説明

有機顔料粒子又は無機顔料粒子と有機ナノ粒子とから成るハイブリッド粒子の水性分散液、並びにその製造方法

無機顔料粒子又は有機顔料粒子と、顔料粒子の表面に付着した有機ナノ粒子とから成るハイブリッド粒子の水性分散液であって、ナノ粒子が2〜200ナノメートルの粒径を有する水性分散液。好ましくは、ナノ粒子は、少なくとも120℃のガラス転移温度を有し、且つビニルモノマーと、無水マレイン酸及び無水マレイン酸の誘導体を含む混合物とのコポリマーを含む。このような水性分散液の製造方法において、ビニルモノマーと無水マレイン酸とのコポリマーが、一般式R−NH(式中、RはH、炭素数1〜18のアルキル、又はアリールである)を有する化合物を用いて、且つ1つ以上の無機顔料粒子の存在下において水中で処理され、無水マレイン酸基の少なくとも35%がイミド基に転換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機顔料粒子又は無機顔料粒子と、顔料粒子の表面に付着した有機ナノ粒子とから成るハイブリッド粒子の水性分散液であって、ナノ粒子が2〜200ナノメートルの粒径を有する水性分散液に関する。さらに、本発明は、紙及び類似の材料を被覆するコーティング組成物のための、このような分散液の製造方法、並びに紙及び類似の材料を被覆する際の当該組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第1422248号において、ナノ粒子を含有する水性分散液が記載されているが、この水性分散液は紙サイジング組成物(paper sizing composition)として用いられ、特に、紙等の表面特性を改良することを目的としている。
【0003】
しかしながら、例えば紙のような多孔性基材上への適用に関しては、これらのナノ粒子は、特にブレード又はロール機の高圧下での適用中に基材の孔中で消失する傾向を有するので、非常に有効であるというわけではない。ナノ粒子と十分なサイズの担体(普通は当該技術分野では顔料と呼ばれる)との混合では、ナノ粒子が依然として基材の孔中で消失する傾向を有するので、いかなる実質的な改良も与えなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら上記の問題を回避することができるか、又は少なくともその結果を改良することができる水性分散液を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載の水性分散液により達成され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
ナノ粒子をより大きな顔料粒子に付着させることにより、かかるサイズを有する顔料粒子が孔中で消失せず、しかし基材の表面レベル近くに保たれるので、ナノ粒子が基材の表面レベルで保持されるということが得られる。
【0007】
ナノ粒子が顔料粒子の表面に付着されるこのような水性分散液を得る方法は、このような顔料粒子の存在下でナノ粒子を調製することから成る。
【0008】
より小さな粒子は、より大きな粒子に広範囲で物理的又は化学的に付着する。より大きな粒子の存在下で製造されるナノ粒子は、このようなものとして(より大きな粒子の非存在下で同様に)製造される場合より小さい平均サイズを有するということが判明している。その結果、ハイブリッド粒子は、ナノ粒子と、より大きな粒子との配合物よりもはるかに良好に、水中での極良好な安定性を有する。さらに、ハイブリッド粒子は、匹敵する物質の配合組成物と比較した場合、結合剤がほとんど必要とされないコーティング組成物中でアルミニウムのような基材への良好な接着を示し、それらは適用後にダスト生成をほとんど引き起こさず、且つ適用中にロール機上に沈殿をほとんど生じない。ハイブリッド粒子は、ナノ粒子の疎水性と同様である疎水性を有する一方、配合物質に関しては、疎水性は配合物質の平均より大きい。ナノ粒子としてのスチレンマレイミドコポリマー(SMI)の場合、その高疎水性は、結果的に生じる紙の耐水性に影響を及ぼすことなく、その処方物中の高率の再パルプ化可能結合剤(repulpable binder)を許容する。さらに、結果的に生じるコーティングは、より良好な光沢度及びより低い摩擦係数を有する。
【0009】
