有機ELディスプレイの製造方法
【課題】有機層に混入した異物を除去する際に発生した破片を、容易に吸引することができる有機ELディスプレイの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の有機ELディスプレイの製造方法は、基板を準備するステップと、基板上に第1電極を形成するステップと、第1電極上に有機層を塗布形成するステップと、有機層に混入した異物を検出するステップと、異物が混入した領域の有機層にレーザ光を照射することによって、異物が混入した領域の有機層を除去するステップと、異物および有機層の破片を吸引するステップと、を有する。
【解決手段】本発明の有機ELディスプレイの製造方法は、基板を準備するステップと、基板上に第1電極を形成するステップと、第1電極上に有機層を塗布形成するステップと、有機層に混入した異物を検出するステップと、異物が混入した領域の有機層にレーザ光を照射することによって、異物が混入した領域の有機層を除去するステップと、異物および有機層の破片を吸引するステップと、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイの製造方法、特に有機ELディスプレイの製造中に、有機層に異物が混入することで発生した欠陥を修復する有機ELディスプレイの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代のフラットディスプレイパネルとして、有機エレクトロルミネッセンス素子を利用した有機ELディスプレイが期待されている。有機ELディスプレイは、自発光で視野角依存性が無く、高コントラスト、薄型、軽量および低消費電力を実現できるといったメリットを有する。
【0003】
有機ELディスプレイを構成する有機EL素子は、基本的には、マトリックス状に基板上に配置される。各有機EL素子は、第1電極(陽極)および第2電極(陰極)と、第1電極および第2電極の間に配置された有機層とを有する。有機層は、蛍光体分子を含む発光層と、前記発光層を挟むホール伝導性の薄膜および電子伝導性の薄膜とから形成されている。有機EL素子の陽極と陰極との間に電圧を印加すると、陽極からホール伝導性の薄膜に注入されたホールと、陰極から電子伝導性の薄膜に注入された電子とが、発光層内で結合して、発光層が発光する。有機EL素子は、通常、保護層によって外気に対して保護されている。
【0004】
このような有機ELディスプレイの製造では、有機層の積層膜の厚みおよびその均一性が重要である。有機層の厚みおよびその均一性が、有機ELディスプレイの発光効率および消費電力に大きな影響を与えるからである。
【0005】
有機層の形成方法において、インクジェット法などにより、有機材料を含む溶液を必要な箇所に塗布(印刷)して、その後乾燥させる方法がある。インクジェット法では、インクジェットヘッドを基板に対して相対的に移動させながら基板上にマトリクス状に形成された画素に向けて有機層の材料液(発光材料と溶媒とを含む溶液)をノズルから連続的に吐出させて有機層を形成する。各画素に吐出された有機層の材料液を乾燥させることで、各画素上に有機層が形成される。
【0006】
インクジェット法で有機層の形成する場合、有機層の材料液を吐出するノズルに付着した異物が材料液の塗布時に落下し、有機層に混入したり、インクジェット装置の内部から飛散した異物が有機層に混入したり、あるいは、異物が混入した材料液で有機層を形成することで、有機層に異物が混入することがある(図4参照)。
【0007】
特に、近年、ディスプレイの大型化が求められており、有機ELディスプレイにおいても、大型のディスプレイの開発が進められている。したがって、塗布法で有機層の形成する場合、塗布面積が広くなり、異物が有機層に混入する確率が高くなり、有機ELディスプレイの品質低下を招いている。
【0008】
例えば有機層に導電性の異物が混入すると、異物がリークパスとなり陽極と陰極との間で電流がリークし、消費電力が増大する。また、異物周辺の有機層には電流が十分流れないため、輝度ムラが発生したり、場合によっては、異物周辺の有機層が発光しなくなる。
【0009】
一方、有機層に混入した異物が非導電性であっても、異物が混入した箇所が大きく凸状になる。このように異物が混入した箇所が大きく凸状になると、その上に機能層を形成することが困難になる。例えば、異物の凸形状によって、異物上に形成される第2電極が薄くなったり、クラックが発生したりする。これにより、第2電極の抵抗値が高くなり、異物の周辺の発光が弱くなったり、場合によっては発光しなくなる。また、異物が混入した箇所の凸形状によって、第2電極上に配置される保護層にクラックが発生したり、保護層が断裂されたりする。保護層にクラックが発生したり、保護層が断裂されたりすると、保護層は、有機層を酸素や水などから保護することができないので、有機層が劣化しやすくなる。
【0010】
このような問題を解決するために、有機ELディスプレイの製造後、有機層に混入した異物を絶縁し、有機EL素子を修復する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
特許文献1には、図1に示すように、異物6の下部に位置する陽極2にレーザ発振機8よりフェムト秒レーザ光9を照射し、異物6の下部に位置する陽極2のみに多光子吸収を生じさせ、異物6の下部に位置する陽極2を破壊する方法が記載されている。これにより欠陥部以外の領域に与えるダメージを減少させ、欠陥部を通した陽極と陰極との間の電流のリークを抑えることができる。
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載されたような、有機ELディスプレイの完成後に異物が混入した箇所をレーザなどで絶縁する方法では、TFTや電極、絶縁層などに与えるダメージが大きく、レーザ照射によって有機ELディスプレイの不良がかえって増大するおそれがある。また、特許文献1に記載されたような、有機ELディスプレイの完成後に異物が混入した箇所をレーザなどで絶縁する方法では、異物の凸形状によって第2電極や保護層にクラックが生じることを防止することはできない。
【0013】
これらの問題を解決するために、有機層の形成後、第2電極の形成前に有機EL素子を修復する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0014】
特許文献2には、有機層に混入した異物をレーザ光を照射することで除去し、異物が除去された箇所に有機層の材料液を再度塗布することで、有機EL素子を修復する方法が記載されている。
【0015】
また、レーザ加工装置に集塵機を設け、レーザ加工の際に発生する加工対象物の破片を吸引する技術が知られている(例えば特許文献3参照)。さらにレーザ加工装置に、エアー噴出機および集塵機を設置し、レーザ加工の際に発生する加工対象物の破片を吸引する技術が知られている(例えば特許文献4参照)。
【0016】
図2は、特許文献4に開示されたレーザ加工装置の模式図である。図2に示すように、特許文献4に開示された方法では、レーザ加工時にエアー噴出装置13からエアーを吹き付けることで加工対象物の破片を吹き飛ばし、この加工対象物の破片を集塵機12で吸い取る。加工時に発生する加工対象物の破片は、エアーによって吹き飛ばされるため、加工対象物の破片が加工部周囲に残らない。このようにレーザの加工時に発生した加工対象物の破片を吸引することで、完成品に破片が付着することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2008−235178号公報
【特許文献2】特開2004−119243号公報
【特許文献3】特開2002−316292号公報
【特許文献4】特開2007−185685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献2に記載されたように有機層の混入した異物を除去する方法では、レーザで破壊された異物の破片が飛散し、有機ELディスプレイのさらなる欠陥を生じさせるおそれがある。
【0019】
一方、飛散した異物の破片を、特許文献3または4に記載されたような集塵機で吸引することも考えられる。しかしながら、特許文献2に記載されたように、レーザ光を照射することで異物を除去する方法では、異物の破片がランダムに飛散するので、飛散した異物の破片を吸引することは困難である。また、集塵機の設置場所や、破片を吸引する方法によっては、異物の破片が更に拡散する可能性も考えられる。
【0020】
また、特許文献4のようにエアーを吹き付けることで異物の破片が飛散する方向を制御することも考えられる。しかし、エアーを吹き付けるだけでは、アブレーションによる強い衝撃によって飛散する異物の方向を制御することは十分ではない。また、吹き付けられるエアーに異物が混入しないよう、エアーは、細かいメッシュのフィルタを通る必要がある。エアーがこのような細かいメッシュのフィルタを通る場合、エアーが通る配管のコンダクタンスが小さくなる。このため、破片の飛散方向を制御するための十分な量のエアーを配管に流すには、多くのエネルギが必要となり、消費電力が増大する。さらに、エアーに含まれる水分や酸素などが有機層を劣化させる恐れがある。
【0021】
本発明は、上記課題に対して鑑みてなされたものであり、有機層に混入した異物を除去する場合であっても、異物の破片や有機層の破片がさらなる欠陥を発生させることを防止することができる有機ELディスプレイの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、以下に示す有機ELディスプレイの製造方法に関する。
[1]基板と、前記基板上にマトリクス状に配置された複数の有機EL素子とを有し、前記有機EL素子は、前記基板上に配置された第1電極、前記第1電極上に配置された有機層、および前記有機層上に配置された第2電極を含む、有機ELディスプレイを製造する方法であって、前記基板を準備するステップと、前記基板上に前記第1電極を形成するステップと、前記第1電極上に前記有機層を塗布形成するステップと、前記有機層に混入した異物を検出するステップと、前記異物が混入した領域の有機層にレーザ光を照射することによって、前記異物が混入した領域の有機層を除去するステップと、前記異物および有機層の破片を吸引するステップと、を有する、有機ELディスプレイの製造方法。
