説明

有機電界発光装置

【課題】 光取りだし効率が向上し、かつ視野角依存性を有し、視野角が大きい場合、著しく視認性を低下させ、側から覗きみることが困難な有機電界発光装置を得ること。
【解決手段】 基板、第1の電極および第2の電極に挟持された発光層を有する有機電界発光装置であって、光取りだし側の全反射の発生する界面に、回折による光取りだし効率向上の構造を有する有機電界発光装置において、視野角0°での2°視野色度が色度座標上において以下の3点(0.28,0.44)、(0.32,0.28)、(0.39,0.32)を結ぶ3角形内にあり、かつ視野角30°での2°視野色度との差(Δx2+Δy21/2が0.06以上、かつ、視野角30°での2°視野色度が色度座標上において以下の3点(0.28,0.44)、(0.32,0.28)、(0.39,0.32)を結ぶ3角形外にある有機電界発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は白色発光有機EL素子を有する有機電界発光装置に関し、発光効率が高いと同時に、視野角依存性が大きいため正面以外の位置からの視認性が低下した有機電界発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス素子は電界を印加することにより、陽極より注入された正孔と陰極より中に有された電子の再結合エネルギーにより発光性物質が発光する原理を利用した自発光素子である。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子についてはTangによる積層型素子による低電圧駆動有機エレクトロルミネッセンス素子の報告以来、盛んに研究が行われている。
【0004】
有機ELにおいては、キャリア再結合の際に1重項生成の確率に制限があり大凡発光効率が25%程度しか見込めないことが知られている。
【0005】
この発光効率については、蛍光発光のみでなく、リン光性ドーパントの利用により、3重項発光を利用し、発光効率を向上させた有機EL素子の研究も盛んに行われている。
【0006】
しかしながら、有機エレクトロルミネッセンス素子においてはその発光体の屈折率の影響のため、光取りだし側の層界面において、その臨界角以上で出射された光は全反射をおこし外部に取り出すことが出来ず、発光体の屈折率から、大凡発光量全体の1/4〜1/5程度しか取り出せない。
【0007】
従って、有機EL素子を用いた表示装置、発光装置において、これら光取りだし効率の向上は、大きな課題となっている。
【0008】
これまで発光した光を有効に利用するべく、光取りだし効率を向上させる手法が検討されおり、例えば、その一つとして、特許文献1においては、素子界面での全反射を抑制する位置に回折格子を形成し、有機EL表示素子において光取りだし効率を向上させる試みが行われている。これにより所定の波長の光について界面での全反射を回避し光取りだし効率の向上を行うことができる。
【0009】
一方、ELディスプレイでは、駆動電圧が低い輝度、色度等の視野角依存性がない等の利点があり、TVディスプレイ等の表示装置や携帯電話に代表されるパーソナルユーズ向けの小型情報機器端末に有機ELディスプレイを搭載する試みがされている。
【0010】
有機EL素子の視野角の広さはTVなどのディスプレイでは利点であるが、携帯電話等のパーソナル用途の場合、使用者が視野角を容易に調整できるので視野角依存性が少ないことは余りメリットにならなず、逆に携帯電話やPDAを使用するユーザーの間では、ディスプレイの内容を第3者にのぞき見られることを防止するために、ユーザーのみが表示内容を明瞭に視認可能となるように、視野角を狭めて欲しいとの要望がある。
【0011】
この目的のために、液晶ディスプレイは視野角が狭いものもあるが、色純度、視認性などの通常の表示特性が劣ることが多い。
【0012】
従来の有機ELディスプレイでは、視野角の広さが裏目となり、視野角を意図的に制限することが困難であったが、幾つかこの視野角制限を意図した技術が開示されている。
【0013】
例えば、特許文献2には、有機EL素子に対応する位置に光を集光可能なマイクロレンズを有するマイクロレンズアレイシートを用いて、視野角を意図的に制限することが可能な表示装置が記載されている。
【0014】
又、特許文献3には、方向性を有する回折格子シートを用いて、画面全体を、視野角の制限されたパーソナルビューモードと視野角が広いマルチビューモードを切り替え可とする表示装置について記載されている。
【0015】
特許文献4は、角度依存を意図的に作る点は同じだが、マイクロアレイレンズシートを素子の外側に貼り付けることで、視野角を意図的に制限しているが、外光の反射を利用している点で異なり、有機EL素子の光取りだし効率向上のための手段を備えた有機EL素子における視野角制限とは異なっている。
【0016】
前記特許文献1をはじめとして、有機EL素子における光取りだし効率向上手段は記載されているが、白色表示素子については特に言及されておらず、また、それらは特に視野角制限を積極的に意図したものではない。従って、白色発光表示素子において、光取りだし効率が向上させ、更に視野角制限を設け、周囲から視認しにくい表示素子を得ようとする試みは今までになく、本発明は、白色発光有機EL素子において、光取りだし効率向上と視野角による制限とが同時に達成された表示素子を得るものである。
【特許文献1】特開平11−283751号公報
【特許文献2】特開2004−127662号公報
【特許文献3】特開2004−279866号公報
【特許文献4】特開2004−127662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明は、光取りだし効率が向上し、かつ輝度、色度の視野角依存性を有し、視野角が大きい場合に色純度などの表示特性が劣り、著しく視認性を低下させ、正面以外、他人から覗きみることが困難な有機電界発光装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の上記課題は、以下の手段により達成される。
【0019】
(請求項1)
基板および基板上に、第1の電極および第2の電極に挟持された発光層を有する有機電界発光装置であって、
光取りだし側の基板内から発光層までのいずれかの全反射の発生する界面に、回折による光取りだし効率向上の構造を有する有機電界発光装置において、
正面(視野角0°)での色度が、
CIE2°視野標準観測者(CIE1931等色関数)を用いて算出されるxy色度図上の座標(x、y)で表示したとき、
以下の3点(0.28,0.44)、(0.32,0.28)、(0.39,0.32)を結ぶ3角形内にあり、
かつ、視野角30°における色度が、
前記CIE2°視野標準観測者(CIE1931等色関数)を用いて算出されるxy色度図上の座標(x、y)で表示したとき以下の3点(0.28,0.44)、(0.32,0.28)、(0.39,0.32)を結ぶ3角形外にあり、
かつ、前記正面(視野角0°)および視野角30°における色度の差は、それぞれの色度点におけるxおよびyの差をそれぞれΔx、Δyとしたとき、
