説明

有機電界素子用組成物の製造方法、有機電界素子用組成物、有機電界発光素子の製造方法、有機電界発光素子、有機EL表示装置および有機EL照明

【課題】湿式成膜法により、駆動寿命が長く、電流効率が高い、有機電界発光素子を製造する。
【解決手段】有機電界発光素子用組成物の製造方法であって、有機電界発光素子材料及び溶剤を含有する液を濾過する濾過工程を有し、該組成物は、該濾過工程後の液を8時間以上経過させる経過工程を経た後に得られ、有機電界発光素子の有機層の湿式成膜に用いられることを特徴とする、有機電界発光素子用組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界素子用組成物の製造方法、該製造方法により製造された有機電界素子用組成物、有機電界発光素子の製造方法、該製造方法により製造された有機電界発光素子、並びに該素子を含む有機EL表示装置および有機EL照明に関する。
【背景技術】
【0002】
コダック社による蒸着法を用いた積層型の有機電界発光(electroluminescence:以下「EL」と略する場合がある。)素子の発表以来、有機ELディスプレイや有機EL照明の開発が盛んに行なわれ、現在実用化されつつある。
【0003】
このような積層型の有機電界発光素子では、陽極と陰極との間に複数の有機層(発光層、正孔注入層、正孔輸送膜、電子輸送層等)が積層して設けられている。これらの有機層の形成は、多くの場合、低分子系色素等の有機層の材料を真空蒸着することにより行なわれている。しかし、真空蒸着法では均質で欠陥がない薄膜を得ることは困難である。また、真空蒸着法は、複数層の有機層を形成するのに長時間を要するため、素子の製造効率の面でも課題があった。
【0004】
これに対して、積層型有機電界発光素子の複数の有機層を湿式成膜法によって形成する技術が報告されている。例えば、特許文献1には、架橋基を有する化合物を含有する組成物を塗布して光や熱で架橋させることにより得られる架橋性ポリマーを含む電荷輸送膜および発光層を有する有機電界発光素子が記載されている。架橋性ポリマーを含む電荷輸送膜を用いると、該電荷輸送膜の上層に、湿式成膜法により他の層を容易に形成することができる。
【0005】
このような湿式成膜法による有機電界発光素子の製造工程は、大面積の有機ELデバイス製造の簡便化、効率化、低コスト化が可能になることが期待され、種々の検討がなされている。また、このような湿式成膜法による有機電界発光素子の製造工程は、例えば、特許文献2や特許文献3に記載されるように、インクジェット方式やノズルコート方式などを使用して湿式成膜することが出来ることから、大面積の有機ELデバイスを低コストで実現できると考えられている。
【0006】
湿式成膜法による有機電界発光素子の製造工程では、様々な機能を有する層を形成するための材料を溶剤に溶解または分散させたインクを製造し、これを用いて塗布膜を作製する。しかしながら、これらのインクは、使用時までの期間に溶質の析出や凝集、結晶化などが起こることがある。
【0007】
このことを踏まえ、通常、湿式成膜法を含む有機電界発光素子の作の際には、実際にインクを使用する直前にそのインクを濾過する(特許文献4〜8参照)。
【0008】
このように、湿式成膜法による有機電界発光素子の製造技術は、工程の簡便化、効率化、低コスト化、大面積化に有用であることが期待され、従来より、種々な開発がなされている。そして、湿式成膜法により製造された有機電界発光素子においては、更に駆動寿命が長く、電流効率が高い素子が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−114987号公報
【特許文献2】特開2004−127919号公報
【特許文献3】特開2004−41943号公報
【特許文献4】特開平11−3783号公報
【特許文献5】特開平9−263754号公報
【特許文献6】特開2003−292948号公報
【特許文献7】特開2005−19159号公報
【特許文献8】特開2005−340042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、湿式成膜法により、駆動寿命が長く、電流効率が高い、有機電界発光素子を製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。この結果、様々な機能を有する層を形成するための材料を溶剤に溶解または分散させた液を一定期間保存することで、該溶質の析出や凝集、結晶化が起こり、これらが素子特性に影響するとの従来の考えが、該液を濾過した後においては、同様でないことを見出した。
更に、鋭意検討を重ねた結果、この液を濾過後、一定期間経過してから湿式成膜に用いて素子を作製することで、上記課題を解決することを見出して、本発明に到達した。
【0012】
即ち、本発明の第1の要旨は、有機電界発光素子用組成物の製造方法であって、有機電界発光素子材料及び溶剤を含有する液を濾過する濾過工程を有し、該組成物は、該濾過工程後の液を8時間以上経過させる経過工程を経た後に得られ、有機電界発光素子の有機層の湿式成膜に用いられることを特徴とする、有機電界発光素子用組成物の製造方法に存する。
【0013】
また、本発明の第2の要旨は、前記有機電界発光素子材料の分子量が、100以上、10000以下であることを特徴とする、第1の要旨に記載の有機電界発光素子用組成物の製造方法に存する。
【0014】
そして、本発明の第3の要旨は、前記有機電界発光素子材料が、発光層材料であることを特徴とする、第1又は第2の要旨に記載の有機電界発光素子用組成物の製造方法に存する。
【0015】
本発明の第4の要旨は、第1乃至3の何れか1つの要旨に記載の有機電界発光素子用組成物の製造方法により製造されたことを特徴とする、有機電界発光素子用組成物に存する。
【0016】
本発明の第5の要旨は、陽極および陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子の製造方法であって、該有機層を、有機電界発光素子材料及び溶剤を含有する液を濾過した後8時間以上経過した後に得られる組成物を、湿式成膜することにより形成することを特徴とする、有機電界発光素子の製造方法に存する。
【0017】
また、本発明の第6の要旨は、陽極および陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子の製造方法であって、該有機層を、第4の要旨に記載の有機電界発光素子用組成物を湿式成膜することにより形成することを特徴とする、有機電界発光素子の製造方法に存する。
【0018】
本発明の第7の要旨は、第5又は第6に記載の有機電界発光素子の製造方法により製造されたことを特徴とする、有機電界発光素子に存する。
【0019】
本発明の第8の要旨は、第7の要旨に記載の有機電界発光素子を有することを特徴とする、有機EL表示装置に存する。
【0020】
また、本発明の第9の要旨は、第7の要旨に記載の有機電界発光素子を有することを特徴とする、有機EL照明に存する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有機電界発光素子用組成物の製造方法によれば、湿式成膜法により、電流効率が高く、また駆動寿命の長い素子を製造するための組成物を得ることが可能となる。
本発明の方法により製造された有機電界発光素子は、電流効率が高く、また駆動寿命が長いため、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯への応用が考えられ、その技術的価値は高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の有機電界発光素子の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の有機電界素子用組成物の製造方法、有機電界素子用組成物、有機電界素子用組成物の使用方法、有機電界発光素子の製造方法、有機電界発光素子、有機EL表示装置および有機EL照明の実施態様を詳細に説明する。但し、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定されない。
【0024】
[1]有機電界素子用組成物の製造方法
本発明の有機電界発光素子用組成物の製造方法(以下、「本発明の組成物の製造方法」と記載することがある。)は、有機電界発光素子材料及び溶剤を含有する液を濾過する濾過工程を有する。また、該組成物は、該濾過工程後の液を8時間以上経過させる経過工程を経た後に得られるものであり、有機電界発光素子の有機層の湿式成膜に用いられる。
【0025】
[作用機構]
本発明における効果が奏される作用機構の詳細は、次の通り推測される。
有機電界発光素子材料及び溶剤を含有する液を、例えばフィルターなどを用いて濾過すると、濾過により液が不安定な状態となる。
より具体的には、組成物中の有機電界発光素子材料などが、フィルターなどに接触することにより、検出することが難しいサイズの非常に微細なクラスターなどが形成される。この状態の液を湿式成膜工程に供すると、成膜された膜内に微細なクラスターなどが存在することになり、これにより電気特性が損なわれ、駆動寿命の低下や輝度効率の低下などが起こると推測される。一方、本発明では、濾過工程後に所定期間の経過工程を設けることで、濾過工程時に発生した微細なクラスターなどが分解されると考えられる。この組成物を用いて湿式成膜することにより、得られる膜中に含まれる該クラスターなどの割合が減る。これにより、得られる素子の駆動寿命が長い、輝度効率が高いなどの効果が奏されるものと考えられる。
【0026】
[有機電界発光素子用組成物]
本発明における有機電界発光素子用組成物は、有機電界発光素子材料と溶剤とを含有する。ここで、有機電界発光素子材料は、溶剤に溶解していても良いし、溶剤に分散していても良い。
【0027】
{有機電界発光素子材料}
有機電界発光素子材料とは、有機電界発光素子の陽極と陰極の間の層に含有される材料である。有機電界発光素子材料としては、例えば、正孔輸送能や電子輸送能を有する電荷輸送材料、発光材料、電子受容性化合物などが挙げられる。有機電界発光素子材料には、特に制限はなく、形成する有機層によって、適宜材料を選択することが可能であり、公知の材料も用いることができる。
【0028】
本発明における有機電界発光素子材料の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。本発明における有機電界発光素子材料の分子量は、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下、更に好ましくは4000以下、特に好ましくは3000以下である。また、本発明における有機電界発光素子材料の分子量は、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上である。有機電界発光素子材料の分子量は、ガラス転移温度や融点、分解温度等が高く、発光層材料および形成された発光層の耐熱性に優れる点、及び、ガス発生、再結晶化及び分子のマイグレーションなどに起因する膜質の低下や材料の熱分解に伴う不純物濃度の上昇などが起こり難い点では大きいことが好ましい。一方、有機電界発光素子材料の分子量は、有機化合物の精製が容易で、溶剤に溶解させやすい点では小さいことが好ましい。
【0029】
本発明における有機電界発光素子材料は、発光層材料であることが好ましい。
以下、特に、有機電界発光素子材料が、発光層材料である場合、つまり、本発明に係る有機電界発光素子用組成物が発光層形成用組成物である場合を例示して詳述する。発光層形成用組成物以外の態様については、例えば、後述の[4]有機電界発光素子の項に記載の材料および溶剤が挙げられる。
【0030】
本発明における有機電界発光素子用組成物としての発光層形成用組成物は、発光層材料と溶剤とを含有する。
発光層材料としては、少なくとも発光材料を含み、好ましくは更に電荷輸送材料を含有する。また、発光層材料は、成膜性の向上を目的として、レベリング剤や消泡剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0031】
<発光材料>
発光材料としては、通常、有機電界発光素子の発光材料として使用されているものであれば限定されない。発光材料は、例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよく、また、発光材料は、例えば、青色は蛍光発光材料、緑色および赤色は燐光発光材料を用いるなどのように、蛍光発光材料と燐光発光材料を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(蛍光発光材料)
以下、発光材料のうち蛍光発光材料の例を挙げる。しかし、蛍光発光材料は以下の例示物に限定されるものではない。
【0033】
青色発光を与える蛍光発光材料(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、クリセン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン、アリールアミンおよびそれらの誘導体等が挙げられる。青色発光を与える蛍光発光材料としては、中でも、アントラセン、クリセン、ピレン、アリールアミンおよびそれらの誘導体等が好ましい。
【0034】
緑色発光を与える蛍光発光材料(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン、クマリン、Al(CNO)などのアルミニウム錯体およびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0035】
黄色発光を与える蛍光発光材料(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドンおよびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0036】
赤色発光を与える蛍光発光材料(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチレン)−4H−ピラン)系化合物、ベンゾピラン、ローダミン、ベンゾチオキサンテン、アザベンゾチオキサンテン等のキサンテンおよびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0037】
上記青色蛍光を与える誘導体であるアリールアミン誘導体としては、より具体的には、下記式(X)で表される化合物が、素子の発光効率、駆動寿命等の観点から、蛍光発光材料として好ましい。
【0038】
【化1】

