説明

有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子用薄膜、有機電界発光素子用薄膜転写用部材、有機電界発光素子及び有機電界発光素子の製造方法

【課題】有機発光層が湿式製膜法により形成された有機電界発光素子であって、電極から有機発光層への電荷注入特性が良好で、発光効率、駆動寿命に優れた有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】有機電界発光素子の有機発光層を湿式製膜法により形成するための組成物であって、燐光発光材料、電荷輸送材料及び溶剤を含有し、燐光発光材料及び電荷輸送材料はそれぞれ非重合型有機化合物であり、燐光発光材料の第一酸化電位E、燐光発光材料の第一還元電位E、電荷輸送材料の第一酸化電位E、及び電荷輸送材料の第一還元電位Eの関係が、E+0.1≦E<E≦E−0.1或いはE+0.1≦E<E≦E−0.1である有機電界発光素子用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光効率と駆動寿命に優れた有機電界発光素子を湿式製膜法により容易に製造し得る有機電界発光素子用組成物と、この有機電界発光素子用組成物を用いて形成された有機電界発光素子用薄膜、有機電界発光素子用薄膜転写用部材及び有機電界発光素子と、有機電界発光素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機薄膜を用いた電界発光素子(有機電界発光素子)の開発が行われている。有機電界発光素子の材料は、主に低分子材料と高分子材料に分類することができる。
【0003】
例えば、芳香族ジアミンから成る正孔輸送層と8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体から成る発光層とを設けた有機電界発光素子や、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体をホスト材料として、クマリン等のレーザー用蛍光色素をドープした有機電界発光素子など低分子材料を使用した有機電界発光素子が開発されている。また、以下に示す白金錯体やイリジウム錯体などの低分子材料も、発光層の材料として使用されている。
【0004】
【化1】

【0005】
一方、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ(3-アルキルチオフェン)等の高分子材料を用いた有機電界発光素子の開発や、ポリビニルカルバゾール等の高分子材料に低分子の発光材料と電子移動材料を混合した素子の開発も行われている。これら高分子材料を用いた素子の作製プロセスは、材料の特性上、スピンコートやインクジェット法等の湿式製膜法が殆どである。
【0006】
薄膜の形成方法に着目すると、これまで、低分子材料は真空蒸着法、高分子材料は湿式製膜法が殆どであった。真空蒸着法は良質な膜を基板に対して均一に製膜できること、積層化が容易で優れた特性のデバイスが得やすいこと、作製プロセス由来の不純物の混入が極めて少ないこと、等の利点があり、現在実用化されている有機電界発光素子の大部分は低分子材料を用いた真空蒸着法によるものである。
【0007】
一方、湿式製膜法は、真空プロセスが要らず大面積化が容易で、1つの層(塗布液)に様々な機能を持った複数の材料を入れることが可能である、等の利点がある。しかしながら、湿式製膜法は、以下のような問題があり、一部の高分子材料を用いた素子以外は実用レベルに至っていないのが現状である。
・高分子材料(重合型有機化合物)は重合度や分子量分布を制御することが困難である。
・連続駆動時に末端残基による劣化が起こる。
・材料自体の高純度化が困難で、不純物を含む。
【0008】
以上のような問題を解決する試みとして、特許文献1及び特許文献2には高分子材料(重合型有機化合物)ではなく、蛍光物質と正孔輸送材料及び電子輸送材料からなる低分子材料(非重合型有機化合物)を用いることが記載されている。これは陽極から注入された正孔及び陰極から注入された電子をそれぞれ正孔輸送材料及び電子輸送材料が輸送することで、駆動電圧を下げようという試みである。しかしながら、これらの素子は陽極や陰極からの正孔注入、電子注入が不十分な為、駆動電圧が高く発光効率も不十分であった。また、電子輸送材料として用いているオキサジアゾール誘導体は駆動安定性に問題があり、駆動寿命は十分とは言えなかった。さらには、発光材料に燐光物質や青色発光材料を適用しようとした場合は、発光材料のエネルギーギャップが大きく、適用が困難であった。
【特許文献1】特許3069139号公報
【特許文献2】特開平11−273859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、有機発光層が湿式製膜法により形成された有機電界発光素子であって、電極から有機発光層への電荷注入特性が良好で、発光効率、駆動寿命に優れた有機電界発光素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、湿式製膜法により有機発光層を形成するために用いられる組成物中の発光材料と電荷輸送材料の酸化電位と還元電位をある一定の関係にコントロールすることにより、電荷注入特性が良好で、実用性の高い有機電界発光素子を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明は以下を要旨とするものである。
【0012】
[1] 燐光発光材料、電荷輸送材料及び溶剤を含有する有機電界発光素子用組成物であって、燐光発光材料及び電荷輸送材料はそれぞれ非重合型有機化合物であり、
燐光発光材料の第一酸化電位E
燐光発光材料の第一還元電位E
電荷輸送材料の第一酸化電位E、及び
電荷輸送材料の第一還元電位E
の関係が、
+0.1≦E<E≦E−0.1
或いは
+0.1≦E<E≦E−0.1
であることを特徴とする有機電界発光素子用組成物。
【0013】
[2] 燐光発光材料及び電荷輸送材料が、それぞれ分子量100〜10000である[1]に記載の有機電界発光素子用組成物。
【0014】
[3] 燐光発光材料が、有機金属錯体である[1]又は[2]に記載の有機電界発光素子用組成物。
【0015】
[4] 電荷輸送材料が、下記式(1)で表される[1]〜[3]に記載の有機電界発光素子用組成物。
(A)n−Z …(1)
(式(1)中、Aは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
nは、1以上10以下の整数を表す。
Zは、n=1の場合は水素原子又は置換基を表し、nが2以上の場合は直接結合又はn価の連結基を表す。
尚、nが2以上の場合、複数のAは同一であっても異なるものであっても良く、A及びZはそれぞれ、さらに置換基を有していても良い。)
【0016】
[5] 水分濃度が1重量%以下である[1]〜[4]に記載の有機電界発光素子用組成物。
【0017】
[6] [1]〜[5]に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式製膜法により形成された有機電界発光素子用薄膜。
【0018】
[7] 波長500nm〜600nmの光に対する屈折率が1.78以下である請求項6に記載の有機電界発光素子用薄膜。
【0019】
[8] [1]〜[5]に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて基材上に湿式製膜法により形成された有機電界発光素子用薄膜転写用部材。
【0020】
[9] 基板上に、陽極、陰極及びこれら両極間に設けられた有機発光層を有する有機電界発光素子であって、該有機発光層が、[8]に記載の有機電界発光素子用薄膜転写用部材を用いて形成された層であることを特徴とする有機電界発光素子。
【0021】
[10] 基板上に、陽極、陰極及びこれら両極間に設けられた有機発光層を有する有機電界発光素子であって、該有機発光層が[1]〜[5]に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式製膜法により形成された層であることを特徴とする有機電界発光素子。
【0022】
[11] 有機発光層と陽極との間に、正孔注入層を有する[9]又は[10]に記載の有機電界発光素子。
【0023】
[12] 有機発光層と陰極との間に、電子注入層を有する[9]〜[11]に記載の有機電界発光素子。
【0024】
[13] 基板上に、陽極、陰極及びこれら両極間に設けられた有機発光層を有する有機電界発光素子の製造方法であって、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式製膜法により該有機発光層を形成する工程を有する有機電界発光素子の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明の有機電界発光素子用組成物は、発光特性に優れ、ポットライフが長く、熱安定性に優れ、低粘度で、均一性に優れ、製膜時の膜厚調整も容易であり、このような本発明の有機電界発光素子用組成物を用いることにより、湿式製膜法により、電極から有機発光層への電荷注入特性が良好で、発光効率、駆動寿命に優れた有機電界発光素子を容易に得ることができる。
【0026】
従来の湿式製膜法による有機電界発光素子では、電極から有機発光層への電荷注入特性が悪く、駆動電圧が高く、発光効率が不十分で更には駆動安定性、駆動寿命においても問題がある上に発光材料のエネルギーキャップにおいても実用化を阻む原因があったのに対し、本発明の有機電界発光素子用組成物により、このような従来の問題が解決される理由の詳細は明らかではないが、次のように推測される。
【0027】
燐光物質や青色発光材料等のワイドギャップ素子を発光させる為には、ワイドギャップの電荷輸送材料(ホスト材料)が必要と考えられてきたが、
燐光発光材料の第一酸化電位E
燐光発光材料の第一還元電位E
電荷輸送材料の第一酸化電位E、及び
電荷輸送材料の第一還元電位E
の関係が、
+0.1≦E<E≦E−0.1
或いは
+0.1≦E<E≦E−0.1
の場合には、燐光発光材料及び電荷輸送材料が正孔又は電子のどちらか一方の注入に大きく関与し、結果的に駆動電圧が低下する。また、一方の電荷(正孔又は電子)が燐光発光材料のHOMO又はLUMOにトラップされると、燐光発光材料のLUMOが増加、又はHOMOが低下し、電荷輸送材料のLUMO又はHOMOからの電荷を受け取りやすいレベルになる為に、燐光発光材料からの発光が高効率で得られる。
【0028】
上記関係は湿式製膜法で発光層が形成される有機電界発光素子において、高い効果を奏する。しかしながら、蒸着法の場合、上記関係となっているものでも、そうでないものでも、効果には通常差異がない。
【0029】
このような本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式製膜法により形成された本発明の有機電界発光素子用薄膜は、発光性に優れ、膜質が良く、熱安定性に優れ、長期間通電しても劣化しにくい。
【0030】
また、このような本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式製膜法により基材上に形成された本発明の有機電界発光素子用薄膜転写用部材によれば、発光性に優れ、膜質が良く、熱安定性に優れ、長期間通電しても劣化しにくい有機薄膜を、簡便に製膜することができる。
【0031】
また、このような本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式製膜法により有機発光層を形成する本発明の有機電界発光素子及びその製造方法によれば、実用性の高い有機電界発光素子を簡便な工程で容易に製造することができる。
【0032】
従って、本発明による有機電界発光素子はフラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)、車載表示素子、携帯電話表示や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯への応用が考えられ、その技術的価値は大きいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
【0034】
[有機電界発光素子用組成物]
本発明の有機電界発光素子用組成物は、燐光発光材料、電荷輸送材料及び溶剤を含有し、
燐光発光材料及び電荷輸送材料はそれぞれ非重合型有機化合物であり、
燐光発光材料の第一酸化電位E
燐光発光材料の第一還元電位E
電荷輸送材料の第一酸化電位E、及び
電荷輸送材料の第一還元電位E
の関係が、
+0.1≦E<E≦E−0.1
或いは
+0.1≦E<E≦E−0.1
であることを特徴とする。
【0035】
ここで、非重合型有機化合物、燐光発光材料、及び電荷輸送材料の定義は次の通りである。
【0036】
・非重合型有機化合物
本発明に記載の非重合型有機化合物とは、一般にポリマー(重合型有機化合物)と呼ばれる化合物以外のものを指す。即ち、低分子化合物が同じ反応又は類似の反応を連鎖的にくり返すことにより生じた高分子量の重合体又は縮合体の分子からなる物質以外のものをいう。具体的には、所謂、単一又は複数の重合性モノマー、オリゴマーあるいはポリマーを任意の方法で規則的又は不規則的に重合させて作成される高分子量の有機化合物とは異なるものであって、分子量が実質的に単一である化合物を指し、分子構造を化学式で一義的かつ定量的に定義可能な化合物である。
【0037】
・燐光発光材料
本発明に記載の燐光発光材料とは、本発明の有機電界発光素子において、主として発光する成分を指し、有機電界発光素子におけるドーパント成分に当たる。該有機電界発光素子から発せられる光量(単位:cd/m)の内、通常10〜100%、好ましくは20〜100%、より好ましくは50〜100%、最も好ましくは80〜100%が、ある成分材料からの発光と同定される場合、それを発光材料と定義する。
但し、該燐光発光材料は、その発光機能を損なわない限りにおいて、電荷輸送性を有していても良い。また、燐光発光材料は、1種の化合物を単独で用いても良く、2種以上の化合物を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
なお、以下において、「燐光発光材料」を単に「発光材料」と称す場合がある。
【0038】
・電荷輸送材料
電荷輸送材料とは、与えられた電荷(即ち、電子や正孔)を移動させることができる材料であり、上記の条件を満たしていれば他に制限はなく、任意の材料を用いることができる。また、電荷輸送材料は、1種の化合物を単独で用いても良く、2種以上の化合物を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0039】
また、本発明における酸化電位及び還元電位の測定方法は次の通りである。
・酸化電位・還元電位の測定方法
本発明における第一酸化(還元)電位は、以下に述べるような電気化学測定(サイクリックボルタンメトリー)によって測定することができる。尚、測定に用いられる支持電解質、溶剤及び電極については、以下に示す例示物に限定されるわけではなく、同程度の測定が可能なものであれば任意のものを用いることができる。
【0040】
支持電解質として、例えば過塩素酸テトラブチルアンモニウムやヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム等を0.1mol/L程度含有させた有機溶剤に、測定対象材料(本発明に係る発光材料又は電荷輸送材料)を0.1〜2mM程度溶解させる。こうして得られた溶液を、乾燥窒素バブリング、減圧脱気、超音波照射などの手法により、酸素を除去した後、作用電極として例えばグラッシーカーボン電極を用い、対電極として例えば白金電極を用い、掃引速度100mV/secにて電気的中性状態から電解酸化(又は還元)する。電解酸化(又は還元)時に検出される最初のピーク値の電位を、例えばフェロセン等の基準物質の酸化還元電位と比較することにより、測定対象材料の酸化(又は還元)電位を得る。こうして得られた酸化(又は還元)電位を、更に飽和甘コウ電極(SCE)を基準電極として換算した値が、本発明における第一酸化(又は還元)電位である。
【0041】
尚、測定用の有機溶剤としては、十分に水分含有量を低減したものを使用するものとし、例えば、アセトニトリル、塩化メチレン、N,N−ジメチルホルムアミド、あるいはテトラヒドロフランなど、本発明に係る発光材料又は電荷輸送材料を良く溶解させ、且つ、それ自身が電解酸化(又は還元)されにくい、従って、電位窓を広くとることができるものが用いられる。
【0042】
以下に本発明の有機電界発光素子用組成物を構成する各成分及び酸化電位/還元電位の関係等について説明する。
【0043】
〈燐光発光材料〉
燐光発光材料としては、任意の公知材料を適用可能であり、燐光発光材料を単独で若しくは複数を混合して使用できる。燐光発光材料は、内部量子効率の観点から優れている。本発明において、燐光発光材料の代わりに蛍光発光材料を用いた場合、上記電荷輸送材料と発光材料の関係を満たすものであっても、効率向上あるいは寿命向上の効果が得られない。
尚、溶剤への溶解性を向上させる目的で、燐光発光材料分子の対称性や剛性を低下させたり、あるいはアルキル基などの親油性置換基を導入することも重要である。
【0044】
燐光発光材料としては、好ましくは例えば周期表7ないし11族(元素周期表:IUPAC Periodic Table of the Elements,2004)から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
周期表7ないし11族から選ばれる金属を含む燐光性有機金属錯体における金属として好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。これらの有機金属錯体として、好ましくは下記式(4)、(5)で表される化合物、或いはWO2005/011370号公報やWO2005/019373号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0045】
MG(q-j)G’j …(4)
(式(4)中、Mは金属を表し、qは金属Mの価数を表す。G及びG’は二座配位子を表す。jは0、1又は2を表す。)
【0046】
【化2】

(式(5)中、M5は金属を表し、Tは炭素又は窒素を表す。R92〜R95は、それぞれ独立に置換基を表す。ただし、Tが窒素の場合は、R94及びR95は無い。)
【0047】
以下、まず、式(4)で表わされる化合物について説明する。
式(4)中、Mは任意の金属を表し、好ましいものの具体例としては、周期表7ないし11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。
また、式(4)中の二座配位子G及びG’は、それぞれ、以下の部分構造を有する配位子を示す。
【0048】
【化3】

【0049】
【化4】

【0050】
G’として、錯体の安定性の観点から、特に好ましくは、
【化5】

である。
【0051】
上記G,G’の部分構造において、環Q1は、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、これらは置換基を有していても良い。また、環Q2は、含窒素芳香族複素環基を表し、これらは置換基を有していても良い。
なお、本発明において置換基を有していても良いとは、置換基を1以上有していても良いことを意味する。
【0052】
環Q1,Q2の好ましい置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基、フェナンチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0053】
式(4)で表される化合物として、さらに好ましくは、下記式(4a)、(4b)、(4c)で表される化合物が挙げられる。
【0054】
【化6】

(式(4a)中、MaはMと同様の金属を表し、qaは金属Maの価数を表す。環Q1は置換基を有していても良い芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、環Q2は置換基を有していても良い含窒素芳香族複素環基を表す。)
【0055】
【化7】

(式(4b)中、MbはMと同様の金属を表し、qbは金属Mbの価数を表す。環Q1は置換基を有していても良い芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、環Q2は置換基を有していても良い含窒素芳香族複素環基を表す。)
【0056】
【化8】