(Δx2+Δy21/2が0.06以上となることを特徴とする有機電界発光装置。
【0020】
(請求項2)
基板および基板上に、第1の電極および第2の電極に挟持された発光層を有する有機電界発光装置であって、光取りだし側の基板内から発光層までのいずれかの全反射の発生する界面に、回折による光取りだし効率向上の構造を有する有機電界発光装置において、
前記回折による光取りだし効率向上の構造が、前記全反射の発生する界面に設けられた60nm〜1700nmの範囲にあるピッチ(周期)を有する凹凸からなることを特徴とする有機電界発光装置。
【0021】
(請求項3)
前記回折による光取りだし効率向上の構造が、透明電極層と光取りだし側の基板との間に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機電界発光装置。
【0022】
(請求項4)
前記基板が、プラスチック基板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界発光装置。
【発明の効果】
【0023】
視野角が小さい場合には、表示品質が高いが、色度の視野角依存性が大きく視野角の大きい位置からの視認性が低い表示装置が得られる。視野角依存性が大きいと電車や、人混みのなかで周りの人から見た場合の色度が狂い正確な情報が得られないことによって、プライバシーを守ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0025】
本発明における有機電界発光装置は、基板、第1の電極および第2の電極に有機EL素子を構成する発光層を含む複数の層が挟持された構造を有する。有機電界発光装置において、発光層において発光した光は光取りだし側の透明基板から取り出すが、有機電界発光装置(有機EL素子)において発光層として用いられる有機層の屈折率の影響のため、光取りだし側の層界面において、その臨界角以上で出射された光は全反射をおこし外部に取り出すことが出来ないため、現状では、大凡発光量全体の1/4〜1/5程度しか取り出せない。
【0026】
本発明においては、前記光取りだし効率向上の構造は、有機層から基板表面までの間に存在する全反射を起こす如何なる界面に適用してもよく、全反射を起こす界面に本発明による前記の回折による光取りだし効率向上の構造を導入することで、その界面における光取りだし効率の向上が期待出来るが、特に基板と有機EL素子層特に有機層に隣接した電極と基板の界面に、前記の回折による光取りだし効率向上の構造を導入して、全反射を抑制することができれば、発光層からの発光の取りだし効率は大きく向上する。
【0027】
本発明による回折による光取りだし効率向上の構造とは、具体的には、回折格子をいい、回折または散乱により所定の波長範囲の光の取り出し効率を向上させるもので、その形状等は問わないが、本発明においては、好ましくは前記全反射の発生する界面に設けられた60nm〜1700nmの範囲にある一定のピッチ(周期)を有する凹凸状の構造からなるものである。
【0028】
本発明において、色度の視野角変化を実現する方法としては、基板表面や基板と電極の間の基板表面に等ピッチの孔構造を形成すると、回折格子として働き、正面輝度が上がるが、このとき、発光成分の全てが正面に集められるのではなく、波長依存性があるため、正面の強調される発光はピッチの周期構造で決まる所定の波長範囲の光で、発光分布とは分光的に異なる。一方斜めから見た場合の発光は正面にもって行かれた成分が減るために、輝度が下がり、かつ発光色も変わる。結果的に正面と斜めから見た発光色は差が生じる。この現象を利用して本発明においては、視野角依存性が高く、かつ光取りだし効率の向上した電界発光素子を得る。
【0029】
従って、本発明は、光取りだし効率向上の為の構造を有すると同時に、表示素子の色度の視野角依存性が生ずるように設計された白色発光有機電界発光装置(白色発光有機EL素子)である。
【0030】
従って本発明の有機電界発光装置は、光取りだし効率向上のために、回折格子として働く所定の構造を有しており、正面から見た場合所定の光取りだし効率が向上していると同時に、また、正面以外、視野角が大きい場合には視認性が著しく劣化した有機電界発光装置であり、輝度、色度の視野角依存性のために、他人が覗きみることが困難な有機電界発光装置である。
【0031】
即ち、本発明に係わる有機電界発光装置、白色発光有機EL素子は、表示素子として、白色表示をしたときに、正面(視野角0°)での色度が、CIE2°視野標準観測者(CIE1931等色関数)を用いて算出されるxy色度図上の座標(x、y)で表示したとき、以下の3点(0.28,0.44)、(0.32,0.28)、(0.39,0.32)を結ぶ3角形内にあり、かつ、視野角30°における色度が、前記CIE2°視野標準観測者(CIE1931等色関数)を用いて算出されるxy色度図上の座標(x、y)で表示したとき以下の3点(0.28,0.44)、(0.32,0.28)、(0.39,0.32)を結ぶ3角形外にあり、かつ、前記正面(視野角0°)および視野角30°における色度の差は、それぞれの色度点におけるxおよびyの差をそれぞれΔx、Δyとしたとき
(Δx2+Δy21/2が0.06以上となる有機電界発光装置である。
【0032】
即ち視野角30°での色度が、正面での表示色である所謂白色とされる範囲からずれることで、周囲からみた色度が白色でなくなり、視認性が大きく落ちる表示素子となっている。
【0033】
ここにおいて、光の色は、光の三刺激値・色度・相関色温度で表される。三刺激値は、人間の目の分光感度分布を表す等色関数(例えば、CIE2°視野標準観測者(CIE1931等色関数)近似)を用いて算出されるXYZ値である。色度は、XYZ値から、xy色度図上の座標として算出される。本発明においては、表示素子の発光色について、このCIE2°視野角標準観察者を用いて算出されるxy色度図上の座標(x、y)で表示したものである。
【0034】
視野角を変えたときにそれぞれ観察される表示色の測定は、例えば、コニカミノルタ製 分光放射輝度計CS−1000A等を用いて測定可能である。それぞれ正面(視野角0度)、視野角30°において、前記2°視野色度を測定するが、それぞれの表示色は前記xy色度図上の座標(x、y)で表すことができる。
【0035】
xy色度図では、白色光を3原色(赤700nm、緑546nm、青436nm)の混合で表し、その比率を1:1:1としている。この比率の合計をいつも1としておくと、緑と赤の比の2次元グラフで全ての色が表されるこれがxy色度図である。縦軸yに緑成分をとり、横軸xに赤成分をとる。白はx0.33、y0.33、従ってz0.33である。
【0036】
図1にxy色度図上において白色の範囲を近似的表す前記3点を結ぶ三角形を示すが、本発明の電界発光装置は、視野角0度(正面)においては表示素子の色度がこの範囲にあるが、視野角30度においては、色度の差は、前記(Δx2+Δy21/2が、0.06以上である前記3角形外にある。
【0037】