【0039】
(式中、Ar21は、核炭素数10〜40の置換もしくは無置換の縮合芳香族環基を示し、Ar22およびAr23は、それぞれ独立に炭素数6〜40の置換もしくは無置換の1価の芳香族炭化水素基を示し、pは1〜4の整数を示す。)
【0040】
Ar21としては、具体的には、1個の遊離原子価を有するナフタレン、フェナントレン、フルオランテン、アントラセン、ピレン、ペリレン、コロネン、クリセン、ピセン、ジフェニルアントラセン、フルオレン、トリフェニレン、ルビセン、ベンゾアントラセン、フェニルアントラセン、ビスアントラセン、ジアントラセニルベンゼンまたはジベンゾアントラセンなどが挙げられる。ここで、本発明において、遊離原子価とは、有機化学・生化学命名法(上)(改定第2版、南江堂、1992年発行)に記載のとおり、他の遊離原子価と結合を形成できるものを言う。
【0041】
以下に、蛍光発光材料としてのアリールアミン誘導体の好ましい具体例を示すが、本発明に係る蛍光発光材料としてのアリールアミン誘導体はこれらに限定されるものではない。以下において、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を表す。
【0042】
【化2】

【0043】
【化3】

【0044】
【化4】

【0045】
【化5】

【0046】
(燐光発光材料)
燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を中心金属として含むウェルナー型錯体または有機金属錯体などが挙げられる。
【0047】
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。周期表第7〜11族から選ばれる金属としては、イリジウム及び白金がより好ましい。
【0048】
錯体の配位子としては、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子が好ましい。ここで、(ヘテロ)アリールとは、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
【0049】
燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
【0050】
特に、燐光発光材料の燐光性有機金属錯体としては、好ましくは下記式(III)または式(IV)で表される化合物が挙げられる。
【0051】
ML(q−j)L′ (III)
(式(III)中、Mは金属を表し、qは上記金属の価数を表す。また、LおよびL′は二座配位子を表す。jは0、1または2の数を表す。)
【0052】
【化6】

【0053】
(式(IV)中、Mは金属を表し、Tは炭素原子または窒素原子を表す。R92〜R95は、それぞれ独立に置換基を表す。但し、Tが窒素原子の場合は、R94およびR95は無い。)
【0054】
以下、まず、式(III)で表される化合物について説明する。
【0055】
式(III)中、Mは任意の金属を表す。好ましいMの具体例としては、周期表第7〜11族から選ばれる金属として前述した金属などが挙げられる。
【0056】
また、式(III)中、二座配位子Lは、以下の部分構造を有する配位子を示す。
【0057】
【化7】

【0058】
上記Lの部分構造において、環A1は、置換基を有していてもよい、芳香環基を表わす。本発明における芳香環基は、芳香族炭化水素基でも良いし、芳香族複素環基でも良い。
【0059】
該芳香族炭化水素基としては、1個の遊離原子価を有する、5または6員環の単環または2〜5縮合環などが挙げられる。
該芳香族炭化水素基の具体例としては、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などが挙げられる。
【0060】
該芳香族複素環基としては、1個の遊離原子価を有する、5または6員環の単環または2〜4縮合環などが挙げられる。
具体例としては、1個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などが挙げられる。
【0061】
また、上記Lの部分構造において、環A2は、置換基を有していてもよい、含窒素芳香族複素環基を表す。
【0062】
該含窒素芳香族複素環基としては、1個の遊離原子価を有する、5または6員環の単環または2〜4縮合環などが挙げられる。
具体例としては、1個の遊離原子価を有する、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、フロピロール環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環などが挙げられる。
【0063】
環A1または環A2がそれぞれ有していてもよい置換基の例としては、ハロゲン原子;アルキル基;アルケニル基;アルコキシカルボニル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;ジアルキルアミノ基;ジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アシル基;ハロアルキル基;シアノ基;芳香族炭化水素基等が挙げられる。また、環A1または環A2が含窒素芳香族複素環基である場合は、芳香族炭化水素基を置換基として有していてもよい。
【0064】
また、式(III)中、二座配位子L′は、以下の部分構造を有する配位子を示す。但し、以下の式において、「Ph」はフェニル基を表す。
【0065】
【化8】

【0066】
中でも、L′としては、錯体の安定性の観点から、以下に挙げる配位子が好ましい。
【0067】
【化9】

【0068】
式(III)で表される化合物として、更に好ましくは、下記式(IIIa),(IIIb),(IIIc)で表される化合物が挙げられる。
【0069】
【化10】

【0070】
(式(IIIa)中、Mは、Mと同様の金属を表し、wは、上記金属の価数を表し、環A1は、置換基を有していてもよい芳香環基を表し、環A2は、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表す。)
【0071】
【化11】

【0072】
(式(IIIb)中、Mは、Mと同様の金属を表し、wは、上記金属の価数を表し、環A1は、置換基を有していてもよい芳香環基を表し、環A2は、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表す。)
【0073】
【化12】

【0074】
(式(IIIc)中、Mは、Mと同様の金属を表し、wは、上記金属の価数を表し、jは、0、1または2を表し、環A1および環A1′は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香環基を表し、環A2および環A2′は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表す。)
【0075】
上記式(IIIa)〜(IIIc)において、環A1および環A1′の芳香環基の好ましい例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、チエニル基、フリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
【0076】
上記式(IIIa)〜(IIIc)において、環A2および環A2′の含窒素芳香族複素環基の好ましい例としては、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フェナントリジル基等が挙げられる。
【0077】
上記式(IIIa)〜(IIIc)における環A1および環A1′の芳香環基、環A2および環A2′の含窒素芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子;アルキル基;アルケニル基;アルコキシカルボニル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;ジアルキルアミノ基;ジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アシル基;ハロアルキル基;シアノ基等が挙げられる。
なお、これら置換基は互いに連結して環を形成してもよい。具体例としては、環A1が有する置換基と環A2が有する置換基とが結合するか、または、環A1′が有する置換基と環A2′が有する置換基とが結合することにより、一つの縮合環を形成してもよい。このような縮合環としては、7,8−ベンゾキノリン基等が挙げられる。
【0078】
中でも、環A1、環A1′、環A2および環A2′の置換基として、より好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ジアリールアミノ基、カルバゾリル基などが挙げられる。
【0079】
また、式(IIIa)〜(IIIc)におけるM〜Mの好ましい例としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金または金などが挙げられる。
【0080】
上記式(III)および(IIIa)〜(IIIc)で示される有機金属錯体の具体例を以下に示す。但し、上記式(III)および(IIIa)〜(IIIc)で示される有機金属錯体の具体例は、下記の化合物に限定されるものではない。
【0081】
【化13】

【0082】
【化14】

【0083】
上記式(III)で表される有機金属錯体の中でも、特に、配位子Lおよび/またはL′として2−アリールピリジン系配位子、即ち、2−アリールピリジン、これに任意の置換基が結合したもの、および、これに任意の基が縮合してなるものを有する化合物が好ましい。
【0084】
また、国際公開第2005/019373号パンフレットに記載の化合物も、発光材料として使用することが可能である。
【0085】
次に、式(IV)で表される化合物について説明する。
【0086】
式(IV)中、Mは金属を表す。具体例としては、周期表第7〜11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。Mとしては、中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金または金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
【0087】
また、式(IV)において、R92およびR93は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香環基を表す。
【0088】
更に、Tが炭素原子の場合、R94およびR95は、それぞれ独立に、R92およびR93と同様の例示物で表される置換基を表す。また、Tが窒素原子の場合は、R94およびR95は無い。
【0089】
また、R92〜R95は、更に置換基を有していてもよい。置換基を有する場合、その種類に特に制限はなく、任意の基を置換基とすることができる。
【0090】
更に、R92〜R95のうち任意の2つ以上の基が互いに連結して環を形成してもよい。
【0091】
式(IV)で表される有機金属錯体の具体例(T−1、T−10〜T−15)を以下に示すが、下記の例示物に限定されるものではない。また、以下の化学式において、「Me」はメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
【0092】
【化15】

