説明

有機電界発光素子

【課題】正孔注入を円滑にし、電子の注入を抑制することによって、電流注入特性を向上させることができ、素子の寿命を向上させることができる有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】本発明は、有機電界発光素子を提供する。前記有機電界発光素子は、アノード電極上に形成され、フラーレン系物質からなるバッファ層と、前記バッファ層上に形成され、前記フラーレン系物質がドープされた正孔注入層及び/または正孔輸送層と、を備える。これにより、駆動電圧を低減し、素子の寿命を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子に関し、より詳細には、フラーレン(fullerene)系物質からなる層、又はフラーレン系物質がドープされた層を備えた有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来技術に係る有機電界発光素子を示す断面図である。
【0003】
図1を参照すれば、従来技術に係る有機電界発光素子100は、大きく、アノード電極110、有機機能膜120及びカソード電極130で構成される。
【0004】
基板10上にアノード電極110が位置する。前記基板10は、前記アノード電極110に接続する少なくとも1つの薄膜トランジスタ(図示せず)を備えることができる。
【0005】
前記アノード電極110上に、有機発光層123を含む有機機能膜120が位置する。前記有機機能膜120は、その機能によっていろいろな層で構成されることができ、一般的に、正孔注入層121、正孔輸送層122、有機発光層123、電子輸送層124及び電子注入層125などで構成される。
【0006】
前記有機機能膜120上にカソード電極130が位置する。
【0007】
前記アノード電極110と前記カソード電極130との間に電圧を印加すれば、正孔は、前記アノード電極から前記正孔注入層121に注入される。注入された正孔は、前記正孔輸送層122を介して前記有機発光層123内に輸送される。
【0008】
また、電子は、前記カソード電極130から前記電子注入層125に注入され、注入された電子は、前記電子輸送層124を介して前記有機発光層123内に輸送される。
【0009】
前記有機発光層123内に輸送された正孔と電子は、前記有機発光層123で結合して励起子(エキシトン)を生成し、このような励起子が励起状態から基底状態に転移しながら光を放出する。
【0010】
この時、前記正孔輸送層122は、正孔注入を容易にしなければならないし、正孔輸送性に優れていることが求められる。また、電子の移動を防止しなければならないし、温度変化に対して安定なように、高いガラス転移温度Tgを有しなければならない。
【0011】
また、有機電界発光素子の最大の短所である、短い寿命を向上させるために、前記正孔輸送層122から、または正孔輸送層122を介して酸素、イオン物質または低分子物質が拡散されることを防止する必要がある。このために、高いガラス転移温度を有し且つ緻密な構造を有する薄膜を形成することによって、前記正孔輸送層による寿命低下が最小化するようにしている。
【0012】
前述したような前記正孔輸送層122の改善により有機電界発光素子の寿命を向上させる方法として、特許文献1及び特許文献2には、前記正孔輸送層122に蛍光発光体をドープする方法が開示されており、特許文献3には、前記正孔輸送層122及び有機発光層123に蛍光発光体をドープする方法が開示されている。
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,392,339号明細書
【特許文献2】米国特許第6,392,250号明細書
【特許文献3】米国特許第5,773,929号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解消するためになされたもので、本発明の目的は、正孔注入を円滑にし、電子の注入を抑制することによって、電流注入特性を向上させることができ、素子の寿命を向上させることができる有機電界発光素子を提供することにある。
【0015】
また、本発明の他の目的は、駆動電圧を低減することができると共に、効率を低下させることなく、素子の寿命を向上させることができる有機電界発光素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明の一態様に係る有機電界発光素子は、基板と、前記基板上に形成されたアノード電極と、前記アノード電極上に形成され、フラーレン系物質からなるバッファ層と、前記バッファ層上に形成され、少なくとも有機発光層を含む有機機能膜と、前記有機機能膜上に形成されたカソード電極と、を備える。これにより、駆動電圧を低減することができ、素子の寿命を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の他の態様に係る有機電界発光素子は、基板と、前記基板上に形成されたアノード電極と、前記アノード電極上に形成され、フラーレン系物質からなるバッファ層と、前記バッファ層上に形成され、前記フラーレン系物質がドープされた正孔注入層及び/または正孔輸送層と、前記正孔注入層及び/または正孔輸送層上に形成された有機発光層と、前記有機発光層上に形成されたカソード電極と、を備える。