本発明によるハイブリッド粒子は、R−NH化合物(RはH、炭素数1〜18のアルキル、又はアリールである)を添加することによってビニルモノマーとの無水マレイン酸のコポリマーを水中に溶解し、その結果生じた混合物を大きな粒子の存在下で加熱して、イミドを作ることにより得ることができる。形成されたイミドは疎水性であり、そして高分子粒子は大きな粒子上に沈殿する。
【0010】
本発明の目的は、より良好な品質の分散液が得られる方法を提供することである。この目的は、少なくとも35%、好ましくは少なくとも50%のイミド化が得られるまで、1つ以上の有機顔料又は無機顔料の存在下で反応が行われ、pHが好ましくは5〜9の値に設定され、温度が好ましくは110〜180℃に設定される本発明により達成される。
【0011】
剪断荷重及び粘弾性は、担体顔料が添加される場合、イミド化段階中は非常に低い。担体上に沈殿されるSMI粒子は、2〜200ナノメートルの間で変化するサイズを有するが、ほとんどは2〜50ナノメートルであり、そして、担体顔料上で極端に単一分散性の挙動を有する。担体顔料は常にSMIより大きく、そして実際上の理由で、500ナノメートル〜約100ミクロンに限定される。
【0012】
反応は好ましくは5.5〜8のpHで行われ、最良の結果は5.5〜7のpHで得られる。
【0013】
反応が行われる温度に関しては、120〜160℃が選択され、最良の結果は140〜150℃で得られる。
【0014】
20%のイミド化度を有する物質は既にいくつかの結果を示すが、化合物R−NHの疎水性特質によって、反応は、少なくとも35%のイミド化度が達成されるまで好ましくは継続され、最良の結果は80%以上のイミド化度で得られる。
【0015】
本発明は、原則として、純スチレン−マレイミドのナノ粒子が紙等のような基材に適用され得ることに伴う困難性に関するが、この場合、ナノ粒子は、基材の初期多孔度よりも常に小さい。これらのナノ粒子を、別のベース顔料上でのそれらの形成中に沈殿させることにより、最適な程度に表面上にこれらのナノ粒子を保持する可能性が生じる一方、紙の光沢、印刷可能性及び色再現性は明らかに改良される。同時に、同一表面を被覆するには70%より少ないSMIが必要とされるため、経費は低減される。最後に、ナノ粒子は有機又は無機基材に適用され、粒子はそれらの非皮膜形成特性を保有する。アルミ箔のような非常に平滑で密な構造上でも、肯定的な結果が達成されている。約6グラム/mの低グラム重量を有するアルミ箔の場合、ピンホールの数は、完全排除まで分散液を適用することにより、実質的に低減され得る。後者は、材料を包装する場合のアルミ箔の消費のかなりの節約を意味するが、それは、少なくとも12グラム/mのグラム重量を有するアルミ箔が用いられた場合、気密性(steam tightness)という同一特性が得られるだけであるためである。顔料という用語は、本明細書で用いられる場合、充填剤物質を意味するために製紙業界で普通に用いられる用語であり、そしてその意味は着色剤そのものに限定されない。
【0016】
本発明の方法により得られる分散液は、被覆(コーター)及び非被覆(フィルムプレス)事務用/コピー用紙(コート紙及び非コート紙)並びに光沢層も有し得るオフセット紙の両方に適用される。紙への分散液の適用後、光沢作用を紙に提供するためにカレンダー加工が用いられる。従来製造される紙と同一の光沢を得るための通路の圧力及び数はより低く、その結果は、表面の損傷がほとんどなく、紙の強度がより良好に保持されるというものである。これはまた、インクの不均質まだら吸収の可能性を無くす。本発明の別の目的は、紙コーティングに適した分散液であって、その粒子はカレンダー加工中はいかなる皮膜形成も示さないが、その構造は保持される分散液である。これは、特にプリント後に、光沢に直接的影響を及ぼす。
【0017】
適切な顔料は、有機又は無機のいずれであってもよい。無機顔料の例としては、カーボンブラック及び酸化チタンが挙げられる。有機顔料の例としては、フタロシアニン、アントラキノン、ペリレン、カルバゾール、モノアゾベンズイミダゾロン及びジアゾベンズイミダゾロン、イソインドリノン、モノアゾナフトール(monoazonaphthosl)、ダイアリライドピラゾロン(diarylidepyrazolones)、ローダミン、インディゴイド、キナクリドン、ジアゾピラントロン、ジニトラニリン、ピラゾロン、ジアニシジン、ピラントロン、テトラクロロイソインドリノン、ジオキサジン、モノアゾアクリリド、及びアントラピリミジンが挙げられる。