説明

有機ELディスプレイおよびその製造方法

【課題】比較的粘度が高い充填剤を用いた場合であっても画素部の微小気泡の残留および未充填領域の発生なしに充填剤を充填することができ、かつ複数取りの方法を適用する場合にも隣接する有機ELディスプレイ間の間隙を増大させる必要のない有機ELディスプレイおよびその製造方法の提供。
【解決手段】ブラックマトリクスの上に設けられたストライプ形状部分からなるマイクロフィン、ならびに複数種の色変換フィルタの上に設けられ、および前記マイクロフィンのストライプ形状部分の延びる方向が長手方向である上面形状を有するスペーサを含む色変換フィルタと、有機EL素子基板とを、充填剤を介して貼り合わせて形成される有機ELディスプレイ。ここで、スペーサとマイクロフィンとは一直線上に整列しておらず、マイクロフィンの高さは、色変換フィルタの高さより高く、かつスペーサの高さよりも低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に有機ELディスプレイおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トップエミッション構造の有機ELディスプレイは、複数の独立して駆動可能な発光部を有する有機EL素子基板と色変換フィルタとを貼り合わせた構成が一般的である。
【0003】
有機EL素子基板は、支持基板上に、スイッチング素子として機能する複数のTFT素子、複数のTFT素子と1対1に接続される複数の反射電極、有機EL層、および共通電極として機能する透明電極が順次積層された構造を有する。必要に応じて、反射電極との接点を除いてTFT素子を覆う平坦化層、該平坦化層を覆うパッシベーション層、複数の反射電極間に設けられる絶縁層、および/またはTFT素子と反射電極との間に設けられて反射電極の密着性を向上させる電極下地層などを設けることができる。さらに、外部駆動回路との接続部をのぞいて前述の積層体全面を覆うバリア層を設けてもよい。
【0004】
一方、色変換フィルタは、透明支持体上にブラックマトリクス、および複数種の色変換フィルタ層が形成される。色変換フィルタ層は、特定の波長域の光のみを透過させるカラーフィルタ層、特定の波長域の光を吸収して他の波長域の光を放射する色変換層、あるいはそれら2種の層の積層体であってもよい。
【0005】
そして、発光部と色変換フィルタ層との位置決めをしながら、有機EL素子基板および色変換フィルタとを、ギャップ層を介して貼り合わせる。貼り合わせ法としては、液晶ディスプレイで一般的な真空滴下貼り合わせ法などを使うことができる。ギャップ層を形成する材料としては、一般的には接着剤などの固体が使われるが、不活性液体または不活性気体を使用することができる。ギャップ層として気体材料を使用する場合、および/または有機EL素子基板と色変換フィルタとの貼り合わせ間隔を精密に制御したい場合などは、色変換フィルタ基板上にスペーサ(支柱)を設けることがある。ギャップが広すぎる場合は、光が隣の画素に侵入するクロストークの問題があり、狭すぎると干渉の影響や発光領域への機械的接触などが懸念されるためである。
【0006】
たとえば、特許文献1においては、色変換フィルタの発光部に相当する部分以外に格子状に設けられたブラックマトリクスの格子点に支柱を設け、さらに、隣接する発光部の間隙に相当する部位に遮光壁を設けた構造を開示している(特許文献1参照)。この構造においては、遮光壁は、スペーサと直列に整列しており、かつクロストークを防止するためにスペーサとほぼ等しい高さで設けられている。
【0007】
また、特許文献2においては、色変換フィルタ基板上のカラーフィルタ層の上の発光部に相当しない区域に、1つの方向において、連続または断続的に延びるスペーサを設けることが提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2004−311305号公報
【特許文献2】特開平10−55889号公報
【特許文献3】特開2004−207234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のような貼り合わせにより形成されるトップエミッション構造の有機ELディスプレイにおいて、接着剤などの固体材料を用いて屈折率の高いギャップ層を設けることによって、光の取り出し効率を向上させることができる。一般的に、窒素などの不活性気体を用いた場合の屈折率が約1.0であり、不活性液体材料を用いた場合の屈折率の上限が1.3程度であるのに対して、エポキシ系接着剤などの固体材料を用いた場合には1.5以上の屈折率を実現することができる。したがって、ギャップ層の屈折率が透明電極の屈折率(約2.0)および色変換フィルタ層の屈折率(約1.5)に接近して、それによって光の取り出し効率を向上させることができる。光の取り出し効率に加えて、十分な機械的強度を得るという点でも、固体材料を用いることが有利である。しかしながら、一般的に接着剤などの固体材料は液体および気体に比べて高い粘度を有し、貼り合せの際の充填が問題となる。単純な滴下貼り合わせでは、外周シール材内側の隅々まで固体材料が広がらず、公称寸法2〜3インチ程度の大きさのディスプレイの場合にも、表示部の一部に固体材料が充填されない不良が発生する場合がある。
【0010】
この問題に対して、外周シール材の一部に切り欠き部を設け、外周シール材に沿って固体材料を広げ、余剰の固体材料を切り欠き部から排出するように押圧することによって、外周シール材の内部全体に固体材料を充填させる方法が提案されている(特許文献3参照)。この方法においては、表示部における固体材料のみ充填の問題は解決できるが、切り欠き部から排出される余剰の固体材料の処理が問題となる。たとえば、1対の有機EL素子基板および色変換フィルタから複数の有機ELディスプレイを作製する、いわゆる「複数取り」の方法を行う場合には、切り欠き部から排出される固体材料が隣接する有機ELディスプレイに悪影響を及ぼすことを回避するため、隣接する有機ELディスプレイ間の間隙を大きくする必要がある。この結果、1対の基板から製造できる有機ELディスプレイの数が減少し、製造コストの上昇を招く。
【0011】
また、特に高粘度の固体材料を用いる場合、スクリューバルブなどを用いた高精度定量吐出装置から滴下させる際、当該装置の機械的可動部において、固体材料中に気泡が取り込まれる恐れがある。そして、固体材料の高い粘度のために、たとえ真空にさらした場合であっても、取り込まれた気泡を取り除けない場合がある。
【0012】
