説明

有機電界発光素子

【課題】低電圧駆動が可能な有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】陽極10及び陰極20と、陽極10及び陰極20の間に、発光層40を含む2以上の有機層30,40,50を有し、有機層30,40,50は、陽極10と発光層40の間に、分子量1,200以下のチオフェン誘導体を含む正孔注入層又は正孔輸送層30を含み、有機層30,40,50から選択される隣り合う2つの有機層30,40の間には、界面障壁低減層60があり、界面障壁低減層60は、その両側に隣接する前記2つの有機層30,40にそれぞれ含まれる少なくとも1つの材料をモル比1:1〜1:4の割合で混合した層である有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、電界を印可することにより、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子の再結合エネルギーにより蛍光性物質が発光する原理を利用した自発光素子である。
ところで、近年各種情報処理機器に組み込むための表示用装置では、特に低消費電力化への要求が高く、これを達成するために発光素子の低駆動電圧化が試みられている。
【0003】
例えば、特許文献1〜5では、二つの層の間に、2つ以上の物質を含む層を介在させる有機電界発光素子が開示されている。しかしながら、これらの有機電界発光素子の層は物質の混合比が規定されていない。
また、特許文献6,7では、両側の有機層を構成する材料を混合した層を有する有機電界発光素子が開示されており、特に特許文献7は正孔注入層としてポリスチレンスルホン酸(PSS)をドープした高分子チオフェン誘導体であるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等を用いることができるという記載がある。しかし、PEDOT/PSSは酸性物質を含んでおり、他の有機材料と混合する層を形成することは他の有機材料の変質を招くおそれがある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−313584号公報
【特許文献2】特開2007−042314号公報
【特許文献3】特開2007−173545号公報
【特許文献4】特開2007−221132号公報
【特許文献5】特開2007−258745号公報
【特許文献6】特開2002−324680号公報
【特許文献7】特開2007−300137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低電圧駆動が可能な有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、有機電界発光素子において陽極と陰極の間にある二つの有機層の間に、二つの有機層の材料を含む層を設け、さらに特定の化合物を含むことにより、素子の駆動電圧を著しく低下できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、以下の有機電界発光素子が提供できる。
1.陽極及び陰極と、
前記陽極及び陰極の間に、発光層を含む2以上の有機層を有し、
前記有機層は、前記陽極と発光層の間に、分子量1,200以下のチオフェン誘導体を含む正孔注入層又は正孔輸送層を含み、
前記有機層から選択される隣り合う2つの有機層の間には、界面障壁低減層があり、
前記界面障壁低減層は、その両側に隣接する前記2つの有機層にそれぞれ含まれる少なくとも1つの材料をモル比1:1〜1:4の割合で混合した層である有機電界発光素子。
2.正孔注入層、正孔輸送層、又は正孔注入層もしくは正孔輸送層に隣接する界面障壁低減層が、前記チオフェン誘導体と共に電子受容性化合物を含有する1記載の有機電界発光素子。
3.前記電子受容性化合物が、シアノ基を有する2に記載の有機電界発光素子。
4.前記チオフェン誘導体が、下記式(1)で表されるチオフェン誘導体である1〜3のいずれか記載の有機電界発光素子。
【化5】

(式中R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールアミノ基、置換又は無置換の核炭素数6〜40のアリール基、又は置換又は無置換の核炭素数2〜40の複素環基を表し、隣り合う置換基同士は互いに結合し環を形成してもよい。Y、Yはそれぞれ水素原子、又は置換あるいは無置換の一価の基を表す。nは1〜12の整数を表す。nが2以上の場合、複数あるR、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
5.前記式(1)のY、Yが、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換又は無置換の核炭素数6〜40のアリール基、又は置換又は無置換の核炭素数2〜40の複素環基である4に記載の有機電界発光素子。
6.陽極及び陰極と、
前記陽極及び陰極の間に、発光層を含む2以上の有機層を有し、
前記発光層、又は前記発光層と陰極の間にある層が、下記式(2)で表されるアリールホスフィンオキサイド誘導体を含み、
前記有機層から選択される隣り合う2つの有機層の間には、界面障壁低減層があり、
前記界面障壁低減層は、その両側に隣接する前記2つの有機層に含まれる材料をそれぞれ少なくとも1つ含有する有機電界発光素子。
【化6】

(式中、Ar、Ar、Arはそれぞれ独立に炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
7.前記界面障壁低減層が、その両側に隣接する有機層に含まれる材料をそれぞれ全て含有する1〜6のいずれか記載の有機電界発光素子。
8.前記有機層が、前記陽極と前記発光層との間に、正孔輸送層を含み、
界面障壁低減層が、前記発光層と前記正孔輸送層の間にあり、前記発光層に含まれる発光材料と前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性材料を含有する1〜7のいずれか記載の有機電界発光素子。
9.前記有機層が、前記陽極と前記発光層との間に、正孔輸送層と正孔注入層を含み、
界面障壁低減層が、前記正孔注入層と前記正孔輸送層の間にあり、前記正孔注入層に含まれる正孔注入性材料と、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性材料を含有する1〜8のいずれか記載の有機電界発光素子。
10.前記有機層が、前記陰極と前記発光層との間に、電子輸送層を含み、
界面障壁低減層が、前記発光層と前記電子輸送層の間にあり、前記発光層に含まれる発光材料と前記電子輸送層に含まれる電子輸送性材料を含有する1〜9のいずれか記載の有機電界発光素子。
11.前記有機層が、前記陰極と前記発光層との間に、電子輸送層と電子注入層を含み、
界面障壁低減層が、前記電子注入層と前記電子輸送層の間にあり、前記電子注入層に含まれる電子注入性材料と、前記電子輸送層に含まれる電子輸送性材料を含有する1〜10のいずれか記載の有機電界発光素子。
12.前記正孔注入性材料又は前記正孔輸送性材料が、アリールアミノ化合物である8又は9記載の有機電界発光素子。
13.界面障壁低減層が、下記式(1)で表されるチオフェン誘導体と、アリールアミノ化合物を含む1〜12のいずれか記載の有機電界発光素子。
【化7】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールアミノ基、置換又は無置換の核炭素数6〜40のアリール基、又は置換又は無置換の核炭素数2〜40の複素環基を表し、隣合う置換基同士は互いに結合し環を形成してもよい。Y、Yはそれぞれ水素原子、又は置換あるいは無置換の一価の基を表す。nは1〜12の整数を表す。nが2以上の場合、複数あるR、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
14.界面障壁低減層が、下記式(2)で表されるアリールホスフィンオキサイド誘導体とアリールアミノ化合物を含む1〜13のいずれか記載の有機電界発光素子。
【化8】

(式中、Ar、Ar、Arはそれぞれ独立に炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、駆動電圧の低い有機電界発光素子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の有機電界発光素子は、陽極及び陰極と、陽極及び陰極の間に、発光層を含む2以上の有機層を有する。本発明では、隣り合う2つの有機層の間に、2つの有機層にそれぞれ含まれる少なくとも1つの材料を混合した層を設け、隣接する2つの有機層の界面の障壁を低減する。このような界面障壁低減層を介在させることにより、素子の駆動電圧を低下できる。
有機層は、発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等を含むことができる。界面障壁低減層は、発光層と陽極の間、発光層と陰極の間、又は発光層と陽極の間及び発光層と陰極の間に設けることができる。有機層の数に応じて、それぞれ1以上設けることができる。
また、界面障壁低減層は、その両側に隣接する有機層に含まれる材料を少なくとも1つ含有するが、全て含有してもよい。
【0009】
界面障壁低減層が含む隣接する2つの層の材料の混合比(モル比)は1:1〜1:4であり、好ましくは1:1である。隣接する2つの層の材料のどちらのモル量が多くてもよい。また、界面障壁低減層が3以上の材料を含むとき、任意の2つの材料が上記のモル比を満たしていればよい。
さらに、好ましくは、界面障壁低減層において、これらの材料は実質的に均一に混合している。実質的に均一とは、界面障壁低減層の厚さ方向において、中央付近と隣接する層との界面付近との間で濃度勾配がないことであり、また界面障壁低減層の水平方向においても濃度勾配がないことである。
【0010】
また、本発明の有機電界発光素子は、好ましくは、陽極と発光層の間に正孔注入層又は正孔輸送層を有し、この正孔注入層又は正孔輸送層は分子量1,200以下のチオフェン誘導体を含む。このようなチオフェン誘導体を含むことにより、駆動安定性を有する有機電界発光素子を作製でき、その電圧を著しく低下させることができる。また、このチオフェン誘導体はPEDOT/PSSのように酸性物質を含まない。
本発明では、正孔注入層と正孔輸送層が共にチオフェン誘導体を含んでもよい。
【0011】
また、本発明の有機電界発光素子は、好ましくは、発光層、又は発光層と陰極の間にある層が、下記式(2)で表されるアリールホスフィンオキサイド誘導体を含む。このようなアリールホスフィンオキサイド誘導体を含むことにより駆動安定性を有する有機電界発光素子を作製でき、その電圧を著しく低下させることができる。
【化9】