(式(4c)中、McはMと同様の金属を表し、qcは金属Mcの価数を表す。jは0、1又は2を表す。環Q1及び環Q1’は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。環Q2及び環Q2’は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い含窒素芳香族複素環基を表す。)
【0057】
上記式(4a)、(4b)、(4c)において、環Q1及び環Q1’としては、好ましくは、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、チエニル基、フリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
また、環Q2、環Q2’としては、好ましくは、例えばピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フェナントリジル基等が挙げられる。
【0058】
式(4a)、(4b)、(4c)で表される化合物が有していても良い置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基等が挙げられる。
【0059】
上記置換基がアルキル基である場合は、その炭素数は通常1以上6以下である。上記置換基がアルケニル基である場合は、その炭素数は通常2以上6以下である。上記置換基がアルコキシカルボニル基である場合は、その炭素数は通常2以上6以下である。上記置換基がアルコキシ基である場合は、その炭素数は通常1以上6以下である。上記置換基がアリールオキシ基である場合は、その炭素数は通常6以上14以下である。上記置換基がジアルキルアミノ基である場合は、その炭素数は通常2以上24以下である。上記置換基がジアリールアミノ基である場合は、その炭素数は通常12以上28以下である。上記置換基がアシル基である場合は、その炭素数は通常1以上14以下である。上記置換基がハロアルキル基である場合は、その炭素数は通常1以上12以下である。
【0060】
尚、これら置換基は互いに連結して環を形成しても良い。具体例としては、環Q1が有する置換基と環Q2が有する置換基とが結合するか、又は、環Q1’が有する置換基と環Q2’が有する置換基とが結合するかして、一つの縮合環を形成しても良い。このような縮合環としては、7,8−ベンゾキノリン基等が挙げられる。
中でも、環Q1、環Q1’、環Q2及び環Q2’の置換基として、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ジアリールアミノ基、カルバゾリル基が挙げられる。
【0061】
また、式(4a)、(4b)、(4c)におけるMa,Mb,Mcとして好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられる。
【0062】
上記式(4)、(4a)、(4b)又は(4c)で示される有機金属錯体の具体例を以下に示すが、何ら下記の化合物に限定されるものではない。以下において、Phはフェニル基を表す。
【0063】
【化9】

【0064】
【化10】

【0065】
【化11】

【0066】
さらに、上記式(4)、(4a)、(4b)、(4c)で表される有機金属錯体の中でも、特に、配位子G及び/又はG’として2−アリールピリジン系配位子、即ち、2−アリールピリジン、これに任意の置換基が結合したもの、及び、これに任意の基が縮合してなるものを有する化合物が好ましい。
【0067】
次に、式(5)で表わされる化合物について説明する。
式(5)中、M5は金属を表し、具体例としては、周期表7ないし11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
【0068】
また、式(5)において、R92及びR93は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
【0069】
さらに、Tが炭素の場合、R94及びR95は、それぞれ独立に、R92及びR93と同様の例示物で表わされる置換基を表す。また、Tが窒素の場合はR94及びR95は無い。
また、R92〜R95はさらに置換基を有していても良い。さらに有していても良い置換基に制限はなく、任意の基を置換基とすることができる。
さらに、R92〜R95はそれぞれ隣接する基と互いに連結して環を形成しても良い。
【0070】
式(5)で表わされる有機金属錯体の具体例(5−a〜5−g)を以下に示すが、下記の例示物に限定されるものではない。以下において、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
【0071】
【化12】

【0072】
本発明において、発光材料として用いる化合物の分子量は、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上である。分子量が100未満であると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、あるいはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりするため、好ましくない。分子量が10000を超えると、有機化合物の精製が困難となってしまったり、溶剤に溶解させる際に時間を要する可能性が高いため、好ましくない。
【0073】
本発明に係る発光材料の第一酸化電位Eは、通常0.1以上、好ましくは、0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上、最も好ましくは0.5以上で、通常2.0V以下、好ましくは、1.6V以下、より好ましくは1.4V以下、更に好ましくは1.2V以下、最も好ましくは1.0V以下である。
発光材料の第一酸化電位Eが0.1V未満であると、発光材料の第一還元電位Eを極めて低い値に設定する必要があるため、有機電界発光素子に用いた場合に、正負電荷バランスが大きく崩れてしまったり、あるいは発光材料の還元に対する耐久性低下を招き、十分な輝度や寿命が得られない危険性が高いため、好ましくない。一方、発光材料の第一酸化電位Eが2.0Vを超えると、発光材料の酸化に対する耐久性低下を招き、十分な輝度や寿命が得られない危険性が高いため、好ましくない。
【0074】
本発明で用いる発光材料の第一還元電位Eは、通常−3.0V以上、好ましくは−2.8V以上、より好ましくは−2.7V以上、更に好ましくは−2.6V以上、最も好ましくは−2.5V以上で、−1.0V以下、好ましくは、−1.2V以下、より好ましくは−1.4V以下、更に好ましくは−1.6V以下、最も好ましくは−1.8V以下である。
発光材料の第一還元電位Eが−3.0V未満であると、有機電界発光素子に用いた場合に、正負電荷バランスが大きく崩れてしまったり、あるいは発光材料の還元に対する耐久性低下を招き、十分な輝度や寿命が得られない危険性が高いため、好ましくない。一方、発光材料の第一還元電位Eが−1.0Vを超えると、発光材料の第一酸化電位Eを極めて高い値に設定する必要があるため、有機電界発光素子に用いた場合に、正負電荷バランスが大きく崩れてしまったり、発光材料の酸化に対する耐久性低下を招き、十分な輝度や寿命が得られない危険性が高いため、好ましくない。
【0075】
〈電荷輸送材料〉
本発明で用いる電荷輸送材料は、通常、以下の機能の少なくとも何れかを有するものが好ましい。
(i)注入機能:電界印加時に陽極又は正孔注入層より正孔を注入することができる機能、及び/又は、陰極又は電子注入層より電子を注入することができる機能。
(ii)輸送機能:注入した電荷を電界の力で移動させる機能。
(iii)発光機能:電子と正孔との再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能。
(iv)阻止機能:電荷をバランスよく移動、再結合させるため、移動調整する機能。
尚、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさには違いがあっても良く、正孔と電子の移動度で表される輸送性能に大小があっても良いが、少なくともどちらか一方の電荷を効率よく移動可能であることが不可欠である。
【0076】
上記の観点から、電荷輸送材料として用いる化合物は、特に、下記式(1)で表される有機化合物が好ましい。
(A)n−Z …(1)
(式(1)中、Aは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
nは、1以上10以下の整数を表す。
Zは、n=1の場合は水素原子又は置換基を表し、nが2以上の場合は直接結合又はn価の連結基を表す。
尚、nが2以上の場合、複数のAは同一であっても異なるものであっても良く、A及びZはそれぞれ、さらに置換基を有していても良い。)
【0077】
以下、上記式(1)で表わされる化合物について詳細に説明する。
式(1)において、nは、通常1以上、好ましくは2以上、また、通常10以下、好ましくは6以下の整数を表す。この範囲を超えると各種精製によって不純物を十分に低減させることが困難になるために好ましくなく、この範囲を下回ると電荷注入・輸送性が著しく低下することがあるために好ましくない。
【0078】
また、式(1)において、nが1の場合、Zは、水素原子又は任意の置換基である。ここで、Zが置換基である場合の具体例は、アルキル基類、アルケニル基類、アルキニル基類、アミノ基類、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルファモイル基類、カルバモイル基類、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基類、スルフェニル基類、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、シリル基類、ボリル基類、ホスフィノ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、下記式(2)で表わされる基、下記式(3)で表わされる基などが挙げられる。
【0079】
【化13】

【0080】
【化14】

【0081】
ただし、式(2)において、Raは任意の置換基を表す。また、Raの炭素数は、通常1以上、また、通常10以下、好ましくは6以下である。さらに、Raの具体例を挙げると、アルキル基、アラルキル基、芳香族炭化水素基などが挙げられる。
また、式(2)及び式(3)において、Rb,Rc,Rdはそれぞれ独立に、水素原子又は任意の置換基を表す。また、Rb,Rc,Rdが任意の置換基である場合には、その炭素数及び具体例としては、それぞれ独立に、Raと同様の炭素数及び具体例が挙げられる。
【0082】
Zがアルキル基類である場合、好ましくは炭素数1以上で30以下、更に好ましくは炭素数12以下の直鎖又は分岐のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n−オクチル基などが挙げられる。
【0083】
Zがアルケニル基類である場合、好ましくは、炭素数2以上で30以下、更に好ましくは炭素数12以下のアルケニル基であり、例えばビニル、アリル、1-ブテニル基などが挙げられる。
【0084】
Zがアルキニル基類である場合、好ましくは炭素数2以上30以下、更に好ましくは炭素数12以下のアルキニル基であり、例えばエチニル、プロパルギル基などが挙げられる。
【0085】
Zがアミノ基類である場合、アミノ基類にはアミノ基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常0以上、また、通常36以下、好ましくは20以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジベンジルアミノ基、チエニルアミノ基、ジチエニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ジピリジルアミノ基等が挙げられる。
【0086】
Zがアルコキシカルボニルアミノ基である場合、その炭素数は、通常2以上、また、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、メトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0087】
Zがアリールオキシカルボニルアミノ基である場合、その炭素数は、通常7以上、また、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、フェノキシカルボニル基等が挙げられる。
【0088】
Zがヘテロ環オキシカルボニルアミノ基である場合、その炭素数は、通常2以上、好ましくは5以上、また、通常21以下、好ましくは15以下、より好ましくは11以下である。その具体例としては、チエニルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0089】
Zがスルホニルアミノ基である場合、その炭素数は、通常1以上、また、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基、チオフェンスルホニルアミノ基等が挙げられる。
【0090】
Zがアルコキシ基である場合、その炭素数は、通常1以上、また、通常20以下、好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0091】
Zがアリールオキシ基である場合、その炭素数は、通常6以上、また、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは炭素数6である。その具体例としては、フェノキシ基等が挙げられる。
【0092】
Zがヘテロ環オキシ基である場合、その炭素数は、通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、また、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは5以下である。その具体例としては、チエニルオキシ基、ピリジルオキシ基等が挙げられる。
【0093】
Zがアシル基である場合、その炭素数は、通常1以上、また、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基、テノイル基、ニコチノイル基等が挙げられる。
【0094】
Zがアルコキシカルボニル基である場合、その炭素数は、通常2以上、また、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0095】
Zがアリールオキシカルボニル基である場合、その炭素数は、通常7以上、また、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは7である。その具体例としては、フェノキシカルボニル基などが挙げられる。
【0096】
Zがヘテロ環オキシカルボニル基である場合、その炭素数は、通常2以上、好ましくは5以上、また、通常20以下、好ましくは12以下、より好ましくは6以下である。その具体例としては、チエニルオキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0097】
Zがアシルオキシ基である場合、その炭素数は、通常2以上、また、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例は、アセトキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、テノイルオキシ基、ニコチノイルオキシ基等が挙げられる。
【0098】
Zがスルファモイル基類である場合、スルファモイル基類にはスルファモイル基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常0以上、また、通常20以下、好ましくは12以下である。その具体例は、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基、チエニルスルファモイル基等が挙げられる。
【0099】
Zがカルバモイル基類である場合、カルバモイル基類にはカルバモイル基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常1以上、また、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例は、カルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基等が挙げられる。
【0100】
Zがアルキルチオ基である場合、その炭素数は、通常1以上、また、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例は、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ブチルチオ基等が挙げられる。
【0101】
Zがアリールチオ基である場合、その炭素数は、通常6以上、また、通常26以下、好ましくは20以下、より好ましくは12以下である。その具体例は、フェニルチオ等が挙げられる。
【0102】
Zがヘテロ環チオ基である場合、その炭素数は、通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、また、通常25以下、好ましくは19以下、より好ましくは11以下である。その具体例は、チエニルチオ基、ピリジルチオ基等が挙げられる。
【0103】
Zがスルホニル基類である場合、スルホニル基類にはスルホニル基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常1以上、また、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、トシル基、メシル基などが挙げられる。
【0104】
Zがスルフィニル基類である場合、スルフィニル基類にはスルフィニル基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常1以上、また、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、メチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基等が挙げられる。
【0105】
Zがウレイド基類である場合、ウレイド基類にはウレイド基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常1以上、また、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、ウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基等が挙げられる。
【0106】
Zがリン酸アミド基類である場合、リン酸アミド基類にはリン酸アミド基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常1以上、また、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基等が挙げられる。
【0107】
Zがシリル基類である場合、シリル基類にはシリル基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常1以上、また、通常10以下、好ましくは6以下である。その具体例としては、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
【0108】
Zがボリル基類である場合、ボリル基類にはボリル基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常1以上、また、通常10以下、好ましくは6以下である。その具体例としては、ジメシチルボリル基等が挙げら
れる。
【0109】
Zがホスフィノ基類である場合、ホスフィノ基類にはホスフィノ基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常1以上、また、通常10以下、好ましくは6以下である。その具体例としては、ジフェニルホスフィノ基等が挙げられる。
【0110】
Zが芳香族炭化水素基である場合、その炭素数は、通常6以上、また、通常20以下、好ましくは14以下である。その具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環等由来の6員環の単環或いは2〜5縮合環由来の基などが挙げられる。
【0111】
Zが芳香族複素環基である場合、そのヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。また、このとき、Zの炭素数は、通常1以上、好ましくは3以上、また、通常19以下、好ましくは13以下である。その具体例を挙げると、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の5員環又は6員環の単環或いは2〜4縮合環由来の基が挙げられる。
【0112】
一方、nが2以上の場合、Zは直接結合又はn価の連結基を表す。
【0113】
Zがn価の連結基である場合、その具体例としては、下記式で表わされる基が挙げられる。
【化15】

【0114】
さらに、この他、Zが置換基である場合の具体例として前述した基から水素原子を(n−1)個除去した基なども、Zがn価の連結基である場合の具体例として挙げられる。
また、Zがアルキニル基である場合、その炭素数は、通常2以上、また、通常8以下、好ましくは4以下である。その具体例としてはエチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
これらの中でも、Zは、電気的酸化還元耐久性を向上させる観点、及び、耐熱性を向上させる観点から、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基であることが好ましい。
【0115】
尚、Zは、さらに置換基を有していても良く、他の基と縮合していても良い。また、Zが有する置換基が2個以上ある場合には、それらは同一でも良く、異なっていても良い。さらに、可能な場合にはこれらの置換基が互いに連結して環を形成しても良い。
【0116】
Zが有する置換基は任意であるが、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミノ基、アルキルアミノ基、芳香族複素環基などが挙げられる。この中でも、アルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましく、芳香族炭化水素基がより好ましい。尚、ここで例示した置換基の具体例としては、Zが置換基である場合について具体例として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0117】
また、Zの分子量は任意であるが、Zが置換基又は連結基である場合、通常5000以下、好ましくは2000以下である。
【0118】
式(1)において、Aは、任意の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
【0119】
Aが芳香族炭化水素基である場合、その炭素数は、通常6以上、また、通常30以下、好ましくは20以下である。その具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環等の6員環の単環或いは2〜5縮合環由来の基などが挙げられる。
【0120】
また、Aが芳香族複素環基である場合、その炭素数は、通常1以上、好ましくは3以上、また、通常29以下、好ましくは19以下である。その具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環、テトラゾール環、イミダゾピリジン環等の5員環又は6員環の単環或いは2〜4縮合環由来の基などが挙げられる。
【0121】
上記に例示したものの中でも、Aとしては、電気的酸化還元耐久性の点、及び、広いHOMO−LUMOのバンドギャップの点から、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環、カルバゾール環由来の基が好ましい。
【0122】
この中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、トリアジン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環、カルバゾール環由来の基がより好ましい。また、ベンゼン環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環、カルバゾール環由来の基がより好ましい。
【0123】
さらに、Aは、ピリジン環又はカルバゾール環由来の基が、特に好ましい。
ピリジン環由来の基の中でも、ピリジン環の2,4,6−位に置換基を有するピリジン環由来の基、あるいはビピリジル基は、電気的還元安定性に優れるため、好ましい。また、この2,4,6−位に置換基を有するピリジン環由来の基あるいはビピリジル基に結合する置換基は任意であるが、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基であることが好ましい。
【0124】
さらに、式(1)において、Aは置換基を有していても良い。Aが有していても良い置換基は任意であるが、その具体例としては、Zが有し得る置換基として前述したものと同様のものが挙げられる。また、この置換基が2個以上ある場合には、それらは同一でもよく異なっていてもよい。さらに可能な場合には、これらの置換基が互いに連結して環を形成してもよい。
【0125】
また、Aの分子量は、その置換基も含めて、通常5000以下、好ましくは2000以下である。
【0126】
以下、A,Zについて、それぞれ具体例を例示する。
まず、A、及び、n=1の場合のZの具体例としては、以下の基R−1〜R−99が挙げられる。ただし、以下の具体例において、L1、L2及びL3はそれぞれ独立に、水素原子又は任意の置換基を表し、電気的耐久性の観点から、好ましくはアルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基であり、最も好ましくはフェニル基である。また、ここで例示した基は、L1、L2及びL3以外にも置換基を有していても良い。
【0127】
【化16】

【0128】
【化17】

【0129】
【化18】

【0130】
【化19】

【0131】
また、nが2以上の場合のZの具体例としては、以下の結合及び連結基が挙げられ、単独もしくは(同一あるいは異なる)2以上を連結して適用可能である。尚、Z−1で表したものは直接結合を表し、Z−2〜Z−187で表したものは連結基を表す。ただし、以下の具体例において、L1、L2及びL3はそれぞれ独立に、水素原子又は任意の置換基を表し、電気的耐久性の観点から、好ましくはアルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基であり、最も好ましくはフェニル基である。また、ここで例示した基は、L1、L2及びL3以外にも置換基を有していても良い。
【0132】
【化20】

