラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造であり、より好ましくはピリジン、イミダゾール、ピラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造である。該他の環が縮環した構造としては、インドリジン、プリン、プテリジン、β−カルボリン、ナフチリジン、キノキサリン、ターピリジン、ビピリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、イミダゾピリジン等が挙げられる。
該Lが有してもよい置換基としてのシリル基としては、アルキル基及びアリール基のいずれか少なくとも1種が置換したシリル基が好ましい。該アルキル基としては、炭素数1〜18であることが好ましく、炭素数1〜12であることがより好ましく、炭素数1〜6であることが更に好ましく、炭素数1〜4であることが特に好ましく、炭素数1であることが最も好ましい。該アルキル基としては、例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。該アリール基としては、炭素数6〜24であることが好ましく、炭素数6〜18であることがより好ましく、炭素数6〜12であることが更に好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。
【0045】
の好ましい具体例を以下に示す。また、以下の構造のうちから選択された複数を組み合わせて得られる構造も好ましい。*は前記一般式(1−A)で表される部分構造との結合部位を表し、**は前記一般式(1−B)で表される部分構造との結合部位を表す。
【0046】
【化13】

【0047】
【化14】

【0048】
上記具体例のうち、(L−1)〜(L−22)、(L−50)、(L−53)、(L−54)がより好ましく、(L−1)〜(L−14)、(L−19)、(L−21)、(L−22)、(L−53)が更に好ましく、(L−6)〜(L−14)が特に好ましい。
【0049】
一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表す。アルキル基としては炭素数1〜18であることが好ましく、炭素数1〜12であることがより好ましく、炭素数1〜6であることが更に好ましく、炭素数1〜4であることが特に好ましく、炭素数1(すなわちメチル基)であることが最も好ましい。アルキル基としては、例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
及びRが表すアルキル基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、シアノ基、アリール基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、アリール基であり、より好ましくはハロゲン原子、フルオロアルキル基であり、更に好ましくはフッ素原子又はパーフルオロアルキル基である。
【0050】
とRは結合して環を形成してもよい。該環としては脂肪族炭化水素環が好ましく、炭素数3〜8のシクロアルカンが好ましく、炭素数5〜6のシクロアルカンがより好ましく、シクロヘキサンが更に好ましい。
【0051】
なお、本明細書において、アルキル基等の「炭素数」とは、アルキル基等が他の置換基によって置換されている場合、当該他の置換基の炭素数も包含する意味で用いる。
【0052】
一般式(1)において、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、シリル基のいずれかを表す。これらのうち、アルキル基、アリール基、シリル基、又はシアノ基が好ましく、アルキル基、アリール基、又はシアノ基がより好ましく、アルキル基、又はアリール基が更に好ましい。
アルキル基としては炭素数1〜18であることが好ましく、炭素数1〜12であることがより好ましく、炭素数1〜6であることが更に好ましい。該アルキル基としては、例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
アリール基としては、炭素数6〜24であることが好ましく、炭素数6〜18であることがより好ましく、炭素数6〜12であることが更に好ましく、フェニル基、又はビフェニル基であることが特に好ましい。
芳香族複素環基としては、5員又は6員の芳香族複素環基が好ましく、具体的にはピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造が挙げられ、好ましくはピリジン、ピラジン、ピリミジン、イミダゾール、ピラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造であり、より好ましくはピリジン、イミダゾール、ピラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造である。該他の環が縮環した構造としては、インドリジン、プリン、プテリジン、β−カルボリン、ナフチリジン、キノキサリン、ターピリジン、ビピリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、イミダゾピリジン等が挙げられる。
シリル基としては、アルキル基及びアリール基のいずれか少なくとも1種が置換したシリル基が好ましい。該アルキル基としては、炭素数1〜18であることが好ましく、炭素数1〜12であることがより好ましく、炭素数1〜6であることが更に好ましく、炭素数1〜4であることが特に好ましく、炭素数1であることが最も好ましい。該アルキル基としては、例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。該アリール基としては、炭素数6〜24であることが好ましく、炭素数6〜18であることがより好ましく、炭素数6〜12であることが更に好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。
【0053】
〜Rが表すアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、又はシリル基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、アルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、シリル基、が挙げられ、好ましくは、アルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、シリル基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、フッ素原子、又はシアノ基である。
【0054】
一般式(1)中、p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。p及びqは好ましくは0〜4であり、より好ましくは0〜1である。
一般式(1)中、r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。r及びsは好ましくは0〜5であり、より好ましくは0〜1である。
一般式(1)中、tは0〜2の整数を表す。tは好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
【0055】
一般式(1)中、A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表す。ただし、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。
〜Aのうち、好ましくは、一つ又は二つが窒素原子であり、より好ましくは二つが窒素原子である。
【0056】
一般式(1)で表される電荷輸送材料は、キャリア輸送性及び化学的安定性の観点から、好ましくは下記一般式(2)で表される電荷輸送材料である。
【0057】
〔一般式(2)で表される電荷輸送材料〕
【0058】
【化15】

【0059】
〔一般式(2)中、Lは単結合又はアリーレン基を表す。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。R〜Rが複数存在する場合、複数のR〜Rは同一でも異なってもよい。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。R、R、及びLのうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成してもよい。A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。tは0〜2の整数を表す。u及びvはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。〕
【0060】
一般式(2)中、R〜R、A〜A、p、q、r、s、及びtは一般式(1)におけるR〜R、A〜A、p、q、r、s、及びtと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0061】
一般式(2)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。R及びRは好ましくは、アルキル基、アリール基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基であり、より好ましくは、アリール基、又はシアノ基であり、更に好ましくはアリール基である。
アルキル基としては炭素数1〜18であることが好ましく、炭素数1〜12であることがより好ましく、炭素数1〜6であることが更に好ましい。該アルキル基としては、例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
アリール基としては、炭素数6〜24であることが好ましく、炭素数6〜18であることがより好ましく、炭素数6〜12であることが更に好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。
芳香族複素環基としては、5員又は6員の芳香族複素環基が好ましく、具体的にはピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造が挙げられ、好ましくはピリジン、ピラジン、ピリミジン、イミダゾール、ピラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造であり、より好ましくはピリジン、イミダゾール、ピラゾール及びこれらの環に他の環が縮環した構造である。該他の環が縮環した構造としては、インドリジン、プリン、プテリジン、β−カルボリン、ナフチリジン、キノキサリン、ターピリジン、ビピリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、イミダゾピリジン等が挙げられる。
シリル基としては、アルキル基及びアリール基のいずれか少なくとも1種が置換したシリル基が好ましい。該アルキル基としては、炭素数1〜18であることが好ましく、炭素数1〜12であることがより好ましく、炭素数1〜6であることが更に好ましく、炭素数1〜4であることが特に好ましく、炭素数1であることが最も好ましい。該アルキル基としては、例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。該アリール基としては、炭素数6〜24であることが好ましく、炭素数6〜18であることがより好ましく、炭素数6〜12であることが更に好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。
【0062】
、Rが表すアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、又はシリル基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、アルキル基、アリール基、芳香族複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、シリル基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、アリール基、芳香族複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、シリル基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、フッ素原子、又はシアノ基である。
【0063】
一般式(2)中、u及びvはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。u及びvは好ましくは0又は1であり、よりこのましくは0である。
【0064】
一般式(2)中、Lは単結合又はアリーレン基を表す。Lは、好ましくは、単結合又は炭素数6〜24のアリーレン基であり、より好ましくは単結合又は炭素数6〜18のアリーレン基であり、更に好ましくは、単結合、フェニレン基、又はビフェニレン基であり、特に好ましくは単結合又はフェニレン基であり、最も好ましくは単結合である。
がアリーレン基を表す場合、該アリーレン基は置換基を有してもよい。該置換基の好ましい範囲は、Lが有してもよい置換基と同様である。
がアリーレン基を表す場合の好ましいアリーレン基の具体例を以下に示す。また、以下の構造のうちから選択された複数を組み合わせて得られる構造も好ましい。*は下記一般式(2−A)で表される部分構造との結合部位を表し、**は下記一般式(2−B)で表される部分構造との結合部位を表す。
【0065】
【化16】

【0066】
〔一般式(2−A)及び(2−B)中、R〜R、A〜A、p、q、r、s、t、u、及びvはそれぞれ前記一般式(2)におけるR〜R、A〜A、p、q、r、s、t、u、及びvと同義である。〕
【0067】
【化17】

【0068】
上記具体例のうち、(L−1)〜(L−5)、(L−55)がより好ましく、(L−1)、(L−2)、(L−55)が更に好ましい。
【0069】
一般式(2)において、R、R、及びLのうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成してもよい。
【0070】
一般式(2)で表される化合物は、より好ましくは下記一般式(3)で表される化合物である。
【0071】
〔一般式(3)で表される電荷輸送材料〕
【0072】
【化18】

【0073】
〔一般式(3)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。R〜Rが複数存在する場合、複数のR〜Rは同一でも異なってもよい。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。tは0〜2の整数を表す。u及びvはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。〕
【0074】
一般式(3)中、R〜R、A〜A、p、q、r、s、t、u、及びyは一般式(2)におけるR〜R、A〜A、p、q、r、s、t、u、及びyと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0075】
エネルギーは一般に分子中でπ共役系が広がると小さくなる。また、分子のTエネルギーは分子中で最もTエネルギーが小さくなる部分構造で決まるため、分子中に一箇所でもπ共役系が広い部分があると,その部分でTエネルギーが決まる。一般式(1)で表される電荷輸送材料は、Tが小さくなる部分構造を有さないため大きなTを有する。
【0076】
一般式(1)で表される電荷輸送材料の分子量としては、好ましくは600〜1200であり、より好ましくは600〜1100であり、特に好ましくは600〜1000である。分子量がこの範囲であれば膜状態の安定性が優れ、溶媒への溶解性や昇華温度などの点から高純度化し易い。膜状態の安定性の指標としてガラス転移温度Tgがあり、Tgは、好ましくは60〜400℃であり、より好ましくは100〜400℃であり、特に好ましくは130〜400℃である。
ここで、Tgは示差走査熱量測定(DSC)、示差熱分析(DTA)などの熱測定や、X線回折(XRD)、偏光顕微鏡観察などにより確認できる。
【0077】
一般式(1)で表される電荷輸送材料の純度が低いと電荷輸送のトラップとして働いたり、素子の劣化を促進させるため、一般式(1)で表される電荷輸送材料の純度は高いほど好ましい。純度は例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定でき、254nmの光吸収強度で検出したときの面積比は、好ましくは95.0%以上であり、より好ましくは97.0%以上であり、特に好ましくは99.0%以上であり、最も好ましくは99.9%以上である。
【0078】
国際公開第2008/117889号に記載のカルバゾール系材料で知られているように、一般式(1)で表される化合物の水素原子の一部又は全部を重水素原子で置換した材料も好ましく電荷輸送材料として用いることができる。
【0079】
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
【化19】