[2]前記レーザ光で照射される領域における前記レーザ光の強度分布は偏っている、[1]に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
[3]前記レーザ光を前記基板の法線に対して傾けることで、前記レーザ光で照射される領域における前記レーザ光の強度分布を偏らせる、[2]に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
[4]前記レーザ光を透過率が一方向に向かって変化するNDフィルタを通過させることで、前記レーザ光で照射される領域における前記レーザ光の強度分布を偏らせる、[2]に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
[5]前記異物および有機層の破片は、集塵機で吸引される、[1]〜[4]のいずれか一つに記載の有機ELディスプレイの製造方法。
[6]前記集塵機の吸引口は、前記レーザ光で照射される領域のうち、前記レーザ光の強度ピークから最も離れた箇所の上方に配置される、[5]に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
[7]前記有機層を除去した領域に、前記有機層の材料液を塗布するステップをさらに有する、[1]〜[6]のいずれか一つに記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の有機ELディスプレイの製造方法によれば、有機層に異物が混入した場合に、異物を除去することで、有機EL素子を修復できる。また、有機EL素子を修復する際に、異物や有機層の破片がさらなる欠陥を発生させることを防止することができる。このため、本発明によれば、さらならる欠陥を生じさせることなく有機EL素子を修復することができ、歩留まりが高い有機ELディスプレイパネルの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】特許文献1に記載のレーザを異物に照射する方法を示す図
【図2】特許文献4に記載の集塵機で加工対象物の破片を吸引する方法を示す図
【図3】本発明の有機ELディスプレイの製造方法のフローチャート
【図4】有機層に異物が混入した有機EL素子の断面図
【図5】強度分布が偏ったレーザ光を照射したとき異物および有機層の破片が飛散する方向を示す図
【図6】強度分布が偏らないレーザ光を照射したとき異物および有機層の破片が飛散する方向を示す図
【図7】強度分布が偏ったレーザ光で有機層を除去したときの、有機層の破片の分布を示す図
【図8】強度分布が偏らないレーザ光で有機層を除去したときの、有機層の破片の分布を示す図
【図9】異物が混入した有機層の斜視図
【図10】異物が混入した有機層の断面図
【図11】本発明の実施の形態1の製造方法の有機層にレーザ光を照射するステップを示す図
【図12】レーザ光を傾けたときの、照射領域におけるレーザ光の強度分布を示す図
【図13】本発明の実施の形態1の製造方法の異物および有機層の破片を吸引するステップを示す図
【図14】本発明の実施の形態2の製造方法の有機層にレーザ光を照射するステップを示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、有機ELディスプレイの製造方法に関する。本発明の製造方法により製造される有機ELディスプレイは、少なくとも基板と、前記基板上にマトリクス状に配置された有機EL素子とを有する。
【0026】
基板は、ガラス基板が使われることが多いが、樹脂シートやフィルムであってもよい。また、基板は、プラズマ処理やUV処理などの表面処理が施されていてもよい。
【0027】
有機EL素子は、少なくとも基板上に配置された第1電極と、第1電極上に配置された有機層と、有機層上に配置された第2電極を有する。第1電極は通常陽極として機能するが、陰極として機能してもよい。また、第2電極は、通常陰極として機能するが陽極として機能してもよい。以下、第1電極を「陽極」、第2電極を「陰極」とも称する。
【0028】
有機層は少なくとも有機発光層を含むが、さらに正孔注入層や正孔輸送層、電子輸送層などを含んでいてもよい。また、有機EL素子は、さらにカラーフィルタや封止膜などの任意の構成部材を有していてもよい。有機EL素子のサイズおよび形状は、求める特性(例えば、ディスプレイの解像度など)に応じて自由に設定されうる。
【0029】
本発明の有機ELディスプレイの製造方法は、図3のフローチャートに示すように、
1)基板を準備する第1ステップ(S1001)
2)第1ステップ(S1001)で準備した基板上に第1電極を形成する第2ステップ(S1002)、
3)第2ステップ(S1002)で形成した第1電極上に有機層を形成する第3ステップ(S1003)と、
4)第3ステップ(S1003)で形成した有機層に混入した異物を検出する第4ステップ(S1004)と、
5)第4ステップ(S1004)で検出した異物が混入した領域の有機層を除去する第5ステップ(S1005)と、
6)異物や有機層の破片を吸引する第6ステップ(S1006)と、
7)第5ステップ(S1005)で有機層を除去した領域に、再度、有機層の材料液を塗布する第7ステップ(S1007)と、を有する。
【0030】
1)第1ステップでは、基板を準備する。基板の種類は、絶縁性を有し、かつ所望の透明性および機械的特性を有するものであれば特に限定されない。一般的には、ガラス板などが用いられることが多い。基板には、プラズマ処理やUV処理などの表面処理が施されていてもよい。また基板には、第1電極を駆動する薄膜トランジスタ(TFT)が内蔵されていてもよい。
【0031】
2)第2ステップでは、第1ステップで準備した基板上に、第1電極を形成する。第1電極は、例えば、基板上に第1電極の材料からなる層をスパッタリングなどで成膜し、成膜された層をエッチングによりパターニングすることで形成されてもよい。
【0032】
3)第3ステップでは、第2ステップで形成した第1電極上に有機層を形成する。有機層は、有機層の材料液(以下単に「材料液」とも称する)をインクジェットやディスペンサ、塗布針で、塗布することで形成される。材料液に含まれる有機材料および溶媒の種類は、有機層の種類や求める特性などに応じて自由に選択される。有機材料の例には、ポリフルオレン系の高分子有機材料などが含まれる。
【0033】
上述のように、本発明では有機層は塗布法で形成されるので、隣接する画素に有機層の材料液が侵入しないよう、材料液が塗布される領域を規定する必要がある。材料液が塗布される領域を規定するには、バンクを用いてもよいし、自己組織化単分子膜などの撥液性の膜を用いてもよい。
【0034】
バンクは、基板上に直接配置されてもよいし、基板上に形成された別の部材(例えば、第1電極など)の上に配置されてもよい。バンクは有機EL素子ごとに有機層を規定していてもよいし、ライン状に配列された複数の有機EL素子を含む区域を規定してもよい(図6参照)。ライン状に配列された複数の有機EL素子は、同一色(赤、緑または青)の光を発する。
【0035】
バンクの材料は、特に限定されないが、絶縁性、有機溶剤耐性、プロセス耐性(プラズマ処理、エッチング処理、ベーク処理に対する耐性)の観点から、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などが好ましい。また、バンクの材料は、フッ素系樹脂(アクリル系フッ素樹脂やポリイミド系フッ素樹脂)であってもよい。バンクは、プラズマ処理やUV処理などの表面処理によって表面の親液性や撥液性が調整されてもよい。
【0036】
有機EL素子は、電極および有機層の薄膜を積層することで形成される。それぞれの薄膜は、数nm〜数十nmレベルで膜厚が制御されている。製造環境を厳密に管理し、かつ製造設備を十分にメンテナンスしていても、有機層の形成時に、装置内部や製造環境からの異物が有機層に混入することがある。有機層に混入した異物は、リーク電流発生の要因となる。
【0037】
図4は、異物が混入した有機層を有する有機EL素子の断面図を示す。図4に示されるように有機EL素子は、基板1、基板1上に配置された第1電極2、第1電極2上に配置された有機層3、有機層3上に配置された第2電極4、第2電極4上に配置された保護層5とを有する。有機層3には異物6が混入している。
【0038】
図4に示されるように、異物6は第1電極2および第2電極4と接触しているので、異物6が電流のリークパスとなってしまう。このため、第1電極2と第2電極4との間に電圧を印加すると、異物6を通して、第1電極2から第2電極4に電流がリークし、消費電力の増大や、異物周囲での発光輝度低下による発光ムラや、発光自体がしなくなるという不良現象が発生する。
【0039】
4)第4ステップでは、第3ステップで形成した有機層に混入した異物を検出する。
有機層に混入した異物を検出する方法は、特に限定されないが、顕微鏡を用いた外観検査による方法や画像検査方法やパターン検査方法などがある。画像検査方法やパターン検査方法には、隣接する素子同士を比較することで異物を検出する「Die to Die検査方式」や素子と設計データとを比較することで異物を検出する「Die to Database検査方式」が含まれる。異物が検出された場合は、第5ステップに進み、異物と、異物周辺の有機層を除去する。
【0040】
5)第5ステップでは、第4ステップで検出された異物が混入した領域の有機層を除去する。有機層の除去はレーザ照射(レーザアブレーション)によって行われる。より具体的には、異物が混入した領域の有機層にレーザ光を照射することで、異物が混入した領域の有機層を除去する。ここで「有機層にレーザ光を照射する」とは、有機層の表面近傍に焦点を合わせてレーザ光を照射することを意味する。
【0041】
レーザ光源の種類は、特に限定されないが、例えばフラッシュランプ励起Nd:YAGレーザである。Nd:YAGレーザを用いた場合、レーザの波長を、1064nm(基本波長)、532nm(第二高調波)、355nm(第三高調波)、266nm(第四高調波)から選択することができる。また、レーザ光源は、例えば半導体レーザであってもよい。
【0042】
有機層に照射するレーザ光の波長は、有機層が吸収しうる波長であれば特に限定されないが、1100nm以下であることが好ましく、400nm以下であることが特に好ましい。すなわち、上記Nd:YAGレーザであれば、第三高調波(355nm)または第四高調波(266nm)を照射することが好ましい。レーザの波長が小さいほうが、有機層の下にある層(基板や第1電極、別の有機層など)に与える影響が小さいからである(特開2002−124380号公報参照)。有機層に照射するレーザのエネルギー密度は、有機層の材料や厚さなどによって適宜設定する。