有機顔料の入手可能(commercial)な例としては、Society of Dyers and Colourists(Yorkshire, England)のカラーインデックス番号1〜8で記載されるものが挙げられ、これらには、例えばピグメントブルー1、ピグメントブルー15、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー15:6、ピグメントブルー16、ピグメントブルー24、及びピグメントブルー60(青色顔料);ピグメントブラウン5、ピグメントブラウン23、及びピグメントブラウン25(茶色顔料);ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー16、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー24、ピグメントイエロー65、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー108、ピグメントイエロー109、ピグメントイエロー110、5ピグメントイエロー113、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー129、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー156、及びピグメントイエロー175(黄色顔料);ピグメントグリーン1、ピグメントグリーン7、ピグメントグリーン10、及びピグメントグリーン36(緑色顔料);ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ15、ピグメントオレンジ16、ピグメントオレンジ31、ピグメントオレンジ34、ピグメントオレンジ36、ピグメントオレンジ43、ピグメントオレンジ48、ピグメントオレンジ51、ピグメントオレンジ60、及びピグメントオレンジ61(橙色顔料);ピグメントレッド4、ピグメントレッド5、ピグメントレッド7、ピグメントレッド9、ピグメントレッド22、ピグメントレッド23、ピグメントレッド48、ピグメントレッド48:2、ピグメントレッド49、ピグメントレッド112、ピグメントレッド122、ピグメントレッド123、ピグメントレッド149、ピグメントレッド166、ピグメントレッド168、ピグメントレッド170、ピグメントレッド177、ピグメント15レッド179、ピグメントレッド190、ピグメントレッド202、ピグメントレッド206、ピグメントレッド207、及びピグメントレッド224(赤色顔料);ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23、ピグメントバイオレット37、ピグメントバイオレット32、及びピグメントバイオレット42(紫色顔料);ピグメントブラック6又は7(黒色顔料)がある。
【0018】
有機顔料は、カオリン、タルク、マイカ、クレイ、Al(OH)、ベントナイト、ゼオライト、ガラスパール、CaCO、TiO、セペオライト(sepeolites)、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化鉄又はそれらの混合物から好ましくは選択される。
【0019】
これにより、紙に適用後に、コート紙のカレンダー加工中に皮膜形成を示さず、その粒子構造が保持される分散液が生産される。非常に高い固体含量が達成され、65%を超えることさえある。
【0020】
本発明による方法において、初期ポリマーは一般式R−NH(式中、RはH、炭素数1〜18のアルキル、及びアリールから成る群から選択される)を有する化合物の水溶液中に溶解される。Rは、好ましくは水素である。
【0021】
初期ポリマーは、顔料又は顔料の混合物の存在下でも溶解される。イミド化反応中、分散助剤が添加され得る。このような分散助剤は、例えばスチレン無水マレイン酸コポリマーのアルカリ塩であり得る。
【0022】
分散液が調製される初期ポリマーは、MZAモノマー単位及びビニルモノマー、好ましくはビニル芳香族モノマー単位を含有する。適切なビニル芳香族モノマー単位は、例えばスチレン及びアルファメチルスチレンである。初期ポリマーは、モノマー単位としてスチレンを好ましくは含有する。その他のビニルモノマーは、アクリレート、メタクリレート、エチレン、プロピレン、ビニルカルボネート、ビニルアセテート及びそれらの混合物であり得る。
