説明

有機電界発光素子

【課題】駆動電圧が低く且つ駆動耐久性に優れた有機電界発光素子の提供。
【解決手段】陽極と陰極との間に発光層を含む少なくとも2層の有機層を有してなり、前記陰極と前記発光層との間に、(a)少なくとも1種のLUMOのエネルギー準位が2.1eV以下の芳香族化合物、及び(b)少なくとも1種の下記式(1)で表される金属酸化物を含む有機層を有する有機電界発光素子。
(BaSrCa)O 式(1)
[式(1)中、1、m、及びnは、各々独立に、0以上1以下の値を表し、かつl+m+n=1を満たし、xは0.3以上0.999以下の値を表す]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子(以下、「有機エレクトロルミネッセント素子」、「有機EL素子」と称することもある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、自発光、高速応答などの特長を持ち、フラットパネルディスプレイへの適用が期待されている。特に、正孔輸送性の有機薄膜(正孔輸送層)と電子輸送性の有機薄膜(電子輸送層)とを積層した2層型(積層型)のものが報告されて以来、有機EL素子は、10V以下の低電圧で発光する大面積発光素子として関心を集めている。積層型の有機EL素子としては、例えば、陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、を基本構成とするものが挙げられる。
【0003】
このような有機EL素子においては、発光効率や発光輝度の向上、素子の長寿命化などの観点から、種々の検討がなされている。
そのような検討の一つとして、例えば、特許文献1には、電子注入領域に特定の還元性ドーパントを用いることが開示されている。また、特許文献2には、電極と有機層との間に設けられた無機電子注入層に、高仕事関数の酸化物を用いることが開示されている。
【0004】
しかしながら、高い発光効率、素子の長寿命化に繋がる駆動電圧の低減、及び駆動耐久性に優れた有機EL素子については、未だ充分な効果を奏するものは提供されておらず、更なる改良が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3266573号明細書
【特許文献2】特許第3776600号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、駆動電圧が低く且つ駆動耐久性に優れた有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 陽極と陰極との間に発光層を含む少なくとも2層の有機層を有してなり、前記陰極と前記発光層との間に、(a)少なくとも1種のLUMOのエネルギー準位が2.1eV以下の芳香族化合物、及び(b)下記式(1)で表される金属酸化物を少なくとも1種含む有機層を有する有機電界発光素子。
(BaSrCa)O 式(1)
[式(1)中、1、m、及びnは、各々独立に、0以上1以下の値を表し、かつl+m+n=1を満たし、xは0.3以上0.999以下の値を表す]
[2]前記芳香族化合物のLUMOのエネルギー準位が1.2eV以下であることを特徴とする[1]に記載の有機電界発光素子。
[3] 前記式(1)で表される金属酸化物が、SrO、BaO、及びCaO(xは0.3以上0.999以下の値を表す。)からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物である[1]又は[2]に記載の有機電界発光素子。
[4] 前記式(1)におけるxが、0.4以上0.99以下の値である前記[1]から[3]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
[5] 前記式(1)におけるxが、0.5以上0.99以下の値である前記[1]から[3]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
[6] 前記式(1)におけるxが、0.6以上0.98以下の値である前記[1]から[3]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
[7] 前記発光層及び前記発光層と前記陰極との間に挟持される有機層の総てが、主成分として、LUMOのエネルギー準位が2.1eV以下の芳香族化合物を含む前記[1]から[6]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、駆動電圧が低く且つ駆動耐久性に優れた有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の有機電界発光素子における層構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[有機電界発光素子]
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に発光層を含む少なくとも2層の有機層を有してなり、前記陰極と前記発光層との間に、(a)少なくとも1種のLUMO(最低非占有分子軌道)のエネルギー準位が2.1eV以下の芳香族化合物(以下、適宜、「特定芳香族化合物」とも称する。)、及び(b)少なくとも1種の下記式(1)で表される金属酸化物(以下、適宜、「特定金属酸化物」とも称する。)を含む有機層(以下、適宜、「特定有機層」とも称する。)を有することを特徴とする。
(BaSrCa)O 式(1)
[式(1)中、1、m、及びnは、各々独立に、0以上1以下の値を表し、かつl+m+n=1を満たし、xは0.3以上0.999以下の値を表す]
【0011】
本発明の有機電界発光素子は、陰極と発光層との間に、特定芳香族化合物と、特定金属酸化物とを含む有機層を有することで、駆動電圧が低く且つ駆動耐久性に優れた有機電界発光素子となる。
【0012】
特定芳香族化合物及び特定金属酸化物は、それぞれマトリックス材料及び還元性ドーパントとして特定有機層に含まれることが好ましい。
【0013】
ここで、本発明において「マトリックス材料」とは、有機層の主成分として含有される有機化合物を意味する。また、本発明において、有機層の「主成分」とは、具体的には、1層の有機層を構成する成分の全質量中、50質量%以上100質量%未満を占める成分を意味する。
【0014】
本発明者らは、有機電界発光素子において、陰極と発光層との間に設ける有機層に、マトリックス材料としてLUMOのエネルギー準位が2.1eV以下である芳香族化合物を用い、且つ、該有機層に電子供与性ドーパントとして組成比が特定の範囲に調整された特定金属酸化物を用いることで、電子供与性ドーパントとして従来より用いられているアルカリ金属、アルカリ土類金属等を用いた場合に比して、駆動電圧の低減と駆動耐久性とに著しく優れた有機電界発光素子が得られるとの知見を得た。
本発明の作用機構については、未だ明らかではないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属等は、電子供与性ドーパントとして用いた場合に比較して、組成比が特定の範囲に調整された特定金属酸化物は、電子供与性ドーパントとして用いるとマトリックス材料との反応性が向上し多数の電子キャリアが生成される、このことが本発明の有機電界発光素子における優れた駆動電圧の低減と駆動耐久性の発揮に寄与しているものと推測される。
【0015】
本発明における特定有機層は、電子注入層及び電子輸送層の少なくとも一方として機能する層である。
【0016】
本発明の有機電界発光素子は、陽極及び陰極の間には、特定有機層及び発光層の他、必要に応じてその他の層を有していてもよい。
【0017】
また、本発明の有機電界発光素子においては、発光層及び発光層と陰極との間に挟持される有機層の総てが、主成分として、LUMOのエネルギー準位が2.1eV以下の芳香族化合物を含むことが好ましい。
【0018】
本発明の有機電界発光素子における有機層の積層態様の一例としては、例えば、陽極側から、正孔注入層及び/又は正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び/又は電子注入層の順に積層されている態様が挙げられる。このような積層態様を有する有機電界発光素子においては、更に、正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間に、電荷ブロック層等を有していてもよい。尚、各層は複数の二次層に更に分かれていてもよい。