【0043】
レーザの照射面積は、異物のサイズおよび形状に合わせて調整されることが好ましい。レーザの照射面積は、スリットの開口面積などを制御することで調整する。
【0044】
従来のレーザ照射で異物が混入した領域の有機層を除去する方法(特許文献2参照)では、異物が混入した領域の有機層を除去する際に、異物や有機層の破片(以下単に「破片」とも称する)がランダムに飛散することが問題となっていた。ランダムに飛散した破片は、吸引が困難なので、有機ELディスプレイの更なる欠陥となる恐れがあるからである。
【0045】
これに対し、本発明は、異物が混入した領域の有機層を除去する際に、異物や有機層の破片が飛散する方向を制御することを特徴とする。本発明者はレーザ光で照射される領域(以下単に「照射領域」とも称する)におけるレーザ光の強度分布を偏らせることで、破片の飛散方向を制御できることを見出した。ここで、「照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせる」とは、レーザ光の強度ピークを照射領域の中心からずらすことを意味する。照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせるには、レーザ光を基板の法線に対して傾けて照射したり(実施の形態1参照)、透過率が一方向に向かって変化するND(Neatral Density)フィルタを通してレーザ光を照射すればよい(実施の形態2参照)。
【0046】
このように、照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせることで、異物や有機層の破片が飛散する方向を制御することができる。より具体的には、照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせることで、異物や有機層の破片を一方向にのみ飛散させることができる。以下、図面を参照しながら、照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせることと、異物の破片が飛散する方向を制御することとの関係について説明する。
【0047】
図5A〜Cは、照射領域における強度分布が偏ったレーザ光(以下単に「強度分布が偏ったレーザ光」とも称する)で、異物が混入した領域の有機層を除去したときの異物や有機層の破片の挙動を示す。
【0048】
図5Aは、異物6が混入した領域の有機層3に強度分布が偏ったレーザ光9を照射した様子を示す。図5Aの矢印Xは、レーザ光9の強度を示す。図5Aに示されるように、照射領域におけるレーザ光9の強度分布は偏っている。より具体的には、レーザ光9の強度ピークPは、照射領域40の中心から紙面右方向にずれている。
【0049】
図5Bは、強度分布が偏ったレーザ光9の照射によって生じたアブレーションの瞬間を示す。図5Bに示されるように照射領域40のうち、強度ピークPの近傍の領域41では、レーザ光のエネルギが強いので、異物や有機層は気化する。一方で、照射領域40のうち、レーザ光9の強度が弱い領域42では、レーザ光9は異物および有機層を気化させるほどのエネルギは有さず、異物および有機層は破壊され、粉砕される。粉砕された異物および有機層(破片)には、領域41で異物や有機層が気化したときに生じた衝撃によって矢印Y方向の力が加わり飛散する。このように本発明では、破片は、レーザ光の強度が弱い方向にのみ飛散する。
【0050】
この結果、図5Cに示すように、異物や有機層の破片10は、有機層が除去された領域(以下単に「有機層除去部」とも称する)の一方側に集中する。すなわち、異物や有機層の破片10は、有機層除去部11のレーザ光の強度が弱かった方に集中する。
【0051】
このように、強度分布が偏ったレーザで異物が混入した領域の有機層を照射することで、破片が飛散する方向を、一方向に制御することができる。
【0052】
また、有機層の材料によっては、強度分布が偏ったレーザ光を照射しても、破片がレーザ光の強度が弱い方向と異なる方向に飛散することもある。
【0053】
一方、図6A〜Cは、照射領域における強度分布が偏らないレーザ光(以下単に「強度分布が偏らないレーザ光」とも称する)で、異物が混入した領域の有機層を除去したときの異物や有機層の破片の挙動を示す。
【0054】
図6Aは、異物6が混入した領域の有機層3に強度分布が偏よらないレーザ光9を照射した様子を示す。図6Aの矢印Xは、レーザ光9の強度を示す。図6Aに示されるように、レーザ光9の強度分布は偏っていない。より具体的には、レーザ光9の強度ピークPは、照射領域40の中心に位置する。
【0055】
図6Bは、強度分布が偏らないレーザ光9の照射によって生じたアブレーションの瞬間を示す。図6Bに示されるように照射領域40の中心部では、レーザ光のエネルギが強いので、異物や有機層は気化する。一方で、中心部の周辺では、レーザ光9の強度が弱いので、レーザ光9は異物および有機層を気化させるほどのエネルギは有さず、異物および有機層は破壊され、粉砕される。粉砕された異物および有機層(破片)には、照射領域の中心部で異物や有機層が気化したときに生じた衝撃によって矢印Y方向の力が加わる。強度分布が偏らないレーザ光9の場合、レーザ光9の強度ピークPは照射領域の中心に位置するので、破片は、照射領域の中心から放射状にランダムに飛散する。
【0056】
この結果、図6Cに示すように、異物や有機層の破片10は、有機層除去部11の周辺にランダムに分散される。また、強度分布が偏らないレーザ光で有機層を照射した場合、有機層除去部11の中心部が最も深くなる。
【0057】
このように、強度分布が偏ったレーザで異物が混入した領域の有機層を照射することで、破片が飛散する方向を、一方向に制御することができる。
【0058】
照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせることで、実際に異物および有機層の破片が飛散する方向を一方向に制御できることを示すために以下の予備実験を行った。
【0059】
まず、ガラス板上に複数のライン状のバンクを形成し、バンクによって規定された領域内に有機層を形成した。予備実験では、有機層には異物を混入させなかった。そして、有機層にレーザ光を照射し、有機層を除去した。
【0060】
予備実験では、レーザ光を基板の法線に対して傾けることで、照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせた。具体的には、レーザ発振機を傾けることで、レーザ光をライン状のバンクの長軸に平行に傾けた。レーザ光の入射角度は15°とした。
レーザを照射するためのレーザ発振機はフラッシュランプ励起Nd:YAGレーザを用いた。レーザ波長は、355nm(第三高調)とした。レーザ光のエネルギ密度を1.5/cm2とし、35μm×35μmの四角い領域を除去した。また、比較例として、レーザ光を基板に対して垂直に照射した以外は同じ条件で、有機層を除去した。
【0061】
有機層を除去した後、有機層が除去された領域(有機層除去部)を顕微鏡で観察し、有機層の破片の拡散具合を観察した。
【0062】
図7は、基板の法線に対して傾いたレーザ光(強度分布が偏ったレーザ光)を照射したことによって形成された有機層除去部を示す。図8は、基板に対して垂直のレーザ光(強度分布が偏らないレーザ光)を照射したことによって形成された有機層除去部を示す。
【0063】
強度分布が偏ったレーザ光を照射したことによって形成された有機層除去部(図7)では、レーザ光の強度ピーク側(レーザ発振機が設けられた側)の領域A内の有機層の破片の数は0であった。一方レーザ光の強度が弱かった方の領域B内の有機層の破片の数は22であった。
【0064】
これに対し、強度分布が偏らないレーザ光を照射したことによって形成された有機層除去部(図8)では、紙面上方の領域A内の有機層の破片の数は12であり、紙面下方の領域B内の有機層の破片の数は11であった。
【0065】
これらの結果は、強度分布が偏ったレーザ光を照射することで、異物や有機層の破片が飛散する方向を一方向に制御できることを示唆する。
【0066】
6)第6ステップでは、第5ステップで発生した異物や有機層の破片を吸引する。破片を吸引する手段は特に限定されないが、集塵機が好ましい。上述したように、本発明では、異物や有機層の破片が飛散する方向が一方向に制御されているので、異物や有機層の破片が一部に集中している。このため、容易に破片を吸引することができる。これにより、有機層上に残存した破片が、新たな欠陥を発生させることを防止することができる。
【0067】
集塵機で破片を吸引するには、集塵機の吸引口を破片が飛散する方向に設置すればよい。上述のように破片は通常、照射領域のレーザ光の強度が弱い方に向かって飛散する。このため、集塵機の吸引口を照射領域のうち、レーザ光の強度が最も弱い(強度ピークから最も離れた)箇所の上方に設置すればよい。
【0068】
7)第7ステップでは、第5ステップで形成された有機層が除去された領域(以下、「有機層除去部」とも称する)に有機材料を含む溶液を再度塗布する。
【0069】
有機層除去部に有機層を形成する方法は、塗布法であれば特に限定されない。塗布法の例には、インクジェット、ディスペンサ、塗布針などを用いた方法が含まれる。これらの方法は、有機層除去部の体積に合わせて有機材料を含む溶液を塗布する量を調整できるため好適である。第7ステップでは、有機層除去部が材料液で埋まるように調整しながら、材料液を塗布する必要があるからである。
【0070】
有機層除去部に塗布される有機材料および溶媒の種類は、通常、第2ステップで塗布した溶液と同じものである。また、第7ステップで塗布する材料液の粘度は、第2ステップで塗布した材料液よりも高いことが好ましい。より具体的には、第7ステップで塗布する材料液の粘度は、30mPa・s以上であることが好ましい。材料液の粘度を高くすることで、材料液が有機層除去部から溢れ出すことを防止し、材料液を局所的に塗布することができる。このため、第7ステップにおける材料液の塗布には、高粘度材料対応のインクジェットノズルや塗布針などを用いることが好ましい。
【0071】