【0018】
前記フラーレン系物質は、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94及びC96よりなる群から選ばれるいずれか1つの物質であることができる。
【0019】
前記バッファ層の厚みは、1nm乃至5nmで形成することができ、特に、5nmであることが好ましい。
【0020】
前記正孔注入層または正孔輸送層は、複数の層からなることができる。
【0021】
前記正孔注入層は、CuPc(copper phthalocyanine)、TNATA、TCTA、TDAPB、TDATA、PANI(polyaniline)及びPEDOT(poly(3,4)−ethylenedioxythiophene)よりなる群から選ばれるいずれか1つの物質で構成されることができ、前記正孔注入層にドープされたフラーレン系物質は、1乃至30重量%程度にドープすることができる。
【0022】
前記正孔輸送層は、NPD(N,N’−dinaphthyl−N,N’−diphenyl benzidine)、TPD(N,N’−Bis−(3−methylphenyl)−N,N’−bis−(phenyl)−benzidine)、s−TAD、MTDATA(4,4’,4”−Tris(N−3−methylphenyl−N−phenyl−amino)−triphenylamine)及びPVKよりなる群から選ばれるいずれか1つの物質で形成されることができ、前記正孔輸送層にドープされたフラーレン系物質は、2重量%以下、好ましくは2重量%程度にドープすることができる。
【0023】
前記正孔輸送層の正孔輸送物質のLUMO(最低空軌道;Lowest Unoccupied Molecular Orbital)は、前記フラーレン系物質のLUMOより小さいことが好ましい。
【0024】
前記有機電界発光素子は、前記有機発光層上に、正孔抑制層、電子輸送層及び電子注入層よりなる群から選ばれる少なくとも1層をさらに備えることができる。
【0025】
前記バッファ層は、真空蒸着法を用いて形成することができ、前記フラーレン系物質がドープされた正孔注入層及び/または正孔輸送層は、真空蒸着法、スピンコート法及びインクジェット法(ink−jet)よりなる群から選ばれるいずれか1つの方法を用いて形成することができる。
【0026】
前記有機発光層は、8−trishydroxyquinoline aluminum(Alq3)で形成されることができ、前記有機発光層の厚みは、20乃至30nm、好ましくは、25nmで形成することができる。
【0027】
前記カソード電極は、LiF及びAlからなることができ、前記カソード電極の厚みは、250乃至350nm、好ましくは、300nmで形成することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、正孔注入を円滑にし、電子の注入を抑制するために、フラーレン系物質を使用する。これにより、電流注入特性を向上させることができ、有機電界発光素子の寿命を向上させることができるという効果を奏する。
【0029】
また、駆動電圧を低減することができると共に、効率を低下させることなく、有機電界発光素子の寿命を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。しかしながら、本発明は、下記の実施例に限らず、様々な変形が可能である。なお、図面において、層が他の層上に又は基板上に位置すると記述されている場合、他の層上に又は基板上に直接に形成されることができ、又はそれらの間に第3の層が介在されることもできる。
【0031】
図2は、本発明に係る有機電界発光素子を示す断面図である。
図2を参照すれば、本発明に係る有機電界発光素子200は、基板20上に形成された、アノード電極210、有機機能膜220及びカソード電極230で構成され、前記アノード電極210と有機機能膜220との間に介在されたバッファ層240を備える。
【0032】
詳細に説明すれば、基板20上にアノード電極210が位置する。前記基板20は、前記アノード電極210に接続する少なくとも1つの薄膜トランジスタ(図示せず)を備えることができる。
【0033】
前記アノード電極210は、透明電極または反射電極であってもよい。前記アノード電極210が透明電極である場合、前記アノード電極210は、ITO(Indium Tin Oxide)膜、IZO(Indium Zinc Oxide)膜、TO(Tin Oxide)膜またはZnO(Zinc Oxide)膜であってもよい。前記アノード電極210が反射電極である場合、前記アノード電極210は、銀(Ag)膜、アルミニウム(Al)膜、ニッケル(Ni)膜、白金(Pt)膜、パラジウム(Pd)膜、或いは、これらの合金膜、またはこれらの合金膜上にITO、IZO、TOまたはZnOの透過型酸化膜が積層された構造であってもよい。
【0034】