前記(Δx2+Δy21/2は前記xy色度図上における正面(視野角0°)でのCIE2°視野色度のxy色度図座標上の色度点を(x1、y1)とし、視野角30°でのCIE2°視野色度のxy色度図座標上の色度点(x2、y2)とするとこの間のxy色度図上での距離を示しているが、この値が、0.06以上あることで、視認性に大きな差を生じる程度に充分な色度の違いが生ずるものである。
【0038】
この値以上であれば、周囲から覗き込んだときに、色度が白色から大きくずれ、輝度も低下しているため、視認性が著しく低下した電界発光表示装置となる。
【0039】
なお、本発明において視野角とは、電界発光表示装置(白色発光有機EL素子)の表示パネル面の観察スポットからみてその法線方向に対して観察者の眼の位置における傾き角度を表したもので、正面とはこの傾き角度が0度、又視野角30度とは、この傾き角度が30度であることをいう。
【0040】
次いで、本発明における光取りだし効率向上の構造について詳述する。
【0041】
本発明による回折による光取りだし効率向上の構造とは、具体的には、前記のごとく全反射の発生する界面に設けられた60nm〜1700nmの範囲にある一定のピッチ(周期)を有する凹凸状の構造からなり、回折格子として作用するものである。
【0042】
回折格子として作用する前記の凹凸上の構造は前記特開平11−283751号、特開2003−115377号等に記載されているものが使用できるが、ストライプ状の回折格子はストライプに平行な方向に対しては回折効果がないため、2次元的にどの方向からも均一に回折格子としての作用を行うものが好ましい。基板表面或いは表示面の法線方向からみた断面形状が、所定の形状を有する、凹部、凸部が規則的に所定の間隔で平面上に形成されているものが好ましい。
【0043】
この凹凸形状は、例えば凹部を構成する孔の形状としては、円でも、三角でも、四角でも、また多角形でもよい。また凹部(窪み)の平面方向からみた断面形状としては半球状、矩形、また、ピラミッド様のものでもよい。この凹部の深さは、20nm〜1600nm、更には50nm〜1200nmの範囲にある必要がある。これより小さい場合には回折或いは散乱を起こす効果が小さく、また大きすぎると表示素子として平面性が損なわれ好ましくない。
【0044】
また、凸型の場合、突起の形状としては前記と同様であり、例えば凸部が柱状(突起)である場合、表面の法線方向からみた形態は円、三角、四角、多角形どれでもよい。突起の高さ、またそのピッチ(周期)は孔の場合と同様である。
【0045】
また、回折格子とするために、これらの凸部、或いは凹部の配列は、正方形のラチス状、ハニカムラチス状など2次元的に配列が繰り返されることが必要である。
【0046】
可視光の取り出し効率を向上させるために可視光の媒質中での光の波長100nm〜3000nmの範囲の光、好ましくは200nm〜2500nmの範囲の光を回折させるための回折格子であることが必要である。回折格子への光の入射角と出射角、格子間隔(前記凹凸配列の周期)、光の波長、媒体の屈折率、回折次数等の間には一定の関係があり、前記可視光およびその近傍の波長領域の光を回折させるために、本発明において前記凹凸配列の周期は、60nm〜1700nm、好ましくは120nm〜1500nmの範囲にある必要がある。
【0047】
これらの凹凸は全く逆に、凸部が前記の値を有するように形成されてもよい。
【0048】
こうして形成される回折格子として作用する凹凸構造の例を図2に示す。凹部の形状が円、方形の凹部(孔)を基材表面に形成した例を示している。
【0049】
この様な凹凸を基板表面に形成することで、該基板に透明電極を形成して、白色発光有機EL素子各層を順次形成し、対電極を形成し、白色発光有機電界発光装置を形成して、透明電極を形成した凹凸を有する基板側から発光の取り出す。これにより凹凸構造を有しないものよりも大幅に光取りだし効率を向上させることが出来る。
【0050】
本発明の白色発光有機EL素子は、この様に特定の波長領域の光を光の回折効果を用いて、取り出すもので、強く回折を受ける光の波長は、その回折格子のピッチ(周期)、本発明でいえば、凹凸の周期によって決まるため、正面(視野角0度)で、白色となるように設定された白色発光有機EL素子は、視野角が大きくなると観察される表示色が白色から大きくずれることで視認性が大きく低下することとなる。
【0051】
この様に、本発明に係わる有機電界発光装置、即ち白色電界発光素子においては、表示素子の発光の正面でのCIE2°視野色度は白色であっても、視野角30°においてはCIE2°視野色度が白色からずれ、視認性が著しく低下したものとなる。
【0052】
本発明の回折による光取りだし効率向上の構造は、透明電極層と光取りだし側の基板との間に形成されていることが好ましく、これによって、発光層からの電界発光を、それが全反射する最初の界面において、回折させ、その取り出し量を向上させるため、光の取り出し効率を大きく向上させることが出来る。
【0053】
そのためには、有機電界発光装置の光取りだし側の基板の、透明電極膜が形成される表面に、凹凸構造を有することが好ましい。
【0054】
例えば有機電界発光装置の基板がガラスの場合には、ガラス基板上にポリイミド等レジストにより所定の凹凸パターン形成した後、反応性イオンエッチング装置(例えば日本ビクター株式会社 反応性イオンエッチング装置ZE−500等)により、CF4,CHF3,C48等フルオロカーボンを用いドライエッチングできる。これらから生成したCFxラジカルがガラス(SiO2)の酸化膜だけを削りマスクのパターンどおりの孔を形成する。
【0055】
また、ウエットエッチングも同様に使用でき、例えばi線レジスト(東京応化製 THMR−iP1700等)を用いi線ステッパーを用いてガラス基板上にレジストパターンを形成し、その後、例えばフッ化水素酸溶液でガラス基板を溶解することで作成可能である。
【0056】
又、透明基板として樹脂シート、或いはフィルムを用いる場合には、基材への凹凸の付与は、所定の凹凸パターンを有するステンレス製のエンボスロール等を用いることで可能である。エンボスロールを樹脂フィルム基材を重ね、押圧して型付けを行う。
【0057】
即ち、エンボスロールとシリコンゴムロールで挟んで、温度をかけることで、フィルムの片側表面に凹凸形状を作製することが出来る。エンボスロールは、ステンレス製でフィルムの上側にありロール自重がフィルム押し圧を形成する方式であり、フィルムに均一なエンボスを作製する。エンボスロールの表面に前記の凹凸ピッチを有するように形成されたものが用いられる。温度は、エンボスロールに熱風を当てて80〜200℃の範囲として樹脂フィルムにより調整することが好ましい。
【0058】
白色発光有機EL素子の光取りだし側の基板として、この様にして形成された凹凸形状を有する基板を用い、この上に透明導電膜、例えばITO等からなる透明電極を形成して、更に、白色発光有機EL素子各層を形成し、陰極を設け、白色発光電界発光装置を形成することで、本発明の効果が達成される。
【0059】
次いで本発明に係わる有機電界発光装置における有機EL素子について説明する。
【0060】
《有機EL素子の構成層》
有機EL素子の構成層について説明する。
【0061】
本発明において、有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