そして、このような気泡が存在する場合、有機EL素子基板と色変換フィルタ基板との間隙を制御するための支柱が、気泡の排出を妨げる場合がある。また、貼り合わせの後に固体材料の熱硬化を実施する場合、隣接する色変換フィルタ層の間隙に微小な気泡が残ると、熱を印加した際の固体材料の一時的な低粘度化によって、微少気泡が発光部に相当する位置に移動してしまう場合がある。そして、発光部に相当する位置の微少気泡は、有機ELディスプレイの輝度ムラを発生させる。
【0013】
従って、本発明の課題は、比較的粘度が高い固体材料を有機EL素子基板と色変換フィルタ基板との間隙に充填する場合であっても画素部に微少気泡を残留させることなしに固体材料を充填することができ、かつ「複数取り」の方法を適用する場合にも隣接する有機ELディスプレイ間の間隙を増大させる必要のない有機ELディスプレイおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の実施形態である有機ELディスプレイは:支持体上に形成された反射電極、有機EL層、および透明電極を含み、複数の独立した発光部を有する有機EL素子基板と;透明支持体、複数種の色変換フィルタ層、該複数種の色変換フィルタ層の間隙に設けられたブラックマトリクス、該ブラックマトリクスの上に設けられ、該ブラックマトリクスよりも細い幅を有する複数個のストライプ形状部分からなるマイクロフィン、ならびに複数種の色変換フィルタの上に設けられ、前記マイクロフィンのストライプ形状部分の延びる方向が長手方向である上面形状を有し、および前記マイクロフィンと一直線上に整列していない複数のスペーサを含む色変換フィルタと;該有機EL素子基板と該色変換フィルタとの間に充填されている充填剤とを含み、該マイクロフィンの高さは、該色変換フィルタの高さより高く、かつ該スペーサの高さよりも低いことを特徴とする。ここで、該スペーサが、長方形、方円形、楕円形またはティアドロップ形の上面形状を有してもよい。さらに、該マイクロフィンが、同一方向に連続的に延びる複数のストライプ形状部分、または同一方向に断続的に延びる複数のストライプ形状部分から構成されていてもよい。
【0015】
本発明の第2の実施形態である有機ELディスプレイの製造方法は:支持体上に反射電極、有機EL層、および透明電極を形成して、複数の独立した発光部を有する有機EL素子基板を準備する工程と;透明支持体上に、複数種の色変換フィルタ層、該複数種の色変換フィルタ層の間隙に設けられるブラックマトリクス、該ブラックマトリクスの上に設けられ、該ブラックマトリクスよりも細い幅を有する複数のストライプ形状部分からなるマイクロフィン、ならびに複数種の色変換フィルタの上に設けられ、前記マイクロフィンのストライプ形状部分の延びる方向が長手方向である上面形状を有し、および前記マイクロフィンと一直線上に整列していない複数のスペーサを形成して、色変換フィルタを準備する工程であって、該マイクロフィンの高さは、該色変換フィルタの高さより高く、かつ該スペーサの高さよりも低い工程と;色変換フィルタ上に充填剤を滴下する工程と;支持体および透明支持体を外側にして、有機EL素子基板と色変換フィルタとを貼り合わせて、有機EL素子基板と色変換フィルタとの間に充填剤を充填して、有機ELディスプレイを得る工程とを含むことを特徴とする。該方法において、スペーサは、長方形、方円形、楕円形またはティアドロップ形の上面形状を有してもよい。また、スペーサがティアドロップ形状を有する場合、貼り合わせの際の充填剤の流動方向に関して、上流側が広幅端、下流側が狭幅端となるようにスペーサを配置することが望ましい。さらに、該マイクロフィンが、同一方向に連続的に延びる複数のストライプ形状部分、または同一方向に断続的に延びる複数のストライプ形状部分から構成されていてもよい。
【0016】
あるいはまた、本実施形態の製造方法において、有機EL素子基板および色変換フィルタに独立した有機ELディスプレイを形成する複数の部分を設けて、一対の有機EL素子基板および色変換フィルタから、複数の独立した有機ELディスプレイを得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の構成のように特定の形状および配置を有するマイクロフィンおよびスペーサを配置することによって、貼り合わせの際の充填剤の流動方向を制御し、それによって充填剤の滴下の際に巻き込まれた気泡をディスプレイの表示部から外周部へと排出することが可能となる。また、マイクロフィンを配設して、色変換フィルタ層によって形成される段差への気泡の残存を防止し、当該気泡が発光部に移動して輝度ムラを発生させることを防止することができる。加えて、従来法において必要であった過剰量の充填剤の使用を排除し、有機EL素子基板/色変換フィルタ間の間隙によって規定される必要量の充填剤を使用することによって、表示部全体を充填することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の第1の実施の形態は、充填剤を介して有機EL素子基板1と色変換フィルタ2とを貼り合わせて形成される有機ELディスプレイに関する。
【0019】
本発明において用いられる有機EL素子基板1は、支持体10の上に、反射電極16、有機EL層20および透明電極22をこの順に含み、複数の独立した発光部を有する。以下、アクティブマトリクス駆動型の有機EL素子基板1について説明する。
【0020】
支持体10は、無アルカリガラスなどのガラス、シリコンなどの半導体、あるいはセラミックのような光学的に不透明な材料を用いて形成することができる。支持体10の上には、TFTなどの複数のスイッチング素子12、および複数のスイッチング素子12を外部駆動回路に接続するための配線および外部接続端子部分(不図示)が設けられる。
【0021】
任意選択的に、複数のスイッチング素子12を覆うように平坦化層14を設けてもよい。平坦化層14は、当該技術において知られている任意の樹脂を用いて作製することができる。加えて、任意選択的に、平坦化層14の上に、平坦化層14を形成する樹脂からのアウトガスの拡散を防止するためのパッシベーション層(不図示)を形成してもよい。パッシベーション層は、単一層であってもよいし、複数の層の積層体であってもよい。パッシベーション層は、無機酸化物(SiO2など)、無機窒化物(SiNなど)、無機酸窒化物(SiONなど)などから形成することができる。パッシベーション層は、スパッタ法、CVD法などを用いて形成することができる。平坦化層14およびパッシベーション層には、スイッチング素子12と反射電極16とを接続するための複数のコンタクトホールが設けられる。コンタクトホールの形成にはドライエッチングなどの方法を用いることができる。
【0022】