【0081】
【化20】

【0082】
【化21】

【0083】
一般式(1)で表される電荷輸送材料は、種々の公知の合成法を組み合わせて合成することが可能である。以下、合成法を説明する。
J.Chem.Soc.,1931,2568.,J.Am.Chem.Soc.,1936,58,1278.,J.Am.Chem.Soc.,1938,60,1458.,J.Chem.Soc.C,1971,2537.,Angew.Chem.Int.Ed.,1991,30,1646.,J.Mater.Chem.,2007,17,1209.,国際公開第2007/110228等の記載を参考に各種置換基を有するアクリダン誘導体が合成できる。
国際公開第2003/080760、国際公開第2005/085387、国際公開第2005/022962等の記載を参考に窒素含有芳香族ヘテロ環化合物を合成することができる。
上記文献に記載の反応を組み合わせることで本発明の電荷輸送材料を合成することができる。
【0084】
一般式(1)で表される化合物の膜状態でのTエネルギーは好ましくは2.69〜3.25eVであり、より好ましくは2.73〜3.14eVであり、更に好ましくは2.78〜3.04eVである。Tエネルギーは、材料の薄膜の燐光発光スペクトルを測定し、その短波長端から求めることができる。例えば、洗浄した石英ガラス基板上に、材料を真空蒸着法により約50nmの膜厚に成膜し、薄膜の燐光発光スペクトルを液体窒素温度下でF−7000日立分光蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ)を用いて測定する。得られた発光スペクトルの短波長側の立ち上がり波長をエネルギー単位に換算することによりTエネルギーを求めることができる。
【0085】
一般式(1)で表される電荷輸送材料は化学的安定性が高く、Tが大きいため、各種有機電子デバイスに好ましく用いることができる。用いる電子デバイスとしてはいかなるものでもよく、例えば、有機電界発光素子、有機トランジスタ、有機光電変換素子、ガスセンサ、有機整流素子,有機インバータ、情報記録素子が挙げられる。有機光電変換素子は光センサ用途(固体撮像素子)、エネルギー変換用途(太陽電池)のいずれにも用いることができる。好ましくは、有機電界発光素子、有機光電変換素子、有機トランジスタであり、更に好ましくは有機電界発光素子、有機光電変換素子であり、特に好ましくは有機電界発光素子である。
【0086】
本発明は前記一般式(1)で表される電荷輸送材料を含む膜にも関する。本発明の膜は有機電界発光素子における有機層として用いることができる。該膜は真空蒸着法又はウェットプロセスで形成されることが好ましい。
【0087】
次に有機電界発光素子の前記一般式(1)で表される化合物以外について説明する。
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記有機層のいずれか少なくとも一層に前記一般式(1)で表される化合物を含む。
【0088】
本発明の有機電界発光素子において、発光層は有機層であるが、更に複数の有機層を有していてもよい。
発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
図1は、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示している。図1に示される本発明に係る有機電界発光素子10は、支持基板2上において、陽極4と陰極9との間に発光層6が挟まれている。具体的には、陽極4と陰極9との間に正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、正孔ブロック層7、及び電子輸送層8がこの順に積層されている。
【0089】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記背面電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、前記透明電極又は前記背面電極上の前面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0090】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0091】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0092】
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0093】
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0094】
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0095】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
【0096】
−有機層の形成−
本発明の有機電界発光素子において、各有機層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、スピンコート法等の湿式製膜法(ウェットプロセス)のいずれによっても好適に形成することができる。
本発明において、一般式(1)で表される電荷輸送材料はトルエンなどの芳香族系有機溶剤、又はクロロホルムなどのハロゲン系有機溶剤に溶解しやすく、結晶性が低いため、ウェットプロセスで有機層を形成することが製造コスト低減の観点から好ましい。
【0097】
(発光層)
発光層は、少なくとも1種の発光材料を含有する。
【0098】
<発光材料>
発光材料は、励起一重項からの発光(蛍光)を利用するものでも励起三重項からの発光(燐光)を利用するものでもよいが、発光効率の観点から、燐光を利用するもの(燐光発光材料)の方が好ましい。
発光層は、色純度を向上させるためや発光波長領域を広げるために2種類以上の発光材料を含有することができる。発光材料の少なくとも一種が燐光発光材料であることが好ましい。
前記発光材料の少なくとも一種が白金錯体又はイリジウム錯体であることが好ましい。
蛍光発光材料、燐光発光材料については、例えば、特開2008−270736の段落番号〔0100〕〜〔0164〕、特開2007−266458の段落番号〔0088〕〜〔0090〕に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0099】
本発明において、燐光性発光材料としては、短波長の(すなわちTの大きい)ものほど一般式(1)で表される電荷輸送材料と組み合わせたときの効果が顕著であり、燐光性発光材料の極大発光波長が400nm以上470nm以下であることが好ましく、極大発光波長が400nm以上465nm以下であることがより好ましく、400nm以上460nm以下であることが更に好ましい。
また、燐光性発光材料としては、燐光性イリジウム錯体、又は燐光性白金錯体が好ましい。
【0100】
イリジウム錯体として好ましくは、下記一般式(T−1)で表されるイリジウム錯体である。
〔一般式(T−1)で表される化合物〕
一般式(T−1)で表される化合物について説明する。
【0101】
【化22】

【0102】
(一般式(T−1)中、RT1、RT2、RT3、及びRT4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
AはCR’又はNを表し、R’は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
Qは窒素を1つ以上含む5員又は6員の芳香族複素環又は縮合芳香族複素環であり、置換基Zを有していてもよい。
T1、RT2、RT3、RT4、及びR’は、任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
置換基Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−C(O)R”、−C(O)OR”、−C(O)N(R”)、−CN、−NO、−SO、−SOR”、−SOR”、又は−SOR”を表し、R”はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
(X−Y)は、配位子を表す。mは1〜3の整数、nは0〜2の整数を表す。m+nは3である。)
【0103】
アルキル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基Zを挙げることができる。RT1、RT2、RT3、RT4、及びR’で表されるアルキル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、シクロヘキシル基、t−ブチル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基Zを挙げることができる。RT1、RT2、RT3、RT4、及びR’で表されるシクロアルキル基として、好ましくは環員数4〜7のシクロアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数5〜6のシクロアルキル基であり、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
T1、RT2、RT3、RT4、及びR’で表されるアルケニル基としては好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、1−プロペニル、1−イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。
T1、RT2、RT3、RT4、及びR’で表されるアルキニル基としては、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばエチニル、プロパルギル、1−プロピニル、3−ペンチニルなどが挙げられる。
【0104】
T1、RT2、RT3、RT4、及びR’で表されるアリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0105】
T1、RT2、RT3、RT4、及びR’で表されるヘテロアリール基としては、好ましくは、炭素数5〜8のヘテロアリール基であり、より好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換のヘテロアリール基であり、例えば、ピリジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、ピロリル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンズオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンズイソオキサゾリル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、イミダゾリジニル基、チアゾリニル基、スルホラニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、7ピリドインドリル基などが挙げられる。好ましい例としては、ピリジル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、チエニル基であり、より好ましくは、ピリジル基、ピリミジニル基である。
【0106】
T1、RT2、RT3、RT4、及びR’として好ましくは、水素原子、アルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ペルフルオロアルキル基、ジアルキルアミノ基、フルオロ基、アリール基、ヘテロアリール基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、フルオロ基、アリール基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基である。置換基Zとしては、アルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0107】
T1、RT2、RT3、RT4、及びR’は任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。形成されるシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールの定義及び好ましい範囲はRT1、RT2、RT3、及びRT4で定義したシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基と同じである。
【0108】
環Qが表す芳香族複素環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、等が挙げられる。好ましくはピリジン環、ピラジン環であり、より好ましくはピリジン環である。
【0109】
環Qが表す縮合芳香族複素環としては、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾピラゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾオキサゾール環等が挙げられる。好ましくはキノリン環、イソキノリン環であり、より好ましくはキノリン環である。
【0110】
mは1〜3であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。すなわち、nは0〜1であることが好ましい。錯体中の配位子の種類は1〜2種類から構成されることが好ましく、更に好ましくは1種類である。錯体分子内に反応性基を導入する際には合成容易性という観点から配位子が2種類からなることも好ましい。
【0111】
一般式(T−1)で表される金属錯体は、一般式(T−1)における下記一般式(T−1−A)で表される配位子若しくはその互変異性体と、(X−Y)で表される配位子若しくはその互変異性体との組み合わせを含んで構成されるか、該金属錯体の配位子の全てが下記一般式(T−1−A)で表される配位子又はその互変異性体のみで構成されていてもよい。
【0112】
【化23】

【0113】
(一般式(T−1−A)中、RT1、RT2、RT3、RT4、A、及びQは、一般式(T−1)における、RT1、RT2、RT3、RT4、A、及びQと同義である。)
【0114】
更に従来公知の金属錯体形成に用いられる、所謂配位子として当該業者が周知の配位子(配位化合物ともいう)を必要に応じて(X−Y)で表される配位子として有していてもよい。
【0115】
従来公知の金属錯体に用いられる配位子としては、種々の公知の配位子があるが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社 H.Yersin著 1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社 山本明夫著 1982年発行等に記載の配位子(例えば、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロアリール配位子(例えば、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)が挙げられる。(X−Y)で表される配位子として好ましくは、ジケトン類あるいはピコリン酸誘導体であり、錯体の安定性と高い発光効率が得られる観点からアセチルアセトネートであることが最も好ましい。
【0116】
【化24】

【0117】
以下に、(X−Y)で表される配位子の例を具体的に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0118】
【化25】

【0119】
*は一般式(T−1)におけるイリジウムへの配位位置を表す。
上記(X−Y)で表される配位子の例において、Rx、Ry及びRzはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。該置換基としては前記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。好ましくは、Rx、Rzはそれぞれ独立にアルキル基、パーフルオロアルキル基、ハロゲン原子、アリール基のいずれかであり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基、フッ素原子、置換されていても良いフェニル基であり、最も好ましくはメチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、フェニル基である。Ryは好ましくは水素原子、アルキル基、パーフルオロアルキル基、ハロゲン原子、アリール基のいずれかであり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、置換されていても良いフェニル基であり、最も好ましくは水素原子、メチル基のいずれかである。これら配位子は素子中で電荷を輸送したり励起によって電子が集中する部位ではないと考えられるため、Rx、Ry、Rzは化学的に安定な置換基であれば良く、本発明の効果にも影響を及ぼさない。
錯体合成方法が容易であるため好ましくは(I−1)、(I−4)、(I−5)であり、最も好ましくは(I−1)である。これらの配位子を有する錯体は、対応する配位子前駆体を用いることで公知の合成例と同様に合成できる。例えば国際公開2009−073245号広報パンフレット46ページに記載の方法と同様に、市販のジフルオロアセチルアセトンを用いて以下に示す方法で合成する事ができる。
【0120】
【化26】

【0121】
また、配位子として一般式(I−15)に示すモノアニオン性配位子を用いる事もできる。
【0122】
【化27】

【0123】
一般式(I−15)におけるRI1〜RI4及びBは、一般式(T−1)におけるRT1〜RT4及びAと同義であり、好ましい範囲も同様である。RI5〜RI7は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
I1、RI5、RI6、RI7は、任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−C(O)R”、−C(O)OR”、−C(O)N(R”)、−CN、−NO、−SO、−SOR”、−SOR”、又は−SOR”を表し、R”はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
また、RI1〜RI7及びBにおける好ましい範囲は、一般式(T−1)におけるRT1〜RT4及びAと同様である。
*は一般式(T−1)におけるイリジウムへの配位位置を表す。
【0124】
前記一般式(T−1)で表される化合物は、好ましくは下記一般式(T−2)で表される化合物である。
【0125】
【化28】

【0126】
一般式(T−2)におけるRT1〜RT4、A、(X−Y)、m及びnは、一般式(T−1)におけるRT1〜RT4、A、(X−Y)、m及びnと同義であり、好ましいものも同様である。
T5〜RT7は、RT1と同義である。
T5、RT6及びRT7は水素原子を表すか、又は任意の2つが結合して縮合4〜7員環式基を形成することが好ましく、該縮合4〜7員環式基は、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであることがより好ましく、アリールであることが更に好ましい。
T5、RT6及びRT7における置換基Zとしてはアルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、シアノ基、アルキルアミノ基、ジアリールアミノ基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0127】
前記一般式(T−2)で表される化合物の好ましい形態の一つは、一般式(T−2)においてRT1〜RT7、Aのうち、隣り合う任意の2つが互いに結合して縮合環を形成しない場合である。
【0128】
前記一般式(T−2)で表される化合物の好ましい形態の一つは、下記一般式(T−3)で表される場合である。
【0129】
【化29】

【0130】
一般式(T−3)におけるRT1〜RT7、A、m及びnは、一般式(T−2)におけるRT1〜RT7、A、m及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。RI1〜RI7、及びBは、一般式(I−15)におけるRI1〜RI7、及びBと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0131】
前記一般式(T−2)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(T−4)で表される化合物である。
【0132】
【化30】

【0133】
一般式(T−4)におけるRT1〜RT4、A、(X−Y)、m及びnは、一般式(T−2)におけるRT1〜RT4、A、(X−Y)、m及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。R1’〜R5’はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
1’〜R5’は、任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−C(O)R”、−C(O)OR”、−C(O)N(R”)、−CN、−NO、−SO、−SOR”、−SOR”、又は−SOR”を表し、R”はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
また、R1’〜R5’における好ましい範囲は、一般式(T−1)におけるRT1〜RT4、R’と同様である。またRT1〜RT4、R’、及びR1’〜R5’のうち、1つ又は2つがアルキル基又はフェニル基で残りが全て水素原子である場合が特に好ましく、RT1〜RT4、R’、及びR1’〜R5’のうち、1つ又は2つがアルキル基で残りが全て水素原子である場合が更に好ましい。
【0134】
前記一般式(T−2)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(T−5)で表される化合物である。
【0135】
【化31】

