説明

有機電界発光素子

【課題】駆動電圧が低く、かつ電圧上昇幅の小さい有機電界発光素子の提供。
【解決手段】一対の電極間に、発光層を含む有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(I)で表される化合物の少なくとも一種を有機化合物層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【化19】


式中、R1は置換基を表し、Qは炭素原子とともに置換または無置換のピラゾール環を構成する炭素あるいは窒素からなる原子群を表す。mは0以上の整数を表し、nは2以上の整数を表す。ただしmとnの和は6以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを光に変換して発光できる発光素子、特に有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」と称する場合もある)は、低電圧で高輝度の発光を得ることができるため、有望な表示素子として注目されており研究開発が活発であるが、耐久性、発光効率、駆動電圧の低減など、さらなる改良が求められている。発光材料に関してはフェニルピリジン白金錯体やフェノキシピリジン白金錯体などの4座配位白金錯体(特許文献1、2、3)などのりん光発光材料を含有する素子が高い効率を達し、着目されている。さらなる耐久性、発光効率、駆動電圧の低減させるために、これらのりん光発光材料と組み合わせるホスト材料、特に電子輸送性のホスト材料の開発が強く望まれていた。
一方、燐光発光材料との組み合わせたホスト材料としては、含窒素ヘテロ環化合物が知られているが(特許文献4、5)、耐久性などの観点でさらに改良が望まれていた。
【特許文献1】国際公開特許第05/042550号パンフレット
【特許文献2】国際公開特許第05/042444号パンフレット
【特許文献3】国際公開特許第04/108857号パンフレット
【特許文献4】特開2005−320277号公報
【特許文献5】特開2005−255986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、駆動電圧が低く、かつ電圧上昇幅の小さい、有機電界発光素子の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は下記手段によって達成された。すなわち
(1)一対の電極間に、発光層を含む有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(I)で表される化合物の少なくとも一種を有機化合物層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【0005】
【化6】

【0006】
式中、R1は置換基を表し、Qは炭素原子とともに置換または無置換のピラゾール環を構成する炭素あるいは窒素からなる原子群を表す。mは0以上の整数を表し、nは2以上の整数を表す。ただしmとnの和は6以下である。
(2)一般式(I)が下記一般式(II)または一般式(III)であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【0007】
【化7】

【0008】
式中、R2、R3およびRは水素原子あるいは置換基を表す。R1、mおよびnは一般式(I)におけるR1、mおよびnと同義である。R1、R2、R3およびRが置換基を表す場合、さらに置換基を有していてもよく、R1とR3、R1とR、R1とR4あるいはR3とR4は互いに結合し、環を形成してもよい。
【0009】
【化8】

【0010】
式中、R5、R6およびR7は水素原子あるいは置換基を表す。R1、mおよびnは一般式(I)におけるR1、mおよびnと同義である。R1、R5、R6およびR7が置換基を表す場合、さらに置換基を有していてもよく、R1とR5、R1とR6、R1とR、R5とR6あるいはR6とR7は互いに結合し、環を形成してもよい。
(3)一般式(I)が下記一般式(IV)であることを特徴とする(1)に記載の有機電界発光素子。
【0011】
【化9】

【0012】
式中、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17は水素原子あるいは置換基を表す。R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17が置換基を表す場合、さらに置換基を有していてもよく、R9とR10、R10とR11、R13とR14あるいはR15とR16は互いに結合し、環を形成してもよい。
(4)一般式(I)が下記一般式(V)であることを特徴とする(1)に記載の有機電界発光素子。
【0013】
【化10】