任意選択的に、スイッチング素子と反射電極16との密着性を保証するための下地層(不図示)を設けてもよい。下地層は、IZO、ITOなどの導電性酸化物を用いて、スパッタ法などによって形成することができる。下地層は、ウェットエッチングなどの方法を用いて、反射電極16を構成する複数の部分電極に1対1に対応する複数の部分に分割される。
【0023】
反射電極16は、高反射率の金属(Al、Ag、Mo、W、Ni、Crなど)、アモルファス合金(NiP、NiB、CrP、CrB、など)、微結晶性合金(MoCr、NiAlなど)を用いて形成することができる。反射電極16は、複数のスイッチング素子12と1対1に対応する複数の部分電極から構成され、それぞれの部分電極が発光部を画定する。本発明において、それぞれの発光部は長方形の区域として構成される。反射電極16は、マスクを使用するドライプロセス(蒸着法、スパッタ法など)によって位置選択的に材料を堆積させることによって形成してもよいし、全面に材料を堆積させた後にウェットエッチングなどの方法によって複数の部分に分割することによって形成してもよい。
【0024】
任意選択的に、反射電極16と有機EL層20との間にキャップ層(不図示)を設けてもよい。キャップ層は、下地層と同様にIZO、ITOなどの導電性酸化物を用いて、スパッタ法などによって形成することができる。キャップ層は、ウェットエッチングなどの方法を用いて、反射電極16を構成する複数の部分電極に1対1に対応する複数の部分に分割される。下地層およびキャップ層の両方を設ける場合、それらの層を同一の材料を用いて形成することが望ましい。また、この場合、下地層およびキャップ層を同時に処理して複数の部分へと分割することが便利である。
【0025】
任意選択的に、反射電極16を構成する複数の部分電極間の短絡を防止するための絶縁層18を設けてもよい。絶縁層18は、発光部に相当する位置に開口部を有する。絶縁層18の反射電極16の一部を覆う場合、反射電極16の絶縁層18に覆われていない区域(反射電極16から有機EL層20へのキャリア注入が行われる区域、すなわち発光部)が長方形となるように形成される。絶縁層18は、一般的に220〜250℃程度の加熱で硬化することが可能なノボラック系樹脂およびイミド系樹脂を含む樹脂で形成することができる。あるいはまた、絶縁層18を、無機酸化物(SiO2など)、無機窒化物(SiNなど)、無機酸窒化物(SiONなど)の絶縁性材料を用いて形成してもよい。絶縁層18のパターニングは、フォトリソグラフ法などの当該技術において知られている任意の方法を用いて実施することができる。
【0026】
反射電極16を陰極(電子注入電極)として使用する場合、任意選択的に、反射電極16またはキャップ層と有機EL層20との間に、電子注入効率を向上させるための陰極バッファ層(不図示)を設けてもよい。陰極バッファ層の材料としては、Li、Na、K、またはCsなどのアルカリ金属、Ba、Srなどのアルカリ土類金属またはそれらを含む合金、希土類金属、あるいはそれら金属のフッ化物などを用いることができるが、それらに限定されるものではない。陰極バッファ層の膜厚は、駆動電圧などを考慮して適宜選択することができるが、通常の場合には10nm以下であることが好ましい。
【0027】
有機EL層20は、少なくとも有機発光層を含み、必要に応じて正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および/または電子注入層を介在させた構造を有する。有機EL層を構成する各層の材料としては、公知のものが使用される。また、有機EL層を構成する各層は、蒸着法などの当該技術において知られている任意の方法を用いて形成することができる。
【0028】
任意選択的に、有機EL層20と透明電極22との間に、ダメージ緩和層(不図示)を設けてもよい。ダメージ緩和層は、スパッタ法によって透明電極22を形成する際に、有機EL層20がダメージを受けることを防止ないし緩和する層である。ダメージ緩和層は、MgAgまたはAuなどの透過率の高い金属を用いて蒸着法によって形成することができる。また、透明性を保証するために、ダメージ緩和層は数nm〜10nm程度の膜厚を有することが望ましい。
【0029】
透明電極22は、表示部全面に均一に形成され、共通電極として機能する。透明電極22は、ITO、酸化スズ、酸化インジウム、IZO、酸化亜鉛、亜鉛−アルミニウム酸化物、亜鉛−ガリウム酸化物、またはこれらの酸化物に対してF、Sbなどのドーパントを添加した導電性透明金属酸化物を用いて形成することができる。透明電極22は、蒸着法、スパッタ法または化学気相堆積(CVD)法を用いて形成され、好ましくはスパッタ法を用いて形成される。
【0030】
任意選択的に、透明電極22以下の構造を覆うように無機バリア層24を形成してもよい。無機バリア層24は、酸素ないし水分による有機EL層20の失活を防止するための層である。無機バリア層24は、単一層であってもよいし、複数の層の積層体であってもよい。無機バリア層24は、無機酸化物(SiO2など)、無機窒化物(SiNなど)、無機酸窒化物(SiONなど)などから形成することができる。無機バリア層24は、スパッタ法、CVD法などを用いて形成することができる。
【0031】
以上においては、複数のスイッチング素子12を用い、複数の部分電極からなる反射電極16と共通電極としての一体型の透明電極22とを用いるアクティブマトリクス駆動型の有機EL素子基板1を説明した。しかしながら、本発明においては、複数のスイッチング素子を用いることなく、第1の方向に延びる複数のストライプ形状部分電極からなる反射電極と、第2の方向に延びる複数のストライプ形状部分電極からなる透明電極とを用いて構成される、いわゆるパッシブマトリクス駆動型の有機EL素子基板を用いてもよい(ここで、第1の方向は第2の方向と交差する方向、好ましくは直交する方向である)。
【0032】
本発明において用いられる色変換フィルタ2は、図2および図3に示すように、透明支持体50の上に形成された、ブラックマトリクス52、複数種の色変換フィルタ層54、マイクロフィン56およびスペーサ58を含む。
【0033】
透明支持体50は、光学的に透明であり、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン;ノルボルネン樹脂などの高分子材料、またはガラスなどの無機材料を用いて形成することができる。高分子材料を用いる場合、透明支持体50は剛直であっても可撓性であってもよい。光学的に透明であるとは、可視光に対して80%以上、好ましくは86%以上の透過率を有することを意味する。
【0034】