【0136】
一般式(T−5)におけるRT2〜RT6、A、(X−Y)、m及びnは、一般式(T−2)におけるRT2〜RT6、A、(X−Y)、m及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。R6’〜R8’はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
T5、RT6、R6’〜R8’は、任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−C(O)R”、−C(O)OR”、−C(O)N(R”)、−CN、−NO、−SO、−SOR”、−SOR”、又は−SOR”を表し、R”はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
また、R6’〜R8’における好ましい範囲は、一般式(T−1)におけるRT1〜RT4、R’と同様である。またRT2〜RT6、R’、及びR6’〜R8’のうち、1つ又は2つがアルキル基又はフェニル基で残りが全て水素原子である場合が特に好ましく、RT2〜RT6、R’、及びR6’〜R8’のうち、1つ又は2つがアルキル基で残りが全て水素原子である場合が更に好ましい。
【0137】
一般式(T−1)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(T−6)で表される場合である。
【0138】
【化32】

【0139】
一般式(T−6)中、R1a〜R1iの定義や好ましい範囲は一般式(T−1)におけるRT1〜RT4、R’におけるものと同様である。X、Y、m、nの定義や好ましい範囲は一般式(T−1)におけるX、Y、m、nと同様である。
【0140】
一般式(T−1)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(T−7)で表される場合である。
【0141】
【化33】

【0142】
一般式(T−7)中、R1a〜R1kの定義や好ましい範囲は一般式(T−1)におけるRT1〜RT4、R’におけるものと同様である。X、Y、m、nの定義や好ましい範囲は一般式(T−1)におけるX、Y、m、nと同様である。
【0143】
一般式(T−1)で表される化合物の好ましい具体例を以下に列挙するが、以下に限定されるものではない。
【0144】
【化34】

【0145】
【化35】

【0146】
上記一般式(T−1)で表される化合物として例示した化合物は、特開2009−99783号公報に記載の方法や、米国特許7279232号等に記載の種々の方法で合成できる。合成後、カラムクロマトグラフィー、再結晶等による精製を行った後、昇華精製により精製することが好ましい。昇華精製により、有機不純物を分離できるだけでなく、無機塩や残留溶媒等を効果的に取り除くことができる。
【0147】
一般式(T−1)で表される化合物は、発光層に含有されるが、その用途が限定されることはなく、更に有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。
【0148】
次に、燐光性白金錯体について説明する。
本発明において、白金錯体として好ましくは、下記一般式(C−1)で表される化合物である。
【0149】
【化36】

【0150】
(式中、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にPtに配位する配位子を表す。L、L及びLはそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表す。)
【0151】
一般式(C−1)について説明する。Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にPtに配位する配位子を表す。この時、Q、Q、Q及びQとPtの結合は、共有結合、イオン結合、配位結合などいずれであっても良い。Q、Q、Q及びQ中のPtに結合する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子が好ましく、Q、Q、Q及びQ中のPtに結合する原子の内、少なくとも一つが炭素原子であることが好ましく、二つが炭素原子であることがより好ましく、二つが炭素原子で、二つが窒素原子であることが特に好ましい。
炭素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、アニオン性の配位子でも中性の配位子でもよく、アニオン性の配位子としてはビニル配位子、芳香族炭化水素環配位子(例えばベンゼン配位子、ナフタレン配位子、アントラセン配位子、フェナントレン配位子など)、ヘテロ環配位子(例えばフラン配位子、チオフェン配位子、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子及び、それらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾチアゾール配位子など))が挙げられる。中性の配位子としてはカルベン配位子が挙げられる。
窒素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としては含窒素芳香族ヘテロ環配位子(ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、オキサゾール配位子、チアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾイミダゾール配位子など))、アミン配位子、ニトリル配位子、イミン配位子が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アミノ配位子、イミノ配位子、含窒素芳香族ヘテロ環配位子(ピロール配位子、イミダゾール配位子、トリアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(例えはインドール配位子、ベンゾイミダゾール配位子など))が挙げられる。
酸素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはエーテル配位子、ケトン配位子、エステル配位子、アミド配位子、含酸素ヘテロ環配位子(フラン配位子、オキサゾール配位子及びそれらを含む縮環体(ベンゾオキサゾール配位子など))が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、アシルオキシ配位子、シリルオキシ配位子などが挙げられる。
硫黄原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはチオエーテル配位子、チオケトン配位子、チオエステル配位子、チオアミド配位子、含硫黄ヘテロ環配位子(チオフェン配位子、チアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(ベンゾチアゾール配位子など))が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アルキルメルカプト配位子、アリールメルカプト配位子、ヘテロアリールメルカプト配位子などが挙げられる。
リン原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはホスフィン配位子、リン酸エステル配位子、亜リン酸エステル配位子、含リンヘテロ環配位子(ホスフィニン配位子など)が挙げられ、アニオン性の配位子としては、ホスフィノ配位子、ホスフィニル配位子、ホスホリル配位子などが挙げられる。
、Q、Q及びQで表される基は、置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。また置換基同士が連結していても良い(QとQが連結した場合、環状四座配位子のPt錯体になる)。
【0152】
、Q、Q及びQで表される基として好ましくは、炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、シリルオキシ配位子であり、より好ましくは、炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子、アリールオキシ配位子であり、更に好ましくは炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子である。
【0153】
、L及びLは、単結合又は二価の連結基を表す。L、L及びLで表される二価の連結基としては、アルキレン基(メチレン、エチレン、プロピレンなど)、アリーレン基(フェニレン、ナフタレンジイル)、ヘテロアリーレン基(ピリジンジイル、チオフェンジイルなど)、イミノ基(−NR−)(フェニルイミノ基など)、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、ホスフィニデン基(−PR−)(フェニルホスフィニデン基など)、シリレン基(−SiRR’−)(ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基など)、又はこれらを組み合わせたものが挙げられる。これらの連結基は、更に置換基を有していてもよい。
錯体の安定性及び発光量子収率の観点から、L、L及びLとして好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、イミノ基、オキシ基、チオ基、シリレン基であり、より好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、イミノ基であり、更に好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基であり、更に好ましくは、単結合、メチレン基、フェニレン基であり、更に好ましくは単結合、ジ置換のメチレン基であり、更に好ましくは単結合、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジイソブチルメチレン基、ジベンジルメチレン基、エチルメチルメチレン基、メチルプロピルメチレン基、イソブチルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基、シクロペンタンジイル基、フルオレンジイル基、フルオロメチルメチレン基であり、特に好ましくは単結合、ジメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基である。
【0154】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、より好ましくは下記一般式(C−2)で表される白金錯体である。
【0155】
【化37】

【0156】
(式中、L21は単結合又は二価の連結基を表す。A21、A22はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。Z21、Z22はそれぞれ独立に含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z23、Z24はそれぞれ独立にベンゼン環又は芳香族ヘテロ環を表す。)
【0157】
一般式(C−2)について説明する。L21は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0158】
21、A22はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。A21、A22の内、少なくとも一方は炭素原子であることが好ましく、A21、A22が共に炭素原子であることが、錯体の安定性の観点及び錯体の発光量子収率の観点から好ましい。
【0159】
21、Z22は、それぞれ独立に含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z21、Z22で表される含窒素芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環などが挙げられる。錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点から、Z21、Z22で表される環として好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環であり、より好ましくはピリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環であり、更に好ましくはピリジン環、ピラゾール環であり、特に好ましくはピリジン環である。
【0160】
前記Z21、Z22で表される含窒素芳香族ヘテロ環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては前記置換基群Bが適用できる。
【0161】
炭素原子上の置換基として好ましくはアルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子である。置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、短波長化させる場合には電子供与性基、フッ素原子、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、フッ素原子、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また長波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばシアノ基、ポリフルオロアルキル基などが選択される。
窒素原子上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、アリール基が好ましい。前記置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
【0162】
23、Z24は、それぞれ独立にベンゼン環又は芳香族ヘテロ環を表す。Z23、Z24で表される含窒素芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点からZ23、Z24で表される環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チオフェン環であり、より好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環であり、更に好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。
【0163】
前記Z23、Z24で表されるベンゼン環、含窒素芳香族ヘテロ環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては前記置換基群Bが適用できる。炭素原子上の置換基として好ましくはアルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子である。置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、長波長化させる場合には電子供与性基、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また短波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばフッ素基、シアノ基、ポリフルオロアルキル基などが選択される。窒素原子上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、アリール基が好ましい。前記置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
【0164】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−3)で表される白金錯体である。
【0165】
【化38】

【0166】
(式中、A301〜A313は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L31は単結合又は二価の連結基を表す。)
【0167】
一般式(C−3)について説明する。L31は一般式(C−2)におけるL21と同義であり、また好ましい範囲も同様である。A301〜A306はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。
301〜A306として好ましくはC−Rであり、R同士が互いに連結して環を形成していても良い。A301〜A306がC−Rである場合に、A302、A305のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基であり、特に好ましくは水素原子、フッ素基である。A301、A303、A304、A306のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基であり、特に好ましく水素原子である。A307、A308、A309及びA310は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A307、A308、A309及びA310がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して縮環構造を形成してもよい。発光波長を短波長側にシフトさせる場合、A308がN原子であることが好ましい。
【0168】
上記の如くA307〜A310を選択した場合、2つの炭素原子とA307、A308、A309及びA310から形成される6員環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環であり、特に好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。前記6員環が、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環(特に好ましくはピリジン環)であることにより、ベンゼン環と比較して、金属−炭素結合を形成する位置に存在する水素原子の酸性度が向上する為、より金属錯体を形成しやすくなる点有利である。
【0169】
311、A312及びA313は、それぞれ独立に、C−R又はNを表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A311、A312及びA313がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して、縮環構造を形成してもよい。A311、A312及びA313のうち少なくとも一つはNであることが好ましく、特にA311がNであることが好ましい。
【0170】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−4)で表される白金錯体である。
【0171】
【化39】

【0172】
(一般式(C−4)中、A401〜A414はそれぞれ独立にC−R24又は窒素原子を表す。R24は水素原子又は置換基を表す。L41は単結合又は二価の連結基を表す。)
【0173】
一般式(C−4)について説明する。
401〜A414はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。A401〜A406及びL41は、前記一般式(C−3)におけるA301〜A306及びL31と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0174】
407〜A414としては、A407〜A410とA411〜A414のそれぞれにおいて、窒素原子の数は、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。発光波長を短波長側にシフトさせる場合、A408、A412が窒素原子であることが好ましく、A408とA412が共に窒素原子であることが更に好ましい。
407〜A414がC−Rを表す場合に、A408、A412のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、ポリフルオロアルキル基、アルキル基、アリール基、フッ素基、シアノ基であり、特に好ましくは、水素原子、フェニル基、ポリフルオロアルキル基、シアノ基である。A407、A409、A411、A413のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、ポリフルオロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素基、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、ポリフルオロアルキル基、フッ素基、シアノ基であり、特に好ましく水素原子、フェニル基、フッ素基である。A410、A414のRとして好ましくは水素原子、フッ素基であり、より好ましくは水素原子である。A407〜A409、A411〜A413のいずれかがC−Rを表す場合に、R同士が互いに連結して環を形成していても良い。
【0175】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−5)で表される白金錯体である。
【0176】
【化40】

【0177】
(一般式(C−5)中、A501〜A512は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L51は単結合又は二価の連結基を表す。)
【0178】
一般式(C−5)について説明する。A501〜A506及びL51は、前記一般式(C−3)におけるA301〜A306及びL31と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0179】
507、A508及びA509とA510、A511及びA512は、それぞれ独立に、一般式(C−3)におけるA311、A312及びA313と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0180】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、より好ましい別の態様は下記一般式(C−6)で表される白金錯体である。
【0181】
【化41】