【0093】
これらの発光材料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、および比率で用いてもよい。
【0094】
(分子量)
本発明における発光材料の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。本発明における発光材料の分子量は、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下、更に好ましくは4000以下、特に好ましくは3000以下である。また、本発明における発光材料の分子量は、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上である。
【0095】
発光材料の分子量は、ガラス転移温度や融点、分解温度等が高く、発光層材料および形成された発光層の耐熱性に優れる点、及び、ガス発生、再結晶化及び分子のマイグレーションなどに起因する膜質の低下や材料の熱分解に伴う不純物濃度の上昇などが起こり難い点では大きいことが好ましい。一方、発光材料の分子量は、有機化合物の精製が容易で、溶剤に溶解させやすい点では小さいことが好ましい。
【0096】
<電荷輸送材料>
本発明における発光層形成用組成物は、電荷輸送材料を含有していることが好ましい。
【0097】
有機電界発光素子において、発光材料は、電荷輸送性能を有するホスト材料から電荷またはエネルギーを受け取って発光することが好ましい。従って、本発明に係る発光層形成用組成物に含有される発光層材料としては、例えば、このホスト材料として使用されるような、電荷輸送材料であることが好ましい。電荷輸送材料としては、正孔輸送能を有する化合物や電子輸送能を有する化合物が挙げられる。
【0098】
ここで、電荷輸送材料の例としては、芳香族アミン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン系化合物、ベンジルフェニル系化合物、フルオレン系化合物、ヒドラゾン系化合物、シラザン系化合物、シラナミン系化合物、ホスファミン系化合物、キナクリドン系化合物、トリフェニレン系化合物、カルバゾール系化合物、ピレン系化合物、アントラセン系化合物、フェナントロリン系化合物、キノリン系化合物、ピリジン系化合物、トリアジン系化合物、オキサジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0099】
より具体的には、低分子量の正孔輸送性化合物の例として、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族アミン系化合物(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン系化合物(Journal of Luminescence, 1997年, Vol.72−74, pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン系化合物(Chemical Communications, 1996年, pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のフルオレン系化合物(Synthetic Metals, 1997年,Vol.91 ,pp.209)等が挙げられる。また、後述の[正孔注入層]における(低分子量の正孔輸送性化合物)として例示した化合物を用いることができる。
また、低分子量の電子輸送性化合物として、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)、バソフェナントロリン(BPhen)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。
【0100】
これらの電荷輸送材料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、および比率で用いてもよい。
【0101】
本発明における電荷輸送材料の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。本発明における電荷輸送材料の分子量は、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下である。また、本発明における電荷輸送材料の分子量は、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上である。
【0102】
電荷輸送材料の分子量が上記範囲内であると、ガラス転移温度や融点、分解温度等が高く、発光層材料および形成された発光層の耐熱性が良好である点、及び、再結晶化や分子のマイグレーションなどに起因する膜質の低下や、材料の熱分解に伴う不純物濃度の上昇などが起こり難く、素子性能に優れる点、また、精製が容易である点などで好ましい。
【0103】
{溶剤}
本発明における発光層形成用組成物は、通常さらに溶剤を含有する。
溶剤は、発光材料および電荷輸送材料などの発光層材料が良好に溶解又は分散する溶剤であれば特に限定されない。
【0104】
溶剤の溶解性としては、25℃、1気圧下で、発光材料および電荷輸送材料を、各々、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上溶解することが好ましい。
【0105】
以下に溶剤の具体例を挙げるが、本発明の効果を損なわない限り、溶剤は、これらに限定されるものではない。
溶剤としては、例えば、n−デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン類;トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラメチルシクロヘキサノン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル類;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル類、シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン類;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン類;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル類;等が挙げられる。
溶剤は、中でも好ましくは、アルカン類や芳香族炭化水素類である。
【0106】
これらの溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、また、2種類以上を任意の組み合わせおよび比率で用いてもよい。
【0107】
また、より均一な膜を得るためには、成膜直後の液膜から溶剤が適当な速度で蒸発することが好ましい。このため、溶剤の沸点は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上であることが良い。また、溶剤の沸点は、通常270℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは沸点230℃以下であることが良い。
【0108】
{組成}
本発明に係る発光層形成用組成物における溶剤の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。溶剤の含有量は、発光層形成用組成物100重量部に対して、好ましくは10重量部以上、より好ましくは50重量部以上、特に好ましくは80重量部以上であることが良い。また、溶剤の含有量は、好ましくは99.95重量部以下、より好ましくは99.9重量部以下、特に好ましくは99.8重量部以下であることが良い。
発光層形成用組成物中の溶剤の含有量が多いと、粘性が低く、成膜の作業性に優れる点で好ましい。一方、溶剤の含有量が少ないと、成膜後に溶剤を除去して得られる膜の厚みを稼ぎやすく、成膜が容易である点で好ましい。なお、発光層形成用組成物として2種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにすることが好ましい。
【0109】
本発明における発光層形成用組成物は、発光材料を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上含有することが良い。また、発光材料を通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下含有することが良い。
本発明における発光層形成用組成物は、電荷輸送材料を通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上含有することが良い。また、電荷輸送材料を通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下含有することが良い。
また、発光層形成用組成物における、発光材料と電荷輸送材料との含有量の重量比(発光材料/電荷輸送材料)は、通常0.01以上、好ましくは0.03以上であることが良い。また、発光層形成用組成物における、発光材料と電荷輸送材料との含有量の重量比(発光材料/電荷輸送材料)は、通常0.5以下、好ましくは0.2以下であることが良い。
【0110】
[濾過工程]
本発明における有機電界発光素子用組成物の製造方法は、有機電界発光素子材料と溶剤とを含有する液を濾過する工程を有する。
【0111】
本発明における濾過とは、有機電界発光素子用材料及び溶剤を含有する液の中に存在する可能性のある凝集体や不純物、パーティクルの除去などを目的として行われる。濾過方法としては、特に制限はなく、公知の方法が挙げられるが、例えば、物理的な細孔や隙間をもつフィルターや充填剤、イオン交換樹脂などが挙げられる。
【0112】
濾過工程に用いるフィルターの孔径は、通常5μm以下、好ましくは0.5μm以下であることが良い。また、濾過工程に用いるフィルターの孔径は、通常0.1μm以上であることが良い。孔径がこの範囲内であると、不純物が混入し難く、また、フィルターの目詰まりなどが起こり難いため好ましい。
【0113】
また、充填剤としては、分子ふるい機能や静電的効果などにより不純物を除去する機能を持つ樹脂やセラミック多孔質体などが挙げられる。充填剤としては、代表的な例としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)などに使用される多孔性高分子ゲル、シリカゲル、ゼオライト、活性炭などが挙げられる。
【0114】
イオン交換樹脂としては、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオンなどの無機/有機カチオンや水酸化物イオン、硫化物イオンなどやカルボン酸などの無機/有機アニオンなどを静電的な効果により取り除く効果をもつ樹脂などが挙げられる。
【0115】
これらの各種の濾過方法は、1種類のみ行っても良いし、2種以上を任意の組み合わせ及び順序で行ってもよい。
【0116】
なお、濾過工程は、有機電界発光素子用材料及び溶剤を含有する液の調製直後に行っても良い。また、濾過工程は、有機電界発光素子用材料及び溶剤を含有する液の調製後、12〜24時間程度経過後に行ってもよい。
但し、フィルター付ノズルのように、有機電界発光素子の有機層を湿式成膜する装置に濾過用フィルターが搭載されている場合は、装置に供給された液とフィルターとの接触から成膜までの時間が非常に短く、当該液中に微細なクラスターが素子特性に影響を及ぼすほど多量に形成される前に成膜されることになるため、本発明に係る濾過工程には含まれない。ここで、装置に供給された液とフィルターとの接触から成膜までの時間が非常に短いとは、通常5分以内、好ましくは3分以内、特に好ましくは1分以内を言う。