(式中、Ar、Ar、Arはそれぞれ独立に炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
本発明では、発光層と発光層と陰極の間にある層が共にチオフェン誘導体を含んでもよい。
【0012】
以下、本発明の有機電界発光素子を、図面を用いて具体的に説明する。尚、図面において同じ部材には同じ符号を付して説明を省略する。
図1Aは本発明に係る有機電界発光素子の一実施形態を示す図である。
この図において、有機電界発光素子は、陽極10及び陰極20の間に、正孔輸送層30、発光層40、電子輸送層50の3つの有機層を含む。界面障壁低減層は、3つの有機層のうち、任意の2つの有機層の間、即ち、正孔輸送層30と発光層40の間、発光層40と電子輸送層50の間の1以上に設けることができる。図1Aでは、界面障壁低減層60は、正孔輸送層30と発光層40の間にある。この場合、界面障壁低減層60は、発光層40に含まれる発光材料と正孔輸送層30に含まれる正孔輸送性材料を含有する。また、図1Bに示すように、電子輸送層50と発光層40の間に、界面障壁低減層62を設けてもよい。この界面障壁低減層62は、電子輸送層50に含まれる電子輸送性材料と発光層40に含まれる発光材料を含有する。
【0013】
本発明の第1の有機電界発光素子では、正孔輸送層30が分子量1,200以下のチオフェン誘導体を含む。好ましくは界面障壁低減層60もこのチオフェン誘導体を含む。
本発明の第2の有機電界発光素子では、発光層40又は電子輸送層50が上記式(2)で表されるアリールホスフィンオキサイド誘導体を含む。好ましくは界面障壁低減層62もこのアリールホスフィンオキサイド誘導体を含む。
【0014】
図2Aは本発明に係る有機電界発光素子の他の実施形態を示す図である。
この図において、有機電界発光素子は、陽極10及び陰極20の間に、正孔注入層32、正孔輸送層30、発光層40、電子輸送層50の4つの有機層を含む。界面障壁低減層は、4つの有機層のうち、任意の2つの有機層の間、即ち、正孔注入層32と正孔輸送層30の間、正孔輸送層30と発光層40の間、発光層40と電子輸送層50の間の1以上に設けることができる。図2Aでは、界面障壁低減層64は、正孔注入層32と正孔輸送層30の間にある。この場合、界面障壁低減層64は、正孔注入層32に含まれる正孔注入性材料及び正孔輸送層30に含まれる正孔輸送性材料を含有する。また、図2Bに示すように、正孔輸送層30と発光層40の間に、さらに界面障壁低減層60を設けてもよい。この界面障壁低減層60は、正孔輸送層30に含まれる正孔輸送性材料と発光層40に含まれる発光材料を含有する。
【0015】
本発明の第1の有機電界発光素子では、正孔注入層32又は正孔輸送層30が分子量1,200以下のチオフェン誘導体を含む。好ましくは界面障壁低減層60,64もこのチオフェン誘導体を含む。
本発明の第2の有機電界発光素子では、発光層40又は電子輸送層50が上記式(2)で表されるアリールホスフィンオキサイド誘導体を含む。
【0016】
図3Aは本発明に係る有機電界発光素子の他の実施形態を示す図である。
この図において、有機電界発光素子は、陽極10及び陰極20の間に、正孔輸送層30、発光層40、電子輸送層50、電子注入層52の4つの有機層を含む。界面障壁低減層は、4つの有機層のうち、任意の2つの有機層の間、即ち、正孔輸送層30と発光層40の間、発光層40と電子輸送層50の間、電子輸送層50と電子注入層52の間の1以上に設けることができる。図3Aでは、界面障壁低減層66は、電子注入層52と電子輸送層50の間にある。この場合、界面障壁低減層66は、電子注入層52に含まれる電子注入性材料及び電子輸送層50に含まれる電子輸送性材料を含有する。また、図3Bに示すように、電子輸送層50と発光層40の間に、さらに界面障壁低減層62を設けてもよい。この界面障壁低減層62は、電子輸送層50に含まれる電子輸送性材料と発光層40に含まれる発光材料を含有する。
【0017】
本発明の第1の有機電界発光素子では、正孔輸送層30が分子量1,200以下のチオフェン誘導体を含む。
本発明の第2の有機電界発光素子では、発光層40、電子輸送層50又は電子注入層52が上記式(2)で表されるアリールホスフィンオキサイド誘導体を含む。好ましくは界面障壁低減層62,66もこのアリールホスフィンオキサイド誘導体を含む。
【0018】
本発明の有機電界発光素子において、上記分子量1,200以下のチオフェン誘導体は、好ましくは、下記式(1)で表されるチオフェン誘導体である。分子量1,200以下のチオフェン誘導体は、正孔注入層、正孔輸送層、界面障壁低減層等が含有し得る正孔注入性材料又は前記正孔輸送性材料である。
【化10】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールアミノ基、置換又は無置換の核炭素数6〜40のアリール基、又は置換又は無置換の核炭素数2〜40の複素環基を表し、隣合う置換基同士は互いに結合し環を形成してもよい。Y、Yはそれぞれ水素原子、又は置換あるいは無置換の一価の基を表す。nは1〜12の整数を表す。nが2以上の場合、複数あるR、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0019】
式(1)において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0020】
炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、ネオペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−ペンチルヘキシル基、1−ブチルペンチル基、1−ヘプチルオクチル基、3−メチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、3,5−テトラメチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0021】
これらの中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、ネオペンチル基、1−メチルペンチル基、1−ペンチルヘキシル基、1−ブチルペンチル基、1−ヘプチルオクチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、3,5−テトラメチルシクロヘキシル基である。
【0022】
炭素数1〜20のハロアルキル基の例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。好ましくは、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基である。
【0023】
炭素数1〜20のアルコキシ基の例としては、−OYと表される基が挙げられる。ここで、Yの具体例としては、上記のアルキル基で説明したものと同様のものが挙げられ、好ましい例も同様である。
【0024】
炭素数6〜40のアリールアミノ基の例としては、ジフェニルアミノ基等、又はジフェニルアミノ基やアミノ基を置換基として有する、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、トリフェニレニル基、フルオランテニル基、ビフェニル基等が挙げられる。好ましくは、ジフェニルアミノ基やアミノ基を置換基として有する、フェニル基、ナフチル基である。
【0025】
核炭素数6〜40のアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基、トリフェニレニル基が挙げられる。
置換基としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基、ブチル基、フェニル基等が挙げられる。
好ましくは、置換又は無置換のフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基である。
【0026】
置換又は無置換の炭素数2〜40の複素環基の例としては、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、1−イミダゾリル基、2−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、1−インドリジニル基、2−インドリジニル基、3−インドリジニル基、5−インドリジニル基、6−インドリジニル基、7−インドリジニル基、8−インドリジニル基、2−イミダゾピリジニル基、3−イミダゾピリジニル基、5−イミダゾピリジニル基、6−イミダゾピリジニル基、7−イミダゾピリジニル基、8−イミダゾピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、β−カルボリン−1−イル、β−カルボリン−3−イル、β−カルボリン−4−イル、β−カルボリン−5−イル、β−カルボリン−6−イル、β−カルボリン−7−イル、β−カルボリン−6−イル、β−カルボリン−9−イル、1−フェナントリジニル基、2−フェナントリジニル基、3−フェナントリジニル基、4−フェナントリジニル基、6−フェナントリジニル基、7−フェナントリジニル基、8−フェナントリジニル基、9−フェナントリジニル基、10−フェナントリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナントロリン−2−イル基、1,7−フェナントロリン−3−イル基、1,7−フェナントロリン−4−イル基、1,7−フェナントロリン−5−イル基、1,7−フェナントロリン−6−イル基、1,7−フェナントロリン−8−イル基、1,7−フェナントロリン−9−イル基、1,7−フェナントロリン−10−イル基、1,8−フェナントロリン−2−イル基、1,8−フェナントロリン−3−イル基、1,8−フェナントロリン−4−イル基、1,8−フェナントロリン−5−イル基、1,8−フェナントロリン−6−イル基、1,8−フェナントロリン−7−イル基、1,8−フェナントロリン−9−イル基、1,8−フェナントロリン−10−イル基、1,9−フェナントロリン−2−イル基、1,9−フェナントロリン−3−イル基、1,9−フェナントロリン−4−イル基、1,9−フェナントロリン−5−イル基、1,9−フェナントロリン−6−イル基、1,9−フェナントロリン−7−イル基、1,9−フェナントロリン−8−イル基、1,9−フェナントロリン−10−イル基、1,10−フェナントロリン−2−イル基、1,10−フェナントロリン−3−イル基、1,10−フェナントロリン−4−イル基、1,10−フェナントロリン−5−イル基、2,9−フェナントロリン−1−イル基、2,9−フェナントロリン−3−イル基、2,9−フェナントロリン−4−イル基、2,9−フェナントロリン−5−イル基、2,9−フェナントロリン−6−イル基、2,9−フェナントロリン−7−イル基、2,9−フェナントロリン−8−イル基、2,9−フェナントロリン−10−イル基、2,8−フェナントロリン−1−イル基、2,8−フェナントロリン−3−イル基、2,8−フェナントロリン−4−イル基、2,8−フェナントロリン−5−イル基、2,8−フェナントロリン−6−イル基、2,8−フェナントロリン−7−イル基、2,8−フェナントロリン−9−イル基、2,8−フェナントロリン−10−イル基、2,7−フェナントロリン−1−イル基、2,7−フェナントロリン−3−イル基、2,7−フェナントロリン−4−イル基、2,7−フェナントロリン−5−イル基、2,7−フェナントロリン−6−イル基、2,7−フェナントロリン−8−イル基、2,7−フェナントロリン−9−イル基、2,7−フェナントロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル−1−インドリル基、4−t−ブチル−1−インドリル基、2−t−ブチル−3−インドリル基、4−t−ブチル−3−インドリル基、1−ジベンゾフラニル基、2−ジベンゾフラニル基、3−ジベンゾフラニル基、4−ジベンゾフラニル基、1−ジベンゾチオフェニル基、2−ジベンゾチオフェニル基、3−ジベンゾチオフェニル基、4−ジベンゾチオフェニル基、1−シラフルオレニル基、2−シラフルオレニル基、3−シラフルオレニル基、4−シラフルオレニル基、1−ゲルマフルオレニル基、2−ゲルマフルオレニル基、3−ゲルマフルオレニル基、4−ゲルマフルオレニル基等が挙げられる。
【0027】
これらの中でも好ましくは、2−ピリジニル基、1−インドリジニル基、2−インドリジニル基、3−インドリジニル基、5−インドリジニル基、6−インドリジニル基、7−インドリジニル基、8−インドリジニル基、2−イミダゾピリジニル基、3−イミダゾピリジニル基、5−イミダゾピリジニル基、6−イミダゾピリジニル基、7−イミダゾピリジニル基、8−イミダゾピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−ジベンゾフラニル基、2−ジベンゾフラニル基、3−ジベンゾフラニル基、4−ジベンゾフラニル基、1−ジベンゾチオフェニル基、2−ジベンゾチオフェニル基、3−ジベンゾチオフェニル基、4−ジベンゾチオフェニル基、1−シラフルオレニル基、2−シラフルオレニル基、3−シラフルオレニル基、4−シラフルオレニル基、1−ゲルマフルオレニル基、2−ゲルマフルオレニル基、3−ゲルマフルオレニル基、4−ゲルマフルオレニル基である。
【0028】
尚、置換基としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基、ブチル基、フェニル基等が挙げられる。
【0029】
、Rは互いに結合し環を形成してもよい。例えば、ベンゼン環、シクロヘキシル環、ナフチル環が挙げられる。
【0030】
式(1)のY、Yは、好ましくは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換又は無置換の核炭素数6〜40のアリール基、又は置換又は無置換の核炭素数2〜40の複素環基である。アルキル基、アリール基又は複素環基については、R、Rと同じである。
【0031】
以下に、式(1)で表されるチオフェン誘導体の具体例を示す。
【0032】
【化11】


