説明

有機電界発光素子

【課題】高い発光効率と駆動耐久性の向上が図れる有機電界発光素子の提供。
【解決手段】陽極と陰極の間に、少なくとも1層の発光層と、該発光層の陰極側に隣接する陰極側隣接層と、該陰極側隣接層の陰極側に隣接する電子輸送層と、を少なくとも含む有機層を有してなり、前記陰極側隣接層の三重項エネルギーBが、前記発光層の発光材料の三重項エネルギーAよりも小さく、両者の三重項エネルギーの差(A−B)が9kcal/mol以上20kcal/mol以下であり、前記陰極側隣接層の三重項エネルギーBが、前記電子輸送層の三重項エネルギーCよりも小さく、両者の三重項エネルギーの差(C−B)が5kcal/mol以上20kcal/mol以下である有機電界発光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子(以下、「有機エレクトロルミネッセンス素子」、「有機EL素子」と称することもある)に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、自発光、高速応答などの特長を持ち、フラットパネルディスプレイなどへの適用が期待されており、特に、正孔輸送性の有機薄膜(正孔輸送層)と電子輸送性の有機薄膜(電子輸送層)とを積層した2層型(積層型)のものが報告されて以来、10V以下の低電圧で発光する大面積発光素子として関心を集めている。積層型の有機電界発光素子は、正極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/負極、を基本構成とし、このうち発光層は、前記2層型の場合のように、前記正孔輸送層又は前記電子輸送層にその機能を兼ねさせてもよい。
【0003】
このような有機電界発光素子において、高い発光効率を実現するため、種々の検討がなされている。例えば特許文献1では、燐光発光性ドーパントと組み合わされて燐光材料を構成するホスト材料として、数多くのピレン骨格やアントラセン骨格を有する縮合芳香族環化合物が提案されている。
しかし、この提案の縮合芳香族環化合物は、いずれも三重項エネルギーが小さいものであり、このような三重項エネルギーの小さい化合物を発光層の陰極側隣接層に用いることは開示も示唆もされていなかった。これは、発光層の陰極側隣接層は励起阻止層とも呼ばれ、発光層で生じるエネルギーよりも大きい(陰極側隣接層の三重項エネルギーが大きい)ことが発光効率を向上させる上で望ましいからである(特許文献2参照)。
ここで、図1Aは、発光層6と陰極側隣接層7の三重項エネルギーの関係を示す図であり、陰極側隣接層7の三重項エネルギー(Tl)が、発光層6の発光材料の三重項エネルギー(Tl)よりも小さく、そのため、発光層6から陰極側隣接層7にエネルギーが移動しやすくなり、発光層6の発光効率が低下する。これに対し、図1Bでは、陰極側隣接層7の三重項エネルギー(Tl)に対して、発光層6の発光材料の三重項エネルギー(Tl)が同レベル以上であるため、発光層6から陰極側隣接層7にエネルギーが移動しにくくなり、発光層6の発光効率が向上する。
【0004】
一方、発光層の発光材料の三重項エネルギーよりも大きい三重項エネルギーを有する陰極側隣接層とすると、発光層の発光効率の向上は図れるが、駆動耐久性が悪化してしまうという問題があった。
【0005】
したがって高輝度及び高電流密度での発光効率の向上と駆動耐久性の向上が図れる有機電界発光素子の速やかな提供が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−16693号公報
【特許文献2】特許第3992929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高輝度及び高電流密度での発光効率の向上と駆動耐久性の向上が図れる有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、陽極と陰極の間に、少なくとも1層の発光層と、該発光層の陰極側に隣接する陰極側隣接層と、該陰極側隣接層の陰極側に隣接する電子輸送層と、を少なくとも含む有機層を有してなり、
前記陰極側隣接層の三重項エネルギーBが、前記発光層の発光材料の三重項エネルギーAよりも小さく、両者の三重項エネルギーの差(A−B)が9kcal/mol以上20kcal/mol以下であり、
前記陰極側隣接層の三重項エネルギーBが、前記電子輸送層の三重項エネルギーCよりも小さく、両者の三重項エネルギーの差(C−B)が5kcal/mol以上20kcal/mol以下であると、電子注入性が高まり、発光層内での発光分布が平坦化したためか、意外にも、高輝度及び高電流密度での発光効率が向上すると共に、駆動耐久性にも優れた有機電界発光素子が得られることを知見した。
【0009】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 陽極と陰極の間に、少なくとも1層の発光層と、該発光層の陰極側に隣接する陰極側隣接層と、該陰極側隣接層の陰極側に隣接する電子輸送層と、を少なくとも含む有機層を有してなり、
前記陰極側隣接層の三重項エネルギーBが、前記発光層の発光材料の三重項エネルギーAよりも小さく、両者の三重項エネルギーの差(A−B)が9kcal/mol以上20kcal/mol以下であり、
前記陰極側隣接層の三重項エネルギーBが、前記電子輸送層の三重項エネルギーCよりも小さく、両者の三重項エネルギーの差(C−B)が5kcal/mol以上20kcal/mol以下であることを特徴とする有機電界発光素子である。
<2> 陰極側隣接層が、下記一般式(I)で表されるアントラセン誘導体骨格を有する化合物、及び下記一般式(II)で表されるピレン誘導体骨格を有する化合物の少なくとも1種を含有する前記<1>に記載の有機電界発光素子である。
【化1】