白色発光有機EL素子としては、上記構成において、発光層において、発光材料を単純に発光強度に応じて白色となるよう混合したものでもよく、また、発光の異なる層を2層以上、積層した構成のものでもよい。
【0062】
例えば、リン光ドーパントを有するタイプの発光層の場合、ホスト化合物に対し、互いに補色或いは混合することで白色発光となる単独においては、発光色の異なるリン光性ドーパントを発光強度に応じて白色となるよう量を調整して混合した発光層を形成することができる。
【0063】
また、例えば、発光層がホスト化合物、リン光性ドーパントを含有するリン光発光タイプの発光層である場合、複数の発光層の積層は、本発明者等による特願2004−229165等に記載されているように、発光層の間に中間層を設け、中間層に発光層のリン光性化合物(リン光ドーパント)よりも高い(大きな)励起三重項エネルギー(T1)を有する材料を用いる等の工夫をすることで、発光層の3重項励起子を効果的に閉じ込める等の役割をもたせ、電圧変化に伴う色ずれが起こりにくくした白色有機EL素子を得ることが出来る。従って、発光層としては、白色発光有機EL素子の場合、基本的な発光材料、又、素子を構成する要素は同じであり、以下に説明する。
【0064】
《陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料は光取りだし側の電極として特に好ましい。
【0065】
《陰極》
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させることにより作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1000nm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0066】
次に、本発明の有機EL素子の構成層として用いられる、注入層、正孔輸送層、電子輸送層等について説明する。
【0067】
《注入層》:電子注入層、正孔注入層
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記のごとく陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び、陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0068】
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
【0069】
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0070】
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0071】
上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1nm〜100nmの範囲が好ましい。
【0072】
阻止層は、上記のごとく、有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。例えば特開平11−204258号、同11−204359号、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
【0073】
前記のように、正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層であり、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0074】
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層であり、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0075】
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。
【0076】
この注入層は、上記材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。注入層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この注入層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
【0077】
《発光層》
本発明において、発光層に用いられる発光材料の種類については特に制限はなく、従来有機EL素子における発光材料として公知のものを用いることができる。このような発光材料は主に有機化合物であり、所望の色調により、例えば、Macromol.Symp.125巻17頁から26頁に記載の化合物が挙げられる。
【0078】
発光材料は発光性能の他に、正孔注入機能や電子注入機能を併せ持っていても良く、正孔注入材料や電子注入材料の殆どが発光材料としても使用できる。
【0079】
発光材料はp−ポリフェニレンビニレンやポリフルオレンのような高分子材料でも良く、さらに前記発光材料を高分子鎖に導入した、または前記発光材料を高分子の主鎖とした高分子材料を使用しても良い。
【0080】
また、発光層には発光ホスト物質に加えて、ドーパント(ゲスト物質)を併用してもよく、EL素子のドーパントとして使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0081】
(発光ホストと発光ドーパント)
発光層中の主成分であるホスト化合物に対する発光ドーパントとの混合比は好ましくは質量で0.1質量%〜30質量%未満の範囲である。
【0082】
発光ドーパントは、大きくわけて、蛍光を発光する蛍光性ドーパントと燐光を発光する燐光性ドーパントの2種類がある。
【0083】
蛍光性ドーパントの代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
【0084】
燐光性ドーパントの代表例としては、好ましくは元素の周期表で8属、9属、10属の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくは、イリジウム化合物、オスミウム化合物であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0085】
本発明においては、発光ホストに加えて、発光層の少なくとも1層に、燐光性化合物(燐光性ドーパント)を用いることが好ましい。
【0086】
燐光性ドーパントの具体例としては、前記の他、以下の特許公報に記載されている化合物がある。
【0087】