【0019】
以下、特定有機層を、電子注入層及び電子輸送層の少なくとも一方として有する態様の有機電界発光素子を例に、本発明の有機電界発光素子について詳細に説明する。
【0020】
(電子注入層、電子輸送層)
電子注入層、電子輸送層は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有している層である。本発明の有機電界発光素子においては、特定有機層を、電子注入層及び電子輸送層の少なくとも一方として有する。
【0021】
特定有機層は、単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。特定有機層の数は、発光層の構成などを考慮して設定することができる。
【0022】
陰極と発光層との間に2層以上の有機層を有する場合、特定有機層は陰極に隣接する層であることが好ましい。この場合の特定有機層は、電子注入層として機能する層となる。
【0023】
特定有機層が、陰極に隣接する電子注入層である場合の好ましい層構成の一つは、特定有機層と発光層との間に、特定有機層ではない他の電子輸送層を有する態様である。他の電子輸送層としては、特定芳香族化合物を含有し、且つ特定金属酸化物を含有しない有機層であることがより好ましい。また、電子注入層である特定有機層及び他の電子輸送層の双方が特定芳香族化合物を含有する場合、これらの層に含有される特定芳香族化合物とは、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることがより好ましい。
なお、他の電子輸送層に特定芳香族化合物とは異なる化合物を用いる場合、他の電子輸送層には、電子輸送材料として公知の材料を用いることができる。
【0024】
特定有機層は、特定芳香族化合物及び特定金属酸化物を少なくとも用い、公知の方法に従って形成することができるが、蒸着法により好適に形成することができる。
また、特定有機層とともに、陽極と発光層との間に設けられる他の電子注入層又は電子輸送層については、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
【0025】
特定有機層の膜厚としては、1nm以上500nm以下が好ましく、5nm以上300nm以下がより好ましく、10nm以上200nm以下が更に好ましい。
また、陰極と発光層との間に、特定有機層と共に他の電子注入層又は電子輸送層を形成する場合についても、その好ましい膜厚は、特定有機層の場合と同様である。
【0026】
以下、本発明における特定有機層が含有する特徴的な成分である、(a)LUMOのエネルギー準位が2.1eV以下の芳香族化合物(特定芳香族化合物)、(b)式(1)で表される金属化合物(特定金属酸化物)について詳細に説明する。
【0027】
<(a)LUMOのエネルギー準位が2.1eV以下の芳香族化合物>
特定有機層は、LUMOのエネルギー準位が2.1eV以下の芳香族化合物(特定芳香族化合物)を含有する。
【0028】
特定芳香族化合物は、LUMOのエネルギー準位が2.1eV以下であればよく、1.7eV以下であることが好ましく、1.2eV以下であることがさらに好ましい。
【0029】
本発明において、LUMOのエネルギー準位の値は、米国Gaussian社製の分子軌道計算用ソフトウェアであるGaussian98(Gaussian98、Revision A.11.4,M.J.Frisch,et al.,Gaussian,Inc.,Pittsburgh PA,2002)を用いて計算した時の計算値であり、キーワードとしてB3LYP/6-31G*を用いて構造最適化を行うことにより算出した計算値(eV単位換算値)と定義する。この手法で求めた計算値は実験値との相関が高い。
【0030】
特定芳香族化合物としては、有機電界発光素子において電子注入材料又は電子輸送材料として用いられる材料のうち、LUMOのエネルギー準位が2.1eV以下のものを用いればよいが、その中でも特定金属酸化物をドーパントに用いた際の電子キャリア生成量の観点からは、下記一般式(A)で表される化合物がより好ましい。
【0031】
【化1】

【0032】
一般式(A)中、R〜Rは、水素原子又は置換基を表し、隣接する置換基同士で縮合環を形成してもよい。Rは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はシリル基を表し、更に置換基で置換されていてもよい。
【0033】
〜Rで表される置換基としては特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基、シリル基、シリルオキシ基、水素原子などが挙げられる。
これらの置換基は、更に他の置換基によって置換されてもよく、また、これらの置換基同士が結合し、環を形成していてもよい。
【0034】
ここでアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−オクタデシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、1−アダマンチル、又はトリフルオロメチルなどが挙げられる。
また、アルケニル基としては、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、1−イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。
また、アルキニル基としては、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばエチニル、プロパルギル、1−プロピニル、3−ペンチニルなどが挙げられる。
また、アリール基としては、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、o−メチルフェニル、m−メチルフェニル、p−メチルフェニル、2,6−キシリル、p−クメニル、メシチル、ナフチル、アントラニル、などが挙げられる。
【0035】
また、ヘテロアリール基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジル、ピリミジル、トリアジニル、キノリル、イソキノリニル、ピロリル、インドリル、フリル、チエニル、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニルなどが挙げられる。
また、アミノ基としては、好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。
また、アルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。
また、アリールオキシ基としては、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。
また、ヘテロ環オキシ基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。
【0036】
また、アシル基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。
また、アルコキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。
また、アリールオキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。
また、アシルオキシ基としては、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。
また、アシルアミノ基としては、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。
また、アルコキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。
【0037】