【0033】
式(1)のチオフェン誘導体は、市販の製品、又は公知の方法にて合成したものを使用できる。合成法としては、特許第2826381号等を参照すればよい。
【0034】
本発明の正孔注入層、正孔輸送層、界面障壁低減層は、式(1)のチオフェン誘導体と共に、チオフェン誘導体に対し電子受容性を示す化合物(電子受容性化合物)を含有することが好ましい。電子受容性化合物を含むことにより、
有機電界発光素子のキャリアバランスを改善させることができる。
【0035】
電子受容性化合物としては、電子吸引性の置換基又は電子欠乏環を有する有機化合物や、金属酸化物を使用できる。
電子吸引性の置換基としては、例えば、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基、カルボニル基、ニトロ基、アリールホウ素基等が挙げられる。特に、シアノ基が好ましい。
【0036】
電子欠乏環として、例えば、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、2−イミダゾール、4−イミダゾール、3−ピラゾール、4−ピラゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、3−(1,2,4−N)−トリアゾリル、5−(1,2,4−N)−トリアゾリル、5−テトラゾリル、4−(1−O,3−N)−オキサゾール、5−(1−O,3−N)−オキサゾール、4−(1−S,3−N)−チアゾール、5−(1−S,3−N)−チアゾール、2−ベンゾキサゾール、2−ベンゾチアゾール、4−(1,2,3−N)−ベンゾトリアゾール、及びベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0037】
また、電子受容性化合物として、キノイド誘導体、アリールボラン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタルイミド誘導体等のイミド誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体等も好ましい。
例えば、下記のキノイド誘導体が挙げられる。
【化12】

式中、R11〜R28は、それぞれ水素、ハロゲン、フルオロアルキル基、シアノ基、アルコキシ基、アルキル基又はアリール基である。ただし、R11〜R28が同一分子中で全て水素であるものは除く。
【0038】
11〜R28のハロゲンとして、フッ素、塩素が好ましい。
11〜R28のフルオロアルキル基として、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基が好ましい。
11〜R28のアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、iso―プロポキシ基、tert−ブトキシ基が好ましい。
11〜R28のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
11〜R28のアリール基として、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0039】
Xは電子吸引基であり、下記式(j)〜(p)の構造のいずれかからなる。好ましくは、(j)、(k)、(l)の構造である。
【0040】
【化13】

(式中、R29〜R32は、それぞれ水素、フルオロアルキル基、アルキル基、アリール基又は複素環基であり、R30とR31が環を形成してもよい。)
【0041】
29〜R32のフルオロアルキル基、アルキル基、アリール基は、R11〜R28と同様である。
29〜R32の複素環として、下記式に示す置換基が好ましい。
【化14】

【0042】
30とR31が環を形成する場合、Xは、好ましくは、下記式に示す置換基である。
【化15】

(式中、R51’,R52’は、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基である。)
上述した電子受容性化合物のうち、シアノ基を有するものが特に好ましい。
【0043】
チオフェン誘導体に対して電子受容性を示すキノイド誘導体の具体例を以下に示す。
【0044】
【化16】

【0045】
また、電子受容性化合物として、下記式に示される化合物が挙げられる。
【化17】

【0046】
(式中、R41、R42,R43、R44、R45、R46はそれぞれ置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のアラルキル基、置換又は無置換の複素環基のいずれかを示す。但し、R41、R42,R43、R44、R45、R46は同じでも異なっていてもよい。また、R41とR42,R43とR44、R45とR46、又はR41とR46,R42とR43、R44とR45が縮合環を形成していてもよい。)
【0047】
好ましくは、下記式で示される化合物である。
【化18】

(式中、Rは、それぞれ、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、トリフルオロメチル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルカルバモイル基、ジアリールカルバモイル基、又はカルボキシル基である。)
特に好ましくはRがシアノ基の場合である。
【0048】
上記式(1)で表されるチオフェン誘導体に対して電子受容性化合物は、チオフェン誘導体に対して、好ましくは重量モル分率で1〜60モル%、より好ましくは1〜40モル%含まれていることが好ましい。
【0049】
正孔注入層、正孔輸送層は、チオフェン誘導体と、電子受容性化合物で層を構成してもよく、また、後述する材料と混合して層を形成してもよい。
【0050】
また、本発明の有機電界発光素子において、正孔注入層、正孔輸送層、界面障壁低減層等が含み得る正孔注入性材料又は前記正孔輸送性材料は、好ましくは、アリールアミノ化合物である。アリールアミノ化合物については後述する。
【0051】
さらに、本発明の有機電界発光素子において、発光層、電子輸送層、電子注入層、界面障壁低減層等が含み得る発光材料は、好ましくは、下記式(2)で表されるアリールホスフィンオキサイド誘導体である。
【化19】