有機層除去部に塗布された材料液を乾燥させることで、有機層除去部に再度有機層を形成することができる。材料液を乾燥させるには、基板全体を加熱炉などで乾燥させてもよいが、CO2レーザやスポットランプ、超小型の熱風ヒータなどで有機層除去部に塗布された材料液のみを乾燥させる方法が好ましい。基板全体を加熱した場合、再塗布した部分以外についても熱が加わるため、有機層の劣化を引き起こすおそれがある。
【0072】
このように本発明によれば、有機層に異物が混入した場合に、異物を除去することによって有機EL素子のショートを修復することができる。したがって、本発明によれば、リーク電流の低減による低消費電力化や輝度ムラが少ない有機ELディスプレイを高い歩留まりで製造することができる。また、本発明によれば、異物や有機層の破片を効率的に吸引することができるので、有機層上に残存する破片がさらなる欠陥を発生させることを防止することができる。
【0073】
以下、本発明の製造方法の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施の形態により限定されない。
【0074】
(実施の形態1)
実施の形態1では、レーザ光を基板の法線に対して傾斜させることで、照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせた形態について説明する。また、実施の形態1では、有機層がライン状のバンクに規定された領域内に形成される。
【0075】
実施の形態1の有機ELディスプレイの製造方法は、1)基板を準備する第1ステップ、2)基板上に第1電極を形成する第2ステップ、3)基板上にライン状のバンクを形成する第3ステップ、4)バンクによって規定された領域内に有機層を形成する第4ステップ、5)有機層中に混入している異物を検出する第5ステップと、6)異物が混入した領域の有機層を除去するステップと、7)異物や有機層の破片を吸引する第7ステップと、8)有機層が除去された領域に有機層の材料液を再度塗布する第8ステップと、を有する。
【0076】
第1ステップでは、基板を準備し、第2ステップでは準備した基板上に第1電極を形成する。そして第3ステップでは有機層を規定するライン状のバンクを基板上に形成する。次いで、第4ステップでは、インクジェット法により、バンクによって規定された領域に材料液を塗布して有機層を形成する。第5ステップでは、有機層中に混入した異物6を画像検査機により検出する。
【0077】
図9は、第5ステップで検出された異物の斜視図を示す。図9示されるようにバンク7によって規定された領域内に形成された有機層3には異物6が混入している。図10は、異物6が混入した有機層3の断面図を示す。
【0078】
第6ステップでは、異物が混入した領域の有機層を除去する。上述のように本実施の形態では、レーザ光を基板の法線に対して傾けることで、照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせる。
【0079】
図11は、本実施の形態の第6ステップを示す。図11に示されるようにレーザ光9は基板の法線に対して傾けられている。このようにレーザ光を傾けるとレーザ光の強度ピークが照射領域の中心から、レーザ発振機8側にずれる。また、集塵機12の吸引口は、照射領域40のうち、レーザ光の強度ピークから最も離れた箇所の上方に配置される。
【0080】
図12は、レーザ光9を傾けることで、照射領域におけるレーザ光9の強度分布が偏るメカニズムを示す。図12に示される符番50はレーザの強度分布を示す。図12に示されるように、レーザ光9の強度ピークは、レーザ光の中心に位置する。しかし、レーザ光9が図12に示されるように傾けられると、照射領域40においてレーザ光の強度分布が偏る。すなわち、レーザ光の強度ピークPが照射領域40の中心からずれる。このようにレーザ光を傾けることで、照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせることができる。
【0081】
図13Aは、レーザ光の照射によって形成された有機層除去部11の断面を示す。上述したように、異物や有機層の破片10は、レーザ光の強度が弱い方向にのみ飛散する。このため、異物や有機層の破片10は、有機層除去部11の一方にのみ集中する。
【0082】
第7ステップでは、異物や有機層の破片を吸引する。図13Bに示されるように集塵機12の吸引口は破片10が集中する領域の上方に配置されているので、有機層除去部11を形成する際に発生した破片10を容易に吸引することができる。
【0083】
第8ステップでは、有機層除去部に材料液を再度塗布する。その後材料液を乾燥させることで、有機層除去部に有機層を再形成することができる。
【0084】
このように、実施の形態1の有機ELディスプレイの製造方法によれば、有機層中に混入した異物を除去することで、有機ELディスプレイの欠陥を修復することは出来る。また、本実施の形態によれば、異物を除去する際に発生した破片を吸引できるので、破片によるさらなる有機ELディスプレイの欠陥を防止することができる。
【0085】
(実施の形態2)
実施の形態1では、レーザ光を基板の法線に対して傾斜させることで、レーザ光の強度分布を偏らせた形態について説明した。実施の形態2では、NDフィルタを用いてレーザ光の強度分布を偏らせる形態について説明する。
【0086】
実施の形態2の有機ELディスプレイの製造方法は、1)基板を準備する第1ステップ、2)基板上に第1電極を形成する第2ステップ、3)基板上にライン状のバンクを形成する第3ステップ、4)バンクによって規定された領域内に有機層を形成する第4ステップ、5)有機層中に混入している異物を検出する第5ステップと、6)異物が混入した領域の有機層を除去するステップと、7)異物や有機層の破片を吸引する第7ステップと、8)有機層が除去された領域に有機層の材料液を再度塗布する第8ステップと、を有する
。実施の形態2の有機ELディスプレイの製造方法は、第6ステップが異なる以外は、実施の形態1の有機ELディスプレイの製造方法と同じである。以下、実施の形態2の有機ELディスプレイの製造方法の第6ステップについて説明する。
【0087】
第6ステップでは、異物が混入した領域の有機層を除去する。本実施の形態では、レーザ光をNDフィルタを通過させることで、レーザ光の強度分布を偏らせる。
【0088】
図14は、本実施の形態の第6ステップを示す。図14に示されるようにレーザ光9は、基板1に対して垂直に照射される。また、レーザ光9は、透過率が一方向に向かって変化するNDフィルタ20を通過する。より具体的には、NDフィルタ20の透過率は、紙面右側から紙面左側にかけて段階的に高くなる。これにより、レーザ光の強度ピークを照射領域の中心から紙面左側へずらすことができる。また、集塵機12の吸引口は、照射領域40のうち、レーザ光の強度ピークから最も離れた箇所の上方に配置される。
【0089】
このように照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせることで、異物や有機層の破片を、一方向(レーザ光の強度が弱い方向)にのみ飛散させることができる。このため、異物や有機層の破片10は、有機層除去部11の一方にのみ集中する。
【0090】
これにより、異物や有機層の破片を集塵機12によって容易に吸引できる。このため、破片が有機ELディスプレイのさらなる欠陥を発生させることはない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の有機ELディスプレイの製造方法によれば、有機層に異物が混入した場合に、レーザ光を照射することで異物を除去し、異物が除去された領域に再度、材料液を塗布することで、異物による欠陥部を修復できる。したがって、本発明によれば、異物によるリーク電流の低減による低消費電力化や輝度ムラが少なく、有機層の劣化のない有機ELディスプレイを高い歩留まりで製造することができる。
さらに、本発明の有機ELディスプレイの製造方法によれば、異物を除去する際に発生した破片を吸引できるので、破片によるさらなる有機ELディスプレイの欠陥を防止することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 基板
2 第1電極(陽極)
3 有機層
4 第2電極(陰極)
5 保護層
6 異物
7 バンク
8 レーザ発振機
9 レーザ光
10 異物および有機層の破片
11 有機層除去部
12 集塵機
13 エアー噴出装置
20 NDフィルタ
30 基板
40 照射領域
50 レーザ光の強度分布
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイの製造方法、特に有機ELディスプレイの製造中に、有機層に異物が混入することで発生した欠陥を修復する有機ELディスプレイの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代のフラットディスプレイパネルとして、有機エレクトロルミネッセンス素子を利用した有機ELディスプレイが期待されている。有機ELディスプレイは、自発光で視野角依存性が無く、高コントラスト、薄型、軽量および低消費電力を実現できるといったメリットを有する。
【0003】
有機ELディスプレイを構成する有機EL素子は、基本的には、マトリックス状に基板上に配置される。各有機EL素子は、第1電極(陽極)および第2電極(陰極)と、第1電極および第2電極の間に配置された有機層とを有する。有機層は、蛍光体分子を含む発光層と、前記発光層を挟むホール伝導性の薄膜および電子伝導性の薄膜とから形成されている。有機EL素子の陽極と陰極との間に電圧を印加すると、陽極からホール伝導性の薄膜に注入されたホールと、陰極から電子伝導性の薄膜に注入された電子とが、発光層内で結合して、発光層が発光する。有機EL素子は、通常、保護層によって外気に対して保護されている。
【0004】
このような有機ELディスプレイの製造では、有機層の積層膜の厚みおよびその均一性が重要である。有機層の厚みおよびその均一性が、有機ELディスプレイの発光効率および消費電力に大きな影響を与えるからである。
【0005】
有機層の形成方法において、インクジェット法などにより、有機材料を含む溶液を必要な箇所に塗布(印刷)して、その後乾燥させる方法がある。インクジェット法では、インクジェットヘッドを基板に対して相対的に移動させながら基板上にマトリクス状に形成された画素に向けて有機層の材料液(発光材料と溶媒とを含む溶液)をノズルから連続的に吐出させて有機層を形成する。各画素に吐出された有機層の材料液を乾燥させることで、各画素上に有機層が形成される。