また、アリールオキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。
また、スルホニルアミノ基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。
また、スルファモイル基としては、好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。
また、カルバモイル基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。
また、アルキルチオ基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。
また、アリールチオ基としては、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。
【0038】
また、ヘテロ環チオ基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミダゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。
また、スルホニル基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシル、トリフルオロメタンスルホニルなどが挙げられる。
また、スルフィニル基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。
また、ウレイド基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。
また、リン酸アミド基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。
【0039】
また、ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
また、ヘテロ環基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えば、ピペリジル、モルホリノ、ピロリジルなどが挙げられる。
また、シリル基としては、好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチル‐tert−ブチルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジフェニル‐tert−ブチルシリル、トリフェニルシリル、トリ−1−ナフチルシリル、トリ−2−ナフチルシリルなどが挙げられる。
また、シリルオキシ基としては、好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。
【0040】
〜Rで表される置換基として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン基、シアノ基、シリル基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、ヘテロアリール基、ハロゲン基、シアノ基、シリル基であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基、ヘテロアリール基、シリル基である。これらの置換基は、更に他の置換基によって置換されてもよく、また、これらの置換基同士が結合し、環を形成していてもよい。
【0041】
〜Rで表されるアルキル基として好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−オクチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル、トリフルオロメチルであり、より好ましくはメチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル、トリフルオロメチルであり、特に好ましくはtert−ブチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル、トリフルオロメチルである。これらの置換基は、更に他の置換基によって置換されてもよく、また、これらの置換基同士が結合し、環を形成していてもよい。
【0042】
〜Rで表されるヘテロアリール基として好ましくはイミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、キノリル、イソキノリニル、ピロリル、インドリル、フリル、チエニル、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニルであり、より好ましくはイミダゾリル、ピラゾリル、キノリル、インドリル、フリル、チエニル、ベンズイミダゾリル、カルバゾリル、アゼピニルであり、特に好ましくはインドリル、フリル、チエニル、ベンズイミダゾリル、カルバゾリル、アゼピニルである。これらの置換基は、更に他の置換基によって置換されてもよく、縮環構造を形成していてもよく、また、これらの置換基同士が結合し、環を形成していてもよい。
【0043】
〜Rで表されるシリル基として好ましくはトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、メチルジフェニルシリル、ジメチル‐tert−ブチルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジフェニル‐tert−ブチルシリル、トリフェニルシリルであり、より好ましくはトリメチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチル‐tert−ブチルシリル、ジフェニル‐tert−ブチルシリル、トリフェニルシリルであり、特に好ましくはトリメチルシリル、ジメチル‐tert−ブチルシリル、トリフェニルシリルである。これらの置換基は、更に他の置換基によって置換されてもよく、また、これらの置換基同士が結合し、環を形成していてもよい。
【0044】
、Rで表される置換基として特に好ましいのは、アルキル基、アリール基、シリル基、水素原子であり、より好ましいのは、アルキル基、シリル基、水素原子であり、特に好ましいのは、tert−ブチル基、アダマンチル基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、水素原子である。
【0045】
、Rで表される置換基として特に好ましいのは、アルキル基、アリール基、シリル基、水素原子であり、より好ましいのは、アルキル基、シリル基、水素原子であり、特に好ましいのは、tert−ブチル基、アダマンチル基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、水素原子である。
【0046】
は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はシリル基を表し、好ましくは、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基であり、より好ましくは、アリール基、ヘテロアリール基であり、特に好ましくは、アリール基である。
【0047】
で表されるアリール基として好ましくは、フェニル基、o−メチルフェニル基、2,6−キシリル基、メシチル基であり、より好ましくはフェニル基、メシチル基であり、特に好ましくはフェニル基である。これらの置換基は、縮環構造を形成していてもよく、また、これらの置換基同士が結合し、環を形成していてもよく、例えば、ビフェニル、ナフチル、アントラニル、フェナントリル、ピレニル、ナフタセニル等が挙げられる。これらの置換基は、更に他の置換基によって置換されてもよい。
【0048】
また、Rを介してカルバゾール骨格とR〜Rとからなる構造が複数結合していてもよく、当該構造の数としては、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個、特に好ましくは1〜2個である。
【0049】
一般式(A)で表される化合物の具体的な化合物としては、例えば、下記に示す例示化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
【化2】

【0051】