(式中、Ar、Ar、Arはそれぞれ独立に炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
【0052】
式(2)において、Ar、Ar、Arは、好ましくは、それぞれフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、フルオランテニル、クリセニル、ビフェニル、ターフェニル、フルオレニル、フェナントレニル、トリフェニレニル基であり、より好ましくはそれぞれ置換又は無置換のベンゼン環1〜4個から構成される基である。
【0053】
本発明の有機電界発光素子の有機層が上述した好適化合物を含むとき、界面障壁低減層は、例えば、式(1)で表されるチオフェン誘導体と、アリールアミノ化合物を含んで構成でき、また、式(2)で表されるアリールホスフィンオキサイド誘導体とアリールアミノ化合物を含んで構成できる。
【0054】
本発明の有機電界発光素子において、陽極と陰極の間にある有機層は、図1A〜3Bに示すような正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、電子輸送層に限定されない。例えば、有機電界発光素子は、以下に示す(1)〜(8)の構成を有し、任意の2つの有機層の間に界面障壁低減層を設けることができる。
(1)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(2)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
(4)陽極/無機半導体層/絶縁層/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
(5)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
(7)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(8)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/絶縁層/陰極
【0055】
以下、本発明の有機電界発光素子を構成する各部材について説明する。
(透光性基板)
本発明の有機電界発光素子は透光性の基板上に作製する。ここでいう透光性基板は有機電界発光素子を支持する基板であり、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上で、平滑な基板が好ましい。
具体的には、ガラス板、ポリマー板等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等が挙げられる。またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。
尚、光取り出し方向の反対側に支持基板が位置する場合には透光性は不要である。
【0056】
(陽極)
陽極は、正孔を正孔注入層、正孔輸送層又は発光層に注入する役割を担うものであり、陽極側に透明性を必要とする場合は、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、酸化インジウム亜鉛合金(IZO)、金、銀、白金、銅等を使用できる。また、透明性を必要としない、反射型電極とする場合には、これらの金属の他に、アルミ、モリブデン、クロム、ニッケル等の金属や合金を使用することもできる。
これら材料は単独で用いることもできるが、これら材料同士の合金や、その他の元素を添加した材料も適宜選択して用いることができる。
陽極はこれらの電極物質を蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成することにより作製することができる。
発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。また陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選択される。
【0057】
(発光層)
発光層は以下の機能を併せ持つものである。
(1)注入機能;電界印加時に陽極又は正孔注入・輸送層より正孔を注入することができ、陰極又は電子注入・輸送層より電子を注入することができる機能
(2)輸送機能;注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能
(3)発光機能;電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能
【0058】
尚、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさに違いがあってもよく、また正孔と電子の移動度で表される輸送能に大小があってもよいが、どちらか一方の電荷を移動することが好ましい。
【0059】
発光層に用いられる材料は、長寿命な発光材料として公知のものを用いることが可能であり、例えば、下記式(I)で示される材料を発光材料として用いることができる。
【化20】

(式中、Arは核炭素数6〜50の芳香族環もしくは核原子数5〜50の複素芳香族環であり、Xは置換基であり、mは1〜5の整数、nは0〜6の整数である。)
【0060】
Arを示す芳香族環及び複素芳香族環として、具体的には、フェニル環、ナフチル環、アントラセン環、ビフェニレン環、アズレン環、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナントレン環、フルオランテン環、アセフェナンスリレン環、トリフェニレン環、ピレン環、クリセン環、ベンズアントラセン環、ナフタセン環、ピセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ペンタセン環、テトラフェニレン環、ヘキサフェン環、ヘキサセン環、ルビセン環、コロネン環、トリナフチレン環、ピロール環、インドール環、カルバゾール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、キノキサリン環、キノリン環、ピリミジン環、トリアジン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、チアンスレン環、フラン環、ベンゾフラン環、ピラゾール環、ピラジン環、ピリダジン環、インドリジン環、キナゾリン環、フェナントロリン環、シロール環、ベンゾシロール環等が挙げられる。
【0061】
好ましくはフェニル環、ナフチル環、アントラセン環、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナントレン環、フルオランテン環、トリフェニレン環、ピレン環、クリセン環、ベンズアントラセン環、ペリレン環が挙げられる。
【0062】
Xを示す置換基として、具体的には、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のカルボキシル基、置換又は無置換のスチリル基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基等が挙げられる。
【0063】
置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4’−メチルビフェニルイル基、4”−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、3−フルオランテニル基等が挙げられる。
【0064】
好ましくはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、3−フルオランテニル基等が挙げられる。
【0065】
置換もしくは無置換の核原子数5〜50の芳香族複素環基の例としては、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナンスロリン−2−イル基、1,7−フェナンスロリン−3−イル基、1,7−フェナンスロリン−4−イル基、1,7−フェナンスロリン−5−イル基、1,7−フェナンスロリン−6−イル基、1,7−フェナンスロリン−8−イル基、1,7−フェナンスロリン−9−イル基、1,7−フェナンスロリン−10−イル基、1,8−フェナンスロリン−2−イル基、1,8−フェナンスロリン−3−イル基、1,8−フェナンスロリン−4−イル基、1,8−フェナンスロリン−5−イル基、1,8−フェナンスロリン−6−イル基、1,8−フェナンスロリン−7−イル基、1,8−フェナンスロリン−9−イル基、1,8−フェナンスロリン−10−イル基、1,9−フェナンスロリン−2−イル基、1,9−フェナンスロリン−3−イル基、1,9−フェナンスロリン−4−イル基、1,9−フェナンスロリン−5−イル基、1,9−フェナンスロリン−6−イル基、1,9−フェナンスロリン−7−イル基、1,9−フェナンスロリン−8−イル基、1,9−フェナンスロリン−10−イル基、1,10−フェナンスロリン−2−イル基、1,10−フェナンスロリン−3−イル基、1,10−フェナンスロリン−4−イル基、1,10−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−1−イル基、2,9−フェナンスロリン−3−イル基、2,9−フェナンスロリン−4−イル基、2,9−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−6−イル基、2,9−フェナンスロリン−7−イル基、2,9−フェナンスロリン−8−イル基、2,9−フェナンスロリン−10−イル基、2,8−フェナンスロリン−1−イル基、2,8−フェナンスロリン−3−イル基、2,8−フェナンスロリン−4−イル基、2,8−フェナンスロリン−5−イル基、2,8−フェナンスロリン−6−イル基、2,8−フェナンスロリン−7−イル基、2,8−フェナンスロリン−9−イル基、2,8−フェナンスロリン−10−イル基、2,7−フェナンスロリン−1−イル基、2,7−フェナンスロリン−3−イル基、2,7−フェナンスロリン−4−イル基、2,7−フェナンスロリン−5−イル基、2,7−フェナンスロリン−6−イル基、2,7−フェナンスロリン−8−イル基、2,7−フェナンスロリン−9−イル基、2,7−フェナンスロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル−1−インドリル基、4−t−ブチル−1−インドリル基、2−t−ブチル−3−インドリル基、4−t−ブチル−3−インドリル基等が挙げられる。
【0066】
置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基等が挙げられる。
【0067】
置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基は−OYで表される基であり、Yの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられる。
【0068】
置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアラルキル基の例としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基、フェニル−t−ブチル基、α−ナフチルメチル基、1−α−ナフチルエチル基、2−α−ナフチルエチル基、1−α−ナフチルイソプロピル基、2−α−ナフチルイソプロピル基、β−ナフチルメチル基、1−β−ナフチルエチル基、2−β−ナフチルエチル基、1−β−ナフチルイソプロピル基、2−β−ナフチルイソプロピル基、1−ピロリルメチル基、2−(1−ピロリル)エチル基、p−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、p−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、o−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、m−ブロモベンジル基、o−ブロモベンジル基、p−ヨードベンジル基、m−ヨードベンジル基、o−ヨードベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、m−ヒドロキシベンジル基、o−ヒドロキシベンジル基、p−アミノベンジル基、m−アミノベンジル基、o−アミノベンジル基、p−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−シアノベンジル基、m−シアノベンジル基、o−シアノベンジル基、1−ヒドロキシ−2−フェニルイソプロピル基、1−クロロ−2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
【0069】
置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基は−OY’と表され、Y’の例としてはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4’−メチルビフェニルイル基、4”−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナンスロリン−2−イル基、1,7−フェナンスロリン−3−イル基、1,7−フェナンスロリン−4−イル基、1,7−フェナンスロリン−5−イル基、1,7−フェナンスロリン−6−イル基、1,7−フェナンスロリン−8−イル基、1,7−フェナンスロリン−9−イル基、1,7−フェナンスロリン−10−イル基、1,8−フェナンスロリン−2−イル基、1,8−フェナンスロリン−3−イル基、1,8−フェナンスロリン−4−イル基、1,8−フェナンスロリン−5−イル基、1,8−フェナンスロリン−6−イル基、1,8−フェナンスロリン−7−イル基、1,8−フェナンスロリン−9−イル基、1,8−フェナンスロリン−10−イル基、1,9−フェナンスロリン−2−イル基、1,9−フェナンスロリン−3−イル基、1,9−フェナンスロリン−4−イル基、1,9−フェナンスロリン−5−イル基、1,9−フェナンスロリン−6−イル基、1,9−フェナンスロリン−7−イル基、1,9−フェナンスロリン−8−イル基、1,9−フェナンスロリン−10−イル基、1,10−フェナンスロリン−2−イル基、1,10−フェナンスロリン−3−イル基、1,10−フェナンスロリン−4−イル基、1,10−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−1−イル基、2,9−フェナンスロリン−3−イル基、2,9−フェナンスロリン−4−イル基、2,9−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−6−イル基、2,9−フェナンスロリン−7−イル基、2,9−フェナンスロリン−8−イル基、2,9−フェナンスロリン−10−イル基、2,8−フェナンスロリン−1−イル基、2,8−フェナンスロリン−3−イル基、2,8−フェナンスロリン−4−イル基、2,8−フェナンスロリン−5−イル基、2,8−フェナンスロリン−6−イル基、2,8−フェナンスロリン−7−イル基、2,8−フェナンスロリン−9−イル基、2,8−フェナンスロリン−10−イル基、2,7−フェナンスロリン−1−イル基、2,7−フェナンスロリン−3−イル基、2,7−フェナンスロリン−4−イル基、2,7−フェナンスロリン−5−イル基、2,7−フェナンスロリン−6−イル基、2,7−フェナンスロリン−8−イル基、2,7−フェナンスロリン−9−イル基、2,7−フェナンスロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル−1−インドリル基、4−t−ブチル−1−インドリル基、2−t−ブチル−3−インドリル基、4−t−ブチル−3−インドリル基等が挙げられる。
【0070】
置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基は−SY”と表され、Y”の例としてはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4’−メチルビフェニルイル基、4”−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナンスロリン−2−イル基、1,7−フェナンスロリン−3−イル基、1,7−フェナンスロリン−4−イル基、1,7−フェナンスロリン−5−イル基、1,7−フェナンスロリン−6−イル基、1,7−フェナンスロリン−8−イル基、1,7−フェナンスロリン−9−イル基、1,7−フェナンスロリン−10−イル基、1,8−フェナンスロリン−2−イル基、1,8−フェナンスロリン−3−イル基、1,8−フェナンスロリン−4−イル基、1,8−フェナンスロリン−5−イル基、1,8−フェナンスロリン−6−イル基、1,8−フェナンスロリン−7−イル基、1,8−フェナンスロリン−9−イル基、1,8−フェナンスロリン−10−イル基、1,9−フェナンスロリン−2−イル基、1,9−フェナンスロリン−3−イル基、1,9−フェナンスロリン−4−イル基、1,9−フェナンスロリン−5−イル基、1,9−フェナンスロリン−6−イル基、1,9−フェナンスロリン−7−イル基、1,9−フェナンスロリン−8−イル基、1,9−フェナンスロリン−10−イル基、1,10−フェナンスロリン−2−イル基、1,10−フェナンスロリン−3−イル基、1,10−フェナンスロリン−4−イル基、1,10−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−1−イル基、2,9−フェナンスロリン−3−イル基、2,9−フェナンスロリン−4−イル基、2,9−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−6−イル基、2,9−フェナンスロリン−7−イル基、2,9−フェナンスロリン−8−イル基、2,9−フェナンスロリン−10−イル基、2,8−フェナンスロリン−1−イル基、2,8−フェナンスロリン−3−イル基、2,8−フェナンスロリン−4−イル基、2,8−フェナンスロリン−5−イル基、2,8−フェナンスロリン−6−イル基、2,8−フェナンスロリン−7−イル基、2,8−フェナンスロリン−9−イル基、2,8−フェナンスロリン−10−イル基、2,7−フェナンスロリン−1−イル基、2,7−フェナンスロリン−3−イル基、2,7−フェナンスロリン−4−イル基、2,7−フェナンスロリン−5−イル基、2,7−フェナンスロリン−6−イル基、2,7−フェナンスロリン−8−イル基、2,7−フェナンスロリン−9−イル基、2,7−フェナンスロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル−1−インドリル基、4−t−ブチル−1−インドリル基、2−t−ブチル−3−インドリル基、4−t−ブチル−3−インドリル基等が挙げられる。
【0071】
置換もしくは無置換の炭素数1〜50のカルボキシル基は−COOZと表され、Zの例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられる。
【0072】
置換又は無置換のスチリル基の例としては、2−フェニル−1−ビニル基、2,2−ジフェニル−1−ビニル基、1,2,2−トリフェニル−1−ビニル基等が挙げられる。
【0073】
ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0074】
mは、好ましくは1〜2である。nは、好ましくは0〜4である。m≧2の時は、式(I)内のArはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。同様に、n≧2の時は、式(I)内のXはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0075】
発光層に用いることができる材料として、さらに下記式(II)に示されるアントラセン誘導体が挙げられる。
−L−A (II)
(式中、A及びAは、それぞれ置換若しくは無置換のモノフェニルアントリル基又は置換若しくは無置換のジフェニルアルアントリル基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、Lは単結合又は二価の連結基を示す。)
【0076】
他に式(III)に示されるアントラセン誘導体が挙げられる。
−An−A (III)
(式中、Anは置換若しくは無置換の二価のアントラセン残基を示し、A及びAは、それぞれ置換若しくは無置換の一価の縮合芳香族環基又は置換若しくは無置換の炭素数12以上の非縮合環系アリール基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。)
【0077】
式(II)で表されるアントラセン誘導体としては、例えば式(II−a)又は式(II−b)で表されるアントラセン誘導体を好ましく挙げることができる。
【化21】