前記アノード電極210を形成することは、スパッタリング(sputtering)法及び蒸発(evaporation)法のような気相蒸着(vapor phase deposition)法、イオンビーム蒸着(ion beam deopsition)法、電子ビーム蒸着(electron beam deposition)法、またはレーザアブレーション(laser ablation)法を用いて行うことができる。
【0035】
前記アノード電極210上にバッファ層240が位置する。この時、前記バッファ層240は、フラーレン系物質からなる。前記フラーレンとは、人工的でなく、自然的に作ることができるサッカーボールのような模型を有する炭素だけで構成された有機物を言い、バッキーボール(Buckyball)とも言う。前記フラーレン物質は、非常に小さい物質を閉じ込めることができ、強く且つ滑らかな性質を有し、また、他の物質を挿入することができるように開口(オープン)されたり、又は、チューブのように連なることができる。
【0036】
前記フラーレン系物質として、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94及びC96よりなる群から選ばれるいずれか1つの物質を利用することができる。
【0037】
前記フラーレン系物質のうち、C60は、炭素原子60個からなるサッカーボール形状の分子構造を有する物質である。前記フラーレン系物質は、強い電子アクセプタ(acceptor)として作用し、トンネル効果及びp−ドーピング効果によって後述する正孔注入層221への正孔伝達を円滑にする。フラーレン系物質からなる前記バッファ層240は、その厚みが5nm以上である場合には、絶縁層として作用し、駆動電圧を上昇させる原因となり、1nm以下に形成される場合には、正孔伝達向上効果が得られない。したがって、その厚みを1乃至5nmに形成することによって、駆動電圧を低減することができ、特に、その厚みが5nmであることが好ましい。
【0038】
前記バッファ層240は、真空蒸着法を用いて形成することができる。
【0039】
前記バッファ層240上に有機機能膜220が位置する。前記有機機能膜220は、少なくとも有機発光層223を含む。本発明に係る実施例では、前記有機機能膜220は、正孔注入層221、正孔輸送層222、有機発光層223、電子輸送層224及び電子注入層225が順次に積層された構造を例示している。しかしながら、必ずしもこれに限らず、正孔注入層221、正孔輸送層222、電子輸送層224及び電子注入層225のうち一部を省略して形成したり、複数層で形成するなど、必要に応じて多様な積層構造を形成することができる。
【0040】
前記バッファ層240上に正孔注入層221が位置する。前記正孔注入層221は、前記有機発光層223への正孔の注入を容易にする層であって、CuPc(copper phthalocyanine)、TNATA、TCTA、TDAPB、TDATA、MTDATAのような低分子材料またはPANI(polyaniline)、PEDOT(poly(3,4)−ethylenedioxythiophene)のような高分子材料を使用して形成することができる。
【0041】
前記正孔注入層221上に正孔輸送層222が位置する。前記正孔輸送層222は、前記有機発光層223への正孔の輸送を容易にする層であって、NPD(N,N’−dinaphthyl−N,N’−diphenyl benzidine)、TPD(N,N’−Bis−(3−methylphenyl)−N,N’−bis−(phenyl)−benzidine)、s−TAD、MTDATA(4,4’,4”−Tris(N−3−methylphenyl−N−phenyl−amino)−triphenylamine)のような低分子材料、又はPVKのような高分子材料を使用して形成することができる。
【0042】
この時、前記正孔注入層221及び正孔輸送層222にフラーレン系物質をドープする。前記フラーレン系物質、すなわちドーパント(dopant)245として、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94及びC96よりなる群から選ばれるいずれか1つの物質を利用することができる。
【0043】
前記フラーレン系物質がドープされた正孔注入層221及び正孔輸送層222は、真空蒸着法、スピンコート法及びインクジェット法よりなる群から選ばれるいずれか1つの方法を用いて形成することができる。
【0044】
前記正孔注入層221にドープされるドーパント245は、前記バッファ層240の機能を補助するために形成する。すなわち、正孔伝達を円滑にする。
【0045】
前記正孔注入層221にドープされるドーパント245は、前記正孔注入層221を構成する物質と比較して1乃至30重量%程度の濃度を有するようにドープする。
【0046】
1重量%未満の濃度では、ドーピング効果が得られなく、30重量%超過の濃度条件では、電流注入が低下するため、好ましくない。
【0047】
前記正孔輸送層222にドープされるドーパント245は、前記有機発光層223から注入される電子が発生する場合、該電子を受け入れて正孔輸送物質の特性が前記電子により低下することを抑制する役目をする。
【0048】