上記した例示化合物について、前述の方法により算出したLUMOのエネルギー準位の値は、以下の通りである。
【0052】
h−1:1.22eV、h−2:0.80eV、h−3:0.75eV、h−4:0.93eV、h−5:1.07eV、h−6:0.96、h−7:0.88eV、h−8:1.17eV
【0053】
特定芳香族化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
また、特定有機層は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、LUMOのエネルギー準位が2.1eVよりも大きい公知の電子注入材料又は電子輸送材料を含有していてもよい。
【0055】
特定芳香族化合物の含有量は、1層の特定有機層を構成する成分の全質量中、50質量%以上100質量%未満であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上100質量%未満である。
【0056】
<(b)式(1)で表される金属酸化物>
特定有機層は、下記式(1)で表される金属酸化物(特定金属酸化物)を含有する。
(BaSrCa)O 式(1)
[式(1)中、1、m、及びnは、各々独立に、0以上1以下の値を表し、かつl+m+n=1を満たし、xは0.3以上0.999以下の値を表す]
【0057】
特定金属酸化物は、電子供与性ドーパントとして機能しうる化合物である。
【0058】
特定金属酸化物における組成比は、X線光電子分光により確認することができる。本発明において、特定金属酸化物における組成比は、(株)島津製作所製の測定装置「ESCA−3200」を用いて測定した値である。
【0059】
特定金属酸化物における組成比の調整は、反応性蒸着法を用い、特定金属酸化物を構成する金属を蒸着原料として、これを蒸着する際の酸素分圧を調整することで行うことができるが、この方法に限定される物ではない。
【0060】
式(1)中、xは、0.3以上0.999以下の値であり、0.4以上0.999以下の値が好ましく、0.5以上0.999以下の値がより好ましく、0.9以上0.999以下の値が更に好ましく。
【0061】
特定金属酸化物としてより好ましくは、SrO、BaO、及びCaOからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物であり、蒸着安定性の観点からは、SrOがより好ましい。
【0062】
特定金属酸化物は、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0063】
特定有機層における特定金属酸化物の含有量は、電荷輸送性の観点から、特定金属酸化物を含有する1層の有機層における特定芳香族化合物の全質量に対し、0.5質量%以上40質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましく、1質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
【0064】
また、特定有機層は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、公知の電子輸送性ドーパントを含有していてもよい。
【0065】
(発光層)
本発明における発光層は、電界印加時に、陽極側に設けられた層(正孔注入層又は正孔輸送層)から正孔を受け取り、陰極、電子注入層又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、発光材料とホスト材料とを含有する。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0066】
<発光材料>
発光層は、発光材料を含有する。
発光材料としては、蛍光発光材料及び燐光発光材料のいずれであってもよい。
発光材料とホスト材料との組み合わせとしては、一重項励起子からの発光(蛍光)が得られる蛍光発光材料とホスト材料との組み合せでも、三重項励起子からの発光(燐光)が得られる燐光発光材料とホスト材料との組み合せでもよい。中でも、発光効率の観点から、燐光発光材料とホスト材料との組み合せが好ましい。
【0067】
本発明における発光層は、色純度を向上させるためや発光波長領域を広げるために2種類以上の発光材料を含有することができる。
【0068】
また、緑色発光又は青色発光する発光材料の使用は、有機電界発光素子における駆動電圧の低電圧化を困難にする傾向があるが、本発明の有機電界発光素子は、緑色発光又は青色発光する発光材料を用いた場合であっても、高効率で且つ駆動電圧の低い有機電界発光素子となる。本発明に適用しうる緑色発光又は青色発光する発光材料としては、緑色発光又は青色発光する蛍光発光材料であっても、緑色発光又は青色発光する燐光発光材料であってもよい。
【0069】
−燐光発光材料−
燐光発光材料としては、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
【0070】
遷移金属原子を含む錯体における遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金であり、更に好ましくは、イリジウム又は白金である。
【0071】
ランタノイド原子を含む錯体におけるランタノイド原子としては、例えばランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、又はガドリニウムが好ましい。
【0072】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、芳香族炭素環配位子(例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、またはナフチルアニオンなど)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、またはフェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、アルコラト配位子(例えば、フェノラト配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0073】
これらの中でも、発光材料の具体例としては、例えば、米国特許第6303238B1号明細書、同6097147号明細書、国際公開第00/57676号パンフレット、同00/70655号パンフレット、同01/08230号パンフレット、WO01/39234A2号パンフレット報、同01/41512A1号パンフレット、同02/02714A2号パンフレット、同02/15645A1号パンフレット、同02/44189A1号パンフレット、特開2001−247859号公報、特開2002−117978号公報、特開2002−225352号公報、特開2002−235076号公報、特開2002−170684号公報、EP1211257号公報、特開2002−226495号公報、特開2002−234894号公報、特開2001−247859号公報、特開2001−298470号公報、特開2002−173674号公報、特開2002−203678号公報、特開2002−203679号公報、特開2004−357791号公報、特開2006−256999号公報等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられる。中でも、更に好ましい発光材料としては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、Ce錯体が挙げられる。特に好ましい発光材料は、Ir錯体、Pt錯体、Re錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、Re錯体である。

【0074】
−蛍光発光材料−
蛍光発光材料としては、一般には、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、ペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、及びこれらの誘導体などを挙げることができる。
【0075】