【0078】
(式中、R021〜R030は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、置換してもよいアリール基、アルコキシル基、アリーロキシ基、アルキルアミノ基、アルケニル基、アリールアミノ基又は置換してもよい複素環式基を示し、a及びbは、それぞれ1〜5の整数を示し、それらが2以上の場合、R021同士又はR022同士は、それぞれにおいて、同一でも異なっていてもよく、また、R021同士又はR022同士が結合して環を形成していてもよいし、R023とR024,R025とR026,R027とR028,R029とR030がたがいに結合して環を形成していてもよい。L003は単結合、−O−,−S−,−N(R)−(Rはアルキル基又は置換してもよいアリール基である)、アルキレン基又はアリーレン基を示す。)
【0079】
【化22】

【0080】
(式中、R031〜R040は、それぞれ独立に水素原子,アルキル基,シクロアルキル基,アリール基,アルコキシル基,アリーロキシ基,アルキルアミノ基,アリールアミノ基又は置換してもよい複数環式基を示し、c,d,e及びfは、それぞれ1〜5の整数を示し、それらが2以上の場合、R031同士,R032同士,R036同士又はR037同士は、それぞれにおいて、同一でも異なっていてもよく、またR031同士,R032同士,R033同士又はR037同士が結合して環を形成していてもよいし、R033とR034,R039とR040がたがいに結合して環を形成していてもよい。L004は単結合、−O−,−S−,−N(R)−(Rはアルキル基又は置換してもよいアリール基である)、アルキレン基又はアリーレン基を示す。)
【0081】
上記式(II−a)及び(II−b)において、R021〜R040の内のアルキル基としては炭素数1〜6のものが、シクロアルキル基としては炭素数3〜6のものが、アリール基としては炭素数5〜18のものが、アルコキシル基としては炭素数1〜6のものが、アリーロキシ基としては炭素数5〜18のものが、アリールアミノ基としては炭素数5〜16のアリール基で置換されたアミノ基が、複素環式基としてはトリアゾール基、オキサジアゾール基、キノキサリン基、フラニル基やチエニル基等が好ましく挙げられる。
【0082】
また、L003及びL004の内の−N(R)−におけるRで示されるアルキル基としては炭素数1〜6のものが、アリール基としては炭素数5〜18のものが好ましい。
【0083】
また、8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体も好適である。
8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体の具体例としては、オキシン(一般に8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリン)のキレートを含む金属キレートオキシノイド化合物が挙げられる。
【0084】
発光層にはさらに蛍光性化合物をドーパントとして少量添加し、発光性能を向上させることが可能である。このようなドーパントは、それぞれ長寿命な発光材料として公知のものを用いることが可能であるが、式(IV)で示される材料を発光材料のドーパント材料として用いることが望ましい。
【化23】

(式中、Ar101〜Ar103はそれぞれ置換又は無置換の核炭素数6〜50の芳香族基、置換又は無置換のスチリル基である。)
【0085】
置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4’−メチルビフェニルイル基、4”−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、3−フルオランテニル基等が挙げられる。
【0086】
好ましくはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、3−フルオランテニル基等が挙げられる。
置換又は無置換のスチリル基の例としては、2−フェニル−1−ビニル基、2,2−ジフェニル−1−ビニル基、1,2,2−トリフェニル−1−ビニル基等が挙げられる。
【0087】
pは1〜4の整数である。尚、p≧2の時、(IV)内のAr、Arはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0088】
また、ドーパントとして下記の化合物も好ましい。
【化24】