国際公開第00/70655号パンフレット、特開2002−280178号公報、特開2001−181616号公報、特開2002−280179号公報、特開2001−181617号公報、特開2002−280180号公報、特開2001−247859号公報、特開2002−299060号公報、特開2001−313178号公報、特開2002−302671号公報、特開2001−345183号公報、特開2002−324679号公報、国際公開第02/15645号パンフレット、特開2002−332291号公報、特開2002−50484号公報、特開2002−332292号公報、特開2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、特開2002−338588号公報、特開2002−170684号公報、特開2002−352960号公報、国際公開第01/93642号パンフレット、特開2002−50483号公報、特開2002−100476号公報、特開2002−173674号公報、特開2002−359082号公報、特開2002−175884号公報、特開2002−363552号公報、特開2002−184582号公報、特開2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、特開2002−226495号公報、特開2002−234894号公報、特開2002−235076号公報、特開2002−241751号公報、特開2001−319779号公報、特開2001−319780号公報、特開2002−62824号公報、特開2002−100474号公報、特開2002−203679号公報、特開2002−343572号公報、特開2002−203678号公報等。
【0088】
その具体例の一部を下記に示す。
【0089】
【化1】

【0090】
【化2】

【0091】
【化3】

【0092】
【化4】

【0093】
(発光ホスト化合物)
本発明に用いられる発光ホスト化合物としては、構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体(カルバゾール誘導体としてはCBP等がよく知られている。)、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体(トリアリールボラン誘導体)、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、または、カルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。
【0094】
中でもカルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等が好ましく用いられる。
【0095】
以下に、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0096】
【化5】

【0097】
【化6】

【0098】
また、本発明に用いられる発光ホストは低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもいい。
【0099】
発光ホストとしては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、且つ、発光の長波長化を防ぎ、高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
【0100】
発光ホストの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が好適である。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等。
【0101】
次に、有機EL素子の他の構成層について述べる。
【0102】
その他、公知の発光ホストとして、後述の電子輸送材料および正孔輸送材料もその相応しい一例として挙げられる。
【0103】
発光層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。発光層としての膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。この発光層は、これらの発光材料一種又は二種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0104】
また、この発光層は、特開昭57−51781号公報に記載されているように、樹脂などの結着材と共に上記発光材料を溶剤に溶かして溶液としたのち、これをスピンコート法などにより薄膜化して形成することができる。このようにして形成された発光層の膜厚については、前記の通り通常は5nm〜5μmの範囲である。
【0105】
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層もしくは複数層設けることができる。
【0106】
正孔輸送材料としては、特に制限はなく、従来、光導伝材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものやEL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0107】
正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0108】
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0109】
芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0110】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0111】
また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
【0112】
また、本発明においては正孔輸送層の正孔輸送材料は、青色または白色の発光素子、表示装置および照明装置に適用する場合には、415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましく、リン光の0−0バンドが450nm以下であることがさらに好ましい。
【0113】
正孔輸送材料は、高Tgである化合物が好ましい。
【0114】
この正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この正孔輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
【0115】
《電子輸送層》
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、電子輸送層は単層もしくは複数層設けることができる。
【0116】
本発明に係わる前記一般式(1)で表される白金錯体は、正孔阻止材料(電子輸送材料)として用いることができる。従って、正孔阻止層を構成層として有する有機EL素子において、正孔阻止材料として用いてもよく、また、電子輸送層中に正孔阻止材料として、含有されていてもよい。この場合電子輸送層が正孔阻止層を兼ねることになる。
【0117】
電子輸送材料としては、その他、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0118】