【0023】
ビニル芳香族モノマー単位とMAAモノマー単位とを含有するコポリマーは、既知の方法により調製され得る。MAAモノマー単位とスチレンとのコポリマーの調製のためのこのような方法の一例は、Hanson and Zimmerman, Ind. Eng. Chem., vol. 49, no. 11 (1957) pp. 1803-1807により記載されている。初期ポリマーは、22〜50mol%の無水マレイン酸モノマー単位及び50〜78mol%のスチレンモノマー単位を好ましくは含有する。したがって、分散液は、120℃を上回るガラス転移温度を有するポリマーから得ることができ、イミド化は比較的迅速に起こる。
【0024】
初期ポリマーの分子量は、広範囲内で変わり得る。初期ポリマーは、10,000〜300,000kg/kmolの重量平均分子量を好ましくは有する。さらに好ましくは、重量平均分子量は60,000〜150,000kg/kmolである。このようにして、比較的高い固体含量を有する分散液が調製され得る。
【0025】
本発明による方法では、初期ポリマーは、例えば、NH又はアミンの水溶液と一緒にオートクレーブ中に導入されることができ、その後、温度は少なくとも140℃に上げられる。無水マレイン酸(MAA)モノマー単位とNHとのモル比又はMAAとアミンとのモル比は一般的には1:08〜1:5であるが、圧力は水溶液が沸騰しないほどに高い。
【0026】
初期ポリマー中のMAAモノマー単位をイミド化するために必要とされる時間は、選択される温度、反応器、初期量等によってほぼ完全に変わり、そして実験的に容易に確定され得る。イミド化反応は、95℃より低い温度に下げることにより、停止されるか又は少なくとも実質的に遅延され得る。
【0027】
当該方法の好ましい一実施形態では温度は150〜190℃であるが、それは、この温度で、非常に明確に定義された分散液が、特性及び組成に関して、高再現性で獲得され得るからである。この無水マレイン酸(MAA)モノマー単位とNHとのモル比又はMAAとアミンとのモル比は、不快な状態(taste:美観)を生じる分散液を伴わずに最高度の転化を生じるので、好ましくは約1:1である。アンモニア又は脂肪族アミンが好ましくは用いられ、この脂肪族アミンは第一級アミンである。適切なアミンの例は、ブチルアミン及びステアリルアミンである。本発明による方法の一つの利点は、当該方法により65重量%を上回る固体含量を有する分散液が作られ得る点である。
【0028】
本発明は、無水マレイン酸(MAA)モノマー単位及びビニル芳香族モノマー単位を含有するハイブリッド顔料ポリマーの水性分散液であって、MAAがほぼ完全にイミド化され、そして分散液が65重量%を上回る固体含量を有することを特徴とする水性分散液にも関する。
【0029】
反応開始時の顔料/SMAの割合は、SMIへの転化後、理想的には30部のSMAに対して70部の顔料である。これらのハイブリッド顔料−ポリマー分散液に関する最大限度は、1部のSMIに対して約99部の無機顔料であり、そして最小限度は99部のSMIに対して1部の無機顔料である。
【0030】
水性分散液は、ビニル芳香族モノマー単位がスチレンであり、そしてガラス転移温度が160℃を超えるポリマーを好ましくは有する。
【0031】
本発明による分散液のさらなる利点は、分散液が比較的狭い粒径分布を有するという点である。
【0032】
特に、本発明は、本発明による分散液を含有するサイズ紙及び着色フィルムプレス用紙のための組成物に関する。
【0033】
紙サイズ処理のための組成物は、本発明による方法により得ることができる分散液だけでなく、1つ以上の通常の添加剤も含有する。本発明による組成物は、組成物が添加剤としてラテックス及びデンプンをともに含有し得るということを好ましくは特徴とする。他の結合剤、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ハイブロン(DSM(the Netherlands)により販売されるような製品名)及びタンパク質も同様に用いられ得る。
【0034】