ただし、前記一般式(I)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜20の芳香族環から誘導される基である。前記芳香族環は、1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。前記置換基は、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基及びヒドロキシ基から選ばれる。前記芳香族環が2以上の置換基で置換されている場合、前記置換基は同一であっても、異なっていてもよく、隣接する置換基同士は互いに結合して飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。
からRは、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基及びヒドロキシ基から選ばれる。また、隣接する置換基同士は互いに結合して飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。
【化2】

ただし、前記一般式(II)中、Ar1a及びAr2aは、それぞれ置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族環基を表す。
Lは、それぞれ置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のナフタレニレン基、置換もしくは無置換のフルオレニレン基又は置換もしくは無置換のジベンゾシロリレン基である。
mは0〜2の整数、nbは1〜4の整数、sは0〜2の整数、tは0〜4の整数である。
また、L又はAr1aは、ピレンの1〜5位のいずれかに結合し、L又はAr2aは、ピレンの6〜10位のいずれかに結合する。
ただし、nb+tが偶数のとき、Ar1a、Ar2a、Lは下記(1)又は(2)を満たす。
(1)Ar1a≠Ar2a(ここで≠は、異なる構造の基であることを示す。)
(2)Ar1a=Ar2aの時
(2−1)m≠s及び/又はnb≠t、又は
(2−2)m=sかつnb=tの時、
(2−2−1)L、又はピレンが、それぞれAr1a及びAr2a上の異なる結合位置に結合しているか、
(2−2−2)L、又はピレンが、Ar1a及びAr2a上の同じ結合位置に結合している場合、L、又はAr1a及びAr2aのピレンにおける置換位置が1位と6位、又は2位と7位である場合はない。
<3> 燐光発光材料が、白金を含む錯体である前記<1>から<2>のいずれかに記載の有機電界発光素子である。
<4> 陰極側隣接層が、下記構造式で表される化合物のいずれかを含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の有機電界発光素子である。
【化3】

【化4】

【化5】

<5> 陰極側隣接層の平均厚みが、1nm〜10nmである前記<1>から<4>のいずれかに記載の有機電界発光素子である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、高い発光効率と駆動耐久性の向上を図れる有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、発光層と陰極側隣接層の三重項エネルギーの関係を示す図であり、陰極側隣接層の三重項エネルギーが、発光層の発光材料の三重項エネルギーよりも小さい状態を示す。
【図1B】図1Bは、発光層と陰極側隣接層の三重項エネルギーの関係を示す図であり、陰極側隣接層の三重項エネルギーに対して、発光層の発光材料の三重項エネルギーが同レベル以上である状態を示す。
【図2】図2は、本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(有機電界発光素子)
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極の間に、少なくとも1層の発光層と、該発光層の陰極側に隣接する陰極側隣接層と、該陰極側隣接層の陰極側に隣接する電子輸送層と、を少なくとも含む有機層を有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0013】
本発明においては、前記陰極側隣接層の三重項エネルギーBが、前記発光層の発光材料の三重項エネルギーAよりも小さく、両者の三重項エネルギーの差(A−B)が9kcal/mol以上20kcal/mol以下であり、13kcal/mol以上16kcal/mol以下であることが好ましい。
また、前記陰極側隣接層の三重項エネルギーBが、前記電子輸送層の三重項エネルギーCよりも小さく、両者の三重項エネルギーの差(C−B)が5kcal/mol以上20kcal/mol以下であり、5kcal/mol以上15kcal/mol以下であることが好ましい。
前記陰極側隣接層の三重項エネルギーが、前記発光層の発光材料の三重項エネルギーよりも大きいと、励起子の拡散防止には有利であるが、一般的に三重項エネルギーが大きい材料は電子を輸送する際に通る電子親和力のエネルギーレベルも高い場合があり、電子輸送層から発光層への電荷の障壁となることがある。
なお、発光層のホスト材料の三重項エネルギーは、発光層の発光材料の三重項エネルギーよりも大きいので、陰極側隣接層との三重項エネルギーの大小関係は、発光層の発光材料の三重項エネルギーで比較すれば十分である。
前記陰極側隣接層の三重項エネルギーが、前記電子輸送層の三重項エネルギーよりも大きいと、発光層からの励起子が拡散し、隣接層を飛び越えるものが多い場合、電子輸送層で励起子が消費されて効率低下となることがある。
したがって陰極側隣接層、発光層の発光材料、電子輸送層の三者において、陰極側隣接層の三重項エネルギーが最も小さい値となる。
ここで、有機電界発光素子における、前記陰極側隣接層、発光層の発光材料、及び電子輸送層の三重項エネルギーは、いずれも、(1)有機電界発光素子のまま斜め切削技術を用いて、有機電界発光素子を斜めに切削してから顕微フォトルミネッセンス(PL)法を用いて各層の混合したPLスペクトルの差分から三重項エネルギーを推定するか、(2)TOF−SIMS等の表面分析を行って分子式を同定してからその分子を合成して単膜から三重項エネルギーを求める方法などにより測定することができる。
【0014】
<発光層>
前記発光層は、その材料、形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられ、また、その平面形状としては、四角形、円形などが挙げられ、前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられ、前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0015】
前記発光層の材料としては、三重項励起子からの発光(燐光)が得られる点から燐光発光材料とホスト化合物とが好適である。
なお、前記発光層は、色純度を向上させるためや発光波長領域を広げるために2種類以上の燐光発光材料を含有することができる。
【0016】
−燐光発光材料−
前記燐光発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば遷移金属原子、ランタノイド原子を含む錯体などが挙げられる。
前記遷移金属原子としては、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金などが挙げられる。これらの中でも、レニウム、イリジウム、白金が好ましく、イリジウム、白金がより好ましく、白金が特に好ましい。
【0017】
前記ランタノイド原子としては、例えばランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウム、などが挙げられる。これらの中でも、ネオジム、ユーロピウム、ガドリニウムが特に好ましい。
前記錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry,Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社、1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、芳香族炭素環配位子(例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、又はナフチルアニオンなど)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、又はフェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、アルコラト配位子(例えば、フェノラト配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子などが挙げられる。これらの中でも、含窒素ヘテロ環配位子が特に好ましい。
【0018】
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を1つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。これらの中でも、燐光発光材料としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【0019】
前記イリジウムを含む錯体である燐光発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(2)、(3)及び(4)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【化10】