【0182】
(式中、L61は単結合又は二価の連結基を表す。A61はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。Z61、Z62はそれぞれ独立に含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z63はそれぞれ独立にベンゼン環又は芳香族ヘテロ環を表す。YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。)
【0183】
一般式(C−6)について説明する。L61は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0184】
61は炭素原子又は窒素原子を表す。錯体の安定性の観点及び錯体の発光量子収率の観点からA61は炭素原子であることが好ましい。
【0185】
61、Z62は、それぞれ前記一般式(C−2)におけるZ21、Z22と同義であり、また好ましい範囲も同様である。Z63は、前記一般式(C−2)におけるZ23と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0186】
YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。非環状配位子とはPtに結合する原子が配位子の状態で環を形成していないものである。Y中のPtに結合する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、窒素原子、酸素原子がより好ましく、酸素原子が最も好ましい。炭素原子でPtに結合するYとしてはビニル配位子が挙げられる。窒素原子でPtに結合するYとしてはアミノ配位子、イミノ配位子が挙げられる。酸素原子でPtに結合するYとしては、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、アシルオキシ配位子、シリルオキシ配位子、カルボキシル配位子、リン酸配位子、スルホン酸配位子などが挙げられる。硫黄原子でPtに結合するYとしては、アルキルメルカプト配位子、アリールメルカプト配位子、ヘテロアリールメルカプト配位子、チオカルボン酸配位子などが挙げられる。
Yで表される配位子は、置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。また置換基同士が連結していても良い。
【0187】
Yで表される配位子として好ましくは酸素原子でPtに結合する配位子であり、より好ましくはアシルオキシ配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、シリルオキシ配位子であり、更に好ましくはアシルオキシ配位子である。
【0188】
一般式(C−6)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−7)で表される白金錯体である。
【0189】
【化42】

【0190】
(式中、A701〜A710は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L71は単結合又は二価の連結基を表す。YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。)
【0191】
一般式(C−7)について説明する。L71は、前記一般式(C−6)中のL61と同義であり、また好ましい範囲も同様である。A701〜A710は一般式(C−3)におけるA301〜A310と同義であり、また好ましい範囲も同様である。Yは一般式(C−6)におけるそれと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0192】
一般式(C−1)で表される白金錯体として具体的には、特開2005−310733号公報の[0143]〜[0152]、[0157]〜[0158]、[0162]〜[0168]に記載の化合物、特開2006−256999号公報の[0065]〜[0083]に記載の化合物、特開2006−93542号公報の[0065]〜[0090]に記載の化合物、特開2007−73891号公報の[0063]〜[0071]に記載の化合物、特開2007−324309号公報の[0079]〜[0083]に記載の化合物、特開2007−96255号公報の[0055]〜[0071]に記載の化合物、特開2006−313796号公報の[0043]〜[0046]が挙げられ、その他以下に例示する白金錯体が挙げられる。
【0193】
【化43】

【0194】
【化44】

【0195】
【化45】

【0196】
一般式(C−1)で表される白金錯体化合物は、例えば、Journal of Organic Chemistry 53,786,(1988)、G.R.Newkome et al.)の、789頁、左段53行〜右段7行に記載の方法、790頁、左段18行〜38行に記載の方法、790頁、右段19行〜30行に記載の方法及びその組み合わせ、Chemische Berichte 113,2749(1980)、H.Lexyほか)の、2752頁、26行〜35行に記載の方法等、種々の手法で合成できる。
例えば、配位子、又はその解離体と金属化合物を溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、水などが挙げられる)の存在下、若しくは、溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキシド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどが挙げられる)、若しくは、塩基非存在下、室温以下、若しくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する手法も有効である)得ることができる。
【0197】
本発明において、一般式(C−1)で表される化合物を発光層に含有させる場合、その含有量は発光層中1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが更に好ましい。
【0198】
その他の発光材料について説明する。
(蛍光発光材料)
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の錯体やピロメテン誘導体の錯体に代表される各種錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0199】
(燐光発光材料)
本発明に使用できる燐光発光材料としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、特開2001−247859号、特開2002−302671号、特開2002−117978号、特開2003−133074号、特開2002−235076号、特開2003−123982号、特開2002−170684号、EP1211257号、特開2002−226495号、特開2002−234894号、特開2001−247859号、特開2001−298470号、特開2002−173674号、特開2002−203678、特開2002−203679号、特開2004−357791号、特開2006−256999号、特開2007−19462号、特開2007−84635号、特開2007−96259号等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、更に好ましい発光性ドーパントとしては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、及びCe錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が好ましい。更に、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が特に好ましい。
【0200】
発光層中の発光材料は、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物の質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜40質量%含有されることがより好ましく、2質量%〜30質量%含有されることが更に好ましい。
【0201】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、2nm〜500nmであるのが好ましく、中でも、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0202】
本発明の素子における発光層は、発光材料とホスト材料との混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは一種であっても二種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は一種であっても二種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。更に、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。そのような材料としては、炭化水素系材料が好ましく、アダマンタン骨格を有する材料が特に好ましい。また、発光層は一層であっても二層以上の多層であってもよい。また、それぞれの発光層が異なる発光色で発光してもよい。
【0203】
<ホスト材料>
ホスト材料は、発光層において主に電荷の注入、輸送を担う化合物であり、また、それ自体は実質的に発光しない化合物のことである。ここで「実質的に発光しない」とは、該実質的に発光しない化合物からの発光量が好ましくは素子全体での全発光量の5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは1%以下であることを言う。
ホスト材料としては、前記一般式(1)で表される化合物を用いることもできる。
【0204】
その他の本発明に用いることのできるホスト材料としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体及びそれらの誘導体(置換基や縮環を有していてもよい)等を挙げることができる。
【0205】
本発明において、併用することができるホスト材料としては、正孔輸送性ホスト材料であっても、電子輸送性ホスト材料であってもよいが、正孔輸送性ホスト材料を用いることができる。
本発明において、前記発光層が、ホスト材料を含むことが好ましい。前記ホスト材料は下記一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物であることが好ましい。
本発明においては、発光層に一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物の少なくとも1つ以上を含むことがより好ましい。
【0206】
本発明において、一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物が発光層に含有される場合、一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物は発光層中に30〜100質量%含まれることが好ましく、40〜100質量%含まれることが好ましく、50〜100質量%含まれることが特に好ましい。また、一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物を、複数の有機層に用いる場合はそれぞれの層において、上記の範囲で含有することが好ましい。
【0207】
一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物は、いずれかの有機層に、一種類のみを含有していてもよく、複数の一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物を任意の割合で組み合わせて含有していてもよい。
【0208】
【化46】

【0209】
(一般式(4−1)及び(4−2)中、d、eは0〜3の整数を表し、少なくとも一方は1以上である。fは1〜4の整数を表す。R’は置換基を表し、d、e、fが2以上である場合R’は互いに異なっていても同じでも良い。また、R’の少なくとも1つは下記一般式(5)で表されるカルバゾール基を表す。)
【0210】
【化47】

【0211】
(一般式(5)中、R’はそれぞれ独立に置換基を表す。gは0〜8の整数を表す。)
【0212】
R’はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、又は一般式(5)で表される置換基である。R’が一般式(5)を表さない場合、好ましくは炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下の置換又は無置換のアリール基であり、更に好ましくは炭素数6以下のアルキル基である。
【0213】
R’はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基であり、好ましくは炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下の置換又は無置換のアリール基であり、更に好ましくは炭素数6以下のアルキル基である。
gは0〜8の整数を表し、電荷輸送を担うカルバゾール骨格を遮蔽しすぎない観点から0〜4が好ましい。また、合成容易さの観点から、カルバゾールが置換基を有する場合、窒素原子に対し、対称になるように置換基を持つものが好ましい。
【0214】
一般式(4−1)において、電荷輸送能を保持する観点で、dとeの和は2以上であることが好ましい。また、他方のベンゼン環に対しR’がメタで置換することが好ましい。その理由として、オルト置換では隣り合う置換基の立体障害が大きいため結合が開裂しやすく、耐久性が低くなる。また、パラ置換では分子形状が剛直な棒状へと近づき、結晶化しやすくなるため高温条件での素子劣化が起こりやすくなる。具体的には以下の構造で表される化合物であることが好ましい。
【0215】
【化48】

【0216】
上記式においてR’はそれぞれ独立に置換基を表す。gは0〜8の整数を表す。
【0217】
一般式(4−2)において、電荷輸送能を保持する観点で、fは2以上であることが好ましい。fが2又は3の場合、同様の観点からR’が互いにメタで置換することが好ましい。具体的には以下の構造で表される化合物であることが好ましい。
【0218】
【化49】

【0219】
上記式においてR’はそれぞれ独立に置換基を表す。gは0〜8の整数を表す。
【0220】
一般式(4−1)及び(4−2)が水素原子を有する場合、水素の同位体(重水素原子等)も含む。この場合化合物中の全ての水素原子が水素同位体に置き換わっていてもよく、また一部が水素同位体を含む化合物である混合物でもよい。好ましくは一般式(5)におけるR’が重水素によって置換されたものであり、特に好ましくは以下の構造が挙げられる。
【0221】
【化50】

【0222】
更に置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
【0223】
一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物は、種々の公知の合成法を組み合わせて合成することが可能である。最も一般的には、カルバゾール化合物に関してはアリールヒドラジンとシクロヘキサン誘導体との縮合体のアザーコープ転位反応の後、脱水素芳香族化による合成(L.F.Tieze,Th.Eicher著、高野、小笠原訳、精密有機合成、339頁(南江堂刊))が挙げられる。また、得られたカルバゾール化合物とハロゲン化アリール化合物のパラジウム触媒を用いるカップリング反応に関してはテトラヘドロン・レターズ39巻617頁(1998年)、同39巻2367頁(1998年)及び同40巻6393頁(1999年)等に記載の方法が挙げられる。反応温度、反応時間については特に限定されることはなく、前記文献に記載の条件が適用できる。また、mCPなどのいくつかの化合物は市販されているものを好適に用いることができる。
【0224】
本発明において、一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物は、真空蒸着プロセスで薄層を形成することが好ましいが、溶液塗布などのウェットプロセスも好適に用いることが出来る。化合物の分子量は、蒸着適性や溶解性の観点から2000以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、800以下であることが特に好ましい。また蒸着適性の観点では、分子量が小さすぎると蒸気圧が小さくなり、気相から固相への変化がおきず、有機層を形成することが困難となるので、300以上が好ましく、400以上が特に好ましい。
【0225】
一般式(4−1)及び(4−2)は、以下に示す構造若しくはその水素原子が1つ以上重水素原子で置換された化合物であることが好ましい。
【0226】
【化51】

【0227】
上記式においてR’はそれぞれ独立に置換基を表す。
以下に、本発明における一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0228】
【化52】


【0229】
【化53】

【0230】
【化54】

【0231】
【化55】

【0232】
【化56】

【0233】
【化57】

【0234】
発光層において、前記ホスト材料の三重項最低励起エネルギー(Tエネルギー)が、前記燐光発光材料のTエネルギーより高いことが色純度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。ホスト材料のTが燐光発光材料のTより0.1eV以上大きいことが好ましく、0.2eV以上大きいことがより好ましく、0.3eV以上大きいことが更に好ましい。
ホスト材料のTが燐光発光材料のTより小さいと発光を消光してしまうためホスト材料には燐光発光材料より大きなTが求められる。また、ホスト材料のTが燐光発光材料より大きい場合でも、両者のT差が小さい場合には一部、燐光発光材料からホスト材料への逆エネルギー移動が起こるため、効率低下や耐久性低下の原因となる。従って、Tが十分に大きく、化学的安定性及びキャリア注入・輸送性の高いホスト材料が求められている。
【0235】
また、本発明におけるホスト化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物質量に対して15質量%以上95質量%以下であることが好ましい。発光層に、一般式(1)で表される化合物を含む複数種類のホスト化合物を含む場合、一般式(1)で表される化合物は全ホスト化合物中50質量%以上99質量%以下であることが好ましい。
【0236】
本発明の有機電界発光素子は、発光層に隣接する発光層より陽極側の層に、T1が2.50eV以上3.25eV以下であるアミン系材料を用いることが素子の効率、駆動電圧、耐久性の観点で好ましい。T1を2.50eV以上とすることで発光層で生成する励起子をクエンチしにくくなり、3.25eV以下とすることで材料の励起状態での安定性が高くなる。T1はより好ましくは2.60eV以上3.10eV以下であり、更に好ましくは2.50eV以上3.00eV以下である。分子内にフェナントレン、トリフェニレン以外の縮環芳香族炭化水素骨格を有さない構造とすることで、T1をこの範囲にすることができる。また、アミン系材料とは、アリールアミン構造又はカルバゾール構造を有する材料であり、例としては以下に示すものや以下の一般式(M−1)で表される化合物が挙げられる。
【0237】
【化58】