【0133】
【化21】

【0134】
【化22】

【0135】
【化23】

【0136】
また、式(1)で表わされる化合物の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
カルバゾール系化合物(トリアリールアミン系化合物を含む)としては、特開昭63−235946号公報、特開平2−285357号公報、特開平2−261889号公報、特開平3−230584号公報、特開平3−232856号公報、特開平5−263073号公報、特開平6−312979号公報、特開平7−053950号公報、特開平8−003547号公報、特開平9−157643号公報、特開平9−268283号公報、特開平9−165573号公報、特開平9−249876号公報、特開平9−310066号公報、特開平10−041069号公報、特開平10−168447号公報、欧州特許第847228号明細書、特開平10−208880号公報、特開平10−226785号公報、特開平10−312073号公報、特開平10−316658号公報、特開平10−330361号公報、特開平11−144866号公報、特開平11−144867号公報、特開平11−144873号公報、特開平11−149987号公報、特開平11−167990号公報、特開平11−233260号公報、特開平11−241062号公報、WO−00/70655号公報、米国特許第6562982号明細書、特開2003−040844号公報、特開2001−313179号公報、特開2001−257076号公報、特開2005−47811号公報、特願2003−204940号明細書、特開2005−068068号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
【0137】
また、フェニルアントラセン誘導体としては、特開2000−344691号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
さらに、縮環アリーレンのスターバースト型化合物としては、特開2001−192651号公報、特開2002−324677号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
【0138】
また、縮環型イミダゾール系化合物としては、「Appl. Phys. Lett., 78巻, 1622項、2001」、特開2001−335776号公報、特開2002−338579号公報、特開2002−319491号公報、特開2002−367785号公報、特開2002−367786号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
【0139】
さらに、アゼピン系化合物としては、特開2002−235075号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
また、縮環型トリアゾール系化合物としては、特開2002−356489号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
さらに、プロペラ型アリーレン系化合物としては、特開2003−027048号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
【0140】
また、モノトリアリールアミン型化合物としては、特開2002−175883号公報、特開2002−249765号公報、特開2002−324676号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
さらに、アリールベンジジン系化合物としては、特開2002−329577号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
【0141】
また、トリアリール硼素化合物としては、特開2003−031367号公報、特開2003−031368号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
さらに、インドール系化合物としては、特開2002−305084号公報、特開2003−008866号公報、特開2002−015871号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
【0142】
また、インドリジン系化合物としては、特開2000−311787号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
さらに、ピレン系化合物としては、特開2001−118682号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
また、ジベンゾオキサゾール(又はジベンゾチアゾール)系化合物としては、特開2002−231453号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
【0143】
さらに、ビピリジル系化合物としては、特開2003−123983号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
また、ピリジン系化合物としては、特開2005−276801号公報、特開2005−268199号公報等に電荷輸送材料として記載の化合物などが挙げられる。
【0144】
これらの中でも、有機電界発光素子を用いた場合の優れた発光特性の点から、カルバゾール系化合物(トリアリールアミン系化合物を含む)、縮環アリーレンのスターバースト型化合物、縮環型イミダゾール系化合物、プロペラ型アリーレン系化合物、モノトリアリールアミン型化合物、インドール系化合物、インドリジン系化合物、ビピリジル系化合物、ピリジン系化合物等が好ましい。
【0145】
更に、有機電界発光素子を用いた場合の駆動寿命の点から、カルバゾール系化合物、ビピリジル系化合物、及びピリジン系化合物がより好ましく、カルバゾール系化合物とビピリジル系化合物を混合して、又はカルバゾール系化合物かつピリジン系化合物を混合して用いるのが、最も好ましい。また、カルバゾリル基とピリジル基とを併せ持つ化合物を採用するのも、同様に好ましく、例として、特願2004−358592号や特願2004−373981号に記載の電荷輸送材料などを好ましく例示できる。
尚、溶剤への溶解性を向上させる目的で、分子の対称性や剛性を低下させたり、あるいはアルキル基などの親油性置換基を導入することも、重要である。
【0146】
電荷輸送材料として、とりわけ好ましい化合物の具体例を以下に示す。尚、以下の例示構造式中、−N−Czは、N−カルバゾリル基を示す。
【0147】
【化24】