ただし、前記一般式(2)、(3)及び(4)中、nは、1〜3の整数を表す。X−Yは、二座配位子を表す。環Aは、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子のいずれかを含んでいてもよい環構造を表す。R11は、置換基を表し、m1は、0〜6の整数を表す。m1が2以上の場合には隣接するR11どうしが結合して窒素原子、硫黄原子及び酸素原子のいずれかを含んでいてもよい環を形成してもよく、該環は更に置換基により置換されていてもよい。R12は、置換基を表し、m2は、0〜4の整数を表す。m2が2以上の場合には隣接するR12どうしが結合して窒素原子、硫黄原子及び酸素原子のいずれかを含んでいてもよい環を形成してもよく、該環は更に置換基により置換されていてもよい。なお、R11とR12とが結合して窒素原子、硫黄原子及び酸素原子のいずれかを含んでいてもよい環を形成してもよく、該環は更に置換基により置換されていてもよい。
【0020】
前記環Aは、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子のいずれかを含んでいてもよい環構造を表し、5員環、6員環などが好適に挙げられる。該環は置換基で置換されていてもよい。
【0021】
X−Yは、二座配位子を表し、二座のモノアニオン性配位子などが好適に挙げられる。
前記二座のモノアニオン性配位子としては、例えば、ピコリナート(pic)、アセチルアセトナート(acac)、ジピバロイルメタナート(t−ブチルacac)などが挙げられる。
上記以外の配位子としては、例えば、Lamanskyらの国際公開第2002/15645号パンフレットの89頁〜91頁に記載の配位子が挙げられる。
【0022】
前記R11及びR12における置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてもよいアリール基、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてもよいアリールオキシ基を表し、これらは更に置換されていてもよい。
前記R11及びR12は、互いに隣接するものどうしで結合して、窒素原子、硫黄原子又は酸素原子を含んでいてもよい環を形成してもよく、5員環、6員環などが好適に挙げられる。該環は更に置換基で置換されていてもよい。
【0023】
前記一般式(2)、(3)、及び(4)のいずれかで表される具体的化合物としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【0024】
前記燐光発光材料のその他の例としては、以下のような化合物が挙げられる。
【化15】