発光層が含有する発光材料は、発光層を形成する全化合物質量に対して、駆動耐久性、外部量子効率の観点から、0.5質量%以上30質量以下含有されることが好ましく、2質量%以上25質量%以下含有されることがより好ましい。
【0076】
<ホスト材料>
発光層は、ホスト材料を含有する。
ホスト材料としては、電子輸送性ホスト材料及び正孔輸送性ホスト材料のいずれも好ましく用いることができ、電子輸送性ホスト材料及び正孔輸送性ホスト材料を併用してもよい。
【0077】
また、発光層が含有するホスト材料としては、電荷輸送性の観点から、特定有機層に含有される特定芳香族化合物と同じ化合物を用いることが好ましい。
【0078】
−電子輸送性ホスト材料−
電子輸送性ホスト材料としては、具体的には、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、及びそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。
【0079】
−正孔輸送性ホスト材料−
正孔輸送性ホスト材料としては、例えば、ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、ピラゾール、イミダゾール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、又はそれらの誘導体などが挙げられる。
これらの中でも、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、アザインドール誘導体、アザカルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体が好ましく、特に分子内にインドール骨格、カルバゾール骨格、アザインドール骨格、アザカルバゾール骨格、又は芳香族第三級アミン骨格を複数個有するものが好ましい。
【0080】
発光層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
【0081】
発光層の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、2nm以上500nm以下が好ましく、外部量子効率の観点から、3nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上200nm以下が更に好ましい。
【0082】
(正孔注入層、正孔輸送層)
正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。該正孔注入層及び正孔輸送層は、単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
これらの層に用いられる正孔注入材料又は正孔輸送材料としては、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
【0083】
正孔注入材料、又は正孔輸送材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばピロール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
正孔注入層及び正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。
電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
電子受容性ドーパントとして用いられる無機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモン等のハロゲン化金属;五酸化バナジウム、三酸化モリブデン等の金属酸化物、などが挙げられる。
電子受容性ドーパントとして用いられる有機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基等を有する化合物;キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレン、などが挙げられる。
これらの電子受容性ドーパントは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料又は正孔注入材料に対して0.01質量%以上50質量%以下が好ましく、0.05質量%以上20質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
【0085】
正孔注入層及び正孔輸送層は、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
正孔注入層及び正孔輸送層の厚さは、1nm以上500nm以下が好ましく、5nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が更に好ましい。
【0086】
(正孔ブロック層、電子ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が陰極側に通り抜けることを防止する機能を有する層である。正孔ブロック層は、通常、発光層と陰極側で隣接する有機層として設けられる。
【0087】
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通り抜けることを防止する機能を有する層である。電子ブロック層は、通常、発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
【0088】
正孔ブロック層を構成する化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
電子ブロック層を構成する化合物の例としては、例えば、特定マトリックス材料として前述した材料の他、正孔輸送材料として公知の化合物が利用できる。
【0089】
電子ブロック層及び正孔ブロック層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
【0090】
正孔ブロック層及び電子ブロック層の厚さは、1nm以上200nm以下であるのが好ましく、1nm以上50nm以下であるのがより好ましく、3nm以上10nm以下であるのが更に好ましい。また正孔ブロック層及び電子ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0091】
(電極)
本発明の有機電界発光素子は、一対の電極、即ち陽極と陰極とを含む。有機電界発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は透明であることが好ましい。通常、陽極は有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、陰極は有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよい。
【0092】
電極としては、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
電極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物等が好適に挙げられる。
【0093】
<陽極>
陽極を構成する材料としては、例えば、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料、又はこれらとITOとの積層物、などが挙げられる。これらの中でも、陽極としては、導電性金属酸化物が好ましく、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが特に好ましい。
【0094】
<陰極>
陰極を構成する材料としては、例えば、アルカリ金属(例えばLi、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0095】
これらの中でも、陰極としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
前記アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%以上10質量%以下のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0096】