【0014】
式中、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25およびR26は水素原子あるいは置換基を表す。R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25およびR26が置換基を表す場合、さらに置換基を有していてもよく、R17とR18、R18とR19、R19とR20、R20とR21、R22とR23、R23とR24、R24とR25あるいはR25とR26は互いに結合し、環を形成してもよい。R8、R9、R10、R11、R13、R14、R15およびR16は一般式(IV)におけるR8、R9、R10、R11、R13、R14、R15およびR16と同義である。
【0015】
(5)一対の電極間に、発光層を含む有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、有機化合物層のいずれか少なくとも一層に一般式(I)〜(IV)で表される化合物の少なくとも一種を含み、さらに発光層に少なくとも一種の三重項発光材料を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
(6)前記発光層に含まれる少なくとも一種の三重項発光材料が白金錯体またはイリジウム錯体であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
(7)前記発光層に含まれる少なくとも一種の三重項発光材料が白金錯体であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
(8)一般式(I)〜(V)で表される化合物の最低励起三重項エネルギー準位(以下、T1と略す)が65kcal/mol(272.35kJ/mol)以上、95kcal/mol(398.05kJ/mol)以下であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の有機電界発光素子。
(9)一般式(I)〜(V)で表される化合物のガラス転移温度(以下Tgと略す)が110℃以上、400℃以下であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発光素子は、駆動電圧が低く、かつ電圧上昇幅が低い。本発明の発光素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等の分野に好適に使用できる。また、本発明の(I)〜(V)で表される化合物は、医療用途、蛍光増白剤、写真用材料、UV吸収材料、レーザー色素、記録メディア用材料、インクジェット用顔料、カラーフィルター用染料、色変換フィルター、分析用途等にも適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書において、一般式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)で表される化合物は、「本発明の化合物」と同義で用いる。また本発明の化合物を含有する有機化合物層を有する有機電界発光素子は、「本発明の発光素子」と同義で用いる。本明細書において置換基群Aとは以下のように定義される。
【0018】
(置換基群A)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数3〜10であり、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、
【0019】
アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、
【0020】
アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、
【0021】
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
【0022】
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、
【0023】
スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、より好ましくはフッ素原子が挙げられる)、
【0024】
シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、オキソ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられ、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。
【0025】
一般式(I)について説明する。
【0026】
一般式(I)において、R1は置換基を表す。その置換基としては、前記置換基群Aから選ばれる。Qは炭素原子とともに置換または無置換のピラゾール環を構成する炭素あるいは窒素からなる原子群を表す。mは0以上の整数を表し、nは2以上の整数を表す。ただしmとnの和は6以下である。mとnの和が6未満の場合の中心のベンゼン環は、RあるいはQと炭素原子とともに構成される置換または無置換のピラゾール環以外は、水素原子で置換されていることを意味する。Qと炭素原子とで構成されるピラゾール環が置換基を有する場合、その具体的な例としては、前記置換基群Aで説明した基が挙げられる。また複数の置換基を有する場合は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合し縮環を形成してもよい。
【0027】
次に一般式(I)の好ましい範囲について説明する。
R1は好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基、シリル基であり、さらに好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ヘテロ環基、シリル基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ヘテロ環基である。これらの置換基は更に置換されてもよい。
Qは好ましくは、窒素原子および炭素原子とともに置換ピラゾール環を構成する場合であり、その好ましい置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基、シリル基であり、より好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ヘテロ環基、シリル基であり、さらに好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基あるいはシリル基である。これらの置換基は更に置換されてもよい。
mは0以上の整数を表し、nは好ましくは2〜6であり、より好ましくは2〜5であり、さらに好ましくは2〜3であり、特に好ましくはnは2である。ただしmとnの和は6以下である。
【0028】
本発明における一般式の関係は以下の通りである。一般式(I)は好ましくは一般式(II)あるいは一般式(III)であり、一般式(II)と一般式(III)のうち好ましいのは一般式(II)であり、一般式(II)は好ましくは一般式(IV)であり、一般式(IV)は好ましくは一般式(V)である。
【0029】
一般式(II)について説明する。一般式(II)において、R2、R3およびRは水素原子あるいは置換基を表す。
R1、mおよびnは一般式(I)におけるR1、mおよびnと同義である。R1、R2、R3およびRが置換基を表す場合、さらに置換基を有していてもよく、R1とR3、R1とR、R1とR4あるいはR3とR4は互いに結合し、環を形成してもよい。
一般式(II)において、R2は好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基、シリル基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ヘテロ環基、シリル基であり、さらに好ましくは、アリール基あるいはヘテロ環基である。これらの置換基は更に置換されてもよい。
【0030】
R3およびR4は好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基、シリル基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、シリル基であり、さらに好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基であり、特に好ましくはアルキル基あるいはシアノ基である。R1、mおよびnは一般式(I)におけるR1、mおよびnと同義であり、その好ましい範囲も同じである。