【0117】
[経過工程]
本発明の有機電界発光素子用組成物は、上記濾過工程後の液を8時間以上経過させる経過工程を経た後に得られる組成物であり、有機電界発光素子の有機層の湿式成膜に用いられる。
【0118】
本発明における経過工程とは、有機電界発光素子用材料及び溶剤を含有する液を濾過してから、湿式成膜法により有機層を形成するまでの期間を指す。即ち、本発明における経過工程とは、有機電界発光素子用材料及び溶剤を含有する液を濾過してから、湿式成膜用装置に充填して成膜する時点までの期間を指す。
なお、有機電界発光素子用材料及び溶剤を含有する液を複数回濾過した場合は、最後の濾過を行ってから、湿式成膜法により有機層を形成するまでの期間を指す。
【0119】
この経過工程の期間は、通常8時間以上、好ましくは12時間以上、さらに好ましくは24時間以上、特に好ましくは36時間以上である。また、経過工程の期間は、通常3ヶ月以下、好ましくは2ヶ月以下、さらに好ましくは1ヶ月以下である。
経過期間が長いと、前記濾過工程で生じたクラスターなどが分解しやすい点で好ましい。また、経過期間が短いと、酸素混入による有機電界発光素子用材料の劣化、凝集および析出等が起こり難い点から好ましい。
【0120】
経過工程の環境は、特に制限はなく、不活性ガス環境や大気環境などが挙げられる。経過工程の環境は、有機電界発光素子材料の劣化、凝集および析出等が起こり難い点で、不活性ガス環境が好ましい。不活性ガスとしては、具体的には、窒素、アルゴン等が好ましい。不活性ガスは、これらの混合ガス中であってもよい。不活性ガスは、取り扱いが容易な点で、窒素ガスが好ましい。
【0121】
経過工程における圧力は、通常大気圧である。
また、経過工程における温度は、本発明の優れた効果を大幅に損わない限り、特に制限はない。経過工程における温度は、通常−40℃以上、好ましくは−20℃以上、更に好ましくは0℃以上である。また、経過工程における温度は、通常60℃以下、好ましくは40℃以下である。経過工程における温度が上記範囲内であると、有機電界発光素子材料の劣化、凝集および析出などが起こり難い点から好ましい。
また、経過工程における湿度は、本発明の効果を損わない限り特に制限はない。経過工程における湿度は、相対湿度で、通常90%以下、好ましくは80%以下、更に好ましくは70%以下である。また、経過工程における湿度は、相対湿度で、通常0%以上、好ましくは20%以上である。湿度が上記範囲内であると、有機電界発光素子材料の劣化、凝集および析出などが起こり難い点から好ましい。
【0122】
経過工程においては、溶剤の揮発が起こり難いことから、濾過後の液を密閉容器で保存することが好ましい。また、この経過工程で用いる容器は、紫外光による重合性化合物等の分解/重合が起こり難い点から、遮光できる容器であることが好ましい。この経過工程で用いる容器としては、例えば、パッキン付褐色ねじ口びん、ステンレス製の加圧タンクなどが好ましい。また、有機電界発光素子の製造プロセスの効率化の観点では、経過工程で用いる容器が湿式成膜装置に直接設置可能であることが好ましい。
【0123】
[湿式成膜]
本発明の製造方法により得られた有機電界発光素子用組成物は、上記濾過工程後の液を8時間以上経過させる経過工程を経た後に有機電界発光素子の有機層の湿式成膜に用いられる。
【0124】
本発明において湿式成膜法とは、成膜方法、即ち、塗布方法として、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、ノズルプリンティング法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等の湿式で成膜する方法を採用し、この塗布膜を乾燥させて膜形成を行う方法をいう。これらの成膜方法の中でも、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ノズルプリンティング法が好ましい。これは、湿式成膜法が、塗布用組成物として用いられる本発明における有機電界発光素子用組成物の液性に合うためである。
【0125】
なお、以下において、湿式成膜法により成膜された膜を「塗膜」と称す場合がある。本発明において、湿式成膜法による湿式成膜工程自体は、常法に従って行うことができる。
【0126】
[2]有機電界発光素子用組成物
本発明の有機電界発光素子用組成物は、上述の本発明の有機電界発光素子用組成物の製造方法により形成された組成物である。
【0127】
[3]有機電界発光素子の製造方法
本発明の有機電界発光素子の製造方法は、有機電界発光素子の陽極と陰極との間の有機層を、上述のように、有機電界発光素子材料及び溶剤を含有する液を濾過後に所定時間経過させて得られる組成物を湿式成膜することにより形成する方法である。
【0128】
[4]有機電界発光素子
本発明の有機電界発光素子は、上述の本発明の有機電界発光素子の製造方法に従って、有機電界発光素子の陽極と陰極との間の有機層、好ましくは発光層が湿式成膜法により形成されたものである。
以下に、本発明の方法で製造される有機電界発光素子の層構成およびその一般的形成方法等について、図1を参照して説明する。
【0129】
図1は、本発明の有機電界発光素子10の構造例を示す断面の模式図である。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
【0130】
[基板]
基板1は、有機電界発光素子の支持体となるものである。基板1としては、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板;ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合には、ガスバリア性に留意するのが好ましい。基板のガスバリア性は、基板を通過した外気による有機電界発光素子
の劣化が起こり難いので、大きいことが好ましい。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0131】
[陽極]
陽極2は、発光層5側の層への正孔注入の役割を果たすものである。
【0132】
この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウムおよび/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
【0133】
陽極2の形成は、通常、スパッタリング法、真空蒸着法等の方法により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極2を形成する場合には、これらの微粒子などを適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板1上に塗布することにより、陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成することもできる。また、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
【0134】
陽極2は、通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
【0135】
陽極2の厚みは、必要とする透明性などに応じて適宜選択すればよい。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極2の厚みは、通常5nm以上、好ましくは10nm以上である。また、この場合、陽極2の厚みは、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。不透明でよい場合は、陽極2の厚みは任意である。陽極2の機能を兼ね備えた基板1を用いてもよい。また、さらには、上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
【0136】
陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極2表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
【0137】
[正孔注入層]
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層である。正孔注入層3は、本発明の有機電界発光素子に必須の層ではないが、正孔注入層3を設ける場合は、正孔注入層3は、通常、陽極2上に形成される。
【0138】
本発明に係る正孔注入層3の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はない。正孔注入層3は、ダークスポット低減の観点から湿式成膜法により形成することが好ましく、上述の本発明の組成物を湿式成膜法により形成することが特に好ましい。
正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
【0139】
{湿式成膜法による正孔注入層の形成}
湿式成膜法により正孔注入層3を形成する場合、通常は、正孔注入層3を構成する材料(本発明の組成物を湿式成膜することにより正孔注入層3を形成する場合は、上述の「有機電界発光素子材料」に相当する。)を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤:本発明の組成物を湿式成膜することにより正孔注入層3を形成する場合は、上述の有機電界発光素子用組成物の「溶剤」に相当する。)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層3形成用組成物を適切な手法により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
【0140】
<正孔輸送性化合物>
正孔注入層形成用組成物は、通常、正孔注入層3の構成材料として正孔輸送性化合物および溶剤を含有する。
【0141】
正孔輸送性化合物は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層3に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。
【0142】
正孔輸送性化合物としては、陽極2から正孔注入層3への電荷注入障壁の観点から4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。
【0143】
尚、本発明において誘導体とは、例えば、芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのものおよび芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
【0144】
正孔注入層3の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種又は2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種又は2種以上とを併用することが好ましい。
【0145】
上記例示した中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
【0146】
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
【0147】
【化16】