したがって、前記正孔輸送層222の正孔輸送物質のLUMO(最低空軌道;Lowest Unoccupied Molecular Orbital)は、前記フラーレン系物質、すなわち、ドーパント245のLUMOより小さいことが好ましい。前記LUMOは、電子が満ちていない軌道(オービタル)のうちエネルギー準位が最も低い軌道をいう。したがって、前記有機発光層223から注入される電子が発生する場合、前記ドーパント245のエネルギー準位が高くて、その電子を前記ドーパント245が受け入れることによって、正孔輸送物質の特性が低下することを防止することができる。
【0049】
前記正孔輸送層222にドーピングされるドーパント245は、前記正孔輸送層222を構成する物質と比較して2重量%以下の濃度を有するようにドーピングする。好ましくは、2重量%の濃度を有するようにドープする。前記正孔輸送層222にドープされる前記ドーパント245の濃度が2重量%を超過すれば、効率が低下するため、好ましくない。
【0050】
本実施例では、前記正孔注入層221及び正孔輸送層222を、各々1つの層だけで形成することを例示したが、前記正孔注入層221または正孔輸送層222のうちいずれか1層を省略することができ、前記正孔注入層221または正孔輸送層222を複数層で形成することができる。
【0051】
前記正孔輸送層222上に有機発光層223が位置する。前記有機発光層223は、燐光発光層または蛍光発光層であってもよい。前記有機発光層223が蛍光発光層である場合、前記有機発光層223は、Alq3(8−trishydroxyquinoline aluminum)、ジスチリルアリレン(distyrylarylene;DSA)、ジスチリルアリレン誘導体、ジスチリルベンゼン(distyrylbenzene;DSB)、ジスチリルベンゼン誘導体、DPVBi(4、4’−bis2、2’−diphenylvinyl−1、1’−biphenyl)、DPVBi誘導体、スピロ−DPVBi及びスピロ−6P(spiro−sexyphenyl)よりなる群から選ばれる1つの物質を含むことができる。さらに、前記有機発光層223は、スチルアミン(styrylamine)系、フェリレン(pherylene)系及びDSBP(distyrylbiphenyl)系よりなる群から選ばれる1つのドーパント物質をさらに含むことができる。
【0052】
これとは異なって、前記有機発光層223が燐光発光層である場合、前記有機発光層223は、ホスト物質として、アリールアミン系、カルバゾール系及びスピロ系よりなる群から選ばれる1つの物質を含むことができる。好ましくは、前記ホスト物質は、CBP(4,4−N,N dicarbazole−biphenyl)、CBP誘導体、mCP(N、N−dicarbazolyl−3,5−benzene)、mCP誘導体及びスピロ系誘導体よりなる群から選ばれる1つの物質である。これに加えて、前記有機発光層223は、ドーパント物質として、Ir、Pt、Tb、及びEuよりなる群から選ばれる1つの中心金属を有する燐光有機金属錯体を含むことができる。さらに、前記燐光有機金属錯体は、PQIr、PQIr(acac)、PQIr(acac)、PIQIr(acac)及びPtOEPよりなる群から選ばれる1つであることができる。
【0053】
フルカラー有機電界発光素子の場合、前記有機発光層223を形成することは、高精細マスクを用いた真空蒸着法、インクジェットプリント法またはレーザー熱転写法を使用して行うことができる。
【0054】
前記有機発光層223は、その厚みが15乃至40nm、好ましくは、30nmとなるように形成する。15nm未満では、効率が低下するため、問題があり、40nmを超過すれば、駆動電圧が上昇する問題がある。
【0055】
前記有機発光層223上に正孔阻止層(hole blocking layer、HBL)が位置することができる。しかし、前記正孔阻止層は、前記有機発光層223が蛍光発光層である場合には省略することができる。前記正孔阻止層は、有機電界発光素子の駆動過程において前記有機発光層223で生成された励起子が拡散されることを抑制する役目をする。このような正孔阻止層は、Balq、BCP、CF−X、TAZまたはスピロ−TAZを使用して形成することができる。
【0056】
前記有機発光層223上に電子輸送層(electron transport layer、ETL)224と電子注入層(electron injecting layer、HTL)225が順に位置する。前記電子輸送層224は、前記有機発光層223への電子の輸送を容易にする層であって、例えば、PBD、TAZ、スピロ−PBDのような高分子材料、またはAlq3、BAlq、SAlqのような低分子材料を使用して形成することができる。前記電子注入層225は、前記有機発光層223への電子の注入を容易にする層であって、例えば、Alq3(tris(8−quinolinolato)aluminum)、LiF(Lithium Fluoride)、ガリウム混合物(Gacomplex)、PBDを使用して形成することができる。
【0057】
一方、前記電子輸送層224と前記電子注入層225を形成することは、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェットプリント法またはレーザー熱転写法を使用して行うことができる。