【0006】
インクジェット法で有機層の形成する場合、有機層の材料液を吐出するノズルに付着した異物が材料液の塗布時に落下し、有機層に混入したり、インクジェット装置の内部から飛散した異物が有機層に混入したり、あるいは、異物が混入した材料液で有機層を形成することで、有機層に異物が混入することがある(図4参照)。
【0007】
特に、近年、ディスプレイの大型化が求められており、有機ELディスプレイにおいても、大型のディスプレイの開発が進められている。したがって、塗布法で有機層の形成する場合、塗布面積が広くなり、異物が有機層に混入する確率が高くなり、有機ELディスプレイの品質低下を招いている。
【0008】
例えば有機層に導電性の異物が混入すると、異物がリークパスとなり陽極と陰極との間で電流がリークし、消費電力が増大する。また、異物周辺の有機層には電流が十分流れないため、輝度ムラが発生したり、場合によっては、異物周辺の有機層が発光しなくなる。
【0009】
一方、有機層に混入した異物が非導電性であっても、異物が混入した箇所が大きく凸状になる。このように異物が混入した箇所が大きく凸状になると、その上に機能層を形成することが困難になる。例えば、異物の凸形状によって、異物上に形成される第2電極が薄くなったり、クラックが発生したりする。これにより、第2電極の抵抗値が高くなり、異物の周辺の発光が弱くなったり、場合によっては発光しなくなる。また、異物が混入した箇所の凸形状によって、第2電極上に配置される保護層にクラックが発生したり、保護層が断裂されたりする。保護層にクラックが発生したり、保護層が断裂されたりすると、保護層は、有機層を酸素や水などから保護することができないので、有機層が劣化しやすくなる。
【0010】
このような問題を解決するために、有機ELディスプレイの製造後、有機層に混入した異物を絶縁し、有機EL素子を修復する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
特許文献1には、図1に示すように、異物6の下部に位置する陽極2にレーザ発振機8よりフェムト秒レーザ光9を照射し、異物6の下部に位置する陽極2のみに多光子吸収を生じさせ、異物6の下部に位置する陽極2を破壊する方法が記載されている。これにより欠陥部以外の領域に与えるダメージを減少させ、欠陥部を通した陽極と陰極との間の電流のリークを抑えることができる。
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載されたような、有機ELディスプレイの完成後に異物が混入した箇所をレーザなどで絶縁する方法では、TFTや電極、絶縁層などに与えるダメージが大きく、レーザ照射によって有機ELディスプレイの不良がかえって増大するおそれがある。また、特許文献1に記載されたような、有機ELディスプレイの完成後に異物が混入した箇所をレーザなどで絶縁する方法では、異物の凸形状によって第2電極や保護層にクラックが生じることを防止することはできない。
【0013】
これらの問題を解決するために、有機層の形成後、第2電極の形成前に有機EL素子を修復する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0014】
特許文献2には、有機層に混入した異物をレーザ光を照射することで除去し、異物が除去された箇所に有機層の材料液を再度塗布することで、有機EL素子を修復する方法が記載されている。
【0015】
また、レーザ加工装置に集塵機を設け、レーザ加工の際に発生する加工対象物の破片を吸引する技術が知られている(例えば特許文献3参照)。さらにレーザ加工装置に、エアー噴出機および集塵機を設置し、レーザ加工の際に発生する加工対象物の破片を吸引する技術が知られている(例えば特許文献4参照)。
【0016】
図2は、特許文献4に開示されたレーザ加工装置の模式図である。図2に示すように、特許文献4に開示された方法では、レーザ加工時にエアー噴出装置13からエアーを吹き付けることで加工対象物の破片を吹き飛ばし、この加工対象物の破片を集塵機12で吸い取る。加工時に発生する加工対象物の破片は、エアーによって吹き飛ばされるため、加工対象物の破片が加工部周囲に残らない。このようにレーザの加工時に発生した加工対象物の破片を吸引することで、完成品に破片が付着することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2008−235178号公報
【特許文献2】特開2004−119243号公報
【特許文献3】特開2002−316292号公報
【特許文献4】特開2007−185685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献2に記載されたように有機層の混入した異物を除去する方法では、レーザで破壊された異物の破片が飛散し、有機ELディスプレイのさらなる欠陥を生じさせるおそれがある。
【0019】
一方、飛散した異物の破片を、特許文献3または4に記載されたような集塵機で吸引することも考えられる。しかしながら、特許文献2に記載されたように、レーザ光を照射することで異物を除去する方法では、異物の破片がランダムに飛散するので、飛散した異物の破片を吸引することは困難である。また、集塵機の設置場所や、破片を吸引する方法によっては、異物の破片が更に拡散する可能性も考えられる。
【0020】
また、特許文献4のようにエアーを吹き付けることで異物の破片が飛散する方向を制御することも考えられる。しかし、エアーを吹き付けるだけでは、アブレーションによる強い衝撃によって飛散する異物の方向を制御することは十分ではない。また、吹き付けられるエアーに異物が混入しないよう、エアーは、細かいメッシュのフィルタを通る必要がある。エアーがこのような細かいメッシュのフィルタを通る場合、エアーが通る配管のコンダクタンスが小さくなる。このため、破片の飛散方向を制御するための十分な量のエアーを配管に流すには、多くのエネルギが必要となり、消費電力が増大する。さらに、エアーに含まれる水分や酸素などが有機層を劣化させる恐れがある。
【0021】
本発明は、上記課題に対して鑑みてなされたものであり、有機層に混入した異物を除去する場合であっても、異物の破片や有機層の破片がさらなる欠陥を発生させることを防止することができる有機ELディスプレイの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、以下に示す有機ELディスプレイの製造方法に関する。
[1]基板と、前記基板上にマトリクス状に配置された複数の有機EL素子とを有し、前記有機EL素子は、前記基板上に配置された第1電極、前記第1電極上に配置された有機層、および前記有機層上に配置された第2電極を含む、有機ELディスプレイを製造する方法であって、前記基板を準備するステップと、前記基板上に前記第1電極を形成するステップと、前記第1電極上に前記有機層を塗布形成するステップと、前記有機層に混入した異物を検出するステップと、前記異物が混入した領域の有機層にレーザ光を照射することによって、前記異物が混入した領域の有機層を除去するステップと、前記異物および有機層の破片を吸引するステップと、を有する、有機ELディスプレイの製造方法。
[2]前記レーザ光で照射される領域における前記レーザ光の強度分布は偏っている、[1]に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
[3]前記レーザ光を前記基板の法線に対して傾けることで、前記レーザ光で照射される領域における前記レーザ光の強度分布を偏らせる、[2]に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
[4]前記レーザ光を透過率が一方向に向かって変化するNDフィルタを通過させることで、前記レーザ光で照射される領域における前記レーザ光の強度分布を偏らせる、[2]に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
[5]前記異物および有機層の破片は、集塵機で吸引される、[1]〜[4]のいずれか一つに記載の有機ELディスプレイの製造方法。
[6]前記集塵機の吸引口は、前記レーザ光で照射される領域のうち、前記レーザ光の強度ピークから最も離れた箇所の上方に配置される、[5]に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
[7]前記有機層を除去した領域に、前記有機層の材料液を塗布するステップをさらに有する、[1]〜[6]のいずれか一つに記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の有機ELディスプレイの製造方法によれば、有機層に異物が混入した場合に、異物を除去することで、有機EL素子を修復できる。また、有機EL素子を修復する際に、異物や有機層の破片がさらなる欠陥を発生させることを防止することができる。このため、本発明によれば、さらならる欠陥を生じさせることなく有機EL素子を修復することができ、歩留まりが高い有機ELディスプレイパネルの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】特許文献1に記載のレーザを異物に照射する方法を示す図
【図2】特許文献4に記載の集塵機で加工対象物の破片を吸引する方法を示す図
【図3】本発明の有機ELディスプレイの製造方法のフローチャート
【図4】有機層に異物が混入した有機EL素子の断面図
【図5】強度分布が偏ったレーザ光を照射したとき異物および有機層の破片が飛散する方向を示す図
【図6】強度分布が偏らないレーザ光を照射したとき異物および有機層の破片が飛散する方向を示す図
【図7】強度分布が偏ったレーザ光で有機層を除去したときの、有機層の破片の分布を示す図
【図8】強度分布が偏らないレーザ光で有機層を除去したときの、有機層の破片の分布を示す図
【図9】異物が混入した有機層の斜視図
【図10】異物が混入した有機層の断面図
【図11】本発明の実施の形態1の製造方法の有機層にレーザ光を照射するステップを示す図
【図12】レーザ光を傾けたときの、照射領域におけるレーザ光の強度分布を示す図
【図13】本発明の実施の形態1の製造方法の異物および有機層の破片を吸引するステップを示す図