【化16】

【化17】

【0025】
前記燐光発光材料の含有量は、発光層を形成する全化合物質量に対して、0.5質量%〜30質量%であることが好ましく、0.5質量%〜20質量%がより好ましく、3質量%〜10質量%が更に好ましい。
前記含有量が、0.5質量%未満であると、発光効率が小さくなることがあり、30質量%を超えると、燐光発光材料自身の会合により、発光効率が低下することがある。
【0026】
−ホスト化合物−
前記ホスト化合物としては、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト化合物及び電子輸送性に優れる電子輸送性ホスト化合物を用いることができる。
【0027】
−−正孔輸送性ホスト化合物−−
前記正孔輸送性ホスト化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、ピラゾール、イミダゾール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、又はそれらの誘導体、などが挙げられる。
これらの中でも、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、アザインドール誘導体、アザカルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体が好ましく、分子内にインドール骨格、カルバゾール骨格、アザインドール骨格、アザカルバゾール骨格、又は芳香族第三級アミン骨格を有するものがより好ましく、カルバゾール骨格を有する化合物が特に好ましい。
また、本発明においては、前記ホスト化合物の水素を一部又はすべて重水素に置換したホスト材料を用いることができる(特願2008−126130号明細書、特表2004−515506号公報)。
【0028】
このような正孔輸送性ホスト化合物としての具体的化合物としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【0029】
前記正孔輸送性ホスト化合物の含有量は、発光層を形成する全化合物質量に対して、10質量%〜99.9質量%であることが好ましく、20質量%〜99.5質量%がより好ましく、30質量%〜99質量%が更に好ましい。
【0030】
−−電子輸送性ホスト化合物−−
前記電子輸送性ホスト化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、オキサール、オキサジアゾール、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、又はそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、などが挙げられる。
【0031】
前記電子輸送性ホスト化合物としては、例えば金属錯体、アゾール誘導体(ベンズイミダゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体等)、アジン誘導体(ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体等)などが挙げられる。中でも、本発明においては、耐久性の点から金属錯体化合物が好ましい。前記金属錯体化合物は、金属に配位する少なくとも1つの窒素原子又は酸素原子又は硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体がより好ましい。
金属錯体中の金属イオンは、特に制限はなく、好ましくはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、錫イオン、白金イオン、又はパラジウムイオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、白金イオン、又はパラジウムイオンであり、更に好ましくはアルミニウムイオン、亜鉛イオン、又はパラジウムイオンである。
【0032】
前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」、Springer−Verlag社、H.Yersin著、1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」、裳華房社、山本明夫著、1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。
【0033】
前記配位子としては、例えば含窒素ヘテロ環配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数3〜15であり、単座配位子であっても2座以上の配位子であってもよい。好ましくは2座以上6座以下の配位子である。また、2座以上6座以下の配位子と単座の混合配位子も好ましい。
前記配位子としては、例えばアジン配位子(例えば、ピリジン配位子、ビピリジル配位子、ターピリジン配位子などが挙げられる)、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(例えば、ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾピリジン配位子などが挙げられる)、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、4−ビフェニルオキシなどが挙げられる)、ヘテロアリールオキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、及びキノリルオキシなどが挙げられる)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる)、ヘテロアリールチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、及び2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる)、シロキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、及びトリイソプロピルシロキシ基などが挙げられる。)、芳香族炭化水素アニオン配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えばフェニルアニオン、ナフチルアニオン、及びアントラニルアニオンなどが挙げられる)、芳香族ヘテロ環アニオン配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜25、特に好ましくは炭素数2〜20であり、例えばピロールアニオン、ピラゾールアニオン、ピラゾールアニオン、トリアゾールアニオン、オキサゾールアニオン、ベンゾオキサゾールアニオン、チアゾールアニオン、ベンゾチアゾールアニオン、チオフェンアニオン、及びベンゾチオフェンアニオンなどが挙げられる)、インドレニンアニオン配位子などが挙げられ、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、又はシロキシ配位子であり、更に好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、シロキシ配位子、芳香族炭化水素アニオン配位子、又は芳香族ヘテロ環アニオン配位子である。
【0034】
前記金属錯体電子輸送性ホスト化合物としては、例えば特開2002−235076号公報、特開2004−214179号公報、特開2004−221062号公報、特開2004−221065号公報、特開2004−221068号公報、特開2004−327313号公報などに記載の化合物が挙げられる。
【0035】
このような電子輸送性ホスト化合物としては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【化23】

【化24】

【化25】

【0036】
前記電子輸送性ホスト化合物の含有量は、発光層を形成する全化合物質量に対して、10質量%〜99.9質量%であることが好ましく、20質量%〜99.5質量%がより好ましく、30質量%〜99質量%が更に好ましい。
【0037】
前記発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
前記発光層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
【0038】
前記発光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、2nm〜500nmが好ましく、発光効率の観点から、3nm〜200nmがより好ましく、10nm〜200nmが更に好ましい。また、前記発光層は1層であっても2層以上であってもよい。
【0039】
<陰極側隣接層>
前記陰極側隣接層は、発光層と陰極側で隣接する有機層であり、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通り抜けることを防止する正孔ブロック層として機能する。
前記陰極側隣接層の三重項エネルギーは、上述したように、前記発光層の発光材料の三重項エネルギーよりも小さいものである。
【0040】
前記陰極側隣接層は、縮合芳香族環化合物を含有することが好ましい。
前記縮合芳香族環化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(I)で表されるアントラセン誘導体骨格を有する化合物、及び下記一般式(II)で表されるピレン誘導体骨格を有する化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【化26】

ただし、前記一般式(I)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜20の芳香族環から誘導される基である。前記芳香族環は、1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。前記置換基は、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基及びヒドロキシ基から選ばれる。前記芳香族環が2以上の置換基で置換されている場合、前記置換基は同一であっても、異なっていてもよく、隣接する置換基同士は互いに結合して飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。
からRは、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基及びヒドロキシ基から選ばれる。また、隣接する置換基同士は互いに結合して飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。
【0041】
【化27】