【0058】
かくして、フラーレン物質がドープされた正孔注入層221、正孔輸送層222、有機発光層223、電子輸送層224及び電子注入層225は、有機機能膜220を形成する。
【0059】
前記有機機能膜220上にカソード電極230が位置する。前記カソード電極230は、LiF及びAlを用いて形成することができる。その結果、前記有機発光層223を備えた有機機能膜220は、前記アノード電極210と前記カソード電極230との間に介在される。
【0060】
前記カソード電極230は、250乃至350nmの厚み、好ましくは、300nmの厚みで形成することができる。
【0061】
その後、メタルカン及び酸化バリウム(barium oxide)を用いて封止し、有機電界発光素子200を完成する。
【0062】
以下、本発明に係る好適な実験例を提示する。但し、後述する実験例は、本発明の理解を助けるために提示するものに過ぎず、本発明がこれらの実験例に限定されるものではない。
【0063】
<実験例1乃至3>
有機電界発光素子のバッファ層としてC60を1nmの厚みに形成し、正孔輸送層としてNPD(N,N’−dinaphthyl−N,N’−diphenyl benzidine)だけを真空蒸着した。有機発光層として8−trishydroxyquinoline aluminum(Alq3)を25nmの厚みに蒸着した。前記有機発光層上に電子輸送層を形成し、カソード電極としてLiF/Alを300nmの厚みに蒸着した。その後、メタルカン及びバリウムオキサイドを用いて封止し、有機電界発光素子を製作した。実験例2では、前記バッファ層の厚みを3nmにし、実験例3では、前記バッファ層の厚みを5nmにしたことを除いて、実験例1と同様に有機電界発光素子を製作した。
【0064】
<実験例4乃至6>
実験例4では、前記実験例1において正孔輸送層としてNPD(N,N’−dinaphthyl−N,N’−diphenyl benzidine)及びC60を1:0.02(C60 2重量%)の割合で真空蒸着したことを除いて、実験例1と同様に有機電界発光素子を製作した。実験例5では、実験例4においてバッファ層の厚みを3nmにし、実験例では、前記バッファ層の厚みを5nmにしたことを除いて、前記実験例4と同様に有機電界発光素子を製作した。
【0065】
<比較例>
前記実験例1でバッファ層を形成しないことを除いて、実験例1と同様に有機電界発光素子を製作した。
【0066】
前記実験例1乃至6及び比較例で製作された有機電界発光素子の駆動電圧及び効率特性を評価し、表1に記載した。
【0067】
表1を参照すれば、前記実験例1乃至6の場合、駆動電圧が7.5乃至8.6Vであって、比較例の駆動電圧である9Vより優れていることが分かる。特に、実験例4乃至6のように、正孔輸送層にフラーレンをドーパントとして2重量%を含有している場合には、フラーレンをドープせずに、NPDだけを使用した実験例1乃至3の有機電界発光素子より駆動電圧特性が約0.3乃至1.1Vより低いことが分かる。但し、効率特性においては、実験例1乃至6と比較例の有機電界発光素子との間においてほぼ同じ特性を示した。
【0068】
【表1】

【0069】
また、前記実験例1乃至6の有機電界発光素子を輝度900cd/mで駆動した時、輝度50%までの半減寿命が500時間以上を示した。これは、フラーレンからなるバッファ層を形成せず、また、フラーレンをドープしない正孔輸送層を備えた比較例の有機電界発光素子の50%までの半減寿命である100時間に比べてその寿命が5倍以上向上したことが分かる。
【0070】
以上において説明した本発明は、本発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で、様々な置換、変形及び変更が可能であるので、上述した実施例及び添付された図面に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】従来技術に係る有機電界発光素子を示す断面図である。
【図2】本発明に係る有機電界発光素子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
20 基板
200 有機電界発光素子
210 アノード電極
221 正孔注入層
222 正孔輸送層
223 有機発光層
224 電子輸送層
225 電子注入層
220 有機機能膜
230 カソード電極
240 バッファ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成されたアノード電極と、
前記アノード電極上に形成され、フラーレン系物質からなるバッファ層と、
前記バッファ層上に形成され、少なくとも有機発光層を含む有機機能膜と、
前記有機機能膜上に形成されたカソード電極と、を備えることを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