【図14】本発明の実施の形態2の製造方法の有機層にレーザ光を照射するステップを示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、有機ELディスプレイの製造方法に関する。本発明の製造方法により製造される有機ELディスプレイは、少なくとも基板と、前記基板上にマトリクス状に配置された有機EL素子とを有する。
【0026】
基板は、ガラス基板が使われることが多いが、樹脂シートやフィルムであってもよい。また、基板は、プラズマ処理やUV処理などの表面処理が施されていてもよい。
【0027】
有機EL素子は、少なくとも基板上に配置された第1電極と、第1電極上に配置された有機層と、有機層上に配置された第2電極を有する。第1電極は通常陽極として機能するが、陰極として機能してもよい。また、第2電極は、通常陰極として機能するが陽極として機能してもよい。以下、第1電極を「陽極」、第2電極を「陰極」とも称する。
【0028】
有機層は少なくとも有機発光層を含むが、さらに正孔注入層や正孔輸送層、電子輸送層などを含んでいてもよい。また、有機EL素子は、さらにカラーフィルタや封止膜などの任意の構成部材を有していてもよい。有機EL素子のサイズおよび形状は、求める特性(例えば、ディスプレイの解像度など)に応じて自由に設定されうる。
【0029】
本発明の有機ELディスプレイの製造方法は、図3のフローチャートに示すように、
1)基板を準備する第1ステップ(S1001)
2)第1ステップ(S1001)で準備した基板上に第1電極を形成する第2ステップ(S1002)、
3)第2ステップ(S1002)で形成した第1電極上に有機層を形成する第3ステップ(S1003)と、
4)第3ステップ(S1003)で形成した有機層に混入した異物を検出する第4ステップ(S1004)と、
5)第4ステップ(S1004)で検出した異物が混入した領域の有機層を除去する第5ステップ(S1005)と、
6)異物や有機層の破片を吸引する第6ステップ(S1006)と、
7)第5ステップ(S1005)で有機層を除去した領域に、再度、有機層の材料液を塗布する第7ステップ(S1007)と、を有する。
【0030】
1)第1ステップでは、基板を準備する。基板の種類は、絶縁性を有し、かつ所望の透明性および機械的特性を有するものであれば特に限定されない。一般的には、ガラス板などが用いられることが多い。基板には、プラズマ処理やUV処理などの表面処理が施されていてもよい。また基板には、第1電極を駆動する薄膜トランジスタ(TFT)が内蔵されていてもよい。
【0031】
2)第2ステップでは、第1ステップで準備した基板上に、第1電極を形成する。第1電極は、例えば、基板上に第1電極の材料からなる層をスパッタリングなどで成膜し、成膜された層をエッチングによりパターニングすることで形成されてもよい。
【0032】
3)第3ステップでは、第2ステップで形成した第1電極上に有機層を形成する。有機層は、有機層の材料液(以下単に「材料液」とも称する)をインクジェットやディスペンサ、塗布針で、塗布することで形成される。材料液に含まれる有機材料および溶媒の種類は、有機層の種類や求める特性などに応じて自由に選択される。有機材料の例には、ポリフルオレン系の高分子有機材料などが含まれる。
【0033】
上述のように、本発明では有機層は塗布法で形成されるので、隣接する画素に有機層の材料液が侵入しないよう、材料液が塗布される領域を規定する必要がある。材料液が塗布される領域を規定するには、バンクを用いてもよいし、自己組織化単分子膜などの撥液性の膜を用いてもよい。
【0034】
バンクは、基板上に直接配置されてもよいし、基板上に形成された別の部材(例えば、第1電極など)の上に配置されてもよい。バンクは有機EL素子ごとに有機層を規定していてもよいし、ライン状に配列された複数の有機EL素子を含む区域を規定してもよい(図6参照)。ライン状に配列された複数の有機EL素子は、同一色(赤、緑または青)の光を発する。
【0035】
バンクの材料は、特に限定されないが、絶縁性、有機溶剤耐性、プロセス耐性(プラズマ処理、エッチング処理、ベーク処理に対する耐性)の観点から、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などが好ましい。また、バンクの材料は、フッ素系樹脂(アクリル系フッ素樹脂やポリイミド系フッ素樹脂)であってもよい。バンクは、プラズマ処理やUV処理などの表面処理によって表面の親液性や撥液性が調整されてもよい。
【0036】
有機EL素子は、電極および有機層の薄膜を積層することで形成される。それぞれの薄膜は、数nm〜数十nmレベルで膜厚が制御されている。製造環境を厳密に管理し、かつ製造設備を十分にメンテナンスしていても、有機層の形成時に、装置内部や製造環境からの異物が有機層に混入することがある。有機層に混入した異物は、リーク電流発生の要因となる。
【0037】
図4は、異物が混入した有機層を有する有機EL素子の断面図を示す。図4に示されるように有機EL素子は、基板1、基板1上に配置された第1電極2、第1電極2上に配置された有機層3、有機層3上に配置された第2電極4、第2電極4上に配置された保護層5とを有する。有機層3には異物6が混入している。
【0038】
図4に示されるように、異物6は第1電極2および第2電極4と接触しているので、異物6が電流のリークパスとなってしまう。このため、第1電極2と第2電極4との間に電圧を印加すると、異物6を通して、第1電極2から第2電極4に電流がリークし、消費電力の増大や、異物周囲での発光輝度低下による発光ムラや、発光自体がしなくなるという不良現象が発生する。
【0039】
4)第4ステップでは、第3ステップで形成した有機層に混入した異物を検出する。
有機層に混入した異物を検出する方法は、特に限定されないが、顕微鏡を用いた外観検査による方法や画像検査方法やパターン検査方法などがある。画像検査方法やパターン検査方法には、隣接する素子同士を比較することで異物を検出する「Die to Die検査方式」や素子と設計データとを比較することで異物を検出する「Die to Database検査方式」が含まれる。異物が検出された場合は、第5ステップに進み、異物と、異物周辺の有機層を除去する。
【0040】
5)第5ステップでは、第4ステップで検出された異物が混入した領域の有機層を除去する。有機層の除去はレーザ照射(レーザアブレーション)によって行われる。より具体的には、異物が混入した領域の有機層にレーザ光を照射することで、異物が混入した領域の有機層を除去する。ここで「有機層にレーザ光を照射する」とは、有機層の表面近傍に焦点を合わせてレーザ光を照射することを意味する。
【0041】
レーザ光源の種類は、特に限定されないが、例えばフラッシュランプ励起Nd:YAGレーザである。Nd:YAGレーザを用いた場合、レーザの波長を、1064nm(基本波長)、532nm(第二高調波)、355nm(第三高調波)、266nm(第四高調波)から選択することができる。また、レーザ光源は、例えば半導体レーザであってもよい。
【0042】
有機層に照射するレーザ光の波長は、有機層が吸収しうる波長であれば特に限定されないが、1100nm以下であることが好ましく、400nm以下であることが特に好ましい。すなわち、上記Nd:YAGレーザであれば、第三高調波(355nm)または第四高調波(266nm)を照射することが好ましい。レーザの波長が小さいほうが、有機層の下にある層(基板や第1電極、別の有機層など)に与える影響が小さいからである(特開2002−124380号公報参照)。有機層に照射するレーザのエネルギー密度は、有機層の材料や厚さなどによって適宜設定する。
【0043】
レーザの照射面積は、異物のサイズおよび形状に合わせて調整されることが好ましい。レーザの照射面積は、スリットの開口面積などを制御することで調整する。
【0044】
従来のレーザ照射で異物が混入した領域の有機層を除去する方法(特許文献2参照)では、異物が混入した領域の有機層を除去する際に、異物や有機層の破片(以下単に「破片」とも称する)がランダムに飛散することが問題となっていた。ランダムに飛散した破片は、吸引が困難なので、有機ELディスプレイの更なる欠陥となる恐れがあるからである。
【0045】
これに対し、本発明は、異物が混入した領域の有機層を除去する際に、異物や有機層の破片が飛散する方向を制御することを特徴とする。本発明者はレーザ光で照射される領域(以下単に「照射領域」とも称する)におけるレーザ光の強度分布を偏らせることで、破片の飛散方向を制御できることを見出した。ここで、「照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせる」とは、レーザ光の強度ピークを照射領域の中心からずらすことを意味する。照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせるには、レーザ光を基板の法線に対して傾けて照射したり(実施の形態1参照)、透過率が一方向に向かって変化するND(Neatral Density)フィルタを通してレーザ光を照射すればよい(実施の形態2参照)。
【0046】
このように、照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせることで、異物や有機層の破片が飛散する方向を制御することができる。より具体的には、照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせることで、異物や有機層の破片を一方向にのみ飛散させることができる。以下、図面を参照しながら、照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせることと、異物の破片が飛散する方向を制御することとの関係について説明する。
【0047】
図5A〜Cは、照射領域における強度分布が偏ったレーザ光(以下単に「強度分布が偏ったレーザ光」とも称する)で、異物が混入した領域の有機層を除去したときの異物や有機層の破片の挙動を示す。
【0048】
図5Aは、異物6が混入した領域の有機層3に強度分布が偏ったレーザ光9を照射した様子を示す。図5Aの矢印Xは、レーザ光9の強度を示す。図5Aに示されるように、照射領域におけるレーザ光9の強度分布は偏っている。より具体的には、レーザ光9の強度ピークPは、照射領域40の中心から紙面右方向にずれている。
【0049】