【0148】
【化25】

【0149】
【化26】

【0150】
【化27】

【0151】
さらに、電荷輸送材料として用いる化合物は、そのガラス転移点が、通常70℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは130℃以上、最も好ましくは150℃以上であることが望ましい。ガラス転移点が低すぎると、有機電界発光素子としての耐熱性が低下する虞があるほか、駆動寿命が短くなる可能性があるためである。
【0152】
さらに、本発明において、電荷輸送材料として用いる化合物の分子量は、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは300以上、より好ましくは500以上である。分子量が100未満であると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、あるいはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりするため、好ましくない。分子量が10000を超えると、有機化合物の精製が困難となってしまったり、溶剤に溶解させる際に時間を要する可能性が高いため、好ましくない。
【0153】
本発明において、電荷輸送材料として用いる化合物は、そのバンドギャップが、通常3.0V以上、好ましくは3.2V以上、より好ましくは3.5V以上のものが望ましい。青色蛍光発光材料、あるいは燐光発光材料、とりわけ緑〜青色発光材料は、バンドギャップが大きく、この燐光発光材料を用いて有機電界発光素子を作製する場合には、燐光発光材料をとりまく電荷輸送材料は、通常、この燐光発光材料のバンドギャップ以上のバンドギャップを有していることが、有機電界発光素子としての発光効率や寿命の点で好ましいためである。
【0154】
本発明で用いる電荷輸送材料の第一酸化電位Eは、通常0.0V以上、好ましくは、0.1V以上、より好ましくは0.2V以上、更に好ましくは0.3V以上、最も好ましくは0.9V以上、通常2.1V以下、好ましくは1.7V以下、より好ましくは1.6V以下、更に好ましくは1.5V以下、最も好ましくは1.4V以下である。
電荷輸送材料の第一酸化電位Eが0.0V未満であると、電荷輸送材料の第一還元電位Eを極めて低い値に設定する必要があるため、有機電界発光素子に用いた場合に、正負電荷バランスが大きく崩れてしまったり、あるいは電荷輸送材料の還元に対する耐久性低下を招き、十分な輝度や寿命が得られない危険性が高いため、好ましくない。一方、電荷輸送材料の第一酸化電位Eが2.1Vを超えると、発光材料の酸化に対する耐久性低下を招き、十分な輝度や寿命が得られない危険性が高いため、好ましくない。
【0155】
本発明に記載の電荷輸送材料の第一還元電位Eは、通常−3.1V以上、好ましくは、−2.9V以上、より好ましくは−2.8V以上、更に好ましくは−2.7V以上、最も好ましくは−2.1V以上で、通常−0.9V以下、好ましくは、−1.1V以下、より好ましくは−1.3V以下、更に好ましくは−1.5V以下、最も好ましくは−1.7V以下である。
電荷輸送材料の第一還元電位Eが−3.1V未満であると、有機電界発光素子に用いた場合に、正負電荷バランスが大きく崩れてしまったり、あるいは電荷輸送材料の還元に対する耐久性低下を招き、十分な輝度や寿命が得られない危険性が高いため、好ましくない。一方、電荷輸送材料の第一還元電位Eが−0.9Vを超えると、電荷輸送材料の第一酸化電位Eを極めて高い値に設定する必要があるため、有機電界発光素子に用いた場合に、正負電荷バランスが大きく崩れてしまったり、電荷輸送材料の酸化に対する耐久性低下を招き、十分な輝度や寿命が得られない危険性が高いため、好ましくない。
【0156】
〈発光材料の第一酸化電位E及び第一還元電位Eと電荷輸送材料の第一酸化電位E及び第一還元電位E
有機電界発光素子において、発光層と呼ぶ層にはドーパントと呼ばれる発光材料と、ホストと呼ばれる電荷輸送材料とが、主として混合されている。このとき、主要な発光機構としては、以下に示す経路が有力視されている。
即ち、正孔は、電荷輸送材料のHOMO(=最高被占軌道)を伝搬して、発光材料のHOMOへ入り、電子は、電荷輸送材料のLUMO(=最低空軌道)を伝搬して、発光材料のLUMOへ入ることによって、発光材料上での電荷の再結合が起こり、励起状態の発光材料が生成する。励起状態の発光材料が基底状態の発光材料へ遷移する際に、そのエネルギー差を電磁波(光)として放出する。
ここで、HOMO準位は、各材料の第一酸化電位に相当し、LUMO準位は、各材料の第一還元電位に相当する。
【0157】
従って、通常、発光材料は、電気的に中性の状態では、電荷輸送材料よりも電子を奪われやすく(=酸化されやすく)、かつ電子を受け入れやすい(=還元されやすい)のが好ましいとされてきた。即ち、通常の場合、発光材料の第一酸化電位E、発光材料の第一還元電位E、電荷輸送材料の第一酸化電位E、及び電荷輸送材料の第一還元電位Eの関係が、
<E<E<E
であった。
【0158】
しかるに、本発明においては、発光材料の第一酸化電位E、発光材料の第一還元電位E、電荷輸送材料の第一酸化電位E、及び電荷輸送材料の第一還元電位Eの関係が、
+0.1≦E<E≦E−0.1
或いは
+0.1≦E<E≦E−0.1
となるように、発光材料と電荷輸送材料とを選択する。
【0159】
(1) E+0.1≦E<E≦E−0.1の場合
電荷輸送材料を経由して、電子が正孔よりも先に、電気的に中性状態の発光材料に到達し、発光材料のLUMOにトラップされ、その後、生成したアニオン状態の発光材料において最もエネルギー準位の高い結合性軌道(中性状態の発光材料におけるHOMOに相当)へ正孔が注入されるパターンが想定される。
【0160】
即ち、発光材料の第一還元電位Eが、電荷輸送材料の第一還元電位Eよりも必要十分なだけ大きい(即ち、発光材料の方が電子を受け取りやすく、しかし、放出しにくい)ことが、まず重要であり、さらに、発光材料の第一酸化電位Eが、電荷輸送材料の第一酸化電位Eよりも適度に大きい(即ち、電荷輸送材料の方が正孔を受け取りやすく、運びやすい)ことも重要である。
【0161】
上記を踏まえ、EとEの差の絶対値|E−E|は、0.1V以上であるのが好ましく、より好ましくは0.15V以上、最も好ましくは0.2V以上である。また、|E−E|は、1.5V以下であるのが好ましく、より好ましくは1.0V以下、最も好ましくは0.5V以下である。|E−E|が下限を下回ると、電子が電気的に中性状態の発光材料にしっかりとトラップされないため、発光材料上での電荷の再結合確率が低下し、ひいては有機電界発光素子の発光効率低下を招くため、好ましくない。また、|E−E|が上限を超えると、電圧ロスが大きくなり、素子の駆動電圧が著しく増大してしまうため、好ましくない。
【0162】
また、EとEの差の絶対値|E−E|は、1.0V以上であるのが好ましく、より好ましくは1.5V以上であり、最も好ましくは2.0V以上である。また、|E−E|は、4.5V以下であるのが好ましく、より好ましくは3.5V以下であり、最も好ましくは3.0V以下である。|E−E|が下限を下回ると発光効率が低下したり、電圧ロスが大きくなり、駆動電圧が著しく増大してしまう恐れがあるため、好ましくない。また、|E−E|が上限を超えると、素子の駆動電圧が著しく増大してしまうため、好ましくない。
【0163】
また、EとEの差の絶対値|E−E|は、0.1V以上であるのが好ましく、より好ましくは0.15V以上であり、最も好ましくは0.2V以上である。また、|E−E|は、1.5V以下であるのが好ましく、より好ましくは1.0V以下であり、最も好ましくは0.5V以下である。|E−E|が下限を下回ると、正孔が、電気的に中性状態の電荷輸送材料のHOMOだけでなく、電気的に中性状態の発光材料のHOMOにも容易に注入されうるため、電荷の再結合確率が低下し、ひいては有機電界発光素子の発光効率低下を招くため、好ましくない。また、|E−E|が上限を超えると、発光材料上での電荷の再結合に著しく支障をきたし、素子の発光効率が低下するため、好ましくない。
【0164】
尚、EとEの差の絶対値|E−E|は、1.5V以上であるのが好ましく、より好ましくは2.5V以上であり、最も好ましくは、3.0V以上である。また、|E−E|は、5.5V以下であるのが好ましく、より好ましくは4.5V以下であり、最も好ましくは、4.0V以下である。|E−E|が下限を下回ると、可視光領域で効率よく発光する素子を作成できなくなる恐れがあり好ましくない。|E−E|が上限を超えると、素子の駆動電圧が著しく増大してしまうため、好ましくない。
【0165】
(2) E+0.1≦E<E≦E−0.1の場合
電荷輸送材料を経由して、正孔が電子よりも先に、電気的に中性状態の発光材料に到達し、発光材料のHOMOにトラップされ、その後、生成したカチオン状態の発光材料において最もエネルギー準位の低い反結合性軌道(中性状態の発光材料におけるLUMOに相当)へ正孔が注入されるパターンが想定される。
【0166】
即ち、発光材料の第一酸化電位Eが、電荷輸送材料の第一酸化電位Eよりも必要十分なだけ小さい(即ち、発光材料の方が正孔を受け取りやすく、しかし、放出しにくい)ことが、まず重要であり、さらに、発光材料の第一還元電位Eが、電荷輸送材料の第一還元電位Eよりも適度に小さい(即ち、電荷輸送材料の方が電子を受け取りやすく、運びやすい)ことも重要である。
【0167】
上記を踏まえ、EとEの差の絶対値|E−E|は、0.1V以上であるのが好ましく、より好ましくは0.15V以上であり、最も好ましくは、0.2V以上である。また、|E−E|は、1.5V以下であるのが好ましく、より好ましくは1.2V以下であり、最も好ましくは0.9V以下である。|E−E|が下限を下回ると、正孔が電気的に中性状態の発光材料にしっかりとトラップされないため、発光材料上での電荷の再結合確率が低下し、ひいては有機電界発光素子の発光効率低下を招くため、好ましくない。また、|E−E|が上限を超えると、電圧ロスが大きくなり、素子の駆動電圧が著しく増大してしまうため、好ましくない。
【0168】
とEの差の絶対値|E−E|は、1.0V以上であるのが好ましく、より好ましくは1.5以上であり、最も好ましくは2.0V以上である。また、|E−E|は、4.5V以下であるのが好ましく、より好ましくは3.5V以下であり、最も好ましくは3.0以下である。|E−E|が下限を下回ると、発光効率が低下したり、電圧ロスが大きくなり、素子の駆動電圧が著しく増大する恐れがあり、好ましくない。また、|E−E|が上限を超えると、素子の駆動電圧が著しく増大してしまうため、好ましくない。
【0169】
とEの差の絶対値|E−E|は、0.10V以上であるのが好ましく、より好ましくは0.15V以上であり、最も好ましくは、0.20V以上である。また、|E−E|は、1.5V以下であるのが好ましく、より好ましくは1.0V以下であり、最も好ましくは、0.5V以下である。|E−E|が下限を下回ると、電子が、電気的に中性状態の電荷輸送材料だけでなく、電気的に中性状態の発光材料にも容易に注入されうるため、電荷の再結合確率が低下し、ひいては有機電界発光素子の発光効率低下を招くため、好ましくない。また、|E−E|が上限を超えると、発光材料上での電荷の再結合に著しく支障をきたし、素子の発光効率が低下するため、好ましくない。
【0170】
尚、EとEの差の絶対値|E−E|は1.5V以上であるのが好ましく、より好ましくは2.5V以上であり、最も好ましくは、3.0V以上である。また、|E−E|は、5.5V以下であるのが好ましく、より好ましくは4.5V以下であり、最も好ましくは4.0V以下である。|E−E|が下限を下回ると、可視光領域で効率よく発光する素子を作成できなくなる恐れがあり好ましくない。また、|E−E|が上限を超えると、素子の駆動電圧が著しく増大する恐れがあり、好ましくない。
【0171】
(発光材料、電荷輸送材料が有機電界発光素子用組成物に2種以上含まれている場合の電位の比較)
【0172】
本発明の有機電界発光素子用組成物中に、電荷輸送材料が2種以上含まれる場合:
+0.1≦E<E≦E−0.1のとき、電荷輸送材料の第一酸化電位Eは、当該電位が最も小さい(即ち、最も酸化されやすい)電荷輸送材料の第一酸化電位のことを指し、電荷輸送材料の第一還元電位Eは、当該電位が最も大きい(即ち、最も還元されやすい)電荷輸送材料の第一還元電位のことを指す。
+0.1≦E<E≦E−0.1のとき、電荷輸送材料の第一酸化電位Eは、当該電位が最も小さい(即ち、最も酸化されやすい)電荷輸送材料の第一酸化電位のことを指し、電荷輸送材料の第一還元電位Eは、当該電位が最も大きい(即ち、最も還元されやすい)電荷輸送材料の第一還元電位のことを指す。
【0173】
本発明の有機電界発光素子用組成物中に、発光材料が2種以上含まれる場合:
+0.1≦E<E≦E−0.1のとき、発光材料の第一酸化電位Eは、当該電位が最も小さい(即ち、最も酸化されやすい)発光材料の第一酸化電位のことを指し、発光材料の第一還元電位Eは、当該電位が最も大きい(即ち、最も還元されやすい)発光材料の第一還元電位のことを指す。
+0.1≦E<E≦E−0.1のとき、発光材料の第一酸化電位Eは、当該電位が最も小さい(即ち、最も酸化されやすい)発光材料の第一酸化電位のことを指し、発光材料の第一還元電位Eは、当該電位が最も大きい(即ち、最も還元されやすい)発光材料の第一還元電位のことを指す。
【0174】
〈溶剤〉
本発明の有機電界発光素子用組成物に含まれる溶剤としては、溶質が良好に溶解する溶剤であれば特に限定されないが、有機電界発光素子用材料は一般的に芳香環を有するものが多いため、例えば、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、シクロヘキサノン、シクロオクタノン等の脂環を有するケトン、シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環を有するアルコール等が利用できる。
【0175】
溶質分子内に適当な置換基、例えばエステル基、エーテル基等を有する場合においては、前述の溶剤以外にも、例えば、メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン、ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル等も使用可能である。
【0176】
湿式製膜時における組成物からの溶剤蒸発による、製膜安定性の低下を低減するためには、有機電界発光素子用組成物の溶剤として、沸点が100℃以上、好ましくは沸点が150℃以上、より好ましくは沸点が200℃以上の溶剤を用いることが効果的である。また、より均一な膜を得るためには、製膜直後の液膜から溶剤が適当な速度で蒸発することが必要で、このためには通常沸点80℃以上、好ましくは沸点100℃以上、より好ましくは沸点120℃以上で、通常沸点270℃未満、好ましくは沸点250℃未満、より好ましくは沸点230℃未満の溶剤を用いる。
【0177】
また一般に、有機電界発光素子は、陰極等の水分により著しく劣化する材料が多く使用されているため、組成物中の水分が存在は、乾燥後の膜中に水分が残留し、素子の特性を低下させる可能性が考えられ好ましくない。溶液中の水分量を低減する方法としては、例えば、窒素ガスシール、乾燥剤の使用、溶剤を予め脱水する、水の溶解度が低い溶剤を使用する等が挙げられる。なかでも、水の溶解度が低い溶剤を使用する場合は、湿式製膜工程中に、溶液膜が大気中の水分を吸収して白化する現象を防ぐことができるため好ましい。この様な観点からは、本実施の形態が適用される有機電界発光素子用組成物は、例えば、25℃における水の溶解度が1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下である溶剤を、組成物中10重量%以上含有することが好ましい。
【0178】
上述の条件、即ち溶質の溶解性、蒸発速度、水の溶解度の条件を満足する溶剤を単独で用いても良いが、すべての条件を満たす溶剤が選定できない場合は、2種類以上の溶剤を混合して用いることもできる。
【0179】
〈その他の成分〉
本発明の有機電界発光素子用組成物中には、前述した溶剤以外にも、必要に応じて、各種の他の溶剤を含んでいても良い。このような他の溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
また、レベリング剤や消泡剤等の各種添加剤を含んでいても良い。
【0180】
また、2層以上の層を湿式製膜法により積層する際に、これらの層が相溶することを防ぐため、製膜後に硬化させて不溶化させる目的で光硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂を含有させておくこともできる。但し、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等の樹脂としては、当該樹脂の第一酸化電位Eと第一還元電位Eに対して、
+0.1≦E<E≦E−0.1であるときは、E<EかつE<Eとなる樹脂、
+0.1≦E<E≦E−0.1であるときは、E<EかつE<Eとなる樹脂、
を通常使用する。
【0181】
〈有機電界発光素子用組成物中の材料濃度と配合比〉
有機電界発光素子用組成物中の発光材料、電荷輸送材料及び必要に応じて添加可能な成分(レベリング剤など)など、固形分濃度は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、最も好ましくは1重量%以上であり、通常80重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、最も好ましくは20重量%以下である。この濃度は0.01重量%未満であると、薄膜を形成する場合、厚膜を形成するのが困難となり、80重量%を超えると、薄膜を形成するのが困難となる。
【0182】
また、本発明の有機電界発光素子用組成物において、発光材料/電荷輸送材料の重量混合比は、通常、0.1/99.9以上であり、より好ましくは0.5/99.5以上であり、更に好ましくは1/99以上であり、最も好ましくは2/98以上で、通常、50/50以下であり、より好ましくは40/60以下であり、更に好ましくは30/70以下であり、最も好ましくは20/80以下である。この比が0.1/99.9未満であったり、50/50を越えてしまうと、著しく発光効率が低下する。
【0183】
〈有機電界発光素子用組成物の調製方法〉
本発明の有機電界発光素子用組成物は、発光材料、電荷輸送材料等の溶質、及び必要に応じてレベリング剤や消泡剤等の各種添加剤を、適当な溶剤に溶解させることにより調製される。溶解工程に要する時間を短縮するため、及び組成物中の溶質濃度を均一に保つため、通常液を撹拌しながら溶質を溶解させる。溶解工程は常温で行っても良いが、溶解速度が遅い場合は加熱して溶解させることもできる。溶解工程終了後、必要に応じて、フィルタリング等の濾過工程を経由しても良い。
【0184】
〈有機電界発光素子用組成物の性状、物性等〉
(水分濃度)
有機電界発光素子は、湿式製膜法で層形成する場合、組成物に水分が存在した場合、形成された膜に水分が混入して膜の均一性が損なわれるため、溶液中の水分含有量はできるだけ少ない方が好ましい。また一般に、有機電界発光素子は、陰極等の水分により著しく劣化する材料が多く使用されているため、組成物中に水分が存在した場合、乾燥後の膜中に水分が残留し、素子の特性を低下させる可能性が考えられ好ましくない。
具体的には、本発明の有機電界発光素子用組成物中に含まれる水分量は、通常1重量%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下である。
組成物中の水分濃度は、日本工業規格「化学製品の水分測定法」(JIS K0068:2001)に記載の方法が好ましく、例えば、カールフィッシャー試薬法(JIS K0211−1348)等により分析することができる。
【0185】
(一級アミン及び二級アミン含有化合物濃度)
一級アミン及び二級アミン含有化合物は、三級アミン化合物よりも電荷輸送能が低く、電荷のトラップになり易く、プロトンの脱離をはじめとする分解反応を起こし易いことから、本発明の有機電界発光素子用組成物は、一級アミン及び二級アミン含有化合物濃度が低いことが好ましい。
具体的には、一級アミノ基(−NH)及び二級アミノ基(>NH)に由来する窒素原子の濃度が、溶剤以外の材料の総重量に対して100ppm(μg/g)以下であることが好ましく、10ppm(μg/g)以下であることがさらに好ましい。
【0186】
尚、有機電界発光素子用組成物中の一級アミン含有化合物とは、窒素原子を1又は2以上含む化合物であって、該窒素原子の少なくとも1つが、2つの水素原子及び1つの水素以外の原子と結合している化合物である。即ち、一級アミン含有化合物はRNH(Rは水素原子以外の任意の基を表す。)で表される化合物である。
二級アミン含有化合物とは、窒素原子を1又は2以上含む化合物であって、該窒素原子の少なくとも1つが、1つの水素原子及び2つの水素以外の原子と結合している化合物である。即ち、二級アミン含有化合物はRR’NH(R、R’は互いに独立に水素原子以外の任意の基を表し、R、R’は互いに結合して環を形成しても良い。)で表される化合物である。
【0187】
一級アミン及び二級アミン含有化合物の同定方法としては、核磁気共鳴装置(NMR(HNMR,13CNMR))、フーリエ変換赤外分光高度計(FT−IR)、質量分析(MS、LC/MS,GC/MS,MS/MS)が挙げられ、必要に応じて、ガスクロマトグラフ(GC)、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、高速アミノ酸分析計(AAA)、キャピラリー電気泳動測定(CE)、サイズ排除クロマトグラフ(SEC)、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、交差分別クロマトグラフ(CFC)、紫外可視近赤外分光光度計(UV.VIS,NIR)、電子スピン共鳴装置(ESR)等を組み合わせて用いても良い。
【0188】
一級アミン及び二級アミン含有化合物の分離方法としては、「分離精製技術ハンドブック」(1993年、(財)日本化学会編)、「化学変換法による微量成分及び難精製物質の高度分離」(1988年、(株)アイ ピー シー発行)、あるいは「実験化学講座(第4版)1」(1990年、(財)日本化学会編)の「分離と精製」の項に記載の方法をはじめとし、公知の技術を利用可能である。
【0189】
具体的には、各種クロマトグラフィー(形状分類:カラム、ペーパー、薄層、キャピラリー。移動相分類:ガス、液体、ミセル、超臨界流体。分離機構:吸着、分配、イオン交換、分子ふるい、キレート、ゲル濾過、排除、アフィニティー)、抽出、吸着、吸蔵、融解、晶析、蒸留、蒸発、昇華、イオン交換、透析、濾過、限外濾過、逆浸透、圧浸透、帯域溶解、電気泳動、遠心分離、浮上分離、沈降分離、磁気分離などが挙げられる。
一級アミン及び二級アミン含有化合物の検出・測定方法としては、
・濃硫酸とともに強熱・分解してこれらを硫酸アンモニウムに変え、得られた分解液を強アリカリ性として、水蒸気蒸留法によってアンモニアを蒸留し、既知濃度の硫酸又はホウ酸液に捕集する方法、
・アルカリ性ペルオキソニ硫酸カリウムを用いて酸化分解して硝酸イオンとした後、この溶液のpHを2〜3に調整し、硝酸イオンによる波長220nmでの吸光度を測定して窒素濃度を求める方法(紫外線吸光光度法)、
・特開平4−315048号公報に記載のRu(II)のビピリジン錯体を検出用試薬として用いて、電解化学発光反応を利用して検出する方法、
・特開平10−115606号公報に記載の表面電離検出器(SID)によって検出する方法、
等が挙げられる。
【0190】
(均一性)
本発明の有機電界発光素子用組成物は、湿式製膜プロセスでの安定性、例えば、インクジェット製膜法におけるノズルからの吐出安定性を高めるためには、常温で均一な液状であることが好ましい。常温で均一な液状とは、組成物が均一相からなる液体であり、かつ組成物中に0.1μm以上の粒子成分を含有しないことをいう。
【0191】
(物性)
本発明の有機電界発光素子用組成物の粘度については、極端に低粘度の場合は、例えば製膜工程における過度の液膜流動による塗面不均一、インクジェット製膜におけるノズル吐出不良等が起こりやすくなり、極端に高粘度の場合は、インクジェット製膜におけるノズル目詰まり等が起こりやすくなる。このため、本発明の組成物の25℃における粘度は、通常2mPa・s以上、好ましくは3mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上であり、通常1000mPa・s以下、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下である。
【0192】
また、本発明の有機電界発光素子用組成物の表面張力が高い場合は、基板に対する製膜用液の濡れ性が低下する、液膜のレベリング性が悪く、乾燥時の製膜面乱れが起こりやすくなる等の問題が発生するため、本発明組成物の20℃における表面張力は、通常、50mN/m未満、好ましくは40mN/m未満である。
【0193】
更に、本発明の有機電界発光素子用組成物の蒸気圧が高い場合は、溶剤の蒸発による溶質濃度の変化等の問題が起こりやすくなる。このため、本発明の組成物の25℃における蒸気圧は、通常、50mmHg以下、好ましくは10mmHg以下、より好ましくは1mmHg以下である。
【0194】
〈有機電界発光素子用組成物の保存方法〉
本発明の有機電界発光素子用組成物は、紫外線の透過を防ぐことのできる容器、例えば、褐色ガラス瓶等に充填し、密栓して保管することが好ましい。保管温度は、通常−30℃以上、好ましくは0℃以上で、通常35℃以下、好ましくは25℃以下である。
【0195】
[有機電界発光素子用薄膜]
本発明の有機電界発光素子用薄膜は、通常、有機電界発光素子の有機発光層に用いられる。
【0196】
本発明の有機電界発光素子用薄膜の屈折率は波長500nm〜600nmの光に対して1.78以下であることが好ましい。
この膜の屈折率を測定方法としては、分光エリプソメトリー(偏光解析法)やプリズムカップリング方式等が用いられる。
以下に本発明の屈折率測定に用いた分光エリプソメトリーについて詳細に述べる。
【0197】
分光エリプソメトリーは試料表面から反射される光の偏光状態の変化を測定するもので、測定により得られたΨ及びΔの実測値を再現するよう、光学定数を示す適切なモデル関数のパラメーターを最適化することにより、光学定数を決定するものである。
光学定数は一般的に波長に対してなめらかな関数で、実部と虚部にkramers-kronigの関係という因果関係がある。このため、多くの物質の光学定数は関数の形でモデル化することが可能である。
分光エリプソの解析では、代表的なモデル関数として以下のもが使用される。
・Cauchyモデル 透明体、透明膜など
・Lorentzモデル 金属膜、透明導電膜など
・Parameterised Semiconductorモデル 半導体材料、透明膜など
【0198】
分光エリプソメトリーによれば、バルク及び薄膜の近紫外〜可視〜近赤外域の波長(300〜1700nm)で光学定数(屈折率n、消衰係数k)を決定したり、単層膜や多層膜の膜厚(d)を決定することが可能である(数nm〜数μm)。
分光エリプソの測定におけるΨとΔは、比を測定しているので高い精度と再現性が良いことが特徴である。
【0199】
このような好ましい範囲の屈折率を有する有機電界発光素子用薄膜を実現する製膜方法としては、湿式製膜法が挙げられる。
【0200】
本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて有機電界発光素子用薄膜(以下「有機層」と称す場合がある。)を形成する際の製膜法としては、組成物中に含有する材料や、下地となる基板の性質によって、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等、湿式製膜法が好ましい。このような方法で製膜された膜に含まれる水分や残留溶剤を低減させるために、膜を加熱乾燥することが好ましい。この加熱乾燥には、ホットプレート、オーブン、電磁波加熱等公知の加熱手段が用いられる。加熱処理による効果を十分に得るためには、60℃以上で処理することが好ましく、残留水分量の低減のために100℃以上で処理することがより好ましい。加熱時間は通常1分〜8時間程度である。
【0201】
ITO等の陽極上に有機層を湿式製膜法により形成する場合、直前に特開2002−270369号公報に開示される陽極を特定のハロゲン化合物、例えば下記に示す4−トリフルオロメチル安息香酸塩化物で処理する方法により、陽極からの正孔注入を容易にすることができる。即ち、下記のような電子吸引基を有する酸塩化物でITOを処理すると、電子吸引基を有する化合物で陽極表面が修飾されることにより、電気二重層が陽極表面に形成され、この電気二重層による電場により、陽極の仕事関数を増加させ、陽極からの正孔注入が容易になる。
【化28】