色変換フィルタ層54は、有機EL素子基板1の発光部に対応して設けられる層であり、有機ELディスプレイから放出される光の色相を制御するための層である。色変換フィルタ2は複数種の色変換フィルタ層54、好ましくは赤色変換フィルタ層54R、緑色変換フィルタ層54Gおよび青色変換フィルタ層54Bの3種の色変換フィルタ層54を有する。それぞれの色変換フィルタ層54は、1つの方向に延びるストライプ形状の複数の部分から構成される。
【0035】
色変換フィルタ層54は、特定の波長領域の光を透過させるカラーフィルタ層、特定の波長領域の光を吸収して別の波長領域の光を放射する色変換層、またはカラーフィルタ層と色変換層との積層体であってもよい。カラーフィルタ層と色変換層との積層体を用いる場合、カラーフィルタ層が光の取り出し側(透明支持体50側)に配置される。カラーフィルタ層は、フラットパネルディスプレイ用としている市販の材料を用いて形成することが可能である。色変換層は、特定の波長領域の光を吸収して別の波長領域の光を放射する色変換色素(クマリン色素、シアニン色素、ローダミン色素など)とマトリクス樹脂とを含む。色変換色素およびマトリクス樹脂としては、当該技術において知られている任意の材料を用いることができる。
【0036】
ブラックマトリクス52は、複数の発光部の間隙に配置されて、有機ELディスプレイのコントラスト比を向上させるための層である。ブラックマトリクス52は、色変換フィルタ層を構成するストライプ状部分の間隙に配置される複数のストライプ状部分から構成されてもよい。あるいはまた、図2(a)および図3(a)に示すように、ブラックマトリクス52は、発光部60を画定する開口部を有する格子状の形状を有していてもよい。本発明において、発光部を画定する開口部は長方形となるように形成される。ブラックマトリクス52は、フラットパネルディスプレイ用として市販の材料を用いて形成することが可能である。
【0037】
一般的には、透明支持体50の上にブラックマトリクス52が最初に形成され、次いで色変換フィルタ層54が形成される。ブラックマトリクス52の一部に色変換フィルタ層54が重畳する構成(たとえば、図2(c)および図3(c)に示すように、色変換フィルタ層54のストライプ形状部分の側部がブラックマトリクス52に重畳する構成)を採用することもできる。ブラックマトリクス52および色変換フィルタ層54は、スピンコート、ディップコートなどの塗布法とパターニング法とを組み合わせた、当該技術において知られている任意の方法を用いて作製することができる。あるいはまた、スクリーン印刷法を用いて、所望のパターンを有するブラックマトリクス52および色変換フィルタ層54を作製してもよい。
【0038】
マイクロフィン56は、充填剤を充填する際に気泡が残存しやすい色変換フィルタ層54により形成される段差を埋めると同時に、充填剤の流動方向を制御するための構造物である。マイクロフィン56は、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロースエステル類;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレートなどのポリエステル類;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン類;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン;ノルボルネン樹脂などの高分子材料、またはガラスのような光学的に透明な材料を用いて形成することができる。
【0039】
マイクロフィン56は、複数のストライプ状部分から構成され、隣接する色変換フィルタ層54のストライプ状部分の間隙にあるブラックマトリクス52の上に形成される。色変換フィルタ層54により形成される段差部分の気泡の残存を考慮しなくてもよい場合、マイクロフィン56は、隣接する色変換フィルタ層54のストライプ状部分の全ての間隙に設ける必要はない。一定数の間隙あたり1つのマイクロフィン56を設けてもよい。たとえば、赤色変換フィルタ層54R、緑色変換フィルタ層54Gおよび青色変換フィルタ層54Bの3種の色変換フィルタ層54がこの順序で反復して配列されている場合、赤色変換フィルタ層54Rおよび緑色変換フィルタ層54Gの間隙のみに、マイクロフィン56を設けてもよい(すなわち間隙3個毎に1個)。
【0040】
マイクロフィン56は、図2(a)に示すように、複数のストライプ形状の色変換フィルタ層54と同一方向に連続的に延びる複数のストライプ状部分から構成することができる。この場合には、切断線2c−2cに沿った断面図である図2(c)に示される発光部60の横方向間隙(異なる色に発光する2つの発光部の間の間隙)に加えて、切断線2b−2bに沿った断面図である図2(b)に示される発光部60の縦方向間隙(同一色に発光する2つの発光部の間の間隙)にもマイクロフィン58が存在する。本発明における「縦方向」とは、色変換フィルタ層54およびマイクロフィン58を構成するストライプ形状が延びる方向である。あるいはまた、マイクロフィン56は、図3(a)に示すように、複数のストライプ形状の色変換フィルタ層54と同一方向に延びるが断続的であり、発光部60の横方向間隙のみに存在する複数のストライプ状部分から構成することができる。この場合には、切断線3c−3cに沿った断面図である図3(c)に示される発光部60の横方向間隙のみにマイクロフィン56が存在する。一方、切断線3b−3bに沿った断面図である図3(b)に示される発光部60の縦方向間隙にはマイクロフィン58が存在しない。図2または図3の構成のいずれを採用するかという点は、使用する充填剤の粘度などを考慮して適宜決定される。
【0041】
マイクロフィン56を構成するストライプ状部分のそれぞれは、それが設置されるブラックマトリクス52よりも狭い幅、好ましくはブラックマトリクス52の幅の30%〜80%の幅を有する。同時に、マイクロフィン56と隣接する色変換フィルタ層54との間隔を3μm以下、好ましくは0μm〜1μmの範囲内とすることが望ましい。もしくは、ブラックマトリクスからはみ出さない範囲で重なっていることが望ましい。
【0042】