【0148】
(式(I)中、Ar〜Arは、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香環基を表す。Zは、下記の連結基群の中から選ばれる連結基を表す。また、Ar〜Arのうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。
【化17】

(上記各式中、Ar〜Ar16は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香環基を表す。RおよびRは、各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表す。))
【0149】
Ar〜Ar16の芳香環基としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、1個又は2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環がさらに好ましい。
【0150】
Ar〜Ar16の芳香環基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下が好ましい。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、芳香環基などが好ましい。
【0151】
およびRが任意の置換基である場合、該置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香環基などが挙げられる。
【0152】
式(I)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられる。
【0153】
また、正孔輸送性化合物としては、ポリチオフェンの誘導体である3,4-ethylenedioxythiophene(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を高分子量ポリスチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマー(PEDOT/PSS)もまた好ましい。また、このポリマーの末端をメタクリレート等でキャップしたものであってもよい。
【0154】
尚、正孔輸送性化合物は、下記[正孔輸送層]の項に記載の架橋性化合物であってもよい。該架橋性化合物を用いた場合の成膜方法についても同様である。
【0155】
正孔注入層形成用組成物中の正孔輸送性化合物の濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。正孔注入層形成用組成物中の正孔輸送性化合物の濃度は、膜厚の均一性の点から、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上であり、また、一方、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。この濃度は、膜厚ムラが生じ難い点では小さいことが好ましい。また、この濃度は、成膜された正孔注入層に欠陥が生じ難い点では大きいことが好ましい。
【0156】
<電子受容性化合物>
正孔注入層形成用組成物は、正孔注入層3の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
【0157】
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましい。具体的には、電子受容性化合物としては、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
【0158】
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、電子受容性化合物としては、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開2005/089024号パンフレット);塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0159】
これらの電子受容性化合物は、正孔輸送性化合物を酸化することにより正孔注入層3の導電率を向上させることができる。
【0160】
正孔注入層3或いは正孔注入層形成用組成物中の電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
【0161】
<その他の構成材料>
正孔注入層3の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0162】
<溶剤>
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶剤のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層3の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。また、この溶剤の沸点は、通常110℃以上、好ましくは140℃以上、更に好ましくは200℃以上であるのが良く、通常400℃以下、更に好ましくは300℃以下であることが良い。溶剤の沸点は、乾燥速度が速すぎず、膜質に優れる点では、高いことが好ましい。また、一方、溶剤の沸点は、低温乾燥が可能で、他の層や基板に熱の影響を与え難い点では、低いことが好ましい。
【0163】
溶剤として例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
【0164】
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等が挙げられる。
【0165】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。
【0166】
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
【0167】
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
【0168】
その他、ジメチルスルホキシド等も用いることができる。
【0169】
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いてもよい。
【0170】
<成膜方法>
正孔注入層3は、正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜法により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布成膜し、乾燥することにより形成することができる。また、正孔注入層3の形成は、上述の正孔注入層3を構成する材料及び溶剤を含有する液を濾過した後に8時間以上経過させて得られた組成物を湿式成膜に用いることが好ましい。そして、正孔注入層3の形成は、正孔注入層3を構成する低分子の材料及び溶剤を含有する液を濾過した後に8時間以上経過させて得られた組成物を湿式成膜に用いることが特に好ましい。
【0171】
塗布するときにおける温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損が起こり難いことから、10℃以上、50℃以下が好ましい。
塗布するときにおける相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、80%以下である。
【0172】
塗布後、通常、正孔注入層形成用組成物の膜を乾燥させる。乾燥させるときは、加熱しても良いし、加熱しなくても良い。加熱乾燥するときに使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えやすいことから、クリーンオーブンおよびホットプレートが好ましい。
【0173】
加熱するときにおける加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、正孔注入層形成用組成物に用いた溶剤の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、正孔注入層に用いた溶剤が2種類以上含まれている混合溶剤の場合、少なくとも1種類がその溶剤の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。溶剤の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、120℃以上、410℃以下で加熱することが好ましい。
【0174】
加熱するとき、加熱温度は、特に制限されないが、加熱温度は、正孔注入層の陰極側に接する層が湿式成膜法で成膜される場合においては、塗膜の十分な不溶化がなされる温度で加熱するのが好ましい。加熱するときの加熱時間は、10秒以上が好ましいが、また、一方、通常180分以下である。加熱時間は、他の層の成分の拡散が起こり難い点では短いことが好ましいが、正孔注入層が均質になりやすい点では長いことが好ましい。加熱は2回以上に分けて行ってもよい。
【0175】
{真空蒸着法による正孔注入層3の形成}
真空蒸着により正孔注入層3を形成する場合には、例えば、以下のようにして正孔輸送層3を形成することができる。正孔注入層3の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気する。この後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合は各々独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板1の陽極2上に正孔注入層3を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層3を形成することもできる。
【0176】
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されない。蒸着時の真空度は、通常0.1×10−6Torr(0.13×10−4Pa)以上、9.0×10−6Torr(12.0×10−4Pa)以下である。蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されない。蒸着速度は、通常0.1Å/秒以上、5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されない。蒸着時の成膜温度は、好ましくは10℃以上、50℃以下で行われる。
【0177】
[正孔輸送層]
正孔輸送層4は、陽極2から発光層5へ輸送する層である。正孔輸送層4は、本発明の有機電界発光素子に必須の層ではないが、正孔輸送層4を設ける場合は、正孔輸送層4は、正孔注入層3がある場合には正孔注入層3の上に、正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成することができる。
【0178】
正孔輸送層4の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はない。正孔輸送層4は、ダークスポット低減の観点から湿式成膜法により形成することが好ましく、上述の本発明の組成物を湿式成膜法により形成することが特に好ましい。また、正孔輸送層4の形成は、後述の正孔輸送層4を形成する材料及び溶剤を含有する液を濾過した後に8時間以上経過させて得られた組成物を湿式成膜に用いることが好ましい。そして、正孔輸送層4の形成は、正孔輸送層4を構成する低分子の材料及び溶剤を含有する液を濾過した後に8時間以上経過させて得られた組成物を湿式成膜に用いることが特に好ましい。
【0179】
正孔輸送層4を形成する材料(本発明の組成物を湿式成膜することにより正孔輸送層4を形成する場合は、上述の「有機電界発光素子材料」に相当する。)としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、正孔輸送層4を形成する材料は、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、正孔輸送層4は、発光層5に接するため、発光層5からの発光を消光したり、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
【0180】
このような正孔輸送層4の材料としては、従来、正孔輸送層4の構成材料として用いられている材料であればよい。正孔輸送層4の材料としては、例えば、前述の正孔注入層3に使用される正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。また、アリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、スピロ誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、シロール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。
【0181】
また、例えば、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリビニルトリフェニルアミン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリアリーレン誘導体、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン誘導体、ポリアリーレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)誘導体等が挙げられる。これらは、交互共重合体、ランダム重合体、ブロック重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子や、所謂デンドリマーであってもよい。
中でも、正孔輸送層4の材料としては、ポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体が好ましい。
【0182】
ポリアリールアミン誘導体としては、下記式(II)で表される繰り返し単位を含む重合体であることが好ましい。特に、下記式(II)で表される繰り返し単位からなる重合体であることが好ましく、この場合、繰り返し単位それぞれにおいて、Ar又はArが異なっているものであってもよい。
【0183】
【化18】

【0184】
(式(II)中、ArおよびArは、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香環基を表す。)
【0185】
Ar,Arの置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、1価又は2価の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、1価又は2価の遊離原子価を有する6員環の単環又は2〜5縮合環およびこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
【0186】
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えば、1価又は2価の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、1価又は2価の遊離原子価を有する、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環およびこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
【0187】
溶解性、耐熱性の点から、ArおよびArは、各々独立に、1価又は2価の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環やベンゼン環が2環以上連結してなる基(例えば、ビフェニル基(ビフェニル基)やターフェニレン基(ターフェニレン基))が好ましい。
中でも、1価の遊離原子価を有する、ベンゼン環(フェニル基)、ベンゼン環が2環連結してなる基(ビフェニル基)およびフルオレン環(フルオレニル基)が好ましい。
【0188】
ArおよびArにおける芳香環基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香環基などが挙げられる。
【0189】
ポリアリーレン誘導体としては、前記式(II)におけるArやArとして例示した置換基を有していてもよい芳香環基などのアリーレン基をその繰り返し単位に有する重合体が挙げられる。
【0190】
ポリアリーレン誘導体としては、下記式(V−1)および/又は下記式(V−2)からなる繰り返し単位を有する重合体が好ましい。
【0191】
【化19】

【0192】
(式(V−1)中、Ra、Rb、RおよびRは、各々独立に、アルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、フェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、又はカルボキシ基を表す。tおよびsは、各々独立に、0〜3の整数を表す。t又はsが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRa又はRbは同一であっても異なっていてもよく、隣接するRa又はRb同士で環を形成していてもよい。)
【0193】
【化20】

【0194】
(式(V−2)中、RおよびRは、各々独立に、上記式(V−1)におけるRa、Rb、R又はRと同義である。rおよびuは、各々独立に、0〜3の整数を表す。r又はuが2以上の場合、一分子中に含まれる複数のRおよびRは同一であっても異なっていてもよく、隣接するR又はR同士で環を形成していてもよい。Xは、5員環又は6員環を構成する原子又は原子群を表す。)
【0195】
Xの具体例としては、−O−、−BR−、−NR−、−SiR−、−PR−、−SR−、−CR−又はこれらが結合してなる基である。尚、Rは、水素原子又は任意の有機基を表す。本発明における有機基とは、少なくとも一つの炭素原子を含む基である。
【0196】
また、ポリアリーレン誘導体としては、前記式(V−1)および/又は前記式(V−2)からなる繰り返し単位に加えて、さらに下記式(V−3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0197】
【化21】