ただし、前記一般式(II)中、Ar1a及びAr2aは、それぞれ置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族環基を表す。
Lは、それぞれ置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のナフタレニレン基、置換もしくは無置換のフルオレニレン基又は置換もしくは無置換のジベンゾシロリレン基である。
mは0〜2の整数、nbは1〜4の整数、sは0〜2の整数、tは0〜4の整数である。
また、L又はAr1aは、ピレンの1〜5位のいずれかに結合し、L又はAr2aは、ピレンの6〜10位のいずれかに結合する。
ただし、nb+tが偶数のとき、Ar1a、Ar2a、Lは下記(1)又は(2)を満たす。
(1)Ar1a≠Ar2a(ここで≠は、異なる構造の基であることを示す。)
(2)Ar1a=Ar2aの時
(2−1)m≠s及び/又はnb≠t、又は
(2−2)m=sかつnb=tの時、
(2−2−1)L、又はピレンが、それぞれAr1a及びAr2a上の異なる結合位置に結合しているか、
(2−2−2)L、又はピレンが、Ar1a及びAr2a上の同じ結合位置に結合している場合、L、又はAr1a及びAr2aのピレンにおける置換位置が1位と6位、又は2位と7位である場合はない。
【0042】
前記一般式(I)で表されるアントラセン誘導体骨格を有する化合物の具体例について以下に挙げるが、本発明はこれらの化合物に限定されることはない。
【化28】

【化29】

【0043】
前記下記一般式(II)で表されるピレン誘導体骨格を有する化合物の具体例について以下に挙げるが、本発明はこれらの化合物に限定されることはない。
【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【0044】
これらの中でも、下記構造式で表される化合物が特に好ましい。
【化35】