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、下記の材料が知られている。即ち、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0119】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0120】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)など、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiCなどの無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0121】
電子輸送層に用いられる好ましい化合物は、青色または白色の発光素子、表示装置および照明装置に適用する場合には、蛍光極大波長が415nm以下であることが好ましく、リン光の0−0バンドが450nm以下であることがさらに好ましい。
【0122】
電子輸送層に用いられる化合物は、高Tgである化合物が好ましい。
【0123】
この電子輸送層は、上記電子輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この電子輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
【0124】
《基体(基板、基材、支持体等ともいう)》
本発明の有機EL素子に係る基体としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また、透明のものであれば特に制限はないが、好ましく用いられる基板としては例えばガラス、石英、光透過性樹脂フィルムを挙げることができる。
【0125】
また、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムは、有機EL素子に係る基体としては好ましいものである。
【0126】
樹脂フィルムとしては、特に限定はなく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン類、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル或いはポリアリレート類、アートン(商品名:JSR(株)製)或いはアペル(商品名:三井化学(株)製)といったノルボルネン系(またはシクロオレフィン系)樹脂、有機無機ハイブリッド樹脂等をあげることが出来る。有機無機ハイブリッド樹脂としては、有機樹脂とゾルゲル反応によって得られる無機高分子(例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等)を組み合わせて得られるものが挙げられる。
【0127】
樹脂フィルムの表面には無機物もしくは有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよい。
【0128】
被膜の具体例としてはゾル−ゲル法により形成されたシリカ層、ポリマーの塗布等により形成された有機層(たとえば重合性基を有する有機材料膜に紫外線照射や加熱等の手段で後処理を施した膜を含む)、DLC膜、金属酸化物膜または金属窒化物膜などが挙げられる。金属酸化物膜、金属窒化物膜を構成する金属酸化物、金属窒化物としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、窒化珪素などの金属窒化物、酸窒化珪素、酸窒化チタンなどの金属酸窒化物が挙げられる。
【0129】
前記、表面に無機物もしくは有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成された樹脂フィルムの水蒸気透過率は、0.01g/m2・day・atm以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
【0130】
これらの基板を光取りだし側の基板として用いるときには、前記のように、エッチング或いは型付け等の処理によって、表面に、前記の凹凸形状を付与することで、回折格子として働くため、発光層からの発光が、透明電極から取り出す際の効率を大きく向上させることができる。
【0131】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光の室温における外部取り出し効率の理論限界は通常、20〜25%程度であるが、本発明により30〜50%程度まで高めることが可能である。ここに、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
【0132】
次に、少なくとも2種類の異なる発光極大波長を有する有機EL素子を作製する好適な例を説明する。
【0133】
《有機EL素子の作製方法》
本発明の有機EL素子の作製方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
【0134】
まず前記の回折格子として働く凹凸表面を有する基板を用意する。基板は、例えばガラス基板の場合、前記のように、レジストを用いて所定の凹凸パターンを形成するようにエッチング処理を行う。ドライエッチングでもウエットエッチングでも構わない。こうして例えば、30nm〜300nmの深さの孔からなる繰り返しパターンを形成する。形成した凹凸パターンを有するガラス基板を基体として、この上に、所望の電極物質、例えば陽極用物質からなる透明導電膜からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10nm〜200nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極を作製する。
【0135】
透明導電膜例えばITO膜を形成した後、通常は、リーク防止など、電気的特性のために、研磨テープを用いて表面の研磨を行い陽極表面を平滑なものとする。
【0136】
透明電極側をこの様な構成とすることで以下の有機EL発光層から取り出される光は、基板の界面において、通常は全反射する成分が、前記凹凸構造により回折、散乱され取り出されるため、全体として光取りだし効率が向上する。
【0137】
こうして形成された陽極上に、次に、素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の有機化合物薄膜を形成させる。発光層は、例えば、前記の通り、発光色の異なる複数の層を形成させる。
【0138】
この様にして作製した回折による光取りだし効率向上の構造を基板と陽極との界面に有する有機電界発光装置(有機EL素子)の構成を断面図で図3に示した。凹凸構造を表面に形成した基板1上(凹凸面に)、陽極(ITO)2が、更に有機EL素子の発光層を含む複数の有機層3、更に陰極4が積層されている。
【0139】
透過型の回折格子であるため、発光層から放射され回折格子へ入射する光は透過光と反射光とに分かれるが反射光の出射角が小さくなるので陰極による反射により再び小さい入射角で入射されるため素子外部に取り出せる様になる。図にこの様子も示した。
【0140】