マイクロフィン56の高さは、色変換フィルタ層54の高さより高く、スペーサの高さ(すなわち、色変換フィルタ層54の膜厚と支柱自身の厚さの合計)よりも小さく設定される。本発明における「マイクロフィン56の高さ」とは、透明支持体50表面からマイクロフィン56上面までの高さ、すなわちマイクロフィン56およびブラックマトリクス52の合計膜厚を意味する。本発明における「色変換フィルタ層54の高さ」とは、透明支持体50表面から色変換フィルタ層54最高面までの高さを意味する。したがって、色変換フィルタ層54の一部とブラックマトリクス52とが重畳している場合、「色変換フィルタ層54の高さ」は、色変換フィルタ層54およびブラックマトリクス52の合計膜厚を意味する。さらに、本発明における「スペーサ58の高さ」とは、透明支持体50表面からスペーサ58上面までの高さを意味する。したがって、色変換フィルタ層54の一部とブラックマトリクス52とが重畳し、当該重畳部分にスペーサが設けられている場合、「スペーサ58の高さ」は、ブラックマトリクス52、色変換フィルタ層54およびスペーサ58の合計膜厚を意味する。望ましくは、マイクロフィン56の高さは、色変換フィルタ層54の高さより高く、スペーサ58の高さの50%〜80%の範囲内に設定される。マイクロフィン56の高さをこのような範囲内に設定することによって、充填時に充填剤の流動方向をマイクロフィン56によって制御し、それによって充填剤の滴下の際に巻き込まれた気泡をディスプレイの表示部から外周部へと排出することが可能となる。通常の場合、マイクロフィン56の上面は、色変換フィルタ層54の上面から1〜3μm高い位置に存在し、最大で色変換フィルタ層54の上面から5μmまでの位置(ただし、「スペーサの高さ」を越えないことを条件とする)に存在する。
【0043】
スペーサ58は、色変換フィルタと有機EL素子基板とを貼り合わせる際の圧力、および貼り合わせ後の外力に抗して色変換フィルタと有機EL素子基板との間隔を維持するための部材である。スペーサ58は、光硬化性樹脂などの材料を用いるフォトリソグラフ法などの当該技術において知られている方法によって形成される。スペーサ58は、少なくとも3μm、望ましくは5μm以上の膜厚を有し、色変換フィルタ層54上面から有機EL素子基板上面までの距離を確保する。一方、隣接画素間の光漏れ(クロストーク)を防止するために、ブラックマトリクス52の幅に依存するが、スペーサ58の膜厚は20μm以下、望ましくは15μm以下であることが望ましい。
【0044】
本発明のスペーサ58は、色変換フィルタ層の上の発光部60の縦方向間隙に配設される。スペーサ58は、全ての発光部60の縦方向間隙に設ける必要はない。一定数の間隙あたり1つのスペーサ58を設けてもよい。たとえば、赤色変換フィルタ層54R、緑色変換フィルタ層54Gおよび青色変換フィルタ層54Bの3種の色変換フィルタ層54がこの順序で反復して配列されている場合、青色変換フィルタ層54Gの上のみに、スペーサ58を設けてもよい(すなわちRGBの発光部からなる画素毎に1個)。
【0045】
ここで、本発明のマイクロフィン56がストライプ形状を有する色変換フィルタ層54の間隙に設けられ、スペーサ58が色変換フィルタ層54上に設けられるため、スペーサ58は、マイクロフィン56と一直線上に整列することはない。
【0046】
本発明のスペーサ58は、特定の形状を有して、貼り合わせの際の充填剤の流動を円滑にする。図4に本発明のスペーサの上面形状の例を示す。図4中に記載の寸法は、300μm平方の画素を有する有機ELディスプレイを作製する場合の例であり、本発明はこれらの寸法に限定されるものではない。図4(a)は長方形の上面を有するスペーサ58aの例を示す。図4(b)は、長方形と、その長方形の短辺を直径とする2つの円とを組み合わせた方円形の上面形状を有するスペーサ58bの例である。図4(c)は、楕円形の上面形状を示すスペーサ58cの例である。図4(d)は、等角台形と、その台形の両底辺を直径とする2つの円とを組み合わせた、いわゆるティアドロップ形の上面形状を有するスペーサ58dの例である。これらの形状を有するスペーサ58a〜dは、長手方向がマイクロフィン56が延びる方向(すなわち、充填剤の流動が想定される方向)となるように配設される。図4(d)に示すような広幅端および狭幅端を有するティアドロップ形の上面形状を有するスペーサ58dを用いる場合、充填剤が流動の上流側を広幅端とし、下流側を狭幅端とすることが望ましい。すなわち、図6に示すように、充填剤70を表示部の中央の1点に滴下する場合には、表示部下側においては図4(d)の形状のスペーサ58dが配置され、表示部上側においては図4(d)の上下を反転した形状のスペーサ58dが配置される。
【0047】
このような形状および配設によって、スペーサ58およびマイクロフィン56は、協働して、充填剤の円滑な流動を可能とする。その結果、表示部内の未充填領域の発生を抑制すると同時に、充填剤の滴下の際に巻き込まれてしまった微小気泡の表示部外への排出を容易にすることができる。これによって、従来法において必要であった過剰量の充填剤の使用を排除し、有機EL素子基板/色変換フィルタ間の間隙によって規定される必要量の充填剤を使用することによって、表示部全体を充填することが可能となる。
【0048】
本発明の有機ELディスプレイの形成は、前述の有機EL素子基板1または色変換フィルタ2のいずれかに表示部の外周を囲むように接着層70を設け、透明電極および色変換フィルタ層が対向するようにして、有機EL素子基板1と色変換フィルタ2とを貼り合わせることにより実施される。このとき、有機EL素子基板1または色変換フィルタ2のいずれかに充填剤80が滴下され、貼り合わせ中に表示部をなす間隙全体に充填剤が充填されるようにする。図5においては、色変換フィルタ2の周縁部に接着層70を設け、および色変換フィルタ2の上に充填剤80を塗布して貼り合わせる構成を示した。
【0049】
接着層70の材料としては、たとえば、紫外線硬化型接着剤(エポキシ系など)などを用いることができる。接着層70の形成は、ディスペンサなどの装置を用いて接着剤などの材料を塗布することによって実施される。
【0050】
充填剤80の材料としては、たとえば、熱硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、光熱併用硬化型接着剤などを用いることができる。充填剤80は、表示部の中央の1点のみに滴下してもよい。あるいはまた、充填剤80を、横方向(マイクロフィン56および支柱58の長手方向と直交する方向)に延びるストライプ状に塗布してもよい。
【0051】
接着層70の形成および充填剤80の塗布の後に、減圧下または大気圧下で有機EL素子基板1と色変換フィルタ2とを接合させる。この際に、透明電極および色変換フィルタ層が対向する(すなわち、有機EL素子基板1の支持体10と色変換フィルタ2の透明支持体50が外側になる)ようにする。任意選択的に、接合体に対して押圧力を印加して接着を確実にしてもよい。接合する際に、充填剤80は、有機EL素子基板1と色変換フィルタ2との間の接着層70によって画定される間隙中を移動し、表示部全体にわたって広げられる。