【0198】
(式(V−3)中、Ar〜Arは、各々独立に、置換基を有していてもよい、芳香環基を表す。vおよびwは、各々独立に0又は1を表す。)
【0199】
Ar〜Arの具体例としては、前記式(II)における、ArおよびArと同様である。
【0200】
上記式(V−1)〜(V−3)の具体例およびポリアリーレン誘導体の具体例等は、特開2008−98619号公報に記載のものなどが挙げられる。
【0201】
湿式成膜法で正孔輸送層4を形成する場合は、上記正孔注入層3の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、湿式成膜後、乾燥させる。
【0202】
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送性化合物の他、溶剤(本発明の組成物を湿式成膜することにより正孔輸送層4を形成する場合は、上述の有機電界発光素子用組成物の「溶剤」に相当する。)を含有する。用いる溶剤は、上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、成膜条件、乾燥条件等も正孔注入層3の形成の場合と同様である。
【0203】
真空蒸着法により正孔輸送層4を形成する場合もまた、その成膜条件等は、上記正孔注入層3の形成の場合と同様である。
【0204】
正孔輸送層4は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
【0205】
正孔輸送層4はまた、架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、架橋性基を有する化合物であって、架橋することにより網目状高分子化合物を形成する。
【0206】
この架橋性基の例を挙げると、1価の遊離原子価を有するオキセタン、エポキシなどの環状エーテル;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル、シンナモイル等の不飽和二重結合由来の基;1価の遊離原子価を有するベンゾシクロブテンなどが挙げられる。
【0207】
架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。架橋性化合物は、1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で有していてもよい。
【0208】
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物としては、上記の例示したものなどが挙げられ、架橋性基を有する正孔輸送性化合物としては、これら正孔輸送性化合物に対して、架橋性基が主鎖又は側鎖に結合しているものなどが挙げられる。特に、架橋性基は、アルキレン基等の連結基を介して、主鎖に結合していることが好ましい。また、特に、正孔輸送性化合物としては、架橋性基を有する繰り返し単位を含む重合体であることが好ましい。特に、正孔輸送性化合物としては、上記式(II)や式(V−1)〜(V−3)に架橋性基が直接又は連結基を介して結合した繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい。
【0209】
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物の例を挙げると、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。その中でも、正孔輸送性化合物としては、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体、シロール誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体がより好ましい。
【0210】
架橋性化合物を架橋して正孔輸送層4を形成するには、通常、架橋性化合物を溶剤に溶解又は分散した正孔輸送層形成用組成物を調製して、湿式成膜により成膜して架橋させる。
【0211】
正孔輸送層形成用組成物には、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤および重合促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤などが挙げられる。
また、正孔輸送層形成用組成物には、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物;バインダー樹脂などを含有していてもよい。
【0212】
正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上含有する。また、正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物を通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
【0213】
網目状高分子化合物は、通常、このような濃度で架橋性化合物を含む正孔輸送層形成用組成物を下層(通常は正孔注入層3)上に成膜後、加熱および/又は光などの活性エネルギー照射により、架橋性化合物を架橋させることにより形成する。
【0214】
成膜時の温度、湿度などの条件は、前記正孔注入層の湿式成膜時と同様である。
成膜後の加熱の手法は、特に限定されない。加熱温度条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下である。
【0215】
加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。加熱手段としては、特に限定されない。加熱手段としては、成膜された層を有する積層体を、ホットプレート上に載せる又はオーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。加熱方法としては、具体的には、例えば、ホットプレート上で120℃以上で、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
【0216】
光などの活性エネルギー照射により架橋させる場合における活性エネルギー照射の方法としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の活性エネルギー照射では、例えば、マグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法などが挙げられる。照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
【0217】
加熱および光などの活性エネルギー照射は、各方法や条件について、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
【0218】
このようにして形成される正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0219】
[発光層]
発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から注入された正孔と、陰極9から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。発光層5は、通常、正孔輸送層4がある場合には正孔輸送層4の上に、正孔輸送層4が無く、正孔注入層3がある場合には正孔注入層3の上に、正孔輸送層4も正孔注入層3も無い場合は、陽極2の上に形成することができる。
【0220】
本発明に係る発光層5の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はない。発光層5は、湿式成膜法により形成することが好ましく、上述の本発明の組成物を湿式成膜法により形成することが特に好ましい。
本発明の組成物を湿式成膜することにより発光層5を形成する場合、発光層形成用組成物は、発光材料等の発光層材料(上述の「有機電界発光素子材料」に相当する。)と溶剤(上述の有機電界発光素子用組成物の「溶剤」に相当する。)を含有する。
【0221】
{発光層材料}
発光層5は、その構成材料として、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔輸送の性質を有する化合物(正孔輸送性化合物)、あるいは、電子輸送の性質を有する化合物(電子輸送性化合物)を含有する。発光材料をドーパント材料として使用し、正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物などをホスト材料として使用してもよい。発光材料については特に限定はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。更に、発光層5は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。なお、湿式成膜法で発光層5を形成する場合は、何れも低分子量の材料を使用することが好ましい。
【0222】
<発光材料>
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。発光材料は、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよい。発光材料は、内部量子効率の観点から、燐光発光材料が好ましい。また、発光材料は、青色は蛍光発光材料を用い、緑色や赤色は燐光発光材料を用いるなど、組み合わせて用いてもよい。
【0223】
また、溶剤への溶解性に優れる点では、分子の対称性や剛性を低減させた発光材料やアルキル基などの親油性置換基が導入された発光材料を用いることが好ましい。
【0224】
発光材料のうちの蛍光発光材料および燐光発光材料としては、例えば、[1]の有機電界発光素子用組成物の製造方法で挙げた蛍光発光材料および燐光発光材料などが挙げられる。
【0225】
発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0226】
発光層における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。発光材料は発光ムラが生じ難い点では多いことが好ましいが、また、一方で、発光効率に優れる点では少ないことが好ましい。そこで、発光層における発光材料の割合は、通常0.05重量%以上、35重量%以下である。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、発光材料の合計の含有量が上記範囲に含まれるようにするのが好ましい。
【0227】
<正孔輸送性化合物>
発光層5には、その構成材料として、正孔輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、正孔輸送性化合物のうち、低分子量の正孔輸送性化合物の例としては、例えば、[1]有機電界発光素子用組成物の製造方法において挙げた正孔輸送性化合物などが挙げられる。
【0228】
なお、発光層5において、正孔輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0229】
発光層5における正孔輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。正孔輸送性化合物の割合は、短絡の影響を受け難い点では高いことが好ましいが、また、一方で、膜厚ムラが生じ難い点では低いことが好ましい。発光層5における正孔輸送性化合物の割合は、具体的には、通常0.1重量%以上、65重量%以下である。なお、2種以上の正孔輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにすることが好ましい。
【0230】
<電子輸送性化合物>
発光層5には、その構成材料として、電子輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、電子輸送性化合物のうち、低分子量の電子輸送性化合物の例としては、例えば、[1]有機電界発光素子用組成物の製造方法において挙げた低分子量の電子輸送性化合物などが挙げられる。
【0231】
なお、発光層5において、電子輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0232】
発光層5における電子輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。電子輸送性化合物の割合は、短絡の影響を受け難い点では高いことが好ましいが、また、一方で、膜厚ムラが生じ難い点では低いことが好ましい。発光層5における電子輸送性化合物の割合は、具体的には、通常0.1重量%以上、65重量%以下である。なお、2種以上の電子輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにすることが好ましい。
【0233】
{発光層の形成}
本発明に係る湿式成膜法により発光層5を形成する場合は、通常、上記材料を適切な溶剤に溶解させて発光層形成用組成物を調製する。また、発光層5の形成は、上述の発光層材料及び溶剤を含有する液を濾過した後に8時間以上経過させて得られた組成物を、湿式成膜に用いることが特に好ましい。
【0234】
発光層5を本発明に係る湿式成膜法で形成するための発光層形成用組成物に含有させる発光層用の溶剤としては、発光層の形成が可能である限り任意のものを用いることができ、発光層用の溶剤の好適な例は、例えば、[1]有機電界発光素子用組成物の製造方法において、湿式成膜法による有機層の形成に用いる発光層形成用組成物中の溶剤の一例として挙げたものが挙げられる。
【0235】
発光層を形成するための発光層形成用組成物に対する発光層用の溶剤の比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。発光層形成用組成物に対する発光層用の溶剤の比率は、前述のように、発光層形成用組成物100重量部に対して、好ましくは10重量部以上、より好ましくは50重量部以上、特に好ましくは80重量部以上であり、また、好ましくは99.95重量部以下、より好ましくは99.9重量部以下、特に好ましくは99.8重量部以下である。なお、発光層用の溶剤として2種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにすることが好ましい。
【0236】
また、発光層形成用組成物中の発光材料、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物等の合計量(固形分濃度)としては、膜厚ムラが生じ難い点では少ないことが好ましいが、また、一方で、膜に欠陥が生じ難い点では多いことが好ましい。そこで、固形分濃度は、具体的には、通常0.01重量%以上、70重量%以下である。
【0237】
発光層形成用組成物を湿式成膜後、得られた塗膜を乾燥し、溶剤を除去することにより、発光層5が形成される。この湿式成膜法は、具体的には、上記正孔注入層4の形成において記載した方法と同様である。湿式成膜法の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されず、前述のいかなる方式も用いることができる。
【0238】
発光層5の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。発光層5の膜厚は、膜に欠陥が生じ難い点では厚いことが好ましいが、駆動電圧を低くしやすい点では薄いことが好ましい。発光層5の膜厚は、具体的には、通常3nm以上、好ましくは5nm以上であり、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
【0239】
[正孔阻止層]
発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
【0240】
この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。
【0241】
正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことなどが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層6の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層6の材料として好ましい。
なお、正孔阻止層6の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0242】
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。従って、正孔阻止層6は、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。正孔阻止層6を湿式成膜法により形成する場合は、上述の正孔阻止層6を構成する材料及び溶剤を含有する液を濾過した後に8時間以上経過させて得られた組成物を、湿式成膜に用いることが特に好ましい。
【0243】
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。正孔阻止層6の膜厚は、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上であり、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
【0244】
[電子輸送層]
発光層5と後述の陰極9の間に、電子輸送層7を設けてもよい。電子輸送層7は、電子輸送層7及び後述の電子注入層8を設ける場合は、通常、発光層5とこの電子注入層8との間に、電子注入層8を設けない場合は、発光層5との陰極9との間に設ける。
【0245】
電子輸送層7は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられる層である。電子輸送層7は、電界を与えられた電極間において、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極9又は電子注入層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
【0246】
なお、電子輸送層7の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0247】
電子輸送層7の形成方法に制限はない。従って、電子輸送層7は、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。電子輸送層7を湿式成膜法により形成する場合は、電子輸送層7の形成は、電子輸送層7を構成する有機材料及び溶剤を含有する液を濾過した後に8時間以上経過させて得られた組成物を湿式成膜に用いることが好ましい。また、電子輸送層7を構成する低分子の有機材料及び溶剤を含有する液を濾過した後に8時間以上経過させて得られた組成物を湿式成膜に用いることが特に好ましい。
【0248】
電子輸送層7の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。電子輸送層7の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上であり、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
【0249】
[電子注入層]
発光層5と後述の陰極9の間に、電子注入層8を設けてもよい。電子注入層8を設ける場合は、電子注入層8は、通常、陰極9の下に設ける。
【0250】
電子注入層8は、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が挙げられる。電子注入層8の膜厚は、通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
【0251】
電子注入層8は、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の電子注入層8の膜厚は、通常、5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
【0252】
なお、電子注入層8の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0253】
電子注入層8の形成方法に制限はない。従って、電子注入層8は、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。電子注入層8を湿式成膜法により形成する場合は、電子注入層8の形成は、電子注入層8を構成する有機材料及び溶剤を含有する液を濾過した後に8時間以上経過させて得られた組成物を湿式成膜に用いることが好ましい。また、電子注入層8を構成する低分子の有機材料及び溶剤を含有する液を濾過した後に8時間以上経過させて得られた組成物を湿式成膜に用いることが特に好ましい。
【0254】
[陰極]
陰極9は、発光層5側の層(電子注入層8又は発光層5など)に電子を注入する役割を果たすものである。
【0255】
陰極9の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能である。陰極9の材料としては、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極などが挙げられる。
【0256】
なお、陰極9の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0257】
陰極9の膜厚は、通常、陽極2と同様である。
【0258】
低仕事関数金属から成る陰極9を保護する目的で、この上に、更に仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0259】
[その他の層]
本発明に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。具体的には、例えば、その性能を損なわない限り、陽極2と陰極9との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、上記説明にある層が省略されていてもよい。
【0260】
上記説明にある層の他に有していてもよい層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
電子阻止層を設ける場合、電子阻止層は、通常、正孔注入層3又は正孔輸送層4と発光層5との間に設けられる。電子阻止層は、発光層5から移動してくる電子が正孔注入層3に到達するのを阻止することで、発光層5内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層5内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は、電子阻止層を設けることが効果的である。
【0261】
電子阻止層に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。更に、本発明においては、発光層5を本発明に係る有機層として湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号パンフレット)等が挙げられる。
【0262】
なお、電子阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0263】
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、電子阻止層は、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
【0264】
さらに陰極9と発光層5又は電子輸送層7との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(II)(CsCO3)等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を設けることも、素子の効率を向上させるのに有効な方法である(Applied Physics Letters, 1997年, Vol.70, pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices, 1997年,Vol.44, pp.1245;SID 04 Digest, pp.154等参照)。
【0265】
また、以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば、図1の層構成であれば、基板1上に他の構成要素を陰極9、電子注入層8、電子輸送層7、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に設けてもよい。
【0266】
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
【0267】
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V25)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
【0268】
更には、本発明に係る有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
【0269】
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
【0270】
[5]有機EL表示装置
本発明の有機EL表示装置は、上述の本発明の有機電界発光素子を有する。本発明の有機EL表示装置の型式や構造については、特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機EL表示装置を形成することができる。
【0271】
[6]有機EL照明
本発明の有機EL照明は、上述の本発明の有機電界発光素子を有する。本発明の有機EL照明の型式や構造については、特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
【実施例】
【0272】
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0273】
[特性評価用素子の作製]
{実施例1}
図1に示す有機電界発光素子を作製した。
まず、ガラス基板上に、ITO透明導電膜を150nmの厚さに堆積し,2mm幅のストライプにパターンイングしてITO層の陽極2を形成した基板(三容真空社製、スパッタ成膜品)1に対して、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純粋による水洗、超純粋による超音波洗浄、超純粋による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0274】
次に、下記(P1)で表される繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子化合物を2.0重量%と、下記(A1)で表される4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートを0.8重量%含む安息香酸エチル溶液(正孔注入層形成用組成物)を調製した。
【0275】
【化22】