R1とR3、R1とR、R1とR4あるいはR3とR4が互いに結合し、環を形成する場合には、5〜7員の縮合環を形成する場合が好ましく、より好ましくは6員の縮合環であり、さらに好ましくは縮合した6員環がベンゼン縮環、ピリジン縮環、ピラジン縮環、ピリミジン縮環、ピリダジン縮環を形成する場合である。
【0031】
一般式(III)について説明する。一般式(III)において、R5、R6およびR7は水素原子あるいは置換基を表す。R1、mおよびnは一般式(I)におけるR1、mおよびnと同義である。R1、R5、R6およびR7が置換基を表す場合、さらに置換基を有していてもよく、R1とR5、R1とR6、R1とR、R5とR6あるいはR6とR7は互いに結合し、環を形成してもよい。一般式(III)において、R5は好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基、シリル基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ヘテロ環基、シリル基であり、さらに好ましくは、アリール基あるいはヘテロ環基である。これらの置換基は更に置換されてもよい。
【0032】
R6およびR7は好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基、シリル基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、シリル基であり、さらに好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基であり、特に好ましくはアルキル基あるいはシアノ基である。R1、mおよびnは一般式(I)におけるR1、mおよびnと同義であり、その好ましい範囲も同じである。
R1とR5、R1とR6、R1とR、R5とR6あるいはR6とR7が互いに結合し、環を形成する場合には、5〜7員の縮合環を形成する場合が好ましく、より好ましくは6員の縮合環であり、さらに好ましくは縮合した6員環がベンゼン縮環、ピリジン縮環、ピラジン縮環、ピリミジン縮環、ピリダジン縮環を形成する場合である。
【0033】
一般式(IV)について説明する。一般式(IV)において、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17は水素原子あるいは置換基を表す。R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17が置換基を表す場合、さらに置換基を有していてもよく、R9とR10、R10とR11、R13とR14あるいはR15とR16は互いに結合し、環を形成してもよい。一般式(IV)において、R8、R9、R10およびR11は好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基、シリル基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ヘテロ環基、シリル基であり、さらに好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基あるいはシアノ基である。
【0034】
R12およびR17は好ましくは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基、シリル基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ヘテロ環基、シリル基であり、さらに好ましくはアリール基あるいはヘテロ環基である。これらの置換基は更に置換されてもよい。
【0035】
R13、R14、R15およびR16は好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基、シリル基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ヘテロ環基、シリル基であり、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基であり、特に好ましくはアルキル基あるいはシアノ基である。
R9とR10、R10とR11、R13とR14あるいはR15とR16が互いに結合し、環を形成する場合には、5〜7員の縮合環を形成する場合が好ましく、より好ましくは6員の縮合環であり、さらに好ましくは縮合した6員環がベンゼン縮環、ピリジン縮環、ピラジン縮環、ピリミジン縮環、ピリダジン縮環を形成する場合である。
【0036】
一般式(V)について説明する。一般式(V)において、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25およびR26(以下、本明細書中ではR17〜R26と表記する)は水素原子あるいは置換基を表す。隣接する基(例えばR17とR18)同士が置換基を表す場合、さらに置換基を有していてもよく、互いに結合し、環を形成してもよい。一般式(IV)において、R17〜R26は好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基、シリル基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ヘテロ環基、シリル基であり、さらに好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基であり、特に好ましくは、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子あるいはシアノ基である。R8、R9、R10、R11、R13、R14、R15およびR16は一般式(IV)におけるR8、R9、R10、R11、R13、R14、R15およびR16と同義であり、その好ましい範囲も同じである。
R17〜R26の隣接する基(例えばR17とR18)同士が互いに結合し、環を形成する場合には5〜7員の縮合環を形成する場合が好ましく、より好ましくは6員の縮合環であり、さらに好ましくは縮合した6員環がベンゼン縮環、ピリジン縮環、ピラジン縮環、ピリミジン縮環、ピリダジン縮環を形成する場合である。
【0037】
本発明の化合物の最低励起三重項エネルギー準位(以下、T1と略す場合がある。)は、好ましくは65kcal/mol(272.35kJ/mol)以上、95kcal/mol(398.05kJ/mol)以下であり、さらに好ましくは、65kcal/mol(272.35kJ/mol)以上、80kcal/mol(335.2kJ/mol)以下であり、より好ましくは、65kcal/mol(272.35kJ/mol)以上、75kcal/mol(314.3kJ/mol)以下であり、特に好ましくは、65kcal/mol(272.35kJ/mol)以上、70kcal/mol(293.3kJ/mol)以下である。
【0038】
化合物の最低励起三重項エネルギー準位については、井上晴夫、高木克彦、佐々木政子、朴鐘震共著「光化学I」、34〜38頁、丸善株式会社1999年発行や徳丸克巳著「光化学の世界」、48〜54頁、大日本図書社1993年発行等に詳しく説明されており、そこに挙げた記載の方法等により算出することができる。
【0039】
本発明の化合物は、蒸着姓、熱安定性、膜のアモルファス性、結晶化抑制の観点から、ガラス転移温度(以下Tgと略す)が110℃以上、400℃以下が好ましく、さらに好ましくは140℃以上、350℃以下であり、より好ましくは、150℃以上、300℃以下である。
【0040】
本発明の化合物は低分子化合物であっても良く、また、オリゴマー化合物、ポリマー化合物(重量平均分子量(ポリスチレン換算)は好ましくは1000〜5000000、より好ましくは2000〜1000000、さらに好ましくは3000〜100000である。)であっても良い。ポリマー化合物の場合、一般式(I)〜(V)で表される構造がポリマー主鎖中に含まれても良く、また、ポリマー側鎖に含まれていても良い。また、ポリマー化合物の場合、ホモポリマー化合物であっても良く、共重合体であっても良い。本発明の化合物は低分子化合物が好ましい。
【0041】
次に本発明の化合物の化合物例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0042】
【化11】