【0052】
たとえば、図6においては、1つの透明支持体200上に複数個の色変換フィルタ部210(それぞれが独立した有機ELディスプレイを形成する)を有する、いわゆる「複数取り」の場合を示した。それぞれの色変換フィルタ部210の中央の1点に充填剤80が滴下される。貼り合わせの際に、滴下された充填剤80は、色変換フィルタ部210の周縁部に向かって移動し、全方位的に広がって、表示部全体を充填する。
【0053】
充填剤80の移動が終了した時点で、紫外線の照射などによって接着層70を硬化させ、貼り合わせ構造の有機ELディスプレイを固定する。充填剤80の材料として光硬化型接着剤を用いる場合、接着層70の硬化と同時に、あるいは接着層70の硬化の後に、適切な光を照射して、充填剤80の硬化を行ってもよい。
【0054】
あるいはまた、充填剤80の材料として熱硬化型接着剤を用いる場合、接着層60の硬化の後に加熱を行って、充填剤80の硬化を行ってもよい。また、図6に示す複数取りの場合は、接着層70を硬化させた時点において、支持体10および透明支持体50の切断を行って、それぞれの有機ELディスプレイを分離させることが望ましい。なぜなら、接着層70に破断箇所が存在する場合、未硬化の充填剤が広がって、当該部分および隣接する有機ELディスプレイの外部接続端子部分に付着し、その後に硬化する可能性があるからである。前述の時点で有機ELディスプレイの分離を実施することによって、故障(外部接続端子部分における充填剤の硬化)を接着層70の破断が存在する有機ELディスプレイのみに限定することができ、あるいは破断が発生した有機ELディスプレイさえも修復できる可能性がある。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
本実施例においては、一対の有機EL素子基板および色変換フィルタから6個の独立した有機ELディスプレイを作製する。フォトリソグラフ法を用いて、200×200mm×厚さ0.7mmの無アルカリガラス(1737:コーニング)上の6個の有機ELディスプレイに相当する位置に、厚さ1μmの格子形状のブラックマトリクス(CK−7001:富士フィルム株式会社より入手可能)を形成した。ブラックマトリクスの縦方向に延びる部分(すなわち隣接する2種の色変換フィルタ層の間の部分)の幅を15μmとし、横方向に延びる部分の幅を20μmとした。ブラックマトリクスの格子のピッチは、縦方向300μm、横方向100μmとした。
【0056】
次に、フォトリソグラフ法を用いて、赤色カラーフィルタ層(CR−7001:富士フィルム株式会社より入手可能)、緑色カラーフィルタ層(CG−7001:富士フィルム株式会社より入手可能)、青色カラーフィルタ層(CB−7001:富士フィルム株式会社より入手可能)を、この順で形成して、3種の色変換フィルタ層とした。各カラーフィルタ層のそれぞれは、1.5μmの膜厚を有し、横方向それぞれ300μmのピッチで、ブラックマトリクスの格子間隙に対応する位置に形成した。
【0057】
次いで、フォトリソグラフ法を用いて、ブラックマトリクスの縦方向に延びる部分に、CR−600(日立化成工業製)を塗布し、縦方向に延びる複数のストライプ形状部分からなるマイクロフィンを形成した。マイクロフィンの複数のストライプ形状部分は、5μmの幅、および3.5μmの膜厚を有した。
【0058】
次いで、フォトリソグラフ法を用いて青色カラーフィルタ層のブラックマトリクスと重畳している部分(すなわち、有機EL層からの光が透過しない部分)に、ネガ型感光性絶縁材料CR−600(日立化成工業製)を塗布し、縦方向(すなわち、マイクロフィンのストライプ形状部分が延びる方向)15μm×横方向5μmの長方形の上面形状を有し、および8μmの膜厚を有する、複数の部分からなるスペーサを形成して、色変換フィルタを得た。
【0059】
本実施例において、マイクロフィンの高さは4.5μmであり、カラーフィルタ層(ブラックマトリクスと重畳している部分)の高さ2.5μmよりも高く、かつスペーサの高さ9μmの50%であった。
【0060】
一方、200×200mm×厚さ0.7mmの無アルカリガラス板の上の6個の独立した有機ELディスプレイに相当する位置にTFT(スイッチング素子)、配線および外部接続端子部分を形成し、そして、それらを覆うように3μmの膜厚を有する平坦化層、および300nmの膜厚を有するSiO2パッシベーション層を形成した。ここで、平坦化層およびパッシベーション層には、TFTと反射電極とを接続するためのコンタクトホールを設けた。
【0061】
次に、RF−プレーナマグネトロンスパッタ装置を用いて、Ar雰囲気中で、膜厚100nmのIZO膜を形成した。スパッタ法を用いて、膜厚100nmのアルミニウム層を形成した。次いで、レジスト剤「OFRP−800」(東京応化工業株式会社製)を用いて形成されたマスクを用いて、アルミニウム層をウェットエッチングして、複数の部分からなる反射電極を形成した。反射電極の複数の部分のそれぞれは、IZO膜を介し、平坦化層およびパッシベーション層に設けられた複数のコンタクトホールを通して、スイッチング素子であるTFTと1対1に接続された。反射電極の複数の部分のそれぞれは、縦方向285μmおよび横方向85μmの寸法を有した。
【0062】
次いで、スパッタ法を用いて、反射電極を覆うように、膜厚50nmのIZO膜を形成した。続いて、2つのIZO膜を一括してウェットエッチングして、反射電極下の下地層および反射電極上のキャップ層を形成した。下地層およびキャップ層は、反射電極の複数の部分に対応する位置に形成される複数の部分からなり、複数の部分のそれぞれは、縦方向290μmおよび横方向90μmの寸法を有した。
【0063】
次に、キャップ層以下の構造を覆うように絶縁層を形成した。引き続いて絶縁層のパターニングを行って、反射電極の複数の部分に対応する位置に、縦方向280μmおよび横方向80μmの寸法を有する複数の開口部を形成した。
【0064】
以上のように得られた積層体を蒸着装置内に配置し、陰極バッファ層および有機EL層を積層した。真空を破ることなしに、1.5nmの膜厚のLiからなる陰極バッファ層、20nmの膜厚を有するトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)からなる電子輸送層、30nmの膜厚を有する4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)からなる有機発光層、10nmの膜厚を有する4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)からなる正孔輸送層、100nmの膜厚を有する銅フタロシアニン(CuPc)からなる正孔注入層を、この順に形成した。これらの層の成膜の際に、蒸着装置内の真空槽の内圧を1×10-4Paまで減圧し、およびそれぞれの層を0.1nm/sの蒸着速度で堆積させた。