図5Bは、強度分布が偏ったレーザ光9の照射によって生じたアブレーションの瞬間を示す。図5Bに示されるように照射領域40のうち、強度ピークPの近傍の領域41では、レーザ光のエネルギが強いので、異物や有機層は気化する。一方で、照射領域40のうち、レーザ光9の強度が弱い領域42では、レーザ光9は異物および有機層を気化させるほどのエネルギは有さず、異物および有機層は破壊され、粉砕される。粉砕された異物および有機層(破片)には、領域41で異物や有機層が気化したときに生じた衝撃によって矢印Y方向の力が加わり飛散する。このように本発明では、破片は、レーザ光の強度が弱い方向にのみ飛散する。
【0050】
この結果、図5Cに示すように、異物や有機層の破片10は、有機層が除去された領域(以下単に「有機層除去部」とも称する)の一方側に集中する。すなわち、異物や有機層の破片10は、有機層除去部11のレーザ光の強度が弱かった方に集中する。
【0051】
このように、強度分布が偏ったレーザで異物が混入した領域の有機層を照射することで、破片が飛散する方向を、一方向に制御することができる。
【0052】
また、有機層の材料によっては、強度分布が偏ったレーザ光を照射しても、破片がレーザ光の強度が弱い方向と異なる方向に飛散することもある。
【0053】
一方、図6A〜Cは、照射領域における強度分布が偏らないレーザ光(以下単に「強度分布が偏らないレーザ光」とも称する)で、異物が混入した領域の有機層を除去したときの異物や有機層の破片の挙動を示す。
【0054】
図6Aは、異物6が混入した領域の有機層3に強度分布が偏よらないレーザ光9を照射した様子を示す。図6Aの矢印Xは、レーザ光9の強度を示す。図6Aに示されるように、レーザ光9の強度分布は偏っていない。より具体的には、レーザ光9の強度ピークPは、照射領域40の中心に位置する。
【0055】
図6Bは、強度分布が偏らないレーザ光9の照射によって生じたアブレーションの瞬間を示す。図6Bに示されるように照射領域40の中心部では、レーザ光のエネルギが強いので、異物や有機層は気化する。一方で、中心部の周辺では、レーザ光9の強度が弱いので、レーザ光9は異物および有機層を気化させるほどのエネルギは有さず、異物および有機層は破壊され、粉砕される。粉砕された異物および有機層(破片)には、照射領域の中心部で異物や有機層が気化したときに生じた衝撃によって矢印Y方向の力が加わる。強度分布が偏らないレーザ光9の場合、レーザ光9の強度ピークPは照射領域の中心に位置するので、破片は、照射領域の中心から放射状にランダムに飛散する。
【0056】
この結果、図6Cに示すように、異物や有機層の破片10は、有機層除去部11の周辺にランダムに分散される。また、強度分布が偏らないレーザ光で有機層を照射した場合、有機層除去部11の中心部が最も深くなる。
【0057】
このように、強度分布が偏ったレーザで異物が混入した領域の有機層を照射することで、破片が飛散する方向を、一方向に制御することができる。
【0058】
照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせることで、実際に異物および有機層の破片が飛散する方向を一方向に制御できることを示すために以下の予備実験を行った。
【0059】
まず、ガラス板上に複数のライン状のバンクを形成し、バンクによって規定された領域内に有機層を形成した。予備実験では、有機層には異物を混入させなかった。そして、有機層にレーザ光を照射し、有機層を除去した。
【0060】
予備実験では、レーザ光を基板の法線に対して傾けることで、照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせた。具体的には、レーザ発振機を傾けることで、レーザ光をライン状のバンクの長軸に平行に傾けた。レーザ光の入射角度は15°とした。
レーザを照射するためのレーザ発振機はフラッシュランプ励起Nd:YAGレーザを用いた。レーザ波長は、355nm(第三高調)とした。レーザ光のエネルギ密度を1.5/cm2とし、35μm×35μmの四角い領域を除去した。また、比較例として、レーザ光を基板に対して垂直に照射した以外は同じ条件で、有機層を除去した。
【0061】
有機層を除去した後、有機層が除去された領域(有機層除去部)を顕微鏡で観察し、有機層の破片の拡散具合を観察した。
【0062】
図7は、基板の法線に対して傾いたレーザ光(強度分布が偏ったレーザ光)を照射したことによって形成された有機層除去部を示す。図8は、基板に対して垂直のレーザ光(強度分布が偏らないレーザ光)を照射したことによって形成された有機層除去部を示す。
【0063】
強度分布が偏ったレーザ光を照射したことによって形成された有機層除去部(図7)では、レーザ光の強度ピーク側(レーザ発振機が設けられた側)の領域A内の有機層の破片の数は0であった。一方レーザ光の強度が弱かった方の領域B内の有機層の破片の数は22であった。
【0064】
これに対し、強度分布が偏らないレーザ光を照射したことによって形成された有機層除去部(図8)では、紙面上方の領域A内の有機層の破片の数は12であり、紙面下方の領域B内の有機層の破片の数は11であった。
【0065】
これらの結果は、強度分布が偏ったレーザ光を照射することで、異物や有機層の破片が飛散する方向を一方向に制御できることを示唆する。
【0066】
6)第6ステップでは、第5ステップで発生した異物や有機層の破片を吸引する。破片を吸引する手段は特に限定されないが、集塵機が好ましい。上述したように、本発明では、異物や有機層の破片が飛散する方向が一方向に制御されているので、異物や有機層の破片が一部に集中している。このため、容易に破片を吸引することができる。これにより、有機層上に残存した破片が、新たな欠陥を発生させることを防止することができる。
【0067】
集塵機で破片を吸引するには、集塵機の吸引口を破片が飛散する方向に設置すればよい。上述のように破片は通常、照射領域のレーザ光の強度が弱い方に向かって飛散する。このため、集塵機の吸引口を照射領域のうち、レーザ光の強度が最も弱い(強度ピークから最も離れた)箇所の上方に設置すればよい。
【0068】
7)第7ステップでは、第5ステップで形成された有機層が除去された領域(以下、「有機層除去部」とも称する)に有機材料を含む溶液を再度塗布する。
【0069】
有機層除去部に有機層を形成する方法は、塗布法であれば特に限定されない。塗布法の例には、インクジェット、ディスペンサ、塗布針などを用いた方法が含まれる。これらの方法は、有機層除去部の体積に合わせて有機材料を含む溶液を塗布する量を調整できるため好適である。第7ステップでは、有機層除去部が材料液で埋まるように調整しながら、材料液を塗布する必要があるからである。
【0070】
有機層除去部に塗布される有機材料および溶媒の種類は、通常、第2ステップで塗布した溶液と同じものである。また、第7ステップで塗布する材料液の粘度は、第2ステップで塗布した材料液よりも高いことが好ましい。より具体的には、第7ステップで塗布する材料液の粘度は、30mPa・s以上であることが好ましい。材料液の粘度を高くすることで、材料液が有機層除去部から溢れ出すことを防止し、材料液を局所的に塗布することができる。このため、第7ステップにおける材料液の塗布には、高粘度材料対応のインクジェットノズルや塗布針などを用いることが好ましい。
【0071】
有機層除去部に塗布された材料液を乾燥させることで、有機層除去部に再度有機層を形成することができる。材料液を乾燥させるには、基板全体を加熱炉などで乾燥させてもよいが、CO2レーザやスポットランプ、超小型の熱風ヒータなどで有機層除去部に塗布された材料液のみを乾燥させる方法が好ましい。基板全体を加熱した場合、再塗布した部分以外についても熱が加わるため、有機層の劣化を引き起こすおそれがある。
【0072】
このように本発明によれば、有機層に異物が混入した場合に、異物を除去することによって有機EL素子のショートを修復することができる。したがって、本発明によれば、リーク電流の低減による低消費電力化や輝度ムラが少ない有機ELディスプレイを高い歩留まりで製造することができる。また、本発明によれば、異物や有機層の破片を効率的に吸引することができるので、有機層上に残存する破片がさらなる欠陥を発生させることを防止することができる。
【0073】
以下、本発明の製造方法の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施の形態により限定されない。
【0074】
(実施の形態1)
実施の形態1では、レーザ光を基板の法線に対して傾斜させることで、照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせた形態について説明する。また、実施の形態1では、有機層がライン状のバンクに規定された領域内に形成される。
【0075】
実施の形態1の有機ELディスプレイの製造方法は、1)基板を準備する第1ステップ、2)基板上に第1電極を形成する第2ステップ、3)基板上にライン状のバンクを形成する第3ステップ、4)バンクによって規定された領域内に有機層を形成する第4ステップ、5)有機層中に混入している異物を検出する第5ステップと、6)異物が混入した領域の有機層を除去するステップと、7)異物や有機層の破片を吸引する第7ステップと、8)有機層が除去された領域に有機層の材料液を再度塗布する第8ステップと、を有する。
【0076】
第1ステップでは、基板を準備し、第2ステップでは準備した基板上に第1電極を形成する。そして第3ステップでは有機層を規定するライン状のバンクを基板上に形成する。次いで、第4ステップでは、インクジェット法により、バンクによって規定された領域に材料液を塗布して有機層を形成する。第5ステップでは、有機層中に混入した異物6を画像検査機により検出する。
【0077】
図9は、第5ステップで検出された異物の斜視図を示す。図9示されるようにバンク7によって規定された領域内に形成された有機層3には異物6が混入している。図10は、異物6が混入した有機層3の断面図を示す。
【0078】
第6ステップでは、異物が混入した領域の有機層を除去する。上述のように本実施の形態では、レーザ光を基板の法線に対して傾けることで、照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせる。
【0079】
図11は、本実施の形態の第6ステップを示す。図11に示されるようにレーザ光9は基板の法線に対して傾けられている。このようにレーザ光を傾けるとレーザ光の強度ピークが照射領域の中心から、レーザ発振機8側にずれる。また、集塵機12の吸引口は、照射領域40のうち、レーザ光の強度ピークから最も離れた箇所の上方に配置される。