前記フラーレン系物質は、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94及びC96よりなる群から選ばれるいずれか1つの物質であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記バッファ層の厚みは、1nm乃至5nmであることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記バッファ層の厚みは、5nmであることを特徴とする請求項3に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記バッファ層は、真空蒸着法を用いて形成することを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
基板と、
前記基板上に形成されたアノード電極と、
前記アノード電極上に形成され、フラーレン系物質からなるバッファ層と、
前記バッファ層上に形成され、前記フラーレン系物質がドープされた正孔注入層及び/または正孔輸送層と、
前記正孔注入層及び/または正孔輸送層上に形成された有機発光層と、
前記有機発光層上に形成されたカソード電極と、を備えることを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項7】
前記フラーレン系物質は、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94及びC96よりなる群から選ばれるいずれか1つの物質であることを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記バッファ層の厚みは、1nm乃至5nmであることを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記バッファ層の厚みは、5nmであることを特徴とする請求項8に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記バッファ層は、真空蒸着法を用いて形成することを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
前記正孔注入層は、CuPc(copper phthalocyanine)、TNATA、TCTA、TDAPB、TDATA、PANI(polyaniline)及びPEDOT(poly(3,4)−ethylenedioxythiophene)よりなる群から選ばれるいずれか1つの物質で形成されることを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
前記正孔注入層にドープされたフラーレン系物質が、1乃至30重量%ドープされていることを特徴とする請求項11に記載の有機電界発光素子。
【請求項13】
前記正孔輸送層は、NPD(N,N’−dinaphthyl−N,N’−diphenyl benzidine)、TPD(N,N’−Bis−(3−methylphenyl)−N,N’−bis−(phenyl)−benzidine)、s−TAD、MTDATA(4,4’,4”−Tris(N−3−methylphenyl−N−phenyl−amino)−triphenylamine)及びPVKよりなる群から選ばれるいずれか1つの物質で形成されることを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子。
【請求項14】
前記正孔輸送層にドープされたフラーレン系物質は、2重量%以下にドープされていることを特徴とする請求項13に記載の有機電界発光素子。
【請求項15】
前記正孔輸送層にドープされたフラーレン系物質は、2重量%ドープされていることを特徴とする請求項14に記載の有機電界発光素子。
【請求項16】
前記正孔輸送層の正孔輸送物質のLUMO(最低空軌道;Lowest Unoccupied Molecular Orbital)は、前記フラーレン系物質のLUMOより小さいことを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子。
【請求項17】
前記フラーレン系物質がドープされた正孔注入層及び/または正孔輸送層は、真空蒸着法、スピンコート法及びインクジェット法よりなる群から選ばれるいずれか1つの方法を用いて形成することを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子。
【請求項18】
前記正孔注入層または正孔輸送層は、複数の層からなることを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子。
【請求項19】
前記有機電界発光素子は、前記有機発光層上に正孔抑制層、電子輸送層及び電子注入層よりなる群から選ばれる少なくとも1層をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−295163(P2006−295163A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103530(P2006−103530)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】