この有機化合物薄膜の薄膜化の方法としては、前記の如くスピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法またはスピンコート法が特に好ましい。さらに層ごとに異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10-6Pa〜10-2Pa、蒸着速度0.01nm〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃、膜厚0.1nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0141】
これらの層の形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を、1μm以下好ましくは50nm〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施してもかまわない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
【0142】
本発明の多色表示装置は、発光層形成時のみシャドーマスクを設け、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で膜を形成できる。
【0143】
発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、印刷法である。蒸着法を用いる場合においてはシャドーマスクを用いたパターニングが好ましい。
【0144】
また作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
【0145】
実質白色の発光を生じる有機EL素子においては、有機EL材料を用い複数の発光色を同時に発光させて混色により白色発光を得る。複数の発光色の組み合わせとしては、青色、緑色、赤色の3原色の3つの発光極大波長を含有させたものでも良いし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した2つの発光極大波長を含有したものでも良い。
【0146】
また白色有機EL素子において、複数の発光色を得るための発光材料の組み合わせは、ホスト化合物に発光ドーパントを複数組み合わせ混合した層を形成したもの、また複数のリン光または蛍光で発光する材料を、組み合わせ複数層で構成したもののいずれでも良い。
【0147】
例えば青・緑・赤の3色発光層からなる白色素子においては、各々の発光材料にリン光性ドーパントを用いる場合、青色のリン光性ドーパントの励起3重項エネルギーが一番大きく、この青色リン光性化合物よりも大きい励起3重項エネルギーを有する中間層材料、およびホスト材料を用いることが好ましい。
【0148】
また中間層、ホスト材料はキャリアの輸送を担うため、キャリア輸送能を有する材料であって、移動度の電界強度依存性の少ない材料を用いることが好ましい。また、ホスト化合物と中間層を構成する材料に同一のものを用いることが好ましい。
【0149】
発光層の構成を、発光層A/中間層/発光層Bという構成について図4に示すが、これらに限定されるものではない。
【0150】
発光層の層順は規則的であっても良いしランダムであっても良い。また、中間層は全てに設ける必要はなく必要な箇所に少なくとも一層設けるだけでも良い。
【0151】
発光層は、白色有機EL素子においては、2〜4種類を有することが好ましく、3種類有するものが最も好ましい。
【0152】
異なる発光層とは、発光極大波長が少なくとも10nm以上異なることをいう。
【0153】
発光層を少なくとも2種類以上有する有機EL素子として、点灯させた時の色は特に限定しないが、白色になることが好ましい。
【0154】
例えば発光層が2種である場合、青色と黄色、青緑色と赤に発光する発光層の組み合わせ、白色を得るのが好ましい。
【0155】
また、例えば発光層が3種である場合、青色と緑色と赤色に発光する組み合わせ、白色を得るのが好ましい。
【0156】
ホスト化合物と中間層を構成する材料としては前記カルバゾール誘導体として、CBP等がよく知られている。また、例えば、特開2000−21572、特開2002−8860、また同2001−313179等、また、特願2003−75512号(2003年3月19日出願)等に記載のカルバゾール誘導体、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等があり、好ましいものである。
【0157】
これら表示装置に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0158】
本発明の電界発光表示装置は、表示デバイス、ディスプレー、また、例えば液晶表示素子において、バックライト等として用いることができる。
【0159】
表示デバイス、特に動画像を再生する表示装置として使用する場合、駆動方式は単純マトリックス(パッシブマトリックス)方式でもアクティブマトリックス方式でもどちらでもよい。
【0160】
本発明の白色発光有機EL素子は、視野角制限、即ち、表示色に色度の視野角依存性を有し、視野角が大きい場合に色純度などの表示特性が劣るため、著しく周囲からみたときの視認性を低下させ、正面以外、他人から覗きみることが困難な有機電界発光装置となる。
【実施例】
【0161】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0162】
実施例1
〈ガラス基板の作製〉
面積75mm×75mm、厚さ1mmの石英ガラス基板(HOYA製、NA45)を用いた。図2(a)に示すパターン形成をフォトリソグラフィー工程を用いて、行った。先ずi線レジスト(東京応化製 THMR−iP1700)をスピンコートにより2μm厚に形成、i線ステッパーにてパターン形成を行った。次いでガラス基板をフッ化水素酸溶液に浸漬してエッチングを行った。凹凸の形状として、直径150nmの円形で、深さ120nmの孔を、各孔のピッチ(周期)がすべて320nmとなるよう凹凸が配置されたガラス基板を形成した。
【0163】
〈ITO膜の作製〉
上記で得られた凹凸表面を有するガラス基板に、以下の方法で、ITO膜を形成した。ITO膜はバイアススパッター法を用いてスパッタリング法により作製した。得られたITO膜は厚さ150nm屈折率2.0、シート抵抗約10Ω/m2であった。ITO膜形成後研磨テープ(MIPOX製、研磨テープ(15000番))を用いて表面を10nm程度研磨して平滑化した。
【0164】
〈有機EL素子の作製〉
上記で得られた光取りだし構造付きのITO膜付きガラス基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥したのちUVオゾン洗浄を5分間行った。次いでITO透明電極側にPEDOT−PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルフォン酸ドープ体;バイエル製baytron)層を乾燥厚み40nmとなるようにスピンコート塗布により形成した。
【0165】
この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
【0166】