【化36】

【化37】

【0045】
前記陰極側隣接層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
前記陰極側隣接層の平均厚みは、1nm〜10nmであることが好ましく、2nm〜5nmであることがより好ましい。前記平均厚みが、1nm未満であると、陰極側隣接層を形成できず、高効率化や高耐久性化の効果が十分ではないことがあり、10nmを超えると、陰極側隣接層の電子移動度が高い場合、素子として高電圧化してしまうことがある。
ここで、前記陰極側隣接層の平均厚みは、例えば、水晶振動子を用いて測定することができる。具体的には、まず、ガラス基板上に陰極側隣接層を成膜し、Dektak3ST(SLOAN社製)にて膜厚測定を行い、陰極側隣接層を成膜中に膜厚が分かるように水晶振動子と校正を行うことにより、水晶振動子で厚みを測定することができる。
【0046】
<電子輸送層>
前記電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層であり、上述したように、前記電子輸送層の三重項エネルギーは、陰極側隣接層の三重項エネルギーよりも大きいことが必要である。
【0047】
前記電子輸送層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記構造式で表される2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン;BCP)、BCPにLiをドープしたもの、下記構造式で表されるトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)等の8−キノリノール又はその誘導体を配位子とする有機金属錯体、下記構造式で表されるBAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium (III))等のキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、下記構造式で表される化合物G、などが挙げられる。これらの中でも、BCPにLiをドープしたもの、BAlq、下記構造式で表される化合物Gが特に好ましい。
【0048】
【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【0049】
前記電子輸送層は、例えば、蒸着法、湿式製膜法、電子ビーム法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、分子積層法、LB法、印刷法、転写法、などの上述した方法により好適に形成することができる。
前記電子輸送層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1nm〜500nmが好ましく、10nm〜50nmがより好ましい。
前記電子輸送層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0050】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極の間に、少なくとも1層の発光層と、該発光層の陰極側に隣接する陰極側隣接層と、該陰極側隣接層の陰極側に隣接する電子輸送層と、を少なくとも含む有機層を有してなり、更に必要に応じてその他の層を有していてもよい。
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、正孔輸送層、などが挙げられる。
【0051】
−電子注入層−
前記電子注入層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。
前記電子注入層は、1種又は2種以上の材料からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記電子注入層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
【0052】
−正孔注入層、正孔輸送層−
前記正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。該正孔注入層及び正孔輸送層は、単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
これらの層に用いられる正孔注入材料又は正孔輸送材料としては、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
前記正孔注入材料又は正孔輸送材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばピロール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
前記正孔注入層及び正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。
前記電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
前記無機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモン等のハロゲン化金属;五酸化バナジウム、三酸化モリブデン等の金属酸化物、などが挙げられる。
前記有機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基等を有する化合物;キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電子受容性ドーパントの使用量は、特に制限はなく、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料又は正孔注入材料に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜30質量%がより好ましく、0.1質量%〜30質量%が更に好ましい。
【0054】
前記正孔注入層及び正孔輸送層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布法、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
前記正孔注入層及び正孔輸送層の厚みは、1nm〜500nmが好ましく、5nm〜250nmがより好ましく、10nm〜200nmが更に好ましい。
【0055】
−電子ブロック層−
前記電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
前記電子ブロック層を構成する化合物としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが利用できる。また、前記電子ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記電子ブロック層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布法、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
前記電子ブロック層の厚みは、1nm〜200nmが好ましく、1nm〜50nmがより好ましく、3nm〜10nmが更に好ましい。
【0056】
<電極>
本発明の有機電界発光素子は、一対の電極、即ち陽極と陰極とを含む。前記有機電界発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は透明であることが好ましい。通常、陽極は有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、陰極は有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよい。
前記電極としては、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
前記電極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物等が好適に挙げられる。
【0057】
−陽極−
前記陽極を構成する材料としては、例えば、アンチモン、フッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料、又はこれらとITOとの積層物、などが挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物が好ましく、生産性、高導電性、透明性等の点からITOが特に好ましい。
【0058】
−陰極−
前記陰極を構成する材料としては、例えば、アルカリ金属(例えばLi、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属、アルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が特に好ましい。
前記アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)を意味する。
【0059】
前記電極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば印刷方式、コーティング方式等の湿式方式;真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式;CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などが挙げられる。これらの中でも、前記電極を構成する材料との適性を考慮し、適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料としてITOを選択する場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って形成することができる。陰極の材料として金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って形成することができる。
【0060】
なお、前記電極を形成する際にパターニングを行う場合は、フォトリソグラフィー等による化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザー等による物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0061】
<基板>
本発明の有機電界発光素子は、基板上に設けられていることが好ましく、電極と基板とが直接接する形で設けられていてもよいし、中間層を介在する形で設けられていてもよい。
前記基板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス(無アルカリガラス、ソーダライムガラス等)等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料、などが挙げられる。
【0062】
前記基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。基板は透明でも不透明でもよく、透明な場合は無色透明でも有色透明でもよい。
【0063】
前記基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
前記透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、例えば窒化珪素、酸化珪素等の無機物などが挙げられる。
前記透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
【0064】
−保護層−
有機電界発光素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
前記保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばIn、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属;MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物;SiNx、SiNxOy等の金属窒化物;MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、などが挙げられる。
【0065】
前記保護層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法などが挙げられる。
【0066】
−封止容器−
本発明の有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体が封止されていてもよい。更に、前記封止容器と有機電界発光素子の間の空間には、水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。
前記水分吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム、などが挙げられる。
前記不活性液体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばパラフィン類、流動パラフィン類;パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤;塩素系溶剤、シリコーンオイル類、などが挙げられる。
【0067】
−樹脂封止層−
本発明の有機電界発光素子は、大気からの酸素や水分による素子性能劣化を樹脂封止層により封止することで抑制することが好ましい。
前記樹脂封止層の樹脂素材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、エステル系樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、水分防止機能の点からエポキシ樹脂が特に好ましい。前記エポキシ樹脂の中でも熱硬化型エポキシ樹脂、又は光硬化型エポキシ樹脂が好ましい。
【0068】
前記樹脂封止層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂溶液を塗布する方法、樹脂シートを圧着又は熱圧着する方法、蒸着やスパッタリング等により乾式重合する方法、などが挙げられる。
【0069】
−封止接着剤−
前記封止接着剤は、端部よりの水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。
前記封止接着剤の材料としては、前記樹脂封止層で用いる材料と同じものを用いることができる。これらの中でも、水分の侵入防止の点からエポキシ系の接着剤が好ましく、光硬化型接着剤あるいは熱硬化型接着剤が特に好ましい。
前記封止接着剤にフィラーを添加することも好ましい。前記フィラーとしては、例えばSiO、SiO(酸化ケイ素)、SiON(酸窒化ケイ素)、SiN(窒化ケイ素)等の無機材料が好ましい。該フィラーの添加により、封止接着剤の粘度が上昇し、加工適正が向上し、及び耐湿性が向上する。
前記封止接着剤は、乾燥剤を含有してもよい。前記乾燥剤としては、例えば酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、などが挙げられる。前記乾燥剤の添加量は、前記封止接着剤に対し0.01質量%〜20質量%が好ましく、0.05質量%〜15質量%がより好ましい。前記添加量が、0.01質量%未満であると、乾燥剤の添加効果が薄れることになり、20質量%を超えると、封止接着剤中に乾燥剤を均一分散させることが困難になることがある。
本発明においては、前記乾燥剤の入った封止接着剤をディスペンサー等により任意量塗布し、塗布後別の基板を重ねて、硬化させることにより封止することができる。
【0070】
図2は、本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。有機EL素子11は、ガラス基板1上に形成された陽極2(例えばITO電極)と、正孔注入層3と、正孔輸送層4と、電子ブロック層5と、発光層6と、陰極側隣接層(正孔ブロック層)7と、電子輸送層8と、電子注入層9と、陰極10(例えばAl−Li電極)とをこの順に積層してなる層構成を有する。なお、陽極2(例えばITO電極)と陰極10(例えばAl−Li電極)とは電源を介して互いに接続されている。
【0071】
−駆動−
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子は、薄膜トランジスタ(TFT)によりアクティブマトリックスへ適用することができる。薄膜トランジスタの活性層としてアモルファスシリコン、高温ポリシリコン、低温ポリシリコン、微結晶シリコン、酸化物半導体、有機半導体、カーボンナノチューブ等を適用することができる。
本発明の有機電界発光素子は、例えばWO2005/088726号パンフレット、特開2006−165529号公報、米国特許出願公開2008/0237598A1明細書などに記載の薄膜トランジスタを適用することができる。
【0072】
本発明の有機電界発光素子は、特に制限はなく、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板、ITO層、有機層の屈折率を制御する、基板、ITO層、有機層の厚みを制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
本発明の有機電界発光素子からの光取り出し方式は、トップエミッション方式であってもボトムエミッション方式であってもよい。
【0073】
本発明の有機電界発光素子は、共振器構造を有してもよい。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明又は半透明電極、発光層、及び金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第1の態様の場合の計算式は、特開平9−180883号公報に記載されている。第2の態様の場合の計算式は、特開2004−127795号公報に記載されている。
【0074】
−用途−
本発明の有機電界発光素子は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等に好適に利用できる。
前記有機電界発光ディスプレイをフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する有機EL素子を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の有機電界発光素子による白色発光をカラーフィルターを通して3原色に分ける白色法、青色発光用の有機電界発光素子による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。また、上記方法により得られる異なる発光色の有機電界発光素子を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色の平面型光源を得ることができる。例えば、青色及び黄色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、青色、緑色、赤色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、などが挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0076】
(実施例1)
−有機電界発光素子の作製−
0.5mm厚み、2.5cm角のガラス基板上に、陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を厚み100nmにスパッタして設けた。次に、このITO付きガラス基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。このITO付きガラス基板上に真空蒸着法にて以下の各層を蒸着した。
なお、以下の実施例及び比較例における蒸着速度は、特に断りのない場合は0.1nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。また、以下の各層の厚みは水晶振動子を用いて測定した。
【0077】
まず、陽極(ITO)上に、下記構造式で表される4,4’,4”−トリス(N,N−(2−ナフチル)−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)に、下記構造式で表されるF4−TCNQを0.3質量%ドープした正孔注入層を厚みが120nmになるように真空蒸着法により形成した。
【化42】