(式中、Ar201〜Ar204はそれぞれ独立に置換又は無置換の炭素数6〜20のアリール基、R201〜R202はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6〜20のアリール基、水素、ハロゲン基、シアノ基、トリフルオロメチル基である。)
【0089】
【化25】

(式中、R301,R302,R303及びR304は、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキルであり、R305は炭素数2〜20のアルキル、又は立体的に束縛されたアリール及びヘテロアリールであり、R306は炭素数1〜10のアルキル、又はR305と結合する5もしくは6員炭素環式環である。)
詳細は特開平10−308281を参照できる。
【0090】
(正孔輸送層、正孔注入層)
正孔輸送層及び正孔注入層(以下正孔輸送層という場合がある)は、発光層への正孔注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.5eV以下と小さい。このような正孔輸送層としてはより低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば10〜10V/cmの電界印加時に、少なくとも10−4cm/V・秒が好ましい。
【0091】
本発明では、正孔輸送帯域に上述した式(1)で表されるチオフェン誘導体、及びこれに対して電子受容性化合物を含有する層を形成することが好ましい。この場合、他の材料と混合して用いてもよく、正孔の電荷輸送材料として慣用されているものや、EL素子の正孔注入層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いてよい。
【0092】
正孔輸送性の材料の具体例として、例えば、トリアゾール誘導体(米国特許3,112,197号明細書等参照)、オキサジアゾール誘導体(米国特許3,189,447号明細書等参照)、イミダゾール誘導体(特公昭37−16096号公報等参照)、ポリアリールアルカン誘導体(米国特許3,615,402号明細書、同第3,820,989号明細書、同第3,542,544号明細書、特公昭45−555号公報、同51−10983号公報、特開昭51−93224号公報、同55−17105号公報、同56−4148号公報、同55−108667号公報、同55−156953号公報、同56−36656号公報等参照)、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体(米国特許第3,180,729号明細書、同第4,278,746号明細書、特開昭55−88064号公報、同55−88065号公報、同49−105537号公報、同55−51086号公報、同56−80051号公報、同56−88141号公報、同57−45545号公報、同54−112637号公報、同55−74546号公報等参照)、フェニレンジアミン誘導体(米国特許第3,615,404号明細書、特公昭51−10105号公報、同46−3712号公報、同47−25336号公報、同54−119925号公報等参照)、アリールアミン誘導体(米国特許第3,567,450号明細書、同第3,240,597号明細書、同第3,658,520号明細書、同第4,232,103号明細書、同第4,175,961号明細書、同第4,012,376号明細書、特公昭49−35702号公報、同39−27577号公報、特開昭55−144250号公報、同56−119132号公報、同56−22437号公報、西独特許第1,110,518号明細書等参照)、アミノ置換カルコン誘導体(米国特許第3,526,501号明細書等参照)、オキサゾール誘導体(米国特許第3,257,203号明細書等に開示のもの)、スチリルアントラセン誘導体(特開昭56−46234号公報等参照)、フルオレノン誘導体(特開昭54−110837号公報等参照)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462号明細書、特開昭54−59143号公報、同55−52063号公報、同55−52064号公報、同55−46760号公報、同57−11350号公報、同57−148749号公報、特開平2−311591号公報等参照)、スチルベン誘導体(特開昭61−210363号公報、同第61−228451号公報、同61−14642号公報、同61−72255号公報、同62−47646号公報、同62−36674号公報、同62−10652号公報、同62−30255号公報、同60−93455号公報、同60−94462号公報、同60−174749号公報、同60−175052号公報等参照)、シラザン誘導体(米国特許第4,950,950号明細書)、ポリシラン系(特開平2−204996号公報)、アニリン系共重合体(特開平2−282263号公報)に開示されている導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)等を挙げることができる。
【0093】
正孔輸送層の他、さらに正孔の注入を助けるために別途正孔注入層を設けることが好ましい。正孔注入層の材料としては正孔輸送層と同様の材料を使用することができるが、他に、ポルフィリン化合物(特開昭63−295695号公報等に開示のもの)、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物(米国特許第4,127,412号明細書、特開昭53−27033号公報、同54−58445号公報、同55−79450号公報、同55−144250号公報、同56−119132号公報、同61−295558号公報、同61−98353号公報、同63−295695号公報等参照)、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0094】
また米国特許第5,061,569号に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有する、例えば4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(以下NPDと略記する)、また特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(以下MTDATAと略記する)等を挙げることができる。
【0095】
また、芳香族ジメチリディン系化合物の他、p型Si、p型SiC等の無機化合物も正孔注入層の材料として使用することができる。
【0096】
正孔輸送層の膜厚は特に制限はないが、通常は5nm〜5μmである。正孔輸送層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる一層で構成されてもよいし、又は異なる化合物からなる複数の正孔輸送層を積層したものであってもよい。
【0097】
尚、有機半導体層も正孔輸送層の一部であるが、これは発光層への正孔注入又は電子注入を助ける層であって、10−10S/cm以上の導電率を有するものが好適である。このような有機半導体層の材料としては、含チオフェンオリゴマーや特開平8−193191号公報に開示してある含アリールアミンオリゴマー等の導電性オリゴマー、含アリールアミンデンドリマー等の導電性デンドリマー等を用いることができる。
【0098】
(電子注入層、電子輸送層)
電子輸送層及び電子注入層(以下、電子輸送層という場合がある)は、発光層への電子の注入を助ける層であって、電子移動度が大きく、また付着改善層は、この電子輸送層の中で特に陰極との付着がよい材料からなる層である。電子輸送層に用いられる材料としては、8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体が好適である。
【0099】
上記8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体の具体例としては、オキシン(一般に8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリン)のキレートを含む金属キレートオキシノイド化合物が挙げられる。
例えば発光材料の項で記載したAlqを電子輸送層として用いることができる。
【0100】
一方オキサジアゾール誘導体としては、以下の式で表される電子伝達化合物が挙げられる。
【化26】

(式中、Ar301、Ar302、Ar303、Ar305、Ar306、及びAr309はそれぞれ置換又は無置換のアリール基を示す。またAr304、Ar307、Ar308はそれぞれ置換又は無置換のアリーレン基を示す。)
【0101】
ここでアリール基としてはフェニル基、ビフェニル基、アントラニル基、ペリレニル基、ピレニル基が挙げられる。またアリーレン基としてはフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントラニレン基、ペリレニレン基、ピレニレン基等が挙げられる。また置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はシアノ基等が挙げられる。この電子伝達化合物は薄膜形成性のものが好ましい。
【0102】
上記電子伝達性化合物の具体例としては下記のものを挙げることができる。
【化27】