真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、m−MTDATXAの入ったタンタル製抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで透明支持基板に蒸着し40nmの正孔輸送層を設けた。
【0167】
その後、以下に示すように、発光層A、B、Cまた中間層1の各組成を用い、以下に示すような構成で発光層A、中間層1、発光層B各層を順次積層形成した。
【0168】
各発光層は、それぞれホスト化合物、ドーパントを以下の割合となるようそれぞれタンタル製の抵抗加熱ボートに容れ、ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで記載された厚みに蒸着し形成した。
【0169】
発光層A CDBP:Ir−15(3%) 17nm
中間層1 L−98 3nm
発光層B CDBP:Ir−16(8%) 17nm
ここで各発光層において、CDBP:Ir−15(3%) 17nmとあるのは、ホストであるCDBPに対しドーパントであるIr−15が3質量%含まれる17nmの蒸着膜であることを示す。
【0170】
次いで、その上に正孔阻止層としてL−98を10nm蒸着した。
【0171】
更にAlq3の入った加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで前記正孔阻止層上に蒸着して膜厚35nmの電子輸送層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温で行った。
【0172】
引き続き陰極バッファー層(電子注入層)としてフッ化リチウム0.5nmを蒸着し、更に、アルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を作製した。
【0173】
【化7】

【0174】
作製した素子の色度を観察した。色度の測定には分光放射輝度計(コニカミノルタセンシング株式会社製 CS1000A)を用いた。即ち作製した素子に5Vの電圧を印加し発光させた。表示素子正面(視野角0度)において観測された発光色の色度はxy色度図座標上で(x:0.34,y:0.32)で白色であった。
【0175】
同じ状態で、発光させた素子を斜め(視野角30度)から観察、測定したところ、発光色は黄色みがかかった色であり、色度は(x:0.38,y:0.40)であり、画像の視認は難しい状態であった。
【0176】
実施例2
実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。但し、ガラス基板の凹凸形状として、同じく径150nm、深さは120nmの孔を形成したが、その周期(ピッチ)を280nmとしたものを用いた。
【0177】
作製された素子の色度を、素子に5Vの電位を印加して同様に観察したが、正面から見た発光色は同じく白色であり発光面に対し発光面法線方向(視野角0度)から測定した発光色の2°色度はxy色度図上の座標値で(0.33,0.33)であった。
【0178】
また、同じ発光状態で、素子を斜め30度(視野角30度)から観察、測定したが、発光色は青緑がかった色であり、視認が難しい状態となった。また、発光色の2°色度はxy色度図上の座標値で(0.35,0.24)であった。
【0179】
比較例
〈ITO膜の作製〉
75mm×75mm、厚み1mmのガラス基板に、実施例1と同様にしてITO膜を作製した。得られたITO膜は厚さ150nm、屈折率2.0、シート抵抗約10Ω・m2であった。
【0180】
〈有機EL素子の作製〉
上記で得られたITO膜付きガラス基板を用いて、実施例1と全く同様に有機EL素子を作製した。
【0181】
得られた有機EL素子の陽極および陰極間に、5Vの電位を印加して発光させた、正面から見た発光について発光色の色度はxy色度図上の座標値で(x:0.32,y:0.39)であった。また、視野角30度からみた発光については色度座標についても(0.32,0.39)で変わらなかった。
【0182】
但し、正面での発光輝度をみたところ650cd/m2であり、前記実施例1,または2における正面での発光輝度それぞれ850、700cd/m2に比べ低い値であり、本発明により正面での発光輝度が上がりかつ、視野角の大きい角度から醜いという特性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】xy色度図上において白色の範囲を近似的に表す図である。
【図2】回折格子として働く凹凸構造の幾つかの例を示す図である。
【図3】回折による光取りだし効率向上の構造を基板と陽極との界面に有する有機電界発光装置の一例を示す断面図である。
【図4】発光層の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0184】
1 基板
2 陽極
3 有機層
4 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板および基板上に、第1の電極および第2の電極に挟持された発光層を有する有機電界発光装置であって、
光取りだし側の基板内から発光層までのいずれかの全反射の発生する界面に、回折による光取りだし効率向上の構造を有する有機電界発光装置において、
正面(視野角0°)での色度が、
CIE2°視野標準観測者(CIE1931等色関数)を用いて算出されるxy色度図上の座標(x、y)で表示したとき、
以下の3点(0.28,0.44)、(0.32,0.28)、(0.39,0.32)を結ぶ3角形内にあり、
かつ、視野角30°における色度が、
前記CIE2°視野標準観測者(CIE1931等色関数)を用いて算出されるxy色度図上の座標(x、y)で表示したとき以下の3点(0.28,0.44)、(0.32,0.28)、(0.39,0.32)を結ぶ3角形外にあり、
かつ、前記正面(視野角0°)および視野角30°における色度の差は、それぞれの色度点におけるxおよびyの差をそれぞれΔx、Δyとしたとき、
(Δx2+Δy21/2が0.06以上となることを特徴とする有機電界発光装置。
【請求項2】
基板および基板上に、第1の電極および第2の電極に挟持された発光層を有する有機電界発光装置であって、光取りだし側の基板内から発光層までのいずれかの全反射の発生する界面に、回折による光取りだし効率向上の構造を有する有機電界発光装置において、
前記回折による光取りだし効率向上の構造が、前記全反射の発生する界面に設けられた60nm〜1700nmの範囲にあるピッチ(周期)を有する凹凸からなることを特徴とする有機電界発光装置。
【請求項3】
前記回折による光取りだし効率向上の構造が、透明電極層と光取りだし側の基板との間に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機電界発光装置。
【請求項4】
前記基板が、プラスチック基板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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