【0080】
図12は、レーザ光9を傾けることで、照射領域におけるレーザ光9の強度分布が偏るメカニズムを示す。図12に示される符番50はレーザの強度分布を示す。図12に示されるように、レーザ光9の強度ピークは、レーザ光の中心に位置する。しかし、レーザ光9が図12に示されるように傾けられると、照射領域40においてレーザ光の強度分布が偏る。すなわち、レーザ光の強度ピークPが照射領域40の中心からずれる。このようにレーザ光を傾けることで、照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせることができる。
【0081】
図13Aは、レーザ光の照射によって形成された有機層除去部11の断面を示す。上述したように、異物や有機層の破片10は、レーザ光の強度が弱い方向にのみ飛散する。このため、異物や有機層の破片10は、有機層除去部11の一方にのみ集中する。
【0082】
第7ステップでは、異物や有機層の破片を吸引する。図13Bに示されるように集塵機12の吸引口は破片10が集中する領域の上方に配置されているので、有機層除去部11を形成する際に発生した破片10を容易に吸引することができる。
【0083】
第8ステップでは、有機層除去部に材料液を再度塗布する。その後材料液を乾燥させることで、有機層除去部に有機層を再形成することができる。
【0084】
このように、実施の形態1の有機ELディスプレイの製造方法によれば、有機層中に混入した異物を除去することで、有機ELディスプレイの欠陥を修復することは出来る。また、本実施の形態によれば、異物を除去する際に発生した破片を吸引できるので、破片によるさらなる有機ELディスプレイの欠陥を防止することができる。
【0085】
(実施の形態2)
実施の形態1では、レーザ光を基板の法線に対して傾斜させることで、レーザ光の強度分布を偏らせた形態について説明した。実施の形態2では、NDフィルタを用いてレーザ光の強度分布を偏らせる形態について説明する。
【0086】
実施の形態2の有機ELディスプレイの製造方法は、1)基板を準備する第1ステップ、2)基板上に第1電極を形成する第2ステップ、3)基板上にライン状のバンクを形成する第3ステップ、4)バンクによって規定された領域内に有機層を形成する第4ステップ、5)有機層中に混入している異物を検出する第5ステップと、6)異物が混入した領域の有機層を除去するステップと、7)異物や有機層の破片を吸引する第7ステップと、8)有機層が除去された領域に有機層の材料液を再度塗布する第8ステップと、を有する
。実施の形態2の有機ELディスプレイの製造方法は、第6ステップが異なる以外は、実施の形態1の有機ELディスプレイの製造方法と同じである。以下、実施の形態2の有機ELディスプレイの製造方法の第6ステップについて説明する。
【0087】
第6ステップでは、異物が混入した領域の有機層を除去する。本実施の形態では、レーザ光をNDフィルタを通過させることで、レーザ光の強度分布を偏らせる。
【0088】
図14は、本実施の形態の第6ステップを示す。図14に示されるようにレーザ光9は、基板1に対して垂直に照射される。また、レーザ光9は、透過率が一方向に向かって変化するNDフィルタ20を通過する。より具体的には、NDフィルタ20の透過率は、紙面右側から紙面左側にかけて段階的に高くなる。これにより、レーザ光の強度ピークを照射領域の中心から紙面左側へずらすことができる。また、集塵機12の吸引口は、照射領域40のうち、レーザ光の強度ピークから最も離れた箇所の上方に配置される。
【0089】
このように照射領域におけるレーザ光の強度分布を偏らせることで、異物や有機層の破片を、一方向(レーザ光の強度が弱い方向)にのみ飛散させることができる。このため、異物や有機層の破片10は、有機層除去部11の一方にのみ集中する。
【0090】
これにより、異物や有機層の破片を集塵機12によって容易に吸引できる。このため、破片が有機ELディスプレイのさらなる欠陥を発生させることはない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の有機ELディスプレイの製造方法によれば、有機層に異物が混入した場合に、レーザ光を照射することで異物を除去し、異物が除去された領域に再度、材料液を塗布することで、異物による欠陥部を修復できる。したがって、本発明によれば、異物によるリーク電流の低減による低消費電力化や輝度ムラが少なく、有機層の劣化のない有機ELディスプレイを高い歩留まりで製造することができる。
さらに、本発明の有機ELディスプレイの製造方法によれば、異物を除去する際に発生した破片を吸引できるので、破片によるさらなる有機ELディスプレイの欠陥を防止することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 基板
2 第1電極(陽極)
3 有機層
4 第2電極(陰極)
5 保護層
6 異物
7 バンク
8 レーザ発振機
9 レーザ光
10 異物および有機層の破片
11 有機層除去部
12 集塵機
13 エアー噴出装置
20 NDフィルタ
30 基板
40 照射領域
50 レーザ光の強度分布
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上にマトリクス状に配置された複数の有機EL素子とを有し、
前記有機EL素子は、前記基板上に配置された第1電極、前記第1電極上に配置された有機層、および前記有機層上に配置された第2電極を含む、有機ELディスプレイを製造する方法であって、
前記基板を準備するステップと、
前記基板上に前記第1電極を形成するステップと、
前記第1電極上に前記有機層を塗布形成するステップと、
前記有機層に混入した異物を検出するステップと、
前記異物が混入した領域の有機層にレーザ光を照射することによって、前記異物が混入した領域の有機層を除去するステップと、
前記異物および有機層の破片を吸引するステップと、を有する、有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項2】
前記レーザ光で照射される領域における前記レーザ光の強度分布は偏っている、請求項1に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項3】
前記レーザ光を前記基板の法線に対して傾けることで、前記レーザ光で照射される領域における前記レーザ光の強度分布を偏らせる、請求項2に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項4】
前記レーザ光を透過率が一方向に向かって変化するNDフィルタを通過させることで、前記レーザ光で照射される領域における前記レーザ光の強度分布を偏らせる、請求項2に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項5】
前記異物および有機層の破片は、集塵機で吸引される、請求項1に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項6】
前記集塵機の吸引口は、前記レーザ光で照射される領域のうち、前記レーザ光の強度ピークから最も離れた箇所の上方に配置される、請求項5に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項7】
前記有機層を除去した領域に、前記有機層の材料液を塗布するステップをさらに有する、請求項1に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項1】
基板と、前記基板上にマトリクス状に配置された複数の有機EL素子とを有し、
前記有機EL素子は、前記基板上に配置された第1電極、前記第1電極上に配置された有機層、および前記有機層上に配置された第2電極を含む、有機ELディスプレイを製造する方法であって、
前記基板を準備するステップと、
前記基板上に前記第1電極を形成するステップと、
前記第1電極上に前記有機層を塗布形成するステップと、
前記有機層に混入した異物を検出するステップと、
前記異物が混入した領域の有機層にレーザ光を照射することによって、前記異物が混入した領域の有機層を除去するステップと、
前記異物および有機層の破片を吸引するステップと、を有する、有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項2】
前記レーザ光で照射される領域における前記レーザ光の強度分布は偏っている、請求項1に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項3】
前記レーザ光を前記基板の法線に対して傾けることで、前記レーザ光で照射される領域における前記レーザ光の強度分布を偏らせる、請求項2に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項4】
前記レーザ光を透過率が一方向に向かって変化するNDフィルタを通過させることで、前記レーザ光で照射される領域における前記レーザ光の強度分布を偏らせる、請求項2に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項5】
前記異物および有機層の破片は、集塵機で吸引される、請求項1に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項6】
前記集塵機の吸引口は、前記レーザ光で照射される領域のうち、前記レーザ光の強度ピークから最も離れた箇所の上方に配置される、請求項5に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項7】
前記有機層を除去した領域に、前記有機層の材料液を塗布するステップをさらに有する、請求項1に記載の有機ELディスプレイの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−113733(P2011−113733A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267703(P2009−267703)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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