【化43】

【0078】
次に、正孔注入層上に、正孔輸送層として下記構造式で表されるNPD(N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン)を厚みが7nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化44】

次に、正孔輸送層上に、電子ブロック層として下記構造式で表される化合物を厚みが3nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化45】

次に、ホスト材料である下記構造式で表される化合物Aと、該化合物Aに対して燐光発光材料である下記構造式で表される化合物Bを15質量%ドープした発光層を厚みが30nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化46】

【化47】

【0079】
次に、発光層上に、陰極側隣接層として下記構造式で表される化合物C(tbppy(1,3,6,8−テトラ(4−ビフェニル)ピレン))を、平均厚みが3nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化48】

次に、陰極側隣接層上に、電子輸送層として下記構造式で表されるBAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium (III))を、厚みが30nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化49】

次に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を、厚みが1nmとなるように真空蒸着法により形成した。
次に、電子注入層上に、陰極としてパタ−ニングしたマスク(発光領域が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、金属アルミニウムを厚み100nmとなるように真空蒸着法により形成した。
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶、及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ株式会社製)を用いて封止した。以上により、実施例1の有機電界発光素子を作製した。
【0080】
(実施例2)
−有機電界発光素子の作製−
実施例1において、陰極側隣接層として上記構造式で表される化合物Cを、下記構造式で表される化合物Dに代えた以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
【化50】

【0081】
(実施例3)
−有機電界発光素子の作製−
実施例1において、陰極側隣接層として上記構造式で表される化合物Cを、下記構造式で表される化合物E(4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)フェニルアントラセン(DPVDPAN))に代えた以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
【化51】

【0082】
(実施例4)
実施例1において、陰極側隣接層の平均厚みを3nmから10nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
【0083】
(実施例5)
実施例1において、電子輸送層として上記構造式で表されるBAlqを、下記構造式で表されるBCPにLiを1質量%ドープしたものに代えた以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
【化52】

【0084】
(実施例6)
−有機電界発光素子の作製−
実施例1において、電子輸送層として上記構造式で表されるBAlqを、下記構造式で表される化合物Gに代えた以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
【化53】

【0085】
(比較例1)
−有機電界発光素子の作製−
実施例1において、陰極側隣接層を設けない以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
【0086】
(比較例2)
−有機電界発光素子の作製−
実施例1において、陰極側隣接層として上記構造式で表される化合物Cを、下記構造式で表される化合物Fに代えた以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
【化54】

【0087】
(比較例3)
−有機電界発光素子の作製−
実施例1において、陰極側隣接層を設けず、電子輸送層として上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表されるBCPにLiを1質量%ドープしたものに代えた以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
【0088】
(比較例4)
−有機電界発光素子の作製−
実施例1において、陰極側隣接層を設けず、電子輸送層として上記構造式で表されるBAlqを下記構造式で表されるAlqに代えた以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
【化55】

【0089】
(比較例5)
−有機電界発光素子の作製−
実施例1において、陰極側隣接層を設けず、電子輸送層として上記構造式で表されるBAlqを上記構造式で表される化合物Gに代えた以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
【0090】
(比較例6)
−有機電界発光素子の作製−
実施例1において、電子輸送層として上記構造式で表されるBAlqを上記構造式で表されるAlqに代えた以外は、実施例1と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
【0091】
次に、作製した実施例1〜6及び比較例1〜6の発光材料、陰極側隣接層、及び電子輸送層について、以下のようにして、三重項エネルギーを測定した。結果を表1に示す。
【0092】
<三重項エネルギーの測定>
三重項エネルギーは、日立製作所製分光蛍光光度計F7000を用いて、蛍光よりも発光寿命が長いことを利用して、励起光を遮断した後の顕微フォトルミネッセンス(PL)スペクトルから求めた。
【0093】
【表1】