【0238】
〔一般式(M−1)で表される化合物〕
本発明の有機電界発光素子は、前記一対の電極が陽極を含み、前記発光層と該陽極との間に少なくとも一層の有機層を含むことが好ましく、該有機層に少なくとも一種の下記一般式(M−1)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0239】
一般式(M−1)で表される化合物は発光層と陽極の間の発光層に隣接する有機層に含有されることがより好ましいが、その用途が限定されることはなく、有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。本発明にかかる一般式(M−1)で表される化合物の導入層としては、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電荷ブロック層のいずれか、若しくは複数に含有することができる。
一般式(M−1)で表される化合物が含有される、発光層と陽極の間の発光層に隣接する有機層は正孔輸送層であることがより好ましい。
【0240】
【化59】

【0241】
一般式(M−1)中、RM1はアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
M2〜RM23はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、シリル基、シアノ基、ニトロ基、又はフッ素原子を表す。
【0242】
一般式(M−1)中、RM1はアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30)、又はヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜12)を表し、これらは前述の置換基Zを有していても良い。RM1として好ましくは、アリール基、又はヘテロアリール基であり、より好ましくはアリール基である。RM1のアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、アリール基、アルコキシ基が挙げられ、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアリール基がより好ましく、アルキル基、シアノ基、又はアリール基が更に好ましい。RM1のアリール基は、好ましくは置換基Zを有していてもよいフェニル基であり、より好ましくはアルキル基又はシアノ基を有していてもよいフェニル基である。
【0243】
M2〜RM23はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30)、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜12)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜24)、シリル基(好ましくは炭素数0〜18)、シアノ基、ニトロ基、又はフッ素原子を表し、これらは前述の置換基Zを有していても良い。
【0244】
M2、RM7、RM8、RM15、RM16及びRM23として好ましくは、水素原子、又は置換基Zを有していても良いアルキル基若しくはアリール基であり、更に好ましくは水素原子である。
M4、RM5、RM11、RM12、RM19及びRM20として好ましくは、水素原子、置換基Zを有していても良いアルキル基若しくはアリール基、又はフッ素原子であり、更に好ましくは水素原子である。
M3、RM6、RM9、RM14、RM17及びRM22として好ましくは、水素原子、置換基Zを有していても良いアルキル基若しくはアリール基、フッ素原子、又はシアノ基であり、より好ましくは水素原子、又は置換基Zを有していても良いアルキル基であり、更に好ましくは水素原子である。
M10、RM13、RM18及びRM21として好ましくは、水素原子、置換基Zを有していても良いアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基若しくはアミノ基、ニトロ基、フッ素原子、又はシアノ基であり、より好ましくは水素原子、置換基Zを有していても良いアルキル基若しくはアリール基、ニトロ基、フッ素原子、又はシアノ基であり、更に好ましくは水素原子、又は置換基Zを有していても良いアルキル基である。アルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、フッ素原子が好ましく、置換基Zを有していても良いアルキル基の炭素数は好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4である。
【0245】
一般式(M−1)で表される化合物を、正孔輸送層中で用いる場合は、一般式(M−1)で表される化合物は50〜100質量%含まれることが好ましく、80〜100質量%含まれることが好ましく、95〜100質量%含まれることが特に好ましい。
また、一般式(M−1)で表される化合物を、複数の有機層に用いる場合はそれぞれの層において、上記の範囲で含有することが好ましい。
【0246】
一般式(M−1)で表される化合物は、いずれかの有機層に、一種類のみを含有していてもよく、複数の一般式(M−1)で表される化合物を任意の割合で組み合わせて含有していてもよい。
【0247】
一般式(M−1)で表される化合物を含む正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、該正孔輸送層は発光層に接して設けられている事が好ましい。
該正孔輸送層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0248】
一般式(M−1)を構成する水素原子は、水素の同位体(重水素原子等)も含む。この場合化合物中の全ての水素原子が水素同位体に置き換わっていてもよく、また一部が水素同位体を含む化合物である混合物でもよい。
【0249】
一般式(M−1)で表される化合物は、種々の公知の合成法を組み合わせて合成することが可能である。最も一般的には、カルバゾール化合物に関してはアリールヒドラジンとシクロヘキサン誘導体との縮合体のアザーコープ転位反応の後、脱水素芳香族化による合成(L.F.Tieze,Th.Eicher著、高野、小笠原訳、精密有機合成、339頁(南江堂刊))が挙げられる。また、得られたカルバゾール化合物とハロゲン化アリール化合物のパラジウム触媒を用いるカップリング反応に関してはテトラヘドロン・レターズ39巻617頁(1998年)、同39巻2367頁(1998年)及び同40巻6393頁(1999年)等に記載の方法が挙げられる。反応温度、反応時間については特に限定されることはなく、前記文献に記載の条件が適用できる。
【0250】
本発明の一般式(M−1)で表される化合物は、真空蒸着プロセスで薄層を形成することが好ましいが、溶液塗布などのウェットプロセスも好適に用いることが出来る。化合物の分子量は、蒸着適性や溶解性の観点から2000以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、800以下であることが特に好ましい。また蒸着適性の観点では、分子量が小さすぎると蒸気圧が小さくなり、気相から固相への変化がおきず、有機層を形成することが困難となるので、300以上が好ましく、400以上が特に好ましい。
【0251】
以下に、一般式(M−1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明がこれらに限定されることはない。
【0252】
【化60】

【0253】
【化61】

【0254】
【化62】

【0255】
【化63】

【0256】
〔芳香族炭化水素化合物〕
本発明の有機電界発光素子は、前記一対の電極が陰極を含み、前記発光層と該陰極との間に少なくとも一層の有機層を含むことが好ましく、該有機層に芳香族炭化水素化合物を含有することが好ましい。
芳香族炭化水素化合物は、発光層と陰極の間の発光層に隣接する有機層に含有されることがより好ましいが、その用途が限定されることはなく、有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。本発明にかかる芳香族炭化水素化合物の導入層としては、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電荷ブロック層のいずれか、若しくは複数に含有することができる。
芳香族炭化水素化合物が含有される、発光層と陰極の間の発光層に隣接する有機層は電荷ブロック層又は電子輸送層であることが好ましく、電子輸送層であることがより好ましい。
【0257】
芳香族炭化水素化合物は合成容易さの観点から炭素原子と水素原子のみからなることが好ましい。
芳香族炭化水素化合物を発光層以外の層に含有させる場合は、70〜100質量%含まれることが好ましく、85〜100質量%含まれることがより好ましい。芳香族炭化水素化合物を発光層に含有させる場合は、発光層の全質量に対して0.1〜99質量%含ませることが好ましく、1〜95質量%含ませることがより好ましく、10〜95質量%含ませることがより好ましい。
【0258】
芳香族炭化水素化合物としては、下記一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物(以下単に「炭化水素化合物」と称する場合がある)が好ましい。
一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物は炭素原子と水素原子のみからなり、化学的安定性の点で優れるため、駆動耐久性が高く、高輝度駆動時の各種変化がおきにくいという効果を奏する。
【0259】
一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物は、分子量が400〜1200の範囲であることが好ましく、より好ましくは400〜1000であり、更に好ましくは400〜800である。分子量が400以上であれば良質なアモルファス薄膜が形成でき、分子量が1200以下であると溶媒への溶解性や昇華及び蒸着適正の面で好ましい。
【0260】
一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物はその用途が限定されることはなく、発光層に隣接する有機層だけでなく有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。
【0261】
【化64】

【0262】
(一般式(Tp−1)において、R12〜R23はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基で置換されていてもよいフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基を表す。ただし、R12〜R23が全て水素原子になることはない。)
【0263】
12〜R23が表すアルキル基としては、置換基若しくは無置換の、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、又はtert−ブチル基である。
【0264】
12〜R23として好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基(これらは更にアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基で置換されていてもよい)で置換されていてもよい、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基であることが更に好ましい。
フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基(これらは更にアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基で置換されていてもよい)で置換されていてもよい、ベンゼン環であることが特に好ましい。
【0265】
一般式(Tp−1)におけるアリール環の総数は2〜8個であることが好ましく、3〜5個であることが好ましい。この範囲とすることで、良質なアモルファス薄膜が形成でき、溶媒への溶解性や昇華及び蒸着適正が良好になる。
【0266】
12〜R23は、それぞれ独立に、総炭素数が20〜50であることが好ましく、総炭素数が20〜36であることがより好ましい。この範囲とすることで、良質なアモルファス薄膜が形成でき、溶媒への溶解性や昇華及び蒸着適正が良好になる。
【0267】
本発明の一の態様において、前記一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物は下記一般式(Tp−2)で表される炭化水素化合物であることが好ましい。
【0268】
【化65】

【0269】
(一般式(Tp−2)中、複数のArは同一であり、アルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基で置換されていてもよいフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基を表す。)
【0270】
Arが表すアルキル基及びアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基で置換されていてもよいフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基としては、R12〜R23で挙げたものと同義であり、好ましいものも同様である。
【0271】
本発明の他の態様において、前記一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物は、下記一般式(Tp−3)で表される炭化水素化合物であることが好ましい。
【0272】
【化66】

【0273】
(一般式(Tp−3)中、Lはアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基で置換されていてもよいフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基又はこれらを組み合わせて成るn価の連結基を表す。nは1〜6の整数を表す。)
【0274】
Lが表すn価の連結基を形成するアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基としては、R12〜R23で挙げたものと同義である。
Lとして好ましくは、アルキル基又はベンゼン環で置換されていてもよいベンゼン環、フルオレン環、又はこれらを組み合わせて成るn価の連結基である。
以下にLの好ましい具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。なお具体例中*でトリフェニレン環と結合する。
【0275】
【化67】

【0276】
nは1〜5であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
【0277】
本発明の他の態様において、前記一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物は、下記一般式(Tp−4)で表される炭化水素化合物であることが好ましい。
【0278】
【化68】

【0279】
(一般式(Tp−4)において、複数存在する場合のArは同一であり、Arはアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基で置換、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。p、及びqはそれぞれ独立に0又は1を表すが、pとqが同時に0になることはない。p、及びqが0を表す場合、Arは水素原子を表す。)
【0280】
Arとして好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基を組み合わせてなる基であり、より好ましくは、メチル基、t−ブチル基、フェニル基、トリフェニレニル基を組み合わせてなる基である。
Arは、メタ位が炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基、又はこれらを組み合わせてなる基で置換されたベンゼン環であることが特に好ましい。
【0281】
本発明にかかる炭化水素化合物を有機電界発光素子の発光層のホスト材料や発光層に隣接する層の電荷輸送材料として使用する場合、発光材料より薄膜状態でのエネルギーギャップ(発光材料が燐光発光材料の場合には、薄膜状態での最低励起三重項(T)エネルギー)が大きいと、発光がクエンチしてしまうことを防ぎ、効率向上に有利である。一方、化合物の化学的安定性の観点からは、エネルギーギャップ及びTエネルギーは大き過ぎない方が好ましい。一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物の膜状態でのTエネルギーは、52kcal/mol以上80kcal/mol以下であることが好ましく、55kcal/mol以上68kcal/mol)以下であることがより好ましく、58kcal/mol以上63kcal/mol以下であることが更に好ましい。特に、発光材料として燐光発光材料を用いる場合には、Tエネルギーが上記範囲となることが好ましい。
【0282】
エネルギーは、前述の一般式(1)の説明における方法と同様の方法により求めることができる。
【0283】
有機電界発光素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、本発明にかかる炭化水素化合物のガラス転移温度(Tg)は80℃以上400℃以下であることが好ましく、100℃以上400℃以下であることがより好ましく、120℃以上400℃以下であることが更に好ましい。
【0284】
以下に、本発明にかかる炭化水素化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0285】
【化69】