【0103】
また、下記の化合物も好ましい。
【化28】

(式中、R401及びR402はそれぞれ、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、複素環基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、並びに隣接置換基との間に形成される縮合環の中から選ばれる。Ar401はアリール基を表す。)
【0104】
本発明の好ましい形態に、電子を輸送する領域又は陰極と有機層の界面領域に、還元性ドーパントを含有する素子がある。ここで、還元性ドーパントとは、電子輸送性化合物を還元ができる物質と定義される。従って、一定の還元性を有するものであれば、様々なものが用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物又は希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体、希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも一つの物質を好適に使用することができる。
【0105】
また、より具体的に、好ましい還元性ドーパントとしては、Na(仕事関数:2.36eV)、K(仕事関数:2.28eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)及びCs(仕事関数:1.95eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属や、Ca(仕事関数:2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0〜2.5eV)、及びBa(仕事関数:2.52eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ土類金属が挙げられる仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。
これらのうち、より好ましい還元性ドーパントは、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属であり、さらに好ましくは、Rb又はCsであり、最も好ましいのは、Csである。
【0106】
これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子注入域への比較的少量の添加により、有機電界発光素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントとして、これら2種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRbあるいはCsとNaとKとの組み合わせであることが好ましい。
Csを組み合わせて含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子注入域への添加により、有機電界発光素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
【0107】
本発明においては陰極と有機層の間に絶縁体や半導体で構成される電子注入層をさらに設けてもよい。この時、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。
このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲナイド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。
【0108】
具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe及びNaOが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF及びBeFといったフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0109】
また、電子輸送層を構成する半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnの少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物又は酸化窒化物等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、電子輸送層を構成する無機化合物が、微結晶又は非晶質の絶縁性薄膜であることが好ましい。電子輸送層がこれらの絶縁性薄膜で構成されていれば、より均質な薄膜が形成されるために、ダークスポット等の画素欠陥を減少させることができる。
尚、このような無機化合物としては、上述したアルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
【0110】
(陰極)
陰極としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質として用いることができる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム・銀合金、アルミニウム/酸化アルミニウム、アルミニウム・リチウム合金、インジウム、希土類金属等が挙げられる。
この陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成することにより、作製することができる。
【0111】
ここで発光層からの発光を陰極から取り出す場合、陰極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。
また陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmである。
【0112】
(絶縁層)
有機ELは超薄膜に電界を印可するために、リークやショートによる画素欠陥が生じやすい。これを防止するために、一対の電極間に絶縁性の薄膜層を挿入することが好ましい。
絶縁層に用いられる材料としては例えば酸化アルミニウム、弗化リチウム、酸化リチウム、弗化セシウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、弗化マグネシウム、酸化カルシウム、弗化カルシウム、弗化セシウム、炭酸セシウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化ゲルマニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化バナジウム等が挙げられる。
これらの混合物や積層物を用いてもよい。
【0113】
(有機電界発光素子の作製例)
以上例示した材料及び方法により陽極、有機層、陰極を順次形成することにより有機電界発光素子を作製することができる。また陰極から陽極へ、前記と逆の順序で有機電界発光素子を作製することもできる。
【0114】
以下、透光性基板上に陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極が順次設けられた構成の有機電界発光素子の作製例を記載する。
まず適当な透光性基板上に陽極材料からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように蒸着やスパッタリング等の方法により形成して陽極を作製する。
次に、この陽極上に正孔輸送層を設ける。正孔輸送層の形成は、前述したように真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の方法により行うことができるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが発生しにくい等の点から真空蒸着法により形成することが好ましい。
【0115】
真空蒸着法により正孔輸送層を形成する場合、その蒸着条件は使用する化合物(正孔輸送層の材料)、目的とする正孔輸送層の結晶構造や再結合構造等により異なるが、一般に蒸着源温度50〜450℃、真空度10−7〜10−3torr、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜選択することが好ましい。
【0116】
次に、正孔輸送層上に発光層を設ける。発光層の形成も、所望の有機発光材料を用いて真空蒸着法、スパッタリング、スピンコート法、キャスト法等の方法により有機発光材料を薄膜化することにより形成できるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが発生しにくい等の点から真空蒸着法により形成することが好ましい。真空蒸着法により発光層を形成する場合、その蒸着条件は使用する化合物により異なるが、一般的に正孔輸送層と同じような条件範囲の中から選択することができる。
【0117】
次にこの発光層上に電子輸送層を設ける。正孔輸送層、発光層と同様、均質な膜を得る必要から真空蒸着法により形成することが好ましい。蒸着条件は正孔輸送層、発光層と同様の条件範囲から選択することができる。
【0118】
最後に陰極を積層して有機電界発光素子を得ることができる。
陰極は金属から構成されるもので、蒸着法、スパッタリングを用いることができる。しかし下地の有機物層を製膜時の損傷から守るためには真空蒸着法が好ましい。
これまで記載してきた有機電界発光素子の作製は一回の真空引きで一貫して陽極から陰極まで作製することが好ましい。
【0119】
尚、本発明の発光素子の各層の形成方法は特に限定されない。従来公知の真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)、又は材料を溶媒に解かした溶液を使用したディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法による公知の方法で形成することができる。
【0120】
本発明の有機電界発光素子の各有機層の膜厚は特に制限されないが、一般に膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常は数nmから1μmの範囲が好ましい。
【実施例】
【0121】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。尚、実施例及び比較例で使用した化合物の構造を以下に示す。
【化29】

【0122】
実施例1
実施例1では以下の構成の有機電界発光素子を製造した。
陽極: ITO (110nm)
正孔輸送層: α−NPD (35nm)
界面障壁低減層: 50%α−NPD−ドープ POPy (5nm)
発光層: 0.5%BST−ドープ POPy (20nm)
界面障壁低減層: 50%POPy−ドープ Alq (5nm)
電子輸送層: Alq (25nm)
電子注入性電極: LiF (0.5nm)
金属電極: Al (100nm)
【0123】
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極(110nm)付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に、前記透明電極を覆うようにして膜厚35nmのα―NPDを成膜した。該α―NPD膜は正孔輸送層として機能する。さらに、該正孔輸送層の成膜に続けて、この膜上に膜厚5nmで、α―NPDを50mol%の濃度になるようにPOPyと抵抗加熱により共蒸着した膜を形成した。該膜は界面障壁低減層として機能する。さらに該膜上に膜厚20nmで、ホスト化合物としてPOPyを、ドーパントとしてBSTを、BST濃度が0.5mol%になるよう抵抗加熱により共蒸着成膜した。該膜は、発光層として機能する。該発光層成膜に続けて、膜厚5nmでPOPyを50mol%の濃度になるようにAlqと抵抗加熱により共蒸着した膜を形成した。該膜は界面障壁低減層として機能する。さらにAlqを膜厚25nmで成膜した。該膜は、電子輸送層として機能する。この後、LiFを電子注入性電極(陰極)として成膜速度1Å/minで膜厚0.5nm形成した。このLiF層上に金属Alを蒸着させ、金属陰極を膜厚100nm形成し有機電界発光素子を形成した。
【0124】
実施例2
実施例2では以下の構成の有機電界発光素子を製造した。
陽極: ITO (110nm)
正孔注入層: α−6T (20nm)
界面障壁低減層: 50%α−6T−ドープ α−NPD (5nm)
正孔輸送層: α−NPD (10nm)
界面障壁低減層: 50%α−NPD−ドープ POPy (5nm)
発光層: 0.5%BST−ドープ POPy (20nm)
電子輸送層: POPy (30nm)
電子注入性電極: LiF (0.5nm)
金属電極: Al (100nm)
【0125】
実施例1と同様に、透明電極(ITO)ライン付きガラス基板上に、膜厚20nmのα―6Tを成膜(正孔注入層)、膜厚5nmのα―6Tが50mol%ドープしたα−NPD膜(界面障壁低減層)、膜厚10nmのα―NPD膜(正孔輸送層)、膜厚5nmのα―NPDが50mol%ドープしたPOPy膜(界面障壁低減層)、膜厚20nmのBSTが0.5mol%ドープしたPOPy膜(発光層)、膜厚30nmのPOPy膜(電子輸送層)、膜厚0.5nmのLiF膜(電子注入性電極(陰極))、膜厚100nmの金属Al膜(金属陰極)を順次形成し、有機電界発光素子を形成した。
【0126】
比較例1
比較例1では以下の構成の有機電界発光素子を製造した。
陽極: ITO (110nm)
正孔輸送層: α−NPD (40nm)
発光層: 0.5%BST−ドープ POPy (20nm)
電子輸送層: Alq (30nm)
電子注入性電極: LiF (0.5nm)
金属電極: Al (100nm)
【0127】
実施例1において、α−NPDがドープしたPOPy界面障壁低減層、及びPOPyがドープしたAlq界面障壁低減層を形成しないで、正孔輸送層の膜厚を40nmに変え、電子輸送層の膜厚を30nmに変えた他は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を形成した。
【0128】
比較例2
比較例2では以下の構成の有機電界発光素子を製造した。
陽極: ITO (110nm)
正孔注入層: α−6T (20nm)
正孔輸送層: α−NPD (20nm)
発光層: 0.5%BST−ドープ POPy (20nm)
電子輸送層: POPy (30nm)
電子注入性電極: LiF (0.5nm)
金属電極: Al (100nm)
【0129】
実施例2において、α−6T−ドープしたα−NPD界面障壁低減層、及びα−NPDがドープしたPOPy界面障壁低減層を形成しないで、正孔輸送層の膜厚を20nmに変えた他は、実施例2と同様にして有機電界発光素子を形成した。
【0130】
(有機電界発光素子の発光性能評価)
上記の実施例1,2及び比較例1,2で作製した有機電界発光素子を、直流電流駆動により発光させ、輝度(L)、電流密度を測定し、発光効率、外部量子効率を求めた。
表1に、電流密度100mA/cm時の駆動電圧、発光効率及び外部量子効率を示す。
【0131】
【表1】