【0276】
この正孔注入層形成用組成物を、下記に示す成膜条件でスピンコート法により上記ITO基板上に成膜し、さらに下記に示すベーク条件にてベークすることにより、膜厚42nmの正孔注入層3を得た。
【0277】
<成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 大気雰囲気下
ベーク条件 大気雰囲気下,230℃,1時間
【0278】
その後、下記(H1)で表される正孔輸送性高分子化合物の1重量%シクロヘキシルベンゼン溶液(正孔輸送層形成用組成物)を調製し、これを下記に示す成膜条件で正孔注入層3上にスピンコートにて成膜し、ベークによる架橋処理を行うことで、膜厚15nmの正孔輸送層4を形成した。
【0279】
【化23】

【0280】
<成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 120秒
スピンコート雰囲気 窒素雰囲気下
ベーク条件 窒素雰囲気下,230℃,1時間
【0281】
次に、発光層5を形成するにあたり、以下に示す発光材料(C6)および(C7)と、電荷輸送材料(C1)および(C2)を用いて、下記に示す組成の発光層形成用組成物を調製した。
【0282】
【化24】

【0283】
<発光層形成用組成物組成>
溶剤 シクロヘキシルベンゼン
成分濃度 C1:1.25重量%
C2:3.75重量%
C6:0.25重量%
C7:0.35重量%
【0284】
その後、この発光層形成用組成物を、0.2μmの細孔を有するメンブランフィルター(GEヘルスケア社製)にて濾過した後、褐色びん容器に入れると共にびん内にNガスを充填させた後、気温18〜25℃、相対湿度30〜60%の大気雰囲気下(大気圧)にて12時間経過させた。
【0285】
12時間経過させた発光層形成用組成物を、マイクロピペットを用いて抜き取り、以下に示す条件で、正孔輸送層4上にスピンコート法にて、膜厚58nmの発光層5を形成させた。なお、ここで、上述の「12時間経過」とは、発光層形成用組成物を濾過した時点からマイクロピペットで吸い始めた時点までの時間である。
【0286】
<成膜条件>
スピナ回転数 2000rpm
スピナ回転時間 120秒
スピンコート雰囲気 窒素雰囲気下
ベーク条件 窒素雰囲気下,130℃,10分
【0287】
次に、正孔注入層3、正孔輸送層4および発光層5を湿式成膜した基板を真空蒸着装置内に搬入し、粗排気を行った。この後、装置内の真空度が3.0×10−4Pa以下になるまでクライオポンプを用いて排気した後、発光層5の上に、下記構造式(C9)で表される化合物を真空蒸着法により、蒸着させることにより、膜厚10nmの正孔阻止層6を得た。ここで、蒸着時の真空度は2.2×10−4Pa以下を保ち、蒸着速度は0.6〜1.2Å/秒の範囲で制御した。
【0288】
【化25】

【0289】
次いで、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウムを加熱することにより、正孔阻止層6の上に蒸着させることにより、膜厚20nmの電子輸送層7を成膜した。ここで、蒸着時の真空度は2.2×10−4Pa以下に保ち、蒸着速度は0.7〜1.3Å/秒の範囲で制御した。
【0290】
ここで、電子輸送層7まで成膜させた基板を、電子輸送層7までを蒸着させた有機層蒸着チャンバーから金属蒸着チャンバーへと搬送した。そして、電子輸送層7まで成膜させた基板の上に、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプと直交するように密着させて設置し、有機層蒸着時と同様にして装置内の真空度が1.1×10−4Pa以下になるまで排気した。
【0291】
その後、真空度を1.0×10−4Pa以下に保った状態で、電子輸送層7の上に、モリブデンボートを用いて、フッ化リチウム(LiF)を蒸着速度0.07〜0.15Å/秒の範囲で制御して、0.5nmの膜厚で成膜し、電子注入層8を形成させた。
次に、真空度を2.0×10−4Paに保った状態で、同様にして、アルミニウムをモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.6〜10.0Å/秒の範囲で制御して、膜厚80nmの膜厚で成膜し、陰極9を形成させた。ここで、この2層型陰極の蒸着時の基板温度は、室温に保持した。
【0292】
引き続き、素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。
窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、光硬化性樹脂30Y−437(スリーボンド社製)を1mmの幅で塗布した。ガラス板の中央部に、水分ゲッターシート(ダイニック社製)を設置した。この上に、陰極の形成まで終了した上述の基板を搬入し、蒸着面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
【0293】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
【0294】
{実施例2}
実施例1において、発光層5を形成するにあたり、前記発光材料(C6)と、以下に示す電荷輸送材料(C3)および(C4)を用いて下記に示す組成で調製した発光層形成用組成物を用いた他は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
【0295】
【化26】

【0296】
<発光層形成用組成物組成>
溶剤 シクロヘキシルベンゼン
成分濃度 C3:1.275重量%
C4:3.825重量%
C6:0.51重量%
【0297】
{実施例3}
実施例1において、発光層5を形成するにあたり、以下に示す発光材料(C8)と、以下に示す電荷輸送材料(C5)を用いて下記に示す組成で調製した発光層形成用組成物を用い、湿式成膜時のベーク時間を20分として、膜厚を50nmの発光層を得た他は、実施例1と同様にして、素子を作製した。
【0298】
【化27】

【0299】
<発光層形成用組成物組成>
溶剤 シクロヘキシルベンゼン
成分濃度 C5:3.3重量%
C8:0.33重量%
【0300】
{実施例4}
実施例1において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を24時間に変更した他は、実施例1と同様にして素子を作製した。
【0301】
{実施例5}
実施例2において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を24時間に変更した他は、実施例2と同様にして素子を作製した。
【0302】
{実施例6}
実施例3において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を24時間に変更した他は、実施例3と同様にして素子を作製した。
【0303】
{実施例7}
実施例1において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を36時間に変更した他は、実施例1と同様にして素子を作製した。
【0304】
{実施例8}
実施例2において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を36時間に変更した他は、実施例2と同様にして素子を作製した。
【0305】
{実施例9}
実施例3において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を36時間に変更した他は、実施例3と同様にして素子を作製した。
【0306】
{実施例10}
実施例1において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を48時間に変更した他は、実施例1と同様にして素子を作製した。
【0307】
{実施例11}
実施例2において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を48時間に変更した他は、実施例2と同様にして素子を作製した。
【0308】
{実施例12}
実施例3において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を48時間に変更した他は、実施例3と同様にして素子を作製した。
【0309】
{実施例13}
実施例1において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を31日間に変更した他は、実施例1と同様にして素子を作製した。
【0310】
{実施例14}
実施例2において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を31日間に変更した他は、実施例2と同様にして素子を作製した。
【0311】
{実施例15}
実施例3において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を31日間に変更した他は、実施例3と同様にして素子を作製した。
【0312】
{比較例1}
実施例1において、発光層形成用組成物を濾過した後経過期間を設けずに(10〜20分後に)湿式成膜を行った他は、実施例1と同様にして素子を作製した。
【0313】
{比較例2}
実施例2において、発光層形成用組成物を濾過した後経過期間を設けずに(10〜20分後に)湿式成膜を行った他は、実施例2と同様にして素子を作製した。
【0314】
{比較例3}
実施例3において、発光層形成用組成物を濾過した後経過期間を設けずに(10〜20分後に)湿式成膜を行った他は、実施例3と同様にして素子を作製した。
【0315】
{比較例4}
実施例1において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を34日間に変更し、更に湿式成膜直前に再度濾過(濾過後10〜20分後に湿式成膜)を行った他は、実施例1と同様にして素子を作製した。
【0316】
{比較例5}
実施例2において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を34日間に変更し、更に湿式成膜直前に再度濾過(濾過後10〜20分後に湿式成膜)を行った他は、実施例2と同様にして素子を作製した。
【0317】
{比較例6}
実施例3において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を31日間に変更し、更に湿式成膜直前に再度濾過(濾過後10〜20分後に湿式成膜)を行った他は、実施例3と同様にして素子を作製した。
【0318】
[素子特性の評価]
実施例1〜15並びに比較例1〜6において作製した有機電界発光素子について、それぞれ直流駆動試験を行い、初期輝度を調べた。また、1000cd/mにおける輝度電流効率(cd/A)を調べ、それぞれ比較例1〜3における輝度電流効率に対する差(以下「輝度電流効率差」と称す。)を求めた。輝度が、初期輝度から70%低下するまでの駆動寿命を測定し、それぞれ比較例1〜3の駆動寿命を100とした場合の相対値(以下「相対駆動寿命」と称す。)を求めた。結果を表1〜3に示す。
【0319】
【表1】