【0286】
【化70】

【0287】
上記本発明にかかる炭化水素化合物として例示した化合物は、国際公開第05/013388号パンフレット、国際公開第06/130598号パンフレット、国際公開第09/021107号パンフレット、US2009/0009065、国際公開第09/008311号パンフレット及び国際公開第04/018587号パンフレットに記載の方法で合成できる。
合成後、カラムクロマトグラフィー、再結晶等による精製を行った後、昇華精製により精製することが好ましい。昇華精製により、有機不純物を分離できるだけでなく、無機塩や残留溶媒等を効果的に取り除くことができる。
【0288】
〔一般式(O−1)で表される化合物〕
本発明の有機電界発光素子は、前記発光層と陰極との間の少なくとも一層の有機層に、少なくとも一種の下記一般式(O−1)で表される化合物を含有することも好ましい。以下に、一般式(O−1)について説明する。
【0289】
【化71】

【0290】
一般式(O−1)中、RO1は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
O1〜AO4はそれぞれ独立に、C−R又はNを表す。
は水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、複数のRは同じでも異なっていても良い。
O1は、アリール環又はヘテロアリール環からなる二価〜六価の連結基を表す。
O1は2〜6の整数を表す。
複数存在するRO1、AO1〜AO4はそれぞれ同じでも異なっていても良い。
【0291】
O1は、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30)、又はヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜12)を表し、これらは前述の置換基Zを有していても良い。RO1として好ましくはアリール基、又はヘテロアリール基であり、より好ましくはアリール基である。RO1のアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、アルキル基又はアリール基が挙げられ、アリール基がより好ましい。RO1のアリール基が複数の置換基を有する場合、該複数の置換基は互いに結合して5又は6員環を形成していても良い。RO1のアリール基は、好ましくは置換基Zを有していてもよいフェニル基であり、より好ましくはアルキル基又はアリール基が置換していてもよいフェニル基であり、更に好ましくは無置換のフェニル基又は2−フェニルフェニル基である。
【0292】
O1〜AO4はそれぞれ独立に、C−R又はNを表す。AO1〜AO4のうち、0〜2つがN原子であることが好ましく、0又は1つがN原子であるのがより好ましい。AO1〜AO4の全てがC−Rであるか、又はAO1がN原子で、AO2〜AO4がC−Rであることが好ましく、AO1がN原子で、AO2〜AO4がC−Rであることがより好ましく、AO1がN原子で、AO2〜AO4がC−Rであり、Rが全て水素原子であることが更に好ましい。
【0293】
は水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30)、又はヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜12)を表し、これらは前述の置換基Zを有していても良い。また複数のRは同じでも異なっていても良い。Rとして好ましくは水素原子又はアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0294】
O1は、アリール環(好ましくは炭素数6〜30)又はヘテロアリール環(好ましくは炭素数4〜12)からなる二価〜六価の連結基を表す。LO1として好ましくは、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アリールトリイル基、又はヘテロアリールトリイル基であり、より好ましくはフェニレン基、ビフェニレン基、又はベンゼントリイル基であり、更に好ましくはビフェニレン基、又はベンゼントリイル基である。LO1は前述の置換基Zを有していても良く、置換基を有する場合の置換基としてはアルキル基、アリール基、又はシアノ基が好ましい。LO1の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0295】
【化72】

【0296】
O1は2〜6の整数を表し、好ましくは2〜4の整数であり、より好ましくは2又は3である。素子効率の観点では最も好ましくは3であり、素子の耐久性の観点では最も好ましくは2である。
【0297】
一般式(O−1)で表される化合物は、より好ましくは下記一般式(O−2)で表される化合物である。
【0298】
【化73】

【0299】
一般式(O−2)中、RO1はアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
O2〜RO4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
O1〜AO4はそれぞれ独立に、C−R又はNを表す。
は水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、複数のRは同じでも異なっていても良い。
複数存在するRO1、AO1〜AO4はそれぞれ同じでも異なっていても良い。
【0300】
O1及びAO1〜AO4は、前記一般式(O−1)中のRO1及びAO1〜AO4と同義であり、またそれらの好ましい範囲も同様である。
02〜R04はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30)、又はヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜12)を表し、これらは前述の置換基Zを有していても良い。R02〜R04として好ましくは水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、より好ましくは水素原子、又はアリール基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0301】
一般式(O−1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0302】
【化74】

【0303】
上記一般式(O−1)で表される化合物は、発光層と陰極の間の発光層に隣接する有機層に含有されることがより好ましいが、その用途が限定されることはなく、有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。本発明にかかる一般式(O−1)で表される化合物の導入層としては、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電荷ブロック層のいずれか、若しくは複数に含有することができる。
一般式(O−1)で表される化合物が含有される、発光層と陰極の間の発光層に隣接する有機層は電荷ブロック層又は電子輸送層であることが好ましく、電子輸送層であることがより好ましい。
【0304】
一般式(O−1)で表される化合物を発光層以外の層に含有させる場合は、70〜100質量%含まれることが好ましく、85〜100質量%含まれることがより好ましい。一般式(O−1)で表される化合物を発光層に含有させる場合は、発光層の全質量に対して0.1〜99質量%含ませることが好ましく、1〜95質量%含ませることがより好ましく、10〜95質量%含ませることがより好ましい。
【0305】
一般式(O−1)で表される化合物は、分子量が400〜2000の範囲であることが好ましく、より好ましくは500〜1500であり、更に好ましくは600〜1000である。分子量が400以上であれば膜質の良好な膜が得られ、分子量が2000以下であると蒸着適性や溶解性の面で好ましい。
【0306】
本発明にかかる一般式(O−1)で表される化合物を、有機電界発光素子の発光層のホスト材料や発光層に隣接する層の電荷輸送材料として使用する場合、発光材料より薄膜状態でのエネルギーギャップ(発光材料が燐光発光材料の場合には、薄膜状態での最低励起三重項(T)エネルギー)が大きいと、発光がクエンチしてしまうことを防ぎ、効率向上に有利である。一方、化合物の化学的安定性の観点からは、エネルギーギャップ及びTエネルギーは大き過ぎない方が好ましい。一般式(O−1)で表される化合物の膜状態でのTエネルギーは、52kcal/mol以上80kcal/mol以下であることが好ましく、55kcal/mol以上68kcal/mol)以下であることがより好ましく、58kcal/mol以上63kcal/mol以下であることが更に好ましい。特に、発光材料として燐光発光材料を用いる場合には、Tエネルギーが上記範囲となることが好ましい。
【0307】
エネルギーは、前述の一般式(1)の説明における方法と同様の方法により求めることができる。
【0308】
有機電界発光素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、本発明にかかる一般式(O−1)で表される化合物のガラス転移温度(Tg)は80℃以上400℃以下であることが好ましく、100℃以上400℃以下であることがより好ましく、120℃以上400℃以下であることが更に好ましい。
【0309】
上記本発明にかかる一般式(O−1)で表される化合物として例示した化合物は、国際公開第05/013388号パンフレット、国際公開第06/130598号パンフレット、国際公開第09/021107号パンフレット、US2009/0009065、国際公開第09/008311号パンフレット及び国際公開第04/018587号パンフレットに記載の方法で合成できる。
合成後、カラムクロマトグラフィー、再結晶等による精製を行った後、昇華精製により精製することが好ましい。昇華精製により、有機不純物を分離できるだけでなく、無機塩や残留溶媒等を効果的に取り除くことができる。
【0310】
(電荷輸送層)
電荷輸送層とは、有機電界発光素子に電圧を印加した際に電荷移動が起こる層をいう。具体的には正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層又は電子注入層が挙げられる。好ましくは、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層又は発光層である。塗布法により形成される電荷輸送層が正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層又は発光層であれば、低コストかつ高効率な有機電界発光素子の製造が可能となる。また、電荷輸送層として、より好ましくは、正孔注入層、正孔輸送層又は電子ブロック層である。
【0311】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
本発明に関し、有機層として、電子受容性ドーパントを含有する正孔注入層又は正孔輸送層を含むことが好ましい。
【0312】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。
正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0165〕〜〔0167〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0313】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0314】
−電子ブロック層−
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0315】
<保護層>
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0169〕〜〔0170〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0316】
<封止容器>
本発明の素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
封止容器については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0171〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0317】
(駆動)
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0318】
本発明の発光素子は、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板・ITO層・有機層の屈折率を制御する、基板・ITO層・有機層の膜厚を制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
【0319】
本発明の発光素子は、陽極側から発光を取り出す、いわゆるトップエミッション方式であっても良い。
【0320】
本発明における有機EL素子は、共振器構造を有しても良い。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明又は半透明電極、発光層、及び金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第一の態様の場合の計算式は特開平9−180883号明細書に記載されている。第2の態様の場合の計算式は特開2004−127795号明細書に記載されている。
【0321】
本発明の有機電界発光素子の外部量子効率としては、5%以上が好ましく、7%以上がより好ましい。外部量子効率の数値は20℃で素子を駆動したときの外部量子効率の最大値、若しくは、20℃で素子を駆動したときの100〜500cd/m付近での外部量子効率の値を用いることができる。
【0322】
本発明の有機電界発光素子の内部量子効率は、30%以上であることが好ましく、50%以上が更に好ましく、70%以上が更に好ましい。素子の内部量子効率は、外部量子効率を光取り出し効率で除して算出される。通常の有機EL素子では光取り出し効率は約20%であるが、基板の形状、電極の形状、有機層の膜厚、無機層の膜厚、有機層の屈折率、無機層の屈折率等を工夫することにより、光取り出し効率を20%以上にすることが可能である。
【0323】
本発明の有機電界発光素子は、350nm以上700nm以下に極大発光波長(発光スペクトルの最大強度波長)を有するものが好ましく、より好ましくは350nm以上600nm以下、更に好ましくは400nm以上520nm以下、特に好ましくは400nm以上465nm以下である。
【0324】
(本発明の発光素子の用途)
本発明の発光素子は、発光装置、ピクセル、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、又は光通信等に好適に利用できる。特に、発光装置、照明装置、表示装置等の発光輝度が高い領域で駆動されるデバイスに好ましく用いられる。
【0325】
次に、図2を参照して本発明の発光装置について説明する。
本発明の発光装置は、前記有機電界発光素子を用いてなる。
図2は、本発明の発光装置の一例を概略的に示した断面図である。
図2の発光装置20は、透明基板(支持基板)2、有機電界発光素子10、封止容器11等により構成されている。
【0326】
有機電界発光素子10は、基板2上に、陽極(第一電極)3、有機層11、陰極(第二電極)9が順次積層されて構成されている。また、陰極9上には、保護層12が積層されており、更に、保護層12上には接着層14を介して封止容器16が設けられている。なお、各電極3、9の一部、隔壁、絶縁層等は省略されている。
ここで、接着層14としては、エポキシ樹脂等の光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤を用いることができ、例えば熱硬化性の接着シートを用いることもできる。
【0327】
本発明の発光装置の用途は特に制限されるものではなく、例えば、照明装置のほか、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電子ペーパ等の表示装置とすることができる。
【0328】
(照明装置)
次に、図3を参照して本発明の実施形態に係る照明装置について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る照明装置の一例を概略的に示した断面図である。
本発明の実施形態に係る照明装置40は、図3に示すように、前述した有機EL素子10と、光散乱部材30とを備えている。より具体的には、照明装置40は、有機EL素子10の基板2と光散乱部材30とが接触するように構成されている。
光散乱部材30は、光を散乱できるものであれば特に制限されないが、図3においては、透明基板31に微粒子32が分散した部材とされている。透明基板31としては、例えば、ガラス基板を好適に挙げることができる。微粒子32としては、透明樹脂微粒子を好適に挙げることができる。ガラス基板及び透明樹脂微粒子としては、いずれも、公知のものを使用できる。このような照明装置40は、有機電界発光素子10からの発光が散乱部材30の光入射面30Aに入射されると、入射光を光散乱部材30により散乱させ、散乱光を光出射面30Bから照明光として出射するものである。
【実施例】
【0329】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.化合物1〜13の合成
以下に示す合成例によって化合物1〜10を合成した。また、化合物11〜13の合成法を示す。
【0330】
合成例1:化合物1の合成
窒素気流下、N−フェニルアンスラニル酸42.6g(200mmol)、メタノール1L、濃硫酸50mLを加熱還流し、7時間攪拌した。室温に戻した後、純水、酢酸エチル、ヘキサンを加えて有機相を抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)により精製し、合成中間体A27.7g(122mmol、収率61%)を得た。
窒素気流下、合成中間体A27.3g(120mmol)、臭化メチルマグネシウムの0.93mol/Lテトラヒドロフラン(THF)溶液450mL(420mmol)、乾燥THF150mLを0℃で混合した後、50℃で1時間攪拌した。反応溶液を氷水にあけ、塩化アンモニウム水溶液で中和した後、酢酸エチルを添加し、有機相を抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去することにより合成中間体B(27.3g、120mmol、100%)を得た。
【0331】
窒素気流下、合成中間体B27.3g(120mmol)、ポリリン酸(100mL)を室温で1時間攪拌した。純水を添加し、炭酸水素ナトリウム水溶液により中和した後、酢酸エチルを添加し、有機相を抽出した。有機相を硫酸ナトリウムにより乾燥し、溶媒を減圧留去した後、ヘキサンで再結晶することにより合成中間体C20.1g(96mmol、80%)を得た。
【0332】
合成中間体C8.36g(40.0mmol)、1−ブロモ−4−ヨードベンゼン11.3g(40.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd(dba))366mg(0.40mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン333mg(0.60mmol)、ナトリウムt−ブトキシド5.76g(60.0mmol)、トルエン120mLを混合し、窒素雰囲気下、100℃で4時間攪拌した。反応液にトルエンを200mL加えた後、セライト濾過により固形分を濾別し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)により原点成分を除去した。溶媒を減圧留去し、得られた固体をエタノール80mLに分散し、超音波照射後、濾過し、真空乾燥することにより合成中間体Dを10.2g得た(収率70%)。
【0333】
【化75】