組成物を含有する分散液の量は、好ましくは、分散液中の顔料−ポリマーの量、即ちハイブリッド顔料−ポリマー粒子の乾燥重量が、他の通常の添加剤の乾燥重量に関連して0.2〜90重量%であるような量である。より好ましくは、紙サイズ処理及びコーティングのための組成物は、デンプン又はラテックスの乾燥重量に関連して80〜90重量%のハイブリッド顔料−ポリマー粒子を含有する。例えば、組成物は、水中の他の添加剤の溶液に、特定量の本発明の分散液を添加することにより調製され得る。
【0035】
ここで実施例を参照しながら本発明を説明するが、本発明はそれらに限定されない。
【実施例】
【0036】
[実施例及び比較実験]
特性化方法
(光子相関分光法(PCS))
ポリマー粒子の平均流体力学的径を、光子相関分光法(PCS)により確定した。ALV−レーザー(Vertriebsgesellschaft mbH, Langen, Germany)からのユニット(Coherent Innova 90イオン−アルゴンレーザー;青線を用いた(488nm)、出力50mW)を用いて、測定を行った。ALV/SP−86#053レーザーゴニオメーター(光子増倍管約1700Vの供給電圧、測定角度90°)に適合されたThorn-Emiからの光電子増倍管によってシグナルを収集した。ウインドウズ・ソフトウエア用のALV5000/Eを装備したALV5000マルチプルTauデジタル相関器によってシグナルを処理した。キュムラント分析の方法を用いて測定データを処理し、そしてストークス・アインシュタイン関係式を用いて、測定された拡散係数から流体力学的半径を確定する。
【0037】
PCS測定のために、0.2μmの直径を有するフィルター開口部を有するフィルターを通して予め濾過された脱イオン水中で試料を希釈した。当該実施形態による方法の実施後に得られた試料を500倍に希釈し(固体又はストックの約0.04重量%の濃度に)、そして比較実験を行った後に得られた試料を50倍に希釈して、固体の約0.4重量%とした。
【0038】
無塵水を用いて測定前に測定細胞をフラッシュし(flushed:洗浄)、次に測定されるべき試料溶液で3回フラッシュした。比較実験から得られる多数の試料は、水中で不安定であった。これらの試料を安定化するために、pH9の0.02(チトリゾール、Merck)又は10−3MのNaOH水溶液の緩衝液を用いた。PCS測定の結果を、異なる表に示す。
【0039】
(固体含量)
Mettler LP16/PM600型の赤外線乾燥/計量ユニットによって固体含量(SC)を求めた。反応後に残存する任意のポリマーが存在した場合、濾紙(MN640m中程度の滞留及び濾過速度(Macherey-Nagel, Germany))によりポリマーを濾して取った後に固体含量を確定した。必要な場合は、この前に、250μm幅のスクリーン穴を有する金属スクリーンにより濾過を行った。次に、その結果生じる濾液の固体含量(光沢外観)を、当業者に既知の方法により確定した。
【0040】
(pH測定)
Knick 752 CI、no.051489pHメーターでpH値を測定した。pHメーターを、それぞれ4.00(クエン酸塩/HCl緩衝液)、7.00及び9.00のpHを有するMerchからの緩衝液を用いて20℃で検量し、ガス電極(3M HCl)を備え付けた。試料のpHを20℃で確定した。比較実験からの試料を、固体含量がより高く、それゆえ粘度も高い場合には、約10重量%の固体含量まで希釈した。分散液は希釈されなかった。
【0041】
(イミド化度の確定)
水性分散液のイミド化度は、例えば、吸収強度を、完全イミド化及び完全脱イミド化した参照化合物に関して測定された同一吸収の強度に関連付けることにより、ラマンFTIR分光法により測定され得る。算定が行われる前に、シグナルを、ポリマー鎖中の芳香族酸塩環(aromate rings)から得られる吸収シグナルに標準化した。行われる測定において、以下の吸収帯域を調べた:
イミドの−C=O帯域(約1768cm−1、比較的強いシグナル)
無水物の−C=O帯域(約1860cm−1
酸基の−C=O帯域(約1715cm−1、比較的弱いシグナル)。
26mol%無水マレイン酸及び74mol%スチレンから製造されるポリマーのアンモニア水溶液を参照試料として用いたが、この場合、二軸スクリューミニ押出器中で、240℃で5分間、100回転/分の速度で、スチレンは、50℃でNH:MAAを3:1のモル比で用いて調製し(イミド基なし)、そしてイミド化SMA粉末は、2gのSMA(28重量%MAA;72重量%のスチレン;モル重量110,0000kg/kmol)を0.50gの尿素と混合することにより調製した。イミド化SMA粉末のガラス転移温度は、193℃であった。ラマン吸収から算定されたイミド化度は、異なる分散液の調製において反応混合物に添加されたアンモニアの量から算定され得るイミド化度に密接に相関した。