【0202】
尚、上述の表面処理以外にも、例えば膜のレベリング性向上、ハジキの低減等の塗布性を向上させるために、UV/オゾン処理、酸素プラズマ処理、水素プラズマ処理、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理等の表面処理を行っても良い。また、これらの表面処理は、各種併用しても良い。
【0203】
このようにして形成された有機層に水分が残留していると、前述のように、素子の特性を低下させる可能性が考えられ好ましくない。具体的には、形成された有機層に含まれる水分量は、重量比で1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。また、有機層に組成物由来等の溶剤が残留していると、有機電界発光素子の通電時に発生する熱や、素子の使用環境における高温等により、有機層を構成する材料のマイグレーションが発生しやすい等の問題を生ずる可能性があり好ましくない。具体的には、有機層に含まれる残留溶剤量は、重量比で1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。
有機層中の水分及び残留溶剤濃度は、例えば、昇温熱脱離−質量分析法(TPD−MS)等により分析することができる。
【0204】
[有機電界発光素子用薄膜転写用部材]
転写用部材とは、レーザー光を用いたサーマルイメージングプロセス(LITI法)により画像パターンを受像要素に転写するために画像付与要素として使用されるものであり、印刷、組み版、写真などの分野で広く利用されている方法である。
【0205】
図1は、本発明の有機電界発光素子用薄膜転写用部材の典型的な構成を示したものである。図示されるように、転写用部材11は、基材12と、その上に順次形成された、光熱変換層13、中間層14、そして光熱変換層13の作用により加熱されて溶融し、受像要素(図示せず)にパターン状に転写される転写層15とを備えている。尚、本発明の有機電界発光素子用薄膜転写用部材は、必要に応じて、任意の追加の層を有していても良い。
【0206】
本発明の有機電界発光素子用薄膜転写用部材において、基材12は、それが有機電界発光素子用薄膜転写用部材に求められている要件を満たしうる限りにおいて、天然もしくは合成の各種材料から形成することができる。この基材に必要な要件は、例えば、画像成分の転写のためにレーザー光を照射して加熱が行われるので、レーザー光の透過性、耐熱性など、そして、受像要素に貼り合わせて使用されかつ使用後には剥離されるので、適度の柔軟性、軽さ、取り扱い性、機械的強度などである。適当な基材としては、透明性高分子が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル、ポリアクリル、ポリエポキシ、ポリエチレン、ポリスチレンなどが挙げられるが、その中でもポリエチレンテレフタレートを使用することが望ましい。かかる基材の厚さは、所望とする有機電界発光素子用薄膜転写用部材の詳細などに応じて任意に変更可能であり、通常、0.01〜1mmの範囲である。
【0207】
基材12によって支承される光熱変換層13は、レーザー光の照射を受けてその光エネルギーを熱エネルギーに変換し、中間層14を介して隣接して存在する転写層15中の画像成分を溶融させ、受像要素の表面に転写及び固着させるためのものである。従って、光熱変換層13は、アルミニウム、その酸化物及び/又はその硫化物よりなる金属層(膜)、カーボンブラック、黒鉛又は赤外線染料など等の光吸収性材料そのものからなるか、もしくはそのような光吸収性材料を分散して含有する層からなることが好ましい。さらに、この光熱変換層13は、硬化目的のため、光重合性の成分を含有しているのが好ましい。適当な光熱変換層13は、例えば、前記光吸収層として、前記金属層(膜)を用いる場合には、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法又はスパッタリングを利用して100〜5000Åの厚さに形成されてなるものである。
【0208】
また、光熱変換層13としては、カーボンブラック、光重合性モノマー又はオリゴマー、光重合開始剤等をバインダ樹脂中に分散させた層も好ましく例示される。このようなバインダ樹脂分散型の光熱変換層13は、通常、所定の組成を有する樹脂組成物を例えばスピンコート法、グラビア印刷法、ダイコーティング法等の常用の塗布方法に従って基材12の表面に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。このようなバインダ樹脂分散型の光熱変換層13の厚さは、所望とする有機電界発光素子用薄膜転写用部材の詳細や効果などに応じて広く変更することができるが、通常、0.001〜10μmの範囲である。
【0209】
光熱変換層13と転写層15との間に介在せしめられる中間層14は、特に、光熱変換層13の光熱変換作用を均一化するためのものである。通常、上記のような要件を満たすことのできる樹脂材料から形成することができる。このような中間層14は、光熱変換層13と同様に、通常、所定の組成を有する樹脂組成物を例えばスピンコート法、グラビア印刷法、ダイコーティング法等の常用の塗布方法に従って光熱変換層13の表面に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。中間層14の厚さは、所望とする効果などに応じて広く変更することができるが、通常、0.05〜10μmの範囲である。
【0210】
尚、用途に応じて有機電界発光素子用薄膜転写用部材の構造を変更して使用することができる。例えば、反射によって転写層15の特性が低下することを防止するために反射防止コーティング処理ができるし、有機電界発光素子用薄膜転写用部材の感度を向上させるために前期中間層14の代わりにガス生成層をさらに設けることもできる。
【0211】
前記ガス生成層は、光又は熱を吸収すると、分解反応を起こして窒素ガス又は水素ガスを放出することによって転写エネルギーを提供する役割をする。このようなガス生成層としては、四硝酸ペンタエリトリトール(PETN)及びトリニトロトルエン(TNT)よりなる群から選択された少なくとも一つの物質などが挙げられる。
【0212】
本発明の有機電界発光素子用薄膜転写用部材11の最上層に配置される転写層15は、上記したように、光熱変換層13の作用により加熱されて溶融し、あるいはガス生成層が気化する作用により剥離し、受像要素にパターン状に転写される電界発光性薄膜であり、本発明の有機電界発光素子用薄膜に相当し、前述の方法により、製膜することができる。
【0213】
[有機電界発光素子]
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、陽極、陰極及びこれら両極間に設けられた有機発光層を有し、この有機発光層が本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式製膜法により形成された層、又は、前記本発明の有機電界発光素子用薄膜転写用部材を用いて形成された層である有機電界発光素子である。
図2は本発明に用いられる一般的な有機電界発光素子の構造例を模式的に示す断面図であり、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は有機発光層、5は電子注入層、6は陰極を各々表す。
【0214】
〈基板〉
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0215】
〈陽極〉
基板1上には陽極2が設けられるが、陽極2は有機発光層側の層(正孔注入層3又は有機発光層4など)への正孔注入の役割を果たすものである。この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、あるいは、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などの場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散し、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。陽極2は異なる物質で積層して形成することも可能である。
【0216】
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常、60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましく、この場合、厚みは、通常5nm以上、好ましくは10nm以上程度で、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明で良い場合、陽極2は基板1と同一でも良い。また、さらには上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
【0217】
陽極に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理することは好ましい。
【0218】
〈正孔注入層〉
本発明の有機電界発光素子は、有機発光層と陽極の間に正孔注入層を有することが好ましい。
正孔注入層3は陽極2から有機発光層4へ正孔を輸送する層であるため、正孔注入層3には正孔輸送性化合物を含むことが好ましい。
【0219】
電気的に中性の化合物から電子が一つ除かれたカチオンラジカルが、近傍の電気的に中性な化合物から一電子受容することによって、正孔が移動する。素子非通電時の正孔注入層にカチオンラジカル化合物が含まれない場合は、通電時に、正孔輸送性化合物が陽極に電子を与えることにより正孔輸送性化合物のカチオンラジカルが生成し、このカチオンラジカルと電気的に中性な正孔輸送性化合物との間で電子の授受が行われることにより正孔を輸送する。
【0220】
正孔注入層3にカチオンラジカル化合物が含まれると、陽極2による酸化によって生成する以上の濃度で正孔輸送に必要なカチオンラジカルが存在することになり、正孔輸送性能が向上するため、正孔注入層にカチオンラジカル化合物を含むことが好ましい。カチオンラジカル化合物の近傍に電気的に中性な正孔輸送性化合物が存在すると、電子の受け渡しがスムーズに行われるため、正孔注入層にカチオンラジカル化合物と正孔輸送性化合物とを含むことがさらに好ましい。
【0221】
ここで、カチオンラジカル化合物とは、正孔輸送性化合物から一電子取り除いた化学種であるカチオンラジカルと、対アニオンからなるイオン化合物であり、移動しやすい正孔(フリーキャリア)を既に有している。
【0222】
また、正孔輸送性化合物に電子受容性化合物を混合することによって、正孔輸送性化合物から電子受容性化合物への一電子移動が起こり、上述のカチオンラジカル化合物が生成する。このため、正孔注入層3に正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを含むことが好ましい。
【0223】
以上の好ましい材料についてまとめると、正孔注入層3に正孔輸送性化合物を含むことが好ましく、正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを含むことがさらに好ましい。また、正孔注入層3にカチオンラジカル化合物を含むことが好ましく、カチオンラジカル化合物と正孔輸送性化合物とを含むことがさらに好ましい。
さらに、必要に応じて、正孔注入層3には電荷のトラップになりにくいバインダー樹脂や、塗布性改良剤を含んでいても良い。
但し、正孔注入層3として、電子受容性化合物のみを湿式製膜法によって陽極2上に製膜し、その上から直接、本発明の有機電界発光素子組成物を塗布、積層することも可能である。この場合、本発明の有機電界発光素子組成物の一部が電子受容性化合物と相互作用することによって、正孔注入性に優れた層が形成される。
【0224】
(正孔輸送性化合物)
正孔輸送性化合物は、陽極2と有機発光層4との間のイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましく、具体的には、4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。
例としては、芳香族アミン化合物、フタロシアニン誘導体又はポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましい。
芳香族アミン化合物の中でも、特に、芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型有機化合物)が更に好ましい。
【0225】
芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記一般式(6)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
【化29】

(一般式(6)中、Ar21,Ar22は各々独立して、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基、又は置換基を有していても良い芳香族複素環基を表す。Ar23〜Ar25は、各々独立して、置換基を有していても良い2価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していても良い2価の芳香族複素環基を表す。Yは、下記の連結基群Y1の中から選ばれる連結基を表す。また、Ar21〜Ar25のうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成しても良い。
【化30】

(上記各式中、Ar31〜Ar41は、各々独立して、置換基を有していても良い芳香族炭化水素環又は芳香族複素環由来の1価又は2価の基を表す。R31及びR32は、各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表す。))
【0226】
Ar21〜Ar25及びAr31〜Ar41としては、任意の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環由来の、1価又は2価の基が適用可能である。これらは各々同一であっても、互いに異なっていても良い。また、任意の置換基を有していても良い。
【0227】
芳香族炭化水素環としては、5又は6員環の単環又は2〜5縮合環が挙げられる。具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などが挙げられる。
【0228】
芳香族複素環としては、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環が挙げられる。具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などが挙げられる。
【0229】
また、Ar23〜Ar25、Ar31〜Ar35、Ar37〜Ar40としては、上に例示した1種類又は2種類以上の芳香族炭化水素環及び/又は芳香族複素環由来の2価の基を2つ以上連結して用いることもできる。
【0230】
Ar21〜Ar41の芳香族炭化水素環及び/又は芳香族複素環由来の基は、更に置換基を有していても良い。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。置換基の種類は特に制限されないが、例としては、下記の置換基群Wから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0231】
[置換基群W]
メチル基、エチル基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは8以下のアルキル基;ビニル基等の、炭素数が通常2以上、通常11以下、好ましくは5以下のアルケニル基;エチニル基等の、炭素数が通常2以上、通常11以下、好ましくは5以下のアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上、通常25以下、好ましくは14以下のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上、通常11以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数が通常2以上、通常20以下、好ましくは12以下のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の、炭素数が通常10以上、好ましくは12以上、通常30以下、好ましくは22以下のジアリールアミノ基;フェニルメチルアミノ基等の、炭素数が通常6以上、好ましくは7以上、通常25以下、好ましくは17以下のアリールアルキルアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常2以上、通常10以下、好ましくは7以下のアシル基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;トリフルオロメチル基等の、炭素数が通常1以上、通常8以下、好ましくは4以下のハロアルキル基;メチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上、通常25以下、好ましくは14以下のアリールチオ基;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上、通常33以下、好ましくは26以下のシリル基;トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上、通常33以下、好ましくは26以下のシロキシ基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上、通常30以下、好ましくは18以下の芳香族炭化水素環基;チエニル基、ピリジル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、通常28以下、好ましくは17以下の芳香族複素環基。
【0232】
Ar21、Ar22としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の1価の基が好ましく、フェニル基、ナフチル基が更に好ましい。
【0233】
また、Ar23〜Ar25としては、耐熱性、酸化還元電位を含めた正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環由来の2価の基が好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基が更に好ましい。
【0234】
31、R32としては、水素原子又は任意の置換基が適用可能である。これらは互いに同一であっても良く、異なっていても良い。置換基の種類は、特に制限されないが、適用可能な置換基を例示するならば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、ハロゲン原子が挙げられる。これらの具体例としては、先に置換基群Wにおいて例示した各基が挙げられる。
【0235】
一般式(6)で表わされる繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、WO2005/089024号公報に記載のものが挙げられ、その好適例も同様であるが、何らそれらに限定されるものではない。
【0236】
他の芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記一般式(7)及び/又は(8)で表わされる繰り返し単位を含む高分子化合物が挙げられる。
【化31】

(一般式(7)、(8)中、Ar45,Ar47及びAr48は各々独立して、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基、又は置換基を有していても良い芳香族複素環基を表す。Ar44及びAr46は各々独立して、置換基を有していても良い2価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していても良い2価の芳香族複素環基を表す。また、Ar45〜Ar48のうち、同一のN原子に結合する2つの基は互いに結合して環を形成しても良い。R41〜R43は各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表す。)
【0237】
Ar45,Ar47,Ar48及びAr44、Ar46の具体例、好ましい例、有していても良い置換基の例及び好ましい置換基の例は、それぞれ、Ar21,Ar22及びAr23〜Ar25と同様である。R41〜R43はとして好ましくは水素原子又は[置換基群W]に記載されている置換基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基である。
【0238】
一般式(7)及び/又は(8)で表わされる繰り返し単位を含む芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、WO2005/089024号公報に記載のものが挙げられ、その好適例も同様であるが、何らそれらに限定されるものではない。
【0239】
また、湿式製膜法により正孔注入層を形成する場合には、種々の溶剤に溶解し易い正孔輸送性化合物が好ましい。芳香族三級アミン化合物としては、例えば、下記一般式(9)で表わされるビナフチル系化合物(特開2004-014187)及び下記一般式(10)で表わされる非対称1,4−フェニレンジアミン化合物(特開2004-026732)が好ましい。また、従来、有機電界発光素子における正孔注入・輸送性の薄膜精製材料として利用されてきた化合物の中から、種々の溶剤に溶解し易い化合物を適宜選択しても良い。
【0240】
【化32】

(一般式(9)中、Ar51〜Ar54は各々独立に、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基、又は置換基を有していても良い芳香族複素環基を表す。Ar51〜Ar54のうち、同一のN原子に結合する2つの基は互いに結合して環を形成しても良い。X1及びX2は各々独立に、直接結合又は2価の連結基を表す。u及びvは、各々独立に、0以上、4以下の整数を表す。但し、u+v≧1である。また、上記一般式(9)中のナフタレン環は−X1NAr51Ar52及び−X2NAr53Ar54に加えて、任意の置換基を有していても良い。)
【0241】
【化33】

(一般式(10)中、Ar55、Ar56、Ar57は各々独立して、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、これらはいずれも合計炭素数が10以上である。同一のN原子に結合するAr56、Ar57は互いに結合して環を形成しても良い。)
【0242】
Ar51〜Ar57の具体例、好ましい例、有していても良い置換基の例及び好ましい置換基の例は、それぞれ、Ar21、Ar22と同様である。Ar51、Ar53は、4−(ジフェニルアミノ)フェニル基などのp−位にジアリールアミノ基が置換した芳香族炭化水素基であることが特に好ましい。
u、vは、u=1かつv=1であることが好ましい。
1及びX2は、直接結合又は芳香族炭化水素環由来の2価の連結基が好ましく、直接結合が最も好ましい。
【0243】
一般式(9)中のナフタレン環は、−X1NAr51Ar52及び−X2NAr53Ar54に加えて、任意の置換基を有していても良い。また、これらの置換基−X1NAr51Ar52及び−X2NAr53Ar54は、ナフタレン環のいずれの位置に置換していても良いが、中でも、一般式(9)におけるナフタレン環の、各々4−位、4’−位に置換したビナフチル系化合物がより好ましい。
【0244】
また、一般式(9)で表わされる化合物におけるビナフチレン構造は、2,2’−位に置換基を有することが好ましい。2,2’−位に結合する置換基としては、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアルコキシ基、置換基を有していても良いアルケニル基、置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基等が挙げられる。
【0245】
尚、一般式(9)で表わされる化合物において、ビナフチレン構造は2,2’−位以外に任意の置換基を有していても良く、該置換基としては、例えば、2,2’−位における置換基として前掲した各基等が挙げられる。一般式(9)で表わされる化合物は、2つのナフタレン環がねじれた配置にあるため、高い溶解性を示すと考えられるが、2−位及び2’−位に置換基を有することにより、2つのナフタレン環がさらにねじれた配置になるため、さらに溶解性が向上すると考えられる。
【0246】
一般式(10)で表される化合物は、C2以上の対称性を有さないため、溶剤に対する溶解性が高いと考えられる。同様の理由から、下記一般式(11)で表される非対称ジアミン化合物が、種々の溶剤に溶解し易いと考えられるため好ましい。
【0247】
【化34】