【0334】
3−ブロモベンズアルデヒド27.8g(150mmol)、アセトフェノン(150mmol)、28%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液3mL、エタノール300mLを混合し、窒素雰囲気下、室温で6時間、70℃で1時間攪拌した。反応溶液にベンズアミジン塩酸塩14.1g(90.0mmol)、水酸化ナトリウム12.0g(300mmol)を添加した後、更に窒素雰囲気下、70℃で4時間攪拌した。室温で一晩放置した後、固形分を濾取し、純水、メタノールで順次洗浄することにより合成中間体Eを20.0g得た(収率57%)。
【0335】
合成中間体B20.0g(51.6mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン15.7g(61.9mmol)、(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物1.26g(1.55mmol)、酢酸カリウム11.7g(119mmol)、ジメチルスルホキシド350mLを混合し、窒素雰囲気下、80℃で8時間攪拌した。純水を350mL添加し、固形分を濾取し、純水、エタノール、ヘキサンで順次洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン、次いでトルエン/酢酸エチル(9:1)、次いでトルエン/酢酸エチル(4:1))により精製し、分取した溶液を乾固しない程度に濃縮し、ヘキサンを80mL添加してから室温で1時間放置後、析出した結晶を濾取、真空乾燥し、合成中間体Fを12.2g得た(収率54%)。
【0336】
合成中間体D(2.51g、6.9mmol)、合成中間体F(3.00g、6.9mmol)、酢酸パラジウム(77.5mg、0.345mmol)、トリフェニルホスフィン(362mg、1.38mmol)、炭酸ナトリウム(2.19g、20.7mmol)、トルエン(25mL)、純水(10mL)を混合し、窒素雰囲気下、5時間加熱還流した。反応液にトルエン50mLを添加した後、セライト濾過により固形分を濾別し、食塩水を添加して有機相を抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)により精製した。更にトルエン/ヘキサン(1:1)により再結晶を3回繰り返し、化合物1を2.9g得た(収率71%)。
H NMR(300MHz,DMSO)δ=8.84(s,1H),8.75(s,1H),8.71−8.69(m,2H),8.60−8.56(m,3H),8.19(d,2H),8.05(d,1H),7.79(dd,1H),7.65−7.61(m,6H),7.55−7.51(m,4H),7.05−7.00(m,2H),6.95−6.91(m,2H),6.29(d,2H),1.66(s,6H)ppm.MS(MALDI−TOF):m/z=592.7([M+H]).
【0337】
【化76】

【0338】
(合成例2)化合物2の合成
文献(国際公開第2005/022962号)を参考に合成中間体Gを合成した。合成中間体Eの代わりに合成中間体Gを用いる以外は合成例1と同様にして化合物2を合成した。
MS(MALDI−TOF):m/z=591.8([M+H]).
【0339】
【化77】

【0340】
(合成例3)化合物3の合成
文献(国際公開第2005/085387号)に従って合成中間体Hを合成した。合成中間体Eの代わりに合成中間体Hを用いる以外は合成例1と同様にして化合物3を合成した。
MS(MALDI−TOF):m/z=593.8([M+H]).
【0341】
【化78】

【0342】
(合成例4)化合物4の合成
文献(国際公開第2005/085387号)に従って合成中間体Iを合成した。合成例1の臭化メチルマグネシウムを塩化ブチルマグネシウムに代え、合成中間体Eの代わりに合成中間体Iを用いる以外は合成例1と同様にして化合物4を合成した。
MS(MALDI−TOF):m/z=753.0([M+H]).
【0343】
【化79】

【0344】
(合成例5)化合物5の合成
文献(Tetrahedron,2006,62,11100−11105)を参考に合成中間体Jを合成した。合成中間体Aの代わりに合成中間体Jを、1−フェナシルピリジニウムブロマイドの代わりに文献(WO2005/022962)を参考に合成した1−(4−フェニルフェナシル)ピリジニウムブロマイドを用いる以外は合成例2と同様にして化合物5を合成した。
MS(MALDI−TOF):m/z=724.0([M+H]).
【0345】
【化80】

【0346】
(合成例6)化合物6の合成
合成中間体Cの代わりに、文献(J.Mater.Chem.,2007,17,1209−1215.)を参考に合成した9,10−ジヒドロ−2,7−ジフェニル−9,9−ジエチルアクリジンを用いる以外は合成例1と同様にして化合物6を合成した。
MS(MALDI−TOF):m/z=773.0([M+H]).
【0347】
(合成例7)化合物7の合成
合成例2のアセトフェノンを3’−ヨードアセトフェノンに代える以外は同様にして合成中間体Kを合成した後、下記鈴木カップリング反応により合成中間体Lを合成した。
【0348】
【化81】

【0349】
合成例5の1−ブロモ−4−t−ブチルベンゼンを4−ブロモトリフェニルシリルベンゼンに代え、1−ブロモ−4−ヨードベンゼンを1−ブロモ−3−ヨードベンゼンに代え、合成中間体Gを合成中間体Lに代える以外は合成例5と同様にして化合物7を合成した。
MS(MALDI−TOF):m/z=951.3([M+H]).
【0350】
(合成例8)化合物8の合成
下記鈴木カップリング反応により合成中間体Mを合成した。
【0351】
【化82】

【0352】
また、合成例5の1−ブロモ−4−t−ブチルベンゼンを3−ブロモトリフルオロメチルベンゼンに代える以外は合成例5と同様にして合成中間体Nを合成した後、下記反応により化合物8を合成した。
MS(MALDI−TOF):m/z=889.0([M+H]).
【0353】
【化83】

【0354】
(合成例9)化合物9の合成
下記合成ルートにより、化合物9を合成した(反応操作、精製法等は合成例1に準ずる)。
MS(MALDI−TOF):m/z=694.8([M+H]).
【0355】
【化84】

【0356】
(合成例10)化合物10の合成
文献(Chem.Eur.J.,2005,11,3285−3293.)を参考に合成した2−ブロモ−7−ヨード−9,9−ジメチルフルオレンから合成中間体Oを合成した。合成例8で、3,5−ジフェニルフェニルボロン酸の代わりに3−ビフェニルボロン酸を、合成中間体Nの代わりに合成中間体Oを用いる以外は合成例8と同様にして化合物10を合成した。
MS(MALDI−TOF):m/z=841.1([M+H]).
【0357】
【化85】

【0358】
(合成例11)化合物11の合成
合成中間体Cの代わりにスピロ[アクリジン-9(10H),1’-シクロヘキサン]を用いる以外は合成例1に準じて合成中間体Pを合成できる。また、3,5-ジフェニルフェニルボロン酸を3,5-ジメチルフェニルボロン酸に代える以外は合成例8と同様にして合成中間体Qを合成できる。合成中間体Pと合成中間体Qを以下の条件で鈴木カップリングさせることにより化合物11を合成することができる。
【0359】
【化86】

【0360】
(合成例12)化合物12の合成
N−フェニルアンスラニル酸の代わりにメフェナミック酸を用いる以外は合成例1に準じて合成中間体Rを合成できる。また、3,5-ジフェニルフェニルボロン酸をペンタフルオロフェニルボロン酸に代える以外は合成例8と同様にして合成中間体Sを合成できる。合成中間体Rと合成中間体Sを以下の条件で鈴木カップリングさせることにより化合物12を合成することができる。
【0361】
【化87】

【0362】
(合成例13)化合物13の合成
以下のルートで化合物13を合成できる。
【0363】
【化88】

【0364】
実施例に用いた化合物1〜13を以下に示す。比較化合物1は文献(国際公開第2005/085387号)に従って合成した。比較化合物2〜5は化合物1に準じて合成した。比較化合物6は文献(国際公開第2005/022962号)に従って合成した。
【0365】
【化89】

【0366】
【化90】

【0367】
2.物性測定
以下に示す条件でCV(サイクリック・ボルタンメトリー)を測定したときの酸化電位、還元電位(いずれもピーク電位)、酸化、還元の可逆性、及び薄膜状態でのT測定を行った。結果を表1に示す。
【0368】
(CV測定条件)
溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド
濃度:1.0×10−3mol/L
支持電解質:0.1mol/L n−BuNPF
作用極:グラッシーカーボン
対極:白金
参照極:Ag/AgCl
【0369】
(T測定条件)
真空蒸着法により本発明の電荷輸送材料又は比較材料の単層膜(膜厚約50nm)をガラス基板上に作製したものを測定サンプルとし、F−7000日立分光蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ)を用いて液体窒素温度で燐光スペクトルを測定し、短波長端をエネルギー換算することにより、各材料のT(eV)を求めた。
【0370】
【表1】

【0371】
表1に示した結果より、化合物1〜6はいずれも酸化、還元が起こりやすく、酸化、還元の両方に対して安定なことが分かった。また、化合物1〜6は大きなTを有することが分かった。
【0372】
3.有機電界発光素子作製、及び評価
有機電界発光素子の作製に用いた材料は全て昇華精製を行い、高速液体クロマトグラフィー(東ソーTSKgel ODS−100Z)により純度(254nmの吸収強度面積比)が99.9%以上であることを確認した。
〔実施例1〕
厚み0.5mm、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。
第1層:GD−1 :膜厚10nm
第2層:NPD :膜厚27nm
第3層:HT−1 :膜厚3nm
第4層:mCBP及びGD−1(質量比90:10) :膜厚30nm
第5層:化合物1 :膜厚5nm
第6層:ET−1 :膜厚45nm
この上に、フッ化リチウム0.1nm及び金属アルミニウム100nmをこの順に蒸着し陰極とした。
この積層体を、大気に触れさせることなく、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、本発明の有機電界発光素子1−1を得た。
同様に、第5層の材料として化合物1の代わりに表2中に示す材料を用いることにより、素子1−2〜1−6、比較素子1−1〜1−6を得た。
これらの素子を以下の方法で効率、駆動電圧、耐久性、高輝度駆動時の効率変化、高輝度駆動時の色度変化の観点で評価した。
【0373】
(a) 効率
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を各素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。発光スペクトルと発光波長は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。これらを元に輝度が1000cd/m付近の外部量子効率を輝度換算法により算出し、比較素子1−1を基準として相対値で記載した。効率は数字が大きいほど好ましい。
【0374】
(b) 駆動電圧
各素子を輝度が1000cd/mになるように直流電圧を印加して発光させる。この時の印加電圧を駆動電圧評価の指標とし、比較素子1−1を基準として相対値で記載した。駆動電圧は数字が小さいほど好ましい。
【0375】
(c) 耐久性
各素子を輝度が5000cd/mになるように直流電圧を印加して発光させ続け、輝度が4000cd/mに低下するまでの時間を耐久性の指標とし、比較素子1−1を基準として相対値で記載した。耐久性は数字が大きいほど好ましい。
【0376】
(d) 高輝度駆動時の効率変化
各素子を輝度が50000cd/mになるように直流電圧を印加して発光させる。この時の外部量子効率η50000を、輝度が1000cd/mになるように直流電圧を印加して発光させた時の外部量子効率η1000と比較し、両者の比(η50000/η1000)を高輝度駆動時の効率変化の指標とした。この値は大きいほど好ましい。
【0377】
(e) 高輝度駆動時の色度変化
各素子を輝度が50000cd/mになるように直流電圧を印加して発光させる。この時の色度(x、y)50000を、輝度が1000cd/mになるように直流電圧を印加して発光させた時の色度(x、y)1000と比較し、両者のx値、y値の差を(Δx、Δy)の形で表記し、高輝度駆動時の色度変化の指標とした。Δx、Δyの値は小さいほど好ましい。
【0378】
【表2】