電極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。電極の形成方法としては、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式;真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式;CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などが挙げられる。電極は、これらの形成方法の中から、電極を構成する材料との適性を考慮し、適宜選択した方法に従って、基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料としてITOを選択する場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って陽極を形成することができる。陰極の材料として金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って陰極を形成することができる。
【0097】
なお、電極を形成する際にパターニングを行う場合は、フォトリソグラフィー等による化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザー等による物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0098】
(基板)
本発明の有機電界発光素子は、基板上に設けられていることが好ましく、電極と基板とが直接接する形で設けられていてもよいし、中間層を介在する形で設けられていてもよい。
【0099】
基板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス(無アルカリガラス、ソーダライムガラス等)等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料、などが挙げられる。
【0100】
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。基板は透明でも不透明でもよく、透明な場合は無色透明でも有色透明でもよい。
【0101】
基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、例えば窒化珪素、酸化珪素等の無機物などが挙げられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
【0102】
(保護層)
有機電界発光素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばIn、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属;MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物;SiNx、SiNxOy等の金属窒化物;MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、などが挙げられる。
【0103】
保護層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。保護層の形成方法としては、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法などが挙げられる。
【0104】
(封止容器)
本発明の有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体が封止されていてもよい。更に、封止容器と有機電界発光素子の間の空間には、水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。
【0105】
水分吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム、などが挙げられる。
不活性液体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばパラフィン類、流動パラフィン類;パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤;塩素系溶剤、シリコーンオイル類、などが挙げられる。
【0106】
(樹脂封止層)
本発明の有機電界発光素子は、大気からの酸素や水分による素子性能劣化を樹脂封止層により封止することで抑制することが好ましい。
樹脂封止層の樹脂素材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、エステル系樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、水分防止機能の点からエポキシ樹脂が特に好ましい。前記エポキシ樹脂の中でも熱硬化型エポキシ樹脂、又は光硬化型エポキシ樹脂が好ましい。
【0107】
樹脂封止層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂溶液を塗布する方法、樹脂シートを圧着又は熱圧着する方法、蒸着やスパッタリング等により乾式重合する方法、などが挙げられる。
【0108】
(封止接着剤)
本発明の有機電界発光素子は、封止接着剤を用いて封止されてもよい。
本発明に用いられる封止接着剤は、端部よりの水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。
封止接着剤の材料としては、前記樹脂封止層で用いる材料と同じものを用いることができる。これらの中でも、水分防止の点からエポキシ系の接着剤が好ましく、光硬化型接着剤あるいは熱硬化型接着剤が特に好ましい。
【0109】
封止接着剤にフィラーを添加することも好ましい。フィラーとしては、例えばSiO、SiO(酸化ケイ素)、SiON(酸窒化ケイ素)、SiN(窒化ケイ素)等の無機材料が好ましい。該フィラーの添加により、封止接着剤の粘度が上昇し、加工適正が向上し、及び耐湿性が向上する。
【0110】
封止接着剤は、乾燥剤を含有してもよい。乾燥剤としては、例えば酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、などが挙げられる。前記乾燥剤の添加量は、前記封止接着剤に対し0.01質量%以上20質量%以下が好ましく、0.05質量%以上15質量%以下がより好ましい。前記添加量が、0.01質量%未満であると、乾燥剤の添加効果が薄れることになり、20質量%を超えると、封止接着剤中に乾燥剤を均一分散させることが困難になることがある。
【0111】
本発明においては、乾燥剤の入った封止接着剤をディスペンサー等により任意量塗布し、塗布後第2基板を重ねて、硬化させることにより封止することができる。
【0112】
図1は、本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。有機EL素子10は、ガラス基板1上に形成された陽極2(例えばITO電極)と、正孔注入層3と、正孔輸送層4と、発光層5と、電子輸送層6と、電子注入層7と、陰極8(例えばAl−Li電極)とをこの順に積層してなる層構成を有する。なお、陽極2(例えばITO電極)と陰極8(例えばAl−Li電極)とは電源を介して互いに接続されている。この層構成において、電子輸送層6及び電子注入層7の少なくとも一方の層は特定有機層であり、電子注入層7が特定有機層であることが好ましい。
【0113】
(駆動)
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0114】
本発明の有機電界発光素子は、薄膜トランジスタ(TFT)によりアクティブマトリックスへ適用することができる。薄膜トランジスタの活性層としてアモルファスシリコン、高温ポリシリコン、低温ポリシリコン、微結晶シリコン、酸化物半導体、有機半導体、カーボンナノチューブ等を適用することができる。