【0094】
次に、作製した実施例1〜6及び比較例1〜6について、以下のようにして、外部量子効率、駆動電圧、及び駆動耐久性(輝度半減時間)を測定した。結果を表2に示す。
【0095】
<外部量子効率の測定>
KEITHLEY社製ソースメジャーユニット2400型を用いて、電流密度25mA/cmの直流電流を各素子に通電し、発光させた。その輝度と発光スペクトルを、トプコン社製輝度計SR−3を用いて測定した。これらの測定結果をもとに、外部量子効率を発光スペクトル換算法により算出した。
【0096】
<駆動電圧>
KEITHLEY社製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電流通電時の駆動電圧を計測した。
【0097】
<駆動耐久性(輝度半減時間)>
駆動耐久性は、初期輝度2,000cd/mで定電流駆動を行い、比較例1及び3の輝度半減時間を100として、発光層に同じ燐光発光材料を用いた有機電界発光素子の輝度半減時間を相対値で示した。
【表2】

【0098】
表1及び表2の結果から、実施例1〜6は、比較例1〜6に比べて高い発光効率と駆動耐久性の向上が図れることが分かった。
ここで、実施例1〜6及び比較例1〜6では、上記構造式で表される化合物B(燐光青色発光材料、三重項エネルギー:63kcal/mol)を発光層に用いているが、この燐光青色発光材料の代わりに下記構造式で表される化合物H(燐光緑発光材料、三重項エネルギー:58kcal/mol)を発光層に用いた場合でも、発光材料、陰極側隣接層、及び電子輸送層の三重項エネルギーについては同様の大小関係となる。したがって下記構造式で表される化合物H(燐光緑発光材料)を用いた場合であっても、発光材料の発光波長が緑色の方がより短い分三重項エネルギー自体はより小さくなるが、同じPt錯体であり、陰極側隣接層により同様の効果が得られることは明らかである。
【化56】

【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の有機電界発光素子は、高い発光効率と駆動耐久性の向上が図れるので、例えば表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信などに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0100】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 電子ブロック層
6 発光層
7 陰極側隣接層
8 電子輸送層
9 電子注入層
10 陰極
11 有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極の間に、少なくとも1層の発光層と、該発光層の陰極側に隣接する陰極側隣接層と、該陰極側隣接層の陰極側に隣接する電子輸送層と、を少なくとも含む有機層を有してなり、
前記陰極側隣接層の三重項エネルギーBが、前記発光層の発光材料の三重項エネルギーAよりも小さく、両者の三重項エネルギーの差(A−B)が9kcal/mol以上20kcal/mol以下であり、
前記陰極側隣接層の三重項エネルギーBが、前記電子輸送層の三重項エネルギーCよりも小さく、両者の三重項エネルギーの差(C−B)が5kcal/mol以上20kcal/mol以下であることを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
陰極側隣接層が、下記一般式(I)で表されるアントラセン誘導体骨格を有する化合物、及び下記一般式(II)で表されるピレン誘導体骨格を有する化合物の少なくとも1種を含有する請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化57】

ただし、前記一般式(I)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜20の芳香族環から誘導される基である。前記芳香族環は、1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。前記置換基は、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基及びヒドロキシ基から選ばれる。前記芳香族環が2以上の置換基で置換されている場合、前記置換基は同一であっても、異なっていてもよく、隣接する置換基同士は互いに結合して飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。
からRは、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基及びヒドロキシ基から選ばれる。また、隣接する置換基同士は互いに結合して飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。
【化58】

ただし、前記一般式(II)中、Ar1a及びAr2aは、それぞれ置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族環基を表す。
Lは、それぞれ置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のナフタレニレン基、置換もしくは無置換のフルオレニレン基又は置換もしくは無置換のジベンゾシロリレン基である。
mは0〜2の整数、nbは1〜4の整数、sは0〜2の整数、tは0〜4の整数である。
また、L又はAr1aは、ピレンの1〜5位のいずれかに結合し、L又はAr2aは、ピレンの6〜10位のいずれかに結合する。
ただし、nb+tが偶数のとき、Ar1a、Ar2a、Lは下記(1)又は(2)を満たす。
(1)Ar1a≠Ar2a(ここで≠は、異なる構造の基であることを示す。)
(2)Ar1a=Ar2aの時
(2−1)m≠s及び/又はnb≠t、又は
(2−2)m=sかつnb=tの時、
(2−2−1)L、又はピレンが、それぞれAr1a及びAr2a上の異なる結合位置に結合しているか、
(2−2−2)L、又はピレンが、Ar1a及びAr2a上の同じ結合位置に結合している場合、L、又はAr1a及びAr2aのピレンにおける置換位置が1位と6位、又は2位と7位である場合はない。
【請求項3】
燐光発光材料が、白金を含む錯体である請求項1から2のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
陰極側隣接層が、下記構造式で表される化合物のいずれかを含有する請求項1から3のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【化59】

【化60】

【化61】

【請求項5】
陰極側隣接層の平均厚みが、1nm〜10nmである請求項1から4のいずれかに記載の有機電界発光素子。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−119721(P2011−119721A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248764(P2010−248764)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】