【0043】
【化12】

【0044】
【化13】

【0045】
【化14】

【0046】
【化15】

【0047】
【化16】

【0048】
本発明の化合物は、ジカルボニル化合物とヒドラジン誘導体との縮合反応や有機ハロゲン化物と有機ホウ酸エステルまたは有機ホウ酸化合物との遷移金属を触媒としたカップリング反応などの方法により合成できる。例えば、European Journal of Organic Chemistry, 4, 747-755, (2003)に記載の方法等を参照として合成することができるが、ここで挙げた方法に限定されるものではない。
【0049】
本発明の化合物を合成する際の反応時間は反応の活性により異なり、特に限定されないが、1分以上5日以下が好ましく、5分以上3日以下がより好ましく、10分以上24時間以下がさらに好ましい。
【0050】
本発明の化合物を合成する際の反応温度は反応の活性により異なり、特に限定されないが、0℃以上300℃以下が好ましく、5℃以上250℃以下がより好ましく、10℃以上200℃以下がさらに好ましい。
【0051】
次に、本発明の化合物のうち、例示化合物(1)及び(11)の具体的な合成例を示すが、この方法に限定されるものではない。
【0052】
【化17】

【0053】
<本発明の化合物(1)の合成−1>
300 ml三口フラスコに、1,3−ジブロモベンゼン(A)を4.21 g(18.0 mmol)、ビスピナコラートジボロン10.1 g(39.6 mmol)、無水N,N-ジメチルホルムアミド200ml、酢酸カリウム10.4 g(106 mmol)を加え、窒素気流下、攪拌しているところに、ジフェニルホスフィノフェロセンパラジウムジクロリド0.86 g(1.05 mmol)を加え、80℃で9時間攪拌した。その後、水を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、無機塩を濾別したあと有機層をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(B)を3.86g、65.0%の収率で白色固体として得た。
1H-NMR (400 MHz, in CDCl3) δ= 7.37 (t, J = 7.6 Hz, 1 H), 7.90(dd, J = 1.2, 7.6 Hz, 2H), 8.28 (br.s, 1H).
【0054】
300mLの三口フラスコに、窒素気流下、化合物(C)25.0g(183 mmol)、ヨードベンゼン56.3g(276 mmol)、酸化銅1.31g(9.16 mmol)、炭酸セシウム120g(368 mmol)、サリチルアルドキシム5.00g(36.5 mmol)アセトニトリル195mlを加え、加熱還流下で6時間撹拌した。その後、反応混合物に水と酢酸エチルを加え、セライト濾過した後、水層を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、無機塩を濾別したのち、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、29.5gの化合物(D)を淡黄色油状化合物として75.7%の収率で得た。
1H-NMR (300 MHz, in CDCl3):δ(ppm)= 6.72 (d, 1H, J = 2.7 Hz), 7.32 (m, 1H), 7.45-7.53 (m, 2H), 7.67-7.74 (m, 2H), 7.93-7.97 (m, 1H).
【0055】
500mLの三口フラスコに、窒素気流下、化合物(D)9.61g(45.3 mmol)、無水テトラヒドロフラン96mlを加え、−78℃で撹拌しているところに、n−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M)31.1ml(49.8 mmol)をゆっくりと滴下し、さらに−78℃で一時間撹拌した。その後、反応混合物にヨウ素13.8g(54.4mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(138ml)を加え、撹拌しながら−78℃から徐々に室温へと昇温させた。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、一時間撹拌した後、水層と有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、無機塩を濾別したのち、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、15.8gの化合物(E)を黄色油状の化合物として定量的に得た。
1H-NMR (300 MHz, in CDCl3):δ(ppm)= 6.89 (br.s, 1H), 7.48-7.52 (m, 5H).
【0056】
200mLの三口フラスコに、窒素気流下、化合物(B)0.33g(1.00 mmol)、化合物(E)0.74g(2.2 mmol)、酢酸パラジウム0.022g(0.098mmol)、トリフェニルホスフィン0.11g(0.42mmol)、1,2-ジメトキシエタン5ml、1M炭酸水素ナトリウム水溶液5mlを加え、加熱還流下、6時間撹拌した。反応混合物に水を加えた後、水層を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、無機塩を濾別したのち、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。得られた結晶をヘキサンで分散洗浄することにより、0.39gの化合物(1)を白色紛体としての78%の収率で得た。
1H-NMR (400 MHz, in CDCl3):δ(ppm)= 6.57 (br.s, 2H), 7.13-7.18 (m, 3H), 7.23-7.30 (m, 5H), 7.36-7.44 (m, 6H).
【0057】
<本発明の化合物(1)の合成−2>
500mLの三口フラスコに、窒素気流下、1,3−ジアセチルベンゼン(F)14.3g(88.2 mmol)、テトラヒドロフラン143mlを加え、メカニカルスターラーにて撹拌しているところにカリウムt−ブトキシド21.8g(194 mmol)を加え、さらにトリフルオロ酢酸エチル27.6g(194mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液58mlをゆっくりと滴下し、加熱還流下、3時間撹拌した。反応混合物に希塩酸を加え系内のpHを1〜2に調整した後、水層を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、無機塩を濾別したのち、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粗結晶をヘキサンで分散洗浄することにより、24.5gの化合物(G)を黄色粉体として78.5%の収率で得た。
1H-NMR (400 MHz, in CDCl3):δ(ppm)= 6.35 (br.s, 2H), 7.69 (t, 1H, J = 7.6 Hz), 8.17 (dd, 2H, J 1.6, 7.6 Hz), 8.47-8.52 (m, 1H), 14.6-15.6 (br., 2H).
【0058】
500mLの三口フラスコに、化合物(G)14.0g(39.5 mmol)、エタノール140mlを加え、室温下で撹拌しているところにフェニルヒドラジン9.4g(86.9mmol)を加え、加熱還流下で6時間撹拌した。反応混合物に水を加えた後、水層を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、無機塩を濾別したのち、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。得られた結晶をヘキサンで分散洗浄することにより、11.0gの化合物(1)を白色紛体として55.8%の収率で得た。1H-NMRの分析の結果、前述の方法により合成した(1)のH-NMRの結果とよい一致を示した。本発明の化合物(1)のジクロロメタン溶液中における低温下でのりん光スペクトル測定の結果から、最低励起三重項エネルギー準位は68kcal/mol(284.9kJ/mol)と見積もられた。
【0059】
<本発明の化合物(11)の合成>
Journal of the Medicinal Chemistry, 34(9), 2892-2898, (1991)に記載の方法を参考とし、化合物(H)を合成した。100mLの三口フラスコに、化合物(H)1.84g(9.99 mmol)、臭化銅(II)を2.23g(9.98mmol)、45%臭化水素酸水溶液18mlを加え、氷冷下で撹拌しているところに亜硝酸ナトリウム0.83g(12mmol)を注意深く加えた。その後、反応混合物を室温下で一時間撹拌した後、水を加え、さらに一時間撹拌した。生じた粗結晶を濾別し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し1.33gの化合物(I)を紛体として53.6%の収率で得た。
1H-NMR (400 MHz, in CDCl3):δ(ppm)= 7.52-7.57 (m, 5H), 7.99 (s, 1H).
【0060】
200mLの三口フラスコに、窒素気流下、化合物(B)0.50g(2.0 mmol)、化合物(I)0.33g(1.0 mmol)テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.12g(0.10mmol)、1,2-ジメトキシエタン10ml、1M炭酸水素ナトリウム水溶液10mlを加え、加熱還流下で6時間撹拌した。反応混合物に水を加えた後、水層を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、無機塩を濾別したのち、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。得られた結晶をヘキサンで分散洗浄することにより、0.35gの化合物(11)を白色紛体としての85%の収率で得た。
1H-NMR (300 MHz, in CDCl3):δ(ppm)= 7.18-7.54 (m, 14H), 8.03 (s, 2H).
【0061】
次に、本発明の化合物を含有する発光素子に関して説明する。