本発明の有機電界発光素子は、例えば国際公開2005/088726号パンフレット、特開2006−165529号公報、米国特許出願公開2008/0237598A1明細書などに記載の薄膜トランジスタを適用することができる。
【0115】
本発明の有機電界発光素子は、特に制限はなく、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板、ITO層、有機層の屈折率を制御する、基板、ITO層、有機層の厚みを制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
本発明の有機電界発光素子からの光取り出し方式は、トップエミッション方式であってもボトムエミッション方式であってもよい。
【0116】
本発明の有機電界発光素子は、共振器構造を有してもよい。共振器構造は、例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明又は半透明電極、発光層、及び金属電極を重ね合わせて有する構造である。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
共振器構造の別の好ましい態様では、透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。

【0117】
(用途)
本発明の有機電界発光素子の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等に好適に利用できる。
【0118】
有機ELディスプレイをフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する有機EL素子を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の有機電界発光素子による白色発光をカラーフィルターを通して3原色に分ける白色法、青色発光用の有機電界発光素子による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。また、上記方法により得られる異なる発光色の有機電界発光素子を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色の平面型光源を得ることができる。例えば、青色及び黄色の発光素子を組み合わせた白色発光光源青色、緑色、赤色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、などが挙げられる。
【実施例】
【0119】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0120】
[比較例1−1]
(有機電界発光素子の作製)
0.5mm厚み、2.5cm角のガラス基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。このガラス基板上に真空蒸着法にて以下に示す各層を形成した。なお、以下の実施例及び比較例における蒸着速度は、特に断りのない場合は0.2nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。以下に記載の各層の膜厚も水晶振動子を用いて測定した。
【0121】
<陽極>
ガラス基板上に、ITO(Indium Tin Oxide)を、厚み100nmにスパッタ蒸着した。
【0122】
<正孔注入層>
陽極(ITO)上に、2−TNATA(4,4',4''-Tris(N-(2-naphtyl)-N-phenyl-amino)-triphenyla mine)を、厚み120nmに蒸着して、正孔注入層を形成した。
【0123】
<第一正孔輸送層>
正孔注入層上に、α−NPD(Bis[N-(1-naphthyl)-N-pheny]benzidine)を、厚み7nmに蒸着して、正孔輸送層を形成した。
【0124】
<第二正孔輸送層>
第一正孔輸送層上に、アミン化合物1(下記構造)を、厚み3nmに蒸着して、第二正孔輸送層を形成した。
【化3】

【0125】
<発光層>
第二正孔輸送層上に、ホスト材料であるmCP(N,N’-dicarbazolyl-3,5-benzene、下記構造)と、該mCPに対して15質量%の燐光発光材料であるFirpic〔iridium(III)bis[4,6-di-fluorophenyl]-pyridinato-〕picolinate、下記構造〕をドープした発光層を、30nmの厚みに蒸着して、発光層を形成した。
【化4】

【0126】
<電子輸送層>
発光層上に、電子輸送層としてmCPを厚み10nmに蒸着して、電子輸送層を形成した。
【0127】
<電子注入層>
電子輸送層上に、mCPと、該mCPに対して20.0質量%のストロンチウムを30nmの厚みに蒸着して、電子注入層を形成した。
【0128】
<陰極>
電子注入層上に、陰極用にパタ−ニングしたマスク(発光領域が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、金属アルミニウムを厚み100nmとなるように蒸着して、陰極を形成した。
【0129】
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶、及び紫外線硬化型の封止接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止した。
以上により、比較例1の有機電界発光素子を作製した。
【0130】
[比較例1−2]
比較例1−1において、電子注入層の形成に用いたストロンチウムに代えてSrOを用いた以外は、比較例1−1と同様にして、比較例1−2の有機電界発光素子を作製した。
【0131】
[比較例1−3]
比較例1−1において、電子注入層を、mCPと、該mCPに対して20.0質量%のSrO0.2とを蒸着して形成した以外は、比較例1−1と同様にして、実施例1−1の有機電界発光素子を作製した。
なお、SrO0.2は、Sr金属を蒸着原料とし、酸素分圧1×10−4Pa下で反応性蒸着法により蒸着した。
また、電子注入層に用いた特定金属酸化物の組成比は、電子注入層に用いたものと同じ特定金属酸化物を蒸着原料をとして用いて形成した単膜について、X線光電子分光分析装置(測定装置;ESCA−3200、(株)島津製作所製)により定量分析を行い決定した組成比である。(以降に示す実施例についても同様にして、特定金属酸化物の組成比を決定した。)
【0132】
[実施例1−1]
比較例1−1において、電子注入層を、mCPと、該mCPに対して20.0質量%のSrO0.5とを蒸着して形成した以外は、比較例1−1と同様にして、実施例1−1の有機電界発光素子を作製した。
なお、SrO0.5は、Sr金属を蒸着原料とし、酸素分圧4×10−3Pa下で反応性蒸着法により蒸着した。
【0133】
[実施例1−2]
比較例1−1において、電子注入層を、mCPと、該mCPに対して20.0質量%のSrO0.96とを蒸着して形成した以外は、比較例1−1と同様にして、実施例1−2の有機電界発光素子を作製した。
なお、SrO0.96は、Sr金属を蒸着原料とし、酸素分圧2×10−2Pa下で反応性蒸着法により蒸着した。
【0134】
[比較例2−1]
比較例1−1において、発光層の形成に用いたmCP及びFirpicを、それぞれCBP(4,4'-bis[9-dicarbazolyl]-2,2'-biphenyl)、下記構造)及び化合物B−2(下記構造)に代え、更に、電子輸送層及び電子注入層に用いたmCPをCBPに代え、更にストロンチウムをカルシウムに変えた以外は、比較例1−1と同様にして、比較例2−1の有機電界発光素子を作製した。
【化5】

【0135】
[比較例2−2]
比較例2−1において、電子注入層の形成に用いたカルシウムに代えてCaOを用いた以外は、比較例2−1と同様にして、比較例2−2の有機電界発光素子を作製した。
【0136】
[実施例2−1]
比較例2−1において、電子注入層を、CBPと、該CBPに対して20.0質量%のCaO0.96とを蒸着して形成した以外は、比較例2−1と同様にして、実施例2−1の有機電界発光素子を作製した。
CaO0.96は、Ca金属を蒸着原料とし、酸素分圧2×10−2Pa下で反応性蒸着法により蒸着した。
【0137】
[比較例3−1]