【0379】
本発明の実施例である素子1−1〜1−6は、比較素子1−1に対して、効率及び耐久性に優れる。また、高輝度駆動時の効率低下、及び高輝度駆動時の色度変化が小さい。
比較素子1−2及び1−3では、素子の耐久性が非常に低く、50000cd/mまで輝度を上げることができなかったため、高輝度駆動時の色度変化は評価できなかった。
【0380】
〔実施例2〕
層構成を以下に示すものに変えた以外は実施例1と同様にして素子2−1を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
第1層:2−TNATA及びF−TCNQ(質量比99.7:0.3) :膜厚160nm
第2層:NPD :膜厚5nm
第3層:HT−2 :膜厚3nm
第4層:H−1及びGD−2(質量比85:15) :膜厚30nm
第5層:化合物1 :膜厚5nm
第6層:BCP及びLi(質量比99.4:0.6) :膜厚25nm
同様に、第5層の材料として化合物1の代わりに表3中に示す材料を用いることにより、素子2−2〜2−4、比較素子2−1〜2−3を作製し、同様に評価を行った。効率、駆動電圧、耐久性の基準は比較素子2−1とした。
【0381】
【表3】

【0382】
本発明の実施例である素子2−1〜2−4は、比較素子2−1に対して、効率及び耐久性に優れる。また、高輝度駆動時の効率低下、及び高輝度駆動時の色度変化が小さい。
比較素子2−2では、素子の耐久性が非常に低く、50000cd/mまで輝度を上げることができなかったため、高輝度駆動時の色度変化は評価できなかった。
【0383】
〔実施例3〕
層構成を以下に示すものに変えた以外は実施例1と同様にして素子3−1を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
第1層:CuPc :膜厚10nm
第2層:TPAC :膜厚30nm
第3層:H−2及びBD−1(質量比90:10) :膜厚30nm
第4層:化合物1 :膜厚5nm
第5層:ET−2 :膜厚25nm
同様に、第4層の材料として化合物1の代わりに表4中に示す材料を用いることにより、素子3−2〜3−4、比較素子3−1〜3−3を作製し、同様に評価を行った。
【0384】
【表4】

【0385】
〔実施例4〕
層構成を以下に示すものに変えた以外は実施例1と同様にして素子4−1を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
第1層:2−TNATA及びF−TCNQ(質量比99.7:0.3) :膜厚120nm
第2層:NPD :膜厚7nm
第3層:HT−1 :膜厚3nm
第4層:H−3及びBD−2(質量比85:15) :膜厚30nm
第5層:化合物1 :膜厚5nm
第6層:BAlq :膜厚25nm
同様に、第5層の材料として化合物1の代わりに表5中に示す材料を用いることにより、素子4−2〜4−4、比較素子4−1〜4−3を作製し、同様に評価を行った。
【0386】
【表5】

【0387】
〔実施例5〕
層構成を以下に示すものに変えた以外は実施例1と同様にして素子5−1を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
第1層:TCTA :膜厚30nm
第2層:HT−3 :膜厚12nm
第3層:H−4及びRD−1(質量比90:10) :膜厚30nm
第4層:化合物1 :膜厚5nm
第5層:ET−3 :膜厚50nm
同様に、第4層の材料として化合物1の代わりに表6中に示す材料を用いることにより、素子5−2〜5−4、比較素子5−1〜5−3を作製し、同様に評価を行った。
【0388】
【表6】

【0389】
〔実施例6〕
層構成を以下に示すものに変えた以外は実施例1と同様にして素子6−1を作製し、実施例1と同様の方法で効率、駆動電圧、耐久性を評価した。
第1層:CuPc :膜厚10nm
第2層:NPD :膜厚25nm
第3層:NPD :膜厚5nm
第4層:化合物1(ホスト材料)及びGD−3(質量比90:10) :膜厚30nm
第5層:BAlq :膜厚5nm
第6層:ET−3 :膜厚39nm
第7層:BCP :1nm
同様に、第3層〜第5層の材料として表7中に示す材料を用いることにより、素子6−2〜6−7、比較素子6−1〜6−3を作製し、同様に評価を行った。
【0390】
【表7】

【0391】
本発明の電荷輸送材料は両電荷注入性及び両電荷輸送性に優れるため、効率が高く、駆動電圧の低い素子が得られる。また、本発明の電荷輸送材料は酸化還元安定性が高いため、高い耐久性を示す。
【0392】
〔実施例7〕
層構成を以下に示すものに変えた以外は実施例1と同様にして素子7−1を作製し、実施例1と同様の方法で効率、駆動電圧、耐久性を評価した。
第1層:LG101 :膜厚10nm
第2層:NPD :膜厚27nm
第3層:NPD :膜厚5nm
第4層:化合物1(ホスト材料)及びRD−2(質量比83:7) :膜厚30nm
第5層:BAlq :膜厚5nm
第6層:ET−4 :膜厚50nm
同様に、第3層〜第5層の材料として表8中に示す材料を用いることにより、素子7−2〜7−7、比較素子7−1〜7−3を作製し、同様に評価を行った。
【0393】
【表8】

【0394】
本発明の電荷輸送材料は両電荷注入性、両電荷輸送性、及び両電荷に対する安定性に優れるため、ホストとして用いると効率が高く、駆動電圧が低く、耐久性の高い素子が得られる。また、ホール輸送層や電子輸送層としても良好な性能を示すことが分かった。
【0395】
〔実施例8〕
厚み0.5mm、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上にPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))/PSS(ポリスチレンスルホン酸)水溶液(BaytronP(標準品))をスピンコート(4000rpm、60秒間)し、120℃で10分間乾燥することにより、ホール輸送性バッファ層を形成させた。
次いで、化合物1を1質量%、及びGD−1を0.05質量%含有するトルエン溶液を先のバッファ層上にスピンコート(2000rpm、60秒間)し、発光層を形成させた。
この発光層の上に、ET−3を真空蒸着法により50nm蒸着して電子輸送層とし、更にフッ化リチウム0.1nm及び金属アルミニウムを100nmをこの順に蒸着し陰極とした。
この積層体を、大気に触れさせること無く、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、有機電界発光素子8−1を得た。また、発光層を構成する材料を表9中に記載の材料に変更する以外は同様にして、素子8−2〜8−4、比較素子8−1〜8−3を得た。
【0396】
【表9】

【0397】
以上のように、本発明の電荷輸送材料は、湿式成膜法で成膜しても良好な膜質の膜が得られ、性能の良好な素子が得られることが分かった。
【0398】
以上、化合物1〜10を用いた実施例を示したが、化合物11〜13を用いた素子も同様に高い素子性能を示す。
【0399】
上記実施例で使用した化合物を以下に示す。
【0400】
【化91】

【0401】
【化92】

【0402】
【化93】

【符号の説明】
【0403】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・発光層
7・・・正孔ブロック層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子(有機EL素子)
11・・・有機層
12・・・保護層
14・・・接着層
16・・・封止容器
20・・・発光装置
30・・・光散乱部材
30A・・・光入射面
30B・・・光出射面
32・・・微粒子
40・・・照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記有機層のいずれか少なくとも一層に下記一般式(1)で表される化合物を含む有機電界発光素子。
【化1】

〔一般式(1)中、Lはアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表す。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。R〜Rは複数存在する場合、複数のR〜Rは同一でも異なってもよい。A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。tは0〜2の整数を表す。〕
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物である請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化2】

〔一般式(2)中、Lは単結合又はアリーレン基を表す。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。R〜Rが複数存在する場合、複数のR〜Rは同一でも異なってもよい。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。R、R、及びLのうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成してもよい。A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。tは0〜2の整数を表す。u及びvはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。〕
【請求項3】
前記一般式(2)で表される化合物が下記一般式(3)で表される化合物である請求項2に記載の有機電界発光素子。
【化3】

〔一般式(3)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。R〜Rが複数存在する場合、複数のR〜Rは同一でも異なってもよい。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。tは0〜2の整数を表す。u及びvはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。〕
【請求項4】
前記発光層に燐光性発光材料を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記燐光性発光材料が、下記一般式(T−1)で表される請求項4に記載の有機電界発光素子。
【化4】

〔一般式(T−1)中、RT1、RT2、RT3、及びRT4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
AはCR’又はNを表し、R’は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
Qは窒素を1つ以上含む5員若しくは6員の芳香族複素環、又は10〜12員の縮合芳香族複素環であり、置換基Zを有していてもよい。
T1、RT2、RT3、RT4、及びR’は、任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
置換基Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−C(O)R”、−C(O)OR”、−C(O)N(R”)、−CN、−NO、−SO、−SOR”、−SOR”、又は−SOR”を表し、R”はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
(X−Y)は、配位子を表す。mは1〜3の整数、nは0〜2の整数を表す。m+nは3である。〕
【請求項6】
前記一般式(1)で表される化合物を、発光層又は発光層に隣接する層に含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記一般式(1)で表される化合物を、発光層に隣接する、発光層より陰極側の層に含む請求項1〜5のいずれかに1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記一般式(1)で表される化合物を、発光層及び発光層より陰極側の層に含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
発光層に隣接する、発光層より陽極側の層に、膜状態での最低励起三重項エネルギー(T)が2.50eV以上3.25eV以下であるアミン系材料を含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
発光層及び発光層の両隣の層に用いる材料のうち、燐光材料以外の全ての材料が、膜状態での最低励起三重項エネルギー(T)が2.50eV以上3.25eV以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
前記一般式(1)で表される化合物を含む有機層がウェットプロセスで形成された層である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を用いた発光装置。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を用いた表示装置。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。
【請求項15】
下記一般式(1)で表される電荷輸送材料。
【化5】

〔一般式(1)中、Lはアリーレン基又は2価の芳香族複素環基を表す。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。R〜Rは複数存在する場合、複数のR〜Rは同一でも異なってもよい。A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。tは0〜2の整数を表す。〕
【請求項16】
前記一般式(1)が、下記一般式(2)で表される請求項15に記載の電荷輸送材料。
【化6】

〔一般式(2)中、Lは単結合又はアリーレン基を表す。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。R〜Rが複数存在する場合、複数のR〜Rは同一でも異なってもよい。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。R、R、及びLのうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成してもよい。A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。tは0〜2の整数を表す。u及びvはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。〕
【請求項17】
前記一般式(2)が、下記一般式(3)で表される請求項16に記載の電荷輸送材料。
【化7】

〔一般式(3)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。R〜Rが複数存在する場合、複数のR〜Rは同一でも異なってもよい。R及びRはそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、フッ素原子、シアノ基、又はシリル基のいずれかを表す。RとRは結合して環を形成してもよい。A〜Aはそれぞれ独立に、C−H、C−R、又は窒素原子を表すが、A〜Aのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。r及びsはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。tは0〜2の整数を表す。u及びvはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。〕
【請求項18】
前記一般式(3)において、R及びRがメチル基である、請求項17に記載の電荷輸送材料。
【請求項19】
純度が99.9%以上である、請求項15〜18のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
【請求項20】
膜状態での最低励起三重項エネルギー(T)が2.69eV以上3.25eV以下である、請求項15〜19のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
【請求項21】
請求項15〜20のいずれか1項に記載の電荷輸送材料を含む膜。
【請求項22】
ウェットプロセスで形成された、請求項21に記載の膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−210749(P2011−210749A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73872(P2010−73872)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】