【0065】
次いで、真空を破らずに有機EL層を形成した積層体を対向スパッタ装置に移動させ、スパッタ法を用いて150nmの膜厚を有するIZO膜を形成して、透明電極を得た。
【0066】
さらに、真空を破らずに透明電極を形成した積層体を基板をCVD装置に移動させ、全面にわたって、膜厚2μmのSiN膜を堆積させて無機バリア層を形成し、有機EL素子基板を得た。
【0067】
以上のように得られた有機EL素子基板および色変換フィルタを、酸素濃度5ppm,水分濃度5ppm以下の制御された環境を有する貼り合せ装置に移動させた。そして、プロセス面(色変換フィルタ層を形成した面)を上に向けて色変換フィルタをセットし、ディスペンサを用いて、複数の表示部のそれぞれの外周にエポキシ系紫外線硬化接着剤を切れ目無く塗布して、接着層を形成した。次いで、各表示部の中央の一点に、接着層用の紫外線硬化型エポキシ系接着剤よりも低い粘度を有する熱硬化型エポキシ接着剤を滴下した。
【0068】
そして、プロセス面(有機EL層などを形成した面)を下に向けた状態で有機EL素子基板をセットし、プロセス面同士を対向させた。この状態で、貼り合わせ装置内を約10Pa程度まで減圧し、ついで有機EL素子基板および色変換フィルタを約20μmの間隔まで接近させた。貼り合わせ装置のアライメント機構を用いて、両基板の位置合わせを行った。
【0069】
次いで、貼り合わせ装置内をゆっくりと大気圧に戻しつつ、両基板に対して、それら基板が接近する方向に向かってわずかな荷重を付加した。この段階において、装置内の圧力変化によって両基板はさらに接近し、色変換フィルタ上のスペーサが有機EL素子基板に接触した時点で接近を停止した。両基板の接近に伴って、滴下された充填剤は、表示部の周縁部に向かって移動し、全方位的に広がって表示部全体を充填した。
【0070】
引き続いて、色変換フィルタ基板側から接着層のみに紫外線を照射して接着層を仮硬化させ、そして、一般環境に取り出した。自動ガラススクライバーとブレイク装置を使って、得られた貼り合わせ物を、6個の独立した有機ELディスプレイに分割した。得られた有機ELディスプレイを、1時間にわたって加熱炉中で80℃に加熱し、充填剤の硬化、および接着層の本硬化を実施した。加熱工程の終了後、有機ELディスプレイを、30分間にわたって炉内で自然冷却して取り出した。最後に、有機ELディスプレイを、ドライエッチング装置内に配置し、外部接続端子部分を覆うバリア層を除去した。
【0071】
(実施例2)
スペーサの形状を、縦方向10μmおよび横方向5μmの長方形の短辺側の両端に半径2.5μmの半円を合わせた方円形状に変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返して、有機ELディスプレイを作製した。
【0072】
(実施例3)
スペーサの形状を、7.5μmの長軸半径、2.5μmの短軸半径を有し、長軸が縦方向である楕円形状に変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返して、有機ELディスプレイを作製した。
【0073】
(実施例4)
スペーサの形状を、変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返して、有機ELディスプレイを作製した。スペーサは、上底10μm下底5μm高さ10μmの等角台形に、上底側は半径5μmの半円、下底側は半径2.5μmの半円をあわせた、いわゆるティアドロップ形状を有した。ここで、等角台形の高さ方向を縦方向とし、ならびに、各表示部の上側半分と下側半分とにおいてスペーサの上面形状を反転させ、スペーサの広幅端が各表示部中央に向くように配置した。
【0074】
(実施例5)
マイクロフィンの膜厚を6.5μmに変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返して、有機ELディスプレイを作製した。得られた有機ELディスプレイにおいて、マイクロフィンの高さは、スペーサの高さの87%であった。
【0075】
(実施例6)
マイクロフィンを、縦方向長さ280μm、縦方向ギャップ20μmの縦方向に断続的に延びる複数のストライプ形状部分からなる構成に変更して、マイクロフィンを発光部の横方向間隙のみに配置したことを除いて、実施例1の手順を繰り返して、有機ELディスプレイを作製した。
【0076】
(比較例1)
スペーサおよびマイクロフィンを設けなかったことを除いて、実施例1の手順を繰り返して、有機ELディスプレイを作製した。
【0077】
(比較例2)
マイクロフィンの膜厚を7.5μmに変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返して、有機ELディスプレイを作製した。得られた有機ELディスプレイにおいて、マイクロフィンは、スペーサに匹敵する高さを有した。
【0078】
(評価)
各実施例および比較例において、10対の有機EL素子基板および色変換フィルタ基板を用いて合計60個の有機ELディスプレイを作製し、ギャップ層を形成する熱硬化型エポキシ接着剤のはみ出し不良、ならびに発光部における気泡の混入の発生数に関して評価した。結果を第1表に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
第1表から分かるように、本発明にしたがう実施例1においては、マイクロフィンおよびスペーサの形状によって充填剤の流れを制御することができ、それによって従来型構造を有する比較例1と比較して気泡混入を1/4に、はみ出し不良を1/3に減少させることができた。実施例2〜4においては、スペーサの形状を変更することによって、スペーサ部の気泡の滞留を抑制し、実施例1の構造と比較して気泡混入をさらに1/2以下とすることができた。一方、実施例5においては、マイクロフィンを高くしたことによってマイクロフィンの充填剤の流動制御能が大きくなり、マイクロフィンの延びる方向と直交する方向への充填剤の流れが弱くなったことで、実施例1〜4の構造に比較してはみ出し不良が若干増加している。さらに、実施例6においては、連続的なマイクロフィンに代えて、発光部の横方向間隙のみに存在する断続的マイクロフィンを採用したことによって、はみ出し不良が1個で発生したものの、気泡混入の発生はなく、高い歩留まりで安定した貼り合わせを実施することができた。以上の実施例とは異なり、スペーサに匹敵する高さを有するマイクロフィンを有する比較例2においては、マイクロフィンの充填剤の流動制御能が大きいことによってはみ出し不良を抑制することができたが、混入した気泡の追い出しが不充分となり気泡混入の発生数が増加した。この場合、充填剤の充填量を増加することによって気泡混入を防止することができるが、充填剤の充填量の増加ははみ出し不良の発生あるいは封止ギャップの広がりを発生する恐れがあり、構造として採用できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明において用いる有機EL素子基板の1つの例を示す断面図である。