比較例1−1において、発光層の形成に用いたmCP及びFirpicを、それぞれ化合物A(下記構造)及び化合物B−3(下記構造)に代え、更に、電子輸送層及び電子注入層に用いたmCPを化合物Aに代え、更にストロンチウムをバリウムに変えた以外は、比較例1−1と同様にして、比較例3−1の有機電界発光素子を作製した。
【化6】

【0138】
[比較例3−2]
比較例3−1において、電子注入層の形成に用いたバリウムに代えてBaOを用いた以外は、比較例3−1と同様にして、比較例3−2の有機電界発光素子を作製した。
【0139】
[実施例3−1]
比較例3−1において、電子注入層を、化合物Aと、該化合物Aに対して20.0質量%のBaO0.95とを蒸着して形成した以外は、比較例3−1と同様にして、実施例3−1の有機電界発光素子を作製した。
BaO0.95は、Ba金属を蒸着原料とし、酸素分圧2×10−2Pa下で反応性蒸着法により蒸着した。
【0140】
[実施例3−2]
比較例3−1において、電子注入層を、化合物Aと、該化合物Aに対して20.0質量%の(Ba0.3Sr0.7)O0.98とを蒸着して形成した以外は、比較例3−1と同様にして、実施例3−1の有機電界発光素子を作製した。
(Ba0.3Sr0.7)O0.98は、Sr金属とBa金属とを蒸着原料とし、酸素分圧2×10−2Pa下で反応性蒸着法により蒸着した。
【0141】
[実施例3−2]
比較例3−1において、電子注入層を、化合物Aと、該化合物Aに対して20.0質量%の(Ca0.2Ba0.3Sr0.5)O0.96とを蒸着して形成した以外は、比較例3−1と同様にして、実施例3−1の有機電界発光素子を作製した。
(Ca0.2Ba0.3Sr0.5)O0.96は、Ca金属とSr金属とBa金属とを蒸着原料とし、酸素分圧2×10−2Pa下で反応性蒸着法により蒸着した。
【0142】
[比較例4−1]
比較例1−1において、電子輸送層をBalq(下記構造)を10nmの厚みに、電子注入層を、Alq(下記構造)と、該Alqに対して20.0質量%のストロンチウムを30nmの厚みに蒸着した以外は、比較例1−1と同様にして、比較例4−1の有機電界発光素子を作製した。
【化7】

[比較例4−2]
比較例4−1において、電子注入層の形成に用いたストロンチウムに代えてSrOを用いた以外は、比較例4−1と同様にして、比較例4−2の有機電界発光素子を作製した。
【0143】
[実施例4−1]
比較例4−1において、電子注入層を、Alqと、該Alqに対して20.0質量%のSrO0.95とを蒸着して形成した以外は、比較例4−1と同様にして、実施例4−1の有機電界発光素子を作製した。
SrO0.95は、Sr金属を蒸着原料とし、酸素分圧2×10−2Pa下で反応性蒸着法により蒸着した。
【0144】
以上により作製した実施例及び比較例の各有機電界発光素子について、陰極から発光層までの間に存在する有機層(電子注入層、電子輸送層、及び発光層)の構成を、下記表1にまとめて示す。
なお、各実施例においては、電子注入層が本発明における特定有機層である。
【0145】
また、各有機電界発光素子において電子注入層に用いた特定芳香族化合物(mCP、CBP、化合物A、Alq)について、LUMOのエネルギー準位を前述の方法で計算した値(eV)を以下に示す。
Alq:1.68eV
mCP:0.75eV
CBP:1.22eV
化合物A:1.17eV
【0146】
[有機電界発光素子の評価]
実施例及び比較例の各有機電界発光素子について、以下の各評価を行った
【0147】
1.駆動電圧及び外部量子効率の評価
駆動電圧及び外部量子効率を、下記に示す測定方法により測定した。結果を下記表1に示す。
【0148】
(駆動電圧及び外部量子効率の測定方法)
有機電界発光表示装置(KEITHLEY社製ソースメジャーユニット2400型)を用いて、直流電圧を各有機電界発光素子に印加して発光させると同時に、輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定し、360cdでの駆動電圧を測定した。発光スペクトルと発光波長を、浜松ホトニクス株式会社製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。これらの数値をもとに、輝度が360cdの時の発光効率を外部量子効率を輝度換算法により算出した。
【0149】
2.耐久性の評価
各有機電界発光素子を有機電界発光表示装置(KEITHLEY社製ソースメジャーユニット2400型)を用いて発光させ、初期輝度360cdから定電流で、輝度が半減するまでの時間を測定することで耐久性評価を行った。
【0150】
【表1】

【0151】
表1の結果から、特定有機層である電子注入層に、LUMOのエネルギー準位が2.1eV以下の芳香族化合物(特定芳香族化合物)と、前記式(1)で表される金属酸化物(特定金属酸化物)とを含有する実施例の各有機電界発光素子は、比較例の各有機電界発光素子発光素子との対比において、いずれも良好な外部量子効率を示すと共に、駆動電圧が低く且つ駆動耐久性に優れた有機電界発光素子であることが分る。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の有機電界発光素子は、優れた発光効率と駆動電圧の低減とを両立することができるので、例えば表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信などに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0153】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 電子注入層
8 陰極
10 有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に発光層を含む少なくとも2層の有機層を有してなり、前記陰極と前記発光層との間に、(a)少なくとも1種のLUMOのエネルギー準位が2.1eV以下の芳香族化合物、及び(b)少なくとも1種の下記式(1)で表される金属酸化物を含む有機層を有する有機電界発光素子。
(BaSrCa)O 式(1)
[式(1)中、1、m、及びnは、各々独立に、0以上1以下の値を表し、かつl+m+n=1を満たし、xは0.3以上0.999以下の値を表す]
【請求項2】
前記芳香族化合物のLUMOのエネルギー準位が1.2eV以下である請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記式(1)で表される金属酸化物が、SrO、BaO、及びCaO(xは0.3以上0.999以下の値を表す。)からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物である請求項1又は請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記式(1)におけるxが、0.4以上0.99以下の値である請求項1又は請求項3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記式(1)におけるxが、0.5以上0.99以下の値である請求項1又は請求項3のいずれか1項にに記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記式(1)におけるxが、0.6以上0.98以下の値である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記発光層及び前記発光層と前記陰極との間に挟持される有機層の総てが、主成分として、LUMOのエネルギー準位が2.1eV以下の芳香族化合物を含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。

【図1】
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【公開番号】特開2011−77330(P2011−77330A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227794(P2009−227794)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】