(一般式(11)中、Ar58〜Ar61は各々独立して、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。Ar62は、置換基を有していても良い2価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していても良い2価の芳香族複素環基を表す。同一のN原子に結合するAr58〜Ar61は互いに結合して環を形成しても良い。但し、Ar58はAr59〜Ar61のいずれとも異なる基である。)
【0248】
Ar58〜Ar61の具体例、好ましい例、有していても良い置換基の例及び好ましい置換基の例は、Ar21、Ar22と同様である。Ar62の具体例、好ましい例、有していても良い置換基の例及び好ましい置換基の例は、Ar23〜Ar25と同様である。
【0249】
一般式(9)、(10)、(11)で表わされる化合物の分子量は、通常5000未満、好ましくは2500未満であり、但し、通常200以上、好ましくは400以上である。
一般式(9)、(10)、(11)で表わされる化合物の具体例としては、特願2005−21983号に記載のものが挙げられ、その好適例も同様であるが、何らそれらに限定されるものではない。
【0250】
その他、正孔注入層の正孔輸送性化合物に適用可能な芳香族アミン化合物としては、有機電界発光素子における正孔注入・輸送性の層形成材料として利用されてきた、従来公知の化合物が挙げられる。例えば、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン等の3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン化合物(特開昭59−194393号公報);4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族アミン化合物(特開平5−234681号公報);トリフェニルベンゼンの誘導体でスターバースト構造を有する芳香族トリアミン化合物(米国特許第4,923,774号);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族ジアミン化合物(米国特許第4,764,625号);α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ジ(p−トリル)アミノフェニル)−p−キシレン(特開平3−269084号公報);分子全体として立体的に非対称なトリフェニルアミン誘導体(特開平4−129271号公報);ピレニル基に芳香族ジアミノ基が複数個置換した化合物(特開平4−175395号公報);エチレン基で3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン化合物(特開平4−264189号公報);スチリル構造を有する芳香族ジアミン(特開平4−290851号公報);チオフェン基で芳香族3級アミンユニットを連結した化合物(特開平4−304466号公報);スターバースト型芳香族トリアミン化合物(特開平4−308688号公報);ベンジルフェニル化合物(特開平4−364153号公報);フルオレン基で3級アミンを連結した化合物(特開平5−25473号公報);トリアミン化合物(特開平5−239455号公報);ビスジピリジルアミノビフェニル(特開平5−320634号公報);N,N,N−トリフェニルアミン誘導体(特開平6−1972号公報);フェノキサジン構造を有する芳香族ジアミン(特開平7−138562号公報);ジアミノフェニルフェナントリジン誘導体(特開平7−252474号公報);ヒドラゾン化合物(特開平2−311591号公報);シラザン化合物(米国特許第4,950,950号公報);シラナミン誘導体(特開平6−49079号公報);ホスファミン誘導体(特開平6−25659号公報);キナクリドン化合物等が挙げられる。これらの芳香族アミン化合物は、必要に応じて2種以上を混合して用いても良い。
【0251】
また、正孔注入層の正孔輸送性化合物に適用可能なフタロシアニン誘導体又はポルフィリン誘導体の好ましい具体例としては、ポルフィリン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリンコバルト(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン銅(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン亜鉛(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリンバナジウム(IV)オキシド、5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィリン、29H,31H−フタロシアニン銅(II)、フタロシアニン亜鉛(II)、フタロシアニンチタン、フタロシアニンオキシドマグネシウム、フタロシアニン鉛、フタロシアニン銅(II)、4,4’,4”,4'''−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン等が挙げられる。
【0252】
また、正孔注入層の正孔輸送性化合物として適用可能尚リゴチオフェン誘導体の好ましい具体例としては、α−ターチオフェンとその誘導体、α−セキシチオフェンとその誘導体、ナフタレン環を含有するオリゴチオフェン誘導体(特開6−256341)等が挙げられる。
【0253】
また、本発明の正孔輸送性化合物として適用可能なポリチオフェン誘導体の好ましい具体例としては、ポリ(3,4−エチテンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)等が挙げられる。
【0254】
尚、これらの正孔輸送性化合物の分子量は、高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合性化合物)の場合を除いて、通常9000以下、好ましくは5000以下、また、通常200以上、好ましくは400以上の範囲である。正孔輸送性化合物の分子量が高過ぎると合成及び精製が困難であり好ましくない一方で、分子量が低過ぎると耐熱性が低くなるおそれがありやはり好ましくない。
【0255】
正孔注入層の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、化合物のうち何れか1種を単独で含有していても良く、2種以上を含有していても良い。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種又は2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種又は2種以上とを併用するのが好ましい。
【0256】
(電子受容性化合物)
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
【0257】
例としては、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等の有機基の置換したオニウム塩、塩化鉄(III)(特開平11−251067)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物、テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365)等の芳香族ホウ素化合物、フラーレン誘導体、ヨウ素等が挙げられる。
【0258】
上記の化合物のうち、強い酸化力を有する点で有機基の置換したオニウム塩、高原子価の無機化合物が好ましく、種々の溶剤に可溶で湿式塗布に適用可能である点で有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物が好ましい。
【0259】
電子受容性化合物として好適な有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物の具体例としては、WO2005/089024号公報に記載のものが挙げられ、その好適例を同様であるが、何らそれらに限定されるものではない。
【0260】
(カチオンラジカル化合物)
カチオンラジカル化合物とは、正孔輸送性化合物から一電子取り除いた化学種であるカチオンラジカルと、対アニオンからなるイオン化合物である。但し、カチオンラジカルが正孔輸送性の高分子化合物由来である場合、カチオンラジカルは高分子化合物の繰り返し単位から一電子取り除いた構造となる。
【0261】
カチオンラジカルは、正孔輸送性化合物に前述した化合物から一電子取り除いた化学種であることが好ましく、正孔輸送性化合物としてさらに好ましい化合物から一電子取り除いた化学種であることが非晶質性、可視光の透過率、耐熱性、溶解性などの点からさらに好ましい。
【0262】
カチオンラジカル化合物は、前述の正孔輸送性化合物と電子受容性化合物を混合することにより生成させることができる。即ち、前述の正孔輸送性化合物と電子受容性化合物を混合することにより、正孔輸送性化合物から電子受容性化合物へと電子移動が起こり、正孔輸送性化合物のカチオンラジカルと対アニオンからなるカチオンイオン化合物が生成する。
【0263】
PEDOT/PSS(Adv.Mater.,2000年,12巻,481頁)やエメラルジン塩酸塩(J.Phys.Chem.,1990年,94巻,7716頁)等の高分子化合物由来のカチオンラジカル化合物は、酸化重合(脱水素重合)、即ち、モノマーを酸性溶液中で、ペルオキソ二硫酸塩等を用いて化学的に、又は、電気化学的に酸化することによっても生成する。この酸化重合(脱水素重合)の場合、モノマーが酸化されることにより、高分子化されるとともに、酸性溶液由来のアニオンを対アニオンとする、高分子の繰り返し単位から一電子取り除かれたカチオンラジカルが生成する。
【0264】
正孔注入層3は、湿式製膜法又は真空蒸着法により陽極2上に形成される。
陽極2として一般的に用いられるITO(インジウム・スズ酸化物)は、その表面粗さが10nm程度の粗さ(Ra)を有するのに加えて、局所的に突起を有することが多く、短絡欠陥を生じ易いという問題があった。陽極2の上に形成される正孔注入層3は湿式製膜法により形成することは、真空蒸着法より形成する場合と比較して、これら陽極表面の凹凸に起因する、素子の欠陥の発生を低減する利点を有する。
【0265】
湿式製膜法による層形成の場合は、前述した各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)の1種又は2種以上の所定量を、必要により電荷のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤を添加して、溶剤に溶解させて、塗布溶液を調製し、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、ダイコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット法等の湿式製膜法により陽極上に塗布し、乾燥して、正孔注入層3を形成させる。
【0266】
湿式製膜法による層形成のために用いられる溶剤としては、前述の各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)を溶解することが可能な溶剤であれば、その種類は特に限定されないが、正孔注入層に用いられる各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)を失活させる恐れのある、失活物質又は失活物質を発生させるものを含まないものが好ましい。
【0267】
これらの条件を満たす好ましい溶剤としては、例えば、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤が挙げられる。具体的には、エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等が挙げられる。エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。これらは何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いても良い。
【0268】
上述のエーテル系溶剤及びエステル系溶剤以外に使用可能な溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いても良い。また、これらの溶剤のうち1種又は2種以上を、上述のエーテル系溶剤及びエステル系溶剤のうち1種又は2種以上と組み合わせて用いても良い。特に、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤は、電子受容性化合物及びカチオンラジカル化合物を溶解する能力が低いため、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤と混合して用いることが好ましい。
【0269】
また、正孔注入層に用いられる各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)の1種又は2種以上を失活させる恐れのある、失活物質又は失活物質を発生させるものを含む溶剤として、ベンズアルデヒド等のアルデヒド系溶剤;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のα−位に水素原子を有するケトン系溶剤が挙げられるが、これらのアルデヒド系溶剤及びケトン系溶剤は、溶剤分子間で縮合反応したり、又は各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)と反応して不純物を生成したりする恐れがあるため、好ましくない。
【0270】
塗布溶液中における溶剤の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50%重量以上、また、通常99.999重量%以下、好ましくは99.99重量%以下、更に好ましくは99.9重量%以下の範囲である。尚、2種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにする。
【0271】
真空蒸着法による層形成の場合には、前述した各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上材料を用いる場合はそれぞれ独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極上に正孔注入層を形成させる。尚、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱し蒸発させて正孔注入層形成に用いることもできる。
【0272】
このようにして形成される良い正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
【0273】
〈有機発光層〉
正孔注入層3の上には有機発光層4が設けられる。有機発光層4は、前述の発光材料、電荷輸送材料及び溶剤を含有する本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて作製された層であり、電界を与えられた電極間において、陽極2から正孔注入層3を通じて注入された正孔と、陰極6から電子注入層5を通じて注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。尚有機発光層4は、本発明の性能を損なわない範囲で、他の材料、成分を含んでいても良い。尚、本発明の素子においては、有機発光層を該組成物を用いて、湿式製膜法により形成する工程により製造する方法が用いられることが好ましい。湿式製膜法については、前記本発明の有機電界発光素子用薄膜の説明に記載の通りである。
【0274】
一般に有機電界発光素子において、同じ材料を用いた場合、電極間の膜厚が薄い方が実効電界が大きくなる為、注入される電流が多くなるので、駆動電圧は低下する。その為、電極間の総膜厚は薄い方が、有機電界発光素子の駆動電圧は低下するが、あまりに薄いと、ITO等の電極に起因する突起により短絡が発生する為、ある程度の膜厚が必要となる。
【0275】
本発明においては、有機発光層以外に、正孔注入層及び電子注入層を有する場合、有機発光層4と正孔注入層3や電子注入層5等の他の有機層とを合わせた総膜厚は通常30nm以上、好ましくは50nm以上であり、更に好ましくは100nm以上で、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下であり、更に好ましくは300nm以下である。また、有機発光層4以外の正孔注入層3や電子注入層5の導電性が高い場合、有機発光層4に注入される電荷量が増加する為、例えば正孔注入層3の膜厚を厚くして有機発光層4の膜厚を薄くし、総膜厚をある程度の膜厚を維持したまま駆動電圧を下げることも可能である。
よって有機発光層4の膜厚は、通常10nm以上、好ましくは20nm以上で、通常300nm以下、好ましくは200nm以下である。尚、本発明の素子が、陽極及び陰極の両極間に、有機発光層のみを有する場合の有機発光層4の膜厚は、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、通常500nm以下、好ましくは300nm以下である。
有機発光層4の薄膜は、本発明の有機電界発光素子用薄膜の説明に記載した湿式製膜法により形成される。
【0276】
〈電子注入層〉
電子注入層5は陰極6から注入された電子を効率良く有機発光層4へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行うには、電子注入層5を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましく、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属が用いられ、膜厚は0.1〜5nmが好ましい。
【0277】
また、陰極6と有機発光層4又は後述の電子輸送層8との界面にLiF、MgF、LiO、CsCO等の極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Appl.Phys.Lett.,70巻,152頁,1997年;特開平10−74586号公報;IEEETrans.Electron.Devices,44巻,1245頁,1997年;SID 04 Digest,154頁)。
【0278】
更に、後述するバソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送材料に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は通常、5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常200nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0279】
電子注入層5は、有機発光層4と同様にして塗布法、あるいは真空蒸着法により有機発光層4上に積層することにより形成される。真空蒸着法の場合には、真空容器内に設置されたるつぼ又は金属ボートに蒸着源を入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、るつぼ又は金属ボートを加熱して蒸発させ、るつぼ又は金属ボートと向き合って置かれた基板上に電子注入層を形成する。
【0280】
アルカリ金属の蒸着は、クロム酸アルカリ金属と還元剤をニクロムに充填したアルカリ金属ディスペンサーを用いて行う。このディスペンサーを真空容器内で加熱することにより、クロム酸アルカリ金属が還元されてアルカリ金属が蒸発される。有機電子輸送材料とアルカリ金属とを共蒸着する場合は、有機電子輸送材料を真空容器内に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、各々のるつぼ及びディスペンサーを同時に加熱して蒸発させ、るつぼ及びディスペンサーと向き合って置かれた基板上に電子注入・輸送層を形成する。
このとき、電子注入層の膜厚方向において均一に共蒸着されるが、膜厚方向において濃度分布があっても構わない。
【0281】
〈陰極〉
陰極6は、有機発光層側の層(電子注入層5又は有機発光層4など)に電子を注入する役割を果たす。陰極6として用いられる材料は、前記陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行うには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。陰極6の膜厚は通常、陽極2と同様である。低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上にさらに、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増す。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
【0282】
〈その他の構成層〉
以上、図2に示す層構成の素子を中心に説明してきたが、本発明の有機電界発光素子における陽極2及び陰極6と有機発光層4との間には、その性能を損なわない限り、上記説明にある層の他にも、任意の層を有していても良く、また有機発光層4以外の任意の層を省略しても良い。
【0283】
有しても良い層としては例えば、正孔注入層3と有機発光層4の間に設けられる電子阻止層7が挙げられる(図3,4,5参照)。電子阻止層7は、有機発光層4から移動してくる電子が正孔注入層3に到達するのを阻止することで、有機発光層4内で正孔との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層4内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく有機発光層4の方向に輸送する役割がある。特に、発光物質として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いる場合は効果的である。電子阻止層7に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。更に、本発明においては有機発光層4を湿式製膜法で作製することにより、製造容易であることに特徴がある為、電子阻止層7にも湿式製膜適合性が求められる。このような電子阻止層7に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(WO2004/084260号公報記載)等が挙げられる。
【0284】
また、有しても良い層として電子輸送層8も挙げられる。電子輸送層8は素子の発光効率をさらに向上させることを目的として、有機発光層4と電子注入層5との間に設けられる(図4,5,6,7参照)。
電子輸送層8は、電界を与えられた電極間において陰極6から注入された電子を効率よく有機発光層4の方向に輸送することができる化合物より形成される。電子輸送層8に用いられる電子輸送性化合物としては、陰極6又は電子注入層5からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。
【0285】
このような条件を満たす材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3-又は5-ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5,645,948号)、キノキサリン化合物(特開平6-207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5-331459号公報)、2-t-ブチル-9,10-N,N'-ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
【0286】
電子輸送層8の膜厚は、通常下限は1nm、好ましくは5nm程度であり、上限は通常300nm、好ましくは100nm程度である。
【0287】
電子輸送層8は、正孔注入層3と同様にして塗布法、あるいは真空蒸着法により有機発光層4上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
【0288】
また、電子阻止層7と同様の目的で、正孔阻止層9を設けることも効果的である(図5,7参照)。正孔阻止層9は有機発光層4の上に、有機発光層4の陰極6側の界面に接するように積層されるが、陽極2から移動してくる正孔を陰極6に到達するのを阻止する役割と、陰極6から注入された電子を効率よく有機発光層4の方向に輸送することができる化合物より形成される。正孔阻止層9を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。正孔阻止層9は正孔と電子を有機発光層4内に閉じこめて、発光効率を向上させる機能を有する。
【0289】
このような条件を満たす正孔阻止層材料としては、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2-メチル-8-キノラト)アルミニウム-μ-オキソ-ビス-(2-メチル-8-キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11-242996)、3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7-41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10-79297号公報)が挙げられる。
【0290】
さらに、下記一般式(12)で示される2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も正孔阻止材料として好ましい。
【化35】

(式中、R51、R52及びR53は、各々独立に、水素原子又は任意の置換基を表す。連結基Gはm価の連結基を表し、ピリジン環と連結基Gはピリジン環の2〜6位のいずれか1つと直接結合している。mは1〜8の整数である。)
【0291】
上記構造式で表わされる2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0292】
【化36】

【0293】
正孔阻止層9の膜厚は、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上で、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。正孔阻止層9も正孔注入層3と同様の方法で形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
【0294】
電子輸送層8及び正孔阻止層9は必要に応じて、適宜設ければよく、1)電子輸送層のみ、2)正孔阻止層のみ、3)正孔阻止層/電子輸送層の積層、4)用いない、等、用法がある。
【0295】
尚、図2とは逆の構造、即ち、基板1上に陰極6、電子注入層5、有機発光層4、正孔注入層3、陽極2の順に積層することも可能であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有機電界発光素子を設けることも可能である。同様に、図3〜図7に示した前記各層構成とは逆の構造に積層することも可能である。
さらには、図2〜7に示す層構成を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その際には段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合はその2層)の代わりに、例えばV等を電荷発生層(CGL)として用いると段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
【0296】
本発明は、有機電界発光素子が、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。
【0297】
本発明の有機電界発光素子によれば、特定の酸化・還元電位の関係にある発光材料と電荷輸送材料、及び溶剤を含有する本発明の有機電界発光素子用組成物を用いることにより、製造が容易で、発光効率が高くかつ駆動安定性においても大きく改善された素子が得られ、大面積表示装置あるいは照明用途への応用において優れた性能を発揮できる。
【実施例】
【0298】
以下に測定例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0299】
(測定例1)化合物の酸化還元電位の測定
下記化合物T1〜T4、及びD4の酸化還元電位をサイクリックボルタンメトリーにより測定した。
【0300】
【化37】

【0301】
支持電解質として、過塩素酸テトラブチルアンモニウム0.1mol/Lを表1に記載する測定溶剤に溶解させたものに、さらに上記化合物のうち1種を1mmol/L溶解した液について測定を行った。作用電極はグラッシーカーボン(ビー・エー・エス社製)、対電極として白金線、参照電極として銀線を用い、走引速度を100mV/sとして測定した。酸化還元電位は、内部標準としてフェロセン/フェロセニウム(Fc/Fc)を用い、この電位が+0.41V vs.SCEであるとして電位を対飽和甘コウ電極(SCE)に換算した。得られた化合物の第一酸化電位及び第一還元電位を表1に示す。
【0302】
【表1】