本発明の発光素子は、本発明の化合物を利用する素子である点以外は通常の発光システム、駆動方法、利用形態などに用いることができる。本発明の化合物は、発光材料、ホスト材料、励起子ブロック材料、電荷ブロック材料あるいは電荷輸送材料として利用する場合が好ましく、さらに好ましくはホスト材料、励起子ブロック材料あるいは電荷輸送材料として利用する場合がさらに好ましい。発光材料として用いる場合は、紫外発光であっても赤外発光であっても良く、また蛍光発光であってもりん光発光であっても良い。電荷輸送材料として利用する場合、正孔輸送性であっても電子輸送性であってもよい。代表的な発光素子として有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子に好ましく用いられる。本発明の化合物を有機化合物層に含むことにより、駆動電圧が低く、電圧上昇幅の小さい有機EL素子が得られる。
本発明の化合物を発光層における発光材料として使用する場合、発光層中に0.1〜40質量%で含まれることが好ましく、0.5〜20質量%で含まれることが好ましい。
また、発光層中のホスト材料として使用される場合には、発光層中に60〜99.9質量%で含まれることが好ましく、80〜99.5質量%で含まれることが好ましい。
発光層以外(例えば、電荷ブロック層や電荷輸送層等)に含まれる場合には、該層中に0.1〜100質量%で含まれることが好ましく、0.5〜100質量%で含まれることが好ましい。
【0062】
[有機電界発光素子]
以下、本発明の有機電界発光素子について詳細に説明する。
本発明の発光素子は基板上に陰極と陽極を有し、両電極の間に有機発光層(以下、単に「発光層」と称する場合がある。)を含む有機化合物層を有する。発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
【0063】
本発明における有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。尚、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0064】
次に、本発明の発光材料を構成する要素について、詳細に説明する。
【0065】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機化合物層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。その具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
例えば、基板としてガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0066】
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
【0067】
基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、有機発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
【0068】
基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0069】
<陽極>
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0070】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられる。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0071】
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
【0072】
本発明の有機電界発光素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができる。が、前記基板上に構成されるのが好ましい。この場合、陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0073】
なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0074】
陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
【0075】
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0076】
なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0077】
<陰極>
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0078】
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0079】
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0080】
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0081】
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0082】
陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0083】
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0084】
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0085】
<有機化合物層>
本発明における有機化合物層について説明する。
本発明の有機電界発光素子は、有機化合物層を少なくとも一層有する。該有機化合物層は、少なくとも発光層を含む。発光層以外の他の有機化合物層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0086】
−有機化合物層の形成−
本発明の有機電界発光素子において、有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0087】
−発光層−
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも三重項発光材料(燐光発光材料)であっても良く、ドーパントは1種であっても2種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料と正孔輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。
また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0088】
本発明の化合物と合わせて使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0089】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0090】
燐光発光材料は、発光層中に、0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。
燐光発光材料としては、白金錯体またはイリジウム錯体が好ましく、より好ましくは白金錯体である。
燐光発光材料としては、国際公開特許第04/099339号パンフレット、同04/006498号パンフレット、同04/108857号パンフレットに記載の金属錯体が挙げられる。本発明の化合物は、これらの金属錯体と組み合わせて適用することが好ましい。
【0091】
また、本発明における発光層に含有されるホスト材料としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの及びアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
【0092】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0093】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.5nm〜100nmであるのがより好ましく、1nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0094】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0095】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々50nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0096】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0097】
−励起子ブロック層−
励起子ブロック層は、発光層における電荷再結合により生成した励起エネルギーが隣接層にエネルギー移動することにより発光効率が低下する現象を防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極あるいは陰極側で隣接する有機化合物層として、励起子ブロック層を設けることができる。
励起子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられ、前述の正孔ブロック層と同一であってもよい。
励起子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
励起子ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0098】
<保護層>
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2等の金属酸化物、SiNx、SiNxy等の金属窒化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
【0099】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0100】
<封止>
さらに、本発明の有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
【0101】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を通電することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【実施例】
【0102】
以下に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明の実施の態様はこれらに限定されない。
【0103】
【化18】