【0320】
【表2】

【0321】
【表3】

【0322】
{実施例16}
実施例1と同様にして素子を作製した。
【0323】
{実施例17}
実施例2と同様にして素子を作製した。
【0324】
{実施例18}
実施例3において、発光層の膜厚を40nmにした他は、実施例3と同様にして素子を作製した。
【0325】
{実施例19}
実施例16において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を24時間に変更した他は、実施例16と同様にして素子を作製した。
【0326】
{実施例20}
実施例17において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を24時間に変更した他は、実施例17と同様にして素子を作製した。
【0327】
{実施例21}
実施例18において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を24時間に変更した他は、実施例18と同様にして素子を作製した。
【0328】
{実施例22}
実施例16において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を48時間に変更した他は、実施例16と同様にして素子を作製した。
【0329】
{実施例23}
実施例17において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を48時間に変更した他は、実施例17と同様にして素子を作製した。
【0330】
{実施例24}
実施例18において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を48時間に変更した他は、実施例18と同様にして素子を作製した。
【0331】
{実施例25}
実施例16において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を7日間に変更した他は、実施例16と同様にして素子を作製した。
【0332】
{実施例26}
実施例17において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を7日間に変更した他は、実施例17と同様にして素子を作製した。
【0333】
{実施例27}
実施例18において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を7日間に変更した他は、実施例18と同様にして素子を作製した。
【0334】
{実施例28}
実施例16において、マイクロピペットを用いて抜き取った12時間経過させた発光層形成用組成物を、孔径0.2μmのメンブランフィルター(ミリポア社製)が付いたシリンジに入れ、このシリンジから直接、正孔輸送層4上に滴下してスピンコート法にて、発光層5を形成した他は、実施例16と同様にして素子を作製した。
【0335】
{実施例29}
実施例28において、発光層5を形成するにあたり、前記発光材料(C6)と、前記電荷輸送材料(C3)および(C4)を用いて上記実施例2に示した組成で調製した発光層形成用組成物を用いた他は、実施例28と同様にして、素子を作製した。
【0336】
{実施例30}
実施例28において、発光層5を形成するにあたり、以下に示す発光材料(C8)と、以下に示す電荷輸送材料(C5)を用いて上記実施例3に示した組成で調製した発光層形成用組成物を用い、湿式成膜時のベーク時間を20分として、膜厚を40nmの発光層を得た他は、実施例28と同様にして、素子を作製した。
【0337】
{実施例31}
実施例28において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を24時間に変更した他は、実施例28と同様にして素子を作製した。
【0338】
{実施例32}
実施例29において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を24時間に変更した他は、実施例29と同様にして素子を作製した。
【0339】
{実施例33}
実施例30において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を24時間に変更した他は、実施例30と同様にして素子を作製した。
【0340】
{実施例34}
実施例28において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を48時間に変更した他は、実施例28と同様にして素子を作製した。
【0341】
{実施例35}
実施例29において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を48時間に変更した他は、実施例29と同様にして素子を作製した。
【0342】
{実施例36}
実施例30において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を48時間に変更した他は、実施例30と同様にして素子を作製した。
【0343】
{実施例37}
実施例28において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を7日間に変更した他は、実施例28と同様にして素子を作製した。
【0344】
{実施例38}
実施例29において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を7日間に変更した他は、実施例29と同様にして素子を作製した。
【0345】
{実施例39}
実施例30において、発光層形成用組成物の濾過後の経過時間を7日間に変更した他は、実施例30と同様にして素子を作製した。
【0346】
{比較例7}
実施例16において、発光層形成用組成物を濾過した後経過期間を設けずに(10〜20分後に)湿式成膜を行った他は、実施例16と同様にして素子を作製した。
【0347】
{比較例8}
実施例17において、発光層形成用組成物を濾過した後経過期間を設けずに(10〜20分後に)湿式成膜を行った他は、実施例17と同様にして素子を作製した。
【0348】
{比較例9}
実施例18において、発光層形成用組成物を濾過した後経過期間を設けずに(10〜20分後に)湿式成膜を行った他は、実施例18と同様にして素子を作製した。
【0349】
{比較例10}
実施例28において、発光層形成用組成物を濾過した後経過期間を設けずに(10〜20分後に)湿式成膜を行った他は、実施例28と同様にして素子を作製した。
【0350】
{比較例11}
実施例29において、発光層形成用組成物を濾過した後経過期間を設けずに(10〜20分後に)湿式成膜を行った他は、実施例29と同様にして素子を作製した。
【0351】
{比較例12}
実施例30において、発光層形成用組成物を濾過した後経過期間を設けずに(10〜20分後に)湿式成膜を行った他は、実施例30と同様にして素子を作製した。
【0352】
{比較例13}
実施例16において、発光層形成用組成物を濾過してから7日間経過させた後、孔径0.2μmのメンブランフィルター(GEヘルスケア社製)により再濾過を行ってから経過期間を設けずに(10〜20分後に)湿式成膜を行った他は、実施例16と同様にして素子を作製した。
【0353】
{比較例14}
実施例17において、発光層形成用組成物を濾過してから7日間経過させた後、孔径0.2μmのメンブランフィルター(GEヘルスケア社製)により再濾過を行ってから経過期間を設けずに(10〜20分後に)湿式成膜を行った他は、実施例17と同様にして素子を作製した。
【0354】
{比較例15}
実施例18において、発光層形成用組成物を濾過してから7日間経過させた後、孔径0.2μmのメンブランフィルター(GEヘルスケア社製)により再濾過を行ってから経過期間を設けずに(10〜20分後に)湿式成膜を行った他は、実施例18と同様にして素子を作製した。
【0355】
{比較例16}
実施例28において、発光層形成用組成物を濾過してから7日間経過させた後、孔径0.2μmのメンブランフィルター(GEヘルスケア社製)により再濾過を行ってから経過期間を設けずに(10〜20分後に)湿式成膜を行った他は、実施例28と同様にして素子を作製した。
【0356】
{比較例17}
実施例29において、発光層形成用組成物を濾過してから7日間経過させた後、孔径0.2μmのメンブランフィルター(GEヘルスケア社製)により再濾過を行ってから経過期間を設けずに(10〜20分後に)湿式成膜を行った他は、実施例29と同様にして素子を作製した。
【0357】
{比較例18}
実施例30において、発光層形成用組成物を濾過してから7日間経過させた後、孔径0.2μmのメンブランフィルター(GEヘルスケア社製)により再濾過を行ってから経過期間を設けずに(10〜20分後に)湿式成膜を行った他は、実施例30と同様にして素子を作製した。
【0358】
[素子特性の評価]
実施例16〜39並びに比較例7〜18において作製した有機電界発光素子について、それぞれ直流駆動試験を行った。直流駆動試験は、実施例16、19、22、25、28、31、34、37及び比較例7、10、13、16については、初期輝度5000cd/mで、実施例17、20、23、26、29、32、35、38及び比較例8、11、14、17については、初期輝度8000cd/mで、実施例18、21、24、27、30、33、36、39及び比較例9、12、15、18については、初期輝度3000cd/mで行った。48時間後の輝度について、実施例16〜39並びに比較例13〜18の比較例7〜12に対する増減率を算出した。
結果を表4〜6に示す。
【0359】
【表4】

【0360】
【表5】

【0361】
【表6】

【0362】
表1〜6より、本発明の有機電界発光素子は、電流効率が高く、また、駆動寿命が長いことが分かる。
【符号の説明】
【0363】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
10 有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機電界発光素子用組成物の製造方法であって、有機電界発光素子材料及び溶剤を含有する液を濾過する濾過工程を有し、該組成物は、該濾過工程後の液を8時間以上経過させる経過工程を経た後に得られ、有機電界発光素子の有機層の湿式成膜に用いられることを特徴とする、有機電界発光素子用組成物の製造方法。
【請求項2】
前記有機電界発光素子材料の分子量が、100以上、10000以下であることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子用組成物の製造方法。
【請求項3】
前記有機電界発光素子材料が、発光層材料であることを特徴とする、請求項1または2に記載の有機電界発光素子用組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の有機電界発光素子用組成物の製造方法により製造されたことを特徴とする、有機電界発光素子用組成物。
【請求項5】
陽極および陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子の製造方法であって、該有機層を、有機電界発光素子材料及び溶剤を含有する液を濾過した後8時間以上経過した後に得られる組成物を、湿式成膜することにより形成することを特徴とする、有機電界発光素子の製造方法。
【請求項6】
陽極および陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子の製造方法であって、該有機層を、請求項4に記載の有機電界発光素子用組成物を湿式成膜することにより形成することを特徴とする、有機電界発光素子の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の有機電界発光素子の製造方法により製造されたことを特徴とする、有機電界発光素子。
【請求項8】
請求項7に記載の有機電界発光素子を有することを特徴とする、有機EL表示装置。
【請求項9】
請求項7に記載の有機電界発光素子を有することを特徴とする、有機EL照明。

【図1】
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【公開番号】特開2011−233516(P2011−233516A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83776(P2011−83776)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】