【0303】
(実施例1)素子の作製1
ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(三容真空製、スパッタ製膜品)を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸−塩化鉄溶液エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成した。パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液で超音波洗浄、純水で水洗、乾燥窒素で乾燥、UV/オゾン洗浄を行った後、上記の構造式に示す化合物(T1)を90mg、化合物(T2)を90mg、及び化合物(D1)を9mg、及び溶剤としてのクロロベンゼン2.8gを混合し、その後、孔径0.2μmのPTFEメンブレンフィルターで濾過することにより不溶分を除き、有機電界発光素子用組成物を調製した。その後、下記の条件で、該組成物を上記ITO基板上にスピンコートし、膜厚160nmの均一な薄膜を形成した。
スピナ回転数:1500rpm
スピナ回転時間:30秒
スピン雰囲気:大気中,温度23℃,相対湿度30%
乾燥条件:オーブン内で140℃,15分間加熱乾燥
【0304】
尚、化合物D1の第一還元電位をED1[V vs. SCE]、第一酸化電位をED1[V vs. SCE]、
化合物T1の第一還元電位ET1[V vs. SCE]、第一酸化電位をET1[V vs. SCE]
とすると、本組成物の第一酸化電位及び第一還元電位の関係は以下の通りである。
D1(-2.30)+0.1<ET1(-2.03)<ED1(+0.72)<ET1(+1.34)−0.1
【0305】
次に、塗布製膜した基板に陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極のITOストライプとは直交するように素子に密着させて真空蒸着装置内に設置し、装置の粗排気を油回転ポンプにより行った後、装置内の真空度が3×10−4Pa以下になるまで排気した。陰極としてマグネシウム及び銀の合金電極を、マグネシウムと銀をそれぞれ別のモリブデンボートを用いて、同時に加熱する2元同時蒸着法により、膜厚110nmとなるように蒸着した。マグネシウムについての蒸着速度は0.4〜0.5nm/秒、真空度5×10−4Paで、マグネシウムと銀の原子比は10:1.4とした。陰極蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0306】
このようにして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
この素子の発光特性を表2に示す。
この素子は、電圧55V印加時に輝度30cd/mの緑色発光が得られた。このときの通電電流密度は120mA/cm、発光効率は0.1lm/Wであった。素子の電界発光スペクトルを図8に示す。発光スペクトルの形状から、化合物D1が発光していることがわかる。
【0307】
(実施例2)素子の作製2
上記の構造式に示す化合物(T3)を90mg、化合物(T4)を90mg、及び化合物(D1)を9mg、及び溶剤としてのo−ジクロロベンゼン2.8gを混合し、その後、孔径0.2μmのPTFEメンブレンフィルターで濾過することにより不溶分を除き、有機電界発光素子用組成物を調製した。その後、下記の条件で、該組成物を、実施例1と同様にパターニング、洗浄を行ったITO基板上にスピンコートし、膜厚160nmの均一な薄膜を形成した。
スピナ回転数:1500rpm
スピナ回転時間:30秒
スピン雰囲気:大気中、温度23℃、相対湿度30%
乾燥条件:ホットプレート上で80℃、1分間加熱乾燥後
オーブン内で140℃、15分間加熱乾燥
【0308】
尚、化合物D1の第一還元電位をED1[V vs. SCE]、第一酸化電位をED1[V vs. SCE]、
化合物T3の第一還元電位ET3[V vs. SCE]、第一酸化電位をET3[V vs. SCE]
とすると、本組成物の第一酸化電位及び第一還元電位の関係は以下の通りである。
D1(-2.30)+0.1<ET3(-2.05)<ED1(+0.72)<ET3(+0.99)−0.1
【0309】
次に、塗布製膜した基板を実施例1と同様に真空蒸着装置内に設置し、装置内を排気後、ナトリウムを膜厚0.5nmとなるように蒸着した。ナトリウムの蒸着はクロム酸ナトリウムを有するナトリウムディスペンサー(SAES Getters社製)を加熱することにより行った。平均的な蒸着速度は0.01nm/秒、真空度は8×10−5Paであった。引き続き、アルミニウムを、モリブデンボートを用いて、膜厚80nmとなるように蒸着した。蒸着速度は0.4〜0.6nm/秒、真空度は5×10−4Paであった。ナトリウム及びアルミニウム蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0310】
このようにして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
この素子の発光特性、即ち、通電電流250mA/cmにおける発光輝度(単位:cd/m)、発光輝度100cd/mにおける発光効率(単位:lm/W)及び駆動電圧(単位:V)の数値を表2に示す。
表2の結果から、陰極にナトリウム及びアルミニウムの積層電極を用いることにより、高輝度で発光する素子が得られたことが分かる。
【0311】
(実施例3)素子の作製3
実施例2と同様にパターニング、洗浄を行ったITO基板を、ジクロロメタン中に以下の構造式に示す化合物(ST1)を5mMの濃度で溶解させた溶液に、5分間浸漬した。基板を液から取り出した後ジクロロメタンで1分間リンスし、窒素ブローで乾燥した。このようにして、ITO陽極の表面処理を実施した。
【0312】
【化38】

【0313】
化合物(T3)を60mg、化合物(T4)を10mg、及び化合物(D1)を4mg、及び溶剤としてのo−ジクロロベンゼン2gを混合し、その後、孔径0.2μmのPTFEメンブレンフィルターでろ過することにより不溶分を除き、有機電界発光素子用組成物を調製した。その後、実施例2と同様の条件で、該組成物を上記表面処理ITO基板上にスピンコートし、膜厚160nmの均一な薄膜を形成した。
次に、塗布製膜した基板に、実施例2と同様にして、ナトリウムを膜厚0.5nmとなるように蒸着した後、アルミニウムを膜厚80nmとなるように蒸着した。
【0314】
このようにして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
この素子の発光特性、即ち、通電電流250mA/cmにおける発光輝度(単位:cd/m)、発光輝度100cd/mにおける発光効率(単位:lm/W)及び駆動電圧(単位:V)の数値を表2に示す。
表2の結果から、ITO陽極を表面処理することにより、さらに高輝度で発光する素子が得られたことが分かる。
【0315】
【表2】

【0316】
(実施例4)素子の作製4
図6に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
ガラス基板1の上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(スパッター製膜品;シート抵抗15Ω)を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。パターン形成し
たITO基板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
次に、正孔注入層3を以下のように湿式塗布法によって形成した。正孔注入層3の材料として、下記に示す構造式の芳香族アミノ基を有する高分子化合物(PB−1(重量平均分子量:26500,数平均分子量:12000))と下記に示す構造式の電子受容性化合物(A−2)とを用い、下記の条件でスピンコートした。
【0317】
【化39】

【0318】
〈スピンコート条件〉
溶媒 アニソール
塗布液濃度 PB−1 2.0重量%
A−2 0.4重量%
スピナ回転数 2000rpm
スピナ回転時間 30秒
乾燥条件 230℃×5.5時間
上記のスピンコートにより膜厚30nmの均一な薄膜が形成された。
【0319】
続いて、有機発光層4を以下のように湿式塗布法によって形成した。発光層4の材料として、下記化合物(T5)及び(D2)を下記溶媒に下記濃度で含有させ、有機電界発光素子用組成物とした。この組成物を下記の条件でスピンコートして有機発光層4を形成した。
【0320】
【化40】

【0321】
〈スピンコート条件〉
溶媒 キシレン
塗布液濃度 T5 2.5重量%
D2 0.13重量%
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
乾燥条件 130℃×60分(減圧下)
上記のスピンコートにより膜厚45nmの均一な薄膜が形成された。
【0322】
次に、電子輸送層8として下記に示すアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体(ET−1)を蒸着した。この時のアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体のるつぼ温度は321〜311℃の範囲で制御し、蒸着時の真空度は1.3〜1.5×10-4Pa(約1.1〜1.0×10-6Torr)、蒸着速度は0.08〜0.16nm/秒で膜厚は30nmとした。
【0323】
【化41】

【0324】
上記の電子輸送層8を真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
ここで、電子輸送層8までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が1.8×10-6Torr(約2.4×10-4Pa)以下になるまで排気した。
【0325】
電子注入層5として、フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.01〜0.06nm/秒、真空度2.0×10-6Torr(約2.6×10-4Pa)で、0.5nmの膜厚で電子輸送層8の上に製膜した。
次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.1〜0.3nm/秒、真空度3.0〜6.8×10-6Torr(約4.0〜9.0×10-4Pa)で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極6を完成させた。
以上の2層型陰極6の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0326】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。素子の発光スペクトルの極大波長は515nmであり、イリジウム錯体(D2)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.310,0.626)であった。
【0327】
(実施例5)素子の作製5
図7に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
実施例4と同様に有機発光層4まで形成した後(ただし、正孔注入層3の乾燥条件は230℃で3時間とした。)、正孔阻止層9として下記に示すピリジン誘導体(HB−1)をるつぼ温度230〜238℃として、蒸着速度0.07〜0.11nm/秒で5nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は1.9×10-4Pa(約1.4×10-6Torr)であった。
【0328】
【化42】

【0329】
次に、正孔阻止層9の上に、電子輸送層8として前記アルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体(ET−1)を同様にして蒸着した。この時のアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体のるつぼ温度は352〜338℃の範囲で制御し、蒸着時の真空度は2.0〜1.9×10-4Pa(約1.5〜1.4×10-6Torr)、蒸着速度は0.07〜0.13nm/秒で膜厚は30nmとした。
【0330】
上記の正孔阻止層9及び電子輸送層8を真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
ここで、電子輸送層8までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が2.0×10-6Torr(約2.6×10-4Pa)以下になるまで排気した。
【0331】
電子注入層5として、フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、 蒸着速度0.01〜0.06nm/秒、真空度2.1×10-6Torr(約2.8×10-4Pa)で、0.5nmの膜厚で電子輸送層8の上に成膜した。
次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.2〜0.6nm/秒、真空度3.8〜6.8×10-6Torr(約5.0〜9.0×10-4Pa)で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極6を完成させた。
【0332】
以上の2層型陰極6の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。素子の発光スペクトルの極大波長は515nmであり、イリジウム錯体(D2)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.315,0.623)であった。
【0333】
(実施例6)素子の作製6
図7に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
実施例5と同様に正孔注入層3まで形成した後、有機発光層4を以下のように湿式塗布法によって形成した。発光層4の材料として、下記化合物(T6)及び(D2)を下記溶媒に下記濃度で含有させ、有機電界発光素子用組成物とした。この組成物を下記の条件でスピンコートして有機発光層4を形成した。
【0334】
【化43】

【0335】
〈スピンコート条件〉
溶媒 キシレン
塗布液濃度 T6 3.0重量%
D2 0.15重量%
スピナ回転数 1000rpm
スピナ回転時間 30秒
乾燥条件 80℃×60分(減圧下)
上記のスピンコートにより膜厚60nmの均一な薄膜が形成された。
【0336】
次に、正孔阻止層9として前記ピリジン誘導体(HB−1)をるつぼ温度284〜289℃として、蒸着速度0.09〜0.13nm/秒で5.1nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は2.8×10-4Pa(約2.1×10-6Torr)であった。
【0337】
次に、電子輸送層8として前記アルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体(ET−1)を同様にして蒸着した。この時のアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体のるつぼ温度は349〜340℃の範囲で制御し、蒸着時の真空度は2.9〜4.3×10-4Pa(約2.2〜3.2×10-6Torr)、蒸着速度は0.08〜0.12nm/秒で膜厚は30nmとした。
【0338】
上記の正孔阻止層9及び電子輸送層8を真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
ここで、電子輸送層8までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が2.3×10-6Torr(約3.1×10-4Pa)以下になるまで排気した。
【0339】
電子注入層5として、フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.005〜0.04nm/秒、真空度2.6×10-6Torr(約3.42〜3.47×10-4Pa)で、0.5nmの膜厚で電子輸送層8の上に成膜した。
次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.04〜0.4nm/秒、真空度3.5〜7.8×10-6Torr(約4.6〜10.4×10-4Pa)で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極6を完成させた。
以上の2層型陰極6の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0340】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。素子の発光スペクトルの極大波長は514nmであり、イリジウム錯体(D2)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.324,0.615)であった。
【0341】
(実施例7)素子の作製7
図7に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
実施例5と同様に正孔注入層3まで形成した後、有機発光層4を以下のように湿式塗布法によって形成した。発光層4の材料として、下記化合物(T6)及び(D3)を下記溶媒に下記濃度で含有させ、有機電界発光素子用組成物とした。この組成物を下記の条件でスピンコートして有機発光層4を形成した。
【0342】
【化44】

【0343】
〈スピンコート条件〉
溶媒 キシレン
塗布液濃度 T6 2.0重量%
D3 0.1重量%
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
乾燥条件 130℃×60分(減圧下)
【0344】
上記のスピンコートにより膜厚60nmの均一な薄膜が形成された。
次に、正孔阻止層9として前記ピリジン誘導体(HB−1)をるつぼ温度277〜280℃として、蒸着速度0.11〜0.13nm/秒で5nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は2.9〜3.2×10-4Pa(約2.2〜2.4×10-6Torr)であった。
【0345】
次に、電子輸送層8として前記アルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体(ET−1)を同様にして蒸着した。この時のアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体のるつぼ温度は372〜362℃の範囲で制御し、蒸着時の真空度は3.7〜4.3×10-4Pa(約2.8〜3.2×10-6Torr)、蒸着速度は0.1nm/秒で膜厚は30nmとした。
【0346】
上記の正孔阻止層9及び電子輸送層8を真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
ここで、電子輸送層8までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が1.5×10-6Torr(約3.1×10-4Pa)以下になるまで排気した。
【0347】
電子注入層5として、フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.01〜0.03nm/秒、真空度2.3〜2.5×10-6Torr(約3.1〜3.3×10-4Pa)で、0.5nmの膜厚で電子輸送層8の上に成膜した。
次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.3〜0.5nm/秒、真空度2.9〜6.6×10-6Torr(約3.8〜8.8×10-4Pa)で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極6を完成させた。
【0348】
以上の2層型陰極6の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。素子の発光スペクトルの極大波長は513nmであり、イリジウム錯体(D3)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.303,0.625)であった。
【0349】
(実施例8)素子の作製8
図7に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
実施例5と同様に正孔注入層3まで形成した後、有機発光層4を以下のように湿式塗布法によって形成した。発光層4の材料として、下記化合物(T7)及び(D2)を下記溶媒に下記濃度で含有させ、有機電界発光素子用組成物とした。この組成物を下記の条件でスピンコートして有機発光層4を形成した。
【0350】
【化45】

【0351】
〈スピンコート条件〉
溶媒 1,4−ジオキサン
塗布液濃度 T7 2.0重量%
D2 0.1重量%
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
乾燥条件 130℃×60分(減圧下)
上記のスピンコートにより膜厚60nmの均一な薄膜が形成された。
【0352】
次に、正孔阻止層9として前記ピリジン誘導体(HB−1)をるつぼ温度237〜238℃として、蒸着速度0.1nm/秒で5nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は9.3〜9.2×10-5Pa(約7.0〜6.9×10-6Torr)であった。
【0353】
次に、電子輸送層8として前記アルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体(ET−1)を同様にして蒸着した。この時のアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体のるつぼ温度は294〜288℃の範囲で制御し、蒸着時の真空度は9.1〜8.5×10-5Pa(約6.8〜6.4×10-6Torr)、蒸着速度は0.11〜0.12nm/秒で膜厚は30nmとした。
【0354】
上記の正孔阻止層9及び電子輸送層8を真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
ここで、電子輸送層8までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が2.0×10-6Torr(約2.6×10-4Pa)以下になるまで排気した。
【0355】
電子注入層5として、フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.02nm/秒、真空度2.0×10-6Torr(約2.6×10-4Pa)で、0.5nmの膜厚で電子輸送層8の上に成膜した。
次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.2nm/秒、真空度3.2×10-6Torr(約4.2×10-4Pa)で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極6を完成させた。
以上の2層型陰極6の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0356】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。素子の発光スペクトルの極大波長は519nmであり、イリジウム錯体(D2)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.365,0.591)であった。
【0357】
(実施例9)素子の作製9
図7に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
実施例5と同様に正孔注入層3まで形成した後、有機発光層4を以下のように湿式塗布法によって形成した。発光層4の材料として、下記化合物(T8)及び(D2)を下記溶媒に下記濃度で含有させ、有機電界発光素子用組成物とした。この組成物を下記の条件でスピンコートして有機発光層4を形成した。
【0358】
【化46】

【0359】
〈スピンコート条件〉
溶媒 キシレン
塗布液濃度 T8 2.0重量%
D2 0.1重量%
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
乾燥条件 130℃×60分(減圧下)
【0360】
上記のスピンコートにより膜厚60nmの均一な薄膜が形成された。
次に、正孔阻止層9として前記ピリジン誘導体(HB−1)をるつぼ温度273℃として、蒸着速度0.1nm/秒で5.1nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は3.3×10-4Pa(約2.5×10-6Torr)であった。
【0361】
次に、電子輸送層8として前記アルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体(ET−1)を同様にして蒸着した。この時のアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体のるつぼ温度は376〜371℃の範囲で制御し、蒸着時の真空度は3.1×10-4Pa(約2.3×10-6Torr)、蒸着速度は0.11〜0.12nm/秒で膜厚は30nmとした。
【0362】
上記の正孔阻止層9及び電子輸送層8を真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
ここで、電子輸送層8までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が2.5×10-6Torr(約3.3×10-4Pa)以下になるまで排気した。
【0363】
電子注入層5として、フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、 蒸着速度0.006nm/秒、真空度2.6×10-6Torr(約3.5×10-4Pa)で、0.5nmの膜厚で電子輸送層8の上に成膜した。
次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.1〜0.35nm/秒、真空度3.4〜4.5×10-6Torr(約4.5〜6.0×10-4Pa)で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極6を完成させた。
以上の2層型陰極6の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0364】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。素子の発光スペクトルの極大波長は513nmであり、イリジウム錯体(D2)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.311,0.622)であった。
【0365】
(実施例10)素子の作製10
図7に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
実施例4と同様にガラス基板1上に陽極2を形成して洗浄を行った後、正孔注入層3を以下のように湿式塗布法によって形成した。正孔注入層3の材料として、下記に示す構造式の芳香族アミノ基を有する高分子化合物(PB−3(重量平均分子量:29400,数平均分子量:12600))と下記に示す構造式の電子受容性化合物(A−2)とを用い、下記の条件でスピンコートした。
【0366】
【化47】

【0367】
〈スピンコート条件〉
溶媒 安息香酸エチル
塗布液濃度 PB−3 2.0重量%
A−2 0.8重量%
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
乾燥条件 230℃×3時間
上記のスピンコートにより膜厚30nmの均一な薄膜が形成された。
【0368】
続いて、有機発光層4を以下のように湿式塗布法によって形成した。発光層4の材料として、下記化合物(T6)、(T9)及び(D2)を下記溶媒に下記濃度で含有させ、有機電界発光素子用組成物とした。この組成物を下記の条件でスピンコートして有機発光層4を形成した。
なお、以下のスピンコート条件において、インク保存とは、有機電界発光素子用組成物を調製した後、スピンコートに使用するまでの保存条件と保存期間を示している。
【0369】
【化48】