【0104】
(比較例)
洗浄したITO基板を蒸着装置に入れ、NPDを50nm蒸着し、この上にCBP及びCompound(83)(国際公開特許2004/108857号に記載の化合物)を10:1の質量比で40nm蒸着し、さらにこの上にBAlqを3nm、さらにこの上にAlqを30nm蒸着した。得られた有機薄膜上にパターニングしたマスク(発光面積が4mm×5mmとなる)を設置し、フッ化リチウムを3nm蒸着した後アルミニウムを60nm蒸着して比較例1の有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子に電流密度500A/mの直流定電流を通電したところ、発光が観測された。輝度300cd/m2で10時間発光させた。
【0105】
(実施例1)
比較例1において、BAlqの代わりに、本発明の例示化合物(1)を用いた以外は比較例1と同様にして実施例1の有機EL素子を作成した。得られた有機EL素子に電流密度500A/mの直流定電流を通電したところ、発光が観測された。輝度300cd/m2で10時間発光させたところ、比較例1と比較して駆動電圧が低く、電圧の上昇幅も小さかった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の有機電界発光素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等の分野に好適に使用できる。また本発明の化合物は、医薬品、蛍光増白剤、写真用材料、UV吸収材料、レーザー色素、記録メディア用材料、インクジェット用顔料、カラーフィルター用染料、色変換フィルター、分析用途等にも適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に、発光層を含む有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(I)で表される化合物の少なくとも一種を有機化合物層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【化1】