【0132】
実施例3
実施例3では以下の構成の有機電界発光素子を製造した。
陽極: ITO (110nm)
正孔注入層: 50%α−6T−ドープ FTCNQ (5nm)
界面障壁低減層: 50%α−6T−ドープ α−NPD (5nm)
正孔輸送層: α−NPD (40nm)
発光層・電子輸送層:Alq (50nm)
電子注入性電極: LiF (0.5nm)
金属電極: Al (70nm)
【0133】
実施例1と同様に、透明電極(ITO)ライン付きガラス基板上に、膜厚5nmのα−6Tが50mol%ドープしたF4CTNQ膜を成膜(正孔注入層)、膜厚5nmのα−6Tが50mol%ドープしたα−NPD膜(界面障壁低減層)、膜厚40nmのα−NPD膜(正孔輸送層)、膜厚50nmのAlq膜(発光層・電子輸送層)、膜厚0.5nmのLiF膜(電子注入性電極(陰極))、膜厚70nmの金属Al膜(金属陰極)を順次形成し、有機電界発光素子を形成した。
電流密度100mA/cm時の駆動電圧は11.4Vであった。
【0134】
実施例4
実施例4では以下の構成の有機電界発光素子を製造した。
陽極: ITO (110nm)
正孔注入層: 3%α−6T−ドープ FTCNQ (5nm)
界面障壁低減層: 50%α−6T−ドープ α−NPD (5nm)
正孔輸送層: α−NPD (40nm)
発光層・電子輸送層: Alq (50nm)
電子注入性電極: LiF (0.5nm)
金属電極: Al (70nm)
【0135】
実施例3において、正孔注入層のα―6Tの濃度を3mol%に変えた他は、実施例3と同様にして有機電界発光素子を形成した。
電流密度100mA/cm時の駆動電圧は12.4Vであった。
【0136】
実施例5
実施例5では以下の構成の有機電界発光素子を製造した。
陽極: ITO (110nm)
正孔注入層: 3%α−6T−ドープ FTCNQ (5nm)
界面障壁低減層: 50%α−6T−ドープ α−NPD (5nm)
正孔輸送層: α−NPD (40nm)
発光層: Alq (50nm)
電子輸送層: 30%POPY−ドープ −Cs (20nm)
金属電極(陰極): Al (70nm)
【0137】
実施例3において、正孔注入層のα―6Tの濃度を3mol%に変え、電子輸送層として膜厚20nmのPOPYが30mol%ドープしたCs膜を形成し、電子注入性電極であるLiF膜を形成しなかった他は、実施例3と同様にして有機電界発光素子を形成した。
電流密度100mA/cm時の駆動電圧は8.4Vであった。
【0138】
図4Aに、実施例1,2及び比較例1,2で作製した有機電界発光素子の電流密度−電圧特性を、図4Bに、実施例3〜5で作製した有機電界発光素子の電流密度−電圧特性を、図5Aに、実施例1,2及び比較例1,2で作製した有機電界発光素子の外部量子効率−電流密度特性を、図5Bに、実施例3〜5で作製した有機電界発光素子の外部量子効率−電流密度特性を、図6Aに、実施例1,2及び比較例1,2で作製した有機電界発光素子の発光効率−電流密度特性を、図6Bに、実施例3〜5で作製した有機電界発光素子の発光効率−電流密度特性を示す。
尚、図4A,5A,6Aのグラフにおいて、1は実施例1の特性、2は実施例2の特性、1’は比較例1の特性、2’は比較例2の特性を示す。図4B,5B,6Bのグラフにおいて、3は実施例3の特性、4は実施例4の特性、5は実施例5の特性を示す。
このように、実施例の有機電界発光素子は、比較例に比べて電荷注入性に優れているため、駆動電圧が低く、発光効率又は外部量子効率が高い優れた素子であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の有機電界発光素子は、平面発光体やディスプレイのバックライト等の光源、携帯電話、PDA、カーナビゲーション、車のインパネ等の表示部、照明等に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1A】本発明に係る有機電界発光素子の一実施形態を示す図である。
【図1B】本発明に係る有機電界発光素子の他の実施形態を示す図である。
【図2A】本発明に係る有機電界発光素子の他の実施形態を示す図である。
【図2B】本発明に係る有機電界発光素子の他の実施形態を示す図である。
【図3A】本発明に係る有機電界発光素子の他の実施形態を示す図である。
【図3B】本発明に係る有機電界発光素子の他の実施形態を示す図である。
【図4A】実施例1,2及び比較例1,2で作製した有機電界発光素子の電流密度−電圧特性を示す図である。
【図4B】実施例3〜5で作製した有機電界発光素子の電流密度−電圧特性を示す図である。
【図5A】実施例1,2及び比較例1,2で作製した有機電界発光素子の外部量子効率−電流密度特性を示す図である。
【図5B】実施例3〜5で作製した有機電界発光素子の外部量子効率−電流密度特性を示す図である。
【図6A】実施例1,2及び比較例1,2で作製した有機電界発光素子の発光効率−電流密度特性を示す図である。
【図6B】実施例3〜5で作製した有機電界発光素子の発光効率−電流密度特性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極及び陰極と、
前記陽極及び陰極の間に、発光層を含む2以上の有機層を有し、
前記有機層は、前記陽極と発光層の間に、分子量1,200以下のチオフェン誘導体を含む正孔注入層又は正孔輸送層を含み、
前記有機層から選択される隣り合う2つの有機層の間には、界面障壁低減層があり、
前記界面障壁低減層は、その両側に隣接する前記2つの有機層にそれぞれ含まれる少なくとも1つの材料をモル比1:1〜1:4の割合で混合した層である有機電界発光素子。
【請求項2】
正孔注入層、正孔輸送層、又は正孔注入層もしくは正孔輸送層に隣接する界面障壁低減層が、前記チオフェン誘導体と共に電子受容性化合物を含有する請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記電子受容性化合物が、シアノ基を有する請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記チオフェン誘導体が、下記式(1)で表されるチオフェン誘導体である請求項1〜3のいずれか記載の有機電界発光素子。
【化1】

(式中R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールアミノ基、置換又は無置換の核炭素数6〜40のアリール基、又は置換又は無置換の核炭素数2〜40の複素環基を表し、隣り合う置換基同士は互いに結合し環を形成してもよい。Y、Yはそれぞれ水素原子、又は置換あるいは無置換の一価の基を表す。nは1〜12の整数を表す。nが2以上の場合、複数あるR、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記式(1)のY、Yが、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換又は無置換の核炭素数6〜40のアリール基、又は置換又は無置換の核炭素数2〜40の複素環基である請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
陽極及び陰極と、
前記陽極及び陰極の間に、発光層を含む2以上の有機層を有し、
前記発光層、又は前記発光層と陰極の間にある層が、下記式(2)で表されるアリールホスフィンオキサイド誘導体を含み、
前記有機層から選択される隣り合う2つの有機層の間には、界面障壁低減層があり、
前記界面障壁低減層は、その両側に隣接する前記2つの有機層に含まれる材料をそれぞれ少なくとも1つ含有する有機電界発光素子。
【化2】

(式中、Ar、Ar、Arはそれぞれ独立に炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
【請求項7】
前記界面障壁低減層が、その両側に隣接する有機層に含まれる材料をそれぞれ全て含有する請求項1〜6のいずれか記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記有機層が、前記陽極と前記発光層との間に、正孔輸送層を含み、
界面障壁低減層が、前記発光層と前記正孔輸送層の間にあり、前記発光層に含まれる発光材料と前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性材料を含有する請求項1〜7のいずれか記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記有機層が、前記陽極と前記発光層との間に、正孔輸送層と正孔注入層を含み、
界面障壁低減層が、前記正孔注入層と前記正孔輸送層の間にあり、前記正孔注入層に含まれる正孔注入性材料と、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性材料を含有する請求項1〜8のいずれか記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記有機層が、前記陰極と前記発光層との間に、電子輸送層を含み、
界面障壁低減層が、前記発光層と前記電子輸送層の間にあり、前記発光層に含まれる発光材料と前記電子輸送層に含まれる電子輸送性材料を含有する請求項1〜9のいずれか記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
前記有機層が、前記陰極と前記発光層との間に、電子輸送層と電子注入層を含み、
界面障壁低減層が、前記電子注入層と前記電子輸送層の間にあり、前記電子注入層に含まれる電子注入性材料と、前記電子輸送層に含まれる電子輸送性材料を含有する請求項1〜10のいずれか記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
前記正孔注入性材料又は前記正孔輸送性材料が、アリールアミノ化合物である請求項8又は9記載の有機電界発光素子。
【請求項13】
界面障壁低減層が、下記式(1)で表されるチオフェン誘導体と、アリールアミノ化合物を含む請求項1〜12のいずれか記載の有機電界発光素子。
【化3】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールアミノ基、置換又は無置換の核炭素数6〜40のアリール基、又は置換又は無置換の核炭素数2〜40の複素環基を表し、隣合う置換基同士は互いに結合し環を形成してもよい。Y、Yはそれぞれ水素原子、又は置換あるいは無置換の一価の基を表す。nは1〜12の整数を表す。nが2以上の場合、複数あるR、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項14】
界面障壁低減層が、下記式(2)で表されるアリールホスフィンオキサイド誘導体とアリールアミノ化合物を含む請求項1〜13のいずれか記載の有機電界発光素子。
【化4】

(式中、Ar、Ar、Arはそれぞれ独立に炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2009−239265(P2009−239265A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43460(P2009−43460)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月4日 社団法人応用物理学会発行の「2007年(平成19年)秋季 第68回応用物理学会学術講演会講演予稿集第3分冊」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月7日 The Japan Society of Applied Physics発行の「Japanese Journal of Applied Physics,Vol.46 No.35,2007」に発表
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】