【0042】
[実施例I(70部のカオリン及び30部のSMA)50%分散液]
タービン撹拌機が配置された1リットルの二重壁油加熱反応器中で、442gの65%カオリンスラリー(SPS型(IMERIS))を、補給水と一緒に添加し、次に、132gの粉砕SMAを補充して反応器をいっぱいにした。SMAはMAA含量26%、分子量80,000kg/kmolで、これに、MAA:NH比1:1でNHの25%溶液を添加した。温度を160℃にして、撹拌機速度を200rpmとする。反応器中の圧力は、約6barである。4時間後、約61重量%の固体含量を有するハイブリッド顔料ポリマー分散液が、沈降粒子15〜30nmで形成される。これらの粒子中のMAAは、ほぼ完全にイミド化される。ハイブリッドポリマー顔料の最外部層のTgは185℃〜200℃、ブルックフィールド粘度は23℃、100rpmスピンドルで5〜380mPa/秒、pHは5.8である。
【0043】
図1は、粒子の視覚化を示す。紙表面に高分散が存在する(EMS 75000×)。90g/m原紙上にフィルムプレス適用後、カオリンプレートは完全に覆われ、そして沈降SMIナノ粒子で被覆される。
【0044】
[実施例II(70部のAlOH及び30部のSMA)50%分散液]
タービン撹拌機が配置された1リットルの二重壁油加熱反応器中で、203gの65%カオリンスラリー(SPS型(IMERIS))を、203gのAl(OH)を伴う補給水と一緒に添加し、次に、122gの粉砕SMAを補充して反応器をいっぱいにした。SMAはMAA含量26%、分子量80,000kg/kmolで、これに、MAA:NH比1:1でNHの25%溶液を添加した。さらに、SMAのカリウム塩が、分子量1000kg/kmol、MAA含量48%の分散剤として添加され得る(この場合は添加されず)。K塩:SMA比は0.03:1である。温度を160℃にして、撹拌機速度を200rpmとする。反応器中の圧力は、約6barである。4時間後、約52重量%の固体含量を有するハイブリッド顔料ポリマー分散液が、沈降粒子10〜25nmで形成される。これらの粒子中のMAAは、ほぼ完全にイミド化される。ハイブリッドポリマー顔料の最外部層のTgは185℃〜200℃、ブルックフィールド粘度は23℃、100rpmスピンドルで5〜60mPa/秒、pHは6.11である。
【0045】
これらの粒子中のMAAは、ほぼ完全にイミド化される(99%)。ポリマーのTgは、185〜200℃、200℃、pHは5〜9である。
【0046】
図2は、粒子の可視化を示す。
【0047】
両実施例からの分散液は、ブレード又はフィルムプレスで紙に適用される場合、皮膜形成特性を示さない。
【0048】
[比較実験A]
一方で、実施例Iに記載したものと同一比のSMA及びNHの反応生成物の分散液と、カオリンとを含む混合物を用いて、分散液を調製した。
【0049】
図3は、粒子の可視化を示す。
【0050】
この図から、ほとんどの顔料粒子はSMI粒子又はMAA粒子で被覆されないが、これらの粒子は非常に小さく、そして担体の表面を完全に覆うわけではないということが明らかである。SMI粒子又はMAA粒子の一部は担体の孔中で消失しており、SMI粒子又はMAA粒子の一部は顔料粒子により覆われて、それによりSMI粒子又はMAA粒子は効力を失う。
【0051】
イミド化度の影響を、図4及び図5に示す。図4では、実施例Iに従って調製された上部層を示すが、この場合、イミド化は約80%で停止されている。図5では、イミド化は、約30%で停止されている。
【0052】
図から、イミド化度が低いほど、顔料粒子はあまり覆われず、そしてSMI粒子又はMAA粒子は表面にあまり存在しないということが明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機顔料粒子又は有機顔料粒子と、前記顔料粒子の表面に付着した有機ナノ粒子とから成るハイブリッド粒子の水性分散液であって、前記ナノ粒子が2〜200ナノメートルの粒径を有する水性分散液。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、少なくとも120℃のガラス転移温度を有することを特徴とする請求項1に記載の水性分散液。