式中、R1は置換基を表し、Qは炭素原子とともに置換または無置換のピラゾール環を構成する炭素あるいは窒素からなる原子群を表す。mは0以上の整数を表し、nは2以上の整数を表す。ただしmとnの和は6以下である。
【請求項2】
一般式(I)が下記一般式(II)または一般式(III)であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化2】

式中、R2、R3およびRは水素原子あるいは置換基を表す。R1、mおよびnは一般式(I)におけるR1、mおよびnと同義である。R1、R2、R3およびRが置換基を表す場合、さらに置換基を有していてもよく、R1とR3、R1とR、R1とR4あるいはR3とR4は互いに結合し、環を形成してもよい。
【化3】

式中、R5、R6およびR7は水素原子あるいは置換基を表す。R1、mおよびnは一般式(I)におけるR1、mおよびnと同義である。R1、R5、R6およびR7が置換基を表す場合、さらに置換基を有していてもよく、R1とR5、R1とR6、R1とR、R5とR6あるいはR6とR7は互いに結合し、環を形成してもよい。
【請求項3】
一般式(I)が下記一般式(IV)であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化4】

式中、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17は水素原子あるいは置換基を表す。R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17が置換基を表す場合、さらに置換基を有していてもよく、R9とR10、R10とR11、R13とR14あるいはR15とR16は互いに結合し、環を形成してもよい。
【請求項4】
一般式(I)が下記一般式(V)であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化5】

式中、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25およびR26は水素原子あるいは置換基を表す。R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25およびR26が置換基を表す場合、さらに置換基を有していてもよく、R17とR18、R18とR19、R19とR20、R20とR21、R22とR23、R23とR24、R24とR25あるいはR25とR26は互いに結合し、環を形成してもよい。R8、R9、R10、R11、R13、R14、R15およびR16は一般式(IV)におけるR8、R9、R10、R11、R13、R14、R15およびR16と同義である。
【請求項5】
一対の電極間に、発光層を含む有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、有機化合物層のいずれか少なくとも一層に一般式(I)〜(IV)で表される化合物の少なくとも一種を含み、さらに発光層に少なくとも一種の三重項発光材料を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記発光層に含まれる少なくとも一種の三重項発光材料が、白金錯体またはイリジウム錯体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。

【公開番号】特開2007−266458(P2007−266458A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91656(P2006−91656)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】