【図2】本発明において用いる色変換フィルタの1つの例を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は切断線2b−2bに沿った断面図であり、(c)は切断線2c−2cに沿った断面図である。
【図3】本発明において用いる色変換フィルタの別の例を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は切断線3b−3bに沿った断面図であり、(c)は切断線3c−3cに沿った断面図である。
【図4】本発明において用いるスペーサの上面形状を示す図であり、(a)は長方形の上面形状を有するスペーサを示す図であり、(b)は方円形の上面形状を有するスペーサを示す図であり、(c)は楕円形の上面形状を有するスペーサを示す図であり、(d)はティアドロップ形の上面形状を有するスペーサを示す図である。
【図5】本発明の有機ELディスプレイの製造方法を説明する断面図である。
【図6】本発明において用いる「複数取り」の色変換フィルタの1つの例を示す上面図である。
【符号の説明】
【0082】
1 有機EL素子基板
2 色変換フィルタ
10 支持体
12 スイッチング素子
14 平坦化層
16 反射電極
20 有機EL層
22 透明電極
24 無機バリア層
50、200 透明支持体
52 ブラックマトリクス
54(R,G,B) 色変換フィルタ層
56 マイクロフィン
58(a〜d) スペーサ
60 発光部
70 接着層
80 充填剤
210 色変換フィルタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に形成された反射電極、有機EL層、および透明電極を含み、複数の独立した発光部を有する有機EL素子基板と、
透明支持体、複数種の色変換フィルタ層、該複数種の色変換フィルタ層の間隙に設けられたブラックマトリクス、該ブラックマトリクスの上に設けられ、該ブラックマトリクスよりも細い幅を有する複数のストライプ形状部分からなるマイクロフィン、ならびに複数種の色変換フィルタの上に設けられ、前記マイクロフィンのストライプ形状部分の延びる方向が長手方向である上面形状を有、および前記マイクロフィンと一直線上に整列していない複数のスペーサを含む色変換フィルタと、
該有機EL素子基板と該色変換フィルタとの間に充填されている充填剤と
を含み、該マイクロフィンの高さは、該色変換フィルタの高さより高く、かつ該スペーサの高さよりも低いことを特徴とする有機ELディスプレイ。
【請求項2】
該スペーサが、長方形、方円形、楕円形およびティアドロップ形からなる群から選択される上面形状を有することを特徴とする請求項1に記載の有機ELディスプレイ。
【請求項3】
該マイクロフィンが、同一方向に連続的に延びる複数のストライプ形状部分、または同一方向に断続的に延びる複数のストライプ形状部分から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機ELディスプレイ。
【請求項4】
支持体上に反射電極、有機EL層、および透明電極を形成して、複数の独立した発光部を有する有機EL素子基板を準備する工程と、
透明支持体上に、複数種の色変換フィルタ層、該複数種の色変換フィルタ層の間隙に設けられるブラックマトリクス、該ブラックマトリクスの上に設けられ、該ブラックマトリクスよりも細い幅を有する複数のストライプ形状部分からなるマイクロフィン、ならびに複数種の色変換フィルタの上に設けられ、前記マイクロフィンのストライプ形状部分の延びる方向が長手方向である上面形状を有し、および前記マイクロフィンと一直線上に整列していない複数のスペーサを形成して、色変換フィルタを準備する工程であって、該マイクロフィンの高さは、該色変換フィルタの高さより高く、かつ該スペーサの高さよりも低い工程と、
色変換フィルタ上に充填剤を滴下する工程と、
支持体および透明支持体を外側にして、有機EL素子基板と色変換フィルタとを貼り合わせて、有機EL素子基板と色変換フィルタとの間に充填剤を充填して、有機ELディスプレイを得る工程と
を含むことを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項5】
該スペーサが、長方形、方円形、楕円形およびティアドロップ形からなる群から選択される上面形状を有することを特徴とする請求項4に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項6】
該スペーサが、ティアドロップ形の上面形状を有し、貼り合わせの際の充填剤の流動方向に関して、上流側が広幅端、下流側が狭幅端となるように配置されることを特徴とする請求項5に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項7】
該マイクロフィンが、同一方向に連続的に延びる複数のストライプ形状部分、または同一方向に断続的に延びる複数のストライプ形状部分から構成されていることを特徴とする請求項4に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項8】
前記有機EL素子基板および色変換フィルタは、独立した有機ELディスプレイを形成する複数の部分を有し、一対の有機EL素子基板および色変換フィルタから、複数の独立した有機ELディスプレイを得ることを特徴とする請求項4に記載の有機ELディスプレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−152085(P2009−152085A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329372(P2007−329372)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】