【請求項3】
前記ナノ粒子が、ビニルモノマーと、無水マレイン酸及び無水マレイン酸の誘導体を含む混合物とのコポリマーを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の水性分散液。
【請求項4】
前記無機顔料粒子が、クレイ、タルク、カオリン、ガラス、TlO、ゼオライト、CaCO、マイカ、Al(OH)、シリカ、酸化ジルコニウム又はそれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性分散液。
【請求項5】
前記無水マレイン酸及び無水マレイン酸の誘導体を含む混合物の少なくとも50重量%、好ましくは80重量%が、マレイミドにより形成されることを特徴とする請求項3に記載の水性分散液。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、5〜30ナノメートルの粒径を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性分散液。
【請求項7】
前記ナノ粒子の少なくとも85%が、5〜10ナノメートルの粒径を有することを特徴とする請求項6に記載の水性分散液。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性分散液の製造方法であって、ビニルモノマーと無水マレイン酸とのコポリマーが、一般式R−NH(式中、RはH、炭素数1〜18のアルキル、又はアリールである)を有する化合物を用い、且つ1つ以上の無機顔料粒子の存在下において水中で処理されること、及び無水マレイン酸基の少なくとも35%がイミド基に転換されることを特徴とする水性分散液の製造方法。
【請求項9】
必要数のイミド基が形成されるまで、前記方法中にpHが5〜9に調節されることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記必要数のイミド基が形成されるまで、前記方法中に温度が110〜180℃に調節されることを特徴とする請求項9又は10に記載の製造方法。
【請求項11】
前記pHが、5.5〜8、好ましくは5.5〜7に調節されることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記必要数のイミド基が形成されるまで、前記温度が120〜160℃、好ましくは140〜150℃に調節されることを特徴とする請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記無水マレイン酸基の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%がイミド基に転換されるまで、反応が生じていることを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記コポリマーが、10〜50モル%の無水マレイン酸のモノマー単位と、50〜90モル%のビニルモノマーとを含有することを特徴とする請求項8〜13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ビニルモノマーがスチレンであることを特徴とする請求項8〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記コポリマーが、15〜50モル%、好ましくは22〜36モル%の無水マレイン酸と、50〜85モル%、好ましくは64〜78モル%のスチレンとを含有することを特徴とする請求項15に記載の製造方法。

【公表番号】特表2009−503204(P2009−503204A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524390(P2008−524390)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006922
【国際公開番号】WO2007/014635
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(503211552)トプヒム・ナムローゼ・フェンノートシャップ (2)
【氏名又は名称原語表記】TOPCHIM N.V.
【Fターム(参考)】