【0370】
〈スピンコート条件〉
インク保存 4℃ 暗所 18日間
溶媒 トルエン
塗布液濃度 T6 1.0重量%
T9 1.0重量%
D2 0.1重量%
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
乾燥条件 80℃×60分(減圧下)
上記のスピンコートにより膜厚60nmの均一な薄膜が形成された。
【0371】
次に、正孔阻止層9として前記ピリジン誘導体(HB−1)をるつぼ温度307〜312℃として、蒸着速度0.07〜0.13nm/秒で5.1nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は2.7×10-4Pa(約2.0×10-6Torr)であった。
【0372】
次に、正孔阻止層9の上に、電子輸送層8として前記アルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体(ET−1)を同様にして蒸着した。この時のアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体のるつぼ温度は469〜444℃の範囲で制御し、蒸着時の真空度は6.0〜3.3×10-4Pa(約4.5〜2.5×10-6Torr)、蒸着速度は0.07〜0.13nm/秒で膜厚は30nmとした。
【0373】
上記の正孔阻止層9及び電子輸送層8を真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
ここで、電子輸送層8までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が1.5×10-6Torr(約3.0×10-4Pa)以下になるまで排気した。
【0374】
電子注入層5として、フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、 蒸着速度0.007〜0.01nm/秒、真空度2.2〜2.3×10-6Torr(約2.9〜3.0×10-4Pa)で、0.5nmの膜厚で電子輸送層8の上に成膜した。
次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.08〜0.35nm/秒、真空度3.8〜6.5×10-6Torr(約5.1〜8.7×10-4Pa)で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極6を完成させた。
以上の2層型陰極6の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0375】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。素子の発光スペクトルの極大波長は512nmであり、イリジウム錯体(D2)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.309,0.619)であった。
【0376】
(実施例11)素子の作製11
実施例10における有機発光層4形成時のスピンコート条件のうち、インク保存時の温度を20℃としたこと以外は同様にして図7に示す構造を有する有機電界発光素子を作製した。
この素子の発光スペクトルの極大波長は513nmであり、イリジウム錯体(D2)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.314,0.617)であった。
【0377】
(実施例12)素子の作製12
図7に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
実施例10と同様に有機発光層4まで形成した後(ただし、発光層4形成時のスピンコート条件のうち、インク保存期間を7日間とした。)、正孔阻止層9として前記ピリジン誘導体(HB−1)をるつぼ温度327〜332℃として、蒸着速度0.08nm/秒で5nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は1.7×10-4Pa(約1.3×10-6Torr)であった。
【0378】
次に、正孔阻止層9の上に、電子輸送層8として前記アルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体(ET−1)を同様にして蒸着した。この時のアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体のるつぼ温度は440〜425℃の範囲で制御し、蒸着時の真空度は1.7〜1.6×10-4Pa(約1.3〜1.2×10-6Torr)、蒸着速度は0.1〜0.14nm/秒で膜厚は30nmとした。
【0379】
上記の正孔阻止層9及び電子輸送層8を真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
ここで、電子輸送層8までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が1.5×10-6Torr(約1.96×10-4Pa)以下になるまで排気した。
【0380】
電子注入層5として、フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.008〜0.013nm/秒、真空度1.5〜1.6×10-6Torr(約2.0〜2.1×10-4Pa)で、0.5nmの膜厚で電子輸送層8の上に成膜した。
次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.05〜0.42nm/秒、真空度2.5〜7.0×10-6Torr(約3.3〜9.3×10-4Pa)で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極6を完成させた。
以上の2層型陰極6の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0381】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。素子の発光スペクトルの極大波長は513nmであり、イリジウム錯体(D2)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.315,0.617)であった。
【0382】
(実施例13)素子の作製13
実施例12における有機発光層4形成時のスピンコート条件のうち、インク保存時の温度を20℃としたこと以外は同様にして図7に示す構造を有する有機電界発光素子を作製した。
この素子の発光スペクトルの極大波長は513nmであり、イリジウム錯体(D2)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.314,0.617)であった。
【0383】
(実施例14)素子の作製14
図7に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
実施例10と同様に有機発光層4まで形成した後(ただし、発光層4形成時のスピンコート条件のうち、インクは保存せず、調製後直ちに用いた。)、正孔阻止層9として前記ピリジン誘導体(HB−1)をるつぼ温度315〜319℃として、蒸着速度0.07〜0.094nm/秒で5.1nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は3.1〜2.7×10-4Pa(約2.3〜2.0×10-6Torr)であった。
【0384】
次に、正孔阻止層9の上に、電子輸送層8として前記アルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体(ET−1)を同様にして蒸着した。この時のアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体のるつぼ温度は481〜391℃の範囲で制御し、蒸着時の真空度は2.7〜3.6×10-4Pa(約2.0〜2.7×10-6Torr)、蒸着速度は0.11〜0.18nm/秒で膜厚は30nmとした。
【0385】
上記の正孔阻止層9及び電子輸送層8を真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
ここで、電子輸送層8までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が3.1×10-6Torr(約4.1×10-4Pa)以下になるまで排気した。
【0386】
電子注入層5として、フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.007〜0.012nm/秒、真空度3.2〜3.3×10-6Torr(約4.3〜4.4×10-4Pa)で、0.5nmの膜厚で電子輸送層8の上に成膜した。次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.05〜0.47nm/秒、真空度4.0〜7.4×10-6Torr(約5.3〜9.8×10-4Pa)で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極6を完成させた。
以上の2層型陰極6の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0387】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。素子の発光スペクトルの極大波長は512nmであり、イリジウム錯体(D2)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.303,0.622)であった。
【0388】
(実施例15)素子の作製15
図7に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
実施例10と同様に正孔注入層3まで形成した後(ただし、正孔注入層3のスピンコート条件のうち、(A−2)濃度は0.4重量%、乾燥条件は230℃で15分とした。)、有機発光層4を以下のように湿式塗布法によって形成した。発光層4の材料として、下記化合物(T6)、(T12)及び(D4)を下記溶媒に下記濃度で含有させ、有機電界発光素子用組成物とした。この組成物を下記の条件でスピンコートして有機発光層4を形成した。
【0389】
【化49】

【0390】
〈スピンコート条件〉
溶媒 トルエン
塗布液濃度 T6 1.0重量%
T12 1.0重量%
D4 0.1重量%
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
乾燥条件 80℃×60分(減圧下)
上記のスピンコートにより膜厚60nmの均一な薄膜が形成された。
【0391】
次に、正孔阻止層9として前記ピリジン誘導体(HB−1)をるつぼ温度238〜249℃として、蒸着速度0.014〜0.024nm/秒で5nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は3.5〜3.7×10-4Pa(約2.6〜2.8×10-6Torr)であった。
【0392】
次に、正孔阻止層9の上に、電子輸送層8として前記アルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体(ET−1)を同様にして蒸着した。この時のアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体のるつぼ温度は240〜247℃の範囲で制御し、蒸着時の真空度は3.7〜3.3×10-4Pa(約2.8〜2.5×10-6Torr)、蒸着速度は0.1〜0.11nm/秒で膜厚は30nmとした。
【0393】
上記の正孔阻止層9及び電子輸送層8を真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
ここで、電子輸送層8までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が2.1×10-6Torr(約2.2×10-4Pa)以下になるまで排気した。
【0394】
電子注入層5として、フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.006〜0.008nm/秒、真空度2.3〜2.4×10-6Torr(約3.1〜3.2×10-4Pa)で、0.5nmの膜厚で電子輸送層8の上に成膜した。
次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.25〜0.41nm/秒、真空度2.5〜7.4×10-6Torr(約3.3〜9.8×10-4Pa)で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極6を完成させた。
以上の2層型陰極6の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0395】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。この素子の発光スペクトルを観測したところ、474nmのピークが観測され、イリジウム錯体(D4)からのものと同定された。
【0396】
(比較例1)
図6に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
実施例10と同様に正孔注入層3まで形成した後(ただし、正孔注入層3のスピンコート条件のうち、(A−2)濃度は0.4重量%とした。)、有機発光層4を以下のように湿式塗布法によって形成した。発光層4の材料として、下記化合物(T10)、(T11)及び(D3)を下記溶媒に下記濃度で含有させ、有機電界発光素子用組成物とした。この組成物を下記の条件でスピンコートして有機発光層4を形成した。
【0397】
【化50】

【0398】
〈スピンコート条件〉
溶媒 クロロホルム
塗布液濃度 T10 1.0重量%
T11 1.0重量%
D3 0.1重量%
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
乾燥条件 80℃×60分(減圧下)
上記のスピンコートにより膜厚100nmの均一な薄膜が形成された。
【0399】
次に、電子輸送層8として下記に示す化合物(ET−2)を蒸着した。この時、蒸着時の真空度は1.79〜1.71×10-4Pa(約1.3×10-6Torr)、蒸着速度は0.09〜0.1nm/秒で膜厚は20nmとした。
【0400】
【化51】

【0401】
次に、電子注入層5として、フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.009〜0.013nm/秒、真空度1.3×10-6Torr(約1.76×10-4Pa)で、0.5nmの膜厚で電子輸送層8の上に成膜した。
次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.06〜0.19nm/秒、真空度2.1×10-6Torr(約3.15〜10.0×10-4Pa)で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極6を完成させた。
以上の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0402】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。素子の発光スペクトルの極大波長は514nmであり、イリジウム錯体(D3)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.308,0.621)であった。
【0403】
以上の実施例4〜15及び比較例1で、有機発光層4の形成に用いたホスト材料及びドーパント材料の酸化・還元電位を表3に示す。
また、定電流駆動で測定したときの規格化輝度半減寿命と初期輝度、及び100cd/m2の輝度で点灯した際の電流効率と駆動電圧を表4にそれぞれまとめた。
【0404】
【表3】

【0405】
【表4】

【0406】
また、上記表4の結果のうち、有機電界発光素子用組成物を、空気存在下、暗所にて4℃条件下又は20℃条件下で保存後に作製した素子の電流効率、駆動電圧、及び定電流駆動で評価したときの規格化輝度半減寿命と初期輝度を表5にまとめた。
【0407】
【表5】

【0408】
以上の結果より、本発明による有機電界発光素子用組成物は、ポットライフが長く、また、それを用いて作製された素子は発光効率が高く、長寿命であることが分かる。
【0409】
(参考例1)
発光層を蒸着法で形成する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。作製した有機電界発光素子は、正孔注入層3の代りに正孔輸送層を形成したこと以外は図7の有機電界発光素子と同様の層構成である。
ガラス基板1の上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(スパッター成膜品;シート抵抗15Ω)を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。パターン形成し
たITO基板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0410】
正孔注入層3を以下のように湿式塗布法によって形成した。正孔注入層3の材料として、下記に示す構造式の芳香族アミノ基を有する高分子化合物(PB−2(重量平均分子量:29400,数平均分子量:12600))と下記に示す構造式の電子受容性化合物(A−2)とを用い、下記の条件でスピンコートした。
【0411】
【化52】

【0412】
〈スピンコート条件〉
溶媒 安息香酸エチル
塗布液濃度 PB−2 2.0重量%
A−2 0.4重量%
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
乾燥条件 230℃×15分
上記のスピンコートにより膜厚30nmの均一な薄膜が形成された。
【0413】
続いて,正孔輸送層として下記に示すアミン誘導体(T11)をるつぼ温度254〜274℃として、蒸着速度0.09〜0.13nm/秒で40nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は5.2〜5.3×10-5Pa(約3.9〜4.0×10-7Torr)であった。
【0414】
【化53】

【0415】
次に、有機発光層4として下記化合物(T10)を、下記に示す構造式のイリジウム錯体(D5)と共に用い、真空蒸着法によって積層した。蒸着の際の条件は、化合物(T10)のるつぼ温度を288〜293℃、蒸着速度を0.08〜0.09nm/秒とし、(D5)のるつぼ温度を247〜248℃、蒸着速度を0.005nm/秒として、30nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は5.4〜5.5×10-5Pa(約4.1×10-7Torr)であった。尚、化合物(D5)の酸化電位は+0.71V、還元電位は−0.23Vである。
【0416】
【化54】

【0417】
次に、正孔阻止層9として前記ピリジン誘導体(HB−1)をるつぼ温度230〜233℃として、蒸着速度0.09〜0.11nm/秒で5nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は5.3〜5.1×10-5Pa(約4.0〜3.8×10-7Torr)であった。
【0418】
次に、正孔阻止層9の上に、電子輸送層8として前記アルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体(ET−1)を同様にして蒸着した。この時のアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体のるつぼ温度は263〜259℃の範囲で制御し、蒸着時の真空度は5.3〜5.2×10-5Pa(約4.0〜3.9×10-6Torr)、蒸着速度は0.1〜0.13nm/秒で膜厚は30nmとした。
【0419】
上記の正孔阻止層9及び電子輸送層8を真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
ここで、電子輸送層8までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が1.4×10-6Torr(約1.9×10-4Pa)以下になるまで排気した。
【0420】
電子注入層5として、フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.6nm/秒、真空度2.2×10-6Torr(約2.9×10-4Pa)で、0.5nmの膜厚で電子輸送層8の上に成膜した。次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.1〜0.5nm/秒、真空度4.8〜10.0×10-6Torr(約6.4〜13.3×10-4Pa)で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極6を完成させた。
以上の2層型陰極6の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0421】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。素子の発光スペクトルの極大波長は512nmであり、イリジウム錯体(D5)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.294,0.588)であった。
【0422】
(参考例2)
有機発光層4として以下の化合物(T5)を、下記に示す構造式のイリジウム錯体(D5)と共に用い、以下の条件で、真空蒸着法によって積層したこと以外は参考例1と同様にして、有機電界発光素子を製造した。
蒸着の際の条件は、化合物(T5)のるつぼ温度を428〜425℃、蒸着速度を0.09〜0.08nm/秒とし、化合物(D5)のるつぼ温度を251〜254℃、蒸着速度を0.005nm/秒として30nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は6.0〜6.1×10-5Pa(約4.5〜4.6×10-7Torr)であった。
【0423】
【化55】

【0424】
得られた素子の発光スペクトルの極大波長は513nmであり、イリジウム錯体(D5)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.301,0.597)であった。
表6に、真空蒸着法によって作製した素子の100cd/m2時における電流効率、駆動電圧、及び初期輝度2500cd/m2として定電流駆動を行った際の規格化輝度半減寿命をまとめた。
【0425】
【表6】

【0426】
表6の結果から、真空蒸着法を用いて作製された素子では、本発明の関係を満たすか否かに関わらず、効果に大差がないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0427】
【図1】有機電界発光素子用薄膜転写用部材の一例を示した模式的断面図である。
【図2】有機電界発光素子の一例を示した模式断面図である。
【図3】有機電界発光素子の別の例を示した模式断面図である。
【図4】有機電界発光素子の別の例を示した模式断面図である。
【図5】有機電界発光素子の別の例を示した模式断面図である。
【図6】有機電界発光素子の別の例を示した模式断面図である。
【図7】有機電界発光素子の別の例を示した模式断面図である。
【図8】実施例1で作製した素子の電界発光スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0428】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 有機発光層
5 電子注入層
6 陰極
7 電子阻止層
8 電子輸送層
9 正孔阻止層
11 転写用部材
12 基材
13 光熱変換層
14 中間層
15 転写層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燐光発光材料、電荷輸送材料及び溶剤を含有する有機電界発光素子用組成物であって、
燐光発光材料及び電荷輸送材料はそれぞれ非重合型有機化合物であり、
燐光発光材料の第一酸化電位E
燐光発光材料の第一還元電位E
電荷輸送材料の第一酸化電位E、及び
電荷輸送材料の第一還元電位E
の関係が、
+0.1≦E<E≦E−0.1
或いは
+0.1≦E<E≦E−0.1
であることを特徴とする有機電界発光素子用組成物。
【請求項2】
燐光発光材料及び電荷輸送材料が、それぞれ分子量100〜10000である請求項1に記載の有機電界発光素子用組成物。
【請求項3】
燐光発光材料が、有機金属錯体である請求項1又は2に記載の有機電界発光素子用組成物。
【請求項4】
電荷輸送材料が、下記式(1)で表される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
(A)n−Z …(1)
(式(1)中、Aは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
nは、1以上10以下の整数を表す。
Zは、n=1の場合は水素原子又は置換基を表し、nが2以上の場合は直接結合又はn価の連結基を表す。
尚、nが2以上の場合、複数のAは同一であっても異なるものであっても良く、A及びZはそれぞれ、さらに置換基を有していても良い。)
【請求項5】
水分濃度が1重量%以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式製膜法により形成された有機電界発光素子用薄膜。
【請求項7】
波長500nm〜600nmの光に対する屈折率が1.78以下である請求項6に記載の有機電界発光素子用薄膜。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて基材上に湿式製膜法により形成された有機電界発光素子用薄膜転写用部材。
【請求項9】
基板上に、陽極、陰極及びこれら両極間に設けられた有機発光層を有する有機電界発光素子であって、該有機発光層が、請求項8に記載の有機電界発光素子用薄膜転写用部材を用いて形成された層であることを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項10】
基板上に、陽極、陰極及びこれら両極間に設けられた有機発光層を有する有機電界発光素子であって、該有機発光層が請求項1ないし5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式製膜法により形成された層であることを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項11】
有機発光層と陽極との間に、正孔注入層を有する請求項9又は10に記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
有機発光層と陰極との間に、電子注入層を有する請求項9ないし11のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項13】
基板上に、陽極、陰極及びこれら両極間に設けられた有機発光層を有する有機電界発光素子の製造方法であって、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式製膜法により該有機発光層を形成する工程を有する有機電界発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−257409(P2006−257409A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36